説明

粒状物繰出機

【課題】薬剤、種子等の粒状物を繰出ロールの前後回転によって繰り出す粒状物繰出機において、硬い粒状物を使用する場合に、該粒状物によって繰出ロールの外周面が大きく損傷し、これにより、ロール交換が頻繁となってメンテナンスコストが増加する、という問題があった。
【解決手段】粒状物繰出機において、繰出ロール45の外周面45bでホッパー47内の下部空間49への露出部分には、粒状薬剤46による損傷を防止するための保護部材20aを覆設し、該保護部材20aには、前記外周面45bの凹部45aの開口径よりも大きく前記粒状薬剤46が嵌入可能な通過孔20cを設け、該通過孔20c内で繰出ロール45の回転方向51後側に位置する通過孔後部20fを、繰出ロール45の軸心45cの略直上位置50、または該略直上位置50よりも繰出ロール45の回転方向51前側に設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤、肥料、種子等の粒状物を所定量だけ圃場に繰り出す粒状物繰出機に関し、特に、繰出ロール外周面に保持した粒状物を、繰出ロールの前後回転とともに下方に搬送する粒状物繰出機の繰出ロール保護構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、薬剤、肥料、種子等の粒状物を繰り出して播種、薬剤散布、施肥等を行うロール式の繰出装置を備えた粒状物繰出機が知られている。例えば、該粒状物繰出機である播種機の繰出装置には、外周面に凹部を形成した円柱状の繰出ロールが軸支され、該繰出ロールの回転とともに前記凹部に嵌入した粒状物が下方に搬送されるようにしている。この繰出ロールの外周面近傍には、繰出ロールの回転方向に順に、ブラシと、外周面に沿ったガイド板とが配設され、このうちのブラシにより、凹部に嵌入できない余分な粒状物を除去し、その上で、前記ガイド板により、凹部に嵌入した粒状物が落下部まで確実に保持・搬送されるようにする技術(例えば、特許文献1参照)が公知となっている。
【特許文献1】実開平3−79612号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記繰出装置において、粒状物側の損傷や圧壊については、ガイド板の形状や、繰出ロールとの接触面の性状を改善することによって、防止できるものの、表面の硬い粒状物、例えば、ダイシストン粒剤、ダイアジノン粒剤、アドバンテージ粒剤等の粒状農薬を使用する場合に、繰出ロール側を保護する技術については、開示されていない。つまり、多量の硬い粒状物が繰出ロールの外周面上に厚く重なった状態で、該繰出ロールが回転すると、この硬い粒状物の擦過によって繰出ロールの外周面が激しく損傷する。このため、ロール交換が頻繁となってメンテナンスコストが増加すると共に、繰出ロールの外周面がいびつとなって繰出ロールの外周面と前記ガイド板との隙間が部分的に大きくなり、該隙間から粒状物が途中で落下し、粒状物を所定の落下部まで確実に保持・搬送することができずに圃場への粒状物の供給精度が悪化すると共に、挟まった粒状物によって繰出ロールの外周面の損傷が更に進む、という問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
すなわち、請求項1においては、粒状物を蓄えるホッパーと、該ホッパー内の下部空間に連通する繰出装置とを有し、該繰出装置には、外周面に前記粒状物を嵌入可能な凹部を形成した繰出ロールを設け、該繰出ロールの回転とともに前記凹部内の粒状物を下方に搬送する粒状物繰出機において、前記外周面で前記下部空間への露出部分には、粒状物による損傷を防止するための保護部材を覆設し、該保護部材には、前記凹部の開口径よりも大きく前記粒状物が嵌入可能な通過孔を設け、該通過孔内で繰出ロールの回転方向後側に位置する通過孔後部を、繰出ロールの軸心略直上位置、または該軸心略直上位置よりも繰出ロールの回転方向前側に設けたものである。
