説明

粘着フィルムの製造方法及び粘着剤用液状組成物

【課題】 (メタ) アクリル酸アルキルエステルを主成分とするビニル系モノマーに光重合開始剤添加し、紫外線を照射し、光重合して粘着フィルムを製造する際、低コストで簡易に再現性よく十分な増粘を得ることができるとともに、光重合後の粘着剤の特性に実質的に影響を与えない粘着フィルムの製造方法およびその製造に用いられる粘着剤用液状組成物を提供する。
【解決手段】 (メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とするビニル系モノマー、親水性シリカ、アルキレングリコール重合体及び光重合開始剤が含有されてなる粘着剤用液状組成物を離型性担体又はフィルム用基材に塗布した後、紫外線を照射して前記ビニル系モノマーを重合する粘着フィルムの製造方法、及び、(メタ) アクリル酸アルキルエステルを主成分とするビニル系モノマー、親水性シリカ、アルキレングリコール重合体及び光重合開始剤が含有されてなる、上記粘着フィルムの製造方法に用いられる粘着剤用液状組成物。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、アクリル系の粘着フィルムの製造方法、及び、その製造方法に用いられる粘着剤用液状組成物に関する。尚、本発明における粘着フィルムには、粘着シート、粘着テープ等が包含されるものである。
【0002】
【従来の技術】アクリル系粘着フィルムは粘着力、凝集力などの粘着特性、及び耐候性、耐熱性などの耐老化性能に優れ、特に自動車、電気製品、建築物などの各種構造部材の永久接合材としても利用されている。アクリル系粘着フィルムを構成する粘着剤は溶液重合、乳化重合、塊状重合で製造されることが多い。また、紫外線を利用して、無溶剤で重合する製造法が注目されている。
【0003】紫外線照射によりアクリル系粘着剤を重合する製造方法においては、重合するアクリル系粘着剤用液状組成物の粘度が低くて取り扱いにくいため、増粘して使用することが種々行われてきた。例えば特公平07-078202 号公報には、増粘剤としてアクリルゴムやエピクロルヒドリンゴム等を添加する方法、チキソトロープ剤としてコロイドシリカを添加する方法、あるいは紫外線を少量照射して予めビニル系モノマーを一部重合する方法等が記載されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記の増粘方法は増粘効果が低かったり、製造工程が複雑でコストが高くなるという問題があった。増粘剤としてゴムを添加する方法は、適度な粘度に増粘する為にはアクリルモノマー100重量部に対して、通常、ゴムの添加量が5部以上必要であり、ゴムを添加したことによる光重合後の粘着特性への影響が大きく、問題である。また、チキソトロピー剤として親水性シリカ(コロイドシリカ)を添加する方法は、低コストで簡易に増粘することが可能であるが、親水性シリカ単独では粘度上昇が不十分であったり、一定量以上添加した場合、粘着剤の柔軟性が損なわれ、粗面への接着性に問題があった。さらに、予めビニル系モノマーを一部重合する方法は、重合釜中の光照射部位に重合物が付着したり、重合反応のバラツキが大きく、重合物の分子量及び重合転化率の再現性が困難である。また、加熱によって部分的に重合する場合も重合反応のバラツキが大きい、あるいは溶媒を含まないため重合熱の冷却管理が困難であるという問題があった。
【0005】本発明は、(メタ) アクリル酸アルキルエステルを主成分とするビニル系モノマーに光重合開始剤添加し、紫外線を照射し、光重合して粘着フィルムを製造する際、低コストで簡易に再現性よく十分な増粘を得ることができるとともに、光重合後の粘着剤の特性に実質的に影響を与えない粘着フィルムの製造方法およびその製造に用いられる粘着剤用液状組成物を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、請求項1記載の本発明は、(メタ) アクリル酸アルキルエステルを主成分とするビニル系モノマー、親水性シリカ、アルキレングリコール重合体及び光重合開始剤が含有されてなる粘着剤用液状組成物を離型性担体又はフィルム用基材に塗布した後、紫外線を照射して前記ビニル系モノマーを重合することを特徴とする粘着フィルムの製造方法を提供する。また、請求項2記載の本発明は、粘着剤用液状組成物が、更にイソシアネート架橋剤が含有されてなることを特徴とする請求項1 記載の粘着フィルムの製造方法を提供する。