説明

粉砕装置

【課題】粉砕媒体を撹拌する粉砕機に磨り潰す力を与え、被粉砕物をより微粉砕化することができる粉砕装置を提供する。
【解決手段】粉砕媒体11を撹拌する複数の自転可能なローター10を粉砕処理室6の底部からの公転軸7に直角方向に取り付けられた懸垂腕8に取付け、該公転軸を本体用モータ14から伝達された動力で回転させることにより、公転と自由な自転をさせることにより、投入口4及び排出口5を有する該粉砕処理室に投入された被粉砕物を粉砕する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な構成の粉砕装置に関する。さらに詳しくは、粉砕処理室内に充填された粉砕媒体を懸垂された複数のローターにて撹拌することにより被粉砕物を粉砕することに関する。
【0002】
ここでは、粉砕媒体間の強力なせん断力を得るために粉砕処理室に充填された粉砕媒体を、懸垂された自転可能なローターを公転と自由な自転をさせることにより微粉砕を可能にする。
【背景技術】
【0003】
本発明に至るまでの背景技術として、2件の従来技術の粉砕装置を、図3、図4に示す。
【0004】
図3は、特許文献1の発明であり、この発明は回転テーブルにローラーが圧接配説され、この回転テーブルを回転することによりローラーも回転する。粉砕室に被粉砕物が投入され回転テーブルとローラーの間にて圧縮されることにより粉砕される。このとき回転テーブルの外周に外部から気体が送入され粉砕された被粉砕物は、粉砕室の上部に取り付けられた分級装置により分級され目的とする粒度の被粉砕物を外部に有した捕集装置により捕集される。この発明は、粉砕媒体を利用して粉砕をする考えに至っていない。
【0005】
図4は、非特許文献1であるが従来から使用されている撹拌媒体ミルであり、この会社ではアトライタ−と称されている。これは、容器の中に粉砕媒体を充填し、被粉砕物を投入し、図4に示すように撹拌軸に固定された撹拌バ−により粉砕媒体を撹拌することにより被粉砕物が粉砕媒体と粉砕媒体の間に入り圧縮粉砕される。この場合、粉砕媒体は、撹拌軸の回転により撹拌バ−も一緒に回転することにより撹拌されるが、撹拌バ−から粉砕媒体に伝達される力が、小さいために被粉砕物の粉砕後の粒度を微細にできない欠点がある。それは、撹拌バ−が、撹拌軸に固定され、粉砕媒体を強制的に圧縮する構造となっておらず両者が共回りする状態であり、粉砕効率が小さい。
【0006】
特許文献2は、ギヤー型のロールはよく似ているが、ギヤーの中の噛み込みによる分散を目的とし、粉砕媒体による粉砕でなく、また装置内には被粉砕物を分級する方法を取ってはいない。
【0007】
特許文献3は、粉砕媒体による粉砕方法ではない。
【0008】
特許文献4は、粉砕媒体をローラーにより回転する粉砕機構をもたらしているが、装置内には、粉砕された被粉砕物を分級する機構がない。
【特許文献1】特願平11−191463号公報
【特許文献2】特願平3−261766号公報
【特許文献3】特願平7−289736号公報
【特許文献4】特願2004−36967号公報
【特許文献5】特願平10−334975公報
【非特許文献1】日本コ−クス株式会社(旧三井鉱山株式会社)のインタ−ネットのホ−ムペ−ジから検索した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、以上の技術による問題点として、図3のローラーミルは、回転テーブルの回転にローラーが従動されその隙間に被粉砕物が挟まれ粉砕される。このとき被粉砕物がそれらの隙間に挟まれる回数が多ければ多いほど粉砕が進む。ところがローラーの数が限られることから、接触回数を多くすることは回転数を上げることが考えられるが、機械構造的に無理なことである。従って機械的に無理をすることなしに効率よく微粉砕を進めることが必要である。
【0010】
