説明

粒子線治療システム及び粒子線治療システムにおける荷電粒子ビームのエネルギー確認方法

【課題】粒子線治療システムにおいて、治療照射前に、セッティングや計測に時間を取られずにビームエネルギーを計測できるようにすることで、治療前手順を減らし、治療の時間的な効率を上げることができるようにする。
【解決手段】照射ノズル装置54は、ビーム走査装置1、線量モニタ2、ビーム位置モニタ3を有し、照射制御装置120は、エネルギー確認モードが指令されると、ビーム走査装置1の走査電磁石に一定磁場を発生させて荷電粒子ビーム8を偏向し、計測される線量信号6及び位置信号7を基にエネルギー確認を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粒子線治療システム及び粒子線治療システムにおける荷電粒子ビームのエネルギー確認方法に係り、特に、荷電粒子ビーム(イオンビーム)を癌などの患者の患部(照射対象)に照射して治療を行う粒子線治療システム及び粒子線治療システムにおける荷電粒子ビームのエネルギー確認方法に関する。
【背景技術】
【0002】
癌などの患者の患部に陽子等の荷電粒子ビーム(イオンビーム)を照射する治療方法が近年脚光を浴びている。この治療方法に用いる治療システム(粒子線治療システム)は、荷電粒子ビーム発生装置、ビーム輸送系及び回転式照射装置を備え、荷電粒子ビーム発生装置はシンクロトロン等の加速器を有し、回転式照射装置は治療室に設置されかつ回転ガントリーに取り付けられた照射ノズル装置を有し、荷電粒子ビーム発生装置の加速器で加速された荷電粒子ビームは、ビーム輸送系を経て治療室の回転式照射装置を通過し、照射ノズル装置から患者の患部に照射される(特許文献1)。
【0003】
照射ノズル装置は、荷電粒子ビーム発生装置から導かれた荷電粒子ビームを、患者の体表面からの深さ及び患部形状に合わせて整形して、治療用ベッド上の患者の患部に照射する装置である。照射ノズル装置の照射方式には、ビームスキャニング方式(特許文献1)や、二重散乱体方式(特許文献2)、RMW(Range Modulation Wheel)照射方式(特許文献3)等、種々の方式がある。
【0004】
荷電粒子ビームを用いた治療では、荷電粒子ビームのエネルギーの大部分が、荷電粒子(例えば陽子)が停止するときに放出される、すなわちブラッグピークが形成されるという特性を利用し、荷電粒子ビームの入射エネルギーの選択により荷電粒子を患部の所望の深さ近傍で停止させて、エネルギー(吸収線量)の大部分を当該深さの患部の細胞にのみ与えるようにする。上記いずれの照射方式の照射ノズル装置においても、荷電粒子ビームのエネルギーを変更或いは調整し、ビームエネルギーの到達深度(飛程)を調整することによって、患部の深さ位置への荷電粒子ビームの照射を行っている。
【0005】
このような粒子線治療システムにおいては、治療のための照射前に、照射ノズル装置から出射される荷電粒子ビームのエネルギーが設定した値になっているかどうか(したがって、荷電粒子ビームのエネルギーに依存する到達深度(飛程)が目的とする深さ位置になっているかどうか)を確認することが重要である。従来一般に、そのようなビームエネルギーの確認は、水ファントム型の測定装置を照射ポイントに設置し、線量分布を計測することにより行っていた(特許文献4)。
【0006】
また、水ファントム型の測定装置によらないビームエネルギーの確認方法として、加速器(シンクロトロン)による荷電粒子ビームの加速終了後において、加速空洞に印加される高周波周波数や周回する荷電粒子ビームの軌道位置をチェックすることにより、加速終了後における加速器内の荷電粒子ビームのエネルギーを判定し、照射前のビームエネルギーを確認することが提案されている(特許文献5)。
【0007】
【特許文献1】特開2004−358237号公報
【特許文献2】特開2004-313314号公報
【特許文献3】特開2006−239404号公報
【特許文献4】特開平11−64530号公報
【特許文献5】特開2005-142034号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
治療のための照射前に荷電粒子ビームのエネルギーを確認するため、特許文献4に記載されるような水ファントム型の測定装置を用いる方法(以下、水ファントム方式という)は、重量のある水を充満した水槽を照射ポイントに設置しなくてはならないため、セッティングに時間を要するとともに、回転ガントリー内の治療室の床(移動床など)の面強度を大きくする必要があるという問題がある。また、水ファントム方式では、ビームエネルギー(飛程)計測のために患者を載せるベッドを退避させたり、計測終了後に水ファントム型の測定装置を片付けたりする必要があり、治療前手順が増えてしまうという問題もある。特に、照射方式がビームスキャニング方式である場合は、ビームのエネルギーを変更して照射標的(患部)の深度調整を行うため、必要とするエネルギー数も多く、水ファントム方式でのエネルギー・飛程確認では計測時間が長くなってしまう。こうした理由により、簡単にビームのエネルギーを計測して照射制御システムに取り込み、到達深度という重要な照射パラメータをセーフティシステムに反映することが難しい。
【0009】
