説明

粒子状物質燃焼触媒及びディーゼル・パーティキュレート・フィルター

【課題】ディーゼルエンジンから発生する排ガスに含まれるPMを燃焼するための、低温でPMを燃焼でき、かつ耐久性にも優れるPM燃焼触媒を提供する。また、堆積したPMを低温で容易に除去できる、前記PM燃焼触媒を含むディーゼル・パーティキュレート・フィルターを提供する。
【解決手段】アルカリ土類金属Mと(Fe1−xTix)とを含有する複合酸化物粒子であって、(Fe1−xTix)/{(Fe1−xTix)+M}モル比が0.33以上0.93以下であり、Ti/(Fe+Ti)モル比である前記xが0≦x≦0.24である粒子状物質燃焼触媒、及び前記粒子状物質燃焼触媒を施したディーゼル・パーティキュレート・フィルターである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジンから発生する排ガスに含まれる粒子状物質(Particulate Matter、PM)を燃焼するための、粒子状物質燃焼触媒及びディーゼル・パーティキュレート・フィルター(Diesel Particulate Filter、DPF)に関する。
【背景技術】
【0002】
軽油などを燃料とするディーゼルエンジンの排ガスには、未燃炭化水素(hydrocarbons、HC)、一酸化炭素(CO)、及び窒素酸化物(NOx)とともに、煤(スート、粒子状物質、particulate matter、PM等とも呼ばれる)や、可溶性有機成分(soluble organic fraction、SOF)等が含まれている。これらの内、煤(以下、PMと呼ぶ。)を、捕集して除去するために、排ガス流路にDPFが配設される。DPFでPMが捕集されるが、DPFにPMが堆積するに伴い、背圧が上昇してエンジンの出力低下等を招く。そこで、何らかの方法により、捕集したPMを間欠的又は連続的に燃焼して除去し、DPFを再生されなければならない。
【0003】
DPFに捕集されたPMを燃焼させて再生する方法として、例えば、排ガス温度を強制的に上昇させてPM燃焼を起こす方法や、排ガス中に含まれるNOを酸化触媒によりNOにし、NOの酸化力でPMを燃焼させる方法等がある。後者の方法では、現状のNO酸化触媒ではNOを効率よく生成できないことや、PM燃焼に必要なNOを排ガス中に含まれるようにするにはエンジンの運転条件が限られていたり、エンジンマネージメントが複雑になったりするという問題がある。
【0004】
一方、前者の方法の一つとして、DPFの上流に、排ガス中に含有されるHC成分等を酸化して排ガス温度を上昇させるために、ディーゼル排ガス用酸化触媒(diesel oxidation catalyst、DOC)を配置する。即ち、DPFの自動再生制御時には、エンジンへの燃料噴射量を増量して排ガス中のHC成分量を増やし、この余剰のHCを排ガス流路上のDOCで酸化燃焼させ、その際の燃焼熱により排ガス温度を上昇させて、DPFに捕集されたPMの燃焼を促進させる。この方法は、排ガス中のNO含有量に依存しないので、エンジンマネージメントが容易になる(制約を受けない)等のメリットがある。一方で、排ガス温度を上げるために燃料を消費するので、燃費の悪化を招いたり、DPFへの熱負荷の増加による劣化が生じたりする。特に、SiC製DPFに比べて、安価なコージェライト製DPFは耐熱性に劣るので、重大な問題となる。
【0005】
そこで、PM燃焼用の触媒をDPFに施すことが検討されている。PM燃焼開始温度を低減できる触媒(PM燃焼触媒)をDPFに施しておけば、DPF中に堆積したPMを低温で燃焼して除去再生できるので、DOCへの負荷が低減でき(燃費向上)、DPFへの熱負荷も軽減できる。
【0006】
PM燃焼触媒として、一般的には、白金(Pt)を担持させた高比表面積のアルミナ等が使用されている。ところが、ディーゼルエンジンの排ガス温度は低く、この温度レベルでの、PtのPMを燃焼させる触媒作用は低いため、排ガス温度を上昇させるDOCの負担が大きい。理想的には、ディーゼルエンジンの排ガス温度程度で、PMを燃焼させる触媒があれば、排ガスを加熱せずにPMを燃焼できて連続的にDPFを再生できる。そこで、PMを低温で燃焼できるPM燃焼触媒が求められており、幾つかの触媒が開発されている。また、PM燃焼触媒として使用されるPtは高価であるので、Ptの使用量削減やPt以外の廉価な触媒が開発検討されている。
【0007】
例えば、セリア系酸化物がPM燃焼触媒として有効であることが開示され、更に、前記酸化物に白金族の金属を担持すると、より低温でPMを燃焼できることが開示されている(特許文献1や2を参照)。白金族以外の金属として銀(Ag)を担持したPM燃焼触媒も提案されている(特許文献3〜6を参照)。
【0008】
また、複合酸化物がPM燃焼触媒として作用することが開示されている(特許文献7〜11を参照)。また、複合酸化物に貴金属を担持したり(特許文献7を参照)、複合酸化物の構成元素に貴金属が含まれていたり(特許文献9、11を参照)する態様も記載されている。特許文献11では、複合酸化物AM(A:アルカリ金属又はアルカリ土類金属、M:Fe、Co又はNi、Oは酸素を示し、0<x≦4、0<y≦8である)が、ディーゼルエンジンの排ガス中のPMと窒素酸化物との両方を除去するのに有効であるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−216150号公報
【特許文献2】特開2008−136951号公報
【特許文献3】特開2007−196135号公報
【特許文献4】特開2009−45584号公報
【特許文献5】特開2007−296518号公報
【特許文献6】特開2009−78224号公報
【特許文献7】特開2007−14873号公報
【特許文献8】特開平09−267040号公報
【特許文献9】特開平09−271665号公報
【特許文献10】特開平5−184929号公報
【特許文献11】特開2005−66559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
PM燃焼触媒に関し、特許文献1では、貴金属を使用しないPM燃焼触媒として、セリア系酸化物が開発されているが、セリウムが希少で比較的高価な希土類金属元素あるので十分廉価な触媒であるとは言えないし、セリウム原料の供給が不安定であるという問題がある。また、PM燃焼触媒の低温活性に関しても、セリア系酸化物だけでは、いまだ不十分であるという問題がある。そこで、セリア系酸化物にもPtを担持してPM燃焼触媒としている(特許文献2)。
【0011】
一方、白金族金属以外の廉価な貴金属であるAgを使用した触媒が、PM燃焼触媒として低温活性に優れていると、特許文献3〜6に開示されている。本発明者らも、AgがPM燃焼触媒に優れていることを確認している。しかしながら、他の貴金属の融点(例えば、Ptの融点は1772℃である)に比べてAgの融点(961.9℃)が低いことからも理解できるように、Agはマイグレーション(migration)して凝集し易い。そのため、Agの触媒活性を長期間維持するのが難しく、耐久性に乏しいという問題がある。また、Agを使用した触媒は、耐熱性にも乏しい、即ち、温度が上がると溶融や凝集によってAg粒子が肥大化して触媒活性が低下するという問題がある。
【0012】
また、セリア系以外の酸化物、特に複合酸化物の中で、PM燃焼触媒として作用する複合酸化物が開発されているが、低温活性が不十分であるという問題がある。勿論、複合酸化物の構成金属イオンに、貴金属イオンや希土類金属イオンが含まれていると廉価なPM燃焼触媒とならない。
【0013】
更に、上記した先行技術文献などにおいて提案されている多くのPM燃焼触媒は、低温活性に優れているとしているものの、PMと触媒との接触具合(例えば、タイトコンタクトとルーズコンタクト)によって触媒作用が異なる。即ち、PM燃焼触媒は、通常の排ガス浄化触媒とは異なり、固体であるPMと酸素ガスとの酸化反応、つまり固体と気体との反応を促進しなければならない。そのため、PM固体が触媒と接触していなければ、効果的な触媒作用が得られない。通常の排ガス浄化触媒は、反応種がガス(気体)であり、ガスの酸化反応や還元反応を促進する触媒であるので、ガスの拡散(多孔化や高比表面積化)を考慮するだけでよい。そのため、基本的には、触媒活性さえ向上させれば、優れた排ガス浄化触媒を得ることができる。しかしながら、PM燃焼触媒の設計では、Agや複合酸化物によって活性酸素を発生させたとしても、PMが触媒に接触していなければ、十分な触媒作用が得られないことが明らかになってきた。
【0014】
また、PM燃焼触媒を評価するためにPMと触媒を混合している。多くの場合、この評価手法において、乳鉢で混合したり、ボールミルで長時間混合(特に、粉砕作用のある混合器で混合)しているため、タイトコンタクト(TC)状態での評価となる。ところが、同一の触媒について、乳鉢やボールミル等の混合器を使用しない混合で得られるルーズコンタクト(LC)状態で評価をすると、PM燃焼の温度が低下しなかったり(図1(a))、PMが完全に燃焼しなかったりすることがある(図1(b))。例えば、図1(a)および(b)は、ルーズコンタクト状態のPMの模式図であるが、図1(a)のように触媒表面に接触しているか、或いは触媒表面極近傍にあるPMは、触媒作用を受けて低温で燃焼することができる(燃焼[3])が、触媒に接触していないPMは触媒作用を受けない(燃焼[4])ので、燃焼するには通常の高温条件が必要となる。また、図1(b)のように、ルーズコンタクト状態の、触媒付近のPMは触媒作用を受けて燃焼する(PM[5])が、触媒に接触してないPMは燃焼しないで残存する(PM[6])こともある。
【0015】
実際にDPFに堆積されたPMの状態は、ルーズコンタクトに近い状態である。そのため、実用性を考えると、ルーズコンタクト状態でも十分な触媒作用を示すPM燃焼触媒が望まれる。
【0016】
このようの観点から、ルーズコンタクトでも高いPM燃焼触媒として、金属又は金属酸化物を核にして得たペロブスカイト型複合酸化物が提案されている(特開2006−110519号公報を参照)。前記金属又は金属酸化物がPMのC−C結合を切断し、前記ペロブスカイト型複合酸化物が放出した酸素が、C−C結合を切断されたカーボンに結合して酸化反応を起こすとしているが、ルーズコンタクト状態のPMをどのようにして効率よく燃焼しているのかは示されていない。また、発明者らは、特許文献12の触媒でも、空気(酸素濃度21%)よりも低酸素濃度の環境では、十分な低温PM燃焼が得られないことを確認している。
【0017】
また、本発明者らの一部は、2種類以上の結晶相を含み、アルカリ土類金属Mと、FeやCoとを含有する酸化物が、排ガス浄化用触媒の担体として有効であることを報告している(特開2009−142789号公報を参照)。しかしながら、前記排ガス浄化は、三元触媒等のガス(気体)同士の酸化反応や還元反応によるものである。固体の反応が関与するPM燃焼(PM酸化反応)は、気体同士の反応とは全く異なる反応である。そのため、どのような組成の前記酸化物が、PM燃焼にどのような作用を及ぼすかは、全く予測できていなかった。
【0018】
本発明では、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ディーゼルエンジンから発生する排ガスに含まれるPMを低温で燃焼でき、耐久性にも優れるPM燃焼触媒を提供することである。また、堆積したPMを低温で容易に除去できる、PM燃焼触媒を含むディーゼル・パーティキュレート・フィルターを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
これまでのPM燃焼触媒の開発では、例えば、(i)Agや特定の複合酸化物によって発生する活性酸素でPMを酸化燃焼させる作用、(ii)アルカリ金属イオンによりC−C結合を切断する作用、等を利用した触媒作用が着目されていた。これに対して、本発明者らは、PM燃焼触媒は、固体(PM)とガス(酸素)との反応を促進するものであることから、これまでの触媒作用に加えて、PMが付着しやすい触媒であると、ルーズコンタクトのような現実的な状況においてもより優れた触媒作用を発揮するものと考えた。
【0020】
この考えに基づき、発明者らは、PM(炭素)との付着仕事が大きな酸化物であって、PM燃焼触媒作用を有するものを詳細に検討した。その結果、Feを含む酸化物がPMとの付着仕事が大きく、更に、アルカリ土類金属を含有した複合酸化物とすることで優れたPM燃焼触媒作用を有することを見出した。また、前記複合酸化物において、Feの一部をTiで置換した場合にも優れたPM燃焼触媒作用を有し、更に耐熱性が向上することも見出した。即ち、アルカリ土類金属Mと(Fe1−xTi)とを含有し、特定の割合の(Fe1−xTi)を含有した複合酸化物が、PMに積極的に付着してPM燃焼温度を低下できることを見出し、本発明を完成した。
【0021】
すなわち、本発明は、以下の要旨とするものである。
[1]アルカリ土類金属Mと(Fe1−xTi)とを含有する複合酸化物粒子であって、(Fe1−xTi)/{(Fe1−xTi)+M}モル比が0.33以上0.93以下であり、かつTi/(Fe+Ti)モル比である前記xが0≦x≦0.24であることを特徴とする粒子状物質燃焼触媒。
[2]更に、前記複合酸化物粒子に担持されたAgを有することを特徴とする上記(1)記載の粒子状物質燃焼触媒。
[3]更に、前記複合酸化物粒子に担持されたPdを有することを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の粒子状物質燃焼触媒。
[4]前記複合酸化物粒子が、式(I)〜(V)のいずれかで表される結晶相を有することを特徴とする上記[1]〜[3]のいずれかに記載の粒子状物質燃焼触媒。
【数1】


