説明

粒子のマレイミジル基量を測定する定量方法

【課題】 診断薬および医薬品担体、クロマトグラフィ担体、粘性調整剤、樹脂成形材料、塗料添加剤、架橋/硬化剤および化粧品添加剤のような用途に好適に使用可能なポリマー粒子のマレイミジル基量を正確かつ簡易に測定することが可能な定量方法の提供。
【解決手段】 少なくともマレイミジル基を含むポリマー粒子について、少なくともSH基を有する蛍光物質を反応させ、その蛍光量をフローサイトメーターで測定することによってマレイミジル基量を測定するするポリマー微粒子のマレイミジル基量の定量方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、診断薬および医薬品担体、クロマトグラフィ担体、粘性調整剤、樹脂成形材料、塗料添加剤、架橋/硬化剤および化粧品添加剤等の用途に好適に使用可能な官能基を有するポリマー粒子の官能基の定量方法、特に該官能基がマレイミジル基であるポリマー粒子の官能基の定量方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粒子径が0.01〜100μmの範囲にあるポリマー粒子は、診断薬および医薬品担体、クロマトグラフィ担体、コンビナトリアルケミストリー用担体、粘性調整剤、樹脂成形材料、塗料添加剤、架橋/硬化剤および化粧品添加剤のような用途に有用に使用されており、その官能基量を明確にすることは粒子の特性を管理する上でも重要である。
従来用いられているポリマー粒子の官能基量の定量法としては、例えば、JIS規格K0070に記載されているような高分子の酸価や水酸基価の測定方法、K7245に記載されているプラスチックのアミノ基量の測定方法があげられる。これらの方法は高分子材料一般に用いることを想定していることから、測定に試料が多量に必要であったり、測定に時間と手間がかかるという問題があった。また、有機合成化学協会誌Vol.60 No.5 454〜463頁には、粒子の官能基量測定法として、粒子表面を赤外分光法分析による吸収ピークからの分析や、粒子と試薬との反応量をブランク試験との差分から求めるような紫外可視光分析が記載されている。これらの分析方法は、官能基量を直接定量したものではないことから、同じ官能基量であっても実際の特性が異なったり、試料の表面状態によって得られる値が異なることがあるという問題があった。
マレイミジル基量の測定法としては、(株)同仁化学研究所第23版総合カタログ 80〜81頁に記載されている。この方法は一般的化合物の測定を想定していることから、上記の官能基測定法と同様に、測定に試料が多量に必要であったり、測定に時間と手間がかかるという問題があった。
フローサイトメーターは、粒子の蛍光強度、散乱強度、および個数を測定できる機器でありこれを用いた測定としては、ラテックス粒子の凝集状態の測定(例えば、特許文献1参照。)や、藻類のシストの定量法(例えば、特許文献2参照。)、汚泥中のリン蓄積微生物の定量法(例えば、特許文献3参照。)等が開示されている。これらの方法は、粒子の蛍光の強度を定性的に比較するものであり、測定としては粒子の個数のカウントに重点を置いていることから、粒子の官能基量の定量に応用できるものではなかった。
このように粒子の官能基量を測定するには、従来の測定法では課題があった。
【特許文献1】特開平5−107249号公報
【特許文献2】特開平7−265096号公報
【特許文献3】特開平9−252799号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、本発明の課題は、粒子のマレイミジル基量についての従来の定量法にあるような工程と時間を有することなく、操作が容易で再現性の良好な粒子の官能基量の測定法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、マレイミジル基を有する粒子と反応可能な蛍光色素を用いることによって、フローサイトメーターを用いて粒子のマレイミジル基の定量が可能であることを発見した。