特許文献5に記載の提案では、加速器(シンクロトロン)による荷電粒子ビームの加速終了後における加速用の高周波周波数や周回ビームの軌道位置をチェックすることによる荷電粒子ビームのエネルギー確認であるため、水ファントム方式にあった問題点は生じない。しかし、この提案は、加速器から出射される前の荷電粒子ビームのエネルギーを確認するものであり、照射ノズル装置から照射対象へと照射される荷電粒子ビームのエネルギーを確認することはできない。加速器により設定エネルギーまで加速された荷電粒子ビームは、加速器から出射後、ビーム輸送系を通過して照射ノズル装置に進入し、照射対象に照射されるまでの間、少なからずエネルギー損失を生じる。特に照射ノズル装置は何らかのエネルギー吸収体を内蔵する場合が多く、照射ノズル装置を通過した荷電粒子ビームはそのエネルギー吸収体によってもエネルギーを損失する。したがって、加速器から出射前のビームエネルギーではなく、照射ノズル装置から照射対象へと照射される荷電粒子ビームのエネルギーを確認することが望まれる。
【0010】
本発明の第1の目的は、治療のための照射前に、セッティングや計測に時間を取られずにビームエネルギーを計測できるようにすることで、治療前手順を減らし、治療の時間的な効率を上げることができる粒子線治療システム及び粒子線治療システムにおける荷電粒子ビームのエネルギー確認方法を提供することである。
【0011】
本発明の第2の目的は、加速器から出射前の荷電粒子ビームのエネルギーではなく、照射ノズル装置から照射対象へと照射される荷電粒子ビームのエネルギーを確認できるようにすることで、治療に直接に係わる荷電粒子ビームのエネルギーを確認することができる粒子線治療システム及び粒子線治療システムにおける荷電粒子ビームのエネルギー確認方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した第1及び第2の目的を達成する本発明の特徴は、荷電粒子ビーム発生装置と、この荷電粒子ビーム発生装置から出射された荷電粒子ビームを照射対象に照射する照射ノズル装置とを備えた粒子線治療システムにおいて、前記照射ノズル装置内に配置され、前記荷電粒子ビームのビーム経路に所定の磁場を発生させ、前記照射ノズル装置内に進入した荷電粒子ビームを偏向させる磁石装置と、前記磁石装置の下流側において、前記所定の磁場によって偏向された荷電粒子ビームの通過位置を計測し、前記照射ノズル装置内に進入した荷電粒子ビームのエネルギーを確認するエネルギー確認装置とを備えることである。
【0013】
荷電粒子ビームは磁場を通過するとき磁場の作用を受けて偏向する。この偏向量は荷電粒子ビームのエネルギーに依存して変化し、荷電粒子ビームのエネルギーが小さくなれば荷電粒子ビームの偏向量は大きくなる。したがって、ビーム経路に所定の磁場を発生させ、その磁場によって荷電粒子ビームを偏向させることにより、荷電粒子ビームのエネルギーの相違が照射深度方向から横方向(荷電粒子ビームの進行方向に直交する方向)の位置に変換され、その横方向位置を計測することによりエネルギー確認を行うことができる。本発明はこのような知見に基づくものであり、磁石装置とエネルギー確認装置を設け、所定の磁場によって偏向された荷電粒子ビームの通過位置を計測することにより、水ファントム方式によらず荷電粒子ビームのエネルギーを確認することができる。そしてこのように水ファントム方式によらず荷電粒子ビームのエネルギーを確認することにより、治療のための照射前に、セッティングや計測に時間を取られずにビームエネルギーを計測することができ、治療前手順を減らし、治療の時間的な効率を上げることができる。また、加速器から出射前の荷電粒子ビームのエネルギーではなく、照射ノズル装置から照射対象へと照射される荷電粒子ビームのエネルギーを確認することにより、治療に直接係わる荷電粒子ビームのエネルギーを確認することができる。
【0014】
エネルギー判定装置は、荷電粒子ビームのエネルギー確認を行うに当たって、ビーム位置計測装置の計測結果だけを用いてもよいが、好ましくは、ビーム位置計測装置と線量計測装置の両方の計測結果を用いる。この場合、好ましくは、エネルギー判定装置は、荷電粒子ビームの横方向位置に対する線量分布を計算し、この線量分布を、治療計画からくるエネルギーのデータに基づいて予め登録している各エネルギーにおける線量分布と比較し、それらが許容値の範囲内で一致しているかどうかを判定する。このように線量分布を用いて比較判定を行うことにより、荷電粒子ビームのエネルギーの相違が比較的小さく、ビーム位置計測装置で計測したビームの横方向位置が近接している場合であっても、計測の分解能が向上し、エネルギー確認を精度良く行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、荷電粒子ビームのエネルギーの相違を照射深度方向から横方向に変換してエネルギー確認を行うことで、水ファントム方式のようにセッティングや計測に時間を取られることなく、ビームエネルギーを計測することができ、治療前手順を減らし、治療の時間的な効率を上げることができる。
【0016】
また、本発明によれば、加速器から出射前の荷電粒子ビームのエネルギーではなく、照射ノズル装置から照射対象へと照射される荷電粒子ビームのエネルギーを確認することができ、治療に直接係わる荷電粒子ビームのエネルギーを確認することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態であるエネルギー確認装置を備えた粒子線治療システムを、図面を参照しつつ説明する。
【実施例1】
【0018】
