説明

粉粒体繰出装置

【課題】粉粒体ホッパから繰り出された粉粒体が繰出部で詰まることがないようにした粉粒体繰出し装置を提供すること。
【解決手段】粉粒体ホッパ60と該粉粒体ホッパ60の下部に設けた繰出部61とを備え、繰出部61には粉粒体を所定量づつ繰り出す繰出回転体73A,73Bとその下方に繰出口61aと該繰出口61aの下方には加圧空気により粉粒体を移送する粉粒体移送手段(施肥ホース62、ブロア67、エアチャンバ68など)とを設け、さらに、繰出回転体73A,73Bと繰出口61aとの間に繰出口61aから粉粒体ホッパ60側に逆流する加圧空気を遮る遮蔽具100を設けた粉粒体繰出装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施肥機(田植機)や薬剤散布装置等の粉粒体繰出し装置に関する。
【背景技術】
【0002】
粉粒体繰出し装置は粉粒体を貯めた貯留タンクを備えている。貯留タンクは、その上面を開閉する蓋を備え、該蓋をあけて貯留タンク内部に肥料や薬剤などの粉粒体を収納し、必要なときに外部に取り出して使用する。たとえば、粉粒体貯留タンク内の粉粒体をその下側に設けた繰出部によって繰り出し、繰り出された粉粒体をエアチャンバから供給される加圧エアによって圃場まで搬送するようにした粉粒体繰出し装置の一部として利用する。前記粉粒体繰出し装置は田植機に付属した施肥機として用いることがある。
【0003】
なお、本明細書では施肥装置や薬剤散布装置の前進方向を向いて左右方向をそれぞれ左、右と言い、前進方向を前、後退方向を後と言うことにする。
【特許文献1】特開2004−81099号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載された粉粒体繰出し装置においては、粉粒体貯留タンクから繰り出された粉粒体はエアチャンバから供給される加圧エアによって繰出部の回転体を摩耗、破損したり、粉粒体が粉体化することにより、繰出部が詰まってしまうおそれがあった。
【0005】
そこで、本発明の課題は、粉粒体ホッパから繰り出された粉粒体が繰出部で詰まることがないようにした粉粒体繰出し装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記課題は、次の解決手段によって解決される。
請求項1記載の発明は、粉粒体ホッパ60と該粉粒体ホッパ60の下部に設けた繰出部61とを備えた粉粒体繰出装置において、繰出部61には、粉粒体を所定量づつ繰り出す繰出回転体73A,73Bとその下方に繰出口61aを設け、該繰出口61aの下方には加圧空気により粉粒体を移送する粉粒体移送手段(施肥ホース62、ブロア67、エアチャンバ68など)を設け、さらに、繰出回転体73A,73Bと繰出口61aとの間に繰出口61aから粉粒体ホッパ60側に逆流する加圧空気を遮る遮蔽具100を設けた粉粒体繰出装置である。
【0007】
請求項2記載の発明は、遮蔽具100は、繰出回転体73A,73Bの回転部下手側の繰出部61の壁面に着脱可能に設けた請求項1記載の粉粒体繰出装置である。
【0008】
なお、本発明の粉粒体ホッパ60は肥料や薬剤などの粉体、粒体に限らず、固体、流体などの内容物を屋外で補充したり、入れ替えたりする場合に有用な粉粒体ホッパ60として利用できる。
【0009】
上記粉体と粒体は目安として直径が数センチメートル以下の不定形固形物であり、上記粉体は粒体より粒径が小さい固形物をいうこととし、流体とは液体又は固形物を含む液体をいうものとする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、加圧空気の逆流による繰出回転体73A,73Bの摩耗、破損の防止、粒体の粉化の防止を図ることができ、繰出部61で粉粒体が詰まることを防止できる。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、繰出回転体73A,73Bへの粉粒体のかみ込みを効率よく防止できる。また、遮蔽具100が逆に繰出部61で粉粒体の詰まりを誘発させるようなときには遮蔽具100を取り外しできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面に基づき、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
