粒子挙動シミュレーション装置、粒子挙動シミュレーション方法、及びコンピュータプログラム
【課題】DEMを用いて粉体の挙動をシミュレーションする場合、粒子径比及び粒子密度に応じて、粒子検索範囲を最適化してシミュレーションすることにより演算処理負荷を軽減して高速シミュレーションを実現する粒子挙動シミュレーション装置、粒子挙動シミュレーション方法、及びコンピュータプログラムを提供する。
【解決手段】粒子径の相違する粒子間の距離に依存した複数の相互作用力に基づく粒子の挙動をシミュレートする。計算対象領域内で粒子径が最大である粒子から順次着目粒子とし、該着目粒子が存在する小領域内で相互に接触している粒子及び接触する可能性のある粒子を検索し、検索された粒子に関する情報を記憶する。着目粒子の積算変位を算出し、積算変位が所定値を越えた場合にのみ、粒子の検索を行い、所定値以下である場合、記憶してある粒子に関する情報に基づいて粒子の挙動をシミュレートする。
【解決手段】粒子径の相違する粒子間の距離に依存した複数の相互作用力に基づく粒子の挙動をシミュレートする。計算対象領域内で粒子径が最大である粒子から順次着目粒子とし、該着目粒子が存在する小領域内で相互に接触している粒子及び接触する可能性のある粒子を検索し、検索された粒子に関する情報を記憶する。着目粒子の積算変位を算出し、積算変位が所定値を越えた場合にのみ、粒子の検索を行い、所定値以下である場合、記憶してある粒子に関する情報に基づいて粒子の挙動をシミュレートする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子径の異なる粒子の挙動をシミュレーションする粒子挙動シミュレーション装置、粒子挙動シミュレーション方法、及びコンピュータプログラムに関し、特に粒子径の相違する粒子間に働く複数の相互作用を考慮する必要のある場合、例えば電子写真式画像形成プロセスにおける現像プロセスでの二成分現像剤の挙動等をシミュレーションする粒子挙動シミュレーション装置、粒子挙動シミュレーション方法、及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータ技術の急速な進展に伴い、演算処理負荷が過大であると考えられていた粉体、粒体等の粒子の挙動シミュレーション方法が多々実用化されている。例えば個別要素法、又は離散要素法(Discrete Element Method:以下DEMという)と呼ばれる方法を用いたシミュレーション方法が普及しており、DEMに基づいた粒子挙動シミュレータを利用した粉体挙動解析が実施される機会が多くなってきた。
【0003】
しかし、DEMに基づく粒子挙動シミュレーションは、粒子1個1個を演算単位としていることから演算処理負荷が非常に大きく、解析することが可能な粒子数に上限がある。さらに、例えばレーザプリンタ等における二成分現像剤の挙動をシミュレーションする場合、粒子間接触力以外に、現像剤に作用する磁気力、電気力、粒子間相互作用力等の外力、トナー及びキャリアの粒子径比を考慮する必要が在り、演算処理負荷はさらに増大する。したがって、実装に近い十分な粒子濃度におけるシミュレーションを精度良く実行することが非常に困難であるという問題点があった。
【0004】
そこで、例えば特許文献1には、粒子間の距離に依存した複数の相互作用、例えば粒子間接触力、磁気力等の夫々に対して有効距離を定め、該有効距離に応じて最適な分割領域の大きさを決定する粒子挙動計算方法が開示されている。特許文献1では、有効距離に応じて最適な分割領域の大きさを決定することから、不要な距離計算を最小限にすることができ、演算処理時間を短縮することが可能となる。
【特許文献1】特開2005−122354号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、有効距離の最大値と最小値との間で分割領域の大きさ、すなわち粒子検索範囲を定めていることから、所定の相互作用については不要な距離計算を省略することができる。しかし、すべての相互作用について適切な粒子検索範囲を特定することは困難であり、所定の相互作用については不要な距離計算を実行する必要も残されている。
【0006】
また、いずれの粒子検索範囲が最適であるのかは、シミュレーション演算の結果に基づいて判断するしかなく、演算処理時間の短縮効果は確実に得ることはできるものの、最小限であるか否かについては何等保証がない。粒子検索範囲を最適化するためには、結局分割されたセル(領域)の大きさを変動して複数回シミュレーション演算する必要が生じ、トータルのシミュレーション演算時間を大きく削減することは困難であるのが現状である。
【0007】
さらに、大小2種類の径を有する粒子が混在する場合、粒子が混在する空間における粒子濃度、粒子径比によっても、有効距離は大きく変動する。すなわち、粒子径比が大きい場合、一の粒子検索範囲に対してシミュレーション演算をした場合であっても不要な距離計算が必ず発生することから、大きさの異なる複数の粒子検索範囲を用いてシミュレーション演算する方が、却って演算処理効率が高くなり演算処理時間が短くなる場合も生じ得る。また、粒子検索範囲の大きさを変えずにシミュレーション演算する場合であっても、混在する粒子の体積濃度に応じて粒子検索範囲の大きさを最適化する必要がある。
【0008】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、DEMを用いて粉体の挙動をシミュレーションする場合、粒子径比及び粒子濃度に応じて、粒子検索範囲を最適化してシミュレーションすることにより演算処理負荷を軽減して高速シミュレーションを実現する粒子挙動シミュレーション装置、粒子挙動シミュレーション方法、及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために第1発明に係る粒子挙動シミュレーション装置は、粒子径の相違する粒子間の距離に依存した複数の相互作用力に基づく粒子の挙動を計算する計算対象領域を複数の領域に分割し、計算対象領域内に含まれる粒子の挙動をシミュレートする装置において、前記計算対象領域内で粒子径が最大である粒子から順次着目粒子とし、該着目粒子を内包する所定の大きさの小領域内で相互に接触している粒子及び接触する可能性のある粒子を検索する粒子検索手段と、検索された粒子に関する情報を記憶手段に記憶する手段と、着目粒子の積算変位を算出する手段と、積算変位が所定値を越えたか否かを判断する判断手段とを備え、該判断手段で所定値を越えたと判断した場合にのみ、前記粒子検索手段を用い、所定値以下であると判断した場合、前記記憶手段から読み出した粒子に関する情報に基づいて粒子の挙動をシミュレートするようにしてあることを特徴とする。
【0010】
また、第2発明に係る粒子挙動シミュレーション装置は、第1発明において、前記領域は正方領域であり、着目粒子の粒子径の、前記粒子検索手段にて検索された粒子の粒子径に対する粒子径比が2.0であり、前記粒子検索手段にて検索された小領域内の全粒子の体積の総和に対する、着目粒子と粒子径が相違する粒子の体積比が0.030乃至0.333である場合、前記領域の一辺の長さを粒子径の0.575乃至1.4倍に設定する手段を備えることを特徴とする。
【0011】
また、第3発明に係る粒子挙動シミュレーション装置は、第1発明において、前記領域は正方領域であり、着目粒子の粒子径の、前記粒子検索手段にて検索された粒子の粒子径に対する粒子径比を算出する手段と、前記粒子検索手段にて検索された小領域内の全粒子の体積の総和に対する、着目粒子と粒子径が相違する粒子の体積比を算出する手段と、算出した粒子径比及び体積比に基づいて、小領域を単一の大きさを有する領域で設定するか、複数の大きさを有する領域で設定するかを選択する手段と、前記小領域を複数の大きさを有する領域で設定する場合、体積比が0.5近傍であるときには前記領域の一辺の長さを粒子径の0.85乃至1.75倍に設定する手段とを備えることを特徴とする。
【0012】
また、第4発明に係る粒子挙動シミュレーション装置は、第1発明において、前記領域は正方領域であり、着目粒子の粒子径の、前記粒子検索手段にて検索された粒子の粒子径に対する粒子径比を算出する手段と、前記粒子検索手段にて検索された小領域内の全粒子の体積の総和に対する、着目粒子と粒子径が相違する粒子の体積比を算出する手段と、算出した粒子径比及び体積比に基づいて、小領域を単一の大きさを有する領域で設定するか、複数の大きさを有する領域で設定するかを選択する手段と、前記小領域を複数の大きさを有する領域で設定する場合、体積比が0.1近傍であるときには前記領域の一辺の長さを粒子径の1.1乃至1.8倍に設定する手段とを備えることを特徴とする。
【0013】
また、第5発明に係る粒子挙動シミュレーション方法は、粒子径の相違する粒子間の距離に依存した複数の相互作用力に基づく粒子の挙動を計算する計算対象領域を複数の領域に分割し、計算対象領域内に含まれる粒子の挙動をシミュレートする方法において、前記計算対象領域内で粒子径が最大である粒子から順次着目粒子とし、該着目粒子を内包する所定の大きさの小領域内で相互に接触している粒子及び接触する可能性のある粒子を検索し、検索された粒子に関する情報を記憶手段に記憶し、着目粒子の積算変位を算出し、積算変位が所定値を越えたか否かを判断し、所定値を越えたと判断した場合にのみ、粒子の検索を行い、所定値以下であると判断した場合、前記記憶手段から読み出した粒子に関する情報に基づいて粒子の挙動をシミュレートすることを特徴とする。
【0014】
また、第6発明に係る粒子挙動シミュレーション方法は、第5発明において、前記領域は正方領域であり、着目粒子の粒子径の、検索された粒子の粒子径に対する粒子径比が2.0であり、検索された小領域内の全粒子の体積の総和に対する、着目粒子と粒子径が相違する粒子の体積比が0.030乃至0.333である場合、前記領域の一辺の長さを粒子径の0.575乃至1.4倍に設定することを特徴とする。
【0015】
また、第7発明に係る粒子挙動シミュレーション方法は、第5発明において、前記領域は正方領域であり、着目粒子の粒子径の、検索された粒子の粒子径に対する粒子径比を算出し、検索された小領域内の全粒子の体積の総和に対する、着目粒子と粒子径が相違する粒子の体積比を算出し、算出した粒子径比及び体積比に基づいて、小領域を単一の大きさを有する領域で設定するか、複数の大きさを有する領域で設定するかを選択し、前記小領域を複数の大きさを有する領域で設定する場合、体積比が0.5近傍であるときには前記領域の一辺の長さを粒子径の0.85乃至1.75倍に設定することを特徴とする。
【0016】
また、第8発明に係る粒子挙動シミュレーション方法は、第5発明において、前記領域は正方領域であり、着目粒子の粒子径の、検索された粒子の粒子径に対する粒子径比を算出し、検索された小領域内の全粒子の体積の総和に対する、着目粒子と粒子径が相違する粒子の体積比を算出し、算出した粒子径比及び体積比に基づいて、小領域を単一の大きさを有する領域で設定するか、複数の大きさを有する領域で設定するかを選択し、前記小領域を複数の大きさを有する領域で設定する場合、体積比が0.1近傍であるときには前記領域の一辺の長さを粒子径の1.1乃至1.8倍に設定することを特徴とする。
【0017】
また、第9発明に係るコンピュータプログラムは、粒子径の相違する粒子間の距離に依存した複数の相互作用力に基づく粒子の挙動を計算する計算対象領域を複数の領域に分割し、計算対象領域内に含まれる粒子の挙動をシミュレートするコンピュータで実行することが可能なコンピュータプログラムにおいて、前記コンピュータを、前記計算対象領域内で粒子径が最大である粒子から順次着目粒子とし、該着目粒子を内包する所定の大きさの小領域内で相互に接触している粒子及び接触する可能性のある粒子を検索する粒子検索手段、検索された粒子に関する情報を記憶手段に記憶する手段、着目粒子の積算変位を算出する手段、積算変位が所定値を越えたか否かを判断する判断手段、及び該判断手段で所定値を越えたと判断した場合にのみ、前記粒子検索手段を用い、所定値以下であると判断した場合、前記記憶手段から読み出した粒子に関する情報に基づいて粒子の挙動をシミュレートする手段として機能させることを特徴とする。
【0018】
また、第10発明に係るコンピュータプログラムは、第9発明において、前記領域は正方領域であり、前記コンピュータを、着目粒子の粒子径の、前記粒子検索手段にて検索された粒子の粒子径に対する粒子径比が2.0であり、前記粒子検索手段にて検索された小領域内の全粒子の体積の総和に対する、着目粒子と粒子径が相違する粒子の体積比が0.030乃至0.333である場合、前記領域の一辺の長さを粒子径の0.575乃至1.4倍に設定する手段として機能させることを特徴とする。
【0019】
また、第11発明に係るコンピュータプログラムは、第9発明において、前記領域は正方領域であり、前記コンピュータを、着目粒子の粒子径の、前記粒子検索手段にて検索された粒子の粒子径に対する粒子径比を算出する手段、前記粒子検索手段にて検索された小領域内の全粒子の体積の総和に対する、着目粒子と粒子径が相違する粒子の体積比を算出する手段、算出した粒子径比及び体積比に基づいて、小領域を単一の大きさを有する領域で設定するか、複数の大きさを有する領域で設定するかを選択する手段、及び前記小領域を複数の大きさを有する領域で設定する場合、体積比が0.5近傍であるときには前記領域の一辺の長さを粒子径の0.85乃至1.75倍に設定する手段として機能させることを特徴とする。
【0020】
また、第12発明に係るコンピュータプログラムは、第9発明において、前記領域は正方領域であり、前記コンピュータを、着目粒子の粒子径の、前記粒子検索手段にて検索された粒子の粒子径に対する粒子径比を算出する手段、前記粒子検索手段にて検索された小領域内の全粒子の体積の総和に対する、着目粒子と粒子径が相違する粒子の体積比を算出する手段、算出した粒子径比及び体積比に基づいて、小領域を単一の大きさを有する領域で設定するか、複数の大きさを有する領域で設定するかを選択する手段、及び前記小領域を複数の大きさを有する領域で設定する場合、体積比が0.1近傍であるときには前記領域の一辺の長さを粒子径の1.1乃至1.8倍に設定する手段として機能させることを特徴とする。