また、図4の撹拌媒体ミルは、回転軸に直角に取り付けられた撹拌バ−により粉砕媒体を撹拌することにより粉砕媒体間に挟まれた被粉砕物を磨り潰すように粉砕をする。しかしこの方法であると粉砕媒体間に挟まれ磨り潰す力に強制的な力を与えることができない。これは撹拌バ−が粉砕媒体を強制的に押さえるような構造でなく、ただ機械的に一方向的に回転しているのみである。従って粉砕媒体を強制的に押さえることにより磨り潰す力を増すことが重要である。
【0011】
従って、従来の粉砕装置は、被粉砕物を微粉化するために必要な粉砕機構と被粉砕物
との接触回数を多くすることと、粉砕する機構と被粉砕物との磨り潰す力を大きくする必要がある。従来の粉砕機は、このように被粉砕物が粉砕機構に接触する回数が少ない、また被粉砕物を磨り潰す力に欠けている。
【0012】
本発明で述べている粉砕媒体は、粉砕媒体と被粉砕物との接触回数を限りなく多くするために使用される粉砕用ボ−ルのことであり、被粉砕物の大きさにより変えることがある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以上の課題を解決するために、本発明者は、鋭意開発に努力をした結果、本発明の粉砕装置とすれば、粉砕効率が格段に向上し、従来のローラーミル及び、撹拌媒体ミルの粉砕装置より微粉を得ることを知見して、本発明に想到した。
【0014】
複数の自転可能なローターを粉砕処理室の底部からの公転軸に直角方向に取り付けられた懸垂腕に取り付け、該公転軸を外部の本体用モーターから伝達された動力で回転させることにより、大きな遠心力が得られ粉砕媒体に強制的な強い力を与え、磨り潰しの力を得ることができる。
【0015】
これは、従来のローラーミルが回転テーブルとローターの間に被粉砕物が挟まれて粉砕されるのに対して本発明は、被粉砕物との接触回数を多くするために粉砕媒体を粉砕処理室に充填し、大きな遠心力を得た該自転可能なローターで粉砕媒体を押しつけることにより、従来の粉砕装置より強力な磨り潰しのせん断力が発生し被粉砕物をより微粉化することができる。
【0016】
さらに、粉砕処理室内で粉砕された被粉砕物は外部から送入される気体により分級処理室内に取り付けられた分級装置により、目的とする粒度の微粉を外部に設けられた捕集装置により製品として捕集される。このとき分級された目的より大きい粒度の被粉砕物は、粉砕処理室に落下され再び粉砕媒体と該自転可能なローターにより粉砕され分級処理室にて分級される。
【0017】
また、本発明は、被粉砕物を適量の液体と共に粉砕をする湿式粉砕(被粉砕物を適量な液体と共に粉砕する方法。)においても、粉砕処理室内に粉砕媒体を充填し被粉砕物と適量の液体とを供給し、該自転可能なローターの回転により被粉砕物が粉砕媒体に押し付けられ強力な磨り潰しの力により粉砕される。従来の撹拌媒体ミルは、粉砕媒体を撹拌バ−の一方向的な機械的撹拌により撹拌し被粉砕物を粉砕するが、本発明は、該自転可能なローターが公転軸の回転により遠心力が働き粉砕媒体を粉砕処理室の外周に押しつけながら、被粉砕物に強力な磨り潰しのせん断力を与えることにより微粉砕化することができる。
【0018】
また、本発明は、湿式粉砕(被粉砕物を適量の液体と共に粉砕する方法。)の場合は、粉砕処理室のみの粉砕であり分級処理室を設けなくとも、外部から気体を送入しなくとも、粉砕処理室の適当な位置に粉砕媒体と被粉砕物の分級スリットを設けることにより、連続的にも非連続的にも使用可能である。
【0019】
また、該自転可能なローターは、粉砕媒体に強制的な力を与えることができる形状としてローターの表面が滑らかな円柱状に限らず、図2に示すようにギヤー型または波型の形状を有することもある。
【0020】
粉砕処理室の外部から送入される気体の送入口の位置は、粉砕処理室の底部分の外周もしくは公転軸の近くであり、粉砕媒体や被粉砕物によって送入口を損なわないこととする。
【0021】
本発明の粉砕処理室の外周に該自転可能なローターの遠心力により粉砕処理室の摩耗を防ぐために粉砕処理室の内側の粉砕壁(9)に耐摩耗材のライニングをすることがある。また、粉砕処理室の底板(9a)にも耐摩耗材をライニングすることがある。
【0022】