図1及び図2は本発明の粉粒体ホッパ60を用いた一実施例である施肥装置を装着した施肥装置付き乗用型田植機を表している。この施肥装置付き乗用型田植機1は、走行車体2の後側に昇降リンク装置3を介して苗植付部4が昇降可能に装着され、走行車体2の後部上側に施肥装置5の本体部分が設けられている。
【0013】
走行車体2は、駆動輪である左右一対の前輪10、10及び左右一対の後輪11、11を備えた四輪駆動車両であって、機体の前部にミッションケース12が配置され、そのミッションケース12の左右側方に前輪ファイナルケース13、13が設けられ、該左右前輪ファイナルケース13、13の操向方向を変更可能な各々の前輪支持部から外向きに突出する左右前輪車軸に左右前輪10、10が各々取り付けられている。また、ミッションケース12の背面部にメインフレーム15の前端部が固着されており、そのメインフレーム15の後端左右中央部に前後水平に設けた後輪ローリング軸を支点にして後輪ギヤケース18、18がローリング自在に支持され、その後輪ギヤケース18、18から外向きに突出する後輪車軸に後輪11、11が取り付けられている。
【0014】
エンジン20はメインフレーム15の上に搭載されており、該エンジン20の回転動力が、第一ベルト伝動装置21及びHST23を介してミッションケース12に伝達される。ミッションケース12に伝達された回転動力は、該ケース12内のトランスミッションにより変速された後、走行動力と外部取出動力に分離して取り出される。そして、走行動力は、一部が前輪ファイナルケース13、13に伝達されて前輪10、10を駆動すると共に、残りが後輪ギヤケース18、18に伝達されて後輪11、11を駆動する。また、外部取出動力は、走行車体2の後部に設けた植付クラッチケース25に伝達され、それから植付伝動軸26によって苗植付部4へ伝動されるとともに、施肥伝動機構27によって施肥装置5へ伝動される。
【0015】
エンジン20の上部はエンジンカバー30で覆われており、その上に座席31が設置されている。座席31の前方には各種操作機構を内蔵するフロントカバー32があり、その上方に前輪10、10を操向操作するハンドル34が設けられている。エンジンカバー30及びフロントカバー32の下端左右両側は水平状のフロアステップ35になっている。フロアステップ35は一部格子状になっており(図2参照)、該ステップ35を歩く作業者の靴についた泥が圃場に落下するようになっている。フロアステップ35上の後部は、後輪フェンダを兼ねるリヤステップ36となっている。
【0016】
また、走行車体2の前部左右両側には、補給用の苗を載せておく予備苗載台38、38が機体よりも側方に張り出す位置と内側に収納した位置とに回動可能に設けられている。
【0017】
昇降リンク装置3は平行リンク構成であって、1本の上リンク40と左右一対の下リンク41、41を備えている。これらリンク40、41、41は、その基部側がメインフレーム15の後端部に立設した背面視門形のリンクベースフレーム42に回動自在に取り付けられ、その先端側に縦リンク43が連結されている。そして、縦リンク43の下端部に苗植付部4に回転自在に支承された連結軸44が挿入連結され、連結軸44を中心として苗植付部4がローリング自在に連結されている。メインフレーム15に固着した支持部材と上リンク40に一体形成したスイングアーム45の先端部との間に昇降油圧シリンダ46が設けられており、該シリンダを油圧で伸縮させることにより、上リンク40が上下に回動し、苗植付部4がほぼ一定姿勢のまま昇降する。
【0018】
苗植付部4は6条植の構成で、フレームを兼ねる伝動ケース50、マット苗を載せて左右往復動し苗を一株分づつ各条の苗取出口51a、…に供給するとともに横一列分の苗を全て苗取出口51a、…に供給すると苗送りベルト51b、…により苗を下方に移送する苗載台51、苗取出口51a、…に供給された苗を苗植付具52aで圃場に植付ける苗植付装置52、…、次行程における機体進路を表土面に線引きする左右一対の線引きマーカ53、53等を備えている。苗植付部4の下部には中央にセンターフロート55、その左右両側にサイドフロート56、56がそれぞれ設けられている。これらフロート55、56、56を圃場の泥面に接地させた状態で機体を進行させると、フロート55、56、56が泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に苗植付装置52、…により苗が植付けられる。各フロート55、56、56は圃場表土面の凹凸に応じて前端側が上下動するように回動自在に取り付けられており、植付作業時にはセンターフロート55の前部の上下動が上下動検出機構57により検出され、その検出結果に応じ前記昇降油圧シリンダ46を制御する油圧バルブを切り替えて苗植付部4を昇降させることにより、苗の植付深さを常に一定に維持する。