【0021】
第1発明、第5発明、及び第9発明では、粒子径の相違する粒子間の距離に依存した複数の相互作用力に基づく粒子の挙動を計算する計算対象領域を複数の領域に分割し、計算対象領域内に含まれる粒子の挙動をシミュレートする。計算対象領域内で粒子径が最大である粒子から順次着目粒子とし、該着目粒子を内包する所定の大きさの小領域内で相互に接触している粒子及び接触する可能性のある粒子を検索し、検索された粒子に関する情報を記憶手段に記憶する。着目粒子の積算変位を算出し、積算変位が所定値を越えた場合にのみ粒子の検索を行い、所定値以下である場合、記憶手段から読み出した粒子に関する情報に基づいて粒子の挙動をシミュレートする。これにより、最大径を有する粒子から順に該粒子径を基準とした粒子検索範囲内にて接触粒子を検索し、移動量が所定値、例えば粒子径の4%を越えた場合にのみ再度接触粒子を検索するようにすることで、接触粒子の検索処理回数を大きく削減することができ、粒子の挙動シミュレーションに要する演算処理時間を大幅に短縮することが可能となる。なお、粒子の運動状態、サンプリング時間間隔等により、再度接触粒子を検索するか否かの判断基準となる移動距離が変動することは言うまでも無い。
【0022】
第2発明、第6発明、及び第10発明では、領域は正方領域であり、着目粒子の粒子径の、検索された粒子の粒子径に対する粒子径比が2.0であり、検索された小領域内の全粒子の体積の総和に対する、着目粒子と粒子径が相違する粒子の体積比が0.030乃至0.333である場合、領域の一辺の長さを粒子径の0.575乃至1.4倍に設定する。粒子径比が2.0で、体積比(粒子濃度)が0.030乃至0.333である場合には、セル(領域)の一辺の長さを粒子径の0.575乃至1.4倍に設定したときに、粒子の挙動シミュレーションに要する演算処理時間が最短になることが実験的に確認されている。
【0023】
第3発明、第4発明、第7発明、第8発明、第11発明及び第12発明では、領域は正方領域であり、着目粒子の粒子径の、検索された粒子の粒子径に対する粒子径比を算出し、検索された小領域内の全粒子の体積の総和に対する、着目粒子と粒子径が相違する粒子の体積比を算出する。算出した粒子径比及び体積比に基づいて、小領域を単一の大きさを有する領域で設定するか、複数の大きさを有する領域で設定するかを選択する。小領域を複数の大きさを有する領域で設定する場合、体積比が0.5近傍であるときには領域の一辺の長さを粒子径の0.85乃至1.75倍に設定する。また、体積比が0.1近傍であるときには領域の一辺の長さを粒子径の1.1乃至1.8倍に設定する。
【0024】
これにより、粒子径比及び体積比に応じてセル(領域)の大きさを単一とするか変動させるかを選択することにより、より適切なセル(領域)に基づく小領域にて粒子検索を行うことができ、全体としてシミュレーション演算時間を短縮することが可能となる。また、体積比が0.5近傍であるときには領域の一辺の長さを粒子径の0.85乃至1.75倍に、体積比が0.1近傍であるときには領域の一辺の長さを粒子径の1.1乃至1.8倍に、それぞれセル(領域)の大きさを設定することで、粒子の挙動シミュレーションに要する演算処理時間が最短になることが実験的に確認されている。
【発明の効果】
【0025】
第1発明、第5発明、及び第9発明によれば、最大径を有する粒子から順に該粒子径を基準とした粒子検索範囲内にて接触粒子を検索し、移動量が所定値、例えば粒子径の4%を越えた場合にのみ再度接触粒子を検索するようにすることで、接触粒子の検索処理回数を大きく削減することができ、粒子の挙動シミュレーションに要する演算処理時間を大幅に短縮することが可能となる。なお、粒子の運動状態、サンプリング時間間隔等により、再度接触粒子を検索するか否かの判断基準となる移動距離が変動することは言うまでも無い。
【0026】
第2発明、第6発明、及び第10発明によれば、粒子径比が2.0であり、体積比が0.030乃至0.333である場合、領域の一辺の長さを粒子径の0.575乃至1.4倍に設定することにより、粒子の挙動シミュレーションに要する演算処理時間が最短にすることが可能となる。
【0027】
第3発明、第4発明、第7発明、第8発明、第11発明及び第12発明によれば、粒子径比及び体積比に応じてセル(領域)の大きさを単一とするか変動させるかを選択することにより、より適切なセル(領域)に基づく小領域にて粒子検索を行うことができ、全体としてシミュレーション演算時間を短縮することが可能となる。また、体積比が0.5近傍であるときには領域の一辺の長さを粒子径の0.85乃至1.75倍に、体積比が0.1近傍であるときには領域の一辺の長さを粒子径の1.1乃至1.8倍に、それぞれセル(領域)の大きさを設定することにより、粒子の挙動シミュレーションに要する演算処理時間が最短にすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態に係る粒子挙動シミュレーション装置について図面に基づいて具体的に説明する。
【0029】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る粒子挙動シミュレーション装置1の構成を示すブロック図である。図1において、粒子挙動シミュレーション装置1は、少なくとも、CPU(中央演算装置)11、補助記憶手段12、RAM13、記憶手段14、通信手段15、入力手段16、表示手段17、出力手段18、及び上述したハードウェアを接続する内部バス19で構成されている。
【0030】
CPU11は、内部バス19を介して粒子挙動シミュレーション装置1の上述したようなハードウェア各部と接続されており、上述したハードウェア各部を制御するとともに、RAM13に記憶されているコンピュータプログラム3に従って、種々のソフトウェア的機能を実行する。RAM13は、SRAM、フラッシュメモリ等で構成され、コンピュータプログラム(ロードモジュール)、該コンピュータプログラムの実行時に発生する一時的なデータ等を記憶する。
【0031】
記憶手段14は、内蔵される固定型記憶装置(ハードディスク)、ROM等の他、DVD、CD−ROM等の可搬型記録媒体2で構成されている。記憶手段14に記憶されているコンピュータプログラム3は、プログラム及びデータ等の情報を記録したCD−ROM等の可搬型記録媒体2から、補助記憶手段12によりダウンロードされ、実行時には記憶手段14からRAM13へ展開して実行される。
【0032】
通信手段15は内部バス19に接続されており、インターネット、LAN、WAN等の外部のネットワーク網に接続されることにより、外部のコンピュータとデータ送受信を行うことが可能となっている。したがって、複数の外部コンピュータと並列処理を実行することにより、さらなる演算時間の短縮が可能となる。
【0033】
入力手段16は、キーボード及びマウス等のデータ入力媒体であり、表示手段17は、CRTモニタ、LCD等の表示装置である。出力手段18は、レーザプリンタ、ドットプリンタ等の印刷装置等である。
【0034】
以下、本実施の形態1で用いるDEMについて説明する。DEMは、粉体を形成する各粒子に作用する力を全て算出し、算出した粒子に作用する力による各粒子の運動方程式を逐次解くことで、粒体挙動を求める方法である。
【0035】
粒子に作用する力としては、重力のような外力のみではなく、壁と粒子との接触及び粒子間の接触による接触力も含まれる。粒子に作用する力の大きさは、法線方向の速度及び粒子の接触状態により決定される。各粒子の接触状態を計算するためには、各粒子間の距離計算を実施する必要がある。全ての粒子間で距離計算を行うと、粒子数がn(nは自然数)である場合、n(n−1)/2回の計算が必要となり、粒子数nが大きくなった場合には計算量が膨大になるという問題点があった。
【0036】
そこで、距離計算の対象となる小領域を粒子ごとに変動させる。すなわち、接触判定(距離計算)を実施する粒子を、着目粒子の粒子径(粒子の直径)により特定される小領域と該小領域内に存在する粒子に制限する。図2は、DEMによる接触判定対象となる粒子限定方法に一例を示す図である。
【0037】
図2の例では、着目粒子21を含むセル24及びその周辺の8セルを含む領域を小領域25としており、小領域25に含まれる粒子22を距離計算の対象とする。小領域25に含まれていない粒子23は、着目粒子21と接触する可能性がないものと判断し、距離計算の対象から除外される。
【0038】
一方、電子写真における現像剤挙動のシミュレーション演算を実行する場合、上述のような粒子間接触により作用する力だけではなく、磁気的な吸引力、静電気力、ファンデルワース力等も考慮して粒子の挙動をシミュレーションする必要がある。例えば磁気的な吸引力は、磁場中で着目粒子21が他の粒子又はマグネットローラからの磁界により受ける磁気力である。
【0039】
また、静電気力は、現像電界、静電潜像から発生する電場による静電気力だけではなく、粒子間の接触、摩擦等により帯びた電荷により発生する粒子間力も存在する。例えばトナー粒子とキャリア粒子との間には静電気的引力が、トナー粒子間には静電気的斥力が発生し、クーロンの電荷式によりその大きさを求めることができる。さらに、ファンデルワース力は、粒子径の相違するトナー粒子とキャリア粒子との間に作用する普遍的な近接力である。
【0040】
図3及び図4は、本発明の実施の形態1に係る粒子挙動シミュレーション装置1のCPU11の粒子挙動のシミュレート処理の手順を示すフローチャートである。粒子挙動シミュレーション装置1のCPU11は、まず計算に必要な各種物理パラメータ、粒子の初期配置等の計算条件を取得し(ステップS301)、シミュレーションの対象となる計算領域を粒子の配置等に応じて適切な大きさのセル(領域)に分割する(ステップS302)。CPU11は、存在する粒子の中で最大径を有する粒子を着目粒子として設定し(ステップS303)、着目粒子の粒子径に基づいて粒子検索範囲である小領域を設定する(ステップS304)。CPU11は、設定された小領域内で着目粒子と接触している粒子、又は接触するおそれがある粒子を検索し(ステップS305)、検索された粒子に関する情報(位置、粒子径等)を記憶する(ステップS306)。
【0041】
CPU11は、計算領域に存在する全ての粒子について粒子検索処理が終了したか否かを判断し(ステップS307)、CPU11が終了していないと判断した場合(ステップS307:NO)、CPU11は、次に粒子径の大きい粒子を着目粒子として設定し(ステップS308)、処理をステップS304へ戻して、上述した処理を繰り返す。CPU11が終了したと判断した場合(ステップS307:YES)、CPU11は、記憶されている粒子ごと(着目粒子含む)に作用する力等を算出し(ステップS309)、記憶されている全ての粒子に作用する力を算出したか否かを判断する(ステップS310)。
【0042】
CPU11が、未算出である粒子が存在すると判断した場合(ステップS310:NO)、CPU11は、処理をステップS309へ戻し、上述した粒子ごとに作用する力を算出する。CPU11が、全ての粒子に作用する力を算出したと判断した場合(ステップS310:YES)、CPU11は、各粒子の運動方程式を解くことにより、粒子ごとの加速度、速度及び変位を算出し(ステップS311)、それぞれの粒子位置を更新する(ステップS312)。
【0043】
CPU11は、シミュレート処理を終了するか否かを判断し(ステップS313)、CPU11が、シミュレート処理を終了すると判断した場合(ステップS313:YES)、CPU11は、シミュレート処理を終了する。終了条件は特に限定されるものではなく、例えばシミュレートする期間が経過したか否かにより終了するか否かを判断する。
【0044】
CPU11が、シミュレート処理を終了しないと判断した場合(ステップS313:NO)、CPU11は、シミュレート処理を再実行する場合に粒子検索処理を再度実行するか否かを判断する。すなわち、CPU11は、着目粒子の変位を積算して初期位置からの積算変位を算出し(ステップS314)、積算変位が所定値を越えたか否かを判断する(ステップS315)。CPU11が、積算変位が所定値以下であると判断した場合(ステップS315:NO)、CPU11は、記憶してある粒子に関する情報を読み出して、処理をステップS309へ戻して、上述した処理を繰り返す。CPU11が、積算変位が所定値を越えたと判断した場合(ステップS315:YES)、CPU11は、処理をステップS303へ戻し、上述した処理を繰り返す。
【0045】
すなわち、着目粒子が所定値より大きく移動した場合にのみ粒子検索処理を再度実行し、着目粒子が所定値よりも移動していない場合には、粒子検索処理を再度実行する必要が無い。したがって、粒子検索処理を実行しない分だけ演算処理負荷を軽減することができ、シミュレーション演算の実行時間を大きく短縮することが可能となる。
【0046】
着目粒子に対して接触する粒子の検索処理は、以下の手順で実行する。説明を簡単にするために、まず粒子径が単一である場合の検索処理の手順について説明する。
【0047】
一般に小領域は、二次元では正方形状であり、三次元では立方体である。小領域の一辺に含まれるセル数をns とした場合、三次元モデルでは、平均検索セル数nscは(数1)のように領域の一辺に含まれるセル数ns の三乗となる。
【0048】
nsc=ns3 ・・・ (数1)
【0049】
一方、セル1個当たりの一辺の長さをr、検索対象範囲を定める係数をλとした場合、検索対象となる小領域の体積Vcは、ns・λ・rの三乗となる。検索対象となる小領域内に存在する粒子数nc は(数2)で求めることができる。
【0050】
nc = n・Vc /V ・・・ (数2)
【0051】
したがって、検索対象となる小領域ごとの粒子間の接触判定回数の平均値nccは、(数3)により求めることができる。
【0052】
ncc = (nc −1)/2 ・・・ (数3)
【0053】