本発明の粉砕装置は、被粉砕物により粉砕処理室及び分級処理室、自転可能なローターその他被粉砕物が接触する部分をテフロン(登録商標)、ウレタン、ナイロン等のプラスチックでライニングすることにより、粉砕による金属等の不純物の含有を防ぐことができる。
【0023】
また、被粉砕物によっては、粉砕処理室の内側及び底板をジルコニア、アルミナ、等のセラミックでライニングをし、自転可能なローターも同様にジルコニア、アルミナ、等のセラミックを使用し、また粉砕媒体も同様にジルコニア、アルミナ、等のセラミックや、ナイロン、テフロン(登録商標)等のプラスチックか、またはナイロン、テフロン(登録商標)等のライニングをして使用することにより粉砕による金属等の不純物の含有を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
次に本発明を、一実施形態に基づいて、詳細を説明する。
【0025】
本実施形態の粉砕装置の全体構造の概略を、図1に示す。
【0026】
本発明の粉砕装置(19)は、粉砕媒体(11)を充填された粉砕処理室(6)に投入口(4)から投入された被粉砕物は、機外の本体用モーター(14)の動力が伝達装置(13)を介して公転軸(7)から懸垂腕(8)に取り付けられた自転可能なローター(10)を回転することにより、粉砕媒体(11)間の強力な遠心力により磨り潰しのせん断力と該自転可能なローターによる撹拌力を得て粉砕され、粉砕された被粉砕物を外部から送入された気体(12)により分級処理室(3)に持ち上げられる。
【0027】
そして、持ち上げられた被粉砕物は、分級用モーター(1)の動力により目的とする粒度の微粉を分級装置(2)によって分級され配管ダクト(16)から吸引ブロワ−(18)にて捕集装置(17)に製品として捕集される。
【0028】
一方、目的より大きい粒度の被粉砕物は、分級され粉砕処理室(6)に落され再び、粉砕処理室(6)でさらに粉砕される。また粉砕された被粉砕物は外部から送入された気体(12)により分級処理室(3)に持ち上げられ、目標とされる粒度の微粉は、外部の捕集装置(17)で捕集される。これを繰り返すことにより被粉砕物が連続的に処理される。
【0029】
またより強力な圧縮力を得るために、該自転可能なローター(10)の表面を滑らかな表面から、図2に示すギヤー状(波状)にすることにより粉砕媒体(11)を押しつける力が、より大きくなり粉砕効率が上がり、微粉を多く得ることができる。
【0030】
従来の粉砕機は、例えばローラーミルであれば回転テーブルとローターで粉砕し、外部からの気体を送入することにより分級処理室の分級装置により分級し外部の捕集装置で目的粒度の製品を捕集するが、粉砕媒体を有さないことで粉砕媒体による強力な磨り潰しのせん断力がなく、より細かな微粉を効率よく得ることができない。
【0031】
また湿式粉砕においても従来の撹拌媒体ミルの粉砕媒体を撹拌媒体ミルの低板と平行に回転する撹拌バ−で撹拌する方法では、本発明の遠心力を利用した該自転可能なローターによる強力な押し付け力による磨り潰しのせん断力を得ることはできない。
【0032】
その上本発明の粉砕装置において、該自転可能なローター(10)を図2のように該自転可能なローターの表面をギヤー状にすることにより、該自転可能なローターと粉砕媒体の回転抵抗を大きくすることでそれらの摩擦及び圧縮力を強くし、強力な磨り潰し力により細かな微粉を得ることができる。
【0033】
本発明の粉砕装置は、木材を10μm以下に効率よく粉砕し、バイオエタノ−ルの製造の前処理粉砕機として大いに貢献される。また二次電池材料等の金属酸化物の粉砕や、トナ−材料等の有機顔料やその他電子材料等の酸化チタン、アルミナ、ジルコニア、その他セラミック、金属、無機物、有機物などの微粉砕の効率のよい粉砕機として大いに利用される。
【0034】
従来の粉砕媒体を利用した微粉砕機には、胴体を回転させるボ−ルミルや胴体を振動させる振動ミルがあるが、ボ−ルミルは胴体が回転し、振動ミルは胴体が振動するために設備環境が悪くなることがある。
【実施例】
【0035】
以下、本発明の効果を確認するために行った、実施例について、説明する。
【0036】
ここで、本発明の粉砕機のテスト機の概略仕様、
