説明

粉粒体の垂直輸送装置

【課題】 粉粒体の垂直空気輸送において、加圧タンク内に粉粒体が残存すること、及び、グラニュー糖を輸送すると結晶が破砕されるという問題の解決。
【解決手段】 加圧タンクと、加圧タンクの中心軸の位置に上方から下方に向かって挿入された内径dの輸送配管と、輸送配管の真下であってその下端から距離hだけ離れた位置に内径dの上端開口を有する輸送用加圧ガス配管と、輸送用加圧ガス配管の上端開口周辺から加圧タンク内壁まで延出し、水平に対して角度θで内側に向かって傾斜しているエアレーションプレートと、エアレーションプレートよりも上方に位置する加圧タンクの粉粒体投入口と、加圧タンク内のエアレーションプレートよりも下方に開口を有するエアレーション用加圧ガス配管とを備える粉粒体の垂直輸送装置であって、d/d=0.3〜0.6、h/d=0.3〜1.5、及び5°≦θ≦40°であることを特徴とする粉粒体の垂直輸送装置を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気等の気体を用いて粉粒体を垂直方向に輸送するための装置及びその装置を用いる粉粒体の垂直気体輸送方法に関する。本発明は、例えば食品工業や化学工業において、粉粒体を輸送する際に使用される。
【背景技術】
【0002】
粉粒体形状の食品、樹脂等の高分子材料、セメント等の無機材料の輸送方法の一つとして、垂直空気輸送が知られている。垂直空気輸送の原理は、エアレーションプレートを通じて供給される加圧空気を粉粒体と混合して固気混合物とし、その固気混合物を加圧空気によって上方に押し上げるというものである。現在までに、様々な粉粒体の垂直空気輸送が試みられているが、粉粒体の種類や性状によっては問題が生じることがあり、また、そのような問題を解決するための手段の提案もなされている。
【0003】
特許文献1には、微粉体を空気輸送する際の圧密化の問題を解決した微粉体の空気輸送方法及びそのための装置が開示されている。特許文献1に記載の発明の特徴は、エアレーション用加圧ガスが、容器の水平断面に対し70%以上の広い底部領域から供給される点にある。特許文献1に記載の発明では、エアレーション用加圧ガスの供給は、容器内に水平に配置されたエアレーション用プレートを通じて行なわれる場合に限定されず、例えば図3(c)には、容器の逆円錐台形状部分の内壁にエアレーションパイプを配した例が開示されている。なお、特許文献1に記載された装置においては、粉粒体が投入される容器には、エアレーション用加圧ガスのみが供給され、輸送用加圧ガスは供給されない。容器外において、別途、搬送ガスが供給される構成となっている。
【0004】
また、特許文献2には、コーヒー豆等の食品である粉粒体を垂直空気輸送するためのシューターであって、漏斗状をしたホッパーの底部中心位置にカップ状凹部が存在し、そのカップ状凹部の底部中心位置に空気吹出口が存在し、また、カップ状凹部の中心位置には輸送管が略垂直に立設されてなり、輸送管の下端開口部には、カップ状凹部に対向してラッパ状吸込管が取り付けられている粉粒体用シューターが開示されている。特許文献2に記載のシューターには、エアレーション用プレートはない。即ち、空気吹出口から吹き出される空気のみによって、粉粒体が垂直輸送されるのである。また、特許文献2には、カップ状凹部とラッパ状吸込管との間に形成される間隙部の幅Wや上下方向の離間距離Hが、自在に調整できる例が記載されている(請求項2)。さらに、空気吹出口部分の径が絞られ、それによって送風機から送られてくる空気流を加速するようにした例も記載されている(請求項3)。
【0005】