請求項2においては、前記通過孔は、繰出ロールの回転方向に沿って長い長孔形状とするものである。
請求項3においては、前記繰出装置には、前記通過孔から凹部に嵌入できない余分な粒状物等を除去するブラシを設け、該ブラシの刷毛部は、前記通過孔内で繰出ロールの回転方向前側に位置する通過孔前部まで延出させるものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明は、以上のように構成したので、以下に示す効果を奏する。
すなわち、請求項1においては、粒状物を蓄えるホッパーと、該ホッパー内の下部空間に連通する繰出装置とを有し、該繰出装置には、外周面に前記粒状物を嵌入可能な凹部を形成した繰出ロールを設け、該繰出ロールの回転とともに前記凹部内の粒状物を下方に搬送する粒状物繰出機において、前記外周面で前記下部空間への露出部分には、粒状物による損傷を防止するための保護部材を覆設し、該保護部材には、前記凹部の開口径よりも大きく前記粒状物が嵌入可能な通過孔を設け、該通過孔内で繰出ロールの回転方向後側に位置する通過孔後部を、繰出ロールの軸心略直上位置、または該軸心略直上位置よりも繰出ロールの回転方向前側に設けたので、該保護部材を繰出ロールの外周面と粒状物との間に介設することができ、表面の硬い粒状物を使用する場合でも、繰出ロールの外周面のうち前記粒状物に直接接触する部分を減少させ、硬い粒状物の擦過による外周面の損傷を大きく軽減することができ、これにより、ロール交換が少なくなってメンテナンスコストを大きく低減させることができる。しかも、繰出ロールの外周面が滑らかに維持されることから、前記保護部材の先にガイド板を備える場合には、該ガイド板と前記外周面との隙間を適正に調節することができ、粒状物がロール回転途中で落下しないようにして、粒状物を所定の落下部まで確実に保持・搬送して圃場への粒状物の供給精度を向上させることができる。更に、凹部の開口径よりも大きい通過孔を形成するだけで、複雑な構造を設けることなく凹部への粒状物の嵌入を円滑に行うことができ、繰出ロール保護構造の簡素化による製造コストの低減とメンテナンス性の向上を図ることができる。しかも、通過孔後部の位置を適正化することにより、小さな粒状物や粉片等が繰出ロールの凹部の縁から外周面と保護部材との隙間に落ち込むのを確実に防止して、小さな粒状物や粉片等の擦過による外周面の損傷までも軽減することができ、一層の、ロール交換頻度の減少によるメンテナンスコストの低減や、粒状物の供給精度の向上を図ることができる。
請求項2においては、前記通過孔は、繰出ロールの回転方向に沿って長い長孔形状とするので、凹部への粒状物の嵌入と凹部からの余分な粒状物の離脱が可能な区間を長く確保することができ、凹部への粒状物の充填密度を高めると共に、余分な粒状物を確実に離脱させることができる。
請求項3においては、前記繰出装置には、前記通過孔から凹部に嵌入できない余分な粒状物等を除去するブラシを設け、該ブラシの刷毛部は、前記通過孔内で繰出ロールの回転方向前側に位置する通過孔前部まで延出させるので、該通過孔前部から、外周面と保護部材との隙間や、保護部材の前方にガイド板を備える場合には外周面とガイド板との隙間に入り込もうとする小さな粒状物や粉片等を、前記刷毛部によって確実に堰き止めると共に掃き出すことができ、小さな粒状物や粉片等の擦過による外周面の損傷を一層確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明に係わる人力播種機の全体構成を示す全体側面図、図2は同じく平面一部断面図、図3は薬剤繰出機の側面一部断面図、図4は保護板の取付構成を示す繰出ロール周辺の側面一部断面図、図5は円形状の通過孔を有する保護板の側面断面図とその斜視図であって、図5(a)は円形状の通過孔を有する保護板の側面断面図、図5(b)は図5(a)の矢印53の方向から見た保護板の斜視図、図6は長孔形状の通過孔を有する保護板の側面断面図とその斜視図であって、図6(a)は長孔形状の通過孔を有する保護板の側面断面図、図6(b)は図6(a)の矢印54の方向から見た保護板の斜視図である。
