説明

粉砕装置

【課題】被粉砕材料を効率的に衝撃を与えて粉砕し同時に乾燥も可能であり、排出しやすい構造を有する粉砕装置を提供することを目的とする。
【解決手段】粉砕装置1は、上辺が大きい逆円錐台形状の粉砕空間2cを有するハウジング20と、粉砕空間2c内に上下方向に間隔を隔てて設けられる複数のブレード31を有し、ハウジング20に回転自在に保持される回転軸部30と、粉砕空間2cを区画するハウジング20の内周面に刃先が突出するようにハウジング20に固定された複数の固定刃29と、回転軸部30を回転駆動するモータ40とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、有機材料を粉砕する粉砕装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転翼を備えた粉砕装置が提案されている。例えば、特許文献1には、図12、13に示すような粉砕装置が開示されている。この粉砕装置は、横置き型のもので、粉砕室100内に、回転翼101を有する回転軸100を備え、粉砕室100内に投入されたプラスチック等の被粉砕材料103を回転翼101により叩打し粉砕する(尚、回転軸100を駆動させる駆動部等は省略してある。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−210156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、かかる構成では、粉砕室100の下方側、いわゆる底側に被粉砕材料103が溜まりやすく十分に粉砕できない場合や底側に溜まった被粉砕材料を排出しにくいという問題がある。
【0005】
本発明は、上述した問題点に鑑みてなされたものであり、被粉砕材料を効率的に衝撃を与えて粉砕し、粉砕されたものを容易に排出できる粉砕装置、更には、粉砕時に発生する熱で粉砕されたものを乾燥させることができる粉砕装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた本発明の粉砕装置は、上辺が大きい逆円錐台形状の粉砕空間を有するハウジングと、前記粉砕空間内に上下方向に間隔を隔てて設けられる複数のブレードを有し前記ハウジングに回転自在に保持される回転軸部と、前記粉砕空間を区画する前記ハウジングの内周面に刃先が突出するように前記ハウジングに固定された固定刃と、前記回転軸部を回転駆動する駆動部とを有することを特徴とする。
【0007】
この粉砕装置において、前記ハウジングは、前記粉砕空間を区画する内周面に開口する被粉砕材料を導入する導入部と、前記材料が粉砕されて排出される排出部とを有するものとすることができる。これら導入部および排出部は内周面の下方および上方にそれぞれ設けることが好ましい。また、導入部を排出部に対して円周方向に約90°の角度で離間して下方に位置し、排出部は上方に位置するものとすることができる。
【0008】
導入部および排出部は、、閉じた状態で粉砕空間を気密的に密封するものとするのが好ましい。導入部では、粉砕空間に導入する被粉砕材料を気密を保つために利用しても良い。
【0009】
前記固定刃は棒状とし、前記ハウジングの内周面側上下方向に延びる方向に固定するのが好ましい。また、前記固定刃は、複数個、前記ハウジングの内周面に、周方向に等間隔で、固定するのが好ましい。
【0010】
前記ブレードは、前記回転軸部に上下方向にスペーサを介在させて固定するのが好ましい。また、前記粉砕空間の下方側にあるブレードは、遠心方向に延びる上側面が回転先端側から後端側に上方向に傾斜する傾斜面を持つものとするのが好ましい。逆に、前記粉砕空間の上方側にあるブレードは、遠心方向に延びる下側面が回転先端側から後端側に下方向に傾斜する傾斜面を持つものとするのが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の粉砕装置によれば、ハウジングの粉砕空間内に設けられた複数のブレードは、この粉砕空間内に投入された被粉砕材料を叩打して衝撃を与えて粉砕することができる。また、ブレードが被粉砕材料を粉砕空間を区画するハウジングの内壁に配設された複数の固定刃に押圧させて切断し粉砕することができる。そして、被粉砕材料はブレードの叩打、衝撃、固定刃および内周面との摩擦により加熱される。被粉砕物が水を含む有機物等の場合、発生する熱で被粉砕物自体に含まれる水を蒸発させて乾燥させることができる。
