説明

粉砕機

廃ゴム材等の被粉砕物を、常温環境の下で、過度の摩擦等による発熱を起こさないように粉砕することを可能とする破砕機を提供する。対向面に粉砕刃を設けた一対の粉砕盤と、前記粉砕盤のうち一方の粉砕盤の中心付近に形成された被粉砕物を粉砕盤の対向する空間に投入するための投入口と、前記粉砕盤の少なくとも一方を回転させるための駆動部とを有する粉砕機において、前記一対の粉砕盤がなす角度について、面の中心側近辺においてなす角度よりも、面の円周側近辺においてなす角度を小さくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は粉砕機に関し、特に自動車等の廃タイヤに代表される廃ゴム材などの、弾力性を有し、かつ可燃性であるような物質の粉砕に適した粉砕機に関する。
【背景技術】
近年、廃タイヤや、靴底用のゴムシートの打ち抜き部材などゴム製品の製造工程で生じる端材といった廃ゴム材を、新しいゴム製品に再利用したり、燃料として用いたりする技術が開発されている。例えば、ある一定の大きさ以下に粉砕された粉末ゴムは、靴のゴム底や、ビーチサンダル、タイヤの増量材、アスファルト舗装の材料の一部などに再利用することが可能である。このような再利用を行うためには、廃ゴム材を相当の大きさに細かく粉砕する必要がある。例えば靴のゴム底に粉末ゴムを用いる場合においては、前記粉末ゴムは0.4mm角程度の大きさでなければならず、また、タイヤ(生ゴム製)の増量材等に用いる場合は0.2mm角程度の大きさに粉砕されている必要がある。
廃ゴム材をこのような大きさに粉砕する装置として、例えば回転ドラム式の粉砕装置などがある。しかしながら、このような装置の場合、常温で破砕するのが困難であるため、ドラム内に液体窒素を注入するなどして低温環境を作り出し、廃ゴム材を冷凍させて粉砕するのが一般的である。
そこで、特開平11−104510号公報に開示されているように、従来のゴム粉砕機として図18に示すような回転ドラム式の粉砕機40が知られている。このような粉砕機においては、常温下で予め所定の大きさ(約10〜20cm角)に破砕した廃ゴム材(廃タイヤチップ)をドラム40内に入れ、その後ドラム40内に液体窒素等の冷凍剤を注入することでドラム40内を約マイナス40〜60度程度の低温環境にし、これによって冷凍されたゴムチップをハンマミル等の手段でさらに細かく(1mm角程度)粉砕する。
しかしながら、このような廃ゴム材の粉砕機を用いた場合、粉砕機の内部を常に液体窒素等を用いて冷却し、廃ゴム材を冷凍させなければならない。そのため、ゴム材の資源再利用として多量の廃ゴム材を粉砕する場合に、装置が大がかりになりすぎると同時に、粉砕する時間が長時間となり、また、液体窒素の注入等の労力・コストがかかりすぎるという問題がある。さらに、廃ゴム材を冷凍することでその物性が変化し、再利用するための用途が限定されてしまうという欠点をも有している。
これに対して、特開平9−253515号公報に開示されているように、穀類等を粉砕するための粉砕機(製粉機)として、モータ等の駆動手段によって回転する回転軸に、同軸上に設置された上下一対の円盤状の擂潰盤を設け、それぞれ対向する向きに粉砕刃としての擂潰凹凸条を形成したものがある。このような粉砕機において、前記擂潰盤を回転軸と連動して回転させることによって、擂潰盤間に投入された被粉砕対象(穀類等)を一定の大きさ以下に粉砕している。前記擂潰凹凸条は、擂り鉢面模様をなすように設けられており、粉砕された被粉砕物を外側(擂潰盤の円周側)へ遠心力及び押し出し力によって移動させながら徐々に粉砕を行う。
しかしながら、このような粉砕機を用いて、廃ゴム材等の弾力性のある被粉砕物を粉砕した場合、粉砕によって得られるゴム粉は1.0〜3.0mm角程度と比較的大きく、ゴム材として再資源化するために必要な大きさ(0.2〜0.4mm角程度)には達しない。また、このような粉砕機を用いてより細かく粉砕しようとした場合、被粉砕対象のゴム材が粉砕される過程でゴム材が自身の弾性によって撓み、粉砕されずに排出されてしまい、うまく粉砕することができない。