【0007】
まず、本発明に係わる粒状物繰出機を備えた人力播種機25の全体構成について、図1、図2により説明する。なお、図1中の矢印28の方向を、人力播種機25の前方とする。
該人力播種機25においては、左右のメインフレーム1・1の前端に駆動輪2の駆動軸2aが軸支され、該駆動軸2aの一端は、前記メインフレーム1・1より側方に突出してチェーンケース3の前部に挿入され、該チェーンケース3内でスプロケット29が固設されている。このチェーンケース3の後部には入力軸31が左右方向に軸支され、該入力軸31の途中部に設けたスプロケット32と前記スプロケット29との間にはチェーン30が巻回されており、該チェーン30を介して駆動輪2の回転動力が入力軸31に伝達されるようにしている。なお、前記駆動輪2の側面周囲には、駆動輪2に滑りを生じないようにラグ2bが固設されている。
【0008】
そして、前記入力軸31の内端には駆動軸4が嵌合され、該駆動軸4によって種子繰出機26の繰出ロール15が駆動されるようにしている。また、前記入力軸31とスプロケット32との間にはワンウェイクラッチ33が介装され、前進時のみ駆動輪2からの動力を入力軸31に伝達するように構成しており、播種作業中に前記駆動輪2が逆転しても、繰出ロール15が逆回転することなく粒状物の安定した繰り出しを行うことができる。
【0009】
更に、前記入力軸31の外端にはスプロケット34が固設されると共に、前記チェーンケース3からはチェーンケース41が後方に連設され、該チェーンケース41の後部には入力軸42が左右方向に軸支されている。該入力軸42上のスプロケット43と前記スプロケット34との間にチェーン35が巻回され、該チェーン35を介して、前記入力軸31の回転動力が入力軸42に伝達されるようにしている。そして、該入力軸42の内端には駆動軸44が嵌合され、該駆動軸44によって薬剤繰出機27の繰出ロール45が駆動されるようにしている。該薬剤繰出機27は前記メインフレーム1・1の後部に立設された支持フレーム37上に載置固定されると共に、薬剤繰出機27の下部には漏斗38、ガイドホース39が連通されており、薬剤繰出機27から繰り出された粒状の薬剤(以下、「粒状薬剤」とする)が、これら漏斗38、ガイドホース39を介して播種位置の後部に散布されるようにしている。
【0010】
また、前記駆動輪2後部でメインフレーム1・1間には支持ステー5が架設され、該支持ステー5の前部は、前記駆動輪2に近接させてスプレパー部5aとし、支持ステー5の左右中央部には、持ち運び用の正面視門形の把手6が立設されている。更に、支持ステー5の後部には、下端に作溝器7を固設した支持ロッド8が上下位置調節可能に固設され、前記作溝器7の後端からは、覆土板10が突出されると共に、支持ステー5の後端には、前記種子繰出機26が載置固定されている。そして、前記メインフレーム1・1の後部からは、ハンドル11が後ろ斜め上方に突設され、メインフレーム1・1の後端上には、制御ボックス12が架設され、更に、メインフレーム1・1の後端からは、ローラフレーム13・13が後方に延出され、該ローラフレーム13・13の後端間には鎮圧ローラ14が軸支されている。
【0011】
このような構成において、作業者がハンドル11を操作して人力播種機25を前方の矢印28の方向に押動していくと、圃場36の上を駆動輪2後方の作溝器7が進行して播種溝を形成し、該播種溝内に、前記駆動輪2によって駆動される種子繰出機26と薬剤繰出機27からそれぞれ繰り出された種子と粒状薬剤とが、順に吐出され、その後を覆土板10が進行して土をかぶせ、更に、その上を鎮圧ローラ14が転動して播種・薬剤散布された部分を押圧することができ、播種作業と薬剤散布作業を同時に行うことができる。
【0012】
次に、本発明に係わる前記薬剤繰出機27について、図2、図3により説明する。