【0012】
この粉砕装置において、前記ハウジングは、前記粉砕空間を区画する内周面の開口する被粉砕材料を導入する導入部と、粉砕されたものを排出する排出部とを有するものとすることができる。導入部と排出部を設けることにより、被粉砕物の投入排出が容易となり作業性が高くなる。さらに、前記導入部を前記排出部に対して円周方向に約90°の角度で離間して下方に位置し、前記排出部は上方に位置するものとすることにより、より作業性が高くなる。
【0013】
また、回転軸部が垂直方向に延びる、いわゆる縦型の粉砕装置であるため設置面積が少なくなる利点もある。
【0014】
また、導入部および排出部は、閉じた状態で粉砕空間を気密的に密封するものとすることにより、密閉された粉砕空間内の空気、被粉砕物から出る水蒸気等で、粉砕空間を高圧とすることができ、この圧力を利用して、粉砕された材料を排出部より噴出的に導出することが可能となる。
【0015】
前記固定刃を棒状とし、前記ハウジングの内周面側上下方向に延びる方向に固定して使用するものとすれば、1本当たりの固定刃の刃の部分の長さを長くすることができる。また、前記固定刃は複数個、前記ハウジングの内周面に、周方向に等間隔で、固定するのが好ましい。全体の固定刃の刃の部分が増え、それだけ粉砕効率が高くなる。
【0016】
前記ブレードは、前記回転軸部に上下方向にスペーサを介在させて固定するのが好ましい。スペーサの上下方向の長さを変えたものを使用することにより、固定されるブレードの位置を上側あるいは下側に任意の位置で回転軸部に固定できる。固定刃はの先端は上側ほど回転軸の軸心より離れた位置にあるため、ブレードを上側に固定すると、固定刃の刃先先端とブレードの遠心側先端との間隔が開くことになる。すなわち、スペーサの上下方向の長さを変えることにより、同じブレードを用いて、固定刃の刃先先端とブレードの遠心側先端との間隔を任意に調節することが可能となる。
【0017】
前記粉砕空間の下方側にあるブレードは、遠心方向に延びる上側面が回転先端側から後端側に上方向に傾斜する傾斜面を持つものとするのが好ましい。これによりこのブレードで被粉砕物を粉砕しつつ粉砕空間の上方向に移動させることができる。さらに、前記粉砕空間の上方側にあるブレードを、遠心方向に延びる下側面が回転先端側から後端側に下方向に傾斜する傾斜面を持つものとすると、このブレードで被粉砕物を粉砕しつつ粉砕空間の下方向に移動させることができる。これら2種類のブレードを用いることにより被粉砕物を粉砕空間内で上下方向に撹拌させることができ、粉砕がより効果的となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態の粉砕装置の正面図である。
【図2】実施形態の粉砕装置の平面図である。
【図3】実施形態の粉砕装置の要部を断面(図2のA−A線断面)とした正面図である。
【図4】実施形態において回転軸部に固定されるボスとブレーとを示す平面図である。
【図5】実施形態の粉砕装置の回転軸部の断面図である。
【図6】実施形態におけるハウジングにおいて、(a)は要部断面図(図3のB−B線断面)を、(b)は固定刃付近の拡大図である。
【図7】実施形態におけるハウジングの底面図である。
【図8】実施形態におけるハウジングの平面図である。
【図9】実施形態のハウジングにおいて、(a)は右側面図を、(b)は左側面図である。
【図10】実施形態におけるハウジングの断面図(図2のA−A線断面)である。
【図11】実施形態の変形例のブレードの平面図である。
【図12】従来の粉砕装置の粉砕室を模式的に示す断面図である。
