説明

粗粒異方性溶接部の超音波検査のための改良された手法およびフェーズドアレイトランスデューサ

音波を発生させる、特に圧縮波を発生させる、トランスデューサであって、送信素子アレイと、受信素子アレイと、送信素子アレイおよび受信素子アレイ用の少なくとも1つのウエッジと、好ましくは送信素子アレイおよび受信素子アレイを分離する音響障壁とを備え、送信素子アレイのピッチが送信素子アレイの長さに沿って変化するトランスデューサ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送信素子アレイと、受信素子アレイと、送信素子アレイおよび受信素子アレイ用の少なくとも1つのウエッジ(Wedge)と、好ましくは送信素子アレイおよび受信素子アレイを分離する音響障壁とを備え、音波を発生させる、特に圧縮波を発生させる、トランスデューサに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、送信素子アレイと、受信素子アレイと、ウエッジと、好ましくは、送信素子アレイおよび受信素子アレイを分離する音響障壁とを備える、音波を発生させるトランスデューサを用いて2つの板またはパイプの間の溶接部を検査する方法にさらに関する。
【0003】
主にオーステナイト相から成る溶接部などの異方性粗粒材料の超音波検査は、従来のせん断波トランスデューサを用いると、超音波の散乱、減弱、およびノイズの増加がもたらされる。
【0004】
この理由により、この問題を克服するために、改善された超音波技術が専用に考案されて使用されている。これらの専用に考案された超音波技術は、従来のせん断波ではなく、縦波を用いる。縦波は、調査対象材料の異方性の影響を受けにくい。たいていの場合、これらのトランスデューサには、1つの水晶振動子ではなく、物理的に分離された2つの水晶振動子が取り付けられている。これらの水晶振動子の一方は、送信器として機能し、他方は受信器として機能する。本文献においては、上記のトランスデューサの意匠性を示すために、TRLプローブ(Transmitter−Receiver Longitudinal;縦波送受信)という述語を共通に用いる。
【0005】
強い異方性挙動を有する粗粒材の非破壊検査のためのTRL技術の使用は、成功裡に実施され、主にオーステナイト相で作られた溶接部ばかりでなく、フェライト鋼にも、1970年以降、手動で(TRLトランスデューサを手動で移動させて材料を走査)および自動で(特定の方向に沿って、例えば溶接部の上部で、移動可能な機械装置に取り付けられたいくつかの(複数の)TRLトランスデューサによって材料を走査)使用されている。対応するデータの取得は、コンピュータまたは同様の記録装置によって行われる。複数のトランスデューサを用いたオーステナイト系溶接部の自動超音波試験の成功例が既に1976年にRTD社によって公表されている。その時以来、RTD社は、オーステナイト系溶接部の機械化されたテスト用のTRLトランスデューサを製造、販売、および使用している。
【0006】
建設業界においては、オーステナイト溶接部などの粗粒異方性溶接部は、板またはパイプなどのオーステナイト(非磁性)部品の接合ばかりでなく、他の種類の材料、例えばフェライト(磁性)部品、の接合にも一般に用いられている。後者は、主に液化天然ガスの貯蔵用タンクの場合であり、板はニッケル含有量が高い(例えば、9%)フェライト鋼合金から製造され、溶接部はオーステナイト組織を有する。
【0007】
本発明は、これらの溶接部の検査に都合よく使用しうる、改良された技術およびフェーズドアレイトランスデューサに関する。
【0008】
上記のように、複数のTRLトランスデューサを用いた、オーステナイト溶接部などの粗粒異方性溶接部の機械化された超音波検査は公知であり、過去において成功裡に実施されている。ごく最近、RTD社は、革新的な検査方法に関する米国特許出願第60/861,964号を提出した。RTD社のこの新しい特許出願の明細書には、溶接欠陥の寸法を超音波エコーの振幅に基づき推定できるように、溶接部の開先のあらゆる部分に超音波ビームをできる限り直角に当てる方法が説明されている。これは、開先面ごとに少なくとも1つの独立したトランスデューサを必要とする。
【0009】
次に、図面を参照しながら従来技術のシステムおよび本発明についてさらに説明する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
現在のフェーズドアレイ技術の欠点