薬剤繰出機27は、粒状薬剤46を蓄えるホッパー47と、粒状薬剤46を所定量だけ繰り出す繰出装置48とから構成される。このうちのホッパー47は内部が見えるように透明部材にて構成されると共に、ホッパー47は、上面が蓋体19にて覆われたホッパー本体部47aと、該ホッパー本体部47aより下方にあって繰出装置48の一部を構成する上繰出ケース部47bとから構成される。
【0013】
該上繰出ケース部47bは、前記繰出ロール45を斜めに略二分するように形成されており、この上繰出ケース部47bの下面に嵌合するようにして下繰出ケース21が構成されている。一方、上繰出ケース部47bの下部は開口された上で、該上繰出ケース部47bと前記下繰出ケース21との接合部の下端には嵌合凹部47cが形成されている。
【0014】
そして、該嵌合凹部47cよりも上部には、繰出ロール45の駆動軸44を挿入するための軸孔47dが形成され、該軸孔47dよりも更に上部にある取付部47hには、ブラシ16が蝶ネジ17によって締結固定されている。そして、該ブラシ16よりも更に上部の取付部47hには、下繰出ケース21を上繰出ケース部47bに締結するためのネジ孔47eが開口されている。
【0015】
また、前記繰出ロール45を前記上繰出ケース部47bの開口部47fに嵌入した状態で、前記駆動軸44を側面から軸孔47dを貫通して繰出ロール45内に挿入し、繰出ロール45を上繰出ケース部47bに軸支するようにしている。そして、前記ブラシ16の刷毛部16aは、繰出ロール45に向かって延出され、該繰出ロール45上部の外周面45bと接触しており、該外周面45bに形成された複数の凹部45aに嵌入しきれないままで搬送されてきた余分な粒状薬剤46を、前記ブラシ16によって堰き止めたり除去したりできるように構成している。
【0016】
前記下繰出ケース21の後部には、前記嵌合凹部47cを嵌合して支持する支持軸21aが形成される一方、下繰出ケース21の前面からは、前記支持ステー5に固定するための支持部21bが突出され、更に、下繰出ケース21の上部には、前記ネジ孔47eと同軸上にネジ孔21cが形成されており、これにより、前記支持軸21aを嵌合凹部47cに嵌合させた上で、蝶ネジ18のネジ部18aをネジ孔21c・47eに螺挿することによって、下繰出ケース21を上繰出ケース部47bに締結固定できるようにしている。
【0017】
ここで、前記下繰出ケース21の内側下部には固定部21dが形成され、該固定部21dに薬剤検知センサー23が固定されており、該薬剤検知センサー23は、粒状薬剤46が落下してきた時に信号を発し、前記制御ボックス12内で警告音を鳴らすようにして、粒状薬剤46の詰まり等を検知するようにしている。
【0018】
更に、下繰出ケース21内側の上部には、係合凹部21eが形成され、該係合凹部21eにはガイド板22を挿入して固定できるようにし、ネジ止めすることなくガイド板22を容易に着脱できるようにしている。そして、該ガイド板22と前記繰出ロール45の外周面45bとの隙間は、上部のホッパー47側が最も広く、落下側にいくに従って徐々に狭くなるように調整されており、粒状薬剤46がガイド板22によって少しずつ凹部45aに押し込まれるようにしている。そして、前記ブラシ16を挟んでガイド板22と反対方向に、本発明に係わる保護板20が配設されている。
【0019】
なお、前記ガイド板22の内側面には、必要に応じて起毛材を貼設することができ、該起毛材によって、ガイド板22と外周面45bとの間の摩擦が低減され、回転速度の減少や変動が抑制されて粒状薬剤46の繰出量が略一定となり、圃場36への粒状薬剤46の供給精度を高めることができる。加えて、起毛材は、ガイド板22と外周面45bとの間に挟まった粒状薬剤46を前記凹部45aに押し込む際の滑材としても作用し、挟まった粒状薬剤46を凹部45a内に円滑に嵌入させることができる。
【0020】