図1は、本発明の第1の実施の形態における粒子線治療システムの全体構成を示す図である。
【0019】
図1において、本実施の形態の粒子線治療システムは、荷電粒子ビーム発生装置51、ビーム輸送系52及び回転式照射装置53を備え、回転式照射装置53は治療室に設置されかつ回転ガントリー(図示せず)に取り付けられた照射ノズル装置54を有している。
【0020】
荷電粒子ビーム発生装置51は、イオン源(図示せず)、前段加速器(例えば直線加速器)61及びシンクロトロン62を有し、イオン源で発生したイオン(例えば、陽子イオン(または炭素イオン)等の荷電粒子ビーム)は前段加速器61で加速され、前段加速器61から出射された荷電粒子ビームはシンクロトロン62に入射される。この荷電粒子ビームは、シンクロトロン62で加速され、設定されたエネルギーまでに高められた後、出射用デフレクタ63から出射される。シンクロトロン62から出射された荷電粒子ビームは、ビーム輸送系52を経て回転式照射装置53の照射ノズル装置54に達し、照射ノズル装置54から治療台(ベッド)64上の患者65の患部に照射される。照射ノズル装置54の先端には、患者コリメータを挿入設置するためのスノート66が装着されている。
【0021】
本実施の形態の粒子線治療システムは、また、中央制御装置100、加速・出射制御装置110、照射制御装置120を有している。中央制御装置100は、入力した患者識別情報を用いて、これから治療を行う患者に関する治療計画データを治療計画装置130から読み込み、この治療計画データを保存する。加速・出射制御装置110は、中央制御装置に保存した治療計画データに基づいてシンクロトロン62の加速空洞62aを制御し、シンクロトロン62を周回する荷電粒子ビームを設定したエネルギーまで加速する。また、加速・出射制御装置110は、中央制御装置100に保存した治療計画データと、照射制御装置120で決定しビーム照射の停止・開始タイミング等の情報とに基づいて高周波供給装置140内のスイッチ(図示せず)の開閉を制御することで、シンクロトロン62の高周波印加電極62bへの高周波電力の印加及び高周波電力の印加の停止を制御し、シンクロトロン62からの荷電粒子ビームの出射開始及び出射停止を制御する。照射制御装置120は中央制御装置に保存した治療計画データに基づいて照射したい計画線量に合せ、一連のビーム照射を制御するための装置である。中央制御装置100は、表示入力手段として、表示装置150a及びキーボード、マウス150bを有するパソコン150を備えている。
【0022】
図2は照射ノズル装置54の内部構成とその制御系である照射制御装置120を示す図である。照射ノズル装置64において、図1に示したスノート66の図示は省略している。
【0023】
照射ノズル装置54は走査式の照射ノズル装置であり、ビーム走査装置1、線量モニタ2、ビーム位置モニタ3を有している。ビーム走査装置1は荷電粒子ビーム8を偏向するための装置である。線量モニタ2は通過した荷電粒子ビーム8の線量を計測するための装置である。ビーム位置モニタ3は通過した荷電粒子ビーム8の位置を計測するための装置である。
【0024】
ビーム走査装置1は、荷電粒子ビーム8を一方向(x方向)に偏向する1対の第1走査電磁石と、その一方向に直交する方向(y方向)に偏向する1対の第2走査電磁石とを有している。照射制御装置120は、ビーム照射制御のため、中央制御装置100から得た治療計画に基づく照射位置及びエネルギーに応じた走査電磁石の励磁電流を計算し、電源(図示せず)に出力指令を送信する。電源は、その出力指令に応じて所定パターンの励磁電流を走査電磁石に流す。照射制御装置120はパソコン等の表示装置14を備えている。
【0025】
荷電粒子ビーム8は図2の上側よりビーム走査装置1へ進入し、照射制御装置120にて設定された走査電磁石のパターン磁場により偏向される。偏向された荷電粒子ビーム8は線量モニタ2及びビーム位置モニタ3を通過し、患者65の患部に照射される。荷電粒子ビーム8が線量モニタ2及びビーム位置モニタ3を通過する際に発生する線量計測信号6及びビーム位置計測信号7は照射制御装置120へ送信される。ビーム走査方式がビームスポットスキャニング照射法(ビーム照射時はビームの移動(走査)を停止して所定位置に照射し、照射位置の変更時はビームの照射(シンクロトロン62からのビームの出射)を停止する照射法)である場合、照射制御装置120は線量計測信号6及びビーム位置計測信号7から得た照射線量情報及び位置情報を用い、ビーム照射の停止・開始タイミングや走査電磁石に対する励磁電流の停止・開始タイミングを決定するとともに、照射位置を次の位置に移動するための走査電磁石の励磁電流を決定する。
【0026】
また、本実施の形態における照射制御装置120は照射エネルギーの確認モードを有している。このエネルギー確認モードは、治療前(荷電粒子ビームを患者の患部に照射する前)に荷電粒子ビームのエネルギーを確認するためのモードである。上位コンピュータである中央制御装置100の操作手段150b(キーボード、マウス等)によってエネルギー確認モードの指令信号が入力されると、その指令信号により照射制御装置120は通常モードからエネルギー確認モードに切り換えられる。このエネルギー確認モードを実施する際には、照射ノズル装置54よりもビーム進行方向の下流側にビームダンパ23(遮蔽体或いはビームストッパ)が配置される。ビームダンパ23は、照射ノズル装置54を通過した荷電粒子ビーム8を止めるための遮蔽体である。エネルギー確認モードの指令信号は照射制御装置120の表示装置14に付属する図示しない入力手段で行ってもよい。