よって、粒子検索の計算負荷をKscとし、接触判定の計算負荷をKccとした場合、粒子径が単一である場合の検索対象となる最適な小領域の一辺の長さLpdは、(数4)により算出することができる。もちろん、最適な小領域の大きさを求める手段は、特にこれに限定されるものではない。
【0054】
Lpd = Ksc・nsc + Kcc・ncc
= Ksc・ns3 + Kcc・(n・Vc /V−1)/2 ・・・ (数4)
【0055】
図5は、粒子径が単一である場合のセルの大きさと接触粒子数との関係を示す模式図である。図5(a)は着目粒子21の粒子径に対して分割したセル24の大きさが大きい場合の状態を示す図を、図5(b)は着目粒子21の粒子径に対して分割したセル24の大きさが小さい場合の状態を示す図を、それぞれ示している。図5(a)に示すように、着目粒子21の粒子径に対してセル24の大きさが大きい場合、検索対象となる小領域25に含まれるセル24の数は少なくなり、一の小領域で検索される粒子の数は多くなる。一方、図5(b)に示すように、着目粒子21の粒子径に対してセル24の大きさが小さい場合、検索対象となる小領域25に含まれるセル24の数は多くなり、一の小領域で検索される粒子の数が少なくなる。したがって、シミュレーション演算時間を短縮すべく、演算処理負荷が比較的大きい粒子検索処理を少しでも軽減するためには、着目粒子21の粒子径に対してセル24の大きさが大きい方が好ましいことがわかる。
【0056】
実際には、粒子径が相違する粒子が混在していることから、検索対象となる小領域の大きさを、最大径を有する粒子21を含むセル24の大きさに基づいて特定すれば最も演算処理負荷を軽減することができる。図6は、検索対象となる小領域25を粒子径に基づいて定める方法を示す図である。着目粒子21の直径をr1とし、他の粒子の直径をr2とし、最大径を有する粒子の直径をrmax とした場合、(数5)により検索対象となる小領域の一辺の長さLs を決定する。
【0057】
Ls = ri±rmax ・・・ (数5)
ただし、iは自然数
【0058】
セル24の大きさは、着目粒子21の粒子径によって一定の大きさに特定されていることから、着目粒子21の直径の大小に応じて検索対象となる小領域25に含まれるセル24、24、・・・の数が変動する。図6の例では、小領域61は、着目粒子21が大きい粒子径を有する粒子である場合に特定される小領域を示しており、小領域62は、着目粒子が小さい粒子径を有する粒子である場合に特定される小領域を示している。すなわち、(数5)からも明らかなように、着目粒子21が大きい粒子径を有する粒子である場合、接触粒子の検索対象となる小領域61がより広範になる。
【0059】
接触粒子の検索対象となる小領域61が広範となる順に粒子の検索対象範囲となる小領域を特定していくことにより、計算領域に含まれる小領域の数が最小となることから、演算処理負荷が比較的大きい粒子検索処理を少しでも軽減することができ、シミュレーション演算時間を短縮することが可能となる。
【0060】
図7は、本実施の形態1に係る粒子挙動シミュレーション方法において、1セル当たりの粒子数に対するシミュレーション時間の変動の度合を示す図である。図7では、横軸に1セル当たりに含まれている粒子の数nを示しており、縦軸に相互に接触する粒子を検索する粒子検索処理の時間を、最短の処理時間に対する比率Rで示している。なお、粒子検索処理のシミュレーション演算は、CPUとしてIBM社製のパワーピーシー(PowerPC)970(R)の1.6GHzを使用し、メモリを2GB、コンパイラとしてIBM社製の「エックスエルフォートラン(XLFortran)バージョン9.1」を用い、粒子径比及び1セル当たりの粒子数を変動させて実施した。
【0061】
図7では、粒子径の異なる粒子が混在する場合に、粒子径比の相違により粒子検索処理に要する時間が変動するか否かを確認すべく、粒子径比が2.0(□印)、4.0(○印)、6.0(△印)、8.0(▽印)、10.0(×印)の場合の粒子検索処理に要する時間をプロットしている。図7の結果から明らかなように、粒子検索処理に要する時間の長短は、粒子径比に依存することなく、むしろ1セル当たりに含まれている粒子の数nに依存していることがわかる。
【0062】
したがって、粒子検索処理に要する時間が最短である時間から5%以内の変動時間幅では、1セル当たりの粒子数が1.0乃至5.0個であることを確認することができる。これは、セルが正方領域であり、粒子径比を2.0、体積比を0.030乃至0.333とした場合、セルの一辺の長さが粒子径(最大径を有する粒子の直径)の0.575乃至1.4倍となることに相当する。セルを斯かる範囲の大きさとして粒子検索対象となる小領域を設定することにより、シミュレーション演算時間を最短にすることが可能となる。
【0063】
(実施の形態2)
以下、本発明の実施の形態2に係る粒子挙動シミュレーション装置1について図面を参照しながら具体的に説明する。実施の形態2に係る粒子挙動シミュレーション装置1の構成は実施の形態1と同様であることから、同一の符号を付することにより詳細な説明を省略する。本実施の形態2は、粒子検索対象となる小領域の大きさを、混在する粒子の粒子径比、及び混在する状態での体積比に基づいて変更する点で実施の形態1と相違する。
【0064】
混在する粒子の粒子径比は、検索された粒子の粒子径の、着目粒子の粒子径に対する粒子径比として算出する。例えば粒子径がr1とr2との2種類(r1>r2)の粒子が混在している場合、着目粒子を粒子径r1の粒子としたときには、粒子径r2の粒子の粒子径比r1/r2を採用する。
【0065】
また、体積比は、一の小領域ごとに、含まれる全粒子の体積の総和に対する、着目粒子と粒子径が相違する、すなわち着目粒子よりも粒子径が小さい粒子の体積比(以下、小粒子体積比という)として算出する。例えば粒子径がr1とr2との2種類(r1>r2)の粒子が混在している場合、着目粒子を粒子径r1の粒子としたときには、粒子径r2の粒子の体積V2の、粒子径r1の着目粒子の体積V1と粒子径r2の粒子の体積V2との和に対する比V2/(V1+V2)を小粒子体積比として採用する。
【0066】
図8は、セルと検索対象範囲である小領域との関係を模式的に示す図である。図8(a)は、実施の形態1で示す一の大きさを有するセルを用いた場合を示しており、粒子径が単一である場合に最も効率よく粒子検索を行うことができる小領域を特定することができる。しかし、実際には図8(b)のように粒子径が異なる粒子が混在しており、均等に混在している場合には一の大きさを有するセルを用いても効率よく粒子検索を行うことができる小領域を特定することができる場合も生じ得るが、混在する度合が変動する以上、一の大きさを有するセルを用いる方法では最適化が困難である。
【0067】
そこで、図8(b)に示すように、粒子径が大きい粒子に対する大きさのセルと、粒子径が小さい粒子に対する大きさのセルとの2種類を併用する。実施の形態1でも説明したように、着目粒子の粒子径に対してセルの大きさが大きい場合、検索対象となる小領域に含まれるセルの数は少なくなり、一の小領域で検索される粒子の数は多くなる。一方、着目粒子の粒子径に対してセルの大きさが小さい場合、検索対象となる小領域に含まれるセルの数は多くなり、一の小領域で検索される粒子の数が少なくなる。したがって、シミュレーション演算時間を短縮すべく、演算処理負荷が比較的大きい粒子検索処理を少しでも軽減するためには、着目粒子の粒子径に対してセルの大きさが大きい方が好ましい。
【0068】
しかし、着目粒子の粒子径に対してセルの大きさが大きい場合であっても、特定のセルには着目粒子がほとんど存在せず、粒子径の小さい粒子のみが存在するに等しい分布状態となっているセルも存在する。例えばセル81には、着目粒子が中心として存在しているが、セル82には、着目粒子よりも粒子径の小さい粒子で大部分が占められている。
【0069】
この場合、着目粒子に基づいて定まる小領域を用いるよりも、粒子径の小さい粒子に基づいて小領域を定めて粒子検索を行った方が、検索効率が高まる。したがって、粒子径の小さい粒子の体積濃度に基づいて、実施の形態1と同様に一の大きさのセルのみに基づいて小領域を特定するか、複数の種類のセルを用いて小領域を特定するか、選択することにより、シミュレーション演算効率をさらに高めることができ、演算処理時間をより短縮することが可能となる。
【0070】
図9は、本実施の形態2に係る粒子挙動シミュレーション方法において、1セル当たりの粒子数に対するシミュレーション時間の変動の度合を示す図である。図9では、横軸に1セル当たりに含まれている粒子の数nを示しており、縦軸に相互に接触する粒子を検索する粒子検索処理の時間を、最短の処理時間に対する比率Rで示している。なお、粒子検索処理のシミュレーション演算は、CPUとしてIBM社製のパワーピーシー(PowerPC)970(R)の1.6GHzを使用し、メモリを2GB、コンパイラとしてIBM社製の「エックスエルフォートラン(XLFortran)バージョン9.1」を用い、粒子径比及び1セル当たりの粒子数を変動させて実施した。
【0071】
図9では、粒子径の異なる粒子が混在する場合に、粒子径比の相違により粒子検索処理に要する時間が変動するか否かを確認すべく、粒子径比が2.0(□印)、4.0(○印)、6.0(△印)、8.0(▽印)、10.0(×印)の場合の粒子検索処理に要する時間をプロットしている。図9の結果から明らかなように、粒子検索処理の時間比率Rは、Rが1.3よりも小さい部分では、粒子径比が相違した場合であっても略一致しているのに対し、Rが1.3よりも大きい部分では、粒子径比の相違により若干のばらつきが見られる。
【0072】
これは、粒子検索処理を1.3倍以上高速化する場合には、単一の大きさのセルを用いる粒子検索処理では粒子径比の相違により演算処理効率が低下することを示しており、粒子検索処理を1.3倍以上高速化する場合には、大きさの異なる複数のセルを用いる粒子検索処理を行った方が、演算処理効率がより高まることを示唆している。図10は、粒子径比及び小粒子体積比に対する粒子検索処理のシミュレーション時間の変動の度合を示す図である。なお、シミュレーション演算は、CPUとしてIBM社製のパワーピーシー(PowerPC)970(R)の1.6GHzを使用し、メモリを2GB、コンパイラとしてIBM社製の「エックスエルフォートラン(XLFortran)バージョン9.1」を用い、粒子径比及び小粒子体積比を変動させて実施した。
【0073】
図10では、粒子径の異なる粒子が混在する場合に、粒子の混在する密度、例えば粒子径の小さい粒子が存在する比率である小粒子体積比の相違により粒子検索処理に要する時間が変動するか否かを確認すべく、粒子径比が2.0(□印)、4.0(○印)、6.0(△印)、8.0(▽印)、10.0(×印)の場合の粒子検索処理に要する時間比率Rをプロットしている。粒子検索処理の時間比率Rが1.3よりも小さい部分101では、実施の形態1と同様に、単一のセルの大きさに基づいて小領域を特定して粒子検索処理を実行した場合と、セルの大きさを変動させて小領域を特定して粒子検索処理を実行した場合とで、粒子検索処理に要する時間に差が生じない。
【0074】
一方、粒子検索処理の時間比率Rが1.3よりも大きい部分102では、粒子径比が相違した場合には、小粒子体積比の大小により粒子検索処理の時間比率Rが大きく変動する。したがって、図10の例では、粒子径比が2.0である場合、小粒子体積比に応じてセルの大きさ、ひいては小領域の大きさを設定することにより、単一のセルの大きさに基づいて小領域を特定して粒子検索処理を実行した場合よりも、大きく粒子検索処理を高速化することができ、シミュレーション演算時間をより短縮することができる。
【0075】
図11は、小粒子体積比と粒子検索処理の時間比率Rとの関係を示す図である。曲線111は、小粒子体積比が0.5である場合の、曲線112は、小粒子体積比が0.091である場合の、それぞれ1セル当たりの粒子数に対応した粒子検索処理の時間比率Rを示している。なお、粒子検索処理のシミュレーション演算は、CPUとしてIBM社製のパワーピーシー(PowerPC)970(R)の1.6GHzを使用し、メモリを2GB、コンパイラとしてIBM社製の「エックスエルフォートラン(XLFortran)バージョン9.1」を用い、粒子径比及び1セル当たりの粒子数を変動させて実施した。
【0076】
図11から明らかなように、粒子検索処理に要する時間が最短である時間から5%以内の変動時間幅では、小粒子体積比が0.5近傍であるときには一の小領域に0.5乃至4個の粒子が存在する大きさにセルを設定することでシミュレーション時間を最短にすることができる。これは、セルが正方領域である場合に、セルの一辺の長さを粒子径の0.85乃至1.75倍に設定することに相当する。また、小粒子体積比が0.1近傍であるときには一の小領域に0.2乃至0.8個の粒子が存在する大きさに小領域を設定することでシミュレーション時間を最短にすることができる。これは、セルが正方領域である場合に、セルの一辺の長さを粒子径の1.1乃至1.8倍に設定することに相当する。
【0077】
図12及び図13は、本発明の実施の形態2に係る粒子挙動シミュレーション装置1のCPU11の粒子挙動のシミュレート処理の手順を示すフローチャートである。粒子挙動シミュレーション装置1のCPU11は、まず計算に必要な各種物理パラメータ、粒子の初期配置等の計算条件を取得し(ステップS1201)、シミュレーションの対象となる計算領域を粒子の配置等に応じて適切な大きさのセル(領域)に分割する(ステップS1202)。CPU11は、存在する粒子の中で最大径を有する粒子を着目粒子として設定し(ステップS1203)、着目粒子の粒子径に基づいて粒子検索範囲である小領域を設定する(ステップS1204)。CPU11は、設定された小領域内で着目粒子と接触している粒子、又は接触するおそれがある粒子を検索する(ステップS1205)。
【0078】
