説明

粘着シート

【課題】貼付時に入り込んだ空気がふくれを形成することがないと共に、経時変化も抑制できる粘着シートを提供する。
【解決手段】基材の一方の主面に界面保護層を介在させ、所定の幅の中央間隙部4aと当該中央間隙部4aを介して配置した中央粘着層3aとからなる中央領域と、当該中央領域を囲み、中央間隙部4aが連設する周辺間隙部4bと当該周辺間隙部4bを介して配置した外周粘着層3bとからなる外周領域とを備え、外周領域における外周間隙部4bの密度が、中央領域における中央間隙部4aの密度未満とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
基材の一方の主面に粘着層を備えた粘着シートは、例えば破れた紙の修復等に広く利用されている。また、粘着シートの基材として、彩色を施した透明フィルムや金属を蒸着等した金属箔を備えることによって、例えば化粧版として電子機器等の筐体表面に適用されている。
【背景技術】
【0002】
基材の一方の主面に粘着材を均一塗工した粘着シートを筐体表面に貼付すると、粘着シートの基材と筐体表面との間に空気が入り込み、入り込んだ空気はふくれとして粘着シート表面に現れ、化粧版としての美観を著しく損なう。
【0003】
この課題の解決策として、特許文献1では、表面シート上に均一塗工した粘着材で構成した基本平坦面の上に散点状に独立した小凸部の粘着材を形成した粘着シートが提案されている。この粘着シートを被粘着物に貼付すると、小凸部の先端部が優先的に貼り付くため、表面シートと被粘着物との間に外部に連通する空間を形成することができるため、入り込んだ空気がふくれとなることを抑制できるとしている。
【特許文献1】実開平06−020043号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の構成の粘着シートを用いると、被粘着物に貼付する際に表面シートから押圧する力を極めて微妙に制御する必要があり、押圧力を少し強めただけで基本平坦面を形成する粘着材に被粘着物が貼り付く、及び/または表面シートを押圧する押圧手段からの熱等で小凸部が基本平坦面に埋没する等の原因で、小凸部本来の機能が発揮し得ず、貼付の際に結局空気が入り込み、空気ふくれを抑制することはできなかった。
【0005】
これは小凸部の粘着材が粘着層上に形成されていることが原因であると考え、粘着材を印刷により基材上に間隙を設けて選択的に粘設して、基材と被粘着物との間に空気抜きの空間を備える改良をした粘着シートを適用してみた。当該改良粘着シートは粘着材と粘着材との間に粘着材を備えないため、空気抜きの空間を確実に確保することができ、空気がたまることによるシートのふくれを完全に解消することができた。
【0006】
しかし、上記改良した粘着シートを長時間使用すると、酸化性ガスまたは塩基性ガス等の反応性ガスや、汗、表面の汚れを落とす界面活性剤または飲み物等の液体成分などの異物が、粘着シートのふくれを抑制するための空気抜きの空間を通じて粘着シートと被粘着物との間に進入し、粘着シートの粘着層や基材に施した色彩層や金属層の装飾物質等を劣化させることにより、粘着シートが剥離する場合があった。また、当該異物が突起状または列状の粘着材周辺部に付着堆積し、それら付着堆積した汚れが基材を介して視認でき、粘着シート自体がもつ美観を損ない、例えば化粧版としての機能を損なう場合があった。
【0007】
そこで、本発明は係る従来の課題に鑑み、貼付時に入り込んだ空気がふくれを形成することがないと共に、経時変化も抑制できる粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明の粘着シートは、基材の一方の主面に粘着層を備えた粘着シートであって、前記基材上で間隙部を介して選択的に粘設した中央領域と、前記中央領域を取り囲む周辺領域とを備え、前記中央領域の前記間隙部は前記周辺領域に連通し、前記周辺領域における間隙部の密度を前記中央領域における前記間隙部の密度未満の構成を有し、前記基材と前記粘着層との界面に保護層を備える。
【発明の効果】
【0009】
基材と粘着層との界面に界面保護層を備えることで、粘着層の間隙から反応性ガスや液体成分が貼付領域内部に進入した場合に、基材の主面と反対側にある装飾面の腐食劣化を防ぐことができる。また、周辺領域における間隙部の密度を、中央領域における間隙部の密度未満とすることによって、粘着シートの貼付工程で空気が入り込んだとしても、中央領域から周辺領域に入り込んだ空気が移動し、周辺領域に移動した空気は貼付領域の外に押し出されるため、たまりを抑制できると共に、貼付領域の外からの反応性ガスや液体成分が貼付領域内部に進入することを抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の粘着層に適用する界面保護層としては、反応性ガスや液体成分が基材の主面に触れないようにするために、二軸延伸のポリアミドまたはポリエステル等のガスバリア性のある高分子シートが挙げられる。また、本発明の粘着シートの基材としては、ポリ塩化ビニルフィルムやポリエチレンテレフタレートフィルム等の高分子シート、または紙等が挙げられるが、基材の耐久性や基材の色目等の点では高分子シートが好ましい。また、高分子フィルムのような透明素材を基材とする場合には、色素等で着色した彩色層またはアルミニウム、金等を鍍金、印刷または蒸着した金属層や、着色層や金属層では被粘着物の影響が出る場合には発泡処理や着色層または金属層の色合いを損ねない無彩色色素や顔料で処理した隠蔽層や、表面保護フィルム等が適宜積層して用いられる。本発明の粘着シートに供される粘着材としては、酢酸ビニル系、アクリル系またはスチレンアクリル系等材質は特に限定されなく適用できるが、上述の界面保護層に対する印刷適正や界面保護層及び粘着シートを貼り付ける被粘着物に対する粘着性等を考慮して適宜選択できる。