オーステナイト溶接部の検査のためにフェーズドアレイを用いることも公知である。この方法は、従来型TRLトランスデューサの構成と同様の構成を用いるが、この場合、送信および受信用の水晶振動子の代わりに、フェーズドアレイが用いられる。
【0011】
TRLトランスデューサ1は、送信素子2と、受信素子4と、送信素子2用の第1のウエッジ6と、受信素子4用の第2のウエッジ8と、ウエッジ6、8間の音響遮断壁10とを備える。使用時、送信素子2は、送信ビーム26Tを発生させ、受信素子は受信ビーム26Rを受信する。両ビーム26T、26Rは焦域5で交差する。
【0012】
図1に示すようなトランスデューサの水晶振動子2、4の代わりに送信用フェーズドアレイ12と受信用フェーズドアレイ14とを用いる方法が図2に示されている。図2は、ウエッジ(Wedge)6、8の上面図を示す。複式送信素子アレイ12および複式受信素子アレイ14が見られ、図1に示されている水晶振動子と同様の位置に位置付けられている。これらのアレイは、どちらもフェーズドアレイで構成され、各アレイは、一般に2つ以上の列A、B、C、およびDの素子16、18で構成される。この例において、送信器は送信素子16の2つの列A、Bを有し、受信器は受信素子18の2つの列C、Dを有する。3つ以上の素子列を用いることもできる。
【0013】
従来の複式TRLトランスデューサでは、送信器および受信器をスキントアングル下で機械加工することによって、指定された焦点距離20、20’をトランスデューサに与えることができるが、フェーズドアレイでは、列Aの素子間の送信時間シフトを列Bの素子間の送信時間シフトに対して変化させ、列Cの素子間の受信時間シフトを列Dの素子素子間の受信時間シフトに対して変化させることによって同じことを行うことができる。この方法によって、「横方向への」ビームステアリングが可能になる。この方法により、焦点距離(すなわち、両ビームが交差する距離)を変えることができる。図3に示すように、送信および受信時間シフトを列1から16の素子に適用することによって、送信器および受信器の入射角をステアリングすることができる。図3には、複数の掃引送信ビーム26Tがテスト対象物体19内に示されており、各ビームは、この物体の開先24の法線Nに対する入射角Hを有する。他の用途には、他の数の素子を必要としうる。対応する掃引受信ビーム26R(図示せず)は、受信素子アレイ14によって生成される。
【0014】
この種のフェーズドアレイトランスデューサは、一般に、オーステナイト溶接部の検査のために、上記のように角度および焦点距離をステアリングするために用いられる。通常、テスト中の物体への超音波の入射点22(トランスデューサのインデックスポイント22)は、基本的に同じままである。結果として、溶接開先24の全ての部分(面)に何れかの超音波送信ビーム26Tが確実に直角に当たる可能性はない(図3)。また、上記の面に当たった送信ビームの反射を受信するには、対応する受信ビーム26Rは溶接部の対応する面に対して直角であるべきである。結果として、米国特許出願第60/862,964号明細書に説明されているように、これは、振幅に基づく欠陥の寸法評価を難しくする。
【0015】
この用途のための現在のフェーズドアレイトランスデューサの別の欠点は、フェーズドアレイを用いた横への効率的ビームステアリングには、送信器および受信器のそれぞれに(図2に示すように)2列または3列より相当多い素子(列)を必要とすることである(この場合は、トランスデューサの各側に、好ましくは送信器用に8列および受信器用に8列)。ただし、素子を増やすには、音響遮断壁によって分離された多数の素子を各側に有するトランスデューサを必要とするため、はるかに複雑なトランスデューサとなる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、改良されたフェーズドアレイトランスデューサを用いる(溶接部の各側に1つずつ)。このようなトランスデューサは単純化が可能であり、多数の素子を有する必要がなく、および/または上記のような欠点がない。単独で、または組み合わせて、達成しうる目的として、以下が挙げられる。
1.各開先面への直角入射のために、角度だけでなく、インデックスポイントの位置も選択できるように、トランスデューサのインデックスポイントを一定距離にわたって移動させることができる。
2.列当たり少数の素子によって非効率的な横ビームステアリングから脱却する。
3.送信器および受信器のそれぞれに複数の素子列を使用する必要性から脱却する。
【0017】