粉砕処理室:直径440mm、高さ300mm、容量45.5L
自転可能なローター:直径100mm、高さ150mm
自転可能なローターの数:4個
自転可能なローターの公転の回転数:100rpm
粉砕媒体材質:鋼球
粉砕媒体の大きさ:直径2mm
粉砕媒体の充填重量:54kg
モーター動力:2.2kW
【0037】
上記のテスト機の仕様で粉砕テストをした結果を示す。
被処理物:シリカ
被処理物の粒度:150μm以下
被処理物の供給量 :12kg/hr
捕集装置にて捕集された製品の粒度;12μmを約100%得た。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施形態の粉砕装置の図である。
【図2】本発明の粉砕処理室の図である。
【図3】本発明の自転可能なローターの図である。
【図4】従来の撹拌バ−による粉砕機の図である。
【図5】本発明のテスト機による粉砕デ−タ−の図である。
【符号の説明】
【0039】
1 分級用モーター 11 粉砕媒体
2 分級装置 12 送入される気体
3 分級処理室 13 伝達装置
4 投入口 14 本体用モーター
5 排出口 15 本体架台
6 粉砕処理室 16 配管ダクト
7 公転軸 17 捕集装置
8 懸垂腕 18 吸引ブロワ−
9 粉砕壁 19 粉砕装置
10 自転可能なローター
1a 分級機用軸
7a 公転軸受け
9a 粉砕室の底板
17a 捕集装置排出バルブ




















【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉砕媒体(11)を撹拌するために複数の自転可能なローター(10)を粉砕処理室(6)の底部からの公転軸(7)に直角方向に取り付けられた懸垂腕(8)に取り付け、該公転軸(7)を本体用モーター(14)から伝達された動力で回転させることにより、公転と自由な自転をさせることにより、投入口(4)及び排出口(5)を有する該粉砕処理室(6)に投入された被粉砕物を粉砕することを特徴とする粉砕装置。
【請求項2】
粉砕媒体を撹拌するために複数の自転可能なローターを粉砕処理室の底部からの公転軸に直角方向に取り付けられた懸垂腕に取り付け、該公転軸を外部の本体用モーターから伝達された動力で回転させることにより、公転と自由な自転をさせ、該粉砕処理室に連続的に投入された被粉砕物を粉砕し、外部から送入された気体(12)により該粉砕処理室の上部に取り付けられた分級処理室(3)の分級装置(2)で分級され、処理室の機外に取り付けられた捕集装置(17)により捕集することを特徴とする粉砕装置。
【請求項3】
粉砕媒体を撹拌するために複数の自転可能なローターを粉砕処理室の底部からの公転軸に直角方向に取り付けられた懸垂腕に取り付け、該公転軸を外部の本体用モーターから伝達された動力で回転させることにより、公転と自由な自転をさせ、投入口及び排出口を有する該粉砕処理室に投入された液分を含んだ被粉砕物を粉砕することを特徴とする粉砕装置。
【請求項4】
粉砕媒体を撹拌するために複数の自転可能なローターを粉砕処理室の底部からの公転軸に直角方向に取り付けられた懸垂腕に取り付け、該公転軸を外部の本体用モーターから伝達された動力で回転させることにより、公転と自由な自転をさせ、該粉砕処理室に連続的に投入された被粉砕物を粉砕し、外部から送入された熱風により被粉砕物を乾燥し、また該粉砕処理室の上部に取り付けられた分級処理室の分級装置で分級され、処理室の機外に取り付けられた捕集装置により捕集することを特徴とする粉砕装置。
【請求項5】
該粉砕装置において自転可能なローターの表面をギヤー形状(波形状)とすることを特徴とする請求項1〜4記載の粉砕装置。
【請求項6】
該粉砕装置において粉砕媒体の直径を10mm以下とすることを特徴とする請求項1〜5記載の粉砕装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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