CPU11は、着目粒子と他の粒子との粒子径比を算出し(ステップS1206)、小領域ごとに検索された粒子径の小さい粒子の体積比である小粒子体積比を算出する(ステップS1207)。CPU11は、粒子径比及び小粒子体積比に基づいて、セルのサイズを変更すべきか否かを判断し(ステップS1208)、CPU11が、セルのサイズを変更すべきであると判断した場合(ステップS1208:YES)、CPU11は、セルのサイズを変更し(ステップS1209)、処理をステップS1204へ戻し、上述した処理を繰り返す。
【0079】
CPU11が、セルのサイズを変更する必要が無いと判断した場合(ステップS1208:NO)、CPU11は、検索された粒子に関する情報(位置、粒子径等)を記憶する(ステップS1210)。CPU11は、計算領域に存在する全ての粒子について粒子検索処理が終了したか否かを判断し(ステップS1211)、CPU11が終了していないと判断した場合(ステップS1211:NO)、CPU11は、次に粒子径の大きい粒子を着目粒子として設定し(ステップS1212)、処理をステップS1204へ戻して、上述した処理を繰り返す。CPU11が終了したと判断した場合(ステップS1211:YES)、CPU11は、記憶されている粒子ごと(着目粒子含む)に作用する力等を算出し(ステップS1213)、記憶されている全ての粒子に作用する力を算出したか否かを判断する(ステップS1214)。
【0080】
CPU11が、未算出である粒子が存在すると判断した場合(ステップS1214:NO)、CPU11は、処理をステップS1213へ戻し、上述した粒子に作用する力を算出する。CPU11が、全ての粒子に作用する力を算出したと判断した場合(ステップS1214:YES)、CPU11は、各粒子の運動方程式を解くことにより、粒子ごとの加速度、速度及び変位を算出し(ステップS1215)、それぞれの粒子位置を更新する(ステップS1216)。
【0081】
CPU11は、シミュレート処理を終了するか否かを判断し(ステップS1217)、CPU11が、シミュレート処理を終了すると判断した場合(ステップS1217:YES)、CPU11は、シミュレート処理を終了する。終了条件は特に限定されるものではなく、例えばシミュレートする期間が経過したか否かにより終了するか否かを判断する。
【0082】
CPU11が、シミュレート処理を終了しないと判断した場合(ステップS1217:NO)、CPU11は、シミュレート処理を再実行する場合に粒子検索処理を再度実行するか否かを判断する。すなわち、CPU11は、着目粒子の変位を積算して初期位置からの積算変位を算出し(ステップS1218)、積算変位が所定値を越えたか否かを判断する(ステップS1219)。CPU11が、積算変位が所定値以下であると判断した場合(ステップS1219:NO)、CPU11は、記憶してある粒子に関する情報を読み出して、処理をステップS1213へ戻して、上述した処理を繰り返す。CPU11が、積算変位が所定値を越えたと判断した場合(ステップS1219:YES)、CPU11は、処理をステップS1203へ戻し、上述した処理を繰り返す。
【0083】
以上のように本実施の形態2によれば、粒子径比及び体積比に応じてセルの大きさを単一とするか変動させるかを選択することにより、より適切なセルに基づく小領域にて粒子検索を行うことができ、全体としてシミュレーション演算時間を短縮することが可能となる。また、体積比が0.5近傍であるときには領域の一辺の長さを粒子径の0.85乃至1.75倍に、体積比が0.1近傍であるときには領域の一辺の長さを粒子径の1.1乃至1.8倍に、それぞれセルの大きさを設定することにより、粒子の挙動シミュレーションに要する演算処理時間が最短にすることが可能となる。
【0084】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲内の記載であれば多種の変形、置換等が可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の実施の形態1に係る粒子挙動シミュレーション装置の構成を示すブロック図である。
【図2】DEMによる接触判定対象となる粒子限定方法に一例を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る粒子挙動シミュレーション装置のCPUの粒子挙動のシミュレート処理の手順を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施の形態1に係る粒子挙動シミュレーション装置のCPUの粒子挙動のシミュレート処理の手順を示すフローチャートである。
【図5】粒子径が単一である場合のセルの大きさと接触粒子数との関係を示す模式図である。
【図6】検索対象となる小領域を粒子径に基づいて定める方法を示す図である。
【図7】本実施の形態1に係る粒子挙動シミュレーション方法において、1セル当たりの粒子数に対するシミュレーション時間の変動の度合を示す図である。
【図8】セルと検索対象範囲である小領域との関係を模式的に示す図である。
【図9】本実施の形態2に係る粒子挙動シミュレーション方法において、1セル当たりの粒子数に対するシミュレーション時間の変動の度合を示す図である。
【図10】粒子径比及び小粒子体積比に対する粒子検索処理のシミュレーション時間の変動の度合を示す図である。
【図11】小粒子体積比と粒子検索処理の時間比率Rとの関係を示す図である。
【図12】本発明の実施の形態2に係る粒子挙動シミュレーション装置のCPUの粒子挙動のシミュレート処理の手順を示すフローチャートである。
【図13】本発明の実施の形態2に係る粒子挙動シミュレーション装置のCPUの粒子挙動のシミュレート処理の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0086】
1 粒子挙動シミュレーション装置
11 CPU
12 補助記憶手段
13 RAM
14 記憶手段
15 通信手段
16 入力手段
17 表示手段
21 着目粒子
24 セル
25 小領域
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子径の異なる粒子の挙動をシミュレーションする粒子挙動シミュレーション装置、粒子挙動シミュレーション方法、及びコンピュータプログラムに関し、特に粒子径の相違する粒子間に働く複数の相互作用を考慮する必要のある場合、例えば電子写真式画像形成プロセスにおける現像プロセスでの二成分現像剤の挙動等をシミュレーションする粒子挙動シミュレーション装置、粒子挙動シミュレーション方法、及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータ技術の急速な進展に伴い、演算処理負荷が過大であると考えられていた粉体、粒体等の粒子の挙動シミュレーション方法が多々実用化されている。例えば個別要素法、又は離散要素法(Discrete Element Method:以下DEMという)と呼ばれる方法を用いたシミュレーション方法が普及しており、DEMに基づいた粒子挙動シミュレータを利用した粉体挙動解析が実施される機会が多くなってきた。
【0003】
しかし、DEMに基づく粒子挙動シミュレーションは、粒子1個1個を演算単位としていることから演算処理負荷が非常に大きく、解析することが可能な粒子数に上限がある。さらに、例えばレーザプリンタ等における二成分現像剤の挙動をシミュレーションする場合、粒子間接触力以外に、現像剤に作用する磁気力、電気力、粒子間相互作用力等の外力、トナー及びキャリアの粒子径比を考慮する必要が在り、演算処理負荷はさらに増大する。したがって、実装に近い十分な粒子濃度におけるシミュレーションを精度良く実行することが非常に困難であるという問題点があった。
【0004】
そこで、例えば特許文献1には、粒子間の距離に依存した複数の相互作用、例えば粒子間接触力、磁気力等の夫々に対して有効距離を定め、該有効距離に応じて最適な分割領域の大きさを決定する粒子挙動計算方法が開示されている。特許文献1では、有効距離に応じて最適な分割領域の大きさを決定することから、不要な距離計算を最小限にすることができ、演算処理時間を短縮することが可能となる。
【特許文献1】特開2005−122354号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、有効距離の最大値と最小値との間で分割領域の大きさ、すなわち粒子検索範囲を定めていることから、所定の相互作用については不要な距離計算を省略することができる。しかし、すべての相互作用について適切な粒子検索範囲を特定することは困難であり、所定の相互作用については不要な距離計算を実行する必要も残されている。
【0006】
また、いずれの粒子検索範囲が最適であるのかは、シミュレーション演算の結果に基づいて判断するしかなく、演算処理時間の短縮効果は確実に得ることはできるものの、最小限であるか否かについては何等保証がない。粒子検索範囲を最適化するためには、結局分割されたセル(領域)の大きさを変動して複数回シミュレーション演算する必要が生じ、トータルのシミュレーション演算時間を大きく削減することは困難であるのが現状である。
【0007】
さらに、大小2種類の径を有する粒子が混在する場合、粒子が混在する空間における粒子濃度、粒子径比によっても、有効距離は大きく変動する。すなわち、粒子径比が大きい場合、一の粒子検索範囲に対してシミュレーション演算をした場合であっても不要な距離計算が必ず発生することから、大きさの異なる複数の粒子検索範囲を用いてシミュレーション演算する方が、却って演算処理効率が高くなり演算処理時間が短くなる場合も生じ得る。また、粒子検索範囲の大きさを変えずにシミュレーション演算する場合であっても、混在する粒子の体積濃度に応じて粒子検索範囲の大きさを最適化する必要がある。
【0008】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、DEMを用いて粉体の挙動をシミュレーションする場合、粒子径比及び粒子濃度に応じて、粒子検索範囲を最適化してシミュレーションすることにより演算処理負荷を軽減して高速シミュレーションを実現する粒子挙動シミュレーション装置、粒子挙動シミュレーション方法、及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために第1発明に係る粒子挙動シミュレーション装置は、粒子径の相違する粒子間の距離に依存した複数の相互作用力に基づく粒子の挙動を計算する計算対象領域を複数の領域に分割し、計算対象領域内に含まれる粒子の挙動をシミュレートする装置において、前記計算対象領域内で粒子径が最大である粒子から順次着目粒子とし、該着目粒子を内包する所定の大きさの小領域内で相互に接触している粒子及び接触する可能性のある粒子を検索する粒子検索手段と、検索された粒子に関する情報を記憶手段に記憶する手段と、着目粒子の積算変位を算出する手段と、積算変位が所定値を越えたか否かを判断する判断手段とを備え、該判断手段で所定値を越えたと判断した場合にのみ、前記粒子検索手段を用い、所定値以下であると判断した場合、前記記憶手段から読み出した粒子に関する情報に基づいて粒子の挙動をシミュレートするようにしてあることを特徴とする。
【0010】
また、第2発明に係る粒子挙動シミュレーション装置は、第1発明において、前記領域は正方領域であり、着目粒子の粒子径の、前記粒子検索手段にて検索された粒子の粒子径に対する粒子径比が2.0であり、前記粒子検索手段にて検索された小領域内の全粒子の体積の総和に対する、着目粒子と粒子径が相違する粒子の体積比が0.030乃至0.333である場合、前記領域の一辺の長さを粒子径の0.575乃至1.4倍に設定する手段を備えることを特徴とする。
【0011】
また、第3発明に係る粒子挙動シミュレーション装置は、第1発明において、前記領域は正方領域であり、着目粒子の粒子径の、前記粒子検索手段にて検索された粒子の粒子径に対する粒子径比を算出する手段と、前記粒子検索手段にて検索された小領域内の全粒子の体積の総和に対する、着目粒子と粒子径が相違する粒子の体積比を算出する手段と、算出した粒子径比及び体積比に基づいて、小領域を単一の大きさを有する領域で設定するか、複数の大きさを有する領域で設定するかを選択する手段と、前記小領域を複数の大きさを有する領域で設定する場合、体積比が0.5近傍であるときには前記領域の一辺の長さを粒子径の0.85乃至1.75倍に設定する手段とを備えることを特徴とする。
【0012】
また、第4発明に係る粒子挙動シミュレーション装置は、第1発明において、前記領域は正方領域であり、着目粒子の粒子径の、前記粒子検索手段にて検索された粒子の粒子径に対する粒子径比を算出する手段と、前記粒子検索手段にて検索された小領域内の全粒子の体積の総和に対する、着目粒子と粒子径が相違する粒子の体積比を算出する手段と、算出した粒子径比及び体積比に基づいて、小領域を単一の大きさを有する領域で設定するか、複数の大きさを有する領域で設定するかを選択する手段と、前記小領域を複数の大きさを有する領域で設定する場合、体積比が0.1近傍であるときには前記領域の一辺の長さを粒子径の1.1乃至1.8倍に設定する手段とを備えることを特徴とする。
【0013】
また、第5発明に係る粒子挙動シミュレーション方法は、粒子径の相違する粒子間の距離に依存した複数の相互作用力に基づく粒子の挙動を計算する計算対象領域を複数の領域に分割し、計算対象領域内に含まれる粒子の挙動をシミュレートする方法において、前記計算対象領域内で粒子径が最大である粒子から順次着目粒子とし、該着目粒子を内包する所定の大きさの小領域内で相互に接触している粒子及び接触する可能性のある粒子を検索し、検索された粒子に関する情報を記憶手段に記憶し、着目粒子の積算変位を算出し、積算変位が所定値を越えたか否かを判断し、所定値を越えたと判断した場合にのみ、粒子の検索を行い、所定値以下であると判断した場合、前記記憶手段から読み出した粒子に関する情報に基づいて粒子の挙動をシミュレートすることを特徴とする。
【0014】
また、第6発明に係る粒子挙動シミュレーション方法は、第5発明において、前記領域は正方領域であり、着目粒子の粒子径の、検索された粒子の粒子径に対する粒子径比が2.0であり、検索された小領域内の全粒子の体積の総和に対する、着目粒子と粒子径が相違する粒子の体積比が0.030乃至0.333である場合、前記領域の一辺の長さを粒子径の0.575乃至1.4倍に設定することを特徴とする。