さらに、特許文献3及び4には、湿潤した粉粒体であっても加圧タンク内に残留することなく完全に輸送することができる粉粒体の空気輸送方法及び装置が開示されている。特許文献3及び4に記載されている装置の特徴は、(1)加圧タンクの外壁に加振機が取り付けられていること、(2)濾布又は多孔板が加圧タンク内を上下室に仕切っており、その上方は加圧タンク内壁に取り付けられ、下方は小径をなす閉じた漏斗状となっており、その漏斗の頂角は90°以下とする(従って漏斗の斜面の傾斜角は45°以上である)こと、(3)上部室内の漏斗状濾布又は多孔板の下端の小径部近くに下面が開口した排出管が、加圧タンクの鉛直中心軸に一致して設けられていること、及び(4)下部室には、圧縮空気供給管に接続された多数の空気噴出孔を有する環状管が配されていることである。なお、特許文献3及び4に記載の装置においては、空気噴出孔から噴出される空気は、粉粒体の流動化と粉粒体の輸送の両者に用いられている。また、粉粒体の流動化は、加振及び空気によって生じており、これらに加えて粉粒体の自重と濾布又は多孔板の斜面の傾斜により、粉粒体は排出管の開口付近に運ばれている。
【0006】
【特許文献1】特開平4−272030号
【特許文献2】特開2002−68473号
【特許文献3】特開平6−107334号
【特許文献4】特開平7−304518号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、現今では、様々な粉粒体が垂直空気輸送されている。そのような中で、加圧タンク内に粉粒体が多量に残存するという問題が生じた。特に、輸送される粉粒体が食品や医薬品である場合には、加圧タンク内における粉粒体の残存量がゼロとなることが好ましい。特許文献3及び4には、当該文献に記載の装置を使用すると加圧タンク内に粉粒体が残存しない旨の記載があるが、この装置では加振機が必須である。
【0008】
また、グラニュー糖の垂直空気輸送においては、加圧タンク内における残存量をゼロとするために輸送用加圧ガスの流量を大きくすると、結晶が破砕され、光沢を示さなくなる、即ち商品価値が著しく損なわれるという問題が生じた。
【0009】
本発明は、空気等の気体を用いた粉粒体の垂直輸送装置であって、加振機を装着することなく、加圧タンク内における粉粒体の残存量をゼロ又は著しく少なくすることができる装置の提供を目的とする。また、本発明は、グラニュー糖等の強度に乏しい粉粒体であっても、破砕することなくほぼ全量を輸送することができる粉粒体の垂直気体輸送方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討し、本発明を完成させた。
【0011】
即ち、第一の発明は、加圧タンクと、加圧タンクの中心軸の位置に上方から下方に向かって挿入された内径dの輸送配管と、輸送配管の真下であってその下端から距離hだけ離れた位置に内径dの上端開口を有する輸送用加圧ガス配管と、輸送用加圧ガス配管の上端開口周辺から加圧タンク内壁まで延出し、水平に対して角度θで内側に向かって傾斜しているエアレーションプレートと、エアレーションプレートよりも上方に位置する加圧タンクの粉粒体投入口と、加圧タンク内のエアレーションプレートよりも下方に開口を有するエアレーション用加圧ガス配管とを備える粉粒体の垂直輸送装置であって、
/d=0.3〜0.6、
h/d=0.3〜1.5、及び
5°≦θ≦40°
であることを特徴とする粉粒体の垂直輸送装置に関する。
【0012】
エアレーションプレートは、輸送用加圧ガス配管の上端から加圧タンク内壁まで延出していることが好ましい。
【0013】
また、第二の発明は、第一の発明に係る粉粒体の垂直輸送装置を用い、1乃至90m/分の流量で輸送用加圧ガスを供給して嵩比重が4.0以下の粉粒体を垂直輸送することを特徴とする粉粒体の垂直気体輸送方法に関する。ここでいう「嵩比重」とは、ホソカワミクロン社製パウダーテスターにより測定した「ゆるみ嵩比重(疎充填嵩比重)」を指す。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、輸送終了後に加圧タンク内における粉粒体の残存量ゼロが実現され得る。従って、輸送終了後に加圧タンク内部の洗浄を行わなくとも、次回の輸送の際に残存によって品質が劣化した粉粒体の混入が防止され、また、異なる種類の粉粒体を順次輸送した場合にも、コンタミネーションが生じ難い。
【0015】