【0019】
施肥装置5は、粉粒体ホッパ60に貯留されている粒状の肥料を繰出部61、…によって一定量づつ繰り出し、その肥料を施肥ホース62、…でフロート55、56、56の左右両側に取り付けた施肥ガイド63、…まで導き、施肥ガイド63、…の前側に設けた作溝体64、…によって苗植付条の側部近傍に形成される施肥構内に落とし込むようになっている。電動モータ66で駆動のブロア67で発生させたエアが、左右方向に長いエアチャンバ68を経由して施肥ホース62、…に吹き込まれ、施肥ホース62、…内の肥料を風圧で強制的に搬送するようになっている。
【0020】
以下、図3〜図8に示す施肥装置本体部の各部の構成について説明する。
粉粒体ホッパ60は各条共用で、上部に開閉可能な蓋60aが取り付けられている。粉粒体ホッパ60の下部は施肥条数分に分岐して漏斗状になっており、その下部が繰出部61、…の上端に接続されている。粉粒体ホッパ60は、左右方向に長い施肥フレーム70に支持された左右2箇所の回動アーム71に取り付けられていて、この回動アーム71の下端部を支点に後方に回動させて繰出部61、…から分離させられるようになっている。回動アーム71は外側から1条目の繰出部と2条目の繰出部との間に配置されている(左右対称位置に2つ設けられている)。粉粒体ホッパ60の下部を肥料繰出部61、…の上端に接続した通常位置では、係止具72により粉粒体ホッパ60を固定しておく。
【0021】
繰出部61は、粉粒体ホッパ60内の肥料を下方に繰り出す2個の繰出ロール73A、73Bを内蔵している。これらの繰出ロール73A、73Bは、外周部に溝状の凹部74、…が形成された回転体で、左右方向に設けた共通の繰出軸75の角軸部75a(図示例は四角軸)にそれぞれ一体回転するように嵌合している。繰出ロール73A、73Bが図6の矢印方向に回転することにより、粉粒体ホッパ60から落下供給される肥料が凹部74に収容されて下方に繰り出される。両繰出ロール73A、73Bにより繰り出された肥料は、下端の繰出口61aから吐出される。
【0022】
図示例の繰出ロール73A、73Bの凹部の数は6個であり、両者の凹部の位相が異ならせてある。このため、両繰出ロール73A、73Bの凹部が交互に肥料を繰り出すこととなり、繰出口61aから吐出される肥料の量が時間的に均等化されている。いずれかの繰出ロール73A又は73Bを繰出軸75から外して位相を適当に変更して付け直すことにより、両繰出ロール73A、73Bの凹部の位相を等しくすることもできる。これで、圃場に点状に肥料を散布する場合に適用可能となる。
【0023】
また、繰出部61の内部には、凹部74が下方に移動する側(前側)の繰出ロール73の外周面に摺接するブラシ76が着脱自在に設けられている。このブラシ76によって繰出ロール73A、73Bの凹部74に肥料が摺り切り状態で収容され、繰出ロール73A、73Bによる肥料繰出量が一定に保たれる。
【0024】
さらに、ブラシ76の上側には、繰出ロール73A、73Bの上方に突出して粉粒体ホッパ60から繰出部61に肥料が落下供給されないようにする繰出停止シャッタ77A、77B(図7)が設けられている。繰出停止シャッタ77A、77Bは、繰出部ケース78のスライド支持部79(図6)にスライド自在に支持されていて、ケース外の前端部に形成された把手77aをつかんでスライドさせるようになっている。
【0025】
繰出部61の繰出口61aには、前後方向に連通する接続管80(図3)が接続されている。そして、この接続管80の後端部に施肥ホース62(図5)が接続されている。施肥ホース62の外周螺旋溝に施肥フレーム70の下端部が係合しているので、施肥ホース62が接続管80から抜けにくい。一方、各条の接続管80の前端部はエアチャンバ68(図4、図5)の背面部に挿入連結されている。エアチャンバ68の左端部はエア切替管81を介してブロア67(図3、図4)に接続されており、該ブロア67からのエアがエアチャンバ68を経由し接続管80から施肥ホース62に吹き込まれるようになっている。なお、ブロア67は、図3、図4に仮想線で示すように、そのエア吐出口67aをエア切替管81から外して機体内方に回動収納できる構成としている。