【0011】
次に、図面を参照して本発明の最良の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態では電子機器等の外装を担う筐体表面に貼付する化粧粘着シートを例に挙げる。
【0012】
(実施の形態1)
図1に本発明の粘着シートにおける一実施形態の断面構成図を示す。同図において、1は粘着シート、2は厚み100μmの界面保護層、3は間隙4を介して界面保護層2にアクリル系粘着材を印刷により粘設した粘着層、9は粘着シート1を貼付した筐体である。本実施形態における基材5は、界面保護層2の反対面に発泡処理により白色化した厚み15μmの発泡ポリプロピレン隠蔽層6、発泡ポリプロピレン隠蔽層6の発泡面にアルミニウム粉体を印刷した厚み15μmの印刷層7、印刷層7の上に厚み100μmのポリエチレンテレフタレートの表面保護層8を積層している。
【0013】
図1における粘着シート1を粘着層3側から見た平面図を図2に示す。同図に示すように、粘着層3は中央間隙部4aを介した中央粘着層3a(中央間隙部4aと中央粘着層3aとで中央領域を構成する)と、中央領域を取り囲み、外周間隙部4bを介した外周粘着層3b(外周間隙部4bと外周粘着層3bとで外周領域を構成する)とからなり、外周領域における外周間隙部4bの密度は中央領域における中央間隙部4aの密度より低く構成される。
【0014】
本実施形態では中央間隙部4aの幅と外周間隙部4bとの幅は同一にし、粘着シート1の貼着領域の外に繋がる外周間隙部4bの本数を少なく構成している。具体的には、中央粘着層3aは一辺25mmの四角形、中央間隙部4a及び外周間隙部4bの幅は0.3mm(線幅密度比で8.5対1)、外周粘着層3bの最小幅Lは2mmとした。
【0015】
また、従来技術の改良粘着シートとして、間隙部21を介して中央粘着層22と中央粘着層22の最外周を埋める三角形状の外周粘着層23とを備えた粘着シート20を比較例として用いた。すなわち、間隙部21は本実施形態における中央間隙部4aと同じ幅で、中央粘着層22は本実施形態における中央粘着層3aと同じ面積、中央粘着層22を取り囲む外周粘着層23は中央粘着層22の半分の面積を備え、粘着シート20の外周における間隙部21の密度は中央粘着層22と同一の構成である。
【0016】
粘着シート1と粘着シート20とを筐体9に貼付し、初期特性として貼付時に入り込んだ空気に起因する空気ふくれ、経時特性としてpH12.5の塩基性界面活性剤及び中性界面活性剤をそれぞれ基材4の表面に塗布した状態で70℃、90%RH雰囲気中に100時間連続放置し、外観検査を行った。
【0017】
初期特性として、貼付時に入り込んだ空気に起因する空気ふくれは、粘着シート1及び20共に見受けられなかった。これは、貼付時に入り込んだ空気は、粘着シート1では外周間隙部4b、粘着シート20では間隙部21を介して粘着シート1または20の貼着面積の外に追い出されるためであると想定できる。
【0018】
また、経時特性として、中性界面活性剤では粘着シート1及び20共に外観に変化はなかったが、塩基性界面活性剤では粘着シート20は間隙部21に相当する印刷層7のアルミニウム粉体が劣化し隠蔽性をなくしたのに対し、粘着シート1では印刷層7の劣化現象は見られなかった。中性界面活性剤では粘着シート1及び20共に外観変化は見られなかったが、塩基性界面活性剤による印刷層7の劣化が生じたことから、粘着シート20では間隙部21から進入した塩基性成分が、隠蔽層6を浸透して印刷層7のアルミニウム粉体を劣化させたためだと想定され、粘着シート1では間隙部4bの密度が間隙部21の密度よりも小さいことから塩基性界面活性剤の進入が抑制され、界面保護層2により塩基性界面活性剤の浸透が妨げられて印刷層7の劣化が起こらなかったと想定される。
【0019】
以上の結果から、本実施形態に係る粘着シート1によれば、空気ふくれは中央間隙部4aと外周間隙部4bとを設けることで、貼付時に入り込んだ空気は粘着シート1の貼着面積の外に追い出され、しかも外周間隙部4bの密度を中央間隙部4aの密度よりも低くすることで、表面汚れを落とすクリーナーとして専ら適用されている塩基性界面活性剤に対する耐性も飛躍的に向上させることができた。
【0020】
また、反応性ガス成分としてオゾン雰囲気に10時間晒したが、粘着シート1では中央粘着層3a及び外周粘着層3bも酸化劣化が観測されなかったが、粘着シート20では粘着性に劣化の兆候があった。