【0027】
照射制御装置120がエネルギー確認モードに切り換わると、所定の励磁電流をビーム走査装置1の走査電磁石に流す。荷電粒子ビーム8は図2の上側より荷電粒子ビーム走査装置1へ進入し、照射制御装置120にて設定されたビーム走査装置1の所定の磁場により偏向される。ここで、所定の励磁電流とは好ましくは予め定められた一定の励磁電流であり、その場合、走査電磁石は一定の磁場を発生し、ビーム走査装置1に進入した荷電粒子ビームはその一定の磁場により変更される。偏向された荷電粒子ビーム8は線量モニタ2及びビーム位置モニタ3を通過し、その際に発生する線量計測信号6及びビーム位置計測信号7が照射制御装置120へ送信される。照射制御装置120は、各計測信号を基に荷電粒子ビーム8のエネルギーを確認或いは弁別し、その結果を表示装置14に表示する。また、エネルギーが異常である(治療計画通りのエネルギー値でない)場合は、表示装置13に警報情報を表示する。治療者(例えば医者)はその警告情報により異常の内容を確認することができる。
【0028】
照射制御装置120がエネルギー確認モードで動作する際、加速・出射制御装置110は治療計画に基づいて作成した運転パラメータを用いて荷電粒子ビームのエネルギーのみを変更する制御を行い、設定されたエネルギーまでに高められた荷電粒子ビームを出射する。照射制御装置120はその荷電粒子ビームのエネルギーを確認する。
【0029】
図3は照射制御装置120のエネルギー確認モードの処理機能を示すフローチャートである。
【0030】
照射制御装置120はエネルギー確認モードの指令信号を入力するとビームチェッキングのための照射シーケンスを動作させ、下記の手順で処理を進行させる。
【0031】
(1)照射シーケンスが動作すると、照射制御装置120はビーム走査装置1の走査電磁石(SCM)に一定の励磁電流を流し、一定磁場(一定電磁場)を生成する(ステップS100)。このとき使用する走査電磁石はビーム走査装置1の第1走査電磁石、第2走査電磁石のいずれであってもよい。
【0032】
(2)また、照射シーケンスが作動すると、照射位置設定は無視するようにし、荷電粒子ビームのエネルギー(レイヤ)のみを変更するよう加速・出射制御装置110を動作させる。加速・出射制御装置110は治療計画に基づいて作成した運転パラメータを用いて、シンクロトロン62を周回する荷電粒子ビームを最初のレイヤーに対応する設定エネルギーまで加速し、出射する(ステップS100)。
【0033】
(3)最初のレイヤに対する設定エネルギーのビーム照射が開始されると、照射制御装置120は、ビーム位置モニタ(SPM)3から出力されるビーム位置計測信号7によりビーム位置を計測する(ステップS110)。また、線量モニタ(DM)2から出力される線量計測信号6により線量を計測する(ステップS120)。
【0034】
(4)計測したビーム位置及び線量を基にビームの横方向位置に対する線量分布を計算するとともに、既にビーム照射があり、計算された線量分布がある場合は、それらの線量分布を合成した線量分布を計算する(ステップS130)。
【0035】
(5)予め登録している各エネルギーに対する線量分布の関係表あるいは関数と上記(4)で計算した合成した線量分布(実線量分布)とを比較して、それがあるトレランス(許容値)の範囲内で一致しているか(それらの差がトレランスの範囲内であるか)どうかをチェックする(ステップS140,S150)。また、計算した合成線量分布がトレランスを超えた場合は、その横方向位置からどのエネルギーが異常であるかを計算する(ステップS150)。
【0036】
(6)計算した線量分布がトレランスを超えた場合、エネルギー異常の警報を表示装置14に表示するとともに、その警報を中央制御装置100に備えられる安全系・インターロック(IL)系に伝送する(ステップS160)。
【0037】
(7)最初の設定したエネルギーのビーム照射によるエネルギーの確認が完了すると、今回のビーム照射が最終レイヤ(エネルギー)のものかどうかを判定する(ステップS170)。判定結果が否であれば、レイヤ(エネルギー)を変更する(ステップS180)。このレイヤの変更は照射シーケンスにより加速・出射制御装置110を動作させて行う。加速・出射制御装置110は治療計画に基づいて作成した運転パラメータを用いて、シンクロトロン62を周回する荷電粒子ビームを次のレイヤーに対応する設定エネルギーまで加速し、出射する。
【0038】
(8)ビーム照射が最終レイヤ(エネルギー)となるまで上記(3)〜(7)の処理(ステップS110〜S180)を繰り返す。
【0039】
(9)ビーム照射が最終レイヤ(エネルギー)になると、ステップS150における全てのレイヤに対する判定が正常であった場合は、全てのビームエネルギーが正常であることを表示装置14に表示し(ステップS190)、処理を終了する。
【0040】
図4は上記(4)及び(5)の処理(ステップS130,S140)における線量分布を示す図である。横軸は、荷電粒子ビームの進行方向に直角な平面におけるビーム軸(走査電磁石によってビームが偏向されなかった場合のビーム中心軌道)からの距離であり、ビームの横方向位置はこの距離で表される。縦軸は線量である。
【0041】