第1の目的を達成するには、インデックスポイント22を移動させるために十分な長さと素子数とを有する必要がある。
【0018】
第2の目的は、改良されたフェーズドアレイ構成を必要とする。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】従来技術のトランスデューサの一実施形態を示す。
【図2】送信素子アレイと受信素子アレイとを備える従来技術のトランスデューサの一実施形態を示す。
【図3】図2に示されているトランスデューサの使用を示す。
【図4A】本発明によるトランスデューサの可能な一実施形態の使用を示す。
【図4B】本発明によるトランスデューサの可能な一実施形態の使用を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明による音波を発生させるためのトランスデューサは、送信素子アレイのピッチが送信素子アレイの長さに沿って変化することを特徴とする。送信素子アレイのピッチは、送信素子アレイの長さに沿って変化することが好ましい。送信素子アレイのピッチは、一般に、トランスデューサの後部からトランスデューサの前部への方向に縮小することがさらに好ましい。受信素子アレイのピッチは、受信素子アレイの長さに沿って変化することが好ましい。受信素子アレイのピッチは、一般に、トランスデューサの後部からトランスデューサの前部への方向に縮小することがさらに好ましい。
【0021】
本発明による方法は、互いに異なるインデックスポイントおよび方向をそれぞれ有する少なくとも第1および第2の音響ビームがそれぞれ異なる送信素子セットによって生成されることを特徴とする。この目的のために、本発明によるトランスデューサを都合よく使用することができる。
【0022】
好都合な一実施態様によると、送信素子アレイの長さに対して直角な方向の送信素子の幅は、送信素子アレイの長さに沿って、送信素子アレイのピッチに対応して変化する。このような方法により、素子列が1列のみの送信器でも所望のビームを発生させるために有効に使用しうる。例えば、一定数の送信素子を備え、第1のビームを発生させるために使用される送信素子アレイの前部は、トランスデューサの幅方向およびトランスデューサの長さ方向に相対的に小さい表面積を有する。同数の送信素子を備え、第2のビームを発生させるために使用される送信素子アレイの後部は、トランスデューサの幅方向およびトランスデューサの長さ方向に相対的に大きい表面積を有する。つまり、第1のビームは第2のビームより干渉性が低いので、第1のビームは、トランスデューサからの距離が相対的に短い位置での検査に使用しうる。第2のビームは、トランスデューサからの距離が相対的に長い位置での検査に使用しうる。第1のビームのインデックスポイントは第2のビームのインデックスポイントと異なるので、相対的に短い距離にある検査対象の溶接部の特定部分に第1のビームが当たる角度は、その溶接部の表面に対して直角になりうる一方で、前記相対的に長い距離にある検査対象の溶接部の別の部分に第2のビームが当たる角度もその溶接部の表面に対して直角になりうる。
【0023】
受信素子アレイの長さに対して直角な方向の受信素子の幅は、受信素子アレイの長さに沿って、受信素子アレイのピッチに対応して変化することが好ましい。このような方法により、受信素子アレイは、送信素子アレイと同様の特性を有しうる。
【0024】
改良されたトランスデューサは、例えばタンク、パイプなどの最も一般的な肉厚に必要なトランスデューサのインデックスシフト範囲に対応するために十分な長さと十分な数の素子とをそれぞれ有する単一の送信素子アレイおよび単一の受信素子アレイの両方を有しうる。以下に、10mmから35mmの肉厚範囲の場合について本発明を説明する。他の肉厚の場合は、超音波周波数、素子の数、ピッチ、素子幅、および他の幾何学的特性などのパラメータを変えて、同様の構成を使用できる。
【0025】
この肉厚範囲に対する従来のTRLトランスデューサの設計および使用においては、必要とされる入射角度の大半は40°と90°の間の範囲内にあることが観察されている(後者の角度はクリーピング波トランスデューサに使用される)。必要とされる焦点距離の大半は、15mmと70mmの間の範囲内にある。水晶振動子の大きさは、短い焦点距離用の8×10mm(幅×長さ)から、より長い焦点距離用の15×25mm以上に及ぶ。
【0026】