【0021】
なお、界面保護層の厚みは3μm以上100μm以下が好ましい。3μmよりも薄い場合にはガスバリア性が低くなって基材を保護するのに適さなくなる場合があり、また加工する上で取り扱いが難しくなる場合がある。また界面保護層の厚みが100μmより厚い場合にはシートが曲がりにくくなり、貼り付け作業が行いにくくなる場合がある。
【0022】
中央間隙部4aと中央粘着層3aとの線幅密度比は1:2以上1:30以下が好ましい。線幅密度が1:30をより小さいと、中央領域の面積にもよるが、貼付の際に入り込んだ空気がふくれを発生する場合がある。また、1:2未満にすると、貼付の際に入り込んだ空気は貼付後にふくれとなることはないが、中央領域における貼着が弱く、材質によっては基材に延びが生じる場合や粘着シート全体の貼付領域からずれが発生する場合がある。
【0023】
また、中央間隙部4a及び外周間隙部4bの幅は、0.15mm以上1mm以下が好ましい。0.15mmよりも狭い場合には中央粘着層3a同士及び/または外周粘着層3b同士の間隙が狭いため、貼付時の基材に印加する力や温度等で間隙を塞ぐ場合があり、1mmを越えると異物が進入しやすくなる場合がある。
【0024】
また、外周間隙部4bの外周領域における密度も、中央領域の面積にも依存するが、本実施形態のように中央領域と同様に平行な間隙部とした場合、粘着シート1の外縁における長さ比で1:350以下が好ましい。
【0025】
なお、上述の実施形態ではいずれも、基材5の外縁から外周粘着層を備える構成であるため、外縁部に存在する粘着層が基材5からはみ出すことで使用者に不快感を与える場合を想定し、図5の構成でも初期特性及び経時特性の試験を行った。すなわち、図5の粘着シート11は実施形態1の粘着シート1と同じ中央領域と外周領域とを備え、外周領域のさらに外周を長さ0.5mmの基材5の面で庇を設けた構成である。この粘着シート11でも初期特性及び経時特性共に、それぞれ対応する実施形態と全く同じであった。なお、粘着シート11では最外周に粘着層を備えない基材5の面を設けたことで、基材5に対し直交する横方向から手が触れても、粘着間は一切なく、良好な感触であった。なお、粘着シート11では最外周の基材5の庇部分の幅を0.5mmとしたが、0.3mm程度でも同様の感触が得られた。なお、この庇部分の幅の上限は、外周粘着層2b、2c及び2dの最小幅、及び/または粘着シート11の大きさを鑑みて決定することができる。
【0026】
なお、上記実施形態における中央粘着層の形状は正方形としたが、正方形に限定される矩形、三角形、円形、楕円形等あらゆる形状を適用することができる。また、上記実施形態では基材の一方の面のみに粘着層を備える構成で説明したが、基材の両面に備えるいわゆる両面接着シートに対しても、当然適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明の粘着シートは、貼付時に基材と被粘着物との間に入り込む空気に起因する空気ふくれの抑制、反応性ガスや反応性物質を含有する液体に対する耐性、及び高温高湿環境下での耐性等粘着シートに要請される各種特性に優れた効果を発揮するため、例えばカーオーディオやカーナビゲーション等の車載電子機器、例えばディジタルビデオカメラ、ディジタルスチルカメラ、携帯電話、ノートパソコン等使用者の手が長時間触れる電子機器等に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の粘着シートに係る一実施形態の断面構成図
【図2】同粘着シートの要部平面図
【図3】比較例として適用した粘着シートの要部平面図
【図4】比較例として適用した粘着シートの断面構成図
【図5】本発明の粘着シートに係る他の実施形態における要部平面図
【符号の説明】
【0029】
1 粘着シート
2 界面保護層
3 粘着層
3a 中央粘着層
3b 外周粘着層
4 間隙部
4a 中央間隙部
4b 外周間隙部
5 基材
6 隠蔽層
7 印刷層
8 表面保護層
9 筐体
11 他の実施形態における粘着シート
20 比較例として適用した粘着シート
21 間隙部
22 中央粘着層
23 外周粘着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の一方の主面に粘着層を備えた粘着シートであって、
前記基材上で間隙部を介して選択的に粘設した中央領域と、前記中央領域を取り囲む周辺領域とを備え、
前記中央領域の前記間隙部は前記周辺領域に連通し、前記周辺領域における間隙部の密度を前記中央領域における前記間隙部の密度未満に構成し、
前記基材と前記粘着層との界面に保護層を設けた粘着シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−24307(P2010−24307A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−185555(P2008−185555)
【出願日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】