説明

粉粒体の気流混合装置および混合方法

【課題】
本発明は、攪拌羽根などによる破砕も無く、粉粒体を均一に、連続的に生産性よく混合及び輸送することができ、粉粒体の種類を変更するときも簡単に清掃することができる粉粒体の気流混合装置を提供せんとするものである。
【解決手段】
本発明の粉粒体の気流混合装置は、所定の重量比で存在する粉粒体を含む気流を供給する導入管と、一端が密閉されており、もう一端が粉粒体を含む気流の排出口である円筒管を具備してなる気流混合装置であって、該円筒管は、その接線方向に上記導入管が取り付けられており、かつ、該導入管より大きい直径を有するものであることを特徴とするものである。
また、本発明の粉粒体の気流混合方法は、かかる粉粒体の気流混合装置を用いることを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、攪拌羽根などによる破砕も無く、粉粒体を均一に、連続的に生産性よく混合及び輸送することができる粉粒体の気流混合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、粉粒体の混合装置としては、攪拌手段に羽根を用いる混合装置が多用されているがこの種の混合装置には、混合すべき粉粒体が攪拌羽根によって粉砕され、粉粒体の粒径、粒度、粒度分布に変動を来たし、得られる粉粒体の混合物の物性が変化する等、品質が低下してしまうという問題があった。また、所定の重量比に計量した粉粒体を投入し、一定時間回転させることによって粉粒体を混合する装置も多く使用されているが、一定時間ごとに粉粒体の投入、混合、排出という作業が別になるため生産性が悪いという問題がある。また、これらの装置を用いた場合、装置内に滞留部ができ均一に混合できないという問題がある。
【0003】
係る問題を解決するために、特許文献1には、テーパのついた円筒管の軸線方向に粉粒体を含んだ気流を流すと共に、円筒管の周壁に形成したスリットから、別の粉粒体を含んだ加圧空気を導入させる装置が記載されている。また、特許文献2には空気排出口と混合後の粉粒体排出口を有した混合タンクに粉粒体を吸引し、粉粒体の輸送、混合及び排出を同時並行して行える装置が記載されている。また、特許文献3には、気流を接線方向に導入した球形の渦流室に、粉粒体を供給し気流の旋廻によって混合し、球形の渦流室に挿入した導入管から排出する装置が記載されている。また特許文献4には、熱可塑性樹脂ペレットと脂肪酸金属塩を20℃〜50℃で混合後に高密度(高圧)で輸送し、脂肪酸塩のフィルム層をペレット上に形成させ、輸送中に脂肪酸金属塩の脱落を無くす方法が記載されている。
【特許文献1】特開昭63−267424
【特許文献2】特開平9−155171
【特許文献3】特開平6−39261
【特許文献4】PCT/US1993/08004
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の特許文献1に記載の混合装置及び方法では、装置が複雑になり、粉粒体の種類を変更する際に行う清掃が困難であった。また、特許文献2に記載の気流混合装置では気流によって粉粒体の輸送と混合を行うが、気流の排出口と粉粒体の排出口を別に持つため、気流の排出口から粉粒体が排出される問題があった。また、特許文献3に記載の混合装置では、粉粒体が球形の渦流室の中で旋廻する時間にばらつきが生じて、均一に混合できない問題があった。また、上記の特許文献4に記載の混合方法では、高密度(高圧)で粉粒体を空気輸送するために、高圧で気流を発生させることのできる装置が必要で、コストが大きくなるという問題があった。
【0005】
本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、攪拌羽根などによる破砕も無く、粉粒体を均一に、連続的に生産性よく混合及び輸送することができ、粉粒体の種類を変更するときも簡単に清掃することができる粉粒体の気流混合装置を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。
【0007】
すなわち、本発明の粉粒体の気流混合装置は、所定の重量比で存在する粉粒体を含む気流を供給する導入管と、一端が密閉されており、もう一端が粉粒体を含む気流の排出口である円筒管を具備してなる気流混合装置であって、該円筒管は、その接線方向に上記導入管が取り付けられており、かつ、該導入管より大きい直径を有するものであることを特徴とするものである。