すなわち、本発明は、少なくともマレイミジル基を含むポリマー粒子について、マレイミジル基と蛍光物質と反応させ、粒子の蛍光量を測定することによって、粒子のマレイミジル基量を測定する定量方法を提供することにある。
また、さらに、粒子の蛍光量の測定にフローサイトメーターを用いることを特徴とする粒子のマレイミジル基の定量方法である。
さらに、蛍光色素と粒子を反応させるときの仕込み量が、蛍光色素と粒子の総マレイミジル基量のモル比が1:1から1:100であることを特徴とする粒子のマレイミジル基の定量方法である。
【発明の効果】
【0005】
本発明により、少サンプル量で短時間での測定が可能で、かつ簡易で低コストで安全性が高く、複雑な操作が不要な粒子のマレイミジル基の定量方法が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の構成を詳しく説明する。
【0007】
1.SH基を有する蛍光物質
本発明に用いる蛍光物質は、粒子に存在するマレイミジル基との反応が可能である。すなわち、蛍光物質の構造中にSH基を有している化合物であって、詳しくは蛍光色素とSH基を有する化合物(チオール化合物)と結合させた蛍光物質を用いることができる。例えば、蛍光色素が、イソチオシアン酸基、ジクロロトリアジン基、スクシンイミド基、カルボキシル基等を有し、これらの官能基がチオール化合物の水酸基、アミノ基等と反応して蛍光物質を作製する方法があげられるが、二つの化合物の結合が可能であればこれらに限定されるものではない。
具体的には蛍光色素としてはチオイソシアン酸フルオレセイン、ジクロロトリアジルアミノフルオレセイン、カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエーテル、カルボキシフルオレセイン等モレキュラープローブ社から販売されている5−DTAF、FITC、FAM、SFX等が、また、上記に記載したような官能基を有していないが、9−アントロイルニトリル、ダンシルアミノフェニルホウ酸等の化合物は反応条件によっては粒子の官能基との反応が可能であるため用いることが出来るが、これらに限定されるものではない。蛍光色素として好ましくは、メルカプトエチルフルオレセイン、メルカプトプロピルフルオレセン等のメルカプトアルキルフルオレセイン系色素であり、より好ましくは、メルカプトエチルフルオレセインである。
チオール化合物としてはシステイン、システアミン、アミノエタンチオール、メルカプトアミン、グルタチオン、メルカプトエタノール、DTT、DTEその他構成アミノ酸にシステインを含むペプチド化合物等があげられるがこれらに限定されるものではない。また、これらの化合物の二量体であっても、蛍光色素と反応した後、還元剤によってSH基を作製することによって使用することが可能である。チオール化合物として好ましくは、システイン、アミノエタンチオール、メルカプトアミン、グルタチオン、メルカプトエタノール、DTT、DTEであり、より好ましくは、システイン、アミノエタンチオール、メルカプトアミン、グルタチオンである。
【0008】
蛍光色素とチオール化合物の反応比は1:1から1:10の範囲にあり好ましくは1:1から1:5の範囲である。蛍光物質を作製するための蛍光色素とチオール化合物の反応条件は特に指定するものではないが、例えば、蛍光色素を溶解させた溶液中に一定量のチオール化合物を分散させ、指定時間混合させて反応させる方法が挙げられる。この際必要に応じて加熱してもかまわないがこれを限定するものではない。また、チオール化合物は酸化してSH基がS−S結合になりやすいことから、蛍光色素とチオール化合物を反応させた後,必要に応じてアミノエタンチオール、メルカプトアミン、DTE等の還元剤を加え、SH基を作製することが可能である。得られた蛍光物質は必要に応じてクロマトグラフィー等で精製して用いることが出来る。
【0009】
本発明の定量方法において、SH基を有する蛍光物質として好適なものは、メルカプトエチルフルオレセイン、メルカプトプロピルフルオレセン、FITCとSH基を有するアミノ酸もしくはペプチドの反応によって得られる化合物であり、より好ましくは、メルカプトエチルフルオレセイン、FITCとグルタチオンの反応によって得られる化合物である。