また、請求項3記載の本発明は、( メタ) アクリル酸アルキルエステルを主成分とするビニル系モノマー100重量部、親水性シリカ0.5〜5重量部、アルキレングリコール重合体0.0001〜3重量部及び光重合開始剤0.01〜5重量部が含有されてなる粘着剤用液状組成物を離型性担体又はフィルム用基材又はフィルム用基材に塗布した後、紫外線を照射して前記ビニル系モノマーを重合することを特徴とする粘着フィルムの製造方法を提供する。また、請求項4記載の本発明は、(メタ) アクリル酸アルキルエステルを主成分とするビニル系モノマー100重量部、親水性シリカ0.5〜5重量部、アルキレングリコール重合体0.0001〜3重量部、光重合開始剤0.01〜5重量部及びイソシアネート系架橋剤0.01〜3重量部が含有されてなる粘着剤用液状組成物を離型性フィルム又はフィルム用基材に塗布した後、紫外線を照射して前記ビニル系モノマーを重合することを特徴とする粘着フィルムの製造方法を提供する。また、請求項5記載の本発明は、(メタ) アクリル酸アルキルエステルを主成分とするビニル系モノマー、親水性シリカ、アルキレングリコール重合体および光重合開始剤が含有されてなることを特徴とする請求項1記載の粘着フィルムの製造方法に用いられる粘着剤用液状組成物を提供する。また、請求項6記載の本発明は、(メタ) アクリル酸アルキルエステルを主成分とするビニル系モノマー100重量部、親水性シリカ0.5〜5重量部、アルキレングリコール重合体0.0001〜3重量部、光重合開始剤0.01〜5重量部及びイソシアネート系架橋剤0.01〜3重量部が含有されてなることを特徴とする請求項4記載の粘着フィルムの製造方法に用いられる粘着剤用液状組成物を提供する。
【0007】以下、本発明を更に詳細に説明する。本発明により粘着フィルムを得るには、例えば、先ず上記ビニル系モノマー等が含有されてなる粘着剤用液状組成物を調製する。
【0008】本発明における(メタ) アクリル酸アルキルエステルを主成分とするビニル系モノマーは、一般に、(メタ)アクリル酸アルキルエステル100〜60重量%と、これと共重合可能な他のビニル系モノマー0〜40重量%とからなる。そして、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル基の炭素数が1〜14、好ましくは4 〜12の(メタ)アクリル酸アクリルエステルが用いられ、例えば、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸イソノニル、などが好適に用いられる。
【0009】また、上記の(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な他のビニル系モノマーとしては、一般に、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、アクリルロニトリル、N−置換アクリルアミド、ヒドロキシジエチルアクリレート、N−ビニルピロリドン、マレイン酸、イタコン酸、N−メチロールアクリルアミド、ヒドロキシエチルメタクリレート、エチレングリコールモノアクリレート、グリセリンモノアクリレートなどが用いられる。
【0010】その他に末端に重合性不飽和二重結合を有するオレフィン系重合体も用いることができる。末端に他の重合性モノマーと共重合可能な二重結合と、ポリオレフィン主骨格からなるポリマー構造とを有するものであれば、特に限定されるものではない。上記ポリオレフィン骨格の具体例としては、エチレン−ブチレン共重合体、エチレンープロピレン共重合体、エチレン共重合体、ブチレン共重合体等が挙げられる。エチレン−ブチレン共重合体の市販品としては、例えば、クレイトン・ポリマージャパン社製「クレイトン・リキッド・ポリマーL−1251」や「クレイトン・リキッド・ポリマーL−1253」等が挙げられる。
【0011】上記光重合開始剤として、例えば、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシー2−プロピル)ケトン[商品名:ダロキュアー2959、メルク社製]などのケトン系;α−ヒドロキシ−α、α’−ジメチル−アセトフェノン[商品名:ダロキュア1173、メルク社製]、メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシー2−フェニルアセトフェン[商品名:イルガキュア651、チバガイギー社製]、2−ヒドロキシー2−シクロヘキシルアセトフェノン[商品名:イルガキュア184、チバガイギー社製]などのアセトフェノン系;ベンジルジメチルケタールなどのケタール系;その他、ハロゲン化ケトン、アシルホスフィノキシド、アシルホスフォナートなどが挙げられる。これら光重合開始剤の添加量は、通常、前記ビニル系モノマー100重量部に対して、0.01〜5重量部であり、好ましくは0.05〜3重量部である。光開始剤の添加量が0.01重量部未満では重合転化率が低下し、モノマー臭が強い重合体しか得られない。5重量部を超える場合には、ラジカル発生量が多くなり、分子量が低下してしまい、必要な凝集力が得られない。