さらに、トランスデューサのビームインデックスポイントと溶接部の中心線との間の最適距離は、そのトランスデューサの焦点距離と必ず同程度であることが各トランスデューサについて観察されている。これは、焦点は溶接部に、またはその近くに、位置付ける必要があることから当然のことである。したがって、溶接部からの距離が長くなるほど、より長い焦点距離が必要になる。
【0027】
上記の肉厚範囲の検査のために使用される最良の超音波周波数は一般に2MHzである。フェーズドアレイの超音波ビームにおけるグレーティングローブを抑圧するために、アレイ内の素子間の距離(「ピッチ」)が一定値を超えないようにすべきことが知られている。この値は、超音波周波数とウエッジ内のビームステアリング範囲とに関係することも知られている。
【0028】
圧縮波トランスデューサの場合、鋼鉄内の角度を40°と90°の間の範囲内にするために、ウエッジ(例えばパースペクス製または別の同様の材料製)内のビームステアリング範囲は10°である。したがって、ウエッジ角度をその範囲の中心にある鋼鉄内の角度用に最適化された値にすると、このウエッジ内の必要な掃引範囲は±5°になる。この掃引範囲であると、周波数が2MHzの場合、最大ピッチは約3mmになる。この値においては、憂慮すべきグレーティングローブは一切現れない。
【0029】
次に、本発明による可能な一実施形態について図4を参照しながら説明する。
【0030】
本発明の一側面は、以下の知見に基づく。
焦点距離が相対的に短い場合は、相対的に小さな送信器が必要になる。必要な長さは、たとえば9mmである。このような送信器は、送信素子のフェーズドアレイ12の1セットの素子16で形成される。このセットは複数の隣接素子16を含む。ピッチPが3mmであれば、このセットに含まれる素子の数は3つになるが、これでは効果的なビームステアリングには十分ではない。この場合は、ピッチPが1mmである方が良い。1mmであれば、セットに含まれる隣接素子16の数が9個になり、効果的なビームステアリングが可能になる。焦点距離が相対的に長い場合は、相対的に大きな送信器が必要になる。必要な長さは、たとえば25mmである。このような送信器は、送信素子のフェーズドアレイ12の1セットの素子16で形成される。このセットは複数の隣接素子16を含む。ピッチを3mmにすると、効果的なビームステアリングに十分な数である8つの素子を備えることになる。この場合、ピッチを1mmにする必要はない。
【0031】
受信器についても同じである。焦点距離が相対的に短い場合は、相対的に小さな受信器が必要になる。必要な長さは、たとえば9mmである。このような受信器は、受信素子18のフェーズドアレイ14の1セットの素子18で形成される。このセットは複数の隣接素子18を含む。ピッチPを3mmにすると、素子の数は3つになるが、これでは効果的なビームステアリングに十分ではない。この場合、ピッチは1mmの方が良い。1mmにすると、セットに含まれる隣接素子の数が9個になり、効果的なビームステアリングが可能になる。
【0032】
焦点距離が相対的に長い場合は、相対的に大きな受信器が必要になる。必要な長さは、たとえば25mmである。このような受信器は、受信素子のフェーズドアレイ14の1セットの素子18で形成される。このセットは複数の隣接素子18を含む。ピッチを3mmにすると、このセットに含まれる素子の数は8つになり、効果的なビームステアリングに十分である。この場合、ピッチを1mmにする必要はない。
【0033】
したがって、本発明の一側面による受信用トランスデューサおよび送信用トランスデューサは、ピッチPがアレイの全長にわたって一定でない、例えばトランスデューサの前部32の1mmからトランスデューサの後部30の3mmまで変化するフェーズドアレイの使用をそれぞれ含む。ソフトウェア(すなわち、アレイの各素子に対して遅延を計算するソフトウェアモジュール)がこれを支持すべきであることは言うまでもない。
【0034】
例えば、相対的に短い焦点距離に対してトランスデューサの前部32にある素子12のセットを使用するには、この相対的に短い焦点距離において相対的に小さなビーム幅(長さDsで測定)を得るために、この相対的に短い焦点距離において相対的に大きなビーム拡がり(トランスデューサの平面Qに対して直角な角度fsで測定)を有するビーム26Tsを発生させる。トランスデューサの後部30にある素子セットを相対的に長い焦点距離に対して使用するには、この相対的に長い焦点距離(図4を参照のこと)において相対的に小さなビーム幅(長さDlで測定)を得るために、この相対的に長い焦点距離において相対的に小さなビーム拡がり(平面Qに対して直角な角度flで測定)を有するビーム26Tlを発生させる。