【0015】
また、第7発明に係る粒子挙動シミュレーション方法は、第5発明において、前記領域は正方領域であり、着目粒子の粒子径の、検索された粒子の粒子径に対する粒子径比を算出し、検索された小領域内の全粒子の体積の総和に対する、着目粒子と粒子径が相違する粒子の体積比を算出し、算出した粒子径比及び体積比に基づいて、小領域を単一の大きさを有する領域で設定するか、複数の大きさを有する領域で設定するかを選択し、前記小領域を複数の大きさを有する領域で設定する場合、体積比が0.5近傍であるときには前記領域の一辺の長さを粒子径の0.85乃至1.75倍に設定することを特徴とする。
【0016】
また、第8発明に係る粒子挙動シミュレーション方法は、第5発明において、前記領域は正方領域であり、着目粒子の粒子径の、検索された粒子の粒子径に対する粒子径比を算出し、検索された小領域内の全粒子の体積の総和に対する、着目粒子と粒子径が相違する粒子の体積比を算出し、算出した粒子径比及び体積比に基づいて、小領域を単一の大きさを有する領域で設定するか、複数の大きさを有する領域で設定するかを選択し、前記小領域を複数の大きさを有する領域で設定する場合、体積比が0.1近傍であるときには前記領域の一辺の長さを粒子径の1.1乃至1.8倍に設定することを特徴とする。
【0017】
また、第9発明に係るコンピュータプログラムは、粒子径の相違する粒子間の距離に依存した複数の相互作用力に基づく粒子の挙動を計算する計算対象領域を複数の領域に分割し、計算対象領域内に含まれる粒子の挙動をシミュレートするコンピュータで実行することが可能なコンピュータプログラムにおいて、前記コンピュータを、前記計算対象領域内で粒子径が最大である粒子から順次着目粒子とし、該着目粒子を内包する所定の大きさの小領域内で相互に接触している粒子及び接触する可能性のある粒子を検索する粒子検索手段、検索された粒子に関する情報を記憶手段に記憶する手段、着目粒子の積算変位を算出する手段、積算変位が所定値を越えたか否かを判断する判断手段、及び該判断手段で所定値を越えたと判断した場合にのみ、前記粒子検索手段を用い、所定値以下であると判断した場合、前記記憶手段から読み出した粒子に関する情報に基づいて粒子の挙動をシミュレートする手段として機能させることを特徴とする。
【0018】
また、第10発明に係るコンピュータプログラムは、第9発明において、前記領域は正方領域であり、前記コンピュータを、着目粒子の粒子径の、前記粒子検索手段にて検索された粒子の粒子径に対する粒子径比が2.0であり、前記粒子検索手段にて検索された小領域内の全粒子の体積の総和に対する、着目粒子と粒子径が相違する粒子の体積比が0.030乃至0.333である場合、前記領域の一辺の長さを粒子径の0.575乃至1.4倍に設定する手段として機能させることを特徴とする。
【0019】
また、第11発明に係るコンピュータプログラムは、第9発明において、前記領域は正方領域であり、前記コンピュータを、着目粒子の粒子径の、前記粒子検索手段にて検索された粒子の粒子径に対する粒子径比を算出する手段、前記粒子検索手段にて検索された小領域内の全粒子の体積の総和に対する、着目粒子と粒子径が相違する粒子の体積比を算出する手段、算出した粒子径比及び体積比に基づいて、小領域を単一の大きさを有する領域で設定するか、複数の大きさを有する領域で設定するかを選択する手段、及び前記小領域を複数の大きさを有する領域で設定する場合、体積比が0.5近傍であるときには前記領域の一辺の長さを粒子径の0.85乃至1.75倍に設定する手段として機能させることを特徴とする。
【0020】
また、第12発明に係るコンピュータプログラムは、第9発明において、前記領域は正方領域であり、前記コンピュータを、着目粒子の粒子径の、前記粒子検索手段にて検索された粒子の粒子径に対する粒子径比を算出する手段、前記粒子検索手段にて検索された小領域内の全粒子の体積の総和に対する、着目粒子と粒子径が相違する粒子の体積比を算出する手段、算出した粒子径比及び体積比に基づいて、小領域を単一の大きさを有する領域で設定するか、複数の大きさを有する領域で設定するかを選択する手段、及び前記小領域を複数の大きさを有する領域で設定する場合、体積比が0.1近傍であるときには前記領域の一辺の長さを粒子径の1.1乃至1.8倍に設定する手段として機能させることを特徴とする。
【0021】
第1発明、第5発明、及び第9発明では、粒子径の相違する粒子間の距離に依存した複数の相互作用力に基づく粒子の挙動を計算する計算対象領域を複数の領域に分割し、計算対象領域内に含まれる粒子の挙動をシミュレートする。計算対象領域内で粒子径が最大である粒子から順次着目粒子とし、該着目粒子を内包する所定の大きさの小領域内で相互に接触している粒子及び接触する可能性のある粒子を検索し、検索された粒子に関する情報を記憶手段に記憶する。着目粒子の積算変位を算出し、積算変位が所定値を越えた場合にのみ粒子の検索を行い、所定値以下である場合、記憶手段から読み出した粒子に関する情報に基づいて粒子の挙動をシミュレートする。これにより、最大径を有する粒子から順に該粒子径を基準とした粒子検索範囲内にて接触粒子を検索し、移動量が所定値、例えば粒子径の4%を越えた場合にのみ再度接触粒子を検索するようにすることで、接触粒子の検索処理回数を大きく削減することができ、粒子の挙動シミュレーションに要する演算処理時間を大幅に短縮することが可能となる。なお、粒子の運動状態、サンプリング時間間隔等により、再度接触粒子を検索するか否かの判断基準となる移動距離が変動することは言うまでも無い。
【0022】
第2発明、第6発明、及び第10発明では、領域は正方領域であり、着目粒子の粒子径の、検索された粒子の粒子径に対する粒子径比が2.0であり、検索された小領域内の全粒子の体積の総和に対する、着目粒子と粒子径が相違する粒子の体積比が0.030乃至0.333である場合、領域の一辺の長さを粒子径の0.575乃至1.4倍に設定する。粒子径比が2.0で、体積比(粒子濃度)が0.030乃至0.333である場合には、セル(領域)の一辺の長さを粒子径の0.575乃至1.4倍に設定したときに、粒子の挙動シミュレーションに要する演算処理時間が最短になることが実験的に確認されている。
【0023】
第3発明、第4発明、第7発明、第8発明、第11発明及び第12発明では、領域は正方領域であり、着目粒子の粒子径の、検索された粒子の粒子径に対する粒子径比を算出し、検索された小領域内の全粒子の体積の総和に対する、着目粒子と粒子径が相違する粒子の体積比を算出する。算出した粒子径比及び体積比に基づいて、小領域を単一の大きさを有する領域で設定するか、複数の大きさを有する領域で設定するかを選択する。小領域を複数の大きさを有する領域で設定する場合、体積比が0.5近傍であるときには領域の一辺の長さを粒子径の0.85乃至1.75倍に設定する。また、体積比が0.1近傍であるときには領域の一辺の長さを粒子径の1.1乃至1.8倍に設定する。
【0024】
これにより、粒子径比及び体積比に応じてセル(領域)の大きさを単一とするか変動させるかを選択することにより、より適切なセル(領域)に基づく小領域にて粒子検索を行うことができ、全体としてシミュレーション演算時間を短縮することが可能となる。また、体積比が0.5近傍であるときには領域の一辺の長さを粒子径の0.85乃至1.75倍に、体積比が0.1近傍であるときには領域の一辺の長さを粒子径の1.1乃至1.8倍に、それぞれセル(領域)の大きさを設定することで、粒子の挙動シミュレーションに要する演算処理時間が最短になることが実験的に確認されている。
【発明の効果】
【0025】
第1発明、第5発明、及び第9発明によれば、最大径を有する粒子から順に該粒子径を基準とした粒子検索範囲内にて接触粒子を検索し、移動量が所定値、例えば粒子径の4%を越えた場合にのみ再度接触粒子を検索するようにすることで、接触粒子の検索処理回数を大きく削減することができ、粒子の挙動シミュレーションに要する演算処理時間を大幅に短縮することが可能となる。なお、粒子の運動状態、サンプリング時間間隔等により、再度接触粒子を検索するか否かの判断基準となる移動距離が変動することは言うまでも無い。
【0026】
第2発明、第6発明、及び第10発明によれば、粒子径比が2.0であり、体積比が0.030乃至0.333である場合、領域の一辺の長さを粒子径の0.575乃至1.4倍に設定することにより、粒子の挙動シミュレーションに要する演算処理時間が最短にすることが可能となる。
【0027】
第3発明、第4発明、第7発明、第8発明、第11発明及び第12発明によれば、粒子径比及び体積比に応じてセル(領域)の大きさを単一とするか変動させるかを選択することにより、より適切なセル(領域)に基づく小領域にて粒子検索を行うことができ、全体としてシミュレーション演算時間を短縮することが可能となる。また、体積比が0.5近傍であるときには領域の一辺の長さを粒子径の0.85乃至1.75倍に、体積比が0.1近傍であるときには領域の一辺の長さを粒子径の1.1乃至1.8倍に、それぞれセル(領域)の大きさを設定することにより、粒子の挙動シミュレーションに要する演算処理時間が最短にすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態に係る粒子挙動シミュレーション装置について図面に基づいて具体的に説明する。
【0029】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る粒子挙動シミュレーション装置1の構成を示すブロック図である。図1において、粒子挙動シミュレーション装置1は、少なくとも、CPU(中央演算装置)11、補助記憶手段12、RAM13、記憶手段14、通信手段15、入力手段16、表示手段17、出力手段18、及び上述したハードウェアを接続する内部バス19で構成されている。
【0030】
CPU11は、内部バス19を介して粒子挙動シミュレーション装置1の上述したようなハードウェア各部と接続されており、上述したハードウェア各部を制御するとともに、RAM13に記憶されているコンピュータプログラム3に従って、種々のソフトウェア的機能を実行する。RAM13は、SRAM、フラッシュメモリ等で構成され、コンピュータプログラム(ロードモジュール)、該コンピュータプログラムの実行時に発生する一時的なデータ等を記憶する。
【0031】
記憶手段14は、内蔵される固定型記憶装置(ハードディスク)、ROM等の他、DVD、CD−ROM等の可搬型記録媒体2で構成されている。記憶手段14に記憶されているコンピュータプログラム3は、プログラム及びデータ等の情報を記録したCD−ROM等の可搬型記録媒体2から、補助記憶手段12によりダウンロードされ、実行時には記憶手段14からRAM13へ展開して実行される。
【0032】
通信手段15は内部バス19に接続されており、インターネット、LAN、WAN等の外部のネットワーク網に接続されることにより、外部のコンピュータとデータ送受信を行うことが可能となっている。したがって、複数の外部コンピュータと並列処理を実行することにより、さらなる演算時間の短縮が可能となる。
【0033】
入力手段16は、キーボード及びマウス等のデータ入力媒体であり、表示手段17は、CRTモニタ、LCD等の表示装置である。出力手段18は、レーザプリンタ、ドットプリンタ等の印刷装置等である。
【0034】
以下、本実施の形態1で用いるDEMについて説明する。DEMは、粉体を形成する各粒子に作用する力を全て算出し、算出した粒子に作用する力による各粒子の運動方程式を逐次解くことで、粒体挙動を求める方法である。
【0035】
粒子に作用する力としては、重力のような外力のみではなく、壁と粒子との接触及び粒子間の接触による接触力も含まれる。粒子に作用する力の大きさは、法線方向の速度及び粒子の接触状態により決定される。各粒子の接触状態を計算するためには、各粒子間の距離計算を実施する必要がある。全ての粒子間で距離計算を行うと、粒子数がn(nは自然数)である場合、n(n−1)/2回の計算が必要となり、粒子数nが大きくなった場合には計算量が膨大になるという問題点があった。
【0036】
そこで、距離計算の対象となる小領域を粒子ごとに変動させる。すなわち、接触判定(距離計算)を実施する粒子を、着目粒子の粒子径(粒子の直径)により特定される小領域と該小領域内に存在する粒子に制限する。図2は、DEMによる接触判定対象となる粒子限定方法に一例を示す図である。
【0037】
図2の例では、着目粒子21を含むセル24及びその周辺の8セルを含む領域を小領域25としており、小領域25に含まれる粒子22を距離計算の対象とする。小領域25に含まれていない粒子23は、着目粒子21と接触する可能性がないものと判断し、距離計算の対象から除外される。
【0038】
一方、電子写真における現像剤挙動のシミュレーション演算を実行する場合、上述のような粒子間接触により作用する力だけではなく、磁気的な吸引力、静電気力、ファンデルワース力等も考慮して粒子の挙動をシミュレーションする必要がある。例えば磁気的な吸引力は、磁場中で着目粒子21が他の粒子又はマグネットローラからの磁界により受ける磁気力である。
【0039】
また、静電気力は、現像電界、静電潜像から発生する電場による静電気力だけではなく、粒子間の接触、摩擦等により帯びた電荷により発生する粒子間力も存在する。例えばトナー粒子とキャリア粒子との間には静電気的引力が、トナー粒子間には静電気的斥力が発生し、クーロンの電荷式によりその大きさを求めることができる。さらに、ファンデルワース力は、粒子径の相違するトナー粒子とキャリア粒子との間に作用する普遍的な近接力である。
【0040】