すなわち、粉砕する盤の間隔を直線的に狭めると、図19に示すように、粉砕盤200、210にそれぞれ設けられた粉砕刃200a、210aによって挟まれた傾きに従って、被粉砕物(ゴム材)X自身が粉砕方向に撓み続けたまま排出される。このように撓んだ状態のまま排出されたゴム材は、所望の大きさ(0.2〜0.4mm)よりも遙かに大きなものとなってしまう。
【発明の開示】
上述の課題を解決するため、本発明は、請求項1において、対向面に粉砕刃を設けた一対の粉砕盤と、前記粉砕盤のうち一方の粉砕盤の中心付近に形成された被粉砕物を粉砕盤の対向する空間に投入するための投入口と、前記粉砕盤の少なくとも一方を回転させるための駆動部とを有する粉砕機であって、前記粉砕刃を、粉砕盤の回転とともに粉砕した被粉砕物を粉砕盤の外側に押し出すように形成し、さらに、前記一対の粉砕盤がなす角度について、これら粉砕盤の対向する面の中心側近辺においてなす角度よりも、面の円周側近辺においてなす角度を小さくしたことを特徴とする粉砕機を提案している。これによって、被粉砕物がある一定の大きさにまで粉砕された後、粉砕盤から受ける力を緩やかにすることで、被粉砕物に加わる力を弱め、撓みを少なくすることで、弾性力を有する被粉砕物を適切に粉砕することが可能となる。
また、請求項2においては、前記一対の粉砕盤のなす角度について、前記粉砕盤の対向する面上に設けた同心円状の境界を境として、前記境界の内側の角度よりも境界の外側の角度を小さくすることによって粉砕盤の対向する面の中心側近辺においてなす角度よりも、面の円周側近辺においてなす角度を小さくしたことを特徴とする粉砕機を提案している。これによって、粉砕盤の粉砕刃を設けた面を簡単に加工するのみで、同様の効果が得られる。すなわち、被粉砕物の性質や必要な被粉砕物の大きさ、粉砕速度などの条件に応じて適切な粉砕を行うために、前記粉砕盤のなす角度を適宜調節するのみで、簡単に適切な粉砕を行うことができる。
また、上述のように、前記境界において粉砕盤のなす角度を異ならせるとともに、粉砕盤に設ける粉砕刃の数を、境界の内側と外側で異ならせてもよい(請求項3)。このようにすることで、被粉砕物をある一定の大きさまで粉砕した後、粉砕刃によって粉砕される回数が変更され、被粉砕物が適切な大きさに粉砕されるように調節することができる。
また、前記境界の外側について、前記一対の粉砕盤の対向する面をほぼ平行になるように設けてもよい(請求項4)。平行にすることで、ゴム材のような強い弾性を有する被粉砕物について、撓みを極力生じさせず、確実に粉砕することが可能となる。
また、粉砕盤の内部に設けた流路に、冷却水などの液体を通し、粉砕刃に生じる摩擦熱を極力抑えるようにしてもよい(請求項5)。具体的には、前記液体を粉砕盤外部より供給し、前記流路を通過した後、粉砕盤外部に排出させるように冷却水等を循環させるのが好ましい。
このようにすることで、粉砕盤の外部表面から空気等を介して放熱するだけでは粉砕刃の冷却が十分に行われない場合に、粉砕刃を効果的に冷却することができる。これによって、過度の摩擦熱によって被粉砕物が軟らかくなり、撓みやすく(変形しやすく)なることを防止するという効果がある。
前記対向する粉砕盤の各々の粉砕刃は、平行溝によって形成され、前記両粉砕盤を対向配置したときに、対向する前記平行溝が互いの交差するように形成されていることが好ましい。
前記粉砕刃を形成する平行溝は、前記粉砕盤に等分割配置されたセグメントの各々に形成されていることが好ましい。
前記平行溝は、矩形断面の領域と、鋸歯断面の領域を有することが好ましく、前記鋸歯断面の平行溝が、前記粉砕盤の中心側の領域に形成されていることが好ましい。