【0026】
エアチャンバ68は、接続管80が取り付けられたゴム管68aと、中間部分の樹脂管68bとを交互に繋ぎ合わせて構成されている。この構成とすると、エアチャンバ68を簡単に分解、組み立てできるので、繰出部61を一体的に取り外してのメンテナンスが容易である。ゴム管68aの長さを一対の繰出部の間隔よりも長くしておくと、樹脂管68bからゴム管68aを抜きやすい。
【0027】
また、繰出部ケース78の背面部には、粉粒体ホッパ60内の肥料を取り出すための肥料排出口83(図6)が形成されている。この肥料排出口83には、上端側を支点にして開閉自在な排出シャッタ84が取り付けられている。各繰出部の肥料排出口83は、繰出部61の後方に設けた左右方向に長い肥料回収管85に接続されている。肥料回収管85の左端部は、前記エア切替管81を介してブロア67に接続されている。エア切替管81は二股状の管であって、一方にエアチャンバ68が接続され、他方に肥料回収管85が接続されている。エア切替管81にはエア切替部としてのエア切替シャッタ86が設けられ、ブロア67から吹き出されるエアをエアチャンバ68側に供給する状態と肥料回収管85側に供給する状態とに切り替えられようになっている。エア切替シャッタ86はエアチャンバ68と肥料回収管85の間の前後中央部にあるので、両者へのエア供給が安定している。肥料回収管85の右端部は肥料回収口87になっている。
【0028】
肥料回収口87には肥料袋88を装着できるようにしておくと、雨の日等において回収した肥料が吸湿するおそれがなくなる。また回収肥料を地面において受けることも無くなるので、肥料が汚れない。
【0029】
図8は上記各シャッタ84、…、86の開閉機構を示す図である。肥料回収口87の近傍に肥料回収レバー90が回動自在に設けられている。この肥料回収レバー90の回動支点軸90aと同軸上に、繰出部61の前側に配置された左右方向に長いシャッタ開閉伝達軸91(図6)が設けられている。シャッタ開閉伝達軸91には扇形プレート92が取り付けられており、この扇形プレート92に形成された円弧状の長穴92aに、肥料回収レバー90に固着されたピン90bが遊嵌している。シャッタ開閉伝達軸91には各繰出部ごとに開閉ギヤ93が取り付けられ、該ギヤ93が排出シャッタ84の回動軸84aに取り付けた半円形ギヤ94と噛み合っている。なお、半円形ギヤ94の端部には当該ギヤ94の歯よりも径の大きいストッパ部94aが形成されているので、両ギヤ93、94の噛み合いが外れることはない。また、肥料回収レバー90には、エア切替ワイヤ95の一端が繋がれている。エア切替ワイヤ95の他端は、エア切替シャッタ86の回動軸86aに取り付けたアーム96に付勢手段である引張りスプリング97を介して繋がれている。
【0030】
肥料回収レバー90を回動操作すると、エア切替ワイヤ95が引かれてエア切替シャッタ86を切り替え、ブロア67から引き出されるエアが肥料回収管85に供給されるようになる。肥料回収レバー90の回動操作量が少ないうちは、ピン90bが長穴92aの中を移動するだけにすぎないので、シャッタ開閉伝達軸91は回動しない。しかしながら、肥料回収レバー90を一定量以上回動操作すると、ピン90bが扇形プレート92に係合し、シャッタ開閉伝達軸91が回動する。これにより、排出シャッタ84、…が開き、粉粒体ホッパ60内の肥料が肥料回収管85に排出される。つまり、1本のレバー90の操作だけでエア切替シャッタ86及び排出シャッタ84、…を操作することができる。しかも、必然的に、始めにエアが肥料回収管85に供給され、その後で肥料が肥料回収管85に排出されるのである。このため、肥料回収管85での肥料の搬送が円滑に行われ、肥料回収管85での肥料詰まりが生じない。また、肥料回収レバー90が肥料回収口87の近傍に設けられているので、肥料回収容器等を肥料回収口87の下側に容易に確保でき、さらに肥料回収の状況を確認しながら作業を行え好都合である。
【0031】
肥料回収レバー90はレバーガイド98に沿って回動操作するようになっている。このレバーガイド98にはガイド穴98a、98bが形成されており、肥料回収レバー90の撓みを利用して肥料回収レバー90の係合部(図示せず)をガイド穴98a、98bに係合させることにより、肥料回収レバー90をエア切替シャッタ86だけが切り替えられる位置P1(図8)と、エア切替シャッタ86及び排出シャッタ84、…の両方が切り替えられる位置P2とに固定することができるようになっている。肥料回収レバー90を上記以外の位置にも停止させられるようにし、排出シャッタ84の開度を無段階又は段階的に調節できるようにしてもよい。