(ここで、xは0≦x≦0.24であり、δは電荷中性条件を満たすように決まる値である。)
[5]前記複合酸化物粒子が複数の結晶相を含むことを特徴とする上記[1]〜[4]のいずれかに記載の粒子状物質燃焼触媒。
[6]前記アルカリ土類金属Mが、Sr若しくはCa、又はSrとCaの両方であることを特徴とする上記[1]〜[5]のいずれかに記載の粒子状物質燃焼触媒。
[7]Ti/(Fe+Ti)モル比である前記xが、0.03≦x≦0.24であることを特徴とする上記[1]〜[6]のいずれかに記載の粒子状物質燃焼触媒。
[8]上記[1]〜[7]のいずれかに記載の粒子状物質燃焼触媒を含有することを特徴とするディーゼル・パーティキュレート・フィルター。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ディーゼルエンジンから発生する排ガスに含まれるPMを低温で燃焼できるので、PMを燃焼させるために排ガス温度を上げる負担が軽減される。つまり、PM燃焼開始温度を下げることができるので、DPF中に堆積したPMを低温で燃焼して除去してDPFを再生できる。また、DOCへの負荷が低減でき、燃費を向上させることができる。DPF再生温度を低くできるので、DPFへの熱負荷も軽減できる。また、本発明のPM燃焼触媒は、希土類金属を含まず、耐久性に優れるので、廉価な触媒システムを設計できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】PMに対する濡れ性が低いPM燃焼触媒における、ルーズコンタクト状態でのPM燃焼を説明する図である。(a)触媒に接触したPMは、触媒作用を受けて低温でPM燃焼するが、触媒に接触していないPMは、触媒作用を受けないのでPM燃焼は高温が必要となる。(b)触媒付近のPMは触媒作用を受けて燃焼するが、触媒に接触してないPMは燃焼しないこともある。
【図2】PMに対する濡れ性が高いPM燃焼触媒(本発明のPM燃焼触媒)における、ルーズコンタクト状態でのPM燃焼を説明する図である。(a)ルーズコンタクト状態のPMは、触媒表面に積極的に付着して、タイトコンタクトと同様の状態となるので、触媒作用を受けて燃焼できる。(b)触媒表面に接しているPM[5]が燃焼すると、触媒表面に接していないPM[6]が、順次、触媒表面に移動して(PM[8])触媒作用を受けて燃焼するので、効率よく低温でPMが燃焼する。
【図3】本発明に係る複合酸化物粒子に貴金属を担持した場合の、PM燃焼触媒作用を示す模式図である。(a)貴金属を担持した複合酸化物粒子を示す全体図である。(b)酸素(O)を解離して吸収するサイトを説明する図である。(c)活性酸素によるPM燃焼を促進するサイトを説明する図である。
【図4】アルミナ等の従来の担体にAgを担持した場合に、担持したAgが容易に移動し、凝集して粗大化する過程を示す模式図である。
【図5】本発明に係る複合酸化物粒子に担持したAgの、PM追跡作用を示す模式図である。(a)複合酸化物粒子に担持したAgに接触したPMが燃焼すると、その部分の温度が上昇してAgが移動し易くなる。(b)担持したAgに接触したPM、またはAg付近のPMが燃焼すると同時に、Agが未燃のPMに向けて複合酸化物粒子表面上を移動する。(c)未燃のPMにまで移動したAgは、複合酸化物粒子とともに、PM燃焼を促進(触媒作用を発揮)する。その結果、複合酸化物粒子に堆積したPMは順次燃焼する。
【図6】本発明に係る、複数の結晶相(相I、相II、相III)を含む複合酸化物粒子のみで起こるPM燃焼(PM酸化)反応の模式図である。
【図7−1】本発明に係る、複数の結晶相(相I、相II、相III)を含む複合酸化物粒子に、貴金属が担持されている場合に起こるPM燃焼(PM酸化)反応模式図である。(a)貴金属が担持された複合酸化物粒子全体を表す図である。(b)担持された貴金属上で、酸素分子からの酸素イオンが複合酸化物の結晶格子中に取り込まれる過程を説明する模式図である。(c)担持された貴金属上で、複合酸化物の格子中の酸素イオンによってPM燃焼反応を促進させる過程を説明する模式図である。
【図7−2】2種の結晶相(相i、相ii)を含む複合酸化物粒子に、貴金属が担持されている場合におけるPM燃焼反応を説明する模式図である。
【図8】DPFの多孔性ハニカム側壁の断面を示す模式図である。(a)DPFに、従来のような微細な粒子触媒をコートした場合には、孔の表面から内部に渡って孔全体が触媒で塞がれるので、大きな圧損が生じる。(b)DPFの孔に対して特定の大きさの粒子の触媒を、DPFにコートした場合には、孔の表面付近を塞ぐのみであり、かつ、孔を塞いでも触媒層のガス透過性が高いので、圧損は殆ど生じない。
【図9】模擬PM(カーボンブラック)の燃焼挙動を示すグラフである。(a)CO濃度−温度曲線;(b)CO濃度−温度曲線。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明のPM燃焼触媒は、アルカリ土類金属MとFeとを含有する複合酸化物粒子である。Feの一部はTiで置換されていてもよく、(Fe1−xTi)を含有してもよい。
【0025】
複合酸化物粒子におけるアルカリ土類金属Mと、Feと、Tiとの比率を、モル比”(Fe1−xTi)/{(Fe1−xTi)+M}”が0.33以上0.93以下となるようにすることで、PMとルーズコンタクト状態であっても、空気(酸素濃度21%)よりも低酸素濃度環境下において、優れたPM燃焼触媒活性を示す複合酸化物粒子が得られる。これは、ルーズコンタクト状態(例えば、PMと触媒とをサンプル瓶に入れてシェイクして混合した状態)であっても、図2(a)に示すように、本発明のPM燃焼触媒[7]の表面にPM[2]が積極的に付着する傾向があるからである。一方、タイトコンタクト状態(例えば、乳鉢やボールミルで混合した状態)とは、通常、図2(a)に示す状態をいう。
【0026】
PMが積極的に付着する理由は、本発明のPM燃焼触媒表面に対するPMの付着仕事WPM-CATが大きい(濡れ性が高い)ためであると推定される。図1(a)に示される状態とは異なり、PMが触媒表面に接しているので、PM燃焼反応おいて触媒作用を受けることができる。即ち、効率よく低温でPM燃焼が起こる。また、PMが触媒表面に接していなくても、図2(b)に示しているように、触媒[7]の表面に接しているPM[5]が燃焼すると、触媒表面に接していないPM[6]は、順次触媒表面に移動して、移動したPM[8]が触媒作用を受けて燃焼するので、効率よく低温でPMが燃焼する。
【0027】
本発明の複合酸化物の表面には、PMが積極的に付着する理由、即ち、付着仕事WPM-CATが大きい理由は、PMを構成するベンゼン環(炭素六員環)のπ電子が、Feイオンに配位して安定な結合を形成することに起因していると推察される。また、更に、Feとアルカリ土類金属Mとの複合酸化物にすることで、酸素イオン伝導性が付与され、活性酸素を形成してPMの燃焼が促進される(触媒作用が発現する)。
【0028】
このように、本発明のPM燃焼触媒は、PMを積極的に付着する能力とPMの燃焼を促進する能力との相乗効果で、優れたPM燃焼触媒作用を発現する。したがって、優れたPM燃焼触媒作用を発現するには、特定の組成範囲の複合酸化物粒子とすることが好ましい。具体的には、上述のように、(Fe1−xTi)/{(Fe1−xTi)+M}モル比を0.33以上0.93以下の範囲とし、更に好ましく、0.40以上0.80以下の範囲とする。
【0029】
(Fe1−xTi)/{(Fe1−xTi)+M}モル比が0.33未満では、PMの燃焼は促進されるが、PMが触媒表面に付着し難い(付着仕事が小さい)ので、PM燃焼触媒として燃焼温度が低温にならなかったり、PMを効率よく燃焼できなかったりする。一方、(Fe1−xTi)/{(Fe1−xTi)+M}モル比が0.93を超えると、PMは付着しやすいが、付着したPMの燃焼が促進されない(燃焼温度が低下しない)。
【0030】
また、本発明のPM燃焼触媒となる上記複合酸化物は、Feの一部がTiで置換されてもよい。Tiで置換した場合には、耐熱性が向上する。即ち、900℃を超える温度でも安定であり、PM燃焼触媒としての触媒活性を維持できる。例えば、本発明のPM燃焼触媒を含有するDPFが、高温で長時間曝されると、触媒を構成する複合酸化物のアルカリ土類金属イオンが、炭化珪素(SiC)製DPFであればその成分であるシリコン(Si)と、コージェライト製DPFであればその成分であるアルミニウム(Al)と、徐々に反応していく場合がある。しかしながら、複合酸化物にTiが含有されていると、これらの反応が抑制される。
【0031】
このような耐熱性の向上の理由は、次のように考えられる。本発明に係る複合酸化物は、酸性酸化物である酸化物と塩基性酸化物であるアルカリ土類金属酸化物とが、酸−塩基という組み合わせで形成した化合物と考えることができる。酸−塩基という組み合わせの概念に基づけば、酸化鉄に比べてより酸性である酸化物と前記複合酸化物とを接触させると、アルカリ土類金属イオンが、酸化鉄よりも酸性の高い前記酸化物と反応するおそれがあり、特に高温条件下で反応が進行する場合がある。DPFを構成するシリカやアルミナは、酸化鉄に比べてより酸性の酸化物である。そのため、上述のように、本発明のPM燃焼触媒を含むDPFを高温等の条件に曝すと、複合酸化物とDPFの構成成分とが反応する可能性がある。一方、酸化チタンは、酸化鉄よりも酸性の高い酸化物である。そのため、アルカリ土類金属イオンと酸化鉄−酸化チタン固溶体との化合物とすれば、アルカリ土類金属イオンの、他の酸化物との反応が抑制される。即ち、本発明に係る複合酸化物のFeの一部をTiで置換すれば、アルカリ土類金属イオンが他の酸化物と反応しにくくなる。