また、本発明により、輸送される粉粒体が強度に乏しいものである場合にも、破砕等を生じずにほぼ全量を輸送することが可能となる。その結果、従来は品質劣化を生ずるという理由で垂直空気輸送を適用できなかった粉粒体にも、垂直空気輸送を適用することができるようになる。
【0016】
さらに、本発明では、ロータリーバルブを使用しないので、加圧タンクにおける加圧ガスの洩れが生じない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明を、図面に示す好適例に基づいて具体的に説明する。図1は、本発明の粉粒体の垂直輸送装置を含む、粉粒体の輸送システムの一態様を示す模式的線図である。
【0018】
輸送される粉粒体は、粉粒体供給ホッパAに充填される。充填が終了した後、供給バルブa1が開かれ、粉粒体は、輸送管a2を通ってリフトタンクB、即ち粉粒体の垂直輸送装置に連続的に供給される。供給バルブa1の開放とほぼ同時期に、ブロワCから、エアレーション用加圧ガス(パイプb1を通過)と輸送用加圧ガス(パイプb2を通過)とが供給される。その結果、粉粒体は、粉粒体供給ホッパAがカラとなるまで、リフトパイプb3を通ってサイロDに連続的に輸送される。
【0019】
図2は、本発明の粉粒体の垂直輸送装置の一態様を示す模式的線図である。粉粒体の垂直輸送装置100は、加圧タンク2と、加圧タンク2の中心軸の位置に上方から下方に向かって挿入された内径dの輸送配管7と、輸送配管の真下であってその下端73から鉛直距離で距離hだけ離れた位置に内径dの上端開口31を有する輸送用加圧ガス配管3と、輸送用加圧ガス配管3の上端33から加圧タンク2の内壁22まで延出し、水平に対して角度θで内側に向かって(又は、「水平に対して上方に角度θで」ということもできる)傾斜しているエアレーションプレート6と、エアレーションプレートよりも上方に位置する加圧タンク2の粉粒体投入口1と、加圧タンク2内のエアレーションプレート6よりも下方に開口51を有するエアレーション用加圧ガス配管5とを備えている。また、当該装置100は、当該装置100を上下に開放する際の取手となるフランジ8も備えている。
【0020】
粉粒体の垂直輸送装置100においては、輸送用加圧ガス配管3は、加圧タンク2の下方側面から加圧タンク2内に装入され、加圧タンク2の中心軸の位置でガスを下方から上方に向かって噴出するように、垂直に曲げられている。輸送配管7は、輸送用加圧ガス配管3のガス出口である開口31の真上に粉粒体の入り口である下端開口71が位置するように、加圧タンク2の中心軸の位置に立設されている。また、エアレーションプレート6は、輸送用加圧ガス配管3の上端33と加圧タンク2の内壁22とに接して、それらの間に配されている。換言すると、エアレーションプレート6の内側端63は、輸送用加圧ガス配管3の上端33に接している。エアレーション用加圧ガス配管5は、ガス出口51が加圧タンク2内であってエアレーションプレート6よりも下方に配されるように、加圧タンク2の下方側面から加圧タンク2内に装入されている。
【0021】
図3は、本発明の粉粒体の垂直輸送装置の他の一態様を示す模式的線図である。粉粒体の垂直輸送装置200における、粉粒体の垂直輸送装置100との相違点は、輸送用加圧ガス配管3が、加圧タンク2の中心軸の位置に下方から上方に向かって挿入されていることと、その上方において径が絞られ、上端開口31の内径dは円筒状部分の内径dよりも小さくなっていることである。このように、輸送用加圧ガス配管3の上方においてその径を絞ると、気流速度が大きくなる。
【0022】
本発明の粉粒体の垂直輸送装置において、エアレーションプレート6は、水平に対して角度θで内側に向かって(又は、「水平に対して上方に角度θで」)傾斜している。この角度θは、5乃至40°であり、5乃至35°が好ましく、10乃至30°が更に好ましい。角度θが5°未満であると、粉粒体が輸送用加圧ガス配管3の上端開口31にスムーズに移動しない。また、角度θが40°を超えると、もはや粉粒体の流動化に変化はなく、一方、加圧タンク2の粉粒体収容容積が小さくなるため、得策ではない。なお、粉粒体の流動化に関する詳細は、本発明に係る粉粒体の垂直気体輸送方法の説明において述べる。