治療計画において患部を深さ方向に第1〜第4の4レイヤに分割し、これら4レイヤに対応する設定エネルギーの荷電粒子ビームを照射する場合を想定する。加速・出射制御装置110には、シンクロトロン62を周回する荷電粒子ビームをそれら4レイヤのそれぞれに対応する設定エネルギーまで加速するための運転パラメータが設定される。照射制御装置120には、それら4レイヤのそれぞれに対応する設定エネルギーのビームを一定強度で照射した場合の線量分布と、それらを合成した線量分布が登録されている。図4のL1〜L4は4レイヤのそれぞれに対応する線量分布であり、Mはそれらを合成した線量分布を示している。線量分布L1〜L4のピーク位置がビーム位置モニタ3により計測されるべきビーム位置に対応する。
【0042】
照射シーケンスを動作させ、設定された運転パラメータを用いて第1〜第4レイヤのそれぞれに対応する設定エネルギーの荷電粒子ビームを照射したとき、上記(4)の処理では図4のL1〜L4に対応する実際の線量分布を計算するとともに、それらを合成した図4のMに対応する合成線量分布を計算する。計算した実際の線量分布の全てが図4の治療計画に対する線量分布L1〜L4に近似している場合は、それらの合成線量分布も図4の治療計画に対する合成線量分布Mに近似するはずであり、この場合は、上記(5)の処理において、計算した合成線量分布はトレランスの範囲内であると判定され、照射される荷電粒子ビームのエネルギーが正常であることが確認される。
【0043】
一方、上記(4)の処理において、例えば、第2レイヤに対応する設定エネルギーの荷電粒子ビームを照射した場合の実際の線量分布が図4の点線L2aのように登録された線量分布L2から比較的大きくずれている場合は、合成線量分布は図4の破線Maに示すように登録された合成線量分布Mとの差が顕著となる。この場合は、上記(5)の処理において、計算した合成線量分布はトレランスを超えていると判定し、その横方向位置から第2レイヤに対応する荷電粒子ビームのエネルギーが異常であると判定し、上記(6)の処理において、第2レイヤのエネルギー異常の警報を表示装置14に表示するとともに、その警報を安全系・インターロック(IL)系に伝送する。
【0044】
以上において、ビーム走査装置1の走査電磁石は、照射ノズル装置54内に配置され、荷電粒子ビームのビーム経路に一定の磁場を発生させ、照射ノズル装置54内に進入した荷電粒子ビームを偏向させる磁石装置を構成する。ビーム位置モニタ3及び線量モニタ2と、照射制御装置120のエネルギー確認モードにおける図3に示す処理機能は、前記磁石装置の下流側において、前記一定の磁場によって偏向された荷電粒子ビームの通過位置を計測し、照射ノズル装置54内に進入した荷電粒子ビームのエネルギーを確認するエネルギー確認装置を構成する。
【0045】
また、照射制御装置120の図3に示す処理機能のうち、ステップS110〜S150の処理は、ビーム位置モニタ3(ビーム位置計測装置)及び線量モニタ2(線量計測装置)の計測結果に基づいて照射ノズル装置54内に進入した荷電粒子ビームのエネルギーを確認するエネルギー判定装置を構成する。
【0046】
次に、以上のように構成した本実施の形態の作用効果を説明する。
【0047】
荷電粒子ビームは磁場を通過するとき磁場の作用を受けて偏向する。この偏向量は荷電粒子ビームのエネルギーに依存して変化し、磁場が一定であっても荷電粒子ビームのエネルギーが小さくなれば荷電粒子ビームの偏向量は大きくなる。したがって、ビーム経路に一定の磁場を発生させ、その磁場によって荷電粒子ビームを偏向させることにより、荷電粒子ビームのエネルギーの相違が照射深度方向から横方向(荷電粒子ビームの進行方向に直交する方向)の位置に変換され、その横方向位置を計測することによりエネルギー確認を行うことができる。本発明はこのような知見に基づくものであり、エネルギー確認モードで、走査電磁石に一定の励磁電流を流して一定磁場を発生させ、この一定磁場によって偏向された荷電粒子ビームの通過位置を計測することにより、水ファントム方式によらず荷電粒子ビームのエネルギーを確認することができる。そしてこのように水ファントム方式によらず荷電粒子ビームのエネルギーを確認することにより、治療のための照射前に、セッティングや計測に時間を取られずにビームエネルギーを計測することができ、治療前手順を減らし、治療の時間的な効率を上げることができる。また、シンクロトロン62(加速器)から出射前の荷電粒子ビームのエネルギーではなく、照射ノズル装置54から照射対象へと照射される荷電粒子ビームのエネルギーを確認することにより、治療に直接係わる荷電粒子ビームのエネルギーを確認することができる。
【0048】
また、照射制御装置120(エネルギー判定装置)は、荷電粒子ビームのエネルギーの確認を行うに当たって、ビーム位置モニタ3(ビーム位置計測装置)の計測結果だけを用いることもできる。しかし、荷電粒子ビームのエネルギーの相違が比較的小さく、ビーム位置モニタ3で計測したビームの横方向位置が近接している場合は、位置同士の比較だけではエネルギー確認を正確に行うことが困難となる。
【0049】
本実施の形態では、ビーム位置モニタ3(ビーム位置計測装置)と線量モニタ2(線量計測装置)の両方の計測結果を用いる。また、照射制御装置120(エネルギー判定装置)は、荷電粒子ビームの横方向位置に対する線量分布を計算し、この線量分布を予め登録している治療計画に対する線量分布と比較し、それらが許容値の範囲内で一致しているかどうかを判定する。このように線量分布を用いて比較判定を行うことにより、荷電粒子ビームのエネルギーの相違が比較的小さく、ビーム位置計測装置で計測したビームの横方向位置が近接している場合であっても、図4に示すように位置の相違が線量分布の相違として明確に表れるため、計測の分解能が向上し、エネルギー確認を精度良く行うことができる。