【0010】
2.マレイミジル基を含むポリマー粒子
本発明のマレイミジル基を含むポリマー粒子は、マレイミジル基が粒子表面もしくは粒子内部に存在しているものであって、その製造法としては例えば、マレイミジル基を有する単量体をあらかじめ媒体中で懸濁重合し粒子化する方法、ポリマー粒子を構成する母材粒子にマレイミジル基を導入することによって得ることが可能であるが、これらに限定されるものではない。
ポリマー粒子を構成する母材粒子としては、たとえば(メタ)アクリレート重合体を有するポリマー粒子であって、具体的にはt−ブチル(メタ)アクリレート、2−メチル−2−ブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、メトキシベンジル(メタ)アクリレート、エトキシベンジル(メタ)アクリレート、ジメトキシベンジル(メタ)アクリレート、メチルベンジル(メタ)アクリレート、ジメチルベンジル(メタ)アクリレート、エチルベンジル(メタ)アクリレート、4−フルオロベンジル(メタ)アクリレートなどの重合体で形成されるポリマー粒子等が挙げられる。この中でも特にt−ブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートの重合体が単量体の入手性、価格、反応性の点で好ましい。
【0011】
ポリマー粒子は単量体の重合体の他に、他の単量体を共重合させてもよい。粒子化には公知の方法が利用できる。すなわち、懸濁重合法、乳化重合法、分散重合法、シード重合法が好適に用いられる。さらに膜乳化法と知られる乳化方法を使って懸濁重合することもできる。
【0012】
粒子は必要に応じて架橋剤を加えて架橋ポリマー粒子とすることも可能である。この場合、架橋の方法は特に限定されるものではなく、重合時に架橋させても、重合した後に架橋させてもよい。架橋剤の添加、電磁波の照射、電子線の照射、粒子線の照射などによって架橋させることができる。架橋剤の種類は特に限定されるものではないが、ジビニルベンゼン、尿素樹脂、メラミン樹脂等がある。
【0013】
粒子にマレイミジル基を導入する方法としては、種々の公知の方法を用いることが可能であるがこれらに限定されるものではない。
例えば、(1)水酸基を含有したポリマー粒子とヒドロキシメチルマレイミドとをエーテル化触媒の存在下で縮重合させる方法や、(2)アミノ基を含有したポリマー粒子に対してN−(6−マレイミドカプロイロキシ)サクシンイミドのような二官能基試薬を作用させマレイミジル基を導入する方法、(3)t−ブチル(メタ)アクリレート重合体のごときエステル交換可能な官能基を有するポリマー粒子を作製し、テトラ−n−プロポキシチタンのようなエステル交換触媒を利用して、ヒドロキシメチルマレイミド等の水酸基を有するマレイミド化合物とエステル交換反応を行う方法、(4)カルボン酸基を有するポリマー粒子を作製し、ヒドロキシメチルマレイミド等の水酸基を有するマレイミド化合物と脱水反応を行う方法、等が挙げられる。
【0014】
マレイミジル基を導入するための水酸基含有ポリマーの作製方法としては、水酸基に変換しうる官能基を有する単量体をあらかじめ水性媒体中で懸濁重合し粒子化した後、該官能基を水酸基に変換する方法、反応性官能基を有するポリマー粒子をあらかじめ作製し、該反応性官能基と反応して粒子に結合する水酸基含有化合物とを反応させることによって水酸基を粒子に導入する方法、さらに、あらかじめt−ブチル(メタ)アクリレート重合体のごときエステル交換可能な官能基を有するポリマーからなる粒子を作製し、テトラ−n−プロポキシチタンのようなエステル交換触媒を利用してエチレングリコールのごときジオールを反応させ水酸基を粒子に導入する方法も利用できる。
【0015】