【0012】本発明における親水性シリカとしては、親水基(シラノール基)を表面に持つ親水性微粒子状シリカが用いられる。上記ビニル系モノマー100重量部に対し、親水性シリカは、通常、0.5〜5重量部添加する。親水性シリカが0.5重量部以下では増粘効果が不十分であり、5重量部以上では粘着剤の柔軟性が損なわれ、粗面への接着性に問題が生じる。親水性シリカの添加量は好ましくは1.5〜3.5重量部である。
【0013】本発明におけるアルキレングリコール重合体とは、ポリ(オキシアルキレン)グリコール、ポリオキシアルキレンエーテル、ポリアルキレンオキサイドと称されるものを含み、ポリマーの主鎖がポリエーテルの構造をもつものをいう。ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のホモポリマー、オキシエチレン−オキシプロピレン共重合体等のコポリマー等のポリエーテル類が挙げられる。上記ビニル系モノマー100重量部に対し、アルキレングリコール重合体は通常、0.0001〜3 重量部を添加する。アルキレングリコール重合体が0.0001重量部より少ない場合は、増粘効果が不十分であり、3 重量部以上では粘着特性に悪影響を与える場合がある。アルキレングリコール重合体の添加量は好ましくは0.0 003 〜0.01重量部である。アルキレングリコール重合体の分子量は分子量が大きいほど増粘の効果が大きい。分子量としては平均分子量3万以上が増粘の効果が大きく、好ましくは10万〜400万である。
【0014】本発明においては、前記ビニル系モノマー、光重合開始剤、親水性シリカ、アルキレングリコール重合体と共に、多官能(メタ)アクリレート化合物を微量添加することによって、アクリル共重合体の重合と同時に架橋を行ってもよい。上記、多官能(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオール(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、グリセリンメタクリレートアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸ビニル、ジビニルベンゼン、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらは単独で使用されても、2種以上併用されても良い。多官能(メタ)アクリレート化合物の添加量としては、上記ビニル系モノマー(通常は液状物である)100重量部に対して、0〜5重量部である。
【0015】また、本発明では上記ビニル系モノマーに対して、架橋剤としてイソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤等を微量添加することによって、架橋を行うこともできる。架橋剤としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ナフチレンー1,5−ジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、トリメチロールプロパン変成トリレンジイソシアネート等のイソシアネート系架橋剤、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールグリシジルエーテル等のエポキシ系架橋剤、N,N−ヘキサメチレン−1,6−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)等のアジリジン系架橋剤等が挙げられる。これらは単独で使用されても、二種以上のが併用されてもよい。その他、3官能のイソシアネート系化合物、あるいは3官能のエポキシ系化合物が挙げられる。3官能のイソシアネート系化合物としてはトリフェニルメタントリイソシアネート、トリレンジイソシアネート及びこれらのトリメチロールプロパン付加体、またはビュレット結合体が挙げられる。3官能のエポキシ系化合物としてはジエチレントリアミン、トリグリシジルエーテルのトリメチロールプロパン付加体等が挙げられる。これらは単独で使用されても、二種以上併用されても良い。イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤の添加量は、上記ビニル系モノマー液状物100重量部に対して、0〜5重量部の範囲である。特にイソシアネート系架橋剤の添加する場合の添加量は、上記ビニル系モノマー液状物100重量部に対して、0.01〜3重量部の範囲が好適である。