【0032】
また、鉄イオン(Fe3+)の半径は65pm(6配位)であり、鉄イオン(Fe2+)の半径は78pm(6配位)である。一方、チタンイオン(Ti4+)の半径は61pm(6配位)であり、鉄イオンよりも小さいので、複合酸化物のFeをTiで置換することができる。更に、イオン半径の観点から、鉄イオンが、イオン半径の小さいチタンイオンで置換されると、複合酸化物結晶のマーデルングエネルギー(Madelung energy)が低くなって安定化する。そのため、アルカリ土類金属が抜け出し難くなる。そのため、共存する他の酸化物と反応し難くなるとも考えることができる。特に、アルカリ土類金属のイオン半径が大きい(Ca以上)と、マーデルングエネルギーが高くなるので、Ti置換による安定化効果が大きいと考えられる。
【0033】
以上のように、本発明に係る複合酸化物は、Feの一部をTiで置換されると、耐熱性が向上する。一方で、置換するTiの割合が多すぎると、PM燃焼触媒としての触媒作用が得られなくなる。したがって、Ti/(Fe+Ti)モル比、即ち、(Fe1−xTi)のxが0≦x≦0.24であると、優れたPM燃焼触媒活性が得られる。
【0034】
また、本発明に係る複合酸化物にTiが含まれると、上述のように、アルカリ土類金属イオンの反応性が抑制されるので、硫黄(S)とも化合物を形成し難くなり、硫黄に対してもより安定なPM燃焼触媒となる。ディーゼルエンジンの燃料(軽油)の脱硫黄化が進み、低硫黄燃料が使用されるようになってきているが、地域や用途によっては硫黄を含む燃料がいまだ使用されている。そのため、PM燃焼触媒は硫黄に対して安定であることが好ましい。本発明に係る複合酸化物において、(Fe1−xTi)のxが0.03≦x≦0.24範囲であると、硫黄に対して安定となってより好ましい。前記xが、0.03未満では、排ガス中に含まれる硫黄(硫黄酸化物等)と化合物を形成する場合があり、0.24を超えると、上述のように、PM燃焼触媒としての十分な触媒作用が得られない。
【0035】
本発明のPM燃焼触媒は、更に、本発明に係る複合酸化物粒子に担持された貴金属を有してもよい。担持される貴金属としては、特に限定されないが、例えば、Pt、Pd、Rh、Ir、Ag、Au等が挙げられる。
【0036】
図3に示すように、貴金属(例えばAg)[9]が担持された前記複合酸化物粒子[10]において、担持された貴金属部が、酸素(O)の取り込み口になったり、PMの触媒燃焼部になったりして、PM[11]の燃焼を効率化する。その結果、PMの完全燃焼性が促進される。つまり、PM燃焼によるCO発生が少なくなる。
【0037】
前記貴金属の担持率(貴金属と複合酸化物の総質量に対する貴金属の質量の百分率)は、前述のように目的に合わせて設計するので特に限定しないが、0.1質量%〜18質量%の範囲が好ましく、0.1質量%〜15質量%の範囲がより好ましく、0.3質量%〜11.0質量%の範囲が更に好ましい。
【0038】
PM燃焼触媒において、担持する貴金属のうち、Agは廉価で低温活性に優れているが、上述のように他の貴金属に比べてマイグレーションして凝集し易い。そのため、一般的には、触媒活性を長期間維持するのが困難であったり、温度が上がると溶融や凝集によってAg粒子が肥大化して触媒活性が低下したりする。つまり、図4に示すように、アルミナ等の従来の酸化物担体[12]にAg[13]を微細に担持しても、担体粒子間でも容易に担体表面上を移動して凝集した粒子[14]となり、さらに粗大なAg粒子[15]となる。また、Agの融点(961.9℃)は低く、排ガス温度が前記融点以上にまで上昇したり、また、PM燃焼によって局所的に前記融点以上に温度上昇したりすることもある。そのため、Agが溶融して容易に粗大化することもある。そのため、Agを担持する複合酸化物粒子は、従来は耐久性や耐熱性に乏しかった。
【0039】
ところが、本発明に係る複合酸化物にAgを担持すると、PM燃焼触媒として、耐久性や耐熱性に優れ、PM燃焼温度を更に低下できることが見出された。また、DPFを再生するには、PMを燃焼させて(酸素と酸化反応させて)、一酸化炭素COや二酸化炭素CO等のガスとして除去する。Agを担持する本発明に係る複合酸化物粒子を含むPM燃焼触媒は、PMの完全燃焼を起こしやすくなり、一酸化炭素を殆ど発生させない。
【0040】
発明者らは、担体に担持されたAgが安定に存在するためには、Agとの濡れ性が高い酸化物を担体とすると有効ではないかという考えに基づき、種々調査した。その結果、銅酸化物、コバルト酸化物、鉄酸化物が、Agに対して濡れ性が高いことが明らかになった。この知見に基づき、本発明に係る複合酸化物粒子にAgを担持して、優れたPM燃焼触媒を得た。
【0041】
更に、Agを担持した本複合酸化物粒子をPM燃焼触媒とすると、低温活性、完全燃焼性、耐久性・耐熱性等が向上する理由について詳細に調べ、次のような知見を得た。アルミナのようなAgと濡れにくい担体では、担持されたAgは上述のように凝集して粗大化する。粗大化したAgの周囲は、濡れ性が低いので、移動は起こりにくくなる。しかしながら、Agとの濡れ性の高い担体表面では、Agはその表面を自由に移動できる。Agは、他の貴金属に比べて移動しやすい。即ち、Agは、本発明に係る複合酸化物の表面のみを選択的に移動し、その移動範囲は濡れ性の高い該複合酸化物粒子表面に限られる。このように、前記複合酸化物粒子は、その粒子表面にAgを閉じ込こめる作用(Ag閉じ込め作用)を有すると考えることができる。
【0042】
また、前記複合酸化物粒子の表面上でAgとPMが接触している部位で、触媒作用によってPM燃焼が起こり、温度が高くなる。温度上昇により、Agは移動し易くなり(場合によっては溶融して或いは半溶融状態で移動する)、燃焼していないPMに移動していく。このように、前記複合酸化物粒子[16]の表面上に担持されたAg[19]は、PM[17]を追跡して燃焼させる作用(PM追跡作用[20])があると考えることができる(図5)。「Ag閉じ込め作用」は、PM燃焼触媒の耐久性や耐熱性を向上させ、「PM追跡作用」は、PM燃焼触媒の低温活性や完全燃焼性を向上させる。
【0043】
Agを担持した複合酸化物粒子によって、PM燃焼触媒として上記効果を得るには、Agの担持率(100×Ag質量/(Ag質量+複合酸化物質量))を、0.15質量%〜11.5質量%の範囲とすることが好ましく、0.25質量%〜6.5質量%の範囲とすることがより好ましい。0.15質量%未満では、上記の相乗効果が十分得られない場合がある。一方、11.5質量%を超えて高くしても、得られる効果が一定となってそれ以上の向上が見られない場合がある。
【0044】
また、本発明に係る複合酸化物粒子にPdを担持しても、より優れたPM燃焼触媒となる。即ち、PMの燃焼がより低い温度で起こり、PMが完全燃焼しやすくなる。Pdは、Agに比べて融点が高く(1554℃)、Agのようにマイグレーションし難い。つまり、上記「PM追跡作用」は殆ど有しない。一方、Pdを担持した本複合酸化物粒子は、Ptを担持したアルミナよりもPM燃焼温度が低く、耐久性や耐熱性にも優れる。PM燃焼の促進メカニズムは、図3に示した通りであると考えられるが、複合酸化物粒子表面のPdは、酸素(O)の解離に関する活性化エネルギーを低下させる作用が高いためであると推測する。
【0045】
Pdを担持する効果を得るには、Pdの担持率を、0.1質量%〜11.0質量%の範囲とすることが好ましく、0.1質量%〜7.0質量%の範囲とすることがより好ましい。0.1質量%未満では、前記Pdの効果が十分得られない場合がある。一方、11.0質量%を超えて高くしても、得られる効果が一定となってそれ以上の向上が見られない場合がある。
【0046】
PdとAgの両方を担持した本発明に係る複合酸化物粒子は、更に、PM燃焼温度を低くできる。これは、両方の貴金属がそれぞれ、酸素の分子の解離作用とPM燃焼促進作用と役割分担するためであると考える。例えば、担持されたPd部が、酸素の解離を促進して複合酸化物中への酸素イオンの吸収口として作用し、担持されたAg部に酸素イオン(活性酸素)が供給されてその酸素イオンによってPM燃焼が促進される。このような役割分担により、効率的に(相乗的に)PM燃焼を促進すると考えられる。PdとAgの両方を担持する場合には、Pd担持率/Ag担持率の比が、0.01〜2.0であるのが好ましく、より好ましくは、0.02〜1.0である。
【0047】
本発明のアルカリ土類金属Mと、(Fe1−xTi)とを含有する複合酸化物粒子は、例えば、一般式 M(Fe1−XTiとして表される。具体的な例としては、一般式 M(Fe1−xTi)O、M(Fe1−xTi)、M(Fe1−xTi)10、M(Fe1−XTi)O、M(Fe1−xTi)、M(Fe1−xTi)14、M(Fe1−XTi)、M(Fe1−xTi)14、M(Fe1−xTi)32、M(Fe1−xTi)、M(Fe1−xTi)、M(Fe1−xTi)、M(Fe1−xTi)15、M(Fe1−xTi)、及びM(Fe1−xTi)12として表される。特に好ましいのは、一般式(I)〜(V)で表される結晶相を有する複合酸化物粒子である。
【0048】
【数2】