【0032】
従って、肥料回収時にはブロア67より気流搬送される肥料は肥料回収管85を流れ、排出口87からスムーズに肥料が排出される。
【0033】
なお、エア切替シャッタ86は上下方向を向く回動軸86aを中心に回動するので、エア切替シャッタ86の開閉操作時の抵抗が変動しない。また、肥料回収時には引張りスプリング97の張力に抗して強制的にエア切替シャッタ86を切り替えるようにしているので、肥料回収時におけるエア切替シャッタ86の気密性が良好である。
【0034】
図4に示す開閉ギヤ93と半円形ギヤ94との噛み合いに予め融通性を持たせておくと、各条のギヤの組み付けに多少の誤差があっても、各条の排出シャッタ84の動作タイミングに狂いが出ず、確実に排出シャッタ84が閉じるようにすることができる。
【0035】
一方、肥料回収レバー90を図8に示す施肥作業位置にすると「ON」になるスイッチを設けると共に、各畦クラッチレバー110L、110C、110R(図4)をクラッチ入り位置にすると「ON」になるスイッチを各々設けて、これらスイッチの検出により、肥料回収レバー90が肥料排出位置(肥料回収レバー90が施肥作業位置でない時)で全ての畦クラッチレバー110L、110C、110Rがクラッチ入りの時(施肥作業時)に、肥料回収レバー90が施肥作業位置でないことを警報するハンドル34下方のモニター部に設けたランプを点灯するか若しくはブザーを鳴らすように制御装置で制御している。これは、肥料回収レバー90を図8のP2位置にして肥料回収作業をした後、肥料回収レバー90をP2位置にしたまま、メインスイッチを切って作業を中断し、後に(後日)、施肥・植付け作業を行なう時に肥料回収レバー90をP2位置にしたまま施肥・植付け作業をすると施肥作業が行なえないまま植付け作業をしてしまう不具合を防止するためで、肥料回収レバー90をP2位置にしたままでメインスイッチを入れるとランプが点灯するか若しくはブザーが鳴って作業者に肥料回収レバー90が施肥作業位置になっていないことを知らせ、即座に作業者は肥料回収レバー90を施肥作業位置に操作して前記のような不具合を未然に防止でき作業性が良い。
【0036】
繰出部ケース78は、側面視で前下がりに傾斜した分割面F−F(図5)で、下側の固定部分78aと上側の離脱部分78bとに分割されている。繰出ロール73A、73B及び排出シャッタ84(肥料排出口83)は固定部分78aに設けられている。一方、ブラシ76及び繰出停止シャッタ77は離脱部分78bに設けられている。粉粒体ホッパ60が接続される上部開口部及び繰出口61aは分割されていないので、両者の気密性が良好に保たれる。
【0037】
粉粒体ホッパ60を最も後方に回動させると、側面視で前記離脱部分78bを離脱させる方向に投影した区域外に粉粒体ホッパ60が位置するようになっている。このため、離脱部分78bを無理なく離脱させられる。また、分割面F−F(図5)の延長先はエアチャンバ68の上端よりも下側に位置するとともに、側面視で離脱部分78bを離脱させる方向に投影した区域外にエアチャンバ68が位置している。このため、離脱部分78bを取り外した状態で、走行車体2上から繰出ロール73A、73Bのメンテナンスを行いやすい。
【0038】
また、図6(a)に示すように繰出部ケース78の下側の固定部分78aのさらに下側に遮蔽具100を取り付ける。遮蔽具100は繰出口61aの上方に傾斜状に、かつ繰出部61の開口部断面積の約半分の面積を占める大きさとし、その端部を繰出部61の壁面61bの外側から取付ボルト101で固定する。
【0039】
遮蔽具100が繰出部61内にあると、ブロア67からの加圧空気の流れが繰出部61の内部で舞うことが無くなる。このため繰出ロール73A,73B部分で肥料などに粉粒体が溜まり、繰出ロール73A,73Bがメカロックすること、又は図示しないロールギヤが破損することが防止できる。また、必要以上に肥料が加圧空気で舞い上がることがないので、肥料の粉化量を減少させることができる。
【0040】
さらに、遮蔽具100が繰出部61の内部にあると、逆に肥料などが繰出ロール73A,73Bに溜まり易い場合には、遮蔽具100を使用しない。このように遮蔽具100は使用しない場合には図6(b)に示すように遮蔽具100の本体部分を繰出部61の壁面61bの外側に向けて、その端部を繰出部61に取付ボルト101で固定しておくことで、遮蔽具100の取付と保管が容易となる