【0023】
輸送用加圧ガス配管3の上端開口31の内径dは、輸送配管7の内径dの0.3乃至0.6倍、好ましくは0.35乃至0.55倍、更に好ましくは0.4乃至0.5倍である。0.3倍未満では、圧力ロスが大きくなり、一方、0.6倍を越えると、粉粒体の残存量が多くなる。ここで、輸送配管7は円筒形状であるので、その直径は、全長に亘って同一である。
【0024】
また、輸送用加圧ガス配管3の上端33と輸送配管7の下端73との間の鉛直距離hは、輸送配管7の内径dの0.3乃至1.5倍、好ましくは0.3乃至1.2倍、更に好ましくは0.4乃至1.0倍である。0.3倍未満では、輸送用加圧ガス配管3と輸送配管7との間が粉粒体によって閉塞される可能性があり、一方、1.5倍を越えると、粉粒体の残存量が多くなる。
【0025】
本発明に係る粉粒体の垂直輸送装置において、輸送配管7の形状は、基本的には円筒形状である。輸送用加圧ガス配管3の配置は、上述したものに限定されない。ガスが下方から上方に向かって且つ輸送配管7内に向かって噴出するように、その上端開口31が輸送配管7の真下に配置されればよい。
【0026】
エアレーションプレート6は、輸送用加圧ガス配管3の上端33と加圧タンク2の内壁22との間に配されていればよく、図2及び図3に示した例のように、エアレーションプレート6の内側端63が輸送用加圧ガス配管3の上端33に接していることが必須ではない。例えば、輸送用加圧ガス配管3の外側に、その横断面形状が輸送用加圧ガス配管と同心円の有底鞘管が配されており、その有底鞘管の上端から加圧タンク2の内壁22まで、エアレーションプレート6が延出されているような態様も、本発明に包含される。また、輸送用加圧ガス配管3の上端33ではなく上方(即ち、上端よりは少し下)の外周から、加圧タンク2の内壁22まで、エアレーションプレート6が延出されているような態様も、本発明に包含される。なお、エアレーションプレート6の内側端63の位置である「輸送用加圧ガス配管の上端開口周辺」とは、輸送用加圧ガス配管の上端、又は、当該上端から水平方向及び/又は垂直方向に所定距離離れている位置であって、その位置にエアレーションプレートの内側端が存在しても、輸送される粉粒体がエアレーションプレート上に有意には残存しない、換言すれば残存量がほぼゼロとなる位置をいう。エアレーションプレート6の内側端63の位置は、輸送用加圧ガス配管の上端であることが好ましい。
【0027】
エアレーション用加圧ガス配管5は、エアレーションプレート6よりも下方に開口51を有すればよい。従って、開口51は、例えば加圧タンク2の側壁2に接して設けられていてもよい。
【0028】
エアレーションプレート6としては、具体的には、キャンバス地、多孔板、網目版、スリット板、格子板、並列棒、濾布等が使用される。その孔の大きさや密度は、輸送される粉粒体の物性、例えば大きさや比重に応じて選択される。また、本発明に係る粉粒体の垂直輸送装置の他の部材は、当技術分野で常用されている材料を用いて製造される。その例を挙げると、ステンレス鋼等がある。
【0029】
次に、本発明の装置を使用した粉粒体の垂直輸送方法について、簡単に説明する。当該方法には、バッチ式と連続式の両者が包含される。
【0030】
バッチ式の場合には、先ず、粉粒体を加圧タンクに投入し、次いで、投入口の閉鎖等により、加圧タンク内を密閉状態とする。その後、輸送用加圧ガスを供給し、次いでエアレーション用加圧ガスを供給する。エアレーション用加圧ガスが供給されると、そのガスはエアレーションプレートを通って上昇し、エアレーションプレートの上方に存在する粉粒体と混ざり、粉粒体は流動化する。次いで、輸送用加圧ガスが噴出されているので、その圧力により、流動化した粉粒体とエアレーションガスとの混合物が、輸送配管中を上昇する。このようにして、粉粒体が垂直輸送される。例えば加圧タンク内の圧力低下を検知することにより、粉粒体の輸送の終了を検知する。輸送が終了したら、エアレーション用加圧ガスの供給を停止し、次いで輸送用加圧ガスの供給を停止する。