【0035】
ビーム26Tsのインデックスポイント22はトランスデューサの前部32に相対的に近い位置にあるため、ビーム26Tsは溶接部にほぼ直角に当たる。
【0036】
ビーム26Tlのインデックスポイント22’はトランスデューサの後部30に相対的に近い位置にあるため、ビーム26Tsも溶接部にほぼ直角に当たる。
【0037】
この原理を用いた32個の素子から成るアレイの長さは64mmになる。
【0038】
非一定ピッチを使用することのさらなる利点は、グレーティングローブがさらに抑圧されることである。これは、格子の寄与が同相でないために、グレーティングローブにおいて音圧が相殺的干渉によって低減されるという事実による。
【0039】
同じことは、図4Bにおいて送信ビーム26Tsに一致する受信ビーム26Rsにも、図4Bにおいて送信ビーム26Tlに一致する受信ビーム26Rlにも準用される。
【0040】
したがって、送信素子16のアレイ12と、受信素子18のアレイ14と、送信素子アレイおよび受信素子アレイ用の少なくとも1つのウエッジ6、8とを備える、音波を発生させる、より具体的には圧縮波を発生させる、図4による実施形態のトランスデューサについても同様である。アレイ12をウエッジ6上に固定することもできる。トランスデューサに送信素子アレイ12用の第1のウエッジ6と、受信素子アレイ14用の第2のウエッジ8とを設けることも可能である。トランスデューサは、送信素子アレイおよび受信素子アレイを分離する音響障壁10を備えることが好ましい。この例において、音響障壁10は第1のウエッジ6と第2のウエッジ8の間に延在する。送信素子アレイ12のピッチは、送信素子アレイの長さLtに沿って変化する。送信素子アレイ12のピッチは、送信素子アレイのほぼ全長に沿って変化する。送信素子アレイ12のピッチは、一般に、トランスデューサの後部30からトランスデューサの前部32への方向に縮小する。受信素子アレイ14のピッチは、受信素子アレイの長さLrに沿って変化する。受信素子アレイのピッチは、一般に、トランスデューサの後部30からトランスデューサの前部32への方向に縮小する。
【0041】
より長い焦点距離にはより大きな幅が必要になるという要件に対応するために、本発明は、可変幅34、36(例えば8mmから15mmまで変化)をそれぞれ有する送信素子アレイ12および受信素子アレイ14をさらに備える。上記の値は単なる例であり、用途が異なればこの例とは異なる値が必要になりうる。
【0042】
トランスデューサの前部32にあるセットの素子16は相対的に小さな幅34を有し、相対的に短い焦点距離20に使用することができる。すなわち、これらの素子16は、相対的に短い焦点距離20において相対的に小さなビーム幅(開先24において距離Dsに対して直角な長さdsとして測定)を得るために、相対的に短い焦点距離20において相対的に大きいビーム拡がり(トランスデューサの平面Qに平行な、角度fsに対して直角な角度gsにおいて測定)を有する送信ビーム26Tsを発生させる。
【0043】
トランスデューサの後部30にあるセットの素子16は、相対的に大きいビーム幅34を有し、相対的に長い焦点距離20’に使用することができる。すなわち、これらの素子16は、相対的に長い焦点距離20’において相対的に小さなビーム幅(開先24において距離Dlに対して直角な長さdlとして測定)を得るために、相対的に長い焦点距離20’において相対的に小さなビーム拡がり(トランスデューサの平面Qに平行な、角度flに対して直角な角度glにおいて測定)を有する送信ビーム26Tlを発生させる。
【0044】
他の送信ビームを焦点距離20、20’の間の焦点距離で発生させるために、上記のセット間にある他のセットの送信素子16を用いることもできる。
【0045】
受信素子18についても同じである。トランスデューサの前部32にあるセットの素子18は相対的に小さな幅36を有し、相対的に短い焦点距離20に使用することができる。すなわち、これらの素子18は、相対的に短い焦点距離20において相対的に小さな受信ビーム幅(開先24において距離Dsに対して直角な長さdsとして測定)を得るために、相対的に短い焦点距離20において相対的に大きいビーム拡がり(トランスデューサの平面Qに平行な、角度fsに対して直角な角度gsにおいて測定)を有する受信ビーム26Rsを発生させる。
【0046】