【0008】
かかる粉粒体の気流混合装置の好ましい態様は、
(1)前記導入管の径をDとしたときに、該円筒管の径が2D〜4Dであること、
(2)前記円筒管の該排出口の直径が、該導入管の直径と同じであるテーパを具備するものであること、
(3)前記導入管の径をDとしたときに、該円筒管の排出口側への軸方向の長さが、該導入管壁から2D〜3Dであること、
(4)前記導入管が、粉粒体を供給するホッパーを具備するものであること、
(5)前記粉粒体を混合及び輸送する気体が、除湿エアー、不活性ガス、及び空気から選ばれる少なくとも一種であること、
である。
【0009】
また、本発明の粉粒体の気流混合方法は、かかる粉粒体の気流混合装置を用いることを特徴とするものである。
【0010】
かかる粉粒体の気流混合装置の好ましい態様は、前記粉粒体が、熱可塑性樹脂ペレットおよび脂肪酸金属塩であることである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の粉粒体の気流混合装置によれば、攪拌羽根などによる破砕も無く、粉粒体を均一に、連続的に生産性よく混合及び輸送することができ、粉粒体の種類を変更するときも簡単に清掃することができる。
【0012】
特に、本発明によれば、プラスチック材料、医療薬品、加工食品材料等の粉粒体を混合するのに好適であり、粉粒体の粉粒体混合空間への供給と、粉粒体混合空間での混合と、粉粒体混合空間で混合済みの粉粒体の排出を、同時進行的に併行して、連続して行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施形態について図を用いて説明する。
【0014】
図1は本発明の粉粒体の気流混合装置の実施形態の構成を示す概略説明図である。図2は図1に示す粉粒体の気流混合装置の、導入管の一部及び円筒管、テーパ、排出管の一部分の図で、円筒管の軸方向に対して垂直方向の図である。図3は図1に示す粉粒体の気流混合装置の、導入管の一部及び円筒管、テーパ、排出管の一部分の図で、円筒管の軸方向に対して水平方向の図である。図4は本発明の実施形態の一例を示す図である。
【0015】
図1において本粉粒体の気流混合装置1は気流発生装置2、粉粒体供給装置3a及び3b、ホッパー4、導入管5、テーパ部7を有する円筒管6、排出管8で構成される。図2、図3において導入管5、円筒管6、テーパ部7、排出管8は図1と対応している。
【0016】
本発明では、粉粒体は粉粒体の供給装置3a及び3bによって所定の重量比で計量され、ホッパー4に供給される。ホッパー4に供給された粉粒体は気流発生装置2によって発生した気流によって導入管5内を輸送されながら予備混合される。導入管5を通り輸送及び予備混合された粉粒体を含んだ気流は、円筒管6に円筒管の接線方向から導入され、円筒管6の壁に沿って旋廻し、粉粒体は、さらに混合される。円筒管6内で混合された粉粒体を含んだ気流は、該円筒管6のテーパ部7を通り、排出管8から排出される。
【0017】
以下に、図1に示す本発明の実施形態について説明する。
【0018】
本発明における気流発生装置2は、所定の流量及び圧力を満たすものであれば何でもよく、例えばブロワやコンプレッサーなどを使用することができる。使用される気流の種類は、何でも良いが、例えば除湿された空気、窒素ガス、空気等などを使用することができる。かかる気流の流速は、例えば熱可塑性樹脂であるナイロン樹脂ペレットを気流により輸送する場合では、20〜30m/secが好ましいが、粉粒体の処理量、比重によって選択することができる。
【0019】
本発明における粉粒体の供給装置3a及び3bは粉粒体を定量的に供給できるものであれば何でもよく、例えば重量式スクリュウフィーダー、容積式スクリュウフィーダー、ロータリーバルブ等を使用することができる。但し、容積式スクリュウフィーダーやロータリーバルブ等重量を検知しないものを使用する場合には、事前にスクリュウの回転数と排出量の関係を知っておくのが好ましい。
【0020】
本発明におけるホッパー4は粉粒体を導入管5に供給できるものであれば何でも良く、排出口8の径は粉粒体の処理量や粒径によって選択することができる。また、粉粒体がホッパー4内でブリッジする特性を持っていれば、ブリッジ防止としてホッパー4外部にノッカーを取り付ける等をしてもよい。