図3及び図4は、本発明の実施の形態1に係る粒子挙動シミュレーション装置1のCPU11の粒子挙動のシミュレート処理の手順を示すフローチャートである。粒子挙動シミュレーション装置1のCPU11は、まず計算に必要な各種物理パラメータ、粒子の初期配置等の計算条件を取得し(ステップS301)、シミュレーションの対象となる計算領域を粒子の配置等に応じて適切な大きさのセル(領域)に分割する(ステップS302)。CPU11は、存在する粒子の中で最大径を有する粒子を着目粒子として設定し(ステップS303)、着目粒子の粒子径に基づいて粒子検索範囲である小領域を設定する(ステップS304)。CPU11は、設定された小領域内で着目粒子と接触している粒子、又は接触するおそれがある粒子を検索し(ステップS305)、検索された粒子に関する情報(位置、粒子径等)を記憶する(ステップS306)。
【0041】
CPU11は、計算領域に存在する全ての粒子について粒子検索処理が終了したか否かを判断し(ステップS307)、CPU11が終了していないと判断した場合(ステップS307:NO)、CPU11は、次に粒子径の大きい粒子を着目粒子として設定し(ステップS308)、処理をステップS304へ戻して、上述した処理を繰り返す。CPU11が終了したと判断した場合(ステップS307:YES)、CPU11は、記憶されている粒子ごと(着目粒子含む)に作用する力等を算出し(ステップS309)、記憶されている全ての粒子に作用する力を算出したか否かを判断する(ステップS310)。
【0042】
CPU11が、未算出である粒子が存在すると判断した場合(ステップS310:NO)、CPU11は、処理をステップS309へ戻し、上述した粒子ごとに作用する力を算出する。CPU11が、全ての粒子に作用する力を算出したと判断した場合(ステップS310:YES)、CPU11は、各粒子の運動方程式を解くことにより、粒子ごとの加速度、速度及び変位を算出し(ステップS311)、それぞれの粒子位置を更新する(ステップS312)。
【0043】
CPU11は、シミュレート処理を終了するか否かを判断し(ステップS313)、CPU11が、シミュレート処理を終了すると判断した場合(ステップS313:YES)、CPU11は、シミュレート処理を終了する。終了条件は特に限定されるものではなく、例えばシミュレートする期間が経過したか否かにより終了するか否かを判断する。
【0044】
CPU11が、シミュレート処理を終了しないと判断した場合(ステップS313:NO)、CPU11は、シミュレート処理を再実行する場合に粒子検索処理を再度実行するか否かを判断する。すなわち、CPU11は、着目粒子の変位を積算して初期位置からの積算変位を算出し(ステップS314)、積算変位が所定値を越えたか否かを判断する(ステップS315)。CPU11が、積算変位が所定値以下であると判断した場合(ステップS315:NO)、CPU11は、記憶してある粒子に関する情報を読み出して、処理をステップS309へ戻して、上述した処理を繰り返す。CPU11が、積算変位が所定値を越えたと判断した場合(ステップS315:YES)、CPU11は、処理をステップS303へ戻し、上述した処理を繰り返す。
【0045】
すなわち、着目粒子が所定値より大きく移動した場合にのみ粒子検索処理を再度実行し、着目粒子が所定値よりも移動していない場合には、粒子検索処理を再度実行する必要が無い。したがって、粒子検索処理を実行しない分だけ演算処理負荷を軽減することができ、シミュレーション演算の実行時間を大きく短縮することが可能となる。
【0046】
着目粒子に対して接触する粒子の検索処理は、以下の手順で実行する。説明を簡単にするために、まず粒子径が単一である場合の検索処理の手順について説明する。
【0047】
一般に小領域は、二次元では正方形状であり、三次元では立方体である。小領域の一辺に含まれるセル数をns とした場合、三次元モデルでは、平均検索セル数nscは(数1)のように領域の一辺に含まれるセル数ns の三乗となる。
【0048】
nsc=ns3 ・・・ (数1)
【0049】
一方、セル1個当たりの一辺の長さをr、検索対象範囲を定める係数をλとした場合、検索対象となる小領域の体積Vcは、ns・λ・rの三乗となる。検索対象となる小領域内に存在する粒子数nc は(数2)で求めることができる。
【0050】
nc = n・Vc /V ・・・ (数2)
【0051】
したがって、検索対象となる小領域ごとの粒子間の接触判定回数の平均値nccは、(数3)により求めることができる。
【0052】
ncc = (nc −1)/2 ・・・ (数3)
【0053】
よって、粒子検索の計算負荷をKscとし、接触判定の計算負荷をKccとした場合、粒子径が単一である場合の検索対象となる最適な小領域の一辺の長さLpdは、(数4)により算出することができる。もちろん、最適な小領域の大きさを求める手段は、特にこれに限定されるものではない。
【0054】
Lpd = Ksc・nsc + Kcc・ncc
= Ksc・ns3 + Kcc・(n・Vc /V−1)/2 ・・・ (数4)
【0055】
図5は、粒子径が単一である場合のセルの大きさと接触粒子数との関係を示す模式図である。図5(a)は着目粒子21の粒子径に対して分割したセル24の大きさが大きい場合の状態を示す図を、図5(b)は着目粒子21の粒子径に対して分割したセル24の大きさが小さい場合の状態を示す図を、それぞれ示している。図5(a)に示すように、着目粒子21の粒子径に対してセル24の大きさが大きい場合、検索対象となる小領域25に含まれるセル24の数は少なくなり、一の小領域で検索される粒子の数は多くなる。一方、図5(b)に示すように、着目粒子21の粒子径に対してセル24の大きさが小さい場合、検索対象となる小領域25に含まれるセル24の数は多くなり、一の小領域で検索される粒子の数が少なくなる。したがって、シミュレーション演算時間を短縮すべく、演算処理負荷が比較的大きい粒子検索処理を少しでも軽減するためには、着目粒子21の粒子径に対してセル24の大きさが大きい方が好ましいことがわかる。
【0056】
実際には、粒子径が相違する粒子が混在していることから、検索対象となる小領域の大きさを、最大径を有する粒子21を含むセル24の大きさに基づいて特定すれば最も演算処理負荷を軽減することができる。図6は、検索対象となる小領域25を粒子径に基づいて定める方法を示す図である。着目粒子21の直径をr1とし、他の粒子の直径をr2とし、最大径を有する粒子の直径をrmax とした場合、(数5)により検索対象となる小領域の一辺の長さLs を決定する。
【0057】
Ls = ri±rmax ・・・ (数5)
ただし、iは自然数
【0058】
セル24の大きさは、着目粒子21の粒子径によって一定の大きさに特定されていることから、着目粒子21の直径の大小に応じて検索対象となる小領域25に含まれるセル24、24、・・・の数が変動する。図6の例では、小領域61は、着目粒子21が大きい粒子径を有する粒子である場合に特定される小領域を示しており、小領域62は、着目粒子が小さい粒子径を有する粒子である場合に特定される小領域を示している。すなわち、(数5)からも明らかなように、着目粒子21が大きい粒子径を有する粒子である場合、接触粒子の検索対象となる小領域61がより広範になる。
【0059】
接触粒子の検索対象となる小領域61が広範となる順に粒子の検索対象範囲となる小領域を特定していくことにより、計算領域に含まれる小領域の数が最小となることから、演算処理負荷が比較的大きい粒子検索処理を少しでも軽減することができ、シミュレーション演算時間を短縮することが可能となる。
【0060】
図7は、本実施の形態1に係る粒子挙動シミュレーション方法において、1セル当たりの粒子数に対するシミュレーション時間の変動の度合を示す図である。図7では、横軸に1セル当たりに含まれている粒子の数nを示しており、縦軸に相互に接触する粒子を検索する粒子検索処理の時間を、最短の処理時間に対する比率Rで示している。なお、粒子検索処理のシミュレーション演算は、CPUとしてIBM社製のパワーピーシー(PowerPC)970(R)の1.6GHzを使用し、メモリを2GB、コンパイラとしてIBM社製の「エックスエルフォートラン(XLFortran)バージョン9.1」を用い、粒子径比及び1セル当たりの粒子数を変動させて実施した。
【0061】
図7では、粒子径の異なる粒子が混在する場合に、粒子径比の相違により粒子検索処理に要する時間が変動するか否かを確認すべく、粒子径比が2.0(□印)、4.0(○印)、6.0(△印)、8.0(▽印)、10.0(×印)の場合の粒子検索処理に要する時間をプロットしている。図7の結果から明らかなように、粒子検索処理に要する時間の長短は、粒子径比に依存することなく、むしろ1セル当たりに含まれている粒子の数nに依存していることがわかる。
【0062】
したがって、粒子検索処理に要する時間が最短である時間から5%以内の変動時間幅では、1セル当たりの粒子数が1.0乃至5.0個であることを確認することができる。これは、セルが正方領域であり、粒子径比を2.0、体積比を0.030乃至0.333とした場合、セルの一辺の長さが粒子径(最大径を有する粒子の直径)の0.575乃至1.4倍となることに相当する。セルを斯かる範囲の大きさとして粒子検索対象となる小領域を設定することにより、シミュレーション演算時間を最短にすることが可能となる。
【0063】
(実施の形態2)
以下、本発明の実施の形態2に係る粒子挙動シミュレーション装置1について図面を参照しながら具体的に説明する。実施の形態2に係る粒子挙動シミュレーション装置1の構成は実施の形態1と同様であることから、同一の符号を付することにより詳細な説明を省略する。本実施の形態2は、粒子検索対象となる小領域の大きさを、混在する粒子の粒子径比、及び混在する状態での体積比に基づいて変更する点で実施の形態1と相違する。
【0064】
混在する粒子の粒子径比は、検索された粒子の粒子径の、着目粒子の粒子径に対する粒子径比として算出する。例えば粒子径がr1とr2との2種類(r1>r2)の粒子が混在している場合、着目粒子を粒子径r1の粒子としたときには、粒子径r2の粒子の粒子径比r1/r2を採用する。
【0065】
また、体積比は、一の小領域ごとに、含まれる全粒子の体積の総和に対する、着目粒子と粒子径が相違する、すなわち着目粒子よりも粒子径が小さい粒子の体積比(以下、小粒子体積比という)として算出する。例えば粒子径がr1とr2との2種類(r1>r2)の粒子が混在している場合、着目粒子を粒子径r1の粒子としたときには、粒子径r2の粒子の体積V2の、粒子径r1の着目粒子の体積V1と粒子径r2の粒子の体積V2との和に対する比V2/(V1+V2)を小粒子体積比として採用する。
【0066】
図8は、セルと検索対象範囲である小領域との関係を模式的に示す図である。図8(a)は、実施の形態1で示す一の大きさを有するセルを用いた場合を示しており、粒子径が単一である場合に最も効率よく粒子検索を行うことができる小領域を特定することができる。しかし、実際には図8(b)のように粒子径が異なる粒子が混在しており、均等に混在している場合には一の大きさを有するセルを用いても効率よく粒子検索を行うことができる小領域を特定することができる場合も生じ得るが、混在する度合が変動する以上、一の大きさを有するセルを用いる方法では最適化が困難である。
【0067】
そこで、図8(b)に示すように、粒子径が大きい粒子に対する大きさのセルと、粒子径が小さい粒子に対する大きさのセルとの2種類を併用する。実施の形態1でも説明したように、着目粒子の粒子径に対してセルの大きさが大きい場合、検索対象となる小領域に含まれるセルの数は少なくなり、一の小領域で検索される粒子の数は多くなる。一方、着目粒子の粒子径に対してセルの大きさが小さい場合、検索対象となる小領域に含まれるセルの数は多くなり、一の小領域で検索される粒子の数が少なくなる。したがって、シミュレーション演算時間を短縮すべく、演算処理負荷が比較的大きい粒子検索処理を少しでも軽減するためには、着目粒子の粒子径に対してセルの大きさが大きい方が好ましい。
【0068】
しかし、着目粒子の粒子径に対してセルの大きさが大きい場合であっても、特定のセルには着目粒子がほとんど存在せず、粒子径の小さい粒子のみが存在するに等しい分布状態となっているセルも存在する。例えばセル81には、着目粒子が中心として存在しているが、セル82には、着目粒子よりも粒子径の小さい粒子で大部分が占められている。
【0069】
この場合、着目粒子に基づいて定まる小領域を用いるよりも、粒子径の小さい粒子に基づいて小領域を定めて粒子検索を行った方が、検索効率が高まる。したがって、粒子径の小さい粒子の体積濃度に基づいて、実施の形態1と同様に一の大きさのセルのみに基づいて小領域を特定するか、複数の種類のセルを用いて小領域を特定するか、選択することにより、シミュレーション演算効率をさらに高めることができ、演算処理時間をより短縮することが可能となる。
【0070】
図9は、本実施の形態2に係る粒子挙動シミュレーション方法において、1セル当たりの粒子数に対するシミュレーション時間の変動の度合を示す図である。図9では、横軸に1セル当たりに含まれている粒子の数nを示しており、縦軸に相互に接触する粒子を検索する粒子検索処理の時間を、最短の処理時間に対する比率Rで示している。なお、粒子検索処理のシミュレーション演算は、CPUとしてIBM社製のパワーピーシー(PowerPC)970(R)の1.6GHzを使用し、メモリを2GB、コンパイラとしてIBM社製の「エックスエルフォートラン(XLFortran)バージョン9.1」を用い、粒子径比及び1セル当たりの粒子数を変動させて実施した。
【0071】
図9では、粒子径の異なる粒子が混在する場合に、粒子径比の相違により粒子検索処理に要する時間が変動するか否かを確認すべく、粒子径比が2.0(□印)、4.0(○印)、6.0(△印)、8.0(▽印)、10.0(×印)の場合の粒子検索処理に要する時間をプロットしている。図9の結果から明らかなように、粒子検索処理の時間比率Rは、Rが1.3よりも小さい部分では、粒子径比が相違した場合であっても略一致しているのに対し、Rが1.3よりも大きい部分では、粒子径比の相違により若干のばらつきが見られる。
【0072】