【図13】従来の粉砕装置の粉砕室の垂直断面図(図12のC−C線断面)である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の粉砕装置を具体化した実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明の実施形態である粉砕装置1を正面視にて示す全体構成図である。図2は、粉砕装置1を上方から視た平面図である。図3は、粉砕装置1のハウジング2の要部断面図(図2のA−A線断面)である。図4は、ブレード31をボス32に取り付けた状態の平面図である。図5は、粉砕空間2c内に位置する回転軸部30の断面図である。
【0020】
粉砕装置1は、図1〜3に示すように、上辺が大きい逆円錐台形状の粉砕空間2cを有するハウジング20と、複数のブレード31を有し、ハウジング20に回転自在に保持される回転軸部30と、粉砕空間2cを区画するハウジング20の内周面に固定された複数の固定刃29と、回転軸部30を回転駆動するための駆動部としてのモータ40とを主体として構成されている。
【0021】
ハウジング20は、内部に回転軸部30が配設されて第1架台5上に設置され、第2架台6上に設置されたモータ40に隣接している。ハウジング20は、一端側から他端側に内径が増大する筒形状を軸心を通る面で2個に分断した半円筒部材21、22とを持ち、それらを合わせて内部に上辺が大きい逆円錐台形状の粉砕空間2cを形成している。ハウジング20の円板形のフランジ2b上面に天蓋27が固定されている。
【0022】
粉砕空間2c内の逆円錐形の傾斜角度、すなわち図10に示す垂直線Mと内壁との角度は、約3°で形成されている。図9(a)、(b)は、半円筒状部材21、22をそれぞれ横から見た側面図を示している。2つの半円筒部材21、22とをフランジ22a、21aが密接するように合わせ、各締結孔26aに締結部材26を用いて締結し、一体となったハウジング20の円筒形状が形成されている。尚、図9(a)では、導入管23bと排出管24bとを省略した状態で、導入部23、排出部24の開口を楕円の点線にて示されているが、これは半円筒状部材22が曲面で形成されており横から見ると楕円に見えるためである。
【0023】
また、半円筒状部材22の側面には、圧力を計測するための圧力計用穴8aと温度を計測ための温度計用穴9aとが設けられている。それぞれの穴を通して圧力、温度を計測する。圧力計8や温度計9を取り付ける際は、ハウジング20内の気密性を保つように取り付けられる。圧力計8及び温度計9は、一般的なものであり詳細な説明は省略する。
【0024】
ハウジング20は、被粉砕材料をブレード31で叩打し、被粉砕材料が内壁に衝突するので耐衝撃性を備える。また、ハウジング20は、粉砕空間2c内を高温にし、液体を含有する被粉砕材料を乾燥させることが可能なように耐熱性を備える。
【0025】
ハウジング20は、粉砕空間を区画する内周面の下方に開口する被粉砕材料を導入する導入部23と、内周面の上方に開口する被粉砕材料が粉砕されて排出される排出部24とを有する。導入部23と排出部24は、ハウジング20の半円筒状部材22側に設けられている。
【0026】
導入部23は、被粉砕材料を導入する導入管23bがハウジング20の外部へ向けて設けられる。また、排出部24は、ハウジング20から被粉砕材料を排出する排出管24bがハウジング2の外部へ向けて設けられる。そして、図8に示すように、導入部23は排出部24に対して円周方向に約90°の角度で離間して下方に位置し、排出部24は上方に位置する。このような構成によって、導入管23bや排出管24b側の周辺にスペースを確保することができる。また、導入部23に被粉砕材料を送り込み、粉砕され、乾燥した被粉砕材料を効率的に排出部24を経て排出管24bから排出させることができる。
【0027】
導入管23bの端には円板状のフランジ23aが、排出管24bの端には円板状のフランジ24aが形成され、フランジ23a、24aは他の管との継手として利用される。尚、導入管23b、排出管24bは、図示しない蓋又は被粉砕材料を導入・排出させるための装置等がそれぞれのフランジ23a、24a側に開閉可能に設置されており、粉砕装置1が稼働中は、密閉された状態に保たれる。そして、導入部23は、導入管23b管内に螺旋状のスクリュー(図示せず)が設けられる。この螺旋状のスクリューによって、被粉砕材料をハウジング20内の粉砕空間2cへと送り込むことができる。