【0031】
連続式の場合には、粉粒体は、例えば粉粒体供給ホッパから加圧タンクに連続的に供給される。粉粒体の供給開始とほぼ同時に、輸送用加圧ガスの供給を開始し、次いでエアレーション用加圧ガスの供給を開始する。バッチ式の場合と同様の原理により、粉粒体は、粉粒体供給ホッパがカラとなるまで連続的に垂直輸送される。例えば加圧タンク内の圧力低下を検知することにより、粉粒体の輸送の終了を検知する。輸送が終了したら、エアレーション用加圧ガスの供給を停止し、次いで輸送用加圧ガスの供給を停止する。
【0032】
なお、エアレーション用加圧ガスや輸送用加圧ガスは、コンプレッサやブロワ等の当技術分野で常用されている装置を用いて加圧タンクに供給すればよい。ガス供給量は、輸送される粉粒体の物性によって異なる。また、本発明に係る粉粒体の垂直輸送方法において使用されるガスは、通常は空気であるが、粉粒体と反応しない限り、空気以外のガスを使用することも可能である。
【0033】
本発明の装置によって輸送される粉粒体の種類は、特に限定されないが、グラニュー糖、小麦粉、デンプン、穀類(米、麦)、食塩等の食品;各種医薬品;餌料;肥料;洗剤;農薬;ポリ塩化ビニル、メラミン、ABS、ポリスチレン、ポリエチレン等の高分子化合物;炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、塩化カリウム等の無機塩類;鉄粉、酸化鉄等の金属類;セメント、アルミナ、コークス、硅砂、珪酸鉱、クレー、タルク、ベントナイト、アセチレンブラック、フライアッシュ等の無機物質等が例示される。
【0034】
次に、第二の発明に係る粉粒体の垂直気体輸送方法を説明する。この方法では、第一の発明に係る粉粒体の垂直輸送装置を用い、1乃至90m/分の、好ましくは1乃至70m/分の、さらに好ましくは1乃至50m/分の、さらにより好ましくは1乃至30m/分の、特に好ましくは1乃至10m/分の流量で輸送用加圧ガスを供給し、嵩比重が4.0以下の粉粒体を垂直輸送する。なお、エアレーション用加圧ガスの供給流量は特に限定されないが、通常は0.1乃至5.0m/分、好ましくは0.1乃至3.0m/分、さらに好ましくは0.1乃至1.5m/分、さらにより好ましくは0.1乃至1.0m/分である。第二の発明に係る粉粒体の垂直気体輸送方法は、嵩比重が1.5以下の、更には1.0以下の、嵩高い粉粒体の垂直輸送にも適用できる。
【0035】
嵩比重が4.0以下の粉粒体の例としては、上白糖、粉糖、グラニュー糖等の食品粉粒体、農薬、堆肥、樹脂ペレット、研磨剤等が挙げられる。従来は、このような比較的嵩高い粉粒体の垂直空気輸送に際し、加圧タンク内での残存を防止するため、大きな流量で空気を供給していた。そのため、粉粒体の結晶等に損傷、破砕が生じ、商品価値が損なわれていた。本発明の装置を用いれば、空気等のガスの供給を1乃至90m/分といった小さな流量で行なっても、加圧タンク内に残存することなく、ほぼ全量が輸送される。そして、空気等のガスの供給が1乃至90m/分といった小さな流量で行なわれた場合には、嵩比重が4.0以下の粉粒体の結晶等に損傷、破砕が生じない。
【実施例】
【0036】
(実施例1)
図3に示された形状の粉粒体の垂直輸送装置を用い、図1に示された粉粒体の輸送システムで、加圧空気を用いて珪酸鉱を輸送した。使用した装置の各部品の大きさは、次のとおりであった。
(1)エアレーションプレート6の傾斜角度θ: 15°
(2)輸送用加圧ガス配管3の上端開口31の内径d: 108.3mm
(3)輸送配管7の内径d: 250mm
(4)輸送用加圧ガス配管3の上端33と輸送配管7の下端73との間の鉛直距離h: 100mm
(5)加圧タンク2内容量(加圧タンクのエアレーションプレートよりも上の部分の容量をいう、以下同様): 4.3m(100cmφ×550cm)