アミノ基含有ポリマー粒子の作製方法としては、反応性官能基を有するポリマー粒子をあらかじめ作製し該反応性官能基と反応して粒子に結合するアミノ基含有化合物とを反応させることによってアミノ基を粒子に導入する方法、さらには、t−ブチル(メタ)アクリレート重合体のごときエステル交換可能な官能基を有するポリマーからなる粒子を作製し、テトラ−n−プロポキシチタンのようなエステル交換触媒を利用して1,6−ジアミノヘキサンのごときジアミンを反応させアミノ基を粒子に導入する方法も利用できる。
【0016】
ポリマー粒子と、マレイミジル基との結合は、エーテル結合、エステル結合、アミド結合等、いずれの態様であってもよい。
【0017】
また、本発明におけるポリマー粒子は、マレイミジル基のほかに、官能基を含んでいてもよい。マレイミジル基と併存可能な官能基は、特に制限されないが、例えば、上記の前駆体残基である水酸基やアミノ基の他、硫酸基やニトロ基、アルキル基やベンジル基等のマレイミジル基の反応を阻害しない官能基を挙げることができる。
【0018】
本発明におけるマレイミジル基を有するポリマー粒子の大きさは、粒子径で0.5μm〜100μmの範囲、好ましくは1μm〜50μmの範囲にある。粒子の大きさがこの範囲より小さくなるとフローサイトメーターで検出が難しくなることから好ましくない。また、この範囲より大きくなると粒子がフローサイトメーターの検出ノズルを通過することが出来なくなるため好ましくない。
【0019】
3.定量法
まず、ポリマー粒子のマレイミジル基と蛍光物質とを反応させて、ポリマー粒子のマレイミジル基に蛍光物質を結合させる。
粒子のマレイミジル基と蛍光物質の反応時の仕込みモル比は、1:1から100:1の範囲が好ましく、より好ましくは2:1から20:1の範囲である。一般的に機器分析では官能基と反応する色素量は、官能基に対して1から数倍となるように仕込む。本発明の場合、仕込み時の蛍光物質量が粒子のマレイミジル基量に対してモル比で1倍より大きくなると、反応溶液中で色素が過剰になり析出したり、必要以上の蛍光色素が粒子中に取り込まれてしまうので好ましくない。また、マレイミジル基量に対して蛍光物質量がモル比で1/100より小さくなると、蛍光色素の量が不十分である粒子の定量に十分な蛍光が得られなくなるため好ましくない。
【0020】
本発明の定量におけるメカニズムは定かではないが、蛍光物質が粒子のマレイミジル基と100%反応するのではなく、粒子のマレイミジル基の反応量は蛍光物質と粒子のマレイミジル基量の仕込みモル比に依存した一定の割合のマレイミジル基と反応して粒子を染色することから、この蛍光強度を測定することで粒子のマレイミジル基量の定量が可能なものと考えられる。マレイミジル基が結合する粒子担体の基質によって、蛍光物質との反応速度は変わるものの、反応比率は変動しないことが明らかとなっている。したがって、マレイミジル基が結合するポリマー粒子が様々な種類を取り得る場合であっても、一定の蛍光物質を仕込むことで検量を行うことが可能である。
【0021】
粒子と蛍光物質の反応条件は特に指定するものではないが、マレイミジル基とSH基の反応は温和な条件で進行することから、蛍光物質を溶解させた溶液中に一定量の粒子を分散させ、指定時間混合させて反応させる方法が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0022】
粒子のマレイミジル基量の定量法としては、例えば、既知のマレイミジル基量を有する粒子とマレイミジル基量未知の粒子を同じ条件で染色し、フローサイトメーターで蛍光量を測定し、既知試料のマレイミジル基量と蛍光量の検量線を作成し、未知試料のマレイミジル基量を求めることが可能である。
【0023】
フローサイトメーターによる蛍光量の測定は、一般的な方法を採用できる。測定の前調整として、蛍光物質を反応させたマレイミジル基含有のポリマー粒子を、フローサイトメーター用のシース液に分散する。この分散液を直接フローサイトメーターで測定することで、蛍光量を測定できる。
フローサイトメーターでの測定に必要な試料量は、1〜10mg程度であり、従来の定量方法に比べて、極めて少量となっている。また、蛍光物質が結合したマレイミジル基含有の粒子を直接定量できるため、従来の二次的な定量方法に比べて、操作の煩雑さも解消される。