(ここで、xは0≦x≦0.24であり、δは電荷中性条件を満たすように決まる値である。)
【0049】
これらの結晶相を有する複合酸化物粒子は、PM燃焼触媒作用がより大きく、貴金属(特に、AgやPd)を担持してPM燃焼触媒とすると、より優れた触媒効果が得られる。
【0050】
これらの複合酸化物の結晶相は、酸化物の結晶解析方法で分析できる。例えば、X線回折法、電子線回折法、中性子線回折法等を使用して、結晶相を判定、定量できる。
【0051】
本発明に係る複合酸化物は、酸素イオンと電子との混合伝導体である。図3で示したように、複合酸化物の結晶格子中の酸素イオン(O2−)が移動し易く(その補償として反対に電子が移動するが、図3では電子移動の記載を省略している)、前記酸素イオンがPM燃焼(PMの酸化反応)に関与する。そのため、本発明に係る複合酸化物は、PM燃焼触媒としての触媒活性が高いと考えられる。酸素イオンは、酸素分子Oに比べて活性が高く(活性酸素)、酸化反応に有効であることが知られている(例えば、特開平6−57470号公報を参照)。
【0052】
従来から、酸素イオンO2−を活性酸素として酸化反応に寄与させるために、酸素イオン伝導体に電圧を印加する方法や、酸素供給源(高酸素分圧)と反応室とに分けて酸素の濃度勾配で酸素イオンを移動・供給させる方法(特開2009−142789号公報を参照)などが知られている。これらの方法では、電圧印加や酸素濃度勾配がなければ、酸素イオンが移動し易い酸化物が存在しても、酸素イオンは発生せず、酸化反応は促進されない。
【0053】
ところが、本発明に係る複合酸化物粒子には、複数の結晶相(少なくとも2種の結晶相)が含まれ、ケミカルポテンシャルの異なる相が接触している。このように、1つの粒子中にケミカルポテンシャルが異なる部位が存在すると、ケミカルポテンシャルの高い方から低い方に向かって、(ケミカルポテンシャルの差が駆動力となって)酸素イオンが移動することができる。したがって、電圧印加や酸素濃度勾配を故意に作らなくても、酸素分子を酸素イオンとして取り込みながら、堆積したPMを酸素イオンで酸化するという反応サイクルが形成され、PM燃焼がより促進される。このように、複数の結晶相が存在する本発明に係る複合酸化物粒子は、酸素分子からの酸素イオンの取り込み口(図6における相II[25])と、酸素イオンを放出する部位(図6では相I[24])と、を有する。
【0054】
酸素分子からの酸素イオンを複合酸化物の結晶格子中に取り込むには、次式(1)のように、酸素分子を酸素イオンに解離させる必要がある。複数の結晶相(相I[24]、相II[25]、相III[26])が存在する前記複合酸化物粒子に、貴金属[27]が担持されていると(図7(b))、貴金属が酸素分子の解離を次式(2)のようにして促進させる。
【0055】
【数3】