なお、図示しないが、 繰出ロール73A,73Bの下に繰出ロール73A,73Bの凹部74に噛み合うロールまたは掃除用ブラシを設け、凹部74を掃除することもできる。
【0041】
また、肥料排出口83に設ける排出シャッタ84はシャッタ本体84bの他にL字状に折れ曲がった丸棒84cを追加することで肥料排出口83に肥料が詰まることを防ぐことができる。
【0042】
従来は、肥料が圧縮されたり、湿気を含むために、排出シャッター84の回りの肥料排出口83の壁面に固着し、肥料が排出されないことがあったが、回動軸84aを中心にシャッタ本体84bを開けた際に、シャッタ本体84bと同時に動く丸棒84cが肥料排出口83の壁面に固着した肥料を掻き落としながら回動するので、肥料排出口83が肥料で詰まることが無くなる。このとき、丸棒84cは、その回動する範囲を肥料排出口83の最大径に対応するような大きさにすると、効果的に肥料排出口83に残った肥料を丸棒84cで掻き落とすことができる。
【0043】
また、シャッタ本体84bに対して図6に示す位置とは反対側に丸棒84cを設けると、丸棒84cで掻き取った肥料が肥料排出口83の肥料排出側に落ちやすくなり、丸棒84cが肥料の排出ガイドの役割を果たすことができる。
【0044】
従来、施肥装置5の下部には可とう性のあるプラスチックシートが設けられているが、一度可とう性のあるプラスチックシート上に落ちた肥料がたまりやすく、洗車時にシート上の肥料が溶けてクラッチケースやローリングフレームの錆発生原因になることが多かった。
【0045】
そこで、図9(平面図(図9(a))と側面図(図9(b))に示すように、一体成形の樹脂性トレー103を設ける。すなわち、施肥装置5への肥料補給時における肥料漏れや、繰出部61のメンテナンス時に肥料が施肥装置5の下方に落ちるのを防ぐために施肥装置5の下部に施肥装置5の水平断面積より大きい一体成形の樹脂性トレー103を設ける。
樹脂性トレー103には肥料排出用の溝103aを一方の側面側に設け、溝103aの一端部に肥料排出口103bを設ける。
【0046】
また、施肥装置5からの肥料の繰出量の調節をするために、繰出伝動機構を備えている。繰出伝動機構の平面図を図10に示し側面図を図11に示す。
【0047】
繰出伝動機構の前記繰出部61を駆動するための繰出伝動部105は、その平面図と側面図を図10および図11にそれぞれ示すように、互いに隣接する繰出部61,61の間に配置し、その支持カバーに支持される。この繰出伝動部105に隣接して同繰出部61の繰出量を電動モータ106により自動調節する繰出量調節機構107とその調節量を検出するストロークセンサ109による調節量が検出される。
【0048】
繰出伝動部105は、植付クラッチ110から出力するクランク軸110aと連結して略上下動作する施肥伝動ロッド111と、この施肥伝動ロッド111からの方向変換用のカウンタリンク112を介して略前後方向に進退動作する調節ロッド114と、この調節ロッド114を連結したワンウェイクラッチ115等から構成される。このワンウェイクラッチ115は繰出駆動軸116に取付け、繰出軸116を歯車伝動により一方向に回動する。
【0049】
上記ワンウェイクラッチ115を2連に配置し、両者間に方向を反転するカウンタリンク118を介して対向動作する2つの方向ロッド119a、119bをそれぞれの外周部に連結して往復回動機構を構成し、その一方に調節ロッド114を連結することにより、同調節ロッド114の往復行程で繰出軸120を連続的に回動することができる。
【0050】
繰出量調節機構107は、図示しないねじ機構により伸縮動作する伸縮ロッド121と、この伸縮ロッド121の後端部121bと連結し、上記カウンタリンク112の支軸112aの位置を調節するべく揺動可能に支軸122aに軸支した支点調節リンク122と、伸縮ロッド121の前端部に直結した伸縮調節用の電動モータ106等によって構成する。伸縮ロッド121はその中間部を支軸121cによって揺動可能に軸支されるとともに、連結部材124を介して伸縮ロッド121の伸縮量を検出するストロークセンサ109と連結する。このストロークセンサ109は、繰出量調節機構107の側方で繰出部61と挟まれる位置に、伸縮ロッド121と平行に、かつ、伸縮ロッド121の支軸121cで軸支する。
【0051】