【0028】
第1架台5は、ハウジング20の下端の円板状のフランジ2a下面と第1架台5の上板5a上面とが、気密性を保たれるように構成される。そして、第1架台5の上板5aには回転軸部30を通す挿通孔が設けられおり、回転軸部30がこの孔を通して支持部6に支持されている。支持部6は、回転軸部30を支持するために、第1架台5の上板5aの裏側に設けられ、内部に軸受61(ボールベアリング等)が設置されている。51は脚部である。
【0029】
回転軸部30は、ハウジング20の粉砕空間2c内の中心軸上に配置されている。回転軸部30の上方の端部は天蓋27の上エンドプレート28に回転自在支持され、下方の端部は、支持部6に回転自在に保持され、支持部6寄り下方に突出した部分にプーリー7が固定されている。
【0030】
回転軸部30は、粉砕空間2c内に上下方向にスペーサ39により間隔を隔てて設けられる複数のブレード31を有する。回転軸部30には、図3、図4に示すように、7個のブレード31がそれぞれボス32を介して固定されている。
【0031】
7個のブレード31は、スペーサ39によって上下のブレード31間が一定の距離で隔てられ、ブレード31が左右交互の向きになるように組み合わせて配設されている。例えば、一番下方のブレード31は右側に位置し、下から2番目のブレード31は左側に位置している。
【0032】
そして、複数のブレード31は、回転軸部30の軸方向に対して垂直に取り付けられている。各ブレードは、板状の矩形をし、ハウジング20の下方から上方へ向かうにつれて、ハウジング2の内壁に合わせて近接するように幅Lが徐々に長くなっている。ブレード31の広い方の面である面31aに被粉砕材料が当接することになる。
【0033】
7個のブレード31は、粉砕空間2c内の上方にある2個と、中間にある3個と、下方にある2個の3種類のブレードからなる。上方のブレードは、回転により被粉砕材料を回転の先端側方向と共に下方に送る下方へ向けて傾斜した傾斜面31aを持つ。中間のブレードは、回転により被粉砕材料を主として回転の先端側方向に送るもので、上下の一方が他方よりより傾斜したような傾斜面を持たない。下方にある2個のブレードは回転により被粉砕材料を回転の先端側方向と共に下方へ送るを上方へ向けて傾斜させた傾斜面31aを持つ。
【0034】
なお、傾斜面31aをもつブレード31の上下方向の配列は、例えば、下から一番目のブレード31の面31aを上方へ向けて傾斜させ、下から2番目のブレード31の面31aを下方へ向けて傾斜させる。そして、下から3番目のブレード31の面31aを上方へ向けて傾斜し、下から4番目のブレード31の面31aを下方へ向けて傾斜させる。以後、同様に、隣接する上下のブレード31で面31aが向かい合わせとなるように対として構成させる(対にできなかった余りのブレード31の場合は、例えば、下方へ向けて傾斜させる)こともできる。このように隣接するブレード31の面31aの向きを上向き又は下向きの傾斜状態で構成することにより、下のブレード31により叩打された被粉砕材料が上方へはじき飛ばされ、上のブレード31により叩打された被粉砕材料が下方へはじき飛ばされて、被粉砕物同士が衝突し衝撃により粉砕する。また、回転するブレード31の傾斜の面31aが、粉砕空間2c内に乱気流を発生させ、被粉砕材料同士が衝突し、衝撃により粉砕する。
【0035】
また、図3に示したスペーサ39は、軸方向長さを全て同じ長さのものを用いたが、スペーサ39の軸方向長さをより長くしたもの又はより短くしたものを組み合わせてもよい。例えば、下から一番目のブレード31と、下から2番目のブレード31との間のスペーサ39の軸方向長さをより長くしたものを用いた場合、下から2番目のブレード31は、より軸方向高さが高くなる。よって、粉砕空間2cが逆円錐台形状であるので、下から2番目のブレード31の径方向外側の端部と内壁との隙間を広く調整できる。スペーサ39の軸方向長さを短くした場合は、隙間が狭く調整される。尚、ブレード31と内壁と、又はブレード31と固定刃29とが接しないように適宜、ブレード31の幅Lを調整するか、スペーサ39の軸方向長さを調整する必要がある。