【0056】
更に、担持されている貴金属のもう一つの役割として、PM[23]を吸着して活性化させ(特に、SOF等のHCが表面を覆っているPMに有効である)、複合酸化物の格子中の酸素イオンとの酸化反応(PM[23]の燃焼)を促進させる(図7(c))。
【0057】
複合酸化物粒子に複数の結晶相が含まれることは、上述のような技術思想からすると、ケミカルポテンシャルの異なる相が複数存在することである。例えば、前記複合酸化物を構成するカチオンの種類や組成が互いに異なる化合物又は相が、1つの粒子内に複数存在することを意味する。異なる化合物又は相とは、前述の例示のように、アルカリ土類金属Mと(Fe1−xTi)との組成比が異なる酸化物結晶などでありうる。また、同じ化合物であっても結晶構造が異なる場合も異なる相といえる。
【0058】
本発明において、複数(2種類以上)の結晶相を含むということは、例えば、第1の結晶相と第2の結晶相との2種の結晶相を含み、第2の結晶相の含有量が結晶相全体の0.5モル%以上であることをいう。第2の結晶相の含有量が、0.5モル%未満では、複数の結晶相としている上述の効果が得られないことがある。より好ましくは、結晶相を複数含む複合酸化物粒子が、1つの結晶相と他の1又は2以上の結晶相が含み、前記他の1又は2以上の結晶相の含有量が、結晶相全体の3モル%以上、5モル%以上、あるいは9モル%以上、さらには12モル%以上であることをいう。20モル%以上であってもよい。
【0059】
上述のメカニズムを踏まえれば、1つの粒子内に複数の結晶相が存在すれば、上記効果が得られる。よって、1つの粒子内に存在する結晶相の種類は複数であればいくつであってもよい。但し、1つの粒子に6つ以上の結晶相を含む粒子を作製するのは、製造条件が複雑になり効率的に得られない場合がある。
【0060】
また、1つの粒子に存在する複数の結晶相のサイズは、粒子サイズ未満であり、2〜5nmサイズであってもよい。ただし、図6等では模式的に大きく図示されている。
【0061】
前記アルカリ土類金属Mとしては、Be、Mg、Ca、Sr、Ba及びRaが挙げられる。前記アルカリ土類金属は、1種又は2種以上使用できる。(Fe1−xTi)との複合酸化物の形成しやすさから、Mg、Ca、Sr、Baが好ましい。
【0062】
前記アルカリ土類金属MにSrが含まれると、ディーゼルエンジンの排ガスにおける酸素分圧範囲のうち、酸素分圧が低い(例えば、10%未満)領域でも、優れたPM燃焼触媒活性を示す。また、前記アルカリ土類金属MにCaが含まれると、耐久性(耐熱性)により優れるPM燃焼触媒が得られる。特に、本発明のPM燃焼触媒が、ハニカム基体に活性アルミナを接着材としてコートされた場合には、前記効果が顕著に現れる。アルカリ土類金属Mの総量に対するCaのモル比Ca/Mは、0.1〜1.0であると好ましく、0.2〜0.95であるとより好ましい。
【0063】
本発明に係る複合酸化物粒子の粒子サイズは、レーザー回折散乱式粒度分布測定法で測定される体積累積基準D50(中心粒径)で、0.5μm〜100.0μmの範囲が好ましい。通常の酸化物担体や酸化物触媒では、粒径が小さい(例えば100nm以下)方が、貴金属を微細に分散できたり、触媒面積が広くなったりして好ましい。一方、本発明の触媒は上述のようなPM燃焼触媒作用を示すので、そのような小さな粒子にしなくても、十分なPM燃焼触媒活性が得られる。
【0064】
中心粒径D50が0.5μm未満であると、PM燃焼触媒活性は十分であるが、製造過程における粉砕等による粒径調製に時間がかかり、経済的でない場合がある。一方、中心粒径D50が100.0μmを超えると、DPF等へコートするスラリー中で均一に分散させることが難しくなる(沈降しやすくなる)場合がある。
【0065】
本発明に係る複合酸化物粒子の粒子サイズ(粒子径Dp)は、更に、DPFの多孔性ハニカム側壁の平均孔径Dhに対して、Dh/20≦Dp≦Dhの関係であると好ましい。PM燃焼触媒は、DPFにコートして使用される場合が殆どである。DPFは、PMを捕集できるとともに、排ガスの圧損が小さいことが重要である。そのため、PM燃焼触媒をDPFにコートしたときに、排ガスの圧損が大きくならないことが望まれる。よって、本発明のPM燃焼触媒も、DPFにコートした場合に、DPFの圧損に与える影響が少ない(圧損が大きくならない)ことが好ましい。即ち、図8(a)に示されるように、PM燃焼触媒が、PMと同様に、DPFの孔内に堆積して孔を塞いでしまうことは望ましくない。
【0066】
以上の観点から、本発明者らは、PM燃焼触媒となる粒子の粒径が、DPFの孔内に入り込んで孔を塞いでしまうような粒径であると、排ガスの大きな圧損を引き起こすと考え、詳細に検討した。その結果、上記のように、DPFの平均孔径Dhの1/20以上の粒子サイズであると、排ガスの圧損を殆ど起こさないことを見出した(図8(b))。つまり、図8(a)のように、微細な粒子[31]は、DPFの多孔質構成材[30]を、孔内部を含む孔全体を緻密に塞ぎ、ガスが通過し難くなり圧損が高くなる。一方、図8(b)のように、ある程度大きな粒子[32]は、DPFの多孔質構成材[30]の孔を塞いだとしても孔入口付近に留まり、かつガスが通過できる大きな隙間があるので、圧損を殆ど起こさない。但し、DpがDhより大きいと、DPFの圧損は起こさないが、PM燃焼触媒として触媒作用が十分発揮できない場合がある。
【0067】
ここで、粒子径Dpとは、レーザー回折散乱式粒度分布測定法で測定される体積累積基準D50(中心粒径)を意味する。平均孔径Dhとは、水銀圧入法にて測定される細孔分布から算出する平均孔径を意味する。
【0068】
更に、DPFの圧損の抑制という観点から、前記酸化物粒子の前記測定法で得られる粒度分布において、粒子径0.1μm以下粒子が10%未満であるとより好ましい。
【0069】
本発明に係る、アルカリ土類金属Mと(Fe1−xTi)とを含有する複合酸化物粒子は、固相反応法、共沈法やゾル・ゲル法などの液相法、化学気相析出法、レーザーアブレーション法等の任意の方法で製造されうる。例えば、固相反応法と共沈法による製造方法を以下に説明する。
【0070】