これは、粒子検索処理を1.3倍以上高速化する場合には、単一の大きさのセルを用いる粒子検索処理では粒子径比の相違により演算処理効率が低下することを示しており、粒子検索処理を1.3倍以上高速化する場合には、大きさの異なる複数のセルを用いる粒子検索処理を行った方が、演算処理効率がより高まることを示唆している。図10は、粒子径比及び小粒子体積比に対する粒子検索処理のシミュレーション時間の変動の度合を示す図である。なお、シミュレーション演算は、CPUとしてIBM社製のパワーピーシー(PowerPC)970(R)の1.6GHzを使用し、メモリを2GB、コンパイラとしてIBM社製の「エックスエルフォートラン(XLFortran)バージョン9.1」を用い、粒子径比及び小粒子体積比を変動させて実施した。
【0073】
図10では、粒子径の異なる粒子が混在する場合に、粒子の混在する密度、例えば粒子径の小さい粒子が存在する比率である小粒子体積比の相違により粒子検索処理に要する時間が変動するか否かを確認すべく、粒子径比が2.0(□印)、4.0(○印)、6.0(△印)、8.0(▽印)、10.0(×印)の場合の粒子検索処理に要する時間比率Rをプロットしている。粒子検索処理の時間比率Rが1.3よりも小さい部分101では、実施の形態1と同様に、単一のセルの大きさに基づいて小領域を特定して粒子検索処理を実行した場合と、セルの大きさを変動させて小領域を特定して粒子検索処理を実行した場合とで、粒子検索処理に要する時間に差が生じない。
【0074】
一方、粒子検索処理の時間比率Rが1.3よりも大きい部分102では、粒子径比が相違した場合には、小粒子体積比の大小により粒子検索処理の時間比率Rが大きく変動する。したがって、図10の例では、粒子径比が2.0である場合、小粒子体積比に応じてセルの大きさ、ひいては小領域の大きさを設定することにより、単一のセルの大きさに基づいて小領域を特定して粒子検索処理を実行した場合よりも、大きく粒子検索処理を高速化することができ、シミュレーション演算時間をより短縮することができる。
【0075】
図11は、小粒子体積比と粒子検索処理の時間比率Rとの関係を示す図である。曲線111は、小粒子体積比が0.5である場合の、曲線112は、小粒子体積比が0.091である場合の、それぞれ1セル当たりの粒子数に対応した粒子検索処理の時間比率Rを示している。なお、粒子検索処理のシミュレーション演算は、CPUとしてIBM社製のパワーピーシー(PowerPC)970(R)の1.6GHzを使用し、メモリを2GB、コンパイラとしてIBM社製の「エックスエルフォートラン(XLFortran)バージョン9.1」を用い、粒子径比及び1セル当たりの粒子数を変動させて実施した。
【0076】
図11から明らかなように、粒子検索処理に要する時間が最短である時間から5%以内の変動時間幅では、小粒子体積比が0.5近傍であるときには一の小領域に0.5乃至4個の粒子が存在する大きさにセルを設定することでシミュレーション時間を最短にすることができる。これは、セルが正方領域である場合に、セルの一辺の長さを粒子径の0.85乃至1.75倍に設定することに相当する。また、小粒子体積比が0.1近傍であるときには一の小領域に0.2乃至0.8個の粒子が存在する大きさに小領域を設定することでシミュレーション時間を最短にすることができる。これは、セルが正方領域である場合に、セルの一辺の長さを粒子径の1.1乃至1.8倍に設定することに相当する。
【0077】
図12及び図13は、本発明の実施の形態2に係る粒子挙動シミュレーション装置1のCPU11の粒子挙動のシミュレート処理の手順を示すフローチャートである。粒子挙動シミュレーション装置1のCPU11は、まず計算に必要な各種物理パラメータ、粒子の初期配置等の計算条件を取得し(ステップS1201)、シミュレーションの対象となる計算領域を粒子の配置等に応じて適切な大きさのセル(領域)に分割する(ステップS1202)。CPU11は、存在する粒子の中で最大径を有する粒子を着目粒子として設定し(ステップS1203)、着目粒子の粒子径に基づいて粒子検索範囲である小領域を設定する(ステップS1204)。CPU11は、設定された小領域内で着目粒子と接触している粒子、又は接触するおそれがある粒子を検索する(ステップS1205)。
【0078】
CPU11は、着目粒子と他の粒子との粒子径比を算出し(ステップS1206)、小領域ごとに検索された粒子径の小さい粒子の体積比である小粒子体積比を算出する(ステップS1207)。CPU11は、粒子径比及び小粒子体積比に基づいて、セルのサイズを変更すべきか否かを判断し(ステップS1208)、CPU11が、セルのサイズを変更すべきであると判断した場合(ステップS1208:YES)、CPU11は、セルのサイズを変更し(ステップS1209)、処理をステップS1204へ戻し、上述した処理を繰り返す。
【0079】
CPU11が、セルのサイズを変更する必要が無いと判断した場合(ステップS1208:NO)、CPU11は、検索された粒子に関する情報(位置、粒子径等)を記憶する(ステップS1210)。CPU11は、計算領域に存在する全ての粒子について粒子検索処理が終了したか否かを判断し(ステップS1211)、CPU11が終了していないと判断した場合(ステップS1211:NO)、CPU11は、次に粒子径の大きい粒子を着目粒子として設定し(ステップS1212)、処理をステップS1204へ戻して、上述した処理を繰り返す。CPU11が終了したと判断した場合(ステップS1211:YES)、CPU11は、記憶されている粒子ごと(着目粒子含む)に作用する力等を算出し(ステップS1213)、記憶されている全ての粒子に作用する力を算出したか否かを判断する(ステップS1214)。
【0080】
CPU11が、未算出である粒子が存在すると判断した場合(ステップS1214:NO)、CPU11は、処理をステップS1213へ戻し、上述した粒子に作用する力を算出する。CPU11が、全ての粒子に作用する力を算出したと判断した場合(ステップS1214:YES)、CPU11は、各粒子の運動方程式を解くことにより、粒子ごとの加速度、速度及び変位を算出し(ステップS1215)、それぞれの粒子位置を更新する(ステップS1216)。
【0081】
CPU11は、シミュレート処理を終了するか否かを判断し(ステップS1217)、CPU11が、シミュレート処理を終了すると判断した場合(ステップS1217:YES)、CPU11は、シミュレート処理を終了する。終了条件は特に限定されるものではなく、例えばシミュレートする期間が経過したか否かにより終了するか否かを判断する。
【0082】
CPU11が、シミュレート処理を終了しないと判断した場合(ステップS1217:NO)、CPU11は、シミュレート処理を再実行する場合に粒子検索処理を再度実行するか否かを判断する。すなわち、CPU11は、着目粒子の変位を積算して初期位置からの積算変位を算出し(ステップS1218)、積算変位が所定値を越えたか否かを判断する(ステップS1219)。CPU11が、積算変位が所定値以下であると判断した場合(ステップS1219:NO)、CPU11は、記憶してある粒子に関する情報を読み出して、処理をステップS1213へ戻して、上述した処理を繰り返す。CPU11が、積算変位が所定値を越えたと判断した場合(ステップS1219:YES)、CPU11は、処理をステップS1203へ戻し、上述した処理を繰り返す。
【0083】
以上のように本実施の形態2によれば、粒子径比及び体積比に応じてセルの大きさを単一とするか変動させるかを選択することにより、より適切なセルに基づく小領域にて粒子検索を行うことができ、全体としてシミュレーション演算時間を短縮することが可能となる。また、体積比が0.5近傍であるときには領域の一辺の長さを粒子径の0.85乃至1.75倍に、体積比が0.1近傍であるときには領域の一辺の長さを粒子径の1.1乃至1.8倍に、それぞれセルの大きさを設定することにより、粒子の挙動シミュレーションに要する演算処理時間が最短にすることが可能となる。
【0084】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲内の記載であれば多種の変形、置換等が可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の実施の形態1に係る粒子挙動シミュレーション装置の構成を示すブロック図である。
【図2】DEMによる接触判定対象となる粒子限定方法に一例を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る粒子挙動シミュレーション装置のCPUの粒子挙動のシミュレート処理の手順を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施の形態1に係る粒子挙動シミュレーション装置のCPUの粒子挙動のシミュレート処理の手順を示すフローチャートである。
【図5】粒子径が単一である場合のセルの大きさと接触粒子数との関係を示す模式図である。
【図6】検索対象となる小領域を粒子径に基づいて定める方法を示す図である。
【図7】本実施の形態1に係る粒子挙動シミュレーション方法において、1セル当たりの粒子数に対するシミュレーション時間の変動の度合を示す図である。
【図8】セルと検索対象範囲である小領域との関係を模式的に示す図である。
【図9】本実施の形態2に係る粒子挙動シミュレーション方法において、1セル当たりの粒子数に対するシミュレーション時間の変動の度合を示す図である。
【図10】粒子径比及び小粒子体積比に対する粒子検索処理のシミュレーション時間の変動の度合を示す図である。
【図11】小粒子体積比と粒子検索処理の時間比率Rとの関係を示す図である。
【図12】本発明の実施の形態2に係る粒子挙動シミュレーション装置のCPUの粒子挙動のシミュレート処理の手順を示すフローチャートである。
【図13】本発明の実施の形態2に係る粒子挙動シミュレーション装置のCPUの粒子挙動のシミュレート処理の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0086】
1 粒子挙動シミュレーション装置
11 CPU
12 補助記憶手段
13 RAM
14 記憶手段
15 通信手段
16 入力手段
17 表示手段
21 着目粒子
24 セル
25 小領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子径の相違する粒子間の距離に依存した複数の相互作用力に基づく粒子の挙動を計算する計算対象領域を複数の領域に分割し、計算対象領域内に含まれる粒子の挙動をシミュレートする装置において、
前記計算対象領域内で粒子径が最大である粒子から順次着目粒子とし、該着目粒子を内包する所定の大きさの小領域内で相互に接触している粒子及び接触する可能性のある粒子を検索する粒子検索手段と、
検索された粒子に関する情報を記憶手段に記憶する手段と、
着目粒子の積算変位を算出する手段と、
積算変位が所定値を越えたか否かを判断する判断手段と
を備え、
該判断手段で所定値を越えたと判断した場合にのみ、前記粒子検索手段を用い、所定値以下であると判断した場合、前記記憶手段から読み出した粒子に関する情報に基づいて粒子の挙動をシミュレートするようにしてあることを特徴とする粒子挙動シミュレーション装置。
【請求項2】
前記領域は正方領域であり、
着目粒子の粒子径の、前記粒子検索手段にて検索された粒子の粒子径に対する粒子径比が2.0であり、前記粒子検索手段にて検索された小領域内の全粒子の体積の総和に対する、着目粒子と粒子径が相違する粒子の体積比が0.030乃至0.333である場合、前記領域の一辺の長さを粒子径の0.575乃至1.4倍に設定する手段
を備えることを特徴とする請求項1記載の粒子挙動シミュレーション装置。
【請求項3】
前記領域は正方領域であり、
着目粒子の粒子径の、前記粒子検索手段にて検索された粒子の粒子径に対する粒子径比を算出する手段と、
前記粒子検索手段にて検索された小領域内の全粒子の体積の総和に対する、着目粒子と粒子径が相違する粒子の体積比を算出する手段と、
算出した粒子径比及び体積比に基づいて、小領域を単一の大きさを有する領域で設定するか、複数の大きさを有する領域で設定するかを選択する手段と、
前記小領域を複数の大きさを有する領域で設定する場合、体積比が0.5近傍であるときには前記領域の一辺の長さを粒子径の0.85乃至1.75倍に設定する手段と
を備えることを特徴とする請求項1記載の粒子挙動シミュレーション装置。
【請求項4】
前記領域は正方領域であり、
着目粒子の粒子径の、前記粒子検索手段にて検索された粒子の粒子径に対する粒子径比を算出する手段と、
前記粒子検索手段にて検索された小領域内の全粒子の体積の総和に対する、着目粒子と粒子径が相違する粒子の体積比を算出する手段と、
算出した粒子径比及び体積比に基づいて、小領域を単一の大きさを有する領域で設定するか、複数の大きさを有する領域で設定するかを選択する手段と、
前記小領域を複数の大きさを有する領域で設定する場合、体積比が0.1近傍であるときには前記領域の一辺の長さを粒子径の1.1乃至1.8倍に設定する手段と
を備えることを特徴とする請求項1記載の粒子挙動シミュレーション装置。
【請求項5】
粒子径の相違する粒子間の距離に依存した複数の相互作用力に基づく粒子の挙動を計算する計算対象領域を複数の領域に分割し、計算対象領域内に含まれる粒子の挙動をシミュレートする方法において、
前記計算対象領域内で粒子径が最大である粒子から順次着目粒子とし、該着目粒子を内包する所定の大きさの小領域内で相互に接触している粒子及び接触する可能性のある粒子を検索し、
検索された粒子に関する情報を記憶手段に記憶し、
着目粒子の積算変位を算出し、
積算変位が所定値を越えたか否かを判断し、
所定値を越えたと判断した場合にのみ、粒子の検索を行い、所定値以下であると判断した場合、前記記憶手段から読み出した粒子に関する情報に基づいて粒子の挙動をシミュレートすることを特徴とする粒子挙動シミュレーション方法。
【請求項6】
前記領域は正方領域であり、
着目粒子の粒子径の、検索された粒子の粒子径に対する粒子径比が2.0であり、検索された小領域内の全粒子の体積の総和に対する、着目粒子と粒子径が相違する粒子の体積比が0.030乃至0.333である場合、前記領域の一辺の長さを粒子径の0.575乃至1.4倍に設定することを特徴とする請求項5記載の粒子挙動シミュレーション方法。