【0036】
すなわち、スペーサ39の軸方向長さをより長くしたもの又はより短くしたものを組み合わせることにより、複数のブレード31間の上下方向の間隔を変更してブレード31の軸方向高さを調整することが可能となり、容易にブレード31と固定刃29とのギャップを調整することができる。また、被粉砕物の表面積を大きくすることで粉砕と同時に乾燥させる効率を高めることができる。尚、複数のスペーサ39は、軸方向長さの異なるスペーサ39を用いた場合、粉砕空間2c内に収まるようにそれぞれのスペーサ39の軸方向長さを組み合わせて用いるものとする。
【0037】
ブレード31は、図4に示すように、雄ネジ33の一端に固定され、ナット34を通して他端33aがボス32に取り付けられる。ボス32は、中央が空いた孔35を有し、ドーナツ状の内側に6個の凹部35aを備える。このボス32の孔35に回転軸部30を挿入し、ブレード31が回転軸部30に取り付けられることになる。回転軸部30は、図5に示すように、ボス32を取り付ける部分の断面が、側面に凸形状をした6個の凸部30aを有している。この凸部30aが、ボス32の凹部35aにそれぞれ係合するようになっている。そのため、この回転軸部30が凸形状を有することにより、ブレード31が被粉砕材料を叩打する際の衝撃でボス32が空回りを防止することができる。尚、図4に示したブレード31は被粉砕材料と接する側の面31aを軸方向に平行としたものであり、回転軸部30に配設される際は傾斜している。
【0038】
なお、ブレードとボスとを一体的に形成しても良い。さらに、1個のボスに両側にそれぞれ1個のブレードを設けても、1個のボスに対して3個以上のブレードを設けても良い。
【0039】
図6(a)は、図3のB−B断面線における断面図であり、ハウジング20を上方から視た状態を示す。固定刃29は、ブレード31によって叩打されて飛ばされて来た被粉砕材料又は押圧された被粉砕材料を切断し粉砕する。固定刃29は、ハウジング20の内壁の内周に設けられた溝2eに配設されている。固定刃29は、図6(b)に示すように、鋭利な刃物部分である刃部29aと軸部29bとナット29cとからなる。固定刃29は、軸部29bの一端に刃部29aを固定し、溝2e部分に軸部29bが嵌挿できる孔を通してナット29cにより固定されている。尚、固定刃29の数は、特に限定されるものではなく、例えば、周当たり4個でもよいし、8個でもよく、溝2eも4個、8個となる。
【0040】
溝2eは、周方向に対して角60°の等間隔でハウジング20の内壁の内周に設けられている(図7参照。)。溝2eは、固定刃29の刃先が突出する程度の深さで形成される。尚、固定刃29は、図6(a)に示した箇所だけでなく、他に軸方向に対して5箇所、合計で、36個の固定刃29がハウジング20の内壁の内周の溝2eにそれぞれに設けられている。なお、固定刃は、粉砕される被粉砕材料あるいは粉砕条件等に合わせて、その形状、大きさ等を変えたものとすることができる。
【0041】
蒸気抜弁10は、粉砕空間2c内で発生した蒸気(例えば、液体を含有する被粉砕材料が気化した場合)を必要に応じて排出する。そして、発生した蒸気を冷却する配管・装置等(図示せず。)を取り付けることにより被粉砕材料に含まれる成分を液状化して収集することが可能である。
【0042】
11はシリンダー、11aはシリンダー座、12はバタフライバルブである。圧縮空気投入口2dは、ハウジング20下方に2箇所設けられ、高温の蒸気や圧縮空気を周方向の正逆方向何れにも投入するための投入口である。粉砕装置1の起動初期あるいは設置された室内の気温が低い場合などに、ハウジング20内に蒸気や圧縮空気を投入することにより、粉砕空間2c内の発熱と蒸発を促進し、生産性を上げることができる。また、ハウジング20内を洗浄することにも使用できる。
