説明

粘着剤付フィルム及びその製造方法

【課題】ロール状に巻き取った際の巻ずれを防止しながら、粘着層の変形が抑えられ、さらに輸送中においても粘着層の変形が抑えられる表面平滑性の高い外観の優れた粘着剤付フィルムを提供する。
【解決手段】基材フィルムの片面に活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を塗布、硬化させた後、他方の面に粘着剤を塗布し、離型フィルムを貼り合わせ、硬化させる粘着剤付フィルムの製造方法において、前記基材フィルムの両端部に前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物及び前記粘着剤の未塗布領域1を設け、前記未塗布領域にスペーサーを挟み込みながら巻き取る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粘着剤付フィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラスチックフィルムはその加工性、透明性などに加えて、軽量、安価といったことから、種々の産業で使用されており、液晶ディスプレイやタッチパネル用としても広く用いられている。
【0003】
最近ではプラスチックフィルムの傷つき防止として、多官能アクリレートモノマーを主成分とした活性エネルギー線硬化型樹脂組成物をプラスチックフィルムに塗工したハードコートフィルムが用いられており、このようなフィルムを積層する目的で、背面に粘着層を設けたものが用いられている。このようなフィルムの加工においては、通常、ロール状の基材フィルムを巻き出し、連続的に活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を塗布、硬化させた後、さらにロール状に巻き取るという方法が取られている。粘着剤の塗布も同様である。
【0004】
【特許文献1】特開平11−92725号公報
【特許文献2】特開平6−286911号公報
【特許文献3】特開平9−316410号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、粘着剤は樹脂硬化物と比較して、相対的に柔らかいため、粘着塗布後に巻き取った際に、環境異物の混入による打痕や巻き締まりによるオレンジピールの発生が避けられない。このような問題を解決する目的で、粘着塗布後の巻き取りの際に、基材フィルム両端部にスペーサーを挿入し、フィルムを浮かせて巻くという方法が取られる。
【0006】
また、近年、ハードコートフィルムの傷つき防止性能の要求は高まっており、これに応えるため、樹脂組成物の塗布厚みを厚くするという方法があるが、塗布厚みが厚いと、表面張力の影響でフィルム両端部の厚みが著しく厚くなるため、巻姿が不安定になり、巻ずれが発生しやすくなる。これを回避するため、両端部をスリットする方法があるが、歩留まりが低下するためコストアップに繋がる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は基材フィルムの片面に活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を塗布、硬化させた後、他方の面に粘着剤を塗布し、離型フィルムを貼り合わせ、硬化させる粘着剤付フィルムにおいて、前記基材フィルムの両端部に前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物及び前記粘着剤の未塗布領域を設けて巻き取られてなることを特徴とする粘着剤付フィルム及びその製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の製造方法に従えば、ロール状に巻き取った際の巻ずれを防止しながら、両端部に挿入されたスペーサーがフィルムを支えることで粘着面にかかる圧力が大幅に緩和され、粘着層の変形が抑えられ、さらに輸送中においても粘着層の変形が抑えられる表面平滑性の高い外観の優れた粘着剤付フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明を図面に基づいて説明すれば、基材フィルムの片面に活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を、硬化後の厚みが5μm以上となるように塗布、硬化させた後、もう一方の面に粘着剤を塗布し、離型フィルムを貼り合わせ、硬化させることによって粘着剤付フィルムの製造する際、図1のように、基材フィルムの両端部に活性エネルギー線硬化型樹脂組成物及び粘着剤の未塗布領域を設け、さらに、図2のように、粘着塗布後にロール状に巻き取る際に、上記未塗布領域にスペーサーを挟み込みながら巻き取る。
【0010】
本発明に用いる基材フィルムの素材は特に限定されず、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン6、ナイロン66、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース、アセチルセルロースブチレート、セロファン、ポリスチレン、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリメチルテルペン、ポリエーテルスルフォン、ポリメタクリル酸メチル、ポリビニルアルコール、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、アクリル等を用いることができる。
【0011】
本発明に用いる活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、多官能アクリレートまたは多官能アクリルオリゴマーなどのように、活性エネルギー線の照射によって硬化可能な化合物を含有し、必要に応じて光重合開始剤を配合する。また塗布外観を良くするために、溶剤で希釈してもよい。具体的な製品としてはアイカ工業株式会社製アイカアイトロンZ−727(商品名)などが挙げられる。
【0012】
活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の塗布において、塗布厚みは硬化後5μm以上とし、フィルム両端部に5〜30mm巾の未塗布領域を設ける。塗布方法は特に制限はなく、公知の方法、例えばグラビアコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法などを用いることができる。
【0013】
本発明に用いる粘着剤は特に限定されず、アクリル系、ゴム系、または、シリコーン系粘着剤などを用いることができる。必要によって溶剤で希釈したものでもよい。
【0014】
粘着剤の塗布においても、基材フィルム両端部に未塗布領域を設ける。塗布方法、塗布厚みに関しては、特に制限はなく、公知の方法、例えばグラビアコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法などを用いることができる。
【0015】
粘着塗布後、ロール状に巻き取る際は、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の両端部の未塗布領域にスペーサーを挿入しながら巻き取る。スペーサーの素材はクッション性があれば特に限定されず、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース、ポリカーボネート、アクリルなどのプラスチックフィルム、銅箔、ステンレス箔などの金属箔、紙、あるいはこれらの積層体などを用いることができる。なかでもプラスチックフィルムがクッション性があり、巻きほどく際の離型がよく好ましい。スペーサーは未塗布領域よりも幅の狭いものを用いる。スペーサーの厚みは活性エネルギー線硬化型樹脂硬化物と粘着剤の合計厚みよりも、厚いもの、上限は合計厚みの2倍未満、を用いてクッション性を持たせる。
【0016】
以下、本発明について実施例、比較例を挙げてより詳細に説明するが、具体例を示すものであって特にこれらに限定するものではない。
【実施例】
【0017】
実施例1
ポリエステルフィルム(東レ株式会社製、商品名 125U483、厚み125μm、幅1320mm)に、乾燥、硬化後の厚みが8μmとなるように活性エネルギー線硬化型樹脂組成物(アイカ工業株式会社製、商品名 アイカアイトロンZ−727、不揮発分50%)を塗布した。塗布方法はグラビアコート法を用い、上記樹脂組成物を不揮発分42%に希釈した上で、85線のグラビアロールを使用し、ライン速度22m/min、周速比50〜70%の条件で塗布した。この際、フィルム両端部より20mmを未塗布領域とした。該フィルムを乾燥させ、紫外線を照射することでフィルムの片面に樹脂硬化物が塗布されたフィルムを得た。該フィルムの反対面に粘着剤を乾燥後の厚みが18μmとなるように塗布した。この際、フィルム両端部より20mmを未塗布領域とした。該フィルムを乾燥させた後、離型フィルムを貼り合わせ、巻き取りの際に未塗布領域にスペーサーとして、厚み50μm、幅10mmのポリエステルフィルムを挿入しながら巻き取り、500m巻のロールを作製した。続いて常温で1週間の養生を行い、粘着剤を硬化させた。
【0018】
比較例1
実施例1において、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の未塗布領域を設けないこと以外は実施例1と同様に実施した。
【0019】
比較例2
実施例1において、粘着塗布後の巻き取り時にスペーサーを挿入せずに巻き取った以外は実施例1と同様に実施した。
【0020】
比較例3
実施例1において、樹脂組成物の未塗布領域を設けないこと、及び粘着塗布後の巻き取り時にスペーサーを挿入せずに巻き取ったこと以外は実施例1と同様に実施した。
【0021】
凹み欠陥
ロールから長さ1mのシートサンプルを切り出し、蛍光灯下目視にて凹み欠陥の個数を数えた。
【0022】
オレンジピール
ロールから長さ1mのシートサンプルを切り出し、蛍光灯下目視にて粘着面を観察し、オレンジピール状の凹凸感のある面荒れを、強、中、弱、無し、の4段階で評価した。
【0023】
巻ずれ発生率
同一条件でロールを10本作製し、巻き取り時に20mm以上の巻ずれが発生したロールの割合を算出した。
【0024】
【表1】