固相反応法による製造では、出発原料として、アルカリ土類金属Mの酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、有機酸塩、硫酸塩等;Feの酸化物、水酸化物、硝酸塩、硫酸塩;Tiの酸化物等を使用することができる。前記M、Fe、Tiの出発原料を所望の組成になるようにそれぞれ秤量し、混合した後、800〜1250℃の範囲内で仮焼する。出発原料の混合は、湿式、乾式のいずれでもよく、乳鉢混合、ボールミル、遊星ボールミル、ドラムミキサー、ピンミル等既存の方法であればどのような方法で行ってもよい。仮焼して得られる複合酸化物は、粉砕し、場合によっては分級して、使用される。
【0071】
共沈法による製造では、出発原料として、アルカリ土類金属Mの硝酸塩、硫酸塩、有機酸塩等;FeとTiの硝酸塩、硫酸塩、水酸化物、塩化物、キレート錯体、有機酸塩等を使用することができる。前記M、Fe、Tiの出発原料を所望の組成になるようにそれぞれ秤量し、水に溶解する。pH調整剤を添加して溶液のpHを中性〜塩基性にするか、又は共沈剤(シュウ酸塩、クエン酸塩等)を添加して、溶解しているM、Ti、Feのイオンを共沈させる。共沈物を、ろ過あるいは遠心分離によって分離・洗浄して、乾燥した後、800〜1250℃の範囲内で仮焼する。仮焼して得られる複合酸化物は、必要に応じて、粉砕、分級して使用される。
【0072】
本発明に係る複合酸化物粒子に、複数(2種以上)の結晶相を含ませるには、それぞれの製造方法における原料組成を、複合酸化物単相の化学量論比とは異なる原料組成比とすればよい。それにより、仮焼により複数相が形成される。すなわち、複数の金属が単一の複合酸化物を形成できない原料組成とすることで、複数の結晶相を含む複合酸化物粒子を製造することができる。例えば、前述のM(Fe,Ti)で表される結晶相を形成する場合、Mと(Fe,Ti)との組成比が、化学量論的に単一結晶相(単一化合物)を形成できない組成とする。Mと(Fe,Ti)との組成比(モル比)を、単一相を形成する組成比から、少なくとも0.005、少なくとも0.03、少なくとも0.05、さらには少なくとも0.09、少なくとも0.20異ならせることが好ましい。
【0073】
本発明に係る複合酸化物粒子に貴金属を担持する方法は、特に限定しないが、例えば、以下の方法で担持できる。水溶性の貴金属塩(例えば、硝酸塩、亜硝酸塩、塩化物、酢酸塩、硫酸塩、アンミン錯体など)、又は貴金属コロイドを水に加える。更に、前記溶液中に前記複合酸化物粒子を加えて、攪拌、超音波分散等で分散する。前記懸濁溶液の水分を除去し、乾燥させた後、400〜900℃の範囲で熱処理することで、貴金属を担持した本発明のPM燃焼触媒を作製できる。前記熱処理温度のより好ましい範囲は、450〜700℃である。
【0074】
本発明のPM燃焼触媒は、スラリーとしてDPFにウォッシュコートされ、ディーゼル・パーティキュレート・フィルター(Catalyzed DPF)とすることができる。前記スラリーは、PM燃焼触媒および結合材等を分散して調製する。結合剤としては、例えば、硝酸アルミニウム、コロイダルシリカ、ρ−アルミナ、有機バインダー等が挙げられる。本発明で使用できるDPFは、特に限定されないが、例えば、コージェライト製DPF、炭化珪素製DPF等が挙げられる。前記DPFのウォールスルーとなる多孔質壁面の孔サイズは、平均値が5μm〜80μmの範囲が好ましい。
【実施例】
【0075】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0076】
(実施例1)
アルカリ土類金属Mと(Fe1−xTi)とを含有する複合酸化物粒子を調製し、PM燃焼触媒としての評価を行った。
【0077】
アルカリ土類金属Mの原料として炭酸塩(MCO)を、Fe,Tiの原料として酸化物(Fe、TiO)を用いた。表1−1〜1−17の「アルカリ土類金属Mのモル比」欄、「(Fe1−xTi)/{(Fe1−xTi)+M}モル比」欄、「Ti/(Fe+Ti)モル比(x値)」欄、及び「複合酸化物粒子の相とその割合(%)」欄に示したようなM,Fe,Tiのモル比の関係で、前記原料を秤量して、ボールミルで混合した。
【0078】
前記混合粉末を、表1−1〜1−17の「仮焼温度(℃)」欄に示した900〜1100℃で5時間仮焼し、仮焼粉末をボールミルで粉砕した。前記粉砕粉末を、更に、同温で5時間仮焼し、仮焼粉末をボールミルで粉砕し、本発明に係る複合酸化物粒子と比較例となる複合酸化物粒子を作製し、貴金属を担持していないPM燃焼触媒とした。
【0079】
得られた粒子からなる粉末の結晶相は、粉末X線回折法によって同定した。複数の相が含有されている場合には、X線の回折ピークの面積から、それぞれの含有量を算出した。検量線は、単結晶相の回折ピーク面積を用いて作成した。また、1つの粒子に複数の結晶相が存在することは、透過型電子顕微鏡(TEM)で粒子を観察し、電子線回折を利用して確認した。
【0080】
上記の手順で作製した複合酸化物に、表1−1〜1−17に示した貴金属を、示された担持率で担持して、貴金属を担持したPM燃焼触媒を作製した。具体的には、硝酸銀、硝酸パラジウム、白金コロイド、及び塩化イリジウム酸を用いて、Ag、Pd、Pt、及びIrをそれぞれ担持した。硝酸銀、硝酸パラジウム、白金コロイド、又は塩化イリジウム酸を含む水溶液と、前記酸化物担体の粉末100gとを、ロータリーエバポレータに入れ、まず、常温、減圧下で回転攪拌しながら脱泡処理をした。常圧に戻して60〜70℃の間で加熱した後、減圧して脱水、乾燥した。常温まで冷却後、常圧に戻して固形物を取り出し、180℃で2時間乾燥した。乾燥した固形物(粉末)を大気中650℃で2時間熱処理した。以上の操作により、貴金属を担持したPM燃焼触媒粉末を作製した。
【0081】
表1−1〜1−17のPM燃焼触媒の粒子径Dp(D50)は、DPFの多孔性ハニカム側壁の平均孔径Dh(20μm)に対して、Dh/20≦Dp≦Dhの関係を満たす。粒径は、島津製作所社製レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定した。
【0082】
表1−1〜1−17における「複合酸化物粒子の相とその割合(%)」の欄における第1相〜第9相は、それぞれ以下を示す。
第1相:M(Fe1−xTi)8±δ
第2相:M(Fe1−xTi)O3.5±δ
第3相:M(Fe1−xTi)7±δ
第4相:M(Fe1−xTi)O2.5±δ
第5相:M(Fe1−xTi)13±δ
第6相:M(Fe1−xTi)4±δ
第7相:M(Fe1−xTi)11±δ
第8相:M(Fe1−xTi)1219±δ
第9相:M(Fe1−xTi)1828±δ
【0083】
【表1】