【0043】
モータ40は、第2架台6に設置されており、モータ40に設けられたプーリー41につながれたタイミングベルト43より回転軸部30のプーリー7に動力を伝え回転軸部30を回転させる。尚、プーリー41とプーリー7との高さ位置は、タイミングベルト43が正常に機能するためにほぼ同じ位置となるように設置されている。
【0044】
次に、本実施形態の粉砕装置1の粉砕、乾燥方法について説明する。被粉砕材料として、おからを例とする。ここで説明するおからは、家庭で食する豆腐の製造過程で発生する大豆のしぼり残った物である。尚、被粉砕材料は特におからに限定されるものではなく、生ゴミや汚泥などの処理に用いてもよい。廃棄処理においておからは、多くの水分(含有水分率が約80〜85%)を含んでおり重く、腐りやすいため運搬や焼却に手間とコストがかかる。そこで、本実施形態の粉砕装置1により、おからを粉砕し同時に乾燥させることにより、細かくなり水分も蒸発することで長期保存が可能となる。
【0045】
粉砕装置1は、ハウジング20内が密閉状態においておからをブレード31で叩打することにより衝撃でおからが発熱し、粉砕空間2c内の温度が上昇し、おからの水分を蒸発させるメカニズムを利用するものである。つまり、この粉砕装置1は、回転軸部30をモータ40により回転させ、おからを導入した後、密閉状態にし、ブレード31によりおからを粉砕、乾燥させて、粉砕空間2c内の上昇した圧力を利用しておからを外部に排出させるというプロセスを繰り返す。いわゆるバッチ式の工程を連続的に行い、粉砕にともなう発熱で水分を蒸発させて乾燥を同時に行う装置である。
【0046】
始めに、ハウジング20の天蓋27、導入管23b、排出管24b、蒸気抜弁10を閉じ、密閉状態にし、モータ40を駆動させて、回転軸部30を回転させる。次に、導入管23bのスクリューを駆動させ、おからを少しずつ導入部23の開口側から粉砕空間2c内へ投入する。
【0047】
粉砕空間2c内に少しずつおからが投入されると、回転しているブレード31(導入部23の開口に近い下方側)がおからを削り取り叩打し粉砕し始める。尚、ブレード31の回転速度は、周速20〜40m/sである。一定量(約6リットル)のおからを投入した後、スクリュウの回転を止めおからの投入を停止する。この状態でし導入管23bは導入されるおからで満たされ、導入管は気密状態となり、粉砕空間2cと外気とは閉じられる。なお、ハウジング20の粉砕空間2cの容積は約25リットルであり、その約4分の1の量のおからが導入管23bより導入される。
【0048】
おからは、ブレード31と固定刃29とにより細かく切断、粉砕されながら、ブレード31が叩打し衝撃を与えることで熱が発生し、粉砕空間2c内の温度が急速に上昇する。粉砕空間2c内の温度が約100℃になると水分が蒸発し始め、おからから水分が除かれ乾燥が進むと共に粉砕空間2c内の圧力も上昇していく。
【0049】
圧力計で圧力を確認し所定時間経過後、排出管24bを開けると、粉砕空間2c内の圧力が一気に開放され、粉砕されて乾燥したおからが外部へ圧力によって排出される。これは、穀類膨張機(いわゆるポン菓子製造)にみられるような現象と同じである。そして、おからの排出後は、また、排出部24の排出管24bを閉じ、上述のプロセスを繰り返す。粉砕装置1の起動から乾燥したおからの排出までの所用時間は、粉砕装置1が設置された室内の気温や被粉砕材料等により異なるが、約2〜5分間程度である。この粉砕装置1を用いることで、おからに含まれる水分は約8%程度にまで乾燥させることができ、長期保存が可能となる。
【0050】
以上詳述したことから明らかなように、本実施形態によれば、ハウジング20内に設けられた複数のブレード31が、ハウジング20の粉砕空間2c内に投入された被粉砕材料を叩打して衝撃を与えて粉砕することができる。また、ブレード31が被粉砕材料を内壁に配設された複数の固定刃29に押圧させて切断し粉砕することができる。そして、被粉砕材料はブレード31が叩打し衝撃を与えることで熱を発生させ、粉砕空間2c内の温度を上昇させ、水分が蒸発することにより被粉砕材料を乾燥させることができる。更に、粉砕空間2c内で発生した圧力により被粉砕材料を効率よく排出部24から排出することができる。