【0050】
以上のように本実施の形態によれば、荷電粒子ビームのエネルギーの相違を照射深度方向から横方向に変換してエネルギー確認を行うことで、セッティングや計測に時間を取られることなく、ビームエネルギーを計測することができ、治療前手順を減らし、治療の時間的な効率を上げることができる。
【0051】
また、本実施の形態によれば、シンクロトロン62(加速器)から出射前の荷電粒子ビームのエネルギーではなく、照射ノズル装置54から照射対象へと照射される荷電粒子ビームのエネルギーを確認するため、治療に直接係わる荷電粒子ビームのエネルギーを確認することができる。
【0052】
更に、本実施の形態によれば、ビーム位置モニタ3と線量モニタ2の両方の計測結果を用い、荷電粒子ビームの横方向位置に対する線量分布を予め登録している治療計画に対する線量分布と比較して判定するため、計測の分解能が向上し、エネルギー確認を精度良く行うことができる。
【実施例2】
【0053】
本発明の第2の実施の形態を図5により説明する。
【0054】
本実施の形態において、照射ノズル装置54Aは走査式の照射ノズル装置であり、図2の照射ノズル装置54の構成に加え、ビーム走査装置1の下流側に散乱体装置13と永久磁石18を更に備えている。散乱体装置13は照射ノズル装置54に進入した荷電粒子ビーム8を散乱させ、ビーム径を拡大するものであり、散乱強度の異なる複数の散乱体を有し、それらの任意の1つをビーム経路に挿入可能である。永久磁石18は荷電粒子ビーム8に一定磁場を与え、ビームエネルギーを確認するためのものであり、散乱体装置13の下流側で散乱体装置13に近接して配置されている。また、永久磁石18は図示のビーム経路に位置する挿入位置と、ビーム経路から離れた退避位置との間を移動可能である。散乱体装置13に代えて飛程補償体が配置されていてもよい。
【0055】
照射制御装置120Aは、第1の実施の形態の照射制御装置120と同様の照射エネルギーの確認モードを有している。この確認モードでは、照射制御装置120Aは、第1の実施の形態における図3のステップS100(上記(1)の処理)において、走査電磁石(SCM)に一定の励磁電流を流す代わりに、永久磁石18を退避位置から図示の挿入位置に移動し、ビーム経路に挿入する。確認モードにおけるそれ以外の処理は図3に示した第1の実施の形態のものと実質的に同じである。
【0056】
荷電粒子ビーム8は図5の上側より非励磁状態にあるビーム走査装置1を通過して散乱体装置13の散乱体(または飛程補償体)へ進入し、エネルギーを損失する(飛程が調整される)。その後、永久磁石18へ進入し、偏向される。偏向された荷電粒子ビーム8は線量モニタ2及びビーム位置モニタ3を通過し、その際に発生する線量計測信号6及びビーム位置計測信号7が照射制御装置120Aへ送信される。照射制御装置120Aは、線量計測信号6及びビーム位置計測信号7に基づいて、第1の実施の形態における図3のステップS110〜190(上記(2)〜(9)の処理)と同様の処理を行い、荷電粒子ビーム8のエネルギーを確認するとともに、間違ったエネルギーの場合は表示装置14に異常の警報を表示する。
【0057】
本実施の形態によれば、走査式の照射ノズル装置54Aが、走査電磁石を備えたビーム走査装置1の下流側にエネルギー吸収体である散乱体装置13を有する場合でも、第1の実施の形態と同様、水ファントム方式によらず荷電粒子ビームのエネルギーを確認することができ、第1の実施の形態と同様の効果が得られる。
【実施例3】
【0058】
本発明の第3の実施の形態を図6により説明する。
【0059】
本実施の形態において、照射ノズル装置54Bは二重散乱体方式とRMW(Range Modulation Wheel)照射方式とを組み合わせたパッシブ型の照射ノズル装置であり、第一散乱体を兼ねた回転式の飛程補償体(RMW)19、第二散乱体20、飛程調整器21、永久磁石18、線量モニタ2、ビーム位置モニタ3を有している。回転式の飛程補償体(RMW)19については、例えば特許文献3(特開2006−239404号公報)に詳しい。
【0060】
照射制御装置120Bも、第1の実施の形態の照射制御装置120と同様の照射エネルギーの確認モードを有している。ただし、エネルギー確認モードでは、第1の実施の形態における図3のステップS100(上記(1)の処理)において、走査電磁石(SCM)に一定の励磁電流を流す代わりに、永久磁石18を退避位置から図示の挿入位置に移動し、ビーム経路に挿入する。また、照射ノズル装置54Bはパッシブ型であるので、第1の実施の形態における図3のステップS170及びS180でのレイヤの変更に関する処理(上記(7)の処理)は行わない。
【0061】