【0021】
本発明における導入管5の直径は、粉粒体の比重や粒径、及び処理量等の特性によって選択することができる。かかる導入管5の材質は、金属やプラスチック等何でもよいが、粉粒体との磨耗や、錆等が粉粒体に混入するのを防ぐために、ステンレス鋼に硬化処理をしたものが好ましい。
【0022】
本発明における円筒管6の直径は、小さ過ぎると円筒管内で粉粒体を含んだ気流が旋廻せず、大きすぎると円筒管内での気流の流速が落ち、粉粒体が輸送されなくなり、滞留やがては閉塞してしまうため、導入管の直径Dに対し2D〜4Dが好ましい。
【0023】
また、導入管5の、円筒管6の軸方向の設置位置は、円筒管6の密閉側に近い位置が好ましく、導入管5の内壁が、円筒管6の密閉側の内壁からの距離を0D〜約0.5Dの位置に設置することが好ましい。
【0024】
また円筒管6の長さは、短すぎると粉粒体を含む気流の旋廻時間が短くなり、均一な混合ができず、長すぎると排出口に向かう段階で旋廻等によるエネルギーロスによって粉粒体を輸送できなくなるため、導入管5の直径Dに対して、円筒管6の排出口側の導入管5内壁からの長さを2D〜3Dとするのが好ましい。
【0025】
本発明における円筒管6の排出口側に設置するテーパ部7の排出側の径は、排出管8の直径と同じ直径にするのが好ましい。テーパ部7の角度は、粉粒体を含む気流を排出口8に円滑に輸送するため、45度〜90度の範囲が好ましい。
【0026】
また、円筒管6およびテーパ部7の材質は、導入管5と同様に、金属やプラスチック等なんでもよいが、粉粒体との磨耗や、錆等が粉粒体に混入するのを防ぐために、ステンレス鋼に硬化処理をしたものが好ましい。
また、円筒管6は円筒形に限らず、図4に示すように、円筒管6のテーパ部7を最大限長くし、実質的に中が空洞の円錐台形にしてもよい。
【0027】
排出管8の直径は、導入管5における気流と同一の流速で輸送するため、導入管5と同じ直径とするのが好ましい。
【実施例】
【0028】
次に、実施例によって、本発明の効果を具体的に説明する。
【0029】
本実施例では、ナイロン樹脂ペレットとステアリン酸カルシウムを混合した。本実施例では、排出管から得られたナイロン樹脂ペレット及びステアリン酸カルシウムをサンプリングし、ナイロン樹脂ペレットに付着したステアリン酸カルシウムの重量を確認した。以下に実施条件、及び評価方法について詳細に説明する。
【0030】
[ナイロン樹脂ペレット特性]
使用したナイロン樹脂ペレットについて記載する。
材料 :ナイロン樹脂ペレット(東レ(株) アミラン(R)CM1016G30FB1)
粒径 :φ3mm×3.5mmL
比重 :1350kg/m
【0031】
[ステアリン酸カルシウム特性]
使用したステアリン酸カルシウムについて記載する。
材料 :ステアリン酸カルシウム(片山化学株式会社)
粒径 :微粉(200メッシュを99%通過するサイズ)
比重 :0.15〜0.25g/ml
【0032】
[実施条件]
実施条件について記載する。
ナイロン樹脂ペレット処理量 :500kg/h
ステアリン酸カルシウム処理量 :0.15kg/h
気流及び粉粒体流速 :24m/sec
【0033】
[導入管5、円筒管6、テーパ7、排出口8]
導入管5、円筒管6、テーパ7、排出口8について記載する。
導入管5長さ :5m
導入管5呼び径 :50A
円筒管6長さ :150mm
円筒管6呼び径 :100A
テーパ7角度 :60°
排出管8長さ :10m
導入管5、円筒管6、テーパ7、排出管8材質:SUS304内面をタフトライド処理
【0034】
[評価方法]
評価方法について記載する。
(1)排出管8から得られたナイロン樹脂ペレット及びステアリン酸カルシウムを100gずつランダムにサンプリングし、共栓付き三角フラスコに入れる。
(2)メタノール100ccをサンプル入りの共栓付き三角フラスコに入れ上下に20回振る。
(3)メタノールのみをナスフラスコに投入する。
(4)手順(2)及び(3)を、メタノール投入時に白濁がなくなるまで繰り返す。
(5)ナスフラスコに投入したメタノールを濃縮する。
(6)濃縮したメタノールを白金るつぼに入れ、加熱し乾固させる。
(7)るつぼ内で乾固したステアリン酸カルシウムの重量を測定する。その後、理想的に均一に混合できた時の重量(=0.03g)に対する割合を評価する。
【0035】