【0024】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中、部は重量部を示す。
【実施例1】
【0025】
(水酸基含有架橋ポリマー粒子の合成)
t−ブチルメタクリレート(和光純薬(株)製)100部、ジビニルベンゼン(純度55%)5部を用いて懸濁重合を行い、分級操作を施し平均粒径15μmの架橋ポリマー粒子を得た。得られた粒子をイオン交換水及び溶剤で洗浄後、単離乾燥して架橋重合体微粒子を得た。得られた架橋ポリマー粒子10部をポリエチレングリコール200(和光純薬(株)製)50部に分散させ、メシチレン(和光純薬(株)製)15部を加え、窒素雰囲気下テトラ−n−プロポキシチタンを0.2部滴下し、3、5、7、10、14時間、還流下反応させた。得られた粒子をそれぞれ、メタノールに分散/洗浄しさらにイオン交換水及び溶剤で洗浄後、単離乾燥して水酸基含有架橋ポリマー粒子−1〜5を得た。
【0026】
(ヒドロキシメチルマレイミドの合成)
24部のマレイミド(アルドリッチ(株)製)、21部の35質量%ホルムアルデヒド水溶液(和光純薬(株)製)、5質量%水酸化ナトリウム水溶液を0.7部入れ、40℃で2時間反応させたところ、ヒドロキシメチルマレイミドの白色結晶が析出した。減圧濾過後、常温で真空乾燥した。このようにして得たヒドロキシメチルマレイミドの粗結晶を酢酸エチルで再結晶し、22部のヒドロキシメチルマレイミドを得た。
【0027】
(マレイミジル基含有架橋ポリマー粒子の合成)
調製したマレイミジル基含有架橋ポリマー粒子−1〜5を各10部に対して、上記合成したヒドロキシメチルマレイミド17部、トルエン500部を入れ60〜70℃に加熱撹拌し、触媒のp−トルエンスルホン酸一水和物0.4部を入れ、温度を上げて10時間還流下反応させた。得られた粒子をメタノールに分散/洗浄しさらにイオン交換水及び溶剤で洗浄し、さらに2NA((株)同仁化学研究所製)と塩化ナトリウム(和光純薬(株)製)を含むpH7のりん酸バッファーで分散/洗浄しさらにイオン交換水洗浄した後、単離乾燥してマレイミジル基含有架橋ポリマー粒子を得た。
【0028】
(蛍光物質の作製)
グルタチオン還元型(和光純薬(株)製)0.09部に対して、FITC−I((株)同仁化学研究所製)0.25部をりん酸緩衝生理食塩水(PBS)(和光純薬(株)製)1000部に溶解させ、常温で1時間攪拌し、ランニングバッファーにPBSを用いてクロマトグラフィーで分離精製後、蛍光物質を含む反応液Aを10部を得た。得られた反応液に対して、DTNB((株)同仁化学研究所製)を用いてSH基量を測定したところ、2.5×10-5mol/Lであった。
【0029】
(蛍光強度の測定)
・マレイミジル基含有架橋ポリマー粒子 0.002部
・反応液 A 1部
キャップ付き試験管に上記の組成になるように調製し、室温で振とう機で2時間攪拌した。試料をキャップ付き試験管のまま3000rpmで5分間遠心分離して粒子と上澄みに分け、さらに、PBS(和光純薬(株)製)で超音波分散と遠心分離繰り返し洗浄した。
得られたそれぞれの粒子を、フローサイトメーター用シース液(FACS FLOW ベクトンディケンソン社製)に分散し、フローサイトメーター(Facs Calibur ベクトンディケンソン社製)を用いて、測定条件一定で、検出波長530nmでの蛍光強度を測定した。
【0030】
(分光光度計によるマレイミジル基量の測定)
・2−メルカプトエチルアミン塩酸塩 0.05部
・PBS (和光純薬(株)製) 98.45部
・EDTA2Na・2水和物(2NA)(株)同仁化学研究所製) 1.5部
上記の組成の溶液を調製し反応液Bとした。
【0031】
・マレイミジル基含有架橋ポリマー粒子 0.01部
・反応液 B 10部
上記の組成になるようにキャップ付き試験管に取り、攪拌して粒子を5分間遠心分離した後、反応液Cを得た。
【0032】
・反応液C 0.2部