ストロークセンサ109の先端は開度ゲージ126に固定するので、ストロークセンサ109の作動量は繰出量調節機構107に設けられた開度ゲージ126で監視できる。
【0052】
上記支点調節リンク122は、支軸122aについて揺動動作をすることにより、伸縮ロッド121の伸縮による揺動位置に応じてカウンタリンク112の軸支位置を変更し、施肥伝動ロッド111が一定のストロークで上下動作する場合において、ワンウェイクラッチ115と連結する調節ロッド114の進退量が変更されるので、伸縮ロッド121の伸縮に応じてワンウェイクラッチ115の回動量を変更することができる。
【0053】
繰出量調節機構(繰出量変更手段)107の操作のため、繰出量を設定する入力操作部とストロークセンサ109によるフィードバック信号とによって所定の繰出量に調節制御するコントロールを備え、このコントロールによって電動モータ106を調節制御する。上記コントロールによる繰出量の調節制御は、肥料の比重と面積あたりの施肥量とを入力することにより、必要な目標の繰出量を算出し、この目標繰出量と対応する伸縮ロッド121の伸縮位置を維持するべく電動モータ106を電子制御処理するように構成する。
【0054】
図12の斜視図に示すように、開度ガイド126が伸縮ロッド121を貫通して設けられ、開度ガイド126が伸縮ロッド121上をスライドできるようにした。そして、開度ガイド126に設けた目盛126bが付いた左右のうちの一方(右)の開放窓126aを通して伸縮ロッド121に設けた指針121dにより目盛126bを読むことでストロークセンサ109の動きを確認でき、施肥量の調節が精度良く行える。なお、他方の開放窓126aを通して指針121dとストロークセンサ109とを連結部材124により連結している。
【0055】
従って左右両側の開放窓126a,126aで指針121dが支持されるので、指針121dのスライド時の倒れが防止でき、ストロークセンサ109の検出精度が向上する。
【0056】
上記した構成によりモータ106が故障しても手動で操作でき、そのときに手動で開度目盛126cの位置が確認できる。
【0057】
図13に示すように施肥機の肥料ホッパ60を操縦席の背面部に配置するだけでなく施肥機のフロントサイドの両側にも設けても良い。本実施例では主にペースト肥料を用いる場合に好都合である。
【0058】
操縦席の背面部に配置した肥料ホッパ60はレール130上を左右にスライド可能な構成とすることで、畦に施肥機を横付けしたままで肥料補給ができ、作業性の向上が図れる。
【0059】
また、肥料ホッパ60はレール130上を左右にスライドし、肥料ホッパ60の側面に蛇腹ホース131を設け、該ホース131の先に肥料送給用ポンプ132を接続している。また肥料送給用ポンプ132から各苗植付装置52へ肥料を送るホース62を接続しているので、肥料ホッパ60から各苗植付装置52への肥料送給が可能になる。
【0060】
また肥料ホッパ60の側面にはシャッタ133付きの蛇腹ホース131も取り付けられているので、シャッタ133を閉じて蛇腹ホース131を取り外せばホッパ60ごと取り外し可能になる。
【0061】
また、肥料ホッパ60の左右にシャッタ(図示せず)が付いたドレンホース134を設けておくと、施肥作業後などにおける肥料処理が機体側方より可能となり、作業性の向上が図れる。さらに前記シャッタを閉じてドレンホース134を取り外して肥料ホッパ60を取り外し可能な構成とする。
【0062】
さらに肥料ホッパの設置部であるリヤステップ上に平面部分をもうけておくことで、苗補給性の向上が図れる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明によれば肥料や薬剤等の粉粒体を貯留した肥料ホッパを農業機械だけでなく、建設機械、物流機械などにも利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施例の施肥装置付き乗用型田植機の側面図である。
【図2】図1の施肥装置付き乗用型田植機の平面図である。
【図3】図1の施肥装置の(a)肥料回収管部分を省略した背面図、及び(b)伝動関係を省略した背面図である。
【図4】図1の施肥装置の平面図である。
【図5】図1の施肥装置の一断面の側面断面図である。
【図6】図1の施肥装置の粉粒体繰出部の側面断面図(図6(a))とその部分図(図6(b))である。
【図7】図6のS−S断面図である。
【図8】図1の施肥装置の肥料回収レバー及びその関連部材の側面図である。