前記粉砕盤の中心側の領域において、粉砕刃が、周方向に向けて、対向する粉砕盤間の隙間が除々に狭くなるような高さとなっていることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の第1実施形態に係る粉砕機の主要部分を表す縦断面図である。
図2は、本発明の第1実施形態の粉砕盤の破砕刃面についての拡大断面図を表す図面である。
図3は、図1の粉砕盤の刃の形状を示す平面図である。
図4は、本発明の第2実施形態に係る粉砕機の主要部分を表す縦断面図である。
図5は、本発明の第2実施形態の粉砕盤の破砕刃面についての拡大断面図を表す図面である。
図6は、本発明の第2実施形態における粉砕盤の破砕刃面に設けられた破砕刃の形状等を示す平面図である。
図7は、本発明の第2実施形態における粉砕盤の破砕刃面に設けられた破砕刃の形状等の断面を表す平面図である。
図8は、本発明の第2実施形態における粉砕盤の破砕刃面に設けられた破砕刃の他の形状等を示す平面図である。
図9は、本発明の第3実施形態における下部粉砕盤示す平面図である。
図10は、上記第3実施形態における上部粉砕盤を示す平面図である。
図11は、図9の一部を拡大して示し、(a)は平面図、(b)はA視正面図、(c)は一部拡縦大断面図である。
図12は、図10の一部を省略して示す平面図である。
図13は、図10一部を拡大して示し、(a)は平面図、(b)はB視側面図、(c)はA方向斜め底方から視た斜視図である。
図14は、図10一部を拡大して示し、(a)は平面図、(b)はB視側面図、(c)はA方向斜め底方から視た斜視図である。
図15は、図10の一部を拡大して示し、(a)は平面図、(b)はB視側面図、(c)はA方向斜め底方から視た斜視図である。
図16は、図13〜図15に示したセグメントを並べて配置した状態を示し、(a)は平面図、(b)はA方向斜め底方から視た斜視図である。
図17は、本発明の第4実施形態に係る粉砕機の主要部分を表す縦断面図である。
図18は、従来の破砕機の全体を概略的に示す斜視図である。
図19は、従来の粉砕機を弾性体の粉砕に使用した際の粉砕体の撓む様子を示す縦断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明の好ましい実施形態について以下に図面を参照して説明する。図1、2は、本発明の第1の実施形態を示すものであり、図面内において同じ符号を付した構成は、同様の作用および効果を有する類似または同一の構造物であることを示している。
粉砕機本体1において、上保持部2に溶接またはボルト止め等の手段で固定された上蓋部3と、同様に下保持部4に固定されたケース部5および下蓋部6とは、ヒンジ7によって開閉自在に構成されている。上保持部2および下保持部4は、上蓋部3をある一定の位置にまで開けた際に、上蓋部3の自重で自動的に上蓋部3が閉じてしまわないように、重さを調節したバランス重り8に、柄部9を介して接続されている。上蓋部の下側には、炭素鋼(例えばSKD−11)等の材質で形成された円盤状の上部粉砕盤10(直径500mm程度)が、ボルト等によって固定されている。本実施形態では、上部粉砕盤10は、表面が緩やかな曲面を有する粉砕刃面10aを備えている。前記曲面は、球面や放物面、楕円面などの形状から適宜選択可能である。
前記上部粉砕盤10に対向する向きに、同様の材質で形成された円盤状の下部粉砕盤11が設けられており、前記下部粉砕盤11は回転台12にボルト等で固定されている。回転台12は、連結部13を介して回転軸14に接続され、駆動部(図示していない)からの回転駆動によって回転軸14が回転することで、回転台12、すなわち下部粉砕盤11が回転する。本実施形態では、下部粉砕盤11の粉砕刃面11aは、ほぼ水平である。
回転軸14は、下蓋部6にボルト等で固定された柱部15の内部で回転するように構成されている。そのため、柱部15の内部には、回転軸14に接するようにボール軸受け16が設けられており、このボール軸受け16に適宜潤滑油を供給するためのインレット17が、柱部15を貫通する形で設けられている。