・0.1mol/L りん酸水素二ナトリウム12水和物(和光純薬(株)製)水溶液 1部
・5mmol/L DTNB((株)同仁化学研究所製)エタノール溶液 0.5部
・超純水 23.3部
【0033】
分光光度計(U−4000 日立製作所(株)社製)を用い、412nmの吸光度からモル吸光係数ε=16800を用いて上澄み溶液中の2−メルカプトエチルアミン量B(mol)を求めた。ブランクとして、サンプルを含まない系の2−メルカプトエチルアミン量C(mol)も同様に測定し、下記の式に従ってマレイミジル基量A(mmol/g)を求めた。
A=(C−B)/w×1000
ここで、wは粒子の重量(g)である。
【実施例2】
【0034】
・マレイミジル基含有架橋ポリマー粒子 0.00025部
・反応液 A 1部
マレイミジル基含有架橋ポリマー粒子の量を変更した以外は、実施例1と同様の方法で粒子を作製して、測定を行った。
【0035】
<結果>
実施例1、実施例2の測定結果のデータを表1に示し、そのデータから作成したグラフを図1に示した。また、マレイミジル基量A(mmol/g)から、仕込み時の蛍光物質と粒子の水酸基量のモル比を計算し、その結果も併せて掲載した。図1では横軸に比較例のマレイミジル基量を示し、縦軸にフローサイトメーターで得られた蛍光強度の相対値としてプロットした。
【0036】
【表1】

【0037】
図1から明らかなように、実施例1、2の測定法では、粒子のマレイミジル基量と蛍光強度との関係が直線的であった。これより、実施例1、2の粒子の蛍光強度が比較例の従来測定法によるマレイミジル基量に応じて定量評価が可能であることが明らかである。
【実施例3】
【0038】
新たに合成した下記水酸基含有架橋ポリマー粒子−10〜15に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、マレイミジル基含有の架橋ポリマー粒子を調製し、この粒子について、実施例1と同様の方法で、蛍光強度を測定した。
【0039】
(水酸基含有架橋ポリマー粒子−10〜15の合成)
実施例1において、t−ブチルメタクリレート(和光純薬(株)製)100部を用いたところを、t−ブチルメタクリレート(和光純薬(株)製)57.7部、スチレン(和光純薬(株)製)42.3部に変更した以外は同様にして、水酸基含有架橋ポリマー粒子−10〜15を得た。
【0040】
(結果)
実施例1と同様の方法で、傾向強度の測定を行った。その結果、水酸基含有架橋ポリマー粒子−10〜15から調製したマレイミジル基含有架橋ポリマー粒子についても、マレイミジル基量と蛍光強度との関係が直線的であった。これより、架橋ポリマー粒子の素材が異なる場合であっても、本発明の方法で定量評価が可能であることが明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】実施例1と実施例2の結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともマレイミジル基を含むポリマー粒子について、SH基を有する蛍光物質と前記マレイミジル基とを反応させ、該蛍光物質の蛍光量を測定することによって、前記ポリマー粒子のマレイミジル基の量を測定する定量方法。
【請求項2】
前記蛍光量が、フローサイトメーターで測定されることを特徴とする請求項1に記載の定量方法。
【請求項3】
前記蛍光物質と前記ポリマー粒子の総マレイミジル基とのモル比が1:1〜1:100となるように、前記蛍光物質と前記ポリマー粒子とを反応させることを特徴とする請求項2に記載の定量方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−71614(P2006−71614A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−259068(P2004−259068)
【出願日】平成16年9月6日(2004.9.6)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】