以上のような構成において、前記繰出ロール45と、該繰出ロール45に周設されたガイド板22・ブラシ16・保護板20と、これらを収納する下繰出ケース21・上繰出ケース部47b等から前記繰出装置48が構成され、該繰出装置48はホッパー47内の下部空間49に連通されており、該下部空間49を介して、ホッパー本体部47aに蓄えられた粒状薬剤46が繰出装置48に供給されるようにしている。
【0021】
次に、前記保護板20について、図4、図5により説明する。
この保護板20は、繰出ロール45の外周面45bに沿って湾曲した曲板状の保護部20aと、該保護部20aの前端20eに接続された平板状の支持部20bとから構成され、該支持部20bの先部には取付孔20dが開口されている。このうち支持部20bは、前記ブラシ16と取付部47hとの間に介設され、ブラシ16のネジ孔16bと前記取付孔20dを貫いて、蝶ネジ17のネジ部17aを取付部47hのネジ孔47gに螺挿することにより、保護板20をブラシ16と一緒に取付部47hに固定するようにしている。
【0022】
そして、前記保護部20aにおいては、前記支持部20bに近い部分に略円形状の通過孔20cが開口され、該通過孔20cは、繰出ロール45の外周面45bに形成された凹部45aの開口径よりも大きく構成されている。これにより、繰出ロール45が回転して、凹部45aが通過孔20cの直下まで来ると、粒状薬剤46は、前記通過孔20cの縁部に邪魔されることなく凹部45a内に転がり入ることができる。
【0023】
この場合、通過孔20cの開口位置に関しては、通過孔20c内で繰出ロール45の回転方向51後側に位置する通過孔後部20fが、繰出ロール45の軸心45cの略直上位置50、または該略直上位置50よりも回転方向51前側となるように構成されている。これにより、凹部45aの縁45dで回転方向51後側の高さは、外周面45bと保護部20aとの隙間の入口52の高さに対して、略同等か或いは低く設定することができ、たとえ、小さい粒状薬剤46やその粉片等(以下、「小粒状薬剤等」とする)が凹部45a内に多量に流入しても、縁45dから入口52を通って外周面45bと保護部20aとの隙間に落ち込むことがない。
【0024】
更に、繰出ロール45が回転方向51に回転していくと、凹部45aに嵌入された粒状薬剤46は、凹部45a内に保持された状態で保護部20aの下を前端20eまで回動され、該前端20eに到達すると、凹部45a内に入りきれずに溢れていた小粒状薬剤等が、前記ブラシ16の刷毛部16aによって堰き止められ、それ以上搬送されないようにしている。更に、繰出ロール45が回転方向51に回転していくと、溢れた小粒状薬剤等が取り除かれた凹部45a内の粒状薬剤46は、ガイド板22の内側面によって繰出ロール45側に押し付けられ、凹部45a内に保持された状態で所定の落下部まで搬送されてから、圃場36に落とされる。
【0025】
これにより、前記繰出ロール45の外周面45bで前記下部空間49に面した露出部分は、通過孔20cの直下部を除き、その大部分を保護板20の保護部20aによって覆うことができ、回転する外周面45bが硬い粒状薬剤46に直接接触して激しく擦過されるのを十分に抑制することができる。
【0026】
すなわち、粒状物である粒状薬剤46を蓄えるホッパー47と、該ホッパー47内の下部空間49に連通する繰出装置48とを有し、該繰出装置48には、外周面45bに前記粒状薬剤46を嵌入可能な凹部45aを形成した繰出ロール45を設け、該繰出ロール45の回転とともに前記凹部45a内の粒状薬剤46を下方に搬送する粒状物繰出機である薬剤繰出機27において、前記外周面45bで前記下部空間49への露出部分には、粒状薬剤46による損傷を防止するための保護部材である保護部20aを覆設し、該保護部20aには、前記凹部45aの開口径よりも大きく前記粒状薬剤46が嵌入可能な通過孔20cを設け、該通過孔20c内で繰出ロール45の回転方向51後側に位置する通過孔後部20fを、繰出ロール45の軸心45cの略直上位置50、または該略直上位置50よりも繰出ロール45の回転方向51前側に設けたので、該保護部20aを繰出ロール45の外周面45bと粒状薬剤46との間に介設することができ、表面の硬い粒状薬剤46を使用する場合でも、繰出ロール45の外周面45bのうち前記粒状薬剤46に直接接触する部分を減少させ、硬い粒状薬剤46の擦過による外周面45bの損傷を大きく軽減することができ、これにより、ロール交換が少なくなってメンテナンスコストを大きく低減させることができる。