また、上蓋部3および上部粉砕盤10は、中心付近に被粉砕物を投入するための投入口18を有しており、振動フィーダやスクリューコンベア等の被粉砕物供給手段(図示していない)によって運ばれた被粉砕物が、投入口18の投入空間Aに投入される。投入された被粉砕物は、投入口18の真下近傍にボルト等によって固定された案内手段19によって、上部粉砕盤10と下部粉砕盤11との間に送り込まれる。案内手段19は、回転しない滑らかな斜面で形成されていても良いが、図5等に示すように回転軸14に固定され、回転することで被粉砕物を遠心力によって外側へ送るような羽根構造を有していてもよい。なお、案内手段19は、必ずしも回転軸14と同期回転する必要はなく、案内手段19の回転速度を可変にしておいてもよい。このようにすることで、被粉砕物を送り出す量を調整可能とし、最終的に生成される粉末の量を調整することができる。
図2に、図1に示す第1の実施形態の上部粉砕盤10,下部粉砕盤11の断面についての拡大図を示す。図2において、上部粉砕盤10の粉砕面10aは球面、楕円面、放物面等のなめらかな曲面を備えており、この曲面に粉砕刃(図示していない)を備えている。このため、粉砕盤10,11の中心近辺における両粉砕盤10,11のなす角度は、粉砕盤10,11の外側(円周側)に遠ざかるにつれて、緩やかに小さくなっている。即ち、粉砕盤10,11がなす角度について、これら粉砕盤10,11の対向する面の中心側近辺においてなす角度よりも、面の円周側近辺においてなす角度が小さくなっている。上部粉砕盤10および下部粉砕盤11は、盤の縁近辺(円周近辺)ではほぼ平行であり、その隙間幅は約0.1〜0.2mm程度としている。 粉砕刃面10a、11aの粉砕刃10b,11bは、平面視において図3に示すように、上下部の粉砕盤10、11を中心角で等分する6つのセグメント10−1〜10−6,11−1〜11−6のそれぞれに形成されている。各セグメント10−1〜10−6,11−1〜11−6は、略扇形をしたプレートであって、上部蓋3若しくは下部蓋6に図示しないボルト等で固定されている。上下の粉砕盤10、11が大型になると、このように粉砕刃を各セグメント毎に形成すれば、粉砕刃の加工がし易く、取り替えも容易である。
粉砕刃10b,11bは、各セグメント毎に形成された平行溝によって形成することができる。粉砕刃10b、11bの平行溝は、両粉砕盤を対向配置したときに対向する粉砕刃10b,11bが交差するように形成されている。図示例では、各セグメントに形成された平行溝が、全体として擂り鉢の摺り目状模様をなし、上部粉砕盤10及び下部粉砕盤11の各粉砕刃10b、11bの形状は、同一形状としている。各々の粉砕刃10b、11bの断面形状は、矩形状とすることができる。
粉砕刃を上記のような平行溝によって形成することにより、下部粉砕盤11は、上部粉砕盤10の粉砕刃と協動し、被粉砕物を剪断するとともに、被粉砕物を粉砕盤の外周側に押し出す作用をなし得る。
さらに、粉砕盤10,11がなす角度について上記のように構成したことにより、被粉砕物が外側に押し出されながら粉砕盤によって粉砕されるにつれて粉砕盤から受ける圧力が徐々に小さくなり、被粉砕物の撓みを極力抑えた状態で、適切に粉砕が行われる。
上部粉砕盤10と下部粉砕盤11との間に送り込まれた被粉砕物は、粉砕刃面10aおよび11aによって徐々に細かく粉砕され、遠心力と各刃面の押し出す力とによって粉砕盤の回転とともに粉砕部材の円周外側に送り出され、最終的に排出空間Bに押し出される。排出空間Bに押し出された粉末(被破砕物)は、ブロワー等の吸引手段(図示していない)によって排出口Cに引き寄せられ、排出部20から排出され、適宜容器(図示していない)内に収納される。