【0037】
粉粒体供給ホッパAに珪酸鉱100トン(嵩比重:1.1)を投入した。供給バルブa1を開け、珪酸鉱の加圧タンク2への供給を開始した。すぐに、輸送用加圧空気を42.5m/分の、エアレーション用加圧空気を1m/分の流量で供給した。珪酸鉱は、44トン/時間の輸送能力でサイロDに連続的に輸送された。粉粒体供給ホッパAがカラとなり、サイロDに珪酸鉱が輸送されなくなったので、エアレーション用加圧空気及び輸送用加圧空気の供給を停止した。加圧タンク2を開けたところ、珪酸鉱は残存していなかった。
【0038】
(実施例2)
実施例1と同様の装置で大きさの異なるものを用い、加圧空気を用いてソーダ灰を輸送した。使用した装置の各部品の大きさは、次のとおりであった。
(1)エアレーションプレート6の傾斜角度θ: 33°
(2)輸送用加圧ガス配管3の上端開口31の内径d: 40mm
(3)輸送配管7の内径d: 80mm
(4)輸送用加圧ガス配管3の上端33と輸送配管7の下端73との間の鉛直距離h: 50mm
(5)加圧タンク2内容量: 0.785m(50cmφ×400cm)
【0039】
粉粒体供給ホッパAにソーダ灰2トン(嵩比重:1.1)を投入した。供給バルブa1を開け、ソーダ灰の加圧タンク2への供給を開始した。すぐに、輸送用加圧空気を5m/分の、エアレーション用加圧空気を0.4m/分の流量で供給した。ソーダ灰は、9トン/時間の輸送能力でサイロDに連続的に輸送された。粉粒体供給ホッパAがカラとなり、サイロDにソーダ灰が輸送されなくなったので、エアレーション用加圧空気及び輸送用加圧空気の供給を停止した。加圧タンク2を開けたところ、ソーダ灰は残存していなかった。
【0040】
(比較例1)
図4に示された形状の粉粒体の垂直輸送装置400を用い、図1に示された粉粒体の輸送システムで、加圧空気を用いて普通ポルトランドセメントを輸送した。使用した装置の各部品の大きさは、次のとおりであった。
(1)エアレーションプレート6の傾斜角度: 0°(水平)
(2)輸送用加圧ガス配管3の上端開口31の内径d: 300mm
(3)輸送配管7の下端開口71の内径d: 520mm
(4)輸送配管7の円筒状部分の内径d: 300mm
(5)輸送用加圧ガス配管3の上端33と輸送配管7の下端73との間の鉛直距離h: 300mm
(6)加圧タンク2内容量: 6.3m(120cmφ×560cm)
【0041】
粉粒体供給ホッパAに普通ポルトランドセメント10トン(嵩比重:1.0)を投入した。供給バルブa1を開け、セメントの加圧タンク2への供給を開始した。すぐに、輸送用加圧空気を86m/分の、エアレーション用加圧空気を1.5m/分の流量で供給した。輸送の開始から4分後にセメントが輸送されてこなくなったので、エアレーション用加圧空気及び輸送用加圧空気の供給を停止した。加圧タンク2を開けたところ、セメントで輸送用加圧ガス配管3の上端開口31と輸送配管7の下端開口73との間が閉塞されていた。
【0042】
(比較例2)
図5に示された形状の粉粒体の垂直輸送装置500を用い、図1に示された粉粒体の輸送システムで、加圧空気を用いて普通ポルトランドセメントを輸送した。使用した装置の各部品の大きさは、次のとおりであった。
(1)エアレーションプレート6の傾斜角度: 0°(水平)
(2)輸送用加圧ガス配管3の上端開口31の内径d: 250mm
(3)輸送配管7の内径d: 300mm
(4)輸送用加圧ガス配管3の上端33と輸送配管7の下端73との間の鉛直距離h: 300mm
(5)加圧タンク2内容量: 6.3m(120cmφ×560cm)
【0043】
粉粒体供給ホッパAに普通ポルトランドセメント10トン(嵩比重:1.0)を投入した。供給バルブa1を開け、セメントの加圧タンク2への供給を開始した。すぐに、輸送用加圧空気を86m/分の、エアレーション用加圧空気を1.5m/分の流量で供給した。セメントは、100トン/時間の輸送能力でサイロDに連続的に輸送された。粉粒体供給ホッパAがカラとなり、サイロDにセメントが輸送されなくなったので、エアレーション用加圧空気及び輸送用加圧空気の供給を停止した。加圧タンク2を開けたところ、セメントはエアレーションプレート6の上に高さ約120cmで残存していた。