【0084】
【表2】

【0085】
【表3】

【0086】
【表4】

【0087】
【表5】

【0088】
【表6】

【0089】
【表7】

【0090】
【表8】

【0091】
【表9】

【0092】
【表10】

【0093】
【表11】

【0094】
【表12】

【0095】
【表13】

【0096】
【表14】

【0097】
【表15】

【0098】
【表16】

【0099】
【表17】

【0100】
表1−1〜表1−17に示されたPM燃焼触媒を、それぞれ以下の方法で評価した。PMの模擬材料として、東海カーボン(株)製カーボンブラックCB(#7350F)を使用した。表1の試料30mgと、前記CB(#7350F)1.6mgとをサンプル瓶の中に入れ、振って混合し、ルーズコンタクト状態の混合試料を得た。前記混合試料を20mg取り出し、U字管に充填して反応ガスを流通させながら加熱した。前記反応ガスは、10%O−Heバランスのガスであり、100ml/min流通させた。前記U字管を常温から750℃まで10℃/minで昇温しながら、出口ガスのCOとCOをガスクロマトグラフにて分析した。基準(比較例No.1−344)として、CB(#7350F)のみの試料で、同様の実験を行った。図9に、その結果を示す。
【0101】
図9に示されるように、COの発生のピーク点となる温度を測定し、CB(#7350F)のみの試料から発生するCOのピーク点の温度(699℃)に比べて、どの程度低下したかで、PM燃焼触媒としての触媒性能を判断した。また、COの発生のピーク点となるCO濃度を、CB(#7350F)のみの試料から発生するCO濃度(1425ppm)と比較して、完全燃焼の程度を判断した。その結果を、表2−1〜2−10の「未熱処理」欄に示した。尚、表2−1〜2−10において、CO濃度を≦2ppmと示しているのは、2ppm以下であったことを意味しており、ガスクロマトグラフの検出下限(0.5ppm)以下であった場合を含む。
【0102】
更に、耐熱性の評価に関しては、表1−1〜1−17の試料を980℃、48時間熱処理した後、上記と同様の評価を行った。その結果を表2−1〜2−8の「熱処理後」欄に示している。
【0103】
本発明の範囲内である実施例No.1−5〜1−11、No.1−13〜1−17、No.1−19〜1−35、No.1−37〜1−53、No.1−55〜1−59、No.1−61〜1−65、No.1−67〜1−71、No.1−73〜1−77、No.1−79〜1−89、No.1−91〜1−95、No.1−97〜1−113、No.1−115〜No.1−131、No.1−133〜No.1−137、No.1−139〜1−143、No.1−145〜1−149、No.1−151〜1−155、No.1−157〜1−189、No.1−191〜209、No.1−211〜1−248、No.1−250〜1−268、No.1−270〜1−289、No.1−291〜312、No.1−314〜1−341は、PM燃焼温度が低く、優れたPM燃焼触媒性能を示した。
【0104】
一方、比較例であるNo.1−1〜1−4は、(Fe1−xTix)/{(Fe1−xTi)+M}モル比が、0.33未満で本発明の範囲外であるために、PMのみの場合と比較して、PM燃焼温度が殆ど低下せず、PM燃焼触媒能が見られなかった。また、比較例であるNo.1−342〜1−343は、(Fe1−xTi)/{(Fe1−XTi)+M}モル比が、0.93を超えた本発明の範囲外であるために、PMのみの場合と比較して、PM燃焼温度が殆ど低くならず、PM燃焼触媒能が見られなかった。
【0105】
更に、比較例であるNo.1−12、No.1−18、No.1−36、No.1−54、No.1−66、No.1−72、No.1−78、No.1−90、No.1−96、No.1−114、No.1−132、No.1−138、No.1−144、No.1−150、No.1−156、No.1−190、No.1−210、No.1−249、No.1−269、No.1−290、No.1−313は、Tiの含有量が多すぎ、即ち、Ti/(Fe+Ti)モル比(x値)が0.24を超えて本発明の範囲外となったために、PMのみの場合と比較して、PM燃焼温度がそれほど低くならず、十分なPM燃焼触媒性能が見られなかった。
【0106】
上記実施例の中で、貴金属を担持した実施例No.1−6、No.1−19〜1−35、No.1−37〜1−53、No.1−55〜1−59、No.1−61〜1−65、No.1−67〜1−71、No.1−73〜1−77、No.1−79〜1−84、No.1−97〜1−113、No.1−115〜1−131、No.1−133〜1−137、No.1−139〜1−143、No.1−145〜1−149、No.1−151〜1−155、No.1−157〜1−170、No.1−172〜1−177、No.1−179〜1−189、No.1−192〜1−197、No.1−199〜1−209、No.1−211〜1−229、No.1−231〜1−236、No.1−238〜1−248、No.1−251〜1−256、No.1−258〜1−268、No.1−270〜1−289、No.1−291〜1−293、No.1−295〜1−300、No.1−302〜1−312、No.1−314〜1−325、No.1−327〜1−332、No.1−334〜1−341は、PM燃焼が低温で起こると共に、COの発生も殆どなくPMをCOまで完全に燃焼できた。
【0107】
貴金属の中でも、Agを含有している実施例No.1−6、No.1−19〜1−35、No.1−37〜1−53、No.1−67〜1−71、No.1−73〜1−77、No.1−79〜1−84、No.1−97〜1−113、No.1−115〜1−131、No.1−145〜1−149、No.1−151〜1−155、No.1−157〜1−170、No.1−172〜1−177、No.1−179〜1−189、No.1−192〜1−197、No.1−199〜1―209、No.1−211〜1−216、No.1−221〜1−229、No.1−231〜1−236、No.1−238〜1−248、No.1−251〜1−256、No.1−258〜1−268、No.1−270〜1−289、No.1−291〜1−293、No.1−295〜1−300、No.1−302〜1−312、No.1−314〜1−325、No.1−327〜1−332、No.1−334〜341は、よりPM燃焼温度が低くなり、Ag担持率が0.15質量%以上で顕著になった。また、AgとPdとを担持した場合にも、PM燃焼温度がより低くなった。
【0108】
実施例の中で、Tiの含有量、即ち、Ti/(Fe+Ti)モル比(x値)が0.03以上である実施例No.1−10〜1−11、No.1−16〜1−17、No.1−25〜1−30、No.1−34〜1−35、No.1−43〜1−48、No.1−52〜1−53、No.1−58〜1−59、No.1−64〜1−65、No.1−70−1−71、No.1−76〜1−77、No.1−88〜1−89、No.1−94〜1−95、No.1−103〜1−108、No.1−112〜1−113、No.1―121〜1−126、No.1−130〜1−131、No.1−136〜1−137、No.1−142〜1−143、No.1−148〜1−149、No.1−154〜1−155、No.1−157〜1−170、No.1−178〜1−184、No.1−188〜1−189、No.1−198〜1−204、No.1−208〜1−209、No.1−211〜1−236、No.1−247〜1−248、No.1−257〜1−263、No.1−267〜1−268、No.1−270〜1−284、No.1−288〜1−289、No.1−291〜1−293、No.1−301〜1−307、No.1−311〜2−312、No.1−314〜1−325、No.1−334〜1−341は、980℃、48時間熱処理した後でも、PM燃焼温度は殆ど変化しなかった。
【0109】
【表18】