【0016】また、本発明において粘着付与樹脂を適宜添加することが可能である。粘着付与樹脂を光重合性組成物に添加して重合する場合、重合速度の低下や、分子量の低下が生じる場合があるので、その際には、一般に水素化を行う。重合阻害性が低い粘着付与剤として、水添テルペン樹脂、水添ロジン、不均化ロジン樹脂、水添石油樹脂等が挙げられる。
【0017】本発明における上記ビニル系モノマーに対して、各種の添加剤が添加されても良い。上記添加剤としては、例えば、可塑剤、軟化剤、無機充填剤(炭酸カルシウム、タルク、酸化アルミニウム、シリカなど)、有機充填剤、顔料、染料などが挙げられる。また、充填剤として平均粒径5〜200μmの中空粒子を添加したり、発泡剤の添加や、重合前の共重合成分にガスを攪拌混合した状態で重合を行うなどによって粘着剤組成物の体積を増加させてもよい。
【0018】本発明により粘着フィルムを製造するには、例えば、(メタ) アクリル酸アルキルエステルを主成分とするビニル系モノマーに親水性シリカを配合した後、高速攪拌機を用いて分散混合する。光重合開始剤、アルキレングリコール重合体、各種添加剤等を配合した液状物の粘度が塗工可能な粘度に増粘していることが必要である。塗工に好適な粘度とは、1.5 〜15Pa・Sである。塗工装置は適宜選択されるものであるが、ロールコーターが一番に使用される。この場合、粘度が低いと、塗工部において粘着剤が堰より漏れたり、塗工後重合する前に粘着剤が流れることにより、厚みが不均一になる不具合が発生する。一方、粘度が高い場合、塗工面にスジが発生したり、気泡が混入し易くなる問題がある。
【0019】この粘着剤用液状組成物は、溶存酸素を除去するする為に一般に窒素ガスなどの不活性ガスでパージされる。この不活性ガスでパージされた液状物を、不活性ガス雰囲気下で離型性担体又はフィルム用基材に塗布・塗工した後、紫外線を照射する。離型性担体としては、剥離紙、離型性処理が施されたプラスチックフィルム、金属箔等が挙げられるが、塗布・塗工後の剥離が可能であれば、これら、層状物に限られるものではない。フィルム用基材としては、布、不織布、紙等が挙げられ、液状組成物を塗布又は含浸、重合後に、フイルム状になされた粘着剤、即ち粘着フィルムを剥離することなくそのまま使用される。紫外線の照射は、離型性担体及びフィルム用基材の何れを用いた場合でも、不活性ガス雰囲気下、または粘着剤用液状組成物をプラスチックフィルムで被覆する等して、酸素から遮断した状態で行う。
【0020】光重合における光照射に用いられるランプ類としては、光波長400nm以下に発光分布を有するものが用いられ、その例としては低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウエーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ等が用いられる。この中でもケミカルランプは開始剤の活性波長領域の光を効率よく発光すると共に開始剤以外の組成物の光吸収が少ないため、内部まで光が透過し、高膜厚の製品を製造するのに好ましい。上記ランプによる光重合物組成物への光照射強度は得られるポリマーの重合度を左右する因子であり、目的製品の性能毎に適宜制御されるのであるが、通常のアセトフェノン基を有する開裂型の開始剤を配合した場合、その範囲は、開始剤の光分解に有効な波長領域(開始剤によって異なるが、通常365nm〜420nmの光が用いられる)の光強度は0.1〜100mW/cm2が好ましい。
【0021】本発明により得られる粘着剤組成物は、そのまま粘着剤として用いられても、あるいは粘着フィルムの形態で用いられてもよい。粘着フィルムとする場合、基材を有しない両面テープ等の形態であってもよく、あるいは基材の一方面もしくは両面に粘着層を形成してなる基材付き粘着フィルムとしてもよい。
【0022】(作用)(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とするビニル系モノマーに親水性シリカを添加することによって可能となる増粘のメカニズムは、親水性シリカ表面のシラノール基が関与しているものと考えられ、親水性シリカにはアクリル系モノマーの増粘効果が認められるものの、十分ではない。一方、アクリル系粘着剤の設計において、粘着物性のバランスをとる為に、架橋剤としてイソシアネート系架橋剤が汎用されている。但し、イソシアネート系架橋剤は水分と反応するので、反応系中に水分が一定以上存在すると、イソシアネートによるアクリル系高分子同士の架橋が十分に行われない問題が発生する。即ち、親水性シリカはその含水性の故に、イソシアネート系架橋剤を用いる時には使用量に制約を生じる。