【0051】
また、導入部23と排出部24を円周方向に約90°の角度で離間させることにより導入部23、排出部24の周辺に空いたスペースを確保することができる。また、導入部23に被粉砕材料を送り込み粉砕された被粉砕材料を効率的に上方の排出部24から排出させることができる。
【0052】
また、固定刃29は、ハウジング20の内周面に約60°の等間隔で複数個配置(全体で36個)されたことにより、ブレード31によって叩打されて飛ばされて来た被粉砕材料又は押圧された被粉砕材料を切断し粉砕することができる。
【0053】
更に、回転軸部30は側面に凸形状を有することにより、回転軸部30の凸部30aがボス32の凹部35aに係合し、ブレード31が被粉砕材料を叩打する際の衝撃により空回りを防止することができる。
【0054】
また、回転軸部30は、複数のブレード31の上下方向の間隔をスペーサ39の軸方向長さを変更することにより調整し、複数のブレード31の軸方向高さを調整することができるので、粉砕空間2cが逆円錐台形状において、ブレード31と内壁との隙間を調整することができる。
【0055】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を施すことが可能であることは云うまでもない。例えば、上述した実施例では、ブレード31は1つのボス32に対して1個となっているが、図11(a)、(b)に示すように、水平に対称としてブレード31を2個設けてもよく、120°の間隔で3個設けてもよい。このようにブレード31の数をボス32に対して増やすことによって、効率よく被粉砕材料を粉砕することができる。
【符号の説明】
【0056】
1:粉砕装置 20:ハウジング 23:導入部 24:排出部 29:固定刃 2e:溝
30:回転軸部 31:ブレード 32:ボス 39:スペーサ
40:モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上辺が大きい逆円錐台形状の粉砕空間を有するハウジングと、
前記粉砕空間内に上下方向に間隔を隔てて設けられる複数のブレードを有し、前記ハウジングに回転自在に保持される回転軸部と、
前記粉砕空間を区画する前記ハウジングの内周面に刃先が突出するように前記ハウジングに固定された固定刃と、
前記回転軸部を回転駆動する駆動部と
を有することを特徴とする粉砕装置。
【請求項2】
前記ハウジングは、前記粉砕空間を区画する内周面に開口する被粉砕材料を導入する導入部と、前記材料が粉砕されて排出される排出部とを有する請求項1に記載の粉砕装置。
【請求項3】
前記導入部と前記排出部は、前記粉砕空間を外気より気密的に閉じる構成としている請求項2に記載の粉砕装置。
【請求項4】
前記導入部は前記排出部に対して円周方向に約90°の角度で離間して下方に位置し、
前記排出部は上方に位置することを特徴とする請求項2又は3に記載の粉砕装置。
【請求項5】
前記固定刃は棒状であり、複数個の前記固定刃が、前記ハウジングの内周面に、周方向に等間隔で、かつ、それぞれの前記固定刃は上下方向に延びるように、固定されている請求項1又は2に記載の粉砕装置。
【請求項6】
前記回転軸部に上下方向に隣接して固定された前記ブレードの間にはスペーサが介在している請求項1に記載の粉砕装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−187524(P2012−187524A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−53752(P2011−53752)
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(592174154)和光技研工業株式会社 (9)
【Fターム(参考)】