【0044】
(比較例3)
図6に示された形状の粉粒体の垂直輸送装置600を用い、図1に示された粉粒体の輸送システムで、加圧空気を用いて普通ポルトランドセメントを輸送した。使用した装置の各部品の大きさは、次のとおりであった。
(1)エアレーションプレート6の傾斜角度: 0°(水平)
(2)輸送用加圧ガス配管3の上端開口31の内径d: 100mm
(3)輸送配管7の内径d: 125mm
(4)輸送用加圧ガス配管3の上端33と輸送配管7の下端73との間の鉛直距離h: 125mm
(5)加圧タンク2内容量: 0.75m(80cmφ×150cm)
【0045】
粉粒体供給ホッパAに普通ポルトランドセメント30トン(嵩比重:1.0)を投入した。供給バルブa1を開け、セメントの加圧タンク2への供給を開始した。すぐに、輸送用加圧空気を20m/分の、エアレーション用加圧空気を1.5m/分の流量で供給した。セメントは、15トン/時間の輸送能力でサイロDに連続的に輸送された。粉粒体供給ホッパAがカラとなり、サイロDにセメントが輸送されなくなったので、エアレーション用加圧空気及び輸送用加圧空気の供給を停止した。加圧タンク2を開けたところ、セメントはエアレーションプレート6の上に高さ約50cmで残存していた。
【0046】
実施例1及び2と比較例1乃至3の結果をまとめて表1に示す。
【0047】
【表1】

【0048】
(実施例3乃至7及び比較例4乃至8)
図2に示された形状の粉粒体の垂直輸送装置を用い、図1に示された粉粒体の輸送システムで、加圧空気を用いてグラニュー糖を輸送した。使用した装置の各部品の大きさは、表2に示すとおりであった。また、加圧タンク2内容量は0.785m(50cmφ×400cm)であった。
【0049】
粉粒体供給ホッパAにグラニュー糖2.5トン(平均粒子径D50:270μm;嵩比重:0.85)を投入した。供給バルブa1を開け、グラニュー糖の加圧タンク2への供給を開始した。すぐに、輸送用加圧空気を3.0m/分の、エアレーション用加圧空気を0.3m/分の流量で供給した。グラニュー糖は、5トン/時間の輸送能力でサイロDに連続的に輸送された。粉粒体供給ホッパAがカラとなり、サイロDにグラニュー糖が輸送されなくなったので、エアレーション用加圧空気及び輸送用加圧空気の供給を停止した。加圧タンク2を開け、グラニュー糖の残存量を測定又は判定した。結果を表2に示す。
【0050】
【表2】

【0051】
表2から明らかなように、本発明の装置を用いると、グラニュー糖はほぼ全量が輸送された。これに対し、輸送用加圧ガス配管の上端開口の内径d/輸送配管の内径d、輸送配管の下端と輸送用加圧ガス配管の上端との間の鉛直距離h/輸送配管の内径d、及びエアレーションプレートの水平に対する傾斜角度θの中のいずれか一つ以上が本発明の規定を充足しない装置を用いると、多量のグラニュー糖が残存したり、輸送用加圧ガス配管と輸送配管との間が閉塞するといった不都合が生じた。
【0052】
(比較例9)
図6に示された形状の粉粒体の垂直輸送装置を用い、図1に示された粉粒体の輸送システムで、加圧空気を用いてグラニュー糖を輸送した。使用した装置の各部品の大きさは、次のとおりであった。
(1)エアレーションプレート6の傾斜角度: 0°(水平)
(2)輸送用加圧ガス配管3の上端開口31の内径d: 100mm
(3)輸送配管7の内径d: 150mm
(4)輸送用加圧ガス配管3の上端33と輸送配管7の下端73との間の鉛直距離h: 300mm
(5)加圧タンク2内容量: 1.75m(80cmφ×350cm)
【0053】