【請求項7】
前記領域は正方領域であり、
着目粒子の粒子径の、検索された粒子の粒子径に対する粒子径比を算出し、
検索された小領域内の全粒子の体積の総和に対する、着目粒子と粒子径が相違する粒子の体積比を算出し、
算出した粒子径比及び体積比に基づいて、小領域を単一の大きさを有する領域で設定するか、複数の大きさを有する領域で設定するかを選択し、
前記小領域を複数の大きさを有する領域で設定する場合、体積比が0.5近傍であるときには前記領域の一辺の長さを粒子径の0.85乃至1.75倍に設定することを特徴とする請求項5記載の粒子挙動シミュレーション方法。
【請求項8】
前記領域は正方領域であり、
着目粒子の粒子径の、検索された粒子の粒子径に対する粒子径比を算出し、
検索された小領域内の全粒子の体積の総和に対する、着目粒子と粒子径が相違する粒子の体積比を算出し、
算出した粒子径比及び体積比に基づいて、小領域を単一の大きさを有する領域で設定するか、複数の大きさを有する領域で設定するかを選択し、
前記小領域を複数の大きさを有する領域で設定する場合、体積比が0.1近傍であるときには前記領域の一辺の長さを粒子径の1.1乃至1.8倍に設定することを特徴とする請求項5記載の粒子挙動シミュレーション方法。
【請求項9】
粒子径の相違する粒子間の距離に依存した複数の相互作用力に基づく粒子の挙動を計算する計算対象領域を複数の領域に分割し、計算対象領域内に含まれる粒子の挙動をシミュレートするコンピュータで実行することが可能なコンピュータプログラムにおいて、
前記コンピュータを、
前記計算対象領域内で粒子径が最大である粒子から順次着目粒子とし、該着目粒子を内包する所定の大きさの小領域内で相互に接触している粒子及び接触する可能性のある粒子を検索する粒子検索手段、
検索された粒子に関する情報を記憶手段に記憶する手段、
着目粒子の積算変位を算出する手段、
積算変位が所定値を越えたか否かを判断する判断手段、及び
該判断手段で所定値を越えたと判断した場合にのみ、前記粒子検索手段を用い、所定値以下であると判断した場合、前記記憶手段から読み出した粒子に関する情報に基づいて粒子の挙動をシミュレートする手段
として機能させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項10】
前記領域は正方領域であり、
前記コンピュータを、
着目粒子の粒子径の、前記粒子検索手段にて検索された粒子の粒子径に対する粒子径比が2.0であり、前記粒子検索手段にて検索された小領域内の全粒子の体積の総和に対する、着目粒子と粒子径が相違する粒子の体積比が0.030乃至0.333である場合、前記領域の一辺の長さを粒子径の0.575乃至1.4倍に設定する手段
として機能させることを特徴とする請求項9記載のコンピュータプログラム。
【請求項11】
前記領域は正方領域であり、
前記コンピュータを、
着目粒子の粒子径の、前記粒子検索手段にて検索された粒子の粒子径に対する粒子径比を算出する手段、
前記粒子検索手段にて検索された小領域内の全粒子の体積の総和に対する、着目粒子と粒子径が相違する粒子の体積比を算出する手段、
算出した粒子径比及び体積比に基づいて、小領域を単一の大きさを有する領域で設定するか、複数の大きさを有する領域で設定するかを選択する手段、及び
前記小領域を複数の大きさを有する領域で設定する場合、体積比が0.5近傍であるときには前記領域の一辺の長さを粒子径の0.85乃至1.75倍に設定する手段
として機能させることを特徴とする請求項9記載のコンピュータプログラム。
【請求項12】
前記領域は正方領域であり、
前記コンピュータを、
着目粒子の粒子径の、前記粒子検索手段にて検索された粒子の粒子径に対する粒子径比を算出する手段、
前記粒子検索手段にて検索された小領域内の全粒子の体積の総和に対する、着目粒子と粒子径が相違する粒子の体積比を算出する手段、
算出した粒子径比及び体積比に基づいて、小領域を単一の大きさを有する領域で設定するか、複数の大きさを有する領域で設定するかを選択する手段、及び
前記小領域を複数の大きさを有する領域で設定する場合、体積比が0.1近傍であるときには前記領域の一辺の長さを粒子径の1.1乃至1.8倍に設定する手段
として機能させることを特徴とする請求項9記載のコンピュータプログラム。
【請求項1】
粒子径の相違する粒子間の距離に依存した複数の相互作用力に基づく粒子の挙動を計算する計算対象領域を複数の領域に分割し、計算対象領域内に含まれる粒子の挙動をシミュレートする装置において、
前記計算対象領域内で粒子径が最大である粒子から順次着目粒子とし、該着目粒子を内包する所定の大きさの小領域内で相互に接触している粒子及び接触する可能性のある粒子を検索する粒子検索手段と、
検索された粒子に関する情報を記憶手段に記憶する手段と、
着目粒子の積算変位を算出する手段と、
積算変位が所定値を越えたか否かを判断する判断手段と
を備え、
該判断手段で所定値を越えたと判断した場合にのみ、前記粒子検索手段を用い、所定値以下であると判断した場合、前記記憶手段から読み出した粒子に関する情報に基づいて粒子の挙動をシミュレートするようにしてあることを特徴とする粒子挙動シミュレーション装置。
【請求項2】
前記領域は正方領域であり、
着目粒子の粒子径の、前記粒子検索手段にて検索された粒子の粒子径に対する粒子径比が2.0であり、前記粒子検索手段にて検索された小領域内の全粒子の体積の総和に対する、着目粒子と粒子径が相違する粒子の体積比が0.030乃至0.333である場合、前記領域の一辺の長さを粒子径の0.575乃至1.4倍に設定する手段
を備えることを特徴とする請求項1記載の粒子挙動シミュレーション装置。
【請求項3】
前記領域は正方領域であり、
着目粒子の粒子径の、前記粒子検索手段にて検索された粒子の粒子径に対する粒子径比を算出する手段と、
前記粒子検索手段にて検索された小領域内の全粒子の体積の総和に対する、着目粒子と粒子径が相違する粒子の体積比を算出する手段と、
算出した粒子径比及び体積比に基づいて、小領域を単一の大きさを有する領域で設定するか、複数の大きさを有する領域で設定するかを選択する手段と、
前記小領域を複数の大きさを有する領域で設定する場合、体積比が0.5近傍であるときには前記領域の一辺の長さを粒子径の0.85乃至1.75倍に設定する手段と
を備えることを特徴とする請求項1記載の粒子挙動シミュレーション装置。
【請求項4】
前記領域は正方領域であり、
着目粒子の粒子径の、前記粒子検索手段にて検索された粒子の粒子径に対する粒子径比を算出する手段と、
前記粒子検索手段にて検索された小領域内の全粒子の体積の総和に対する、着目粒子と粒子径が相違する粒子の体積比を算出する手段と、
算出した粒子径比及び体積比に基づいて、小領域を単一の大きさを有する領域で設定するか、複数の大きさを有する領域で設定するかを選択する手段と、
前記小領域を複数の大きさを有する領域で設定する場合、体積比が0.1近傍であるときには前記領域の一辺の長さを粒子径の1.1乃至1.8倍に設定する手段と
を備えることを特徴とする請求項1記載の粒子挙動シミュレーション装置。
【請求項5】
粒子径の相違する粒子間の距離に依存した複数の相互作用力に基づく粒子の挙動を計算する計算対象領域を複数の領域に分割し、計算対象領域内に含まれる粒子の挙動をシミュレートする方法において、
前記計算対象領域内で粒子径が最大である粒子から順次着目粒子とし、該着目粒子を内包する所定の大きさの小領域内で相互に接触している粒子及び接触する可能性のある粒子を検索し、
検索された粒子に関する情報を記憶手段に記憶し、
着目粒子の積算変位を算出し、
積算変位が所定値を越えたか否かを判断し、
所定値を越えたと判断した場合にのみ、粒子の検索を行い、所定値以下であると判断した場合、前記記憶手段から読み出した粒子に関する情報に基づいて粒子の挙動をシミュレートすることを特徴とする粒子挙動シミュレーション方法。
【請求項6】
前記領域は正方領域であり、
着目粒子の粒子径の、検索された粒子の粒子径に対する粒子径比が2.0であり、検索された小領域内の全粒子の体積の総和に対する、着目粒子と粒子径が相違する粒子の体積比が0.030乃至0.333である場合、前記領域の一辺の長さを粒子径の0.575乃至1.4倍に設定することを特徴とする請求項5記載の粒子挙動シミュレーション方法。
【請求項7】
前記領域は正方領域であり、
着目粒子の粒子径の、検索された粒子の粒子径に対する粒子径比を算出し、
検索された小領域内の全粒子の体積の総和に対する、着目粒子と粒子径が相違する粒子の体積比を算出し、
算出した粒子径比及び体積比に基づいて、小領域を単一の大きさを有する領域で設定するか、複数の大きさを有する領域で設定するかを選択し、
前記小領域を複数の大きさを有する領域で設定する場合、体積比が0.5近傍であるときには前記領域の一辺の長さを粒子径の0.85乃至1.75倍に設定することを特徴とする請求項5記載の粒子挙動シミュレーション方法。
【請求項8】
前記領域は正方領域であり、
着目粒子の粒子径の、検索された粒子の粒子径に対する粒子径比を算出し、
検索された小領域内の全粒子の体積の総和に対する、着目粒子と粒子径が相違する粒子の体積比を算出し、
算出した粒子径比及び体積比に基づいて、小領域を単一の大きさを有する領域で設定するか、複数の大きさを有する領域で設定するかを選択し、
前記小領域を複数の大きさを有する領域で設定する場合、体積比が0.1近傍であるときには前記領域の一辺の長さを粒子径の1.1乃至1.8倍に設定することを特徴とする請求項5記載の粒子挙動シミュレーション方法。
【請求項9】
粒子径の相違する粒子間の距離に依存した複数の相互作用力に基づく粒子の挙動を計算する計算対象領域を複数の領域に分割し、計算対象領域内に含まれる粒子の挙動をシミュレートするコンピュータで実行することが可能なコンピュータプログラムにおいて、
前記コンピュータを、
前記計算対象領域内で粒子径が最大である粒子から順次着目粒子とし、該着目粒子を内包する所定の大きさの小領域内で相互に接触している粒子及び接触する可能性のある粒子を検索する粒子検索手段、
検索された粒子に関する情報を記憶手段に記憶する手段、
着目粒子の積算変位を算出する手段、
積算変位が所定値を越えたか否かを判断する判断手段、及び
該判断手段で所定値を越えたと判断した場合にのみ、前記粒子検索手段を用い、所定値以下であると判断した場合、前記記憶手段から読み出した粒子に関する情報に基づいて粒子の挙動をシミュレートする手段
として機能させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項10】
前記領域は正方領域であり、
前記コンピュータを、
着目粒子の粒子径の、前記粒子検索手段にて検索された粒子の粒子径に対する粒子径比が2.0であり、前記粒子検索手段にて検索された小領域内の全粒子の体積の総和に対する、着目粒子と粒子径が相違する粒子の体積比が0.030乃至0.333である場合、前記領域の一辺の長さを粒子径の0.575乃至1.4倍に設定する手段
として機能させることを特徴とする請求項9記載のコンピュータプログラム。
【請求項11】
前記領域は正方領域であり、
前記コンピュータを、
着目粒子の粒子径の、前記粒子検索手段にて検索された粒子の粒子径に対する粒子径比を算出する手段、
前記粒子検索手段にて検索された小領域内の全粒子の体積の総和に対する、着目粒子と粒子径が相違する粒子の体積比を算出する手段、
算出した粒子径比及び体積比に基づいて、小領域を単一の大きさを有する領域で設定するか、複数の大きさを有する領域で設定するかを選択する手段、及び
前記小領域を複数の大きさを有する領域で設定する場合、体積比が0.5近傍であるときには前記領域の一辺の長さを粒子径の0.85乃至1.75倍に設定する手段
として機能させることを特徴とする請求項9記載のコンピュータプログラム。
【請求項12】
前記領域は正方領域であり、
前記コンピュータを、
着目粒子の粒子径の、前記粒子検索手段にて検索された粒子の粒子径に対する粒子径比を算出する手段、
前記粒子検索手段にて検索された小領域内の全粒子の体積の総和に対する、着目粒子と粒子径が相違する粒子の体積比を算出する手段、
算出した粒子径比及び体積比に基づいて、小領域を単一の大きさを有する領域で設定するか、複数の大きさを有する領域で設定するかを選択する手段、及び
前記小領域を複数の大きさを有する領域で設定する場合、体積比が0.1近傍であるときには前記領域の一辺の長さを粒子径の1.1乃至1.8倍に設定する手段
として機能させることを特徴とする請求項9記載のコンピュータプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2007−286514(P2007−286514A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−116032(P2006−116032)
【出願日】平成18年4月19日(2006.4.19)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2006年3月28日 社団法人化学工学会主催の「化学工学会第71年会(平成17年度)」において文書をもって発表
【出願人】(503027931)学校法人同志社 (346)
【出願人】(504194878)独立行政法人海洋研究開発機構 (110)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年4月19日(2006.4.19)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2006年3月28日 社団法人化学工学会主催の「化学工学会第71年会(平成17年度)」において文書をもって発表
【出願人】(503027931)学校法人同志社 (346)
【出願人】(504194878)独立行政法人海洋研究開発機構 (110)
【Fターム(参考)】
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