なお、排出部20は、粉末が押し出される排出空間Bの近傍に設けてあればよく、必ずしも下蓋部6に設ける必要はない。例えば吸引手段の吸引力が十分であれば、排出空間Bの上側に設けてあってもよい。すなわち、排出部20を設ける位置は、粉末を収納するための容器の位置や、粉砕機本体の全体構造を考慮して、排出空間Bの近傍に自由に設けることができる。
また、前記吸引手段(図示していない)によってケース部5内の空間が減圧され、粉砕された粉末(被粉砕物)がうまく排出されない場合があるため、ケース部5内に空気を送り込むための空気流入口を、別途設けておくことが好ましい。これによって、ケース部5内に空気の流れが生まれ、粉砕された粉末(被粉砕物)が適切に排出される。
また、21は上蓋部3をケース部5(または下蓋部6)に堅固に固定するためのクランプネジを示し、手動または機械で締め付けることができるように取っ手を有している。22は、ケース部5側に設けられた、クランプネジ21に係合するネジ止め部である。
次に、本発明に関する第2の実施形態を図4、図5を用いて説明する。図3において、図1に示す第1の実施形態と同様の構成を表す要素については、同じ符号を付している。
図4に示す第2の実施形態においては、上部粉砕盤100は、所定角度に形成された第1粉砕刃面100aと、同心円状の境界Pにおいて第1粉砕刃面100aと連続し、前記所定角度とは異なる角度に形成された第2粉砕刃面100bを有している。
さらに、上部粉砕盤100の内部においては、冷却水を通過させるための流路23を設けている。流路23は、粉砕時により摩擦熱が強く発生する粉砕盤100の円周に近い側に設けられるのが好ましい。流路23に接続された注水部24から注入された冷却水は、上部粉砕盤100内部を循環し、粉砕盤100および粉砕刃面100aを冷却させたのち、排水部25を介して外部に排出される。
なお、図5において、冷却水を循環させる流路は、固定されている上部粉砕盤100側にのみ設けられているが、本発明はこれに限定したものではなく、回転する下部粉砕盤においても同様の流路を設けてもよい。
図5(A)は図4に示す実施形態の、上部粉砕盤100および下部粉砕盤付近についての拡大図を示す。図5(A)に示すように、第1粉砕刃面100aと粉砕刃面110aのなす角度θは、第2粉砕刃面100bと下部粉砕盤110の粉砕刃面110aのなす角度θよりも大きい。
角度θおよびθは、上部粉砕盤と下部粉砕盤との間隔と、粉砕刃面の半径方向の長さ、設けた粉砕刃の数や形状などによって決定される。本実施形態においては、図4(A)に示すように、粉砕空間入口部の間隔h=10〜15mm程度、境界Pの地点における粉砕空間の間隔h=0.1mm〜0.3mm程度、粉砕空間出口部の間隔h=0.1〜0.2mm程度に設計されるのが好ましい。特に間隔hの大きさは、最終生成物としての粉末の大きさを決定する重要な要因となる。なお、本実施例では第1粉砕刃面100aの水平方向の長さLは約150mm程度、第2粉砕刃面100bの水平方向の長さLは約50mm程度に設計している。
本実施形態における、上部粉砕盤および下部粉砕盤の形状は、図5(A)に限られたものではなく、例えば図5(B)のように複数の同心円境界P,P’を設けて、3段階(またはそれ以上)に前記角度を変更させてもよい。このとき、半径方向の外側の粉砕刃面ほど、下部粉砕盤の粉砕刃面となす角度が小さくなるようにする必要がある。
また、上部粉砕盤のみの粉砕刃面の角度を多段階にするだけでなく、下部粉砕盤110の粉砕刃面を図5(C)に示すように110’a、110’bのように多段階に設けても良い。この変形例においても、対応する粉砕刃面(例えば100aと110’aがなす角度)が、半径方向の外側ほど小さくなるように設計する必要がある。
また、上部粉砕盤と下部粉砕盤の粉砕刃面が平行となる場合は、これらがなす角度θ=0°とみなすものとする。例えば、図5(A)における上部粉砕盤の第1粉砕刃面100bは、必要に応じて下部粉砕盤の粉砕刃面110と水平になるように設けてもよい。このようにした場合、被粉砕物の撓みが極力抑えられ、適切な粉砕が行えるようになる。