【0110】
【表19】

【0111】
【表20】

【0112】
【表21】

【0113】
【表22】

【0114】
【表23】

【0115】
【表24】

【0116】
【表25】

【0117】
【表26】

【0118】
【表27】

【0119】
(実施例2)
実施例1で作製したPM燃焼触媒に関し、更に、5%及び7%O−Heバランスの反応ガス組成で、実施例1と同様に、PM燃焼触媒の性能評価を行った。表3に、その結果の代表例を示す。表3の中で、アルカリ土類金属Mに、Srを含む触媒No.1−111,No.1−142、No.1−323が、10%O未満の雰囲気でも優れたPM燃焼触媒性能を示した。
【0120】
【表28】

【0121】
(実施例3)
表1の実施例No.1−247、1−257、及び1−305と同様の試料作製条件の中で仮焼温度(800℃〜1200℃)と仮焼時間(2時間〜48時間)を変化させ、更に粉砕や分級で、粒度分布の異なる種々の複合酸化物粒子を作製し、表4−1〜4−2に示したような粒子径DpのPM燃焼触媒を調製した。
【0122】
一方、直径75mm、長さ60mm、セル密度200cpsi(31セル/cm)のコージェライト製DPF、及び、直径75mm、長さ60mm、セル密度200cpsi(31セル/cm)の炭化珪素製DPFに、表4−1〜4−2のPM燃焼触媒をコーティングした。尚、表4に示した前記DPFの平均孔径Dhは、水銀圧入法で測定して求めた。DPFへのPM燃焼触媒のコーティングは、スラリーを塗布・乾燥後、650℃、1時間で焼き付けて行った。スラリーは、各PM燃焼触媒粉末をそれぞれ20質量部、ρ−アルミナ2質量部、純水40質量部と、結合剤として市販メチルセルロース溶液(固形分2.5質量%)10質量部を攪拌しながら添加し、さらに消泡剤を添加して、混合して調製した。DPFへコートした触媒量は、全て、50g/Lである。
【0123】
以上のようにして調製したDPFの入口側から圧縮空気を流し、入口側と出口側の差圧を測定し、空気の流速が5m/sときの差圧を圧損として各DPFを比較した。また、表4の各触媒粉末に関し、実施例1と同様の方法でPM燃焼触媒評価を行い、CO発生のピーク温度が、表1の同試料と同じものを◎、5℃〜10℃高いものを○として、表4の「PM燃焼触媒作用」の欄に示した。
【0124】
表4−1〜4−2に示しているように、触媒の粒子径Dpが、DPFの平均孔径Dhに対して、Dh/20≦Dp≦Dhの関係にある実施例No.3−2〜3−7、No.3−11〜3−15、No.3−18〜3−23、No.3−27〜3−31、No.3−34〜3−39、No.3−43〜3−47は、圧損が低く、かつPM燃焼触媒性能にも優れるものであった。
【0125】
【表29】

【0126】
【表30】

【符号の説明】
【0127】
1 触媒(PM燃焼触媒)
2 PM
3 触媒作用を受けるPM燃焼
4 触媒作用を受けないPM燃焼
5 燃焼するPM
6 燃焼しないPM
7 本発明のPM燃焼触媒(複合酸化物粒子)
8 燃焼したPM[5]に引き続いて触媒表面に移動して付着したPM
9 本発明に係る複合酸化物に担持されたAg
10 本発明に係る複合酸化物粒子
11 本発明のPM燃焼触媒に付着したPM
12 従来の担体
13 従来の担体に担持されているAg粒子
14 凝集したAg粒子
15 凝集したAg粒子が肥大化したAg粒子
16 本発明に係る複合酸化物粒子(Agを担持した複合酸化物粒子)
17 PM
18 Ag(19)の作用で燃焼したPM
19 本発明に係る複合酸化物粒子に担持されたAg
20 Agの移動(PM追跡作用)を示す矢印
21 移動したAg
22 移動前のAg
23 本発明に係る複数の相を含む複合酸化物粒子に堆積したPM
24 相I
25 相II
26 相III
27 本発明に係る複数の相を含む複合酸化物粒子に担持した貴金属
28 相(i)
29 相(ii)
30 DPFの多孔質側面の構成材
31 微細な触媒粒子
32 大きな触媒粒子


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ土類金属Mと、(Fe1−xTix)とを含有する複合酸化物粒子であって、
(Fe1−xTix)/{(Fe1−xTix)+M}モル比が、0.33以上0.93以下であり、かつ
Ti/(Fe+Ti)モル比である前記xが、0≦x≦0.24であることを特徴とする粒子状物質燃焼触媒。
【請求項2】
更に、前記複合酸化物粒子に担持されたAgを有することを特徴とする請求項1記載の粒子状物質燃焼触媒。
【請求項3】
更に、前記複合酸化物粒子に担持されたPdを有することを特徴とする請求項1又は2に記載の粒子状物質燃焼触媒。
【請求項4】
前記複合酸化物粒子が、下記式(I)〜(V)のいずれかで表される結晶相を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の粒子状物質燃焼触媒。
【数1】

(ここで、xは0≦x≦0.24であり、δは電荷中性条件を満たすように決まる値である。)
【請求項5】
前記複合酸化物粒子が複数の結晶相を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の粒子状物質燃焼触媒。
【請求項6】
前記アルカリ土類金属Mが、Sr若しくはCa、又はSrとCaの両方であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の粒子状物質燃焼触媒。
【請求項7】
Ti/(Fe+Ti)モル比である前記xが、0.03≦x≦0.24であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の粒子状物質燃焼触媒。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の粒子状物質燃焼触媒を含有することを特徴とするディーゼル・パーティキュレート・フィルター。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−56389(P2011−56389A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−208319(P2009−208319)
【出願日】平成21年9月9日(2009.9.9)
【出願人】(306032316)新日鉄マテリアルズ株式会社 (196)
【Fターム(参考)】