荷電粒子ビーム8は図6の上側より回転飛程補償体19へ進入し、患者の患部の厚みに合わせて深さ方向にブラックピークが拡大されるようエネルギー分布を調整する。次に、第二散乱体装置20を通過し、横方向の照射野が形成される。さらに、飛程調整器21を通過し、飛程が微調される。その後、永久磁石18へ進入し、偏向される。偏向された荷電粒子ビーム8は線量モニタ2及びビーム位置モニタ3を通過し、その際に発生する線量計測信号6及びビーム位置計測信号7が照射制御装置120へ送信される。照射制御装置120Bは、る線量計測信号6及びビーム位置計測信号7に基づいて、第1の実施の形態における図3のステップS110〜150、S190(上記(2)〜(6)、(9)の処理)と同様の処理を行い、荷電粒子ビーム8のエネルギーを確認するとともに、間違ったエネルギーの場合は表示装置14に異常の警報を表示する。
【0062】
本実施の形態によれば、照射ノズル装置54Bが複数のエネルギー吸収体を内蔵するパッシブ型である場合でも、第1の実施の形態と同様、水ファントム方式によらず荷電粒子ビームのエネルギーを確認することができ、第1の実施の形態と同様の効果が得られる。
【0063】
その他の実施の形態について説明する。
【0064】
1.上記実施の形態では、ビーム位置モニタ3と線量モニタ2の両方の計測結果を用い、荷電粒子ビームの横方向位置に対する線量分布を予め登録している各エネルギーに対する線量分布と比較してエネルギー確認を行ったが、図6に示すように、ビーム位置モニタ3の計測情報だけを用いてエネルギー確認を行ってもよい。この場合でも、セッティングや計測に時間を取られずにビームエネルギーを計測することができるなど、本発明の基本的効果を得ることができる。
【0065】
2.上記実施の形態では、荷電粒子ビームの経過位置を計測するのにビーム位置モニタを用いたが、図7に示すように、ビーム位置モニタに代え、ビーム強度に依存して感光する計測用フィルム25を用いてもよい。この場合は、計測用フィルム25に感光した画像を登録した各エネルギーに基づく基準画像とを比較、判定することでエネルギー確認を行うことができる。また、その比較判定は目視によって行ってもよいが、好ましくは、感光したフィルム画像をスキャナー等で電子データ化し、その電子データを表示装置14に取り込み、判定ソフトを用いて行ってもよい。このような実施の形態でも、水ファントム方式に比べ、セッティングや計測に時間を取られずにビームエネルギーを計測することができるなど、本発明の基本的効果を得ることができる。また、この場合は、照射制御装置120に特別なエネルギー確認プログラムを組み込む必要がなくなり、本発明を容易に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の第1の実施の形態における粒子線治療システムの全体構成を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態における照射ノズル装置の内部構成とその制御系である照射制御装置を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態における照射制御盤のエネルギー確認モードの処理機能を示すフローチャートである。 本発明の実施例であるエネルギー確認システムを備えた荷電粒子輸送システムの説明図を示す。
【図4】予め登録している各エネルギーに対する線量分布と計測したビーム位置及び線量に基づき計算して得た実際の線量分布を示す図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態における照射ノズル装置の内部構成とその制御系である照射制御システムを示す図である。
【図6】本発明の第3の実施の形態における照射ノズル装置の内部構成とその制御系である照射制御システムを示す図である。
【図7】本発明の第4の実施の形態における照射ノズル装置の内部構成とその制御系である照射制御システムを示す図である。
【図8】本発明の第5の実施の形態における照射ノズル装置の内部構成とその制御系である照射制御システムを示す図である。
【符号の説明】
【0067】
1 荷電粒子ビーム走査装置
2 線量モニタ
3 ビーム位置モニタ
6 線量計測信号
7 ビーム位置計測信号
8 荷電粒子ビーム
12 ビームダンパ
13 散乱体装置(又は飛程補償体)
14 表示装置
15 エネルギー警報信号
18 永久磁石
19 回転飛程補償体
20 第二散乱体
21 飛程調整器
25 計測用感光フィルム
51 荷電粒子ビーム発生装置
52 ビーム輸送系
53 回転式照射装置
54 照射ノズル装置
61 前段加速器
62 シンクロトロン
62a 加速空洞
62b 高周波印加電極
63 出射用デフレクタ
64 治療台(ベッド)
65 患者
66 スノート
100 中央制御装置
110 加速・出射制御装置
120 照射制御装置
130 治療計画装置
140 高周波供給装置
150 パソコン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子ビーム発生装置と、この荷電粒子ビーム発生装置から出射された荷電粒子ビームを照射対象に照射する照射ノズル装置とを備えた粒子線治療システムにおいて、
前記照射ノズル装置内に配置され、前記荷電粒子ビームのビーム経路に所定の磁場を発生させ、前記照射ノズル装置内に進入した荷電粒子ビームを偏向させる磁石装置と、
前記磁石装置の下流側において、前記所定の磁場によって偏向された荷電粒子ビームの通過位置を計測し、前記照射ノズル装置内に進入した荷電粒子ビームのエネルギーを確認するエネルギー確認装置とを備えることを特徴とする粒子線治療システム。
【請求項2】
請求項1記載の粒子線治療システムにおいて、
前記エネルギー確認装置は、
前記照射ノズル装置内において前記磁石装置の下流側に配置され、前記所定の磁場によって偏向された荷電粒子ビームの通過位置を計測するビーム位置計測装置と、