しかも、繰出ロール45の外周面45bが滑らかに維持されることから、前記保護部20aの先にガイド板22を備える場合には、該ガイド板22と前記外周面45bとの隙間を適正に調節することができ、粒状薬剤46がロール回転途中で落下しないようにして、粒状薬剤46を所定の落下部まで確実に保持・搬送して圃場への粒状薬剤46の供給精度を向上させることができる。更に、凹部45aの開口径よりも大きい通過孔20cを形成するだけで、複雑な構造を設けることなく凹部45aへの粒状薬剤46の嵌入を円滑に行うことができ、繰出ロール保護構造の簡素化による製造コストの低減とメンテナンス性の向上を図ることができる。しかも、通過孔後部20fの位置を適正化することにより、小粒状薬剤等が繰出ロール45の凹部45aの縁45dから外周面45bと保護部20aとの隙間に落ち込むのを確実に防止して、小粒状薬剤等の擦過による外周面45bの損傷までも軽減することができ、一層の、ロール交換頻度の減少によるメンテナンスコストの低減や、粒状薬剤46の供給精度の向上を図ることができる。
【0027】
次に、保護板の別形態について、図6により説明する。
この保護板40は、前記略円形状の通過孔20cの代わりに、繰出ロール45の回転方向51に沿って長い長孔形状の通過孔40cを開口したものである。
【0028】
保護板40は、前記保護板20と同様に、繰出ロール45の外周面45bに沿って湾曲した曲板状の保護部40aと、該保護部40aの前端40eに接続された平板状の支持部40bとから構成され、該支持部40bの前部には取付孔40dが開口されており、該取付孔40dを介して、保護板40は前記蝶ネジ17によって取付部47hに固定される。
【0029】
そして、前記保護部40aに前述した長孔形状の通過孔40cが開口され、該通過孔40cは、繰出ロール45の外周面45bに形成された凹部45aの開口径に比べて、幅・長さともに大きく構成されている。これにより、繰出ロール45が回転して、凹部45aが通過孔40cの直下まで来ると、粒状薬剤46は、前記通過孔40cの縁部に邪魔されることなく凹部45a内に転がり入ることができる。この場合も、前記通過孔20cと同様に、通過孔40c内で繰出ロール45の回転方向51後側に位置する通過孔後部40fは、繰出ロール45の軸心45cの略直上位置50、または該略直上位置50よりも回転方向51前側となるように構成されている。
【0030】
更に、この通過孔40c内で繰出ロール45の回転方向51前側の通過孔前部40gは、前記支持部40bまで延設されてブラシ16の刷毛部16aにまで達している。これにより、凹部45aの上方は前端40eまでの長い区間にわたって開放状態にあるため、粒状薬剤46に凹部45aへの嵌入と離脱を繰り返させることができ、粒状薬剤46を凹部45a内に隙間無く充填することができる。しかも、前端40eから外周面45bとガイド板22との隙間に入り込もうとする小粒状薬剤等を、前記刷毛部16aによって堰き止めた上で、更に、刷毛部16aの弾性力によって通過孔前部40gから外方に掃き出すことができるようにしている。
【0031】
すなわち、前記通過孔40cは、繰出ロール45の回転方向51に沿って長い長孔形状とするので、凹部45aへの粒状物である粒状薬剤46の嵌入と凹部45aからの余分な粒状薬剤46の離脱が可能な区間を長く確保することができ、凹部45aへの粒状薬剤46の充填密度を高めると共に、余分な粒状薬剤46を確実に離脱させることができる。
【0032】