トランスデューサの後部30にあるセットの受信素子18は、相対的に大きいビーム幅36を有し、相対的に長い焦点距離20’に使用することができる。すなわち、これらの素子18は、相対的に長い焦点距離20’において相対的に小さなビーム幅(開先24において距離Dlに対して直角な長さdlとして測定)を得るために、相対的に長い焦点距離20’において相対的に小さなビーム拡がり(トランスデューサの平面Qに平行な、角度flに対して直角な角度glにおいて測定)を有する受信ビーム26Rlを発生させる。
【0047】
他の受信ビームを焦点距離20、20’の間の焦点距離で発生させるために、上記のセット間にある他のセットの受信素子18を用いることもできる。
【0048】
したがって、図4に示す実施形態においても、送信素子アレイの長さLtに対して直角な方向の送信素子16の幅34は、一般に、トランスデューサの後部30からトランスデューサの前部32への方向に縮小する。送信素子アレイ12の長さLtに対して直角な方向の送信素子16の幅34は、送信素子アレイの長さLtに沿って、送信受信素子アレイのピッチに対応して変化する。受信素子アレイの長さに対して直角な方向の受信素子の幅36は、一般に、トランスデューサの後部32からトランスデューサの前部34への方向に縮小する。受信素子アレイ14の長さLrに対して直角な方向の受信素子16の幅36は、受信素子アレイの長さLrに沿って、受信素子アレイのピッチに対応して変化する。送信素子アレイのピッチおよび受信素子アレイのピッチは、一般に同じように変化する。送信素子の幅および受信素子の幅は、一般に同じように変化する。ただし、本発明はこの例に限定されない。
【0049】
本実施形態は、両アレイの中心線Lr、Ltがトランスデューサの前方約15mmの距離で交差するように互いに対して(製造時に)回転されている、トランスデューサの送信器半体と受信器半体とをさらに備える。このようにすることにより、送信および受信素子アレイの2つの対応する区域によって発生されたビームは、トランスデューサの前方のほぼ同じ投影距離にある材料中の1点で必ず交差する。この距離は、プローブ角度ごとに変化しうるが、実用的な目的には十分に高精度である。この方法によると、図2に関して説明したように受信素子アレイおよび送信素子アレイをそれぞれ複数使用する必要がない。
【0050】
上記のトランスデューサは、少なくとも粗粒異方性溶接部の超音波検査に一般に使用されるあらゆる手法に使用することができる。これらの手法として、一次および二次クリーピング波と、直接および間接照射と、タンデム手法とが挙げられる(タンデム手法の特殊な一実施形態は、送信器および受信器のインデックスポイントが一致する円形トリップタンデムである)。たとえば、米国特許出願第60/861,964号および論文「超音波モード変換手法の適用(Applications of Ultrasonic Mode Conversion Techniques)(W.H.van Leeuwen;Int.J.Pres.Ves.& Piping誌、第39巻(1989年)P.265−278)を参照されたい。
【0051】
図4Aには本発明の一実施形態によるトランスデューサの(図2のような)上面図が示され、図4Bには(図3のような)側面図が示されている。この上面図は、送信器および受信素子アレイ12、14を示す。鋼鉄中のビーム掃引範囲の中心40に対して最適化されたウエッジ角度Sをそれぞれ有するトランスデューサの完全な半体は、送信器および受信器の中心線Lr、Ltがプローブの前方約15mmで交差するように回転されている。上面図には、トランスデューサの前部で最小ピッチPを有し、後部でより大きいピッチ値(図示せず)を有するアレイを形成する素子16、18の(全てではなく)一部が示されている。
【0052】
側面図は、ビームがテスト中の部品19に進入する様子を示す。クリーピング波26Ts(法線に対して90°未満)はトランスデューサの前部によって生成され、溶接部の表面近くの区域を検査する。別のビーム26Tl(鋼板の底部での波モード変換後に角度70°を有する)は、溶接部の開先の1つに直角に当たってこの開先を検査する。
【0053】
ビームの中心線40のみが描かれている。溶接部のもう一方の側を検査するために、溶接部のもう一方の側に対して同様の方法およびトランスデューサを使用できる。
【0054】