以上のように上下の粉砕刃面のなす角度を、粉砕盤の外側(円周側)において段階的に小さくするように設計することで、被粉砕物のもつ弾性により撓んだ状態のまま(所望の大きさに粉砕されないまま)粉砕機から排出されるということがなくなる。
図6は、本実施形態における粉砕刃面の内側(刃面を有する側)を表している。図6において、破線で表された同心円境界Pの内側の刃面が図4および図5(A)でいう上部粉砕盤100の第1粉砕刃面100aであり、その外側にある刃面が第2粉砕刃面100bである。ここで、第1粉砕刃面100aおよび第2粉砕刃面100bは、別々に構成された刃面であってもよいし、一体型によって構成される刃面であってもよい。
また、図6(B)、(C)に示すように、第1粉砕刃面100aと第2粉砕刃面100bにそれぞれ設ける刃の数を、異ならせてもよい。例えば、第2粉砕刃面100bが下部粉砕盤110の粉砕刃面110aとなす角度が十分に小さい場合、粉砕を効率的に行うために図6(B)に示すように第2粉砕刃面100bに設ける刃(101b)の数を、第1粉砕刃面100aに設ける刃(101a)の数よりも多くしてもよい。
逆に、第2粉砕刃面100bが下部粉砕盤110の粉砕刃面110aとなす角度の大きさが、第1粉砕刃面100aと粉砕刃面110aとがなす角度と比して実質的に同程度の大きさの場合、第2粉砕刃面100bに設ける刃(101c)の数をやや減らしてもよい。これによって、粉砕する際に生じる摩擦がやや低減され、適切な粉砕を行うことが可能になる(図6(C)参照)。ここで、粉砕刃の形状としては、例えば図7に示すように矩形断面のものを用いてもよいし、粉砕や破砕において一般に用いられる他の形状の刃を用いてもよい。図7に示す場合においては、粉砕刃101aの大きさとして、刃幅L1=5.0mm程度、溝幅L2=5.0mm程度、溝深さL3=0.4〜0.7mm程度に設計するのが好ましい。また、図7における粉砕刃面(第1粉砕刃面)の粉砕刃と、他方の粉砕刃面(第2粉砕刃面)の粉砕刃の各々の先端同士の間隔(粉砕空間)は、0.1mm程度の幅に保たれると、所望の大きさの粉砕が行われる。
また、本実施形態において、第1粉砕刃面に設ける刃と、第2粉砕刃面に設ける刃の種類、すなわち、刃の数や形状を異ならせることも有効である。例えば、図8に示すように、第2粉砕刃面101bに設ける刃(101d)の種類を直線刃から曲線刃に変更してもよい。このような実施形態において、第1粉砕刃面、第2粉砕刃面が下部粉砕盤の粉砕刃面となす角度については、それぞれ同じ角度であってもよいし、異ならせてあってもよい。粉砕する被粉砕物の量や、被粉砕物の性質、その他の条件によって適切な角度を選択することが好ましい。
なお、図6、8に示す例においても、粉砕刃面(100a等)は、粉砕盤の母体に擂り鉢面模様(擂り目状模様)をなすように溝を切ることによって形成されている。上部粉砕盤と下部粉砕盤とは、同一形状の粉砕刃面を備えていてもよく、その場合においては両粉砕盤を対向配置することで互いの粉砕刃面が交差するので、粉砕した被粉砕物を粉砕盤の外側に押し出す効果が大きい。
次に本発明に係る粉砕機の第3実施形態について、図9〜15を参照して説明する。第3実施形態は、粉砕刃の形状が上記第2実施形態と相違し、その他の点は上記第2実施形態と同様である。図9は第3実施形態の下部粉砕盤を示す平面図、図10は上部粉砕盤を示す平面図である。
それぞれの粉砕盤110,100は、図9及び図10に示すように、12等分されたセグメントからなる。下部粉砕盤110のセグメント110−1〜110−12は、同一形状の粉砕刃を有している。
下部粉砕盤の一つのセグメント110−1を例として図11に拡大して示す。図11(a)が平面図、図11(b)は、図11(a)のA方向から見た正面図である。図11(b)から分かるように、粉砕刃を形成する平行溝は、中心側から略中央領域迄が鋸歯状溝によって形成され、略中心付近から外周側迄の領域が矩形溝によって形成されている。