粉粒体供給ホッパAにグラニュー糖20トン(平均粒子径D50:270μm;嵩比重:0.85)を投入した。供給バルブa1を開け、グラニュー糖の加圧タンク2への供給を開始した。すぐに、輸送用加圧空気を20m/分の、エアレーション用加圧空気を0.7m/分の流量で供給した。グラニュー糖は、30トン/時間の輸送能力でサイロDに連続的に輸送された。粉粒体供給ホッパAがカラとなり、サイロDにグラニュー糖が輸送されなくなったので、エアレーション用加圧空気及び輸送用加圧空気の供給を停止した。
【0054】
比較例9及び実施例3で輸送されたグラニュー糖の平均粒子径D50を測定した。なお、本明細書において、平均粒子径D50は、レーザー回折散乱光法(マイクロトラック法)での測定値である。
【0055】
実施例3で輸送されたグラニュー糖の平均粒子径D50は261μmであり、比較例9で輸送されたグラニュー糖の平均粒子径D50は236μmであった。また、実施例3で輸送されたグラニュー糖の光沢は、輸送前のものと比べて変わらないが、比較例9で輸送されたグラニュー糖は、光沢が弱くなっていた。
【0056】
上記結果より、本発明の装置及び方法では、グラニュー糖の結晶が殆ど破砕されることなく、従って光沢が悪化することなく、全量が輸送されるが、従来の装置では、全量を輸送するためには加圧空気の流量を大きくする必要があり、そして、加圧空気の流量を大きくすると、グラニュー糖の結晶が破砕されて光沢が悪くなることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の粉粒体の垂直輸送装置を含む、粉粒体の輸送システムの一態様を示す模式的線図である。
【図2】本発明に係る粉粒体の垂直輸送装置の一例を模式的に示す線図である。
【図3】本発明に係る粉粒体の垂直輸送装置の他の一例を模式的に示す線図である。
【図4】比較例の粉粒体の垂直輸送装置を模式的に示す線図である。
【図5】比較例の粉粒体の垂直輸送装置を模式的に示す線図である。
【図6】比較例の粉粒体の垂直輸送装置を模式的に示す線図である。
【符号の説明】
【0058】
1 粉粒体投入口
2 加圧タンク
3 輸送用加圧ガス配管
5 エアレーション用加圧ガス配管
6 エアレーションプレート
7 輸送配管
8 フランジ
22 内壁
31 上端開口
33 上端
63 内側端
71 下端開口
73 下端
100,200,400,500,600 粉粒体の垂直輸送装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧タンクと、加圧タンクの中心軸の位置に上方から下方に向かって挿入された内径dの輸送配管と、輸送配管の真下であってその下端から距離hだけ離れた位置に内径dの上端開口を有する輸送用加圧ガス配管と、輸送用加圧ガス配管の上端開口周辺から加圧タンク内壁まで延出し、水平に対して角度θで内側に向かって傾斜しているエアレーションプレートと、エアレーションプレートよりも上方に位置する加圧タンクの粉粒体投入口と、加圧タンク内のエアレーションプレートよりも下方に開口を有するエアレーション用加圧ガス配管とを備える粉粒体の垂直輸送装置であって、
/d=0.3〜0.6、
h/d=0.3〜1.5、及び
5°≦θ≦40°
であることを特徴とする粉粒体の垂直輸送装置。
【請求項2】
エアレーションプレートが、輸送用加圧ガス配管の上端から加圧タンク内壁まで延出している、請求項1に記載の粉粒体の垂直輸送装置。
【請求項3】
h/d=0.3〜1.0である、請求項1又は2に記載の粉粒体の垂直輸送装置。
【請求項4】
5°≦θ≦35°である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の粉粒体の垂直輸送装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の粉粒体の垂直輸送装置を用い、1乃至90m/分の流量で輸送用加圧ガスを供給して嵩比重が4.0以下の粉粒体を垂直輸送することを特徴とする粉粒体の垂直気体輸送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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