前記ビーム位置計測装置の計測結果に基づいて前記照射ノズル装置内に進入した荷電粒子ビームのエネルギーを確認するエネルギー判定装置とを有することを特徴とする粒子線治療システム。
【請求項3】
請求項1記載の粒子線治療システムにおいて、
前記エネルギー確認装置は、
前記照射ノズル装置内において前記磁石装置の下流側に配置され、前記所定の磁場によって偏向された荷電粒子ビームの通過位置を計測するビーム位置計測装置と、
前記照射ノズル装置内において前記磁石装置の下流側に配置され、前記所定の磁場によって偏向された荷電粒子ビームの線量を計測する線量計測装置と、
前記ビーム位置計測装置及び前記線量計測装置の計測結果に基づいて前記照射ノズル装置内に進入した荷電粒子ビームのエネルギーを確認するエネルギー判定装置とを有することを特徴とする粒子線治療システム。
【請求項4】
請求項3記載の粒子線治療システムにおいて、
前記エネルギー判定装置は、前記ビーム位置計測装置及び前記線量計測装置の計測結果に基づいて、前記荷電粒子ビームのビーム位置に対する線量分布を計算し、この線量分布を、治療計画からくるエネルギーのデータに基づいて予め登録している各エネルギーにおける線量分布と比較し、それらが許容値の範囲内で一致しているかどうかを判定することを特徴とする粒子線治療システム。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか1項記載の粒子線治療システムにおいて、
前記エネルギー判定装置は、前記エネルギーの判定結果がエネルギー異常である場合は、エネルギー異常の警報を出力することを特徴とする粒子線治療システム。
【請求項6】
請求項2〜5のいずれか1項記載の粒子線治療システムにおいて、
前記エネルギー確認装置は、前記エネルギー判定装置の判定結果を表示する表示装置を更に有することを特徴とする粒子線治療システム。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれか1項記載の粒子線治療システムにおいて、
前記照射ノズル装置は複数の走査電磁石を備えたビーム走査装置を有し、
前記磁石装置は前記複数の走査電磁石の少なくとも一部を兼用し、
前記エネルギー確認装置は、前記前記荷電粒子ビームのエネルギー判別時に前記走査電磁石の少なくとも一部に所定の励磁電流を流すことを特徴とする粒子線治療システム。
【請求項8】
請求項1〜3のいずれか1項記載の粒子線治療システムにおいて、
前記照射ノズル装置は、前記荷電粒子ビームにエネルギー損失を生じさせるエネルギー吸収体を含み、
前記磁石装置は、前記エネルギー吸収体の下流側において、前記荷電粒子ビームのビーム経路に位置する挿入位置と、前記ビーム経路から離れた退避位置との間を移動可能に配置された永久磁石であり、
前記エネルギー確認装置は、前記前記荷電粒子ビームのエネルギー判別時に前記永久磁石を前記挿入位置に移動させることを特徴とする粒子線治療システム。
【請求項9】
荷電粒子ビーム発生装置と、この荷電粒子ビーム発生装置から出射された荷電粒子ビームを照射対象に照射する照射ノズル装置とを備えた粒子線治療システムにおける荷電粒子ビームのエネルギー確認方法において、
前記照射ノズル装置内の前記荷電粒子ビームのビーム経路に所定の磁場を発生させ、前記照射ノズル装置内に進入した荷電粒子ビームを偏向させる第1手順と、
前記所定の磁場によって偏向された荷電粒子ビームの通過位置を計測し、前記照射ノズル装置内に進入した荷電粒子ビームのエネルギーを確認する第2手順とを有することを特徴とする荷電粒子ビームのエネルギー確認方法。
【請求項10】
請求項9記載の荷電粒子ビームのエネルギー確認方法において、
前記第2手順は、
前記照射ノズル装置内の前記所定の磁場の下流側において、前記所定の磁場によって偏向された荷電粒子ビームの通過位置を計測する第3手順と、
前記第3手順の計測結果に基づいて前記照射ノズル装置内に進入した荷電粒子ビームのエネルギーを確認する第4手順とを含むことを特徴とする荷電粒子ビームのエネルギー確認方法。
【請求項11】
請求項9記載の荷電粒子ビームのエネルギー確認方法において、
前記第2手順は、
前記照射ノズル装置内の前記所定の磁場の下流側において、前記所定の磁場によって偏向された荷電粒子ビームの通過位置を計測する第3手順と、
前記照射ノズル装置内の前記所定の磁場の下流側において、前記所定の磁場によって偏向された荷電粒子ビームの線量を計測する第4手順と、
前記第3手順及び第4手順の計測結果に基づいて前記照射ノズル装置内に進入した荷電粒子ビームのエネルギーを確認する第5手順とを有することを特徴とする荷電粒子ビームのエネルギー確認方法。
【請求項12】
請求項11記載の荷電粒子ビームのエネルギー確認方法において、
前記第5手順は、前記第3手順及び第4手順の計測結果に基づいて、前記荷電粒子ビームのビーム位置に対する線量分布を計算し、この線量分布を、治療計画からくるエネルギーのデータに基づいて予め登録している各エネルギーにおける線量分布と比較し、それらが許容値の範囲内で一致しているかどうかを判定することを特徴とする荷電粒子ビームのエネルギー確認方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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