ビームのインデックスポイント22を移動するために、さまざまな素子セットが使用される。例えば、アレイの後部30にある8つの送信素子は、より長い距離において相対的に小さなビーム幅(長さDlで測定)を有し、検査対象の溶接部に少なくともほぼ直角に当たるような位置にインデックスポイント22’(図4を参照のこと)を有する送信ビーム26Tlを発生させるために用いられる。アレイの前部32にある別の8つの送信素子は、より短い距離において相対的に小さなビーム幅(長さDsで測定)を有し、ビームが検査対象の溶接部に少なくともほぼ直角に落ちる位置にインデックスポイント22(図4を参照のこと)を有する受信ビーム26Tsを発生させるために用いられる。これは、この2つの送信素子セットの間にある送信素子セットにも同様に準用される。
【0055】
これは、選択された受信素子セットにも同様に準用される。本例において、アレイの後部30にある8つの受信素子は、相対的に長い所望距離に焦点20’を得るために、後部30にある8つの送信素子と組み合わせて用いられ、前部32にある8つの受信素子は、相対的に短い所望距離に焦点20を得るために用いられる。これは、この2つの受信素子セットの間にある受信素子セットにも同様に準用される。
【0056】
本発明の一側面によると、上記のように所望の位置のインデックスポイント22、22’の選択を、図2に示すような従来のトランスデューサによって行うこともできる。その場合、インデックスポイントの可能な位置を十分に変化させるために、十分な数の送信および受信素子をトランスデューサに設けるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信素子アレイと、受信素子アレイと、前記送信素子アレイおよび前記受信素子アレイ用の少なくとも1つのウエッジと、好ましくは前記送信素子アレイおよび前記受信素子アレイを分離する音響障壁とを備える、音波を発生させる、より具体的には圧縮波を発生させる、ためのトランスデューサであって、前記送信素子アレイのピッチが前記送信素子アレイの長さに沿って変化することを特徴とするトランスデューサ。
【請求項2】
前記送信素子アレイの前記ピッチが前記送信素子アレイのほぼ全長に沿って変化することを特徴とする、請求項1に記載のトランスデューサ。
【請求項3】
前記送信素子アレイの前記ピッチが、一般に、前記トランスデューサの後部から前記トランスデューサの前部への方向に縮小することを特徴とする、請求項1または2に記載のトランスデューサ。
【請求項4】
前記受信素子アレイの前記ピッチが前記受信素子アレイの長さに沿って変化することを特徴とする、請求項1、2、または3に記載のトランスデューサ。
【請求項5】
前記受信素子アレイの前記ピッチが、一般に、前記トランスデューサの後部から前記トランスデューサの前部への方向に小さくなることを特徴とする、請求項4に記載のトランスデューサ。
【請求項6】
前記送信素子アレイの前記長さに対して直角な方向の前記送信素子の幅が、前記送信素子アレイの前記長さに沿って、前記送信素子アレイの前記ピッチに対応して変化することを特徴とする、先行請求項の何れか1項に記載のトランスデューサ。
【請求項7】
前記送信素子アレイの前記長さに対して直角な方向の前記送信素子の前記幅が、一般に、前記トランスデューサの後部から前記トランスデューサの前部への方向に縮小することを特徴とする、請求項6に記載のトランスデューサ。
【請求項8】
前記受信素子アレイの前記長さに対して直角な方向の前記受信素子の前記幅が、前記受信素子アレイの前記長さに沿って、前記受信素子アレイの前記ピッチに対応して変化することを特徴とする、先行請求項の何れか1項に記載のトランスデューサ。
【請求項9】
前記受信素子アレイの前記長さに対して直角な方向の前記受信素子の前記幅が、一般に、前記トランスデューサの後部から前記トランスデューサの前部への方向に縮小することを特徴とする、請求項8に記載のトランスデューサ。
【請求項10】
前記送信素子アレイの前記ピッチおよび前記受信素子アレイの前記ピッチが、一般に、同じように変化することを特徴とする、請求項2および4に記載のトランスデューサ。
【請求項11】
前記送信素子の前記幅および前記受信素子の前記幅が、一般に、同じように変化することを特徴とする、請求項6および8に記載のトランスデューサ。
【請求項12】
前記送信素子アレイの縦中心線と前記受信素子アレイの縦中心線との間の距離が、一般に、前記トランスデューサの前記後部から前記トランスデューサの前記前部への方向に小さくなることを特徴とする、先行請求項の何れか1項に記載のトランスデューサ。
【請求項13】
前記トランスデューサは少なくとも前記送信素子アレイ用の少なくとも1つのウエッジを備え、前記送信素子アレイに対して直角な前記少なくとも1つのウエッジからの高さが前記トランスデューサの前記後部から前記トランスデューサの前記前部への方向に大きくなることを特徴とする、先行請求項の何れか1項に記載のトランスデューサ。