【図9】図1の施肥装置の下部に配置する樹脂性トレー平面図(図9(a))と側面図(図9(b))である。
【図10】図1の施肥装置の肥料繰出量調節機構を示す平面図である。
【図11】図1の施肥装置の肥料繰出量調節機構を示す側面図である。
【図12】図10の肥料繰出量調節機構の開度ガイド部分の斜視図である。
【図13】図1の施肥機の肥料ホッパの変形例を示す平面図(図13(a))とその一部側面図(図13(b))である。
【符号の説明】
【0065】
1 施肥装置付き乗用型田植機 2 走行車体
3 昇降リンク装置 4 苗植付部
5 施肥装置 10 前輪
11 後輪 12 ミッションケース
13 前輪ファイナルケース 15 メインフレーム
18 後輪ギヤケース 20 エンジン
21 第一ベルト伝動装置 23 HST
25 植付クラッチケース 26 植付伝動軸
27 施肥伝動機構 30 エンジンカバー
31 座席 32 フロントカバー
34 ハンドル 35 フロアステップ
36 リヤステップ 38 予備苗載台
40 上リンク 41 下リンク
42 リンクベースフレーム 43 縦リンク
44 連結軸 45 スイングアーム
46 昇降油圧シリンダ 50 伝動ケース
51 苗載台 51a 苗取出口
51b 苗送りベルト 52 苗植付装置
52a 苗植付具 53 線引きマーカ
55 センターフロート 56 サイドフロート
57 上下動検出機構 60 粉粒体ホッパ
60a 蓋 61 繰出部
61a 繰出口 61b 壁面
62 施肥ホース 63 施肥ガイド
64 作溝体 66 電動モータ
67 ブロア 67a エア吐出口
68 エアチャンバ 68a ゴム管
68b 樹脂管 70 施肥フレーム
71 回動アーム 72 係止具
73、73A、73B 繰出ロール
74 凹部 75 繰出軸
75a 角軸部 76 ブラシ
77、77A、77B 繰出停止シャッタ
77a 把手 78 繰出部ケース
78a 固定部分 78b 離脱部分
79 スライド支持部 80 接続管
81 エア切替管 83 肥料排出口
84 排出シャッタ 84a 回動軸
84b シャッタ本体 84c 丸棒
85 肥料回収管 86 エア切替シャッタ
86a 回動軸 87 肥料回収口
88 肥料袋 90 肥料回収レバー
90a 回動支点軸 90b ピン
91 シャッタ開閉伝達軸 92 扇型プレート
92a 長穴 93 開閉ギヤ
94 半円形ギヤ 94a ストッパ部
95 エア切替ワイヤ 96 アーム
97 引張りスプリング 98 レバーガイド
98a、98b ガイド穴 100 遮蔽具
101 取付ボルト 103 樹脂性トレー
103a 溝 103b 肥料排出口
105 繰出伝動部 106 電動モータ
107 繰出量調節機構(繰出量変更手段)
109 ストロークセンサ 110 植付クラッチ
110a クランク軸
110L、110C、110R 畦クラッチレバー
111 施肥伝動ロッド 112、118 カウンタリンク
112a 支軸 114 調節ロッド
115 ワンウェイクラッチ 116 繰出駆動軸
118 カウンタリンク 119a、119b 方向ロッド
120 繰出軸 121 伸縮ロッド
121b 後端 121c 支軸
121d 指針 122 支点調節リンク
122a 支軸 124 連結部材
126 開度ガイド 126a 開放窓
126b 目盛 130 レール
131 蛇腹ホース 132 肥料送給用ポンプ
133 シャッタ 134 ドレンホース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉粒体ホッパ60と該粉粒体ホッパ60の下部に設けた繰出部61とを備えた粉粒体繰出装置において、
繰出部61には、粉粒体を所定量づつ繰り出す繰出回転体73A,73Bとその下方に繰出口61aを設け、該繰出口61aの下方には加圧空気により粉粒体を移送する粉粒体移送手段を設け、さらに、繰出回転体73A,73Bと繰出口61aとの間に繰出口61aから粉粒体ホッパ60側に逆流する加圧空気を遮る遮蔽具100を設けたことを特徴とする粉粒体繰出装置。
【請求項2】
遮蔽具100は、繰出回転体73A,73Bの回転部下手側の繰出部61の壁面に着脱可能に設けたことを特徴とする請求項1記載の粉粒体繰出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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