更に、前記繰出装置48には、前記通過孔40cから凹部45aに嵌入できない余分な粒状薬剤46等を除去するブラシ16を設け、該ブラシ16の刷毛部16aは、前記通過孔40c内で繰出ロール45の回転方向51前側に位置する通過孔前部40gまで延出させるので、該通過孔前部40gから、外周面45bと保護部40aとの隙間や、保護部40aの前方にガイド板22を備える場合には外周面45bとガイド板22との隙間に入り込もうとする小粒状薬剤等を、前記刷毛部16aによって確実に堰き止めると共に掃き出すことができ、小粒状薬剤等の擦過による外周面45bの損傷を一層確実に防止することができる。
【0033】
なお、前記種子繰出機26についても、以上述べた薬剤繰出機27と略同じ構成から成るものであるが、種子は一般に柔らかいため、種子による繰出ロール15の損傷が特に心配されない場合には、前述した保護板20・40は省くことができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、繰出装置内に設けた回転する繰出ロールの外周面が、ホッパーからの硬い粒状物の擦過によって損傷を受ける、人力用、管理機用、トラクタ用等の全ての繰出装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に関わる人力播種機の全体構成を示す全体側面図である。
【図2】同じく平面一部断面図である。
【図3】薬剤繰出機の側面一部断面図である。
【図4】保護板の取付構成を示す繰出ロール周辺の側面一部断面図である。
【図5】円形状の通過孔を有する保護板の側面断面図とその斜視図であって、(a)は円形状の通過孔を有する保護板の側面断面図、(b)は(a)の矢印53の方向から見た保護板の斜視図である。
【図6】長孔形状の通過孔を有する保護板の側面断面図とその斜視図であって、(a)は長孔形状の通過孔を有する保護板の側面断面図、(b)は(a)の矢印54の方向から見た保護板の斜視図である。
【符号の説明】
【0036】
16 ブラシ
16a 刷毛部
20a 保護部材
20c・40c 通過孔
20f・40f 通過孔後部
27 粒状物繰出機
40g 通過孔前部
45 繰出ロール
45a 凹部
45b 外周面
45c 軸心
46 粒状物
47 ホッパー
48 繰出装置
49 下部空間
50 略直上位置
51 回転方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状物を蓄えるホッパーと、該ホッパー内の下部空間に連通する繰出装置とを有し、該繰出装置には、外周面に前記粒状物を嵌入可能な凹部を形成した繰出ロールを設け、該繰出ロールの回転とともに前記凹部内の粒状物を下方に搬送する粒状物繰出機において、前記外周面で前記下部空間への露出部分には、粒状物による損傷を防止するための保護部材を覆設し、該保護部材には、前記凹部の開口径よりも大きく前記粒状物が嵌入可能な通過孔を設け、該通過孔内で繰出ロールの回転方向後側に位置する通過孔後部を、繰出ロールの軸心略直上位置、または該軸心略直上位置よりも繰出ロールの回転方向前側に設けたことを特徴とする粒状物繰出機。
【請求項2】
前記通過孔は、繰出ロールの回転方向に沿って長い長孔形状とすることを特徴とする請求項1記載の粒状物繰出機。
【請求項3】
前記繰出装置には、前記通過孔から凹部に嵌入できない余分な粒状物等を除去するブラシを設け、該ブラシの刷毛部は、前記通過孔内で繰出ロールの回転方向前側に位置する通過孔前部まで延出させることを特徴とする請求項2記載の粒状物繰出機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−11746(P2008−11746A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−184701(P2006−184701)
【出願日】平成18年7月4日(2006.7.4)
【出願人】(597041747)アグリテクノ矢崎株式会社 (56)
【Fターム(参考)】