【請求項14】
前記送信素子アレイが前記ウエッジ上に固定されることを特徴とする、請求項13に記載のトランスデューサ。
【請求項15】
前記受信素子アレイが前記ウエッジ上に固定されることを特徴とする、請求項14に記載のトランスデューサ。
【請求項16】
前記トランスデューサは前記送信素子アレイ用の第1のウエッジと前記受信素子アレイ用の第2のウエッジとを備え、前記送信素子アレイに対して直角な各ウエッジの高さが前記トランスデューサの前記後部から前記トランスデューサの前記前部への方向に大きくなる、先行請求項1乃至14の何れか1項に記載のトランスデューサ。
【請求項17】
音波を発生させるためのトランスデューサを用いて2つの板またはパイプの間の溶接部を検査する方法であって、前記トランスデューサは、送信素子アレイと、受信素子アレイと、ウエッジと、好ましくは前記送信素子アレイおよび前記受信素子アレイを分離する音響障壁とを備え、インデックスポイントと方向とが互いに異なる少なくとも第1および第2の音響ビームを複数の異なる送信素子セットによって発生させることを特徴とする方法。
【請求項18】
少なくとも第1および第2の音響ビームが複数の異なる送信素子セットによって発生され、前記第1のビームは前記溶接部の第1の部分に前記溶接部の前記第1の部分に対して少なくともほぼ直角方向に落ち、前記第2のビームは、前記溶接部の前記第1の部分とは異なる前記溶接部の第2の部分に、前記溶接部の前記第2の部分に対して少なくともほぼ直角方向に落ちるように、前記ビームは互いに異なるインデックスポイントと方向とをそれぞれ有することを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
2つより多い音響ビームをそれぞれ異なる方向に送信するために、ビームが前記溶接部の一部に前記溶接部の前記一部に対して少なくともほぼ直角方向に落ちるように、インデックスポイントと方向とを有するビームが各送信素子セットによって得られるように、互いに異なる2つより多い送信素子セットが選択されることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
互いに異なるインデックスポイントを有する複数の異なるビームを発生させるためにそれぞれ異なる送信素子セットが選択されることを特徴とする、先行請求項17乃至19の何れか1項に記載の方法。
【請求項21】
互いに異なる複数の送信素子セットは、前記セットの中心から前記トランスデューサの前部までの距離が互いに異なることを特徴とする、先行請求項17乃至20の何れか1項に記載の方法。
【請求項22】
送信素子セットは、互いに隣接する複数の送信素子を含むことを特徴とする、先行請求項17乃至21の何れか1項に記載の方法。
【請求項23】
送信素子セットの素子間の遅延を選択することによって送信ビームが集束されることを特徴とする、先行請求項17乃至22の何れか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記送信素子アレイは、前記受信素子アレイの受信素子構成と同じ送信素子構成を有することを特徴とする、先行請求項17乃至23の何れか1項に記載の方法。
【請求項25】
受信素子セットは反射ビームを受信するために用いられ、前記受信素子セットは前記選択された送信素子セットにそれぞれ対応することを特徴とする、先行請求項24に記載の方法。
【請求項26】
受信素子セットの素子間の遅延を選択することによって受信ビームが集束されることを特徴とする、先行請求項25に記載の方法。
【請求項27】
先行請求項1乃至16の何れか1項に記載のトランスデューサが用いられることを特徴とする、先行請求項17乃至26の何れか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【公表番号】特表2010−517034(P2010−517034A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−547187(P2009−547187)
【出願日】平成20年1月25日(2008.1.25)
【国際出願番号】PCT/NL2008/050044
【国際公開番号】WO2008/091151
【国際公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(509206936)
【Fターム(参考)】