上部粉砕盤110のセグメントは、セグメント110−1,110−4,110−7,110−10;セグメント110−2,110−5,110−8,110−11;セグメント110−3,110−6,110−9,110−12が、それぞれ同一形状の粉砕刃を有している。上部粉砕盤110のセグメントも、中心側の領域(図4の第1粉砕刃面110aに含まれる領域)が鋸歯断面の平行溝によって粉砕刃が形成され、その外側の領域が矩形溝によって粉砕刃が形成されている。
このように、対向する刃面の投入口18側の領域に、断面鋸歯形状の粉砕刃を設けることにより、投入口側の被粉砕物が高率良く剪断されて、第2粉砕刃面100bの領域に送られる。第2粉砕刃面100bの領域は、第1粉砕刃面100aの領域に比べて間隙が狭くなるが、鋸歯によって剪断することで、その狭い間隙に被粉砕物が入り易くなり、粉砕が促進されることとなる。
第2粉砕刃面100bの領域においても、粉砕刃の断面形状を鋸歯形状とすることができるが、斯かる場合は、同じ溝深さを有する矩形断面の粉砕刃に比較して、粉砕刃によって形成される空間の断面積が小さくなり、処理量が減少する。また、粉砕刃の溝深さは、被粉砕物に要求される最終粒径によって決定される。所要の処理量を確保するためには、第2粉砕刃面100b及びこれに対向する下部粉砕刃面110aの粉砕刃断面形状は、矩形断面であることが好ましい。なお、図示例において、鋸歯断面の粉砕刃は、最大溝深さが0.7mmであり、矩形断面の粉砕刃は、最大溝深さが0.5mmに形成されている。
また、本第3実施形態では、図12に説明のために矩形刃を図示省略した上部粉砕盤の平面図及び図16を参照すれば、3枚のセグメントグループ(例えば、100−1〜100−3)が、上部粉砕盤100の周方向に向けて、断面鋸歯状をした粉砕刃の領域が徐々に狭くなるパターンに形成されている。このようなパターンに粉砕刃を形成することにより、鋸歯断面をした粉砕刃と矩形断面をした粉砕刃との境界部分において、剪断能力が付加され、粉砕効率が向上する。
図13〜図15は、それぞれ、上部粉砕盤100のセグメント100−1、100−2、100−3を拡大してしめし、(a)が平面図、(b)が矢印B方向から視た側面図、(c)がA−A視拡大断面図を示している。図13(b)、14(b)、15(b)から分かるように、各々のセグメントにおいて、鋸歯断面を有する粉砕刃が、周方向に向けて、下部粉砕刃面110aとのギャップが段階的(若しくは除々に)狭くなるように、高さが変わっている。斯かる構成により、被粉砕物を、徐々に小さく粉砕する効果を奏する。
また、斯かる構成により、回転方向に向けて徐々にギャップが狭くなっているので、隣り合うセグメント間に生ずる段差によっても、被粉砕物に対して剪断力を働かせることができるので、粉砕効率が向上し得る。
なお、第3実施形態では、第2粉砕刃面100bは、下部粉砕刃面110aと略平行であり、刃面間のギャップは約0.1mmである。
さらに、図11、図13〜図15に良く現れているように、第2粉砕刃面100b及びそれに対向する下部粉砕刃面110aには、同心円上に、深溝部150が形成されている。深溝部150は、図11(c)に断面形状を拡大して示すように、矩形溝より少し深くしたポケット状の溝となっている。被粉砕物は上下の粉砕盤によって粉砕され、粉砕刃を形成する平行溝の溝内を通って外周側へ送られる際に、該溝内で被粉砕物が滞留するのを防止するように、深溝部150において被粉砕物をかき混ぜる作用をなす。
また、上述の例では、粉砕盤の一方のみを回転させ、他方を固定させた状態で粉砕を行っているが、本発明はこれに限定されるものではなく、両方の回転板を互いに異なる方向に回転させるように設計してもよい。