【0023】本発明においては、ビニル系モノマーに親水性シリカを添加し増粘する場合、アルキレングリコール重合体を添加することにより、反応系中の水分が低い状態でも十分な増粘を達成することが可能となり、粘着物性バランスの達成に好ましいイソシアネート系架橋剤を用いることが可能となる。結局、親水性シリカとアルキレングリコール重合体を併用することによりその増粘効果を著しく高め、塗工工程に適した粘度の粘着剤用液状組成物を得ることができると同時に、最終重合物においては、親水性シリカに含有される水によるイソシアネートの架橋障害や、アクリルゴムの添加時に見られるような粘着剤への悪影響もなく、良好な粘着物性を得ることができる。
【0024】
【実施例】以下に本発明につき、実施例を挙げて詳細に説明するが、本発明は実施例に何ら限定されるものではない。
【0025】(評価方法)
実施例、比較例での粘着フィルムの評価方法は以下の通りである。
(1)90度剥離粘着力試験23℃65%RH雰囲気下において、粘着剤層の表裏両面を離型処理したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムで被覆した粘着フィルムを幅25mm、長さ100mmに裁断し、片方の離型PETフィルムを剥離し、露出した粘着剤面を、幅50mm、長さ150mmのステンレス板(日本テストパネル社製)に接着長さが100mmとなるように貼り付けた。次に上記粘着フィルムの他方の離型PETフィルムを剥離し、露出された粘着剤面に厚さ25μmのポリエステルフィルムをバッキング材として貼り付け、該バッキング材の背面側から重さ2kgのローラーで1往復させて圧着した後、23℃65%RHで24時間放置した後、23℃の雰囲気下で引っ張り試験機を用いて、300mm/分の引っ張り速度で90度剥離粘着力を測定した。
【0026】(2)剪断接着力試験粘着剤層の表裏両面を離型PETフィルムで被覆した粘着フィルムを幅25mm、長さ25mmに裁断し、23℃65%RH雰囲気下で幅50mm、長さ100mmの2枚のステンレス板(日本テストパネル社製)の中央部同士を、両面の離型PETフィルムを剥離した粘着フィルムで貼り合わせ、5kgの荷重で15分間圧着した後、24時間後に50m/分の引っ張り速度で剪断方向に引っ張り、剪断接着力を測定した。
【0027】(3)保持力試験23℃65%RH雰囲気下において、粘着剤層の表裏両面を離型PETフィルムで被覆した粘着フィルムを幅25mm、長さ25mmに裁断し、一方の離型PETフィルムを剥離し、粘着剤面を露出させ、幅50mm、長さ50mmのステンレス板(日本テストパネル社製)に貼り付けた。次に上記粘着フィルムの他方の離型PETフィルムを剥離し、露出された粘着剤面に厚さ1.3mmのステンレス板を貼り付けた。このステンレス板の上から重さ2kgのローラーで2往復させて圧着した後、23℃65%RHで24時間放置した後、80℃ギアオーブンに1時間放置した。その後、80℃ギアオーブン内で、ステンレス板に1kgの重りを付け、落下するまでの時間を測定した。
【0028】(4)粘度測定対象品を常温で1日静置後測定した。B型回転粘度計を用い、NO.3・回転数6rpmの粘度を測定した。
【0029】(5)塗工適性
【0030】(実施例1)アクリル酸2−エチルヘキシル80重量部、アクリル酸n−ブチル20重量部、アクリル酸5重量部、親水性シリカ(アエロジルA−200:日本アエロジル社)3重量部、ポリエチレングリコール70000 (平均分子量7 万、和光純薬社)1重量部を添加し、高速攪拌機(ホモディスパー)で攪拌して均一混合し増粘する。さらに重合開始剤(イルガキュア−651、チバガイギー社)0.1重量部、1,6ヘキサンジオールジアクリレート0.15重量部を添加して均一に混合し、これを窒素ガスでパージして溶存する酸素を除去して液状物を調整した。次いで、離型処理した50μm厚のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に0.5mm厚みのスペーサーを設置し、上記重合性モノマー溶液を離型処理したPETフィルム上に展開した後、このPETフィルムを折り曲げて、離型処理面が重合性モノマー溶液に接するように被覆した。この状態で被覆側のPETフィルム上における紫外線照射強度が10mW/cm2 となるようにケミカルランプのランプ強度を調節し、10分間紫外線を照射し、フィルム状の粘着剤組成物(以下粘着フィルム)を得た。
【0031】(実施例2)ポリエチレングリコール70000 の代わりにポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)グリコール(ニューポール75H-90000 ,数平均分子量15000 、三洋化成社)1重量部を添加したこと以外は、実施例1と同様にして粘着フィルムを得た。