【0025】
実施例1、比較例1は巻き取り時にスペーサーを挿入することにより、比較例2、3と比較し、凹み欠陥、オレンジピールが大幅に低減している。比較例1はフィルム両端部まで樹脂組成物が塗布された状態でスペーサーを挿入したため、実施例1と比較し、巻ずれ発生率が増加している。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の粘着剤付フィルムを示す構成断面図。
【図2】本発明の粘着剤付フィルムの積層断面図。
【符号の説明】
【0027】
1 未塗工領域



【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムの片面に活性エネルギー線硬化型樹脂組成物が塗布、硬化され、他方の面に粘着剤が塗布され、前記粘着剤の塗布面に離型フィルムが貼り合わされた粘着剤付フィルムであって、前記基材フィルムの両端部に前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物及び前記粘着剤の未塗布領域が設けられてなる粘着剤付フィルム。
【請求項2】
前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の未塗布領域にスペーサーが挟み込まれ、ロール状に巻き取られてなることを特徴とする請求項1記載の粘着剤付フィルム。
【請求項3】
前記スペーサーがプラスチックフィルムであることを特徴とする請求項2記載の粘着剤付フィルム。
【請求項4】
前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化後の厚みが5μm以上であることを特徴とする請求項1記載の粘着剤付フィルム。
【請求項5】
基材フィルムの片面に活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を塗布、硬化させた後、他方の面に粘着剤を塗布し、離型フィルムを貼り合わせ、硬化させる粘着剤付フィルムの製造方法において、前記基材フィルムの両端部に前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物及び前記粘着剤の未塗布領域を設けて巻き取ることを特徴とする粘着剤付フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の未塗布領域にスペーサーを挟み込むことを特徴とする粘着剤付フィルムの製造方法。
【請求項7】
前記スペーサーがプラスチックフィルムであることを特徴とする請求項6記載の粘着剤付フィルムの製造方法。
【請求項8】
前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化後の厚みが5μm以上であることを特徴とする請求項5記載の粘着剤付フィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−177005(P2012−177005A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−39585(P2011−39585)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000100698)アイカ工業株式会社 (566)
【Fターム(参考)】