説明

粒状ライムケーキの製造方法

【課題】 製糖工場で大量に発生するライムケーキを有効に利用するため、充分に高い硬度を有する、肥料として好適に使用することができる粒状ライムケーキの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 製糖工場で発生するライムケーキを真空造粒機で造粒し、乾燥することを特徴とする粒状ライムケーキの製造方法である。更に、前記ライムケーキに膨潤性粘土を、ライムケーキ100質量部(固形分)に対し、0.3〜5質量部の割合で混合した後、真空造粒機で造粒し、乾燥する粒状ライムケーキの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製糖工場で発生するライムケーキを真空造粒機により粒状化する粒状ライムケーキの製造方法に関する。
より詳しくは、充分に高い硬度を有する、肥料として好適に使用することができる粒状ライムケーキの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製糖工場における砂糖製造工程において、原料糖の糖液を精製するために、糖液を石灰乳と炭酸ガスで処理し、生成する炭酸カルシウムに不純物を包含吸着させるが、これを濾過した残渣がライムケーキである。
【0003】
ライムケーキは農地の土壌酸度の矯正剤として用いられているが、散布上の取り扱いが困難等の理由により破棄される量も多く、充分に有効利用されていないのが現状である。ライムケーキ散布の利便性を向上させるために、ライムケーキを造粒する方法が従来より種々提案されている。そのうち、特許文献1では、ライムケーキに石灰や苦土の乾燥粉を添加して含水率を低下させることによって押出し造粒する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−331300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の方法では、充分に高い硬度の粒が得られ難いという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明者らはライムケーキを粒状肥料として利用するために鋭意検討した結果、ライムケーキを造粒する装置として真空造粒機を用いることで、従来の技術では困難であった高い硬度を有する緻密な粒状物が得られることを見出した。さらに膨潤性粘土を添加した場合は、ライムケーキに含まれる水分を膨潤性粘土が保持するため水分離が起き難くなること、及び、ライムケーキの流動性向上により造粒が容易になることに加え、一段と高い硬度を有する粒状物が得られることを見出した。本発明はこれらの知見により完成させたものである。
【0007】
即ち、本発明は、製糖工場で発生するライムケーキを真空造粒機で造粒し、乾燥することを特徴とする粒状ライムケーキの製造方法に関する。
また、本発明は、前記ライムケーキに膨潤性粘土を、ライムケーキ100質量部(固形分)に対し、0.3〜5質量部の割合で混合した後、真空造粒機で造粒し、乾燥する粒状ライムケーキの製造方法に関する。
また、本発明は、前記膨潤性粘土が、ベンナイト、天然スメクタイト、合成スメクタイト、及び膨潤性マイカからなる群から選ばれる1種以上である粒状ライムケーキの製造方法に関する。
更に本発明は、上記製造方法によって得られた粒状ライムケーキを、さらに破砕する粒状ライムケーキの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の製造方法によれば、従来の造粒方法に比較すると容易に且つ低廉な方法で高い硬度を有する粒状ライムケーキを得ることができるので、ライムケーキの有効利用促進の観点からその産業的意義は多大なものがある。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下において、本発明の粒状ライムケーキの製造方法について更に詳細に説明する。
ライムケーキは製糖工場で発生するものであり、発生する工場によって含水率は異なるが、概ね15〜40質量%程度である。
【0010】
本発明に使用する膨潤性粘土とは、水との接触により水を吸収し膨潤する粘土のことであり、このような性質を有するものであれば制限なく使用できる。本発明者らが推奨する膨潤性粘土として、特にベンナイト、天然スメクタイト、合成スメクタイト、及び膨潤性マイカからなる群から選ばれる1種以上を好例として挙げることができる。
【0011】
ライムケーキと膨潤性粘土の混合割合について云えば、ライムケーキ100質量部(固形分)に対し、膨潤性粘土が0.3〜5質量部の割合であるが、好ましくは0.5〜3質量部であり、さらに好ましくは1〜2.5質量部である。膨潤性粘土の添加割合が5質量部を超えても添加量に見合うだけの効果が得られないため経済的でない。また、前記割合の下限については特段の制限はないが、0.3質量部以上であれば前記効果、即ち、膨潤性粘土によるライムケーキ中の水分保持効果、ライムケーキの流動性向上効果、及び硬度向上効果が発揮され易くなる。
【0012】
ライムケーキに膨潤性粘土を添加する場合の混合方法は、両者が充分に混合されればどのような方法でもよいが、真空造粒機が混練機能を有するものであっても、真空造粒機に導入する前に混合しておくことが望ましい。
真空造粒機は、減圧下で造粒を行うことができる装置のことであり、このような原料の脱気に寄与する装置であれば特に制限はない。真空造粒機として、真空加圧機、真空土練機、真空押出機等が例示でき、これらはいずれでも本発明に適用できるが、製造効率の点から真空土練機または真空押出機が特に好ましい。真空土練機、真空押出機は、混練機能あるいは押出機能を有するスクリュー部、その一部に設けた真空室(減圧室)、及び任意の孔径の孔を有する押出口によって一般的に構成されている。押出口の孔径は、造粒性と必要とされる粒径から適宜設定すればよいが、肥料等に利用する場合においては概ね0.5〜8mmが好ましい。押出口から排出される柱状物は、粒状化のために切断あるいは粉砕すればよく、切断する方法としては押出口の出口に設けたカッターなどで切断する方法が簡便である。
【0013】
ライムケーキ、あるいはライムケーキと膨潤性粘土の混合物である原料の含水率が造粒に適さないときは、水あるいは乾燥粉などを必要に応じて適宜添加して含水率を調整してもよい。乾燥粉は、肥料原料として一般的に用いているもののうち前記原料の含有成分と反応してガスを発生しないものが好ましく、例えば、石灰、消石灰、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、塩化カリウム、リン酸カリウム等を挙げることができる。尚、前記原料の好適含水率は造粒機により異なるが、概ね10〜30質量%程度が好ましく、さらに好ましくは10〜20質量%である。
【0014】
次いで、得られた粒状物の乾燥に関しては、特に装置を選ばないが、粒状物同士の付着防止や乾燥効率の点から、転動熱風乾燥機を用いることが好ましい。乾燥温度に関しては、80〜150℃が好ましい。
【0015】
上記製造方法で得られた粒状ライムケーキは、その粒度を下げるためにさらに破砕してもよい。破砕には破砕機を好適に用いることができ、例えば、ジョークラッシャー、ロールクラッシャーを挙げることができる。尚、破砕は粉の発生量ができるだけ少ない方法で行うことが望ましい。
【0016】
本発明の製造方法で得られる粒の形状については特に制限されることなく、各種形状を採用できる。用途により球状が望ましい場合は、造粒後の柱状物を整粒機で整粒してもよい。本発明粒状ライムケーキを肥料等に利用する場合において粒度による選別を必要とするときは、篩等を用いた分級によって適度な粒度のものを得ることができる。篩による分級で得られる粒度の目安として、篩目開きで0.5〜8mmの粒度のものが好ましく、このうち1〜4mmのものが特に好ましく、さらに好ましくは1.5〜3mmのものである。
【実施例】
【0017】
以下、本発明の詳細を実施例を挙げて説明するが、本発明はそれらの実施例によって限定されるものではない。尚、特に断らない限り%は全て質量%を示す。
[ライムケーキ]
製糖工場で発生したものを用いた。分析例を表1に示した。尚、以下ではライムケーキの質量は固形分換算で表すものとする。
【0018】
【表1】

【0019】
[真空造粒機]
高浜工業(株)製の真空土練機(型式MPM120N-FS)を用いた。真空室の圧力は、大気圧(約100kPa)を基準(ゼロ)として-100kPa〜-90kPaの範囲とした。押出口は、孔径5mmの孔を90個配した構成とした。押出口から排出された柱状物はカッターで概ね5〜10mmの長さに切断して粒状物を得た。
[破砕機と破砕品]
高浜工業(株)製のロールクラッシャー(型式SH-10)を用いた。篩別した粒径1.5〜3.0mmの粒度のものを破砕品とした。
【0020】
[実施例1]
ライムケーキ2kgを原料とし、これを真空造粒機で造粒した。次に、得られた粒状物を転動熱風乾燥機にて85℃で30分間乾燥した(以下、これを造粒品と云う)。
得られた造粒品をさらにロールクラッシャーで破砕した後、篩別した1.5〜3.0mmのものを破砕品とし、破砕品の歩留まりを求めた。
[実施例2]
ライムケーキ2kgとベントナイト0.03kgをミキサー(新東工業(株)製、ミックスマラーMSG−05)で混合したもの原料とし、以下実施例1と同様に造粒、破砕した。
[実施例3及び4]
表2の原料組成で実施例2と同様に製造した。
【0021】
[比較例1]
ライムケーキ5kgを原料とし、パン型造粒機(容器寸法:960mmφ×200mm、回転速度:20rpm)で造粒後、得られた粒状物を転動熱風乾燥機にて85℃で30分間乾燥して造粒品を得た。尚、造粒物の形状が球状のため、破砕は行わなかった。篩別した1.5〜3.0mmのものを硬度測定に供した。
[比較例2]
ライムケーキ5kgとベントナイト0.15kgをミキサー(新東工業(株)製、ミックスマラーMSG−05)で混合したものを原料としたことを除いては、比較例1と同様にして造粒物を得た。
【0022】
[平均粒硬度の測定方法]
木屋式硬度計を用いた。真空造粒機による造粒品は、円柱の横方向の硬度を測定した。また、破砕品は、断面積が最大と判断した面を底部に設置して測定した。尚、測定は各20粒を対象に行い、その平均値を平均粒硬度とした。
【0023】
結果を表2に示した。
【0024】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
製糖工場で発生するライムケーキを真空造粒機で造粒し、乾燥することを特徴とする粒状ライムケーキの製造方法。
【請求項2】
前記ライムケーキに膨潤性粘土を、ライムケーキ100質量部(固形分)に対し、0.3〜5質量部の割合で混合した後、真空造粒機で造粒し、乾燥する請求項1記載の粒状ライムケーキの製造方法。
【請求項3】
膨潤性粘土が、ベンナイト、天然スメクタイト、合成スメクタイト、及び膨潤性マイカからなる群から選ばれる1種以上である請求項2記載の粒状ライムケーキの製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載の製造方法によって得られた粒状ライムケーキを、さらに破砕する粒状ライムケーキの製造方法。

【公開番号】特開2012−121734(P2012−121734A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−271109(P2010−271109)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【出願人】(000203656)多木化学株式会社 (58)
【出願人】(000227250)日鉄鉱業株式会社 (82)
【Fターム(参考)】