また本発明に係る粉砕機は、図17に示す第4の実施形態のように、第1粉砕盤102及び第2粉砕盤112を鉛直方向に立てた状態で使用することも可能である。この場合、被粉砕物を投入する投入口18’を第1粉砕盤101の横方向に設け、かつ排出部20’を粉砕機の下部(ケース部5等の一部を開口する等により作成する)に設けるのが好ましい。これによって、第1蓋部3’の開閉が容易になるとともに、バランス重り等が不要となり、また、モータ(図示していない)からの動力を回転軸14に伝え易くなるというメリットが生じる。
以上、本発明に係る粉砕機によって、ゴム等の弾性力を有する被粉砕物を粉砕する際に、粉砕時に生じる被粉砕物の撓みを極力抑えることで、所望の大きさの粉砕を行うことができる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】

【図19】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向面に粉砕刃を設けた一対の粉砕盤と、前記粉砕盤のうち一方の粉砕盤の中心付近に形成された被粉砕物を粉砕盤の対向する空間に投入するための投入口と、前記粉砕盤の少なくとも一方を回転させるための駆動部とを有する粉砕機であって、
前記粉砕刃を、粉砕盤の回転とともに粉砕した被粉砕物を粉砕盤の外側に押し出すように形成し、さらに、前記一対の粉砕盤がなす角度について、これら粉砕盤の対向する面の中心側近辺においてなす角度よりも、該対向する面の円周側近辺においてなす角度を小さくしたことを特徴とする粉砕機。
【請求項2】
前記一対の粉砕盤がなす角度を、前記粉砕盤の対向する面上に設けた同心円状の境界を境として、前記境界の内側の角度よりも境界の外側の角度を小さくすることによって、粉砕盤の対向する面の中心側近辺においてなす角度よりも、前記対向する面の円周側近辺においてなす角度を小さくしたことを特徴とする請求の範囲第1項に記載の粉砕機。
【請求項3】
前記粉砕盤の少なくとも一方について、粉砕盤の対向する面上に設けた同心円状の前記境界の内側と外側とで、前記粉砕刃の数を異ならせたことを特徴とする請求の範囲第2項に記載の粉砕機。
【請求項4】
前記境界の外側において、一対の粉砕盤の対向する面がほぼ平行であることを特徴とする請求の範囲第2項に記載の粉砕機。
【請求項5】
前記粉砕盤の内部に、冷却用の液体を通す流路を設けていることを特徴とする、請求の範囲第1項に記載の粉砕機。
【請求項6】
前記対向する粉砕盤の各々の粉砕刃が平行溝によって形成され、前記両粉砕盤を対向配置したときに、対向する前記平行溝が互いの交差するように形成されていることを特徴とする請求の範囲第1項に記載の粉砕機。
【請求項7】
前記粉砕刃を形成する平行溝は、前記粉砕盤に等分割配置されたセグメントの各々に形成されていることを特徴とする請求の範囲第6項に記載の粉砕機。
【請求項8】
前記平行溝が、矩形断面の領域と、鋸歯断面の領域とを有し、該鋸歯断面の平行溝が、前記粉砕盤の中心側の領域に形成されていることを特徴とする請求の範囲第6項に記載の粉砕機。
【請求項9】
前記粉砕盤の中心側の領域において、粉砕刃が、周方向に向けて、対向する粉砕盤間の隙間が除々に狭くなるような高さとなっていることを特徴とする請求の範囲第1項、第6項、又は第8項に記載の粉砕機。
【請求項10】
鋸歯断面の平行溝が、周方向に向けて、対向する粉砕盤間の隙間が除々に狭くなるような高さとなっていることを特徴とする請求の範囲第8項に記載の粉砕機。

【国際公開番号】WO2004/078354
【国際公開日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【発行日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−503102(P2005−503102)
【国際出願番号】PCT/JP2004/002744
【国際出願日】平成16年3月4日(2004.3.4)
【出願人】(597097294)シグマ精機株式会社 (1)
【Fターム(参考)】