例えば上記のるつぼ内で乾固したステアリン酸カルシウムの重量が0.02gの時、67%の割合となる。
【0036】
[実施例1]
図1〜3に記載した気流混合装置を用い、ナイロン樹脂ペレット及びステアリン酸カルシウムを前記の条件および以下の手順で、混合およびサンプリングを実施した。
(1)気流発生装置2によって、気流を発生させる。
(2)前記実施条件に記載の割合で、ナイロン樹脂ペレットおよびステアリン酸カルシウムを、図1記載の粉粒体供給装置3aおよび3bを用いてホッパー4に投入する。
(3)排出管8から排出される、一定時間分の粉粒体重量が、(2)の操作において投入した粉粒体の重量と同等であること(±0.1%以内)を確認する。
(4)排出管8から排出される粉粒体を100gサンプリングする。
(5)1回目のサンプリングから10分毎に、5回サンプリングする。
【0037】
[比較例1]
円筒管6及びテーパ7を設置せず導入管と排出管を直結した以外は実施例1と同じ方法で混合及び輸送を行った。結果を表1に示す。
【0038】
【表1】

【0039】
表1の結果から、比較例1に比べると実施例1はばらつきが小さく、均一に混合されていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明によれば、プラスチック材料、医療薬品、加工食品材料等の粉粒体を混合するに好適であるが、顔料の混合などにも応用できる。ただし、その応用範囲がこれらに限られるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の粉粒体の気流混合装置の実施形態の構成を示す概略説明図である。
【図2】本発明の粉粒体の気流混合装置の、導入管の一部及び円筒管、テーパ、排出管の一部分の図で、円筒管の軸方向に対して垂直方向の説明図である。
【図3】本発明の粉粒体の気流混合装置の、導入管の一部及び円筒管、テーパ、排出管の一部分の図で、円筒管の軸方向に対して水平方向の説明図である。
【図4】本発明の粉粒体の気流混合装置の、実施例の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0042】
1 粉粒体の気流混合装置
2 気流発生装置
3a、3b 粉粒体供給装置
4 ホッパー
5 導入管
6 円筒管
7 テーパ部
8 排出管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の重量比で存在する粉粒体を含む気流を供給する導入管と、一端が密閉されており、もう一端が粉粒体を含む気流の排出口である円筒管を具備してなる気流混合装置であって、該円筒管は、その円周の接線方向に上記導入管が取り付けられており、かつ、該導入管より大きい直径を有するものであることを特徴とする粉粒体の気流混合装置。
【請求項2】
前記導入管の径をDとしたときに、該円筒管の径が2D〜4Dである請求項1に記載の粉粒体の気流混合装置。
【請求項3】
前記円筒管の排出口が、該排出口より径の小さい排出管に連結するためのテーパ部を具備するものである請求項1または2に記載の粉粒体の気流混合装置。
【請求項4】
前記導入管の径をDとしたときに、該円筒管の排出口側への軸方向の長さが、該導入管壁から2D〜3Dである請求項1〜3のいずれかに記載の粉粒体の気流混合装置。
【請求項5】
前記導入管が、粉粒体を供給するホッパーを具備するものである請求項1〜4のいずれかに記載の粉粒体の気流混合装置。
【請求項6】
前記粉粒体を混合及び輸送する気体が、除湿エアー、不活性ガス、及び空気から選ばれる少なくとも一種である請求項1〜5のいずれかに記載の粉粒体の気流混合装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の粉粒体の気流混合装置を用いることを特徴とする粉粒体の気流混合方法。
【請求項8】
前記粉粒体が、熱可塑性樹脂ペレットおよび脂肪酸金属塩である請求項7に記載の粉粒体の気流混合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−238074(P2008−238074A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−83587(P2007−83587)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】