【0032】(実施例3)末端に重合性不飽和二重結合を有するオレフィン系共重合体(商品名:HPVM−L1253、クレイトン・ポリマージャパン社製)12重量部を添加し、ポリエチレングリコール70000 の代わりにポリエチレングリコール2000000 (分子量200 万、和光純薬社)0.0008重量部、粘着付与樹脂(脂環族飽和炭化水素樹脂、商品名:アルコンP−100、荒川化学社)20重量部を添加したこと以外は、実施例1と同様にして粘着フィルムを得た。
【0033】(実施例4)2−ヒドロキシエチルメタクリレート0.1重量部を添加し、架橋剤として多官能アクリレートの1,6ヘキサンジオールジアクリレートの代わりにイソシアネート系架橋剤(コロネートHX、日本ポリウレタン)0.2重量部(固形分100%)を添加したこと以外は実施例3と同様にして粘着フィルムを得た。
【0034】(比較例1)ポリエチレングリコール2000000 を添加しないこと以外は、実施例3と同様にして粘着フィルムを得た。
【0035】(比較例2)親水性シリカを添加しないこと以外は、実施例3と同様にして粘着フィルムを得た。
【0036】実施例、比較例の評価結果を表1に示した。
【0037】
【表1】


【0038】
【発明の効果】本発明は、(メタ) アクリル酸アルキルエステルを主成分とするビニル系モノマーを光重合して粘着剤を製造するに際して、光重合を行う前の粘着剤用液状組成物の粘度を、親水性シリカおよびアルキレングリコール重合体を用いることにより、低コストで、簡便に、再現性良く増粘できる。しかも粘着剤用液状組成物に紫外線を当てて得られた重合物は、粘着剤としての物性をなんら損なうことがない。当方法を用いることにより、光重合法のメリットを活かして、厚膜の粘着剤層付きの粘着フィルム等を、高速でかつ低コストで得ることが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 (メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とするビニル系モノマー、親水性シリカ、アルキレングリコール重合体及び光重合開始剤が含有されてなる粘着剤用液状組成物を離型性担体又はフィルム用基材に塗布した後、紫外線を照射して前記ビニル系モノマーを重合することを特徴とする粘着フィルムの製造方法。
【請求項2】 粘着剤用液状組成物が、更にイソシアネート架橋剤が含有されてなることを特徴とする請求項1 記載の粘着フィルムの製造方法。
【請求項3】 ( メタ) アクリル酸アルキルエステルを主成分とするビニル系モノマー100重量部、親水性シリカ0.5〜5重量部、アルキレングリコール重合体0.0001〜3重量部及び光重合開始剤0.01〜5重量部が含有されてなる粘着剤用液状組成物を離型性担体又はフィルム用基材に塗布した後、紫外線を照射して前記ビニル系モノマーを重合することを特徴とする粘着フィルムの製造方法。
【請求項4】 ( メタ) アクリル酸アルキルエステルを主成分とするビニル系モノマー100重量部、親水性シリカ0.5〜5重量部、アルキレングリコール重合体0.0001〜3重量部、光重合開始剤0.01〜5重量部及びイソシアネート系架橋剤0.01〜3重量部が含有されてなる粘着剤用液状組成物を離型性フィルムフィルム用基材に塗布した後、紫外線を照射して前記ビニル系モノマーを重合することを特徴とする粘着フィルムの製造方法。
【請求項5】 ( メタ) アクリル酸アルキルエステルを主成分とするビニル系モノマー、親水性シリカ、アルキレングリコール重合体および光重合開始剤が含有されてなることを特徴とする請求項1記載の粘着フィルムの製造方法に用いられる粘着剤用液状組成物。
【請求項6】 ( メタ) アクリル酸アルキルエステルを主成分とするビニル系モノマー100重量部、親水性シリカ0.5〜5重量部、アルキレングリコール重合体0.0001〜3重量部、光重合開始剤0.01〜5重量部及びイソシアネート系架橋剤0.01〜3重量部が含有されてなることを特徴とする請求項4記載の粘着フィルムの製造方法に用いられる粘着剤用液状組成物。

【公開番号】特開2003−253225(P2003−253225A)
【公開日】平成15年9月10日(2003.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−52136(P2002−52136)
【出願日】平成14年2月27日(2002.2.27)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】