説明

粘着剤組成物、粘着シート類及び表面保護フィルム

【課題】剥離した際に帯電防止されていない被着体の帯電防止が図れ、経時や高温下の処理を経た場合でも浮きの発生が抑制された、接着信頼性に優れる粘着剤組成物、並びにこれを用いた帯電防止性の粘着シート類、及び表面保護フィルムを提供する。
【解決手段】イオン性液体、エチレンオキシド基含有化合物、及びベースポリマーとしてガラス転移温度Tgが0℃以下のポリマーを含有してなることを特徴とする粘着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は帯電防止性を有する粘着剤組成物、及びこれを用いてシート状やテープ状などの形態とした帯電防止性の粘着シート類及び表面保護フィルムに関するものである。本発明の帯電防止性の粘着剤組成物からなる粘着シート類は、静電気が発生しやすいプラスチック製品などに好適に用いられる。なかでも特に、電子機器など静電気を嫌う用途で用いられる帯電防止性の粘着シート及び表面保護フィルムとして有用である。
【背景技術】
【0002】
表面保護フィルムは、一般的に保護フィルム側に塗布された粘着剤を介して被保護体に貼り合わせ、被保護体の加工、搬送時に生じる傷や汚れを防止する目的で用いられる。例えば、液晶ディスプレイのパネルに用いられる偏光板や波長板などの光学部材は傷や汚れなどを防止する目的で保護フィルムが粘着剤を介して貼り合わされている。
【0003】
そして、この光学部材が液晶セルに貼り合わされるなどして、保護フィルムが不要になった段階で保護フィルムは剥離して除去される。一般に保護フィルムや光学部材は、プラスチック材料により構成されているため、電気絶縁性が高く、摩擦や剥離の際に静電気を発生する。したがって、保護フィルムを偏光板などの光学部材から剥離する際にも静電気が発生する。静電気が残ったままの状態で、液晶に電圧を印加すると、液晶分子の配向が損失したり、パネルの欠損が生じたりする。そこで、このような不具合を防止するため、表面保護フィルムには各種帯電防止処理が施されている。
【0004】
例えば、低分子の界面活性剤を粘着剤に添加し、粘着剤中から界面活性剤を被着体に転写させて帯電防止する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、この発明は、界面活性剤を粘着剤表面にブリードさせて被着体に転写する発明であり、保護フィルムに適用した場合、被着体への汚染が避けられない。したがって、低分子の界面活性剤を添加した粘着剤を光学部材用保護フィルムに適用した場合には、光学部材の光学特性を損なう問題を有す。
【0005】
また、ポリエーテルポリオールとアルカリ金属塩からなる帯電防止剤をアクリル粘着剤に添加し、粘着剤表面に帯電防止剤がブリードするのを抑制する方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、この方法においても帯電防止剤のブリードは避けられず、その結果、実際に表面保護フィルムに適用した場合に、経時や高温下の処理を施すと、ブリード現象により被着体から表面保護フィルムが部分的に浮き上がると言う問題が発生することが判明した。
【特許文献1】特開平9−165460号公報
【特許文献2】特開平6−128539号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような事情に照らし、剥離した際に帯電防止されていない被着体の帯電防止が図れ、経時や高温下の処理を経た場合でも浮きの発生が抑制された、接着信頼性に優れる粘着剤組成物、並びにこれを用いた帯電防止性の粘着シート類、及び表面保護フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、以下に示す粘着剤組成物により上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の粘着剤組成物は、イオン性液体、エチレンオキシド基含有化合物、及びベースポリマーとしてガラス転移温度Tgが0℃以下のポリマーを含有してなることを特徴とする。ここで、イオン性液体とは、室温(25℃)で液状を呈する溶融塩(イオン性化合物)を指す。
【0009】
本発明によると、上記のイオン性液体が帯電防止剤として作用すると共に、これを用いることで、帯電防止剤のブリードが抑制され、経時や高温下においても被着体への接着信頼性に優れた粘着剤組成物が得られる。イオン性液体を用いることでブリードが抑制される理由の詳細は定かではないが、界面活性剤等と比較してベースポリマーへの相溶性が高いためと考えられる。また、イオン性液体はそれ自身で優れた導電性を示すため、被着体表面への汚染が微量でも十分な帯電防止能が得られる。さらに、本発明では、エチレンオキシド基含有化合物を併用することで、さらに帯電防止性に優れたものが得られる。エチレンオキシド基含有化合物を併用することで、さらに帯電防止性が向上する理由は定かではないが、フッ素などの非極性の材料に対して濡れ性が向上し、非極性の被着体に対しても優れた帯電防止能が得られると考えられる。また、イオン性液体は好ましくは室温にて液状であるため、固体の塩に比べて、粘着剤への添加および分散又は溶解が容易に行える。さらにイオン性液体は蒸気圧がない(不揮発性)のため、経時で消失することもなく、帯電防止特性が継続して得られる特徴を有する。
【0010】
上記において、前記イオン性液体が、含窒素オニウム塩、含硫黄オニウム塩、または含リンオニウム塩の何れか1種以上であることが好ましい。特に、前記イオン性液体が、下記一般式(A)〜(D)で表される一種以上のカチオンを含むことが好ましい。これらのカチオンを持つイオン性液体により、さらに帯電防止能の優れたものが得られる。
【0011】
【化1】

[式(A)中のRaは、炭素数4から20の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良く、RbおよびRcは、同一又は異なって、水素または炭素数1から16の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良い。但し、窒素原子が2重結合を含む場合、Rcはない。]
[式(B)中のRdは、炭素数2から20の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良く、Re、Rf、およびRgは、同一又は異なって、水素または炭素数1から16の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良い。]
[式(C)中のRhは、炭素数2から20の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良く、Ri、Rj、およびRkは、同一又は異なって、水素または炭素数1から16の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良い。]
[式(D)中のZは、窒素、硫黄、又はリン原子を表し、Rl、Rm、Rn、およびRoは、同一又は異なって、炭素数1から20の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良い。但しZが硫黄原子の場合、Roはない。]
また、前記エチレンオキシド基含有化合物が、エチレンオキシド基を有するポリエーテル系ポリマー又はアクリル系ポリマーであることが好ましい。エチレンオキシド基を有するポリエーテル系ポリマー又はアクリル系ポリマーを用いることで、イオン性液体およびベースポリマーとの相溶性が向上し、被着体へのブリードが抑制され、低汚染の粘着剤組成物が得られる。
【0012】
更に、ガラス転移温度Tgが0℃以下のポリマーが、炭素数1〜14のアルキル基を有すアクリレートおよび/またはメタクリレートの1種以上を主成分とするアクリル系ポリマーであることが好ましい。これらのアクリル系ポリマーにより、イオン性液体およびベースポリマーとの相溶性のバランスが良好となり、粘着特性を十分維持することができる。
【0013】
一方、本発明の粘着シート類は、支持体の片面または両面に上記いずれかに記載の粘着剤組成物を含む粘着剤層を有することを特徴とする。本発明の粘着シート類によると、上記の如き作用効果を奏する本発明の粘着剤組成物を使用するため、剥離した際に帯電防止されていない被着体の帯電防止が図れ、ブリードが抑制され、経時や高温下の処理を経た場合でも浮きの発生が抑制された、接着信頼性に優れる粘着シート類とすることができる。
【0014】
他方、本発明の表面保護フィルムは、支持体の片面または両面に上記いずれかに記載の粘着剤組成物を含む粘着剤層を有することを特徴とする。本発明の表面保護フィルムによると、上記の如き作用効果を奏する本発明の粘着剤組成物を使用するため、剥離した際に帯電防止されていない被着体の帯電防止が図れ、ブリードが抑制され、経時や高温下の処理を経た場合でも浮きの発生が抑制された、接着信頼性に優れる表面保護フィルムとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の粘着剤組成物は、イオン性液体、エチレンオキシド基含有化合物、及びベースポリマーとしてガラス転移温度Tgが0℃以下のポリマーを含有してなる。イオン性液体とは、室温(25℃)で液状を呈する溶融塩(イオン性化合物)を指す。
【0016】
イオン性液体としては、含窒素オニウム塩、含硫黄オニウム塩、または含リンオニウム塩が好ましく用いられ、特に優れた帯電防止能が得られる理由から下記一般式(A)〜(D)で表される有機カチオン成分と、アニオン成分からなるものが好ましく用いられる。
【0017】
【化2】

[式(A)中のRaは、炭素数4から20の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良く、RbおよびRcは、同一又は異なって、水素または炭素数1から16の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良い。但し、窒素原子が2重結合を含む場合、Rcはない。]
[式(B)中のRdは、炭素数2から20の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良く、Re、Rf、およびRgは、同一又は異なって、水素または炭素数1から16の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良い。]
[式(C)中のRhは、炭素数2から20の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良く、Ri、Rj、およびRkは、同一又は異なって、水素または炭素数1から16の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良い。]
[式(D)中のZは、窒素、硫黄、又はリン原子を表し、Rl、Rm、Rn、およびRoは、同一又は異なって、炭素数1から20の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良い。但しZが硫黄原子の場合、Roはない。]
式(A)で表されるカチオンとしてはピリジニウムカチオン、ピペリジニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、ピロリン骨格を有するカチオン、ピロール骨格を有するカチオンなどが挙げられる。具体例としては、1−エチルピリジニウムカチオン、1−ブチルピリジニウムカチオン、1−へキシルピリジニウムカチオン、1−ブチル−3−メチルピリジニウムカチオン、1−ブチル−4−メチルピリジニウムカチオン、1−へキシル−3−メチルピリジニウムカチオン、1−ブチル−3,4−ジメチルピリジニウムカチオン、1,1−ジメチルピロリジニウムカチオン、1−エチル−1−メチルピロリジニウムカチオン、1−メチル−1−プロピルピロリジニウムカチオン、2−メチル−1−ピロリンカチオン、1−エチル−2−フェニルインドールカチオン、1,2−ジメチルインドールカチオン、1−エチルカルバゾールカチオンが挙げられる。
【0018】
式(B)で表されるカチオンとしてはイミダゾリウムカチオン、テトラヒドロピリミジニウムカチオン、ジヒドロピリミジニウムカチオンなどが挙げられる。具体例としては、1,3−ジメチルイミダゾリウムカチオン、1,3−ジエチルイミダゾリウムカチオン、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−へキシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−オクチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−デシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−ドデシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−テトラデシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムカチオン、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムカチオン、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムカチオン、1−へキシル−2,3−ジメチルイミダゾリウムカチオン、1,3−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3−トリメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3,4−テトラメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3,5−テトラメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウムカチオン、1,3−ジメチル−1,4−ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,3−ジメチル−1,6−ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3−トリメチル−1,4−ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3−トリメチル−1,6−ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3,4−テトラメチル−1,4−ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3,4−テトラメチル−1,6−ジヒドロピリミジニウムカチオンなどが挙げられる。
【0019】
式(C)で表されるカチオンとしてはピラゾリウムカチオン、ビラゾリニウムカチオンなどが挙げられる。具体例としては、1−メチルピラゾリウムカチオン、3−メチルピラゾリウムカチオン、1−エチル−2−メチルピラゾリニウムカチオンなどが挙げられる。
【0020】
式(D)で表されるカチオンとしてはテトラアルキルアンモニウムカチオン、トリアルキルスルホニウムカチオン、テトラアルキルホスホニウムカチオンや、上記アルキル基の一部がアルケニル基やアルコキシル基、さらにはエポキシ基に置換されたものなどが挙げられる。
【0021】
具体例としては、テトラメチルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン、テトラブチルアンモニウムカチオン、テトラヘキシルアンモニウムカチオン、トリエチルメチルアンモニウムカチオン、トリブチルエチルアンモニウムカチオン、トリメチルデシルアンモニウムカチオン、N,N―ジエチル―N―メチル―N−(2−メトキシエチル)アンモニウムカチオン、グリシジルトリメチルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N,N−ジプロピルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N,N−ジヘキシルアンモニウムカチオン、N,N−ジプロピル−N,N−ジヘキシルアンモニウムカチオン、トリメチルスルホニウムカチオン、トリエチルスルホニウムカチオン、トリブチルスルホニウムカチオン、トリヘキシルスルホニウムカチオン、ジエチルメチルスルホニウムカチオン、ジブチルエチルスルホニウムカチオン、ジメチルデシルスルホニウムカチオン、テトラメチルホスホニウムカチオン、テトラエチルホスホニウムカチオン、テトラブチルホスホニウムカチオン、テトラヘキシルホスホニウムカチオン、トリエチルメチルホスホニウムカチオン、トリブチルエチルホスホニウムカチオン、トリメチルデシルホスホニウムカチオン、ジアリルジメチルアンモニウムカチオン、などが挙げられる。
【0022】
中でもトリエチルメチルアンモニウムカチオン、トリブチルエチルアンモニウムカチオン、トリメチルデシルアンモニウムカチオン、N,N―ジエチル―N―メチル―N−(2−メトキシエチル)アンモニウムカチオン、グリシジルトリメチルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−エチル−N−プロピルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ブチルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ペンチルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ヘキシルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ヘプチルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ノニルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−プロピル−N−ブチルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−プロピル−N−ペンチルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−プロピル−N−ヘキシルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−プロピル−N−ヘプチルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−ブチル−N−ヘキシルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−ブチル−N−ヘプチルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−ペンチル−N−ヘキシルアンモニウムカチオン、トリメチルヘプチルアンモニウムカチオン、N,N−ジエチル−N−メチル−N−プロピルアンモニウムカチオン、N,N−ジエチル−N−メチル−N−ペンチルアンモニウムカチオン、N,N−ジエチル−N−メチル−N−ヘプチルアンモニウムカチオン、N,N−ジエチル−N−プロピル−N−ペンチルアンモニウムカチオン、トリエチルメチルアンモニウムカチオン、トリエチルプロピルアンモニウムカチオン、トリエチルペンチルアンモニウムカチオン、トリエチルヘプチルアンモニウムカチオン、N,N−ジプロピル−N−メチル−N−エチルアンモニウムカチオン、N,N−ジプロピル−N−メチル−N−ペンチルアンモニウムカチオン、N,N−ジプロピル−N−ブチル−N−ヘキシルアンモニウムカチオン、N,N−ジブチル−N−メチル−N−ペンチルアンモニウムカチオン、N,N−ジブチル−N−メチル−N−ヘキシルアンモニウムカチオン、トリオクチルメチルアンモニウムカチオン、N−メチル−N−エチル−N−プロピル−N−ペンチルアンモニウムカチオンなどの非対称のテトラアルキルアンモニウムカチオン、ジエチルメチルスルホニウムカチオン、ジブチルエチルスルホニウムカチオン、ジメチルデシルスルホニウムカチオンなどのトリアルキルスルホニウムカチオン、トリエチルメチルホスホニウムカチオン、トリブチルエチルホスホニウムカチオン、トリメチルデシルホスホニウムカチオンなどの非対称のテトラアルキルホスホニウムカチオンが好ましく用いられる。
【0023】
一方、アニオン成分としては、イオン性液体になることを満足するものであれば特に限定されず、例えばCl、Br、I、AlCl、AlCl、BF、PF、ClO、NO、CHCOO、CFCOO、CHSO、CFSO、(CFSO、(CFSO、AsF、SbF、NbF、TaF、F(HF)n、(CN)、CSO、(CSO、CCOO、(CFSO)(CFCO)Nなどが用いられる。なかでも特に、フッ素原子を含むアニオン成分は、低融点のイオン性化合物が得られることから好ましく用いられる。
【0024】
本発明に用いられるイオン性液体の具体例としては、上記カチオン成分とアニオン成分の組み合わせから適宜選択して用いられ、1−ブチルピリジニウムテトラフルオロボレート、1−ブチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、1−ブチル−3−メチルピリジニウムテトラフルオロボレート、1−ブチル−3−メチルピリジニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−ブチル−3−メチルピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−ブチル−3−メチルピリジニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1−へキシルピリジニウムテトラフルオロボレート、2−メチル−1−ピロリンテトラフルオロボレート、1−エチル−2−フェニルインドールテトラフルオロボレート、1,2−ジメチルインドールテトラフルオロボレート、1−エチルカルバゾールテトラフルオロボレート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロアセテート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムヘプタフルオロブチレート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムペルフルオロブタンスルホネート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムジシアナミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロアセテート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘプタフルオロブチレート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムペルフルオロブタンスルホネート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−へキシル−3−メチルイミダゾリウムブロミド、1−へキシル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−へキシル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−へキシル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−へキシル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−オクチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−オクチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−へキシル−2,3−ジメチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−メチルピラゾリウムテトラフルオロボレート、3−メチルピラゾリウムテトラフルオロボレート、テトラヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ジアリルジメチルアンモニウムテトラフルオロボレート、ジアリルジメチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジアリルジメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ジアリルジメチルアンモニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、N,N―ジエチル―N―メチル―N−(2−メトキシエチル)アンモニウムテトラフルオロボレート、N,N―ジエチル―N―メチル―N−(2−メトキシエチル)アンモニウムトリフルオロメタンスルホネート、N,N―ジエチル―N―メチル―N−(2−メトキシエチル)アンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N―ジエチル―N―メチル―N−(2−メトキシエチル)アンモニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、グリシジルトリメチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホネート、グリシジルトリメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、グリシジルトリメチルアンモニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1−ブチルピリジニウム(トリフルオロメタンスルホニル)トリフルオロアセトアミド、1−ブチル−3−メチルピリジニウム(トリフルオロメタンスルホニル)トリフルオロアセトアミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム(トリフルオロメタンスルホニル)トリフルオロアセトアミド、N,N―ジエチル―N―メチル―N−(2−メトキシエチル)アンモニウム(トリフルオロメタンスルホニル)トリフルオロアセトアミド、ジアリルジメチルアンモニウム(トリフルオロメタンスルホニル)トリフルオロアセトアミド、グリシジルトリメチルアンモニウム(トリフルオロメタンスルホニル)トリフルオロアセトアミド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−プロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ブチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−へキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ノニルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N,N−ジプロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−プロピル−N−ブチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−プロピル−N−ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−プロピル−N−ヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−プロピル−N−ヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−ブチル−N−ヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−ブチル−N−ヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−ペンチル−N−ヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N,N−ジヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリメチルヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−プロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−ヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジエチル−N−プロピル−N−ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリエチルプロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリエチルペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリエチルヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジプロピル−N−メチル−N−エチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジプロピル−N−メチル−N−ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジプロピル−N−ブチル−N−へキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジプロピル−N,N−ジヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジブチル−N−メチル−N−ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジブチル−N−メチル−N−ヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリオクチルメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−メチル−N−エチル−N−プロピル−N−ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドなどが挙げられる。
【0025】
前記のようなイオン性液体は、市販のものを使用してもよいが、下記のようにして合成することも可能である。イオン性液体の合成方法としては、目的とするイオン性液体が得られれば特に限定されないが、一般的には、文献“イオン性液体−開発の最前線と未来−”[(株)シーエムシー出版発行]に記載されているような、ハロゲン化物法、水酸化物法、酸エステル法、錯形成法、および中和法などが用いられる。
【0026】
下記にハロゲン化物法、水酸化物法、酸エステル法、錯形成法、および中和法について含窒素オニウム塩を例にその合成方法について示すが、その他の含硫黄オニウム塩、含リンオニウム塩などその他のイオン性液体についても同様の手法により得ることができる。
【0027】
ハロゲン化物法は、下記式(1)〜(3)に示すような反応によって行われる方法である。まず3級アミンとハロゲン化アルキルと反応させてハロゲン化物を得る。(反応式(1)、ハロゲンとしては塩素、臭素、ヨウ素が用いられる)得られたハロゲン化物を目的とするイオン性液体のアニオン構造(A)を有する酸(HA)あるいは塩(MA、Mはアンモニウム、リチウム、ナトリウム、カリウムなど目的とするアニオンと塩を形成するカチオン)と反応させて目的とするイオン性液体(RNA)が得られる。
【0028】
【化3】

水酸化物法は、(4)〜(8)に示すような反応によって行われる方法である。まずハロゲン化物(RNX)をイオン交換膜法電解(反応式(4))、OH型イオン交換樹脂法(反応式(5))または酸化銀(AgO)との反応(反応式(6))で水酸化物(RNOH)を得る。(ハロゲンとしては塩素、臭素、ヨウ素が用いられる)得られた水酸化物を上記ハロゲン化法と同様に反応式(7)〜(8)の反応を用いて目的とするイオン性液体(RNA)が得られる。
【0029】
【化4】

酸エステル法は、(9)〜(11)に示すような反応によって行われる方法である。まず3級アミン(RN)を酸エステルと反応させて酸エステル物を得る。(反応式(9)、酸エステルとしては、硫酸、亜硫酸、りん酸、亜りん酸、炭酸などの無機酸のエステルやメタンスルホン酸、メチルホスホン酸、蟻酸などの有機酸のエステルなどが用いられる)得られた酸エステル物を上記ハロゲン化法と同様に反応式(10)〜(11)の反応の用いて目的とするイオン性液体(RNA)が得られる。また、酸エステルとしてメチルトリフルオロメタンスルホネート、メチルトリフルオロアセテートなどを用いることにより、直接イオン性液体を得ることもできる。
【0030】
【化5】

錯形成法は、(12)〜(15)に示すような反応によって行われる方法である。まず4級アンモニウムのハロゲン化物(RNX)、4級アンモニウムの水酸化物(RNOH)、4級アンモニウムの炭酸エステル化物(RNOCOCH)などをフッ化水素(HF)やフッ化アンモニウム(NHF)と反応させてフッ化4級アンモニウム塩を得る。(反応式(12)〜(14))得られたフッ化4級アンモニウム塩をBF,AlF,PF,ASF,SbF,NbF,TaFなどのフッ化物と錯形成反応により、イオン性液体を得ることができる。(反応式(15))
【0031】
【化6】

中和法は、(16)に示すような反応によって行われる方法である。3級アミンとHBF,HPF,CHCOOH,CFCOOH,CFSOH,(CFSONH,(CFSOCH,(CSONHなどの有機酸とを反応させることにより得ることができる。
【0032】
【化7】

上記の式(1)〜(16)記載のRは、水素または炭素数1から20の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良い。
【0033】
イオン性液体の配合量としては、使用するアクリル系ポリマーとイオン性液体の相溶性により変わるため一概に定義することができないが、一般的にはベースポリマー100重量部に対して、0.01〜40重量部が好ましく、0.03〜20重量部がより好ましく、0.05〜10重量%が最も好ましい。0.01重量部未満であると十分な帯電防止特性が得られず、40重量部を超えると被着体への汚染が増加する傾向がある。
【0034】
本発明におけるエチレンオキシド基含有化合物としては、エチレンオキシド基を有する化合物であれば特に限定されないが、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンジアミン、エチレングリコール基含有アクリル系ポリマー、エチレンオキシド基含有ポリエーテル系ポリマー、エチレンオキシド基含有ポリエーテルエステルアミド、エチレンオキシド基含有ポリエーテルアミドイミド、ポリオキシエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシソルビタン酸脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルなどが挙げられる。
【0035】
なかでも、エチレンオキシド基を有するポリエーテル系ポリマー又はアクリル系ポリマーが、ベースポリマーとの相溶性のバランスがとり易く好ましく用いられる。
【0036】
エチレンオキシド基含有ポリエーテル系ポリマーの具体例としては、ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールのブロック共重合体、ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコールのブロック共重合体、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコールのブロック共重合体、ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコールのランダム共重合体などのポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのランダム共重合体やブロック共重合体が挙げられる。グリコール鎖の末端は、水酸基のままや、アルキル基、フエニル基等で置換されていてもよい。
【0037】
これらポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのランダム共重合体やブロック共重合体のポリエチレングリコール比率としては5〜74重量%が好ましく、10〜70重量%がより好ましい。ポリエチレングリコール比率が5重量%未満であるとイオン性液体との相溶性が悪くなり、十分な帯電防止特性が得られにくくなる傾向があり、75重量%以上であると結晶性が高くなりアクリル系ポリマーとの相溶性が悪くなり十分な帯電防止特性が得られにくくなる傾向がある。
【0038】
エチレングリコール基含有アクリル系ポリマーとしては、エチレングリコール基含有(メタ)アクリレートを必須成分とするアクリル系ポリマーが用いられる。
【0039】
(メタ)アクリレートへのオキシエチレン単位の付加モル数としては、イオン性液体が配位する観点から1〜30、2〜20がより好ましい。エチレンオキシド鎖の末端は、水酸基のままや、アルキル基、フエニル基等で置換されていてもよい。
【0040】
エチレングリコール基含有(メタ)アクリレートの具体例としては、メトキシージエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシートリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどのメトキシ−ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート型、エトキシージエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシートリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどのエトキシーポリエチレングリコール(メタ)アクリレート型、ブトキシージエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシートリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどのブトキシーポリエチレングリコール(メタ)アクリレート型、フェノキシージエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシートリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどのフェノキシーポリエチレングリコール(メタ)アクリレート型、2−エチルヘキシルーポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノール−ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート型などが挙げられる。
【0041】
また、上記以外のモノマー成分として、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t‐ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n‐オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n‐ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n‐デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n‐ドデシル(メタ)アクリレート、n‐トリデシル(メタ)アクリレート、n‐テトラデシル(メタ)アクリレートなどの炭素数1〜14のアルキル基を有すアクリレートおよび/またはメタクリレートを用いることも可能である。
【0042】
さらには、リン酸基含有(メタ)アクリレート、シアノ基含有(メタ)アクリレート、ビニルエステル類、芳香族ビニル化合物、酸無水物基含有(メタ)アクリレート、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート、アミド基含有(メタ)アクリレート、アミノ基含有(メタ)アクリレート、エポキシ基含有(メタ)アクリレート、N−アクリロイルモルホリン、ビニルエーテル類を用いることも可能である。
【0043】
エチレングリコール基含有(メタ)アクリレートポリマー中に含まれるエチレングリコール基含有(メタ)アクリレートの比率としては10〜70重量%が好ましい。エチレングリコール基含有(メタ)アクリレートの比率が10重量%未満であるとイオン性液体との相溶性が悪くなり、十分な帯電特性が得られなくなり、70重量%を超えるとベースポリマーであるアクリル系ポリマーとの相溶性が悪くなり十分な帯電特性が得られなくなる。上記の(メタ)アクリレートは単独で用いても良いし、組み合わせて用いても良い。
【0044】
上記エチレンオキシド基含有ポリエーテル系ポリマーやエチレングリコール基含有(メタ)アクリレートポリマーの分子量としては、数平均分子量が10000以下のもの、好ましくは、200〜5000のものが好適に用いられる。数平均分子量が10000を超えると被着体への汚染性が悪化する傾向がある。数平均分子量はGPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定して得られたものをいう。
【0045】
エチレンオキシド基含有化合物の配合量としては、ベースポリマー100重量部に対して、0.01〜40重量部、好ましくは0.1重量部〜20重量部である。0.01重量部未満であると十分な帯電特性が得られず、40重量部を超えると被着体へのブリードが増加して、粘着力が低下する傾向にある。
【0046】
また、帯電防止特性の観点から、イオン性液体に対するエチレンオキシド基含有化合物の含有量比(後者/前者)を0.1〜1000にするのが好ましく、0.2〜100にするのがより好ましい。
【0047】
本発明では、帯電特性と被着体への汚染性とのバランスを良好にする観点から、イオン性液体とエチレンオキシド基含有化合物とを予め混合した溶液を調製し、これをベースポリマーに添加して粘着剤組成物を調製するのが好ましい。
【0048】
本発明では、ベースポリマーとしてガラス転移温度Tgが0℃以下のポリマーが用いられるが、好ましくはTgが−100〜−5℃であり、より好ましくはTgが−80〜−10℃である。ガラス転移温度Tgが0℃を超えると、イオン性液体を含有する場合でも、十分な粘着力を得るのが困難になる。
【0049】
かかるポリマーとしては、炭素数1〜14のアルキル基を有すアクリレートおよび/またはメタクリレートの1種または2種以上を主成分とするアクリル系ポリマー、天然ゴム、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SISブロック共重合体)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBSブロック共重合体)、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBSブロック共重合体)、スチレン−ブタジエンゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ブチルゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴムなどの粘着剤のポリマーとして一般的に適用されるポリマーが挙げられる。
【0050】
これらの中でもイオン性液体との相溶性のバランスおよび優れた粘着特性が得られることから炭素数1〜14のアルキル基を有すアクリレートおよび/またはメタクリレートの1種または2種以上を主成分とするアクリル系ポリマーが好ましく用いられる。
【0051】
炭素数1〜14のアルキル基を有すアクリレートおよび/またはメタクリレートの1種または2種以上を主成分とするアクリル系ポリマーとしては、炭素数が1〜14のアルキル基を有すアクリレートおよび/またはメタクリレート{以下(メタ)アクリレートと称す。}の1種または2種以上を50〜100重量%含有する単量体を主成分とした重量平均分子量10万以上のアクリル系ポリマーが用いられる。
【0052】
炭素数1〜14のアルキル基を有す(メタ)アクリレートの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、n−トリデシル(メタ)アクリレート、n−テトラデシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0053】
なかでも本発明の表面保護フィルムに用いるアクリル系ポリマーとしては、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、n−トリデシル(メタ)アクリレート、n−テトラデシル(メタ)アクリレートなどの炭素数6〜14のアルキル基を有す(メタ)アクリレートからなるアクリル系ポリマーが好適に用いられる。これらの炭素数6〜14のアルキル基を有す(メタ)アクリレートからなるアクリル系ポリマーを用いることにより、被着体への粘着力を低く制御することが容易となり、再剥離性に優れたものとなる。
【0054】
その他の成分としては、粘着性能のバランスが取りやすい理由からTgが0℃以下(通常−100℃以上)になるようにして、適宜スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、シアノ基含有モノマー、ビニルエステル類、芳香族ビニル化合物などの凝集力・耐熱性向上成分や、カルボキシル基含有モノマー、酸無水物基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマー、アミド基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、N−アクリロイルモルホリン、ビニルエーテル類等の接着力向上や架橋化基点として働く官能基を有す成分を用いることができる。その他の成分は1種または2種以上併用して用いることができる。
【0055】
但し、カルボキシル基、スルホン酸基、りん酸基などの酸官能基を有すアクリレートおよび/またはメタクリレートを用いる場合は、アクリル系ポリマーの酸価が29以下になるように調整する方が好ましい。アクリル系ポリマーの酸価が29を超えると、帯電防止特性が悪くなる傾向にある。
【0056】
酸価の調整は、酸官能基を有すアクリレートおよび/またはメタクリレートの配合量により調整でき、例えばカルボキシル基を有すアクリル系ポリマーとして2−エチルヘキシルアクリレートとアクリル酸を共重合したアクリル系ポリマーが挙げられるが、この場合、2−エチルヘキシルアクリレートとアクリル酸の合計量100重量部に対して、アクリル酸は3.7重量部以下に調整することで上記酸価の値を満足することが出来る。
【0057】
スルホン酸基含有モノマーとしては、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などがあげられる。
【0058】
リン酸基含有モノマーとしては2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートがあげられる。シアノ基含有モノマーとしてはアクリロニトリルがあげられる。ビニルエステル類としては酢酸ビニルがあげられる。芳香族ビニル化合物としてはスチレンがあげられる。
【0059】
カルボキシル基含有モノマーとしては(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸などがあげられる。
【0060】
酸無水物基含有モノマーとしては無水マレイン酸、無水イタコン酸などがあげられる。
【0061】
ヒドロキシル基含有モノマーとしては2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12−ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチルアクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ビニルアルコール、アリルアルコール、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテルなどがあげられる。
【0062】
アミド基含有モノマーとしてはアクリルアミド、ジエチルアクリルアミドがあげられる。アミノ基含有モノマーとしてはN,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートがあげられる。エポキシ基含有モノマーとしてはグリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテルなどがあげられる。ビニルエーテル類としてはビニルエチルエーテルがあげられる。
【0063】
前記アクリル系ポリマーは、溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合などアクリル系ポリマーの合成手法として一般的に用いられる重合方法によって得られる。
【0064】
本発明の粘着剤は、ベースポリマー、特にアクリル系ポリマーを適宜架橋することで、更に耐熱性に優れた粘着シート類が得られる。架橋方法の具体的手段としては、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物などアクリル系ポリマーに適宜架橋化基点として含ませたカルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基、アミド基などと反応しうる基を有する化合物を添加し反応させるいわゆる架橋剤を用いる方法がある。
【0065】
このうち、イソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネートなどの芳香族イソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族イソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族イソシアネートなどが挙げられる。中でも、主に適度な凝集力を得る観点から、イソシアネート化合物やエポキシ化合物が特に好ましく用いられる。これらの化合物は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0066】
より具体的には、イソシアネート化合物としては、たとえばブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの低級脂肪族ポリイソシアネート類、シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族イソシアネート類、2,4−トリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート類、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物(商品名コロネートL),トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネート3量体付加物(商品名コロネートHL)、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(商品名コロネートHX)[いずれも日本ポリウレタン工業(株)製]などのイソシアネート付加物などが挙げられる。
【0067】
エポキシ化合物としてはN,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン(商品名TETRAD−X)や1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン(商品名TETRAD−C)[いずれも三菱瓦斯化学(株)製]などが挙げられる。
【0068】
これらの架橋剤は単独で、または2種以上の混合系で使用される。架橋剤の使用量は、架橋すべきアクリル系ポリマーとのバランスにより、さらには、粘着シートとしての使用用途によって適宜選択される。アクリル粘着剤の凝集力により充分な耐熱性を得るには一般的には、上記アクリル系ポリマー100重量部に対して、0.01〜15重量部含有されていることが好ましく、0.5〜10重量部含有されていることがより好ましい。含有量が0.01重量部よりも少ない場合、架橋剤による架橋形成が不十分となり、粘着剤組成物の凝集力が小さくなって、十分な耐熱性が得られない場合もあり、また、糊残りの原因となる傾向がある。一方、含有量が15重量部を超える場合、ポリマーの凝集力が大きく、流動性が低下し、被着体への濡れが不十分となって、はがれの原因となる傾向がある。
【0069】
また、実質的な架橋剤として放射線反応性不飽和結合を2個以上有す多官能モノマーとして添加し、放射線などで架橋させることもできる。放射線反応性不飽和結合を2個以上有す多官能モノマーとしてはビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニルベンジル基の如き放射線の照射で架橋処理(硬化)しうる1種または2種以上の放射線反応性を2個以上有す多官能モノマー成分が用いられる。なお一般的には放射線反応性不飽和結合が10個以下のものが好適に用いられる。多官能モノマーは2種以上を併用することも可能である。
【0070】
多官能モノマーの具体例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6へキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、N,N’−メチレンビスアクリルアミドなど挙げられる。
【0071】
多官能モノマーの使用量は、架橋すべきアクリル系ポリマーとのバランスにより、さらには、粘着シートとしての使用用途によって適宜選択される。アクリル粘着剤の凝集力により充分な耐熱性を得るには一般的には、アクリル系ポリマー100重量部に対して0.1〜30重量部で配合するのが好ましい。また柔軟性、接着性の点からアクリル系ポリマー100重量部に対して、10重量部以下で配合するのがより好ましい。
【0072】
放射線としては、例えば、紫外線、レーザー線、α線、β線、γ線、x線、電子線などが挙げられるが、制御性および取り扱い性の良さ、コストの点から紫外線が好適に用いられる。より好ましくは、波長200〜400nmの紫外線が用いられる。紫外線は、高圧水銀灯、マイクロ波励起型ランプ、ケミカルランプなどの適宜光源を用いて照射することができる。なお、放射線として紫外線を用いる場合にはアクリル粘着剤に光重合開始剤を添加する。
【0073】
光重合開始剤としては、放射線反応性成分の種類に応じ、その重合反応の引金となり得る適当な波長の紫外線を照射することによりラジカルもしくはカチオンを生成する物質であればよい。
【0074】
光ラジカル重合開始剤として例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、o−ベンゾイル安息香酸メチル−p−ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、α−メチルベンゾイン等のベンゾイン類、ベンジルジメチルケタール、トリクロルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のアセトフェノン類、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2−ヒドロキシ−4’−イソプロピル−2−メチルプロピオフェノン等のプロピオフェノン類、ベンゾフェノン、メチルベンゾフェノン、p−クロルベンゾフェノン、p−ジメチルアミノベンゾフニノン等のベンゾフェノン類、2−クロルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−(エトキシ)−フェニルホスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド類、ベンジル、ジベンゾスベロン、α−アシルオキシムエステルなどが挙げられる。
【0075】
光カチオン重合開始剤として例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩等のオニウム塩や、鉄−アレン錯体、チタノセン錯体、アリールシラノール−アルミニウム錯体などの有機金属錯体類、ニトロベンジルエステル、スルホン酸誘導体、リン酸エステル、スルホン酸誘導体、リン酸エステル、フェノールスルホン酸エステル、ジアゾナフトキノン、N−ヒドロキシイミドスルホナートなどが挙げられる。上記光重合開始剤については、2種以上併用することも可能である。
【0076】
光重合開始剤は、アクリル系ポリマー100重量部に対し、通常0.1〜10重量部、好ましくは0.2〜7重量部の範囲で配合するのが好ましい。
【0077】
さらにアミン類などの光開始重合助剤を併用することも可能である。前記光開始助剤としては、2−ジメチルアミノエチルベンゾエート、ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステルなどがあげられる。上記光重合開始助剤については、2種以上併用することも可能である。重合開始助剤は、アクリル系ポリマー100重量部に対し、0.05〜10重量部、さらには0.1〜7重量部の範囲で配合するのが好ましい。
【0078】
さらに本発明の粘着シートに用いられる粘着剤には、従来公知の各種の粘着付与剤や表面潤滑剤、レベリング剤、酸化防止剤、腐食防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、シランカップリンング剤、無機または有機の充項剤、金属粉、顔料などの粉体、粒子状、箔状物などの従来公知の各種の添加剤を使用する用途に応じて適宜添加することが出来る。
【0079】
本発明の粘着シート類は、上記粘着剤を通常厚み3〜100μm、好ましくは5〜50μm程度となるようにポリエステルフィルムなどのプラスチックフィルムや、紙、不織布などの多孔質材料などからなる各種の支持体の片面または両面に塗布形成し、シート状やテープ状などの形態としたものである。特に表面保護フィルムの場合には支持体としてプラスチック基材が用いるのが好ましい。
【0080】
プラスチック基材としては、シート状やフィルム状に形成できるものであれば特に限定されるものでなく、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体などのポレオレフィンフィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリアクリレートフィルム、ポリスチレンフィルム、ナイロン6、ナイロン6,6、部分芳香族ポリアミドなどのポリアミドフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリカーボネートフィルムなどが挙げられる。前記フィルムの厚みは、通常5〜200μm、好ましくは10〜100μm程度である。
【0081】
プラスチック基材には、必要に応じて、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系若しくは脂肪酸アミド系の離型剤、シリカ粉等による離型および防汚処理や酸処理、アルカリ処理、プライマー処理、コロナ処理、プラズマ処理、紫外線処理などの易接着処理、塗布型、練り込み型、蒸着型などの静電防止処理をすることもできる。
【0082】
また、本発明の表面保護フィルムに使用するプラスチック基材は、帯電防止処理されたものがより好ましい。プラスチック基材に施される帯電防止処理としては特に限定されないが、一般的に用いられるフィルムの少なくとも片面に帯電防止層を設ける方法やプラスチックフィルムに練り込み型帯電防止剤を練り込む方法が用いられる。フィルムの少なくとも片面に帯電防止層を設ける方法としては、帯電防止剤と樹脂成分から成る帯電防止性樹脂や導電性ポリマー、導電性物質を含有する導電性樹脂を塗布する方法や導電性物質を蒸着あるいはメッキする方法があげられる。
【0083】
帯電防止性樹脂に含有される帯電防止剤としては、第4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、第1、第2、第3アミノ基などのカチオン性官能基を有するカチオン型帯電防止剤、スルホン酸塩や硫酸エステル塩、ホスホン酸塩、リン酸エステル塩などのアニオン性官能基を有するアニオン型帯電防止剤、アルキルベタインおよびその誘導体、イミダゾリンおよびその誘導体、アラニンおよびその誘導体などの両性型帯電防止剤、アミノアルコールおよびその誘導体、グリセリンおよびその誘導体、ポリエチレングリコールおよびその誘導体などのノニオン型帯電防止剤、更には、上記カチオン型、アニオン型、両性イオン型のイオン導電性基を有する単量体を重合もしくは共重合して得られたイオン導電性重合体があげられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0084】
具体的には、カチオン型の帯電防止剤として、たとえば、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アシロイルアミドプロピルトリメチルアンモニウムメトサルフェート、アルキルベンジルメチルアンモニウム塩、アシル塩化コリン、ポリジメチルアミノエチルメタクリレートなどの4級アンモニウム基を有する(メタ)アクリレート共重合体、ポリビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライドなどの4級アンモニウム基を有するスチレン共重合体、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドなどの4級アンモニウム基を有するジアリルアミン共重合体などがあげられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0085】
アニオン型の帯電防止剤として、たとえば、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエトキシ硫酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩、スルホン酸基含有スチレン共重合体があげられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0086】
両性イオン型の帯電防止剤として、たとえば、アルキルベタイン、アルキルイミダゾリウムベタイン、カルボベタイングラフト共重合があげられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0087】
ノニオン型の帯電防止剤として、たとえば、脂肪酸アルキロールアミド、ジ(2−ヒドロキシエチル)アルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、脂肪酸グリセリンエステル、ポリオキシエチレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンジアミン、ポリエーテルとポリエステルとポリアミドからなる共重合体、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどがあげられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0088】
導電性ポリマーとしては、たとえば、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンなどがあげられる。
【0089】
導電性物質としては、たとえば、酸化錫、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化チタン、酸化亜鉛、インジウム、錫、アンチモン、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、クロム、チタン、鉄、コバルト、ヨウ化銅、およびそれらの合金または混合物があげられる。
【0090】
帯電防止性樹脂および導電性樹脂に用いられる樹脂成分としては、ポリエステル、アクリル、ポリビニル、ウレタン、メラミン、エポキシなどの汎用樹脂が用いられる。なお、高分子型帯電防止剤の場合には、樹脂成分を含有させなくてもよい。また、帯電防止樹脂成分に、架橋剤としてメチロール化あるいはアルキロール化したメラミン系、尿素系、グリオキザール系、アクリルアミド系などの化合物、エポキシ化合物、イソシアネート系化合物を含有させることも可能である。
【0091】
帯電防止層の形成方法としては、たとえば、上記帯電防止性樹脂、導電性ポリマー、導電性樹脂を有機溶剤もしくは水などの溶媒で希釈し、この塗液をプラスチックフィルムに塗布、乾燥することで形成される。
【0092】
前記帯電防止層の形成に用いる有機溶剤としては、たとえば、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、シクロへキサノン、n‐へキサン、トルエン、キシレン、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノールなどがあげられる。これらの溶剤は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0093】
前記帯電防止層の形成における塗布方法については公知の塗布方法が適宜用いられ、具体的には、たとえば、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロ一ルブラッシュ、スプレーコート、エアーナイフコート、含浸およびカーテンコート法があげられる。
【0094】
前記帯電防止性樹脂層、導電性ポリマー、導電性樹脂の厚みとしては通常0.01〜5μm、好ましくは0.03〜1μm程度である。
【0095】
導電性物質の蒸着あるいはメッキの方法としては、たとえば、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、化学蒸着、スプレー熱分解、化学メッキ、電気メッキ法などがあげられる。
【0096】
前記導電性物質層の厚みとしては通常20〜10000Åであり、好ましくは50〜5000Åである。
【0097】
また練り込み型帯電防止剤としては、上記帯電防止剤が適宜用いられる。練り込み型帯電防止剤の配合量としては、プラスチックフィルムの総重量に対して20重量%以下、好ましくは0.05〜10重量%の範囲で用いられる。練り込み方法としては、前記帯電防止剤がプラスチックフィルムに用いられる樹脂に均一に混合できる方法であれば特に限定されず、たとえば、加熱ロール、バンバリーミキサー、加圧ニーダー、二軸混練機等が用いられる。
【0098】
プラスチック基材には、必要に応じて、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系若しくは脂肪酸アミド系の離型剤、シリカ粉等による離型および防汚処理や酸処理、アルカリ処理、プライマー処理、コロナ処理、プラズマ処理、紫外線処理などの易接着処理をすることもできる。
【0099】
粘着剤の塗布形成方法としては粘着テープの製造に用いられる公知の方法が用いられ、具体的にはロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、エアーナイフコート法などが挙げられる。
【0100】
本発明の粘着シート類は必要に応じて粘着面を保護する目的で粘着剤表面にセパレーターを貼り合わせることが可能である。セパレーターを構成する基材としては紙やプラスチックフィルムがあるが、表面平滑性に優れる点からプラスチックフィルムが好適に用いられる。
【0101】
そのフィルムとしては、前記粘着剤層を保護し得るフィルムであれば特に限定されず、例えばポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルムなどが挙げられる。
【0102】
前記フィルムの厚みは、通常5〜200μm、好ましくは10〜100μm程度である。前記フィルムの粘着剤層貼合面には、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系若しくは脂肪酸アミド系の離型剤、シリカ粉等により適宜離型剤処理が施されている。
【0103】
本発明を用いた粘着剤組成物、ならびに粘着シート類は、特に静電気が発生しやすいプラスチック製品などに用いられ、なかでも特に、液晶ディスプレイなどに用いられる偏光板、波長板、光学補償フィルム、光拡散シート、反射シートなどの光学部材表面を保護する目的で用いられる表面保護フィルムとして用いることができる。
【実施例】
【0104】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例等について説明する。なお、実施例等における評価項目は下記のようにして測定を行った。
【0105】
[酸価]
酸価は、平沼産業株式会社製自動滴定装置COM−550を用いて測定を行い、下記式より求めた。A={(Y−X)×f×5.611}/M
A;酸価、Y;サンプル溶液の滴定量(ml)、X;混合溶媒50gのみの溶液の滴定量(ml)、f;滴定溶液のファクター、M;ポリマーサンプルの重量(g)
測定条件は下記の通りである。サンプル溶液:ポリマーサンプル約0.5gを混合溶媒(トルエン/2−プロパノール/蒸留水=50/49.5/0.5、重量比)50gに溶解してサンプル溶液とした。滴定溶液:0.1N、2−プロパノール性水酸化カリウム溶液(和光純薬工業(株)社製、石油製品中和価試験用)、電極:ガラス電極;GE−101、比較電極;RE−201、測定モード:石油製品中和価試験1。
【0106】
[分子量]
分子量は、東ソー株式会社製GPC装置、HLC−8220GPCを用いて測定を行い、ポリステレン換算値にて求めた。測定条件は下記の通りである。サンプル濃度:0.2wt%(THF溶液)、サンプル注入量:10μl、溶離液:THF、流速:0.6ml/min、測定温度:40℃、カラム:サンプルカラム;TSKguardcolumn SuperHZ−H1本+TSKgelSuperHZM−H2本、リファレンスカラム;TSKgel SuperH−RC1本、検出器:示差屈折計。
【0107】
[ガラス転移温度]
ガラス転移温度Tg(℃)は、各モノマーによるホモポリマーのガラス転移温度Tgn(℃)として下記の文献値を用い、下記の式により求めた。
式:1/(Tg+273)=Σ〔Wn/(Tgn+273)〕
〔式中、Tg(℃)は共重合体のガラス転移温度、Wn(−)は各モノマーの重量分率、Tgn(℃)は各モノマーによるホモポリマーのガラス転移温度、nは各モノマーの種類を表す。〕
2−エチルヘキシルアクリレート:−70℃
イソノニルアクリレート:−82℃
2−ヒドロキシエチルアクリレート:−15℃
エトキシ−ジエチレングリコールアクリレート:−70℃
製造例1(アクリル系ポリマー(A))
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた四つ口フラスコに2−エチルヘキシルアクリレート200重量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート8重量部、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.4重量部、酢酸エチル312重量部を仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入し、フラスコ内の液温を65℃付近に保って6時間重合反応を行い、アクリル系ポリマー(A)の溶液(40重量%)を調製した。このアクリル系ポリマー(A)は、Tg=−68℃、重量平均分子量50万、酸価0.0であった。
【0108】
製造例2(アクリル系ポリマー(B))
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた四つ口フラスコにイソノニルアクリレート200重量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート8重量部、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.4重量部、酢酸エチル312重量部を仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入し、フラスコ内の液温を65℃付近に保って6時間重合反応を行い、アクリル系ポリマー(B)の溶液(40重量%)を調製した。このアクリル系ポリマー(B)は、Tg=−80℃、重量平均分子量54万、酸価0.0であった。
【0109】
製造例3(アリルポリマー(C))
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた四つ口フラスコに2−エチルヘキシルアクリレート200重量部、重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン[チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製イルガキュア184]0.1重量部、ベンジルジメチルケタール[チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製イルガキュア651]0.1重量部を仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入し、高圧水銀灯(東芝ライテック社製,SHL−100UVQ−2)による紫外線照射を約3分間にて重合反応を行い、重合率10%の部分重合物(シロップ状)であるアリルポリマー(C)の溶液を調製した。このアリルポリマー(C)は、Tg=−70℃、重量平均分子量220万、酸価0.0であった。
【0110】
製造例4(アリルポリマー(D))
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた四つ口フラスコに2−エチルヘキシルアクリレート140重量部、エトキシ−ジエチレングリコールアクリレート60重量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート8重量部、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.4重量部、酢酸エチル218重量部、トルエン94重量部を仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入し、フラスコ内の液温を65℃付近に保って約6時間重合反応を行い、アクリル系ポリマー(D)の溶液(40重量%)を調製した。このアクリル系ポリマー(D)は、Tg=−68℃、重量平均分子量50万、酸価0.0であった。
【0111】
製造例5(アリルポリマー(E))
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた四つ口フラスコにトルエン120重量部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル10重量部を添加し、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入し、液温を85℃にする。2−エチルヘキシルアクリレート50重量部、エトキシ−ジエチレングリコールアクリレート50重量部、α−メチルスチレンダイマー10重量部を液温85℃に保ちながら2時間かけて徐々に添加し重合反応を行う。添加終了後、更に液温を85℃に保ちながら1時間重合反応を行い、アクリル系ポリマー(E)の溶液(42重量%)を調製した。アクリル系ポリマー(E)の溶液(42重量%)を130℃で1時間乾燥させ、エチレングリコール基含有アクリレート比率50重量%のアクリル系ポリマー(E)(100重量%)を得た。このアクリル系ポリマー(E)の重量平均分子量3000であった。
【0112】
製造例6(帯電防止剤(A))
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた四つ口フラスコにN,N―ジエチル―N―メチル―N−(2−メトキシエチル)アンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(25℃で液状)5重量部、ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールのブロック共重合体(数平均分子量2,000、エチレングリコール比率50重量%)5重量部、酢酸エチル90重量部を仕込み、フラスコ内の液温を常温(25℃)付近に保って30分間混合攪拌を行い、帯電防止剤(A)の溶液(10重量%)を調製した。
【0113】
製造例7(帯電防止剤(B))
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた四つ口フラスコにN,N―ジエチル―N―メチル―N−(2−メトキシエチル)アンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(25℃で液状)5重量部、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコールのブロック共重合体(数平均分子量2,000、エチレングリコール比率10重量%)5重量部、酢酸エチル90重量部を仕込み、フラスコ内の液温を常温(25℃)付近に保って30分間混合攪拌を行い、帯電防止剤(B)の溶液(10重量%)を調製した。
【0114】
製造例8(帯電防止剤(C))
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた四つ口フラスコに1−ブチル−3−メチルピリジニウムトリフルオロメタンスルホネート(25℃で液状)5重量部、ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールのブロック共重合体(数平均分子量2,000、エチレングリコール比率50重量%)5重量部、酢酸エチル90重量部を仕込み、フラスコ内の液温を常温(25℃)付近に保って30分間混合攪拌を行い、帯電防止剤(C)の溶液(10重量%)を調製した。
【0115】
製造例9(帯電防止剤(D))
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた四つ口フラスコに1−ブチル−3−メチルピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(25℃で液状)5重量部、ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールのブロック共重合体(数平均分子量2,000、エチレングリコール比率50重量%)5重量部、酢酸エチル90重量部を仕込み、フラスコ内の液温を常温(25℃)付近に保って約30分間混合攪拌を行い、帯電防止剤(D)の溶液(10重量%)を調製した。
【0116】
製造例10(帯電防止剤(E))
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた四つ口フラスコに1−ブチル−3−メチルピリジニウムトリフルオロメタンスルホネート(25℃で液状)5重量部、ポリプロピレングリコール(数平均分子量700)5重量部、酢酸エチル90重量部を仕込み、フラスコ内の液温を常温(25℃)付近に保って30分間混合攪拌を行い、帯電防止剤(E)の溶液(10重量%)を調製した。
【0117】
製造例11(帯電防止剤(F))
攪拌羽根、温度計、冷却器を備えた四つ口フラスコに過塩素酸リチウム(融点236℃)0.2重量部、ポリプロピレングリコール(ジオール型、数平均分子量2,000)9.8重量部、酢酸エチル10重量部を仕込み、フラスコ内の液温を80℃付近に保って2時間混合攪拌を行い、帯電防止剤(F)の溶液(50重量%)を調製した。
【0118】
製造例12(帯電防止剤(G))
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた四つ口フラスコにN,N―ジエチル―N―メチル―N−(2−メトキシエチル)アンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(25℃で液状)5重量部、アクリル系ポリマー(E)5重量部、酢酸エチル90重量部を仕込み、フラスコ内の液温を常温(25℃)付近に保って約30分間混合攪拌を行い、帯電防止剤(G)の溶液(10重量%)を調製した。
【0119】
製造例13(帯電防止剤(H))
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた四つ口フラスコに脂環族アミン系イオン性液体(広栄化学工業社製、品名:IL−A1、25℃で液状)5重量部、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコールのブロック共重合体(数平均分子量2,000、エチレングリコール比率10重量%)5重量部、酢酸エチル90重量部を仕込み、フラスコ内の液温を常温(25℃)付近に保って約30分間混合攪拌を行い、帯電防止剤(H)の溶液(10重量%)を調製した。
【0120】
製造例14(帯電防止処理フィルム)
帯電防止剤〔(株)ソルベックス社製、マイクロソルバーRMd−142、酸化スズとポリエステル樹脂を主成分とする〕10重量部を水30重量部とメタノール70重量部からなる混合溶媒で希釈することにより帯電防止剤溶液を調製した。得られた帯電防止剤溶液を、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ38μm)上にマイヤーバーを用いて塗布し、130℃で1分間乾燥することにより溶剤を除去して帯電防止層(厚さ0.2μm)を形成し、帯電防止処理フィルムを作製した。
【0121】
実施例1(粘着剤組成物の調製)
アクリル系ポリマー(A)の溶液(40重量%)を酢酸エチルで20重量%に希釈し、この溶液100重量部に帯電防止剤(A)の溶液(10重量%)を1重量部、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(日本ポリウレタン工業(株)社製 コロネートHX)0.8重量部、架橋触媒としてジラウリン酸ジブチルスズ(1重量%酢酸エチル溶液)0.4重量部を加えて、常温(25℃)下で約1分間混合攪拌を行ってアクリル粘着剤溶液(1)を調製した。
【0122】
(粘着シートの作製)
上記アクリル粘着剤溶液(1)を、前記の帯電防止処理フィルムの帯電防止処理面とは反対の面に塗布し、110℃で3分間加熱して、厚さ20μmの粘着剤層を形成した。次いで、前記粘着剤層の表面に、片面にシリコーン処理を施した厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムのシリコーン処理面を貼合せて粘着シートを作製した。
【0123】
実施例2(粘着剤組成物の調製)
帯電防止剤(A)の溶液1重量部に代えて帯電防止剤(B)の溶液(10重量%)を1重量部を用いたこと以外は実施例1と同様にしてアクリル粘着剤溶液(2)を調製した。
【0124】
(粘着シートの作製)
アクリル粘着剤溶液(1)に代えてアクリル粘着剤溶液(2)を用いたこと以外は実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
【0125】
実施例3(粘着剤組成物の調製)
帯電防止剤(A)の溶液1重量部に代えて帯電防止剤(C)の溶液(10重量%)を2重量部を用いたこと以外は実施例1と同様にしてアクリル粘着剤溶液(3)を調製した。
【0126】
(粘着シートの作製)
アクリル粘着剤溶液(1)に代えてアクリル粘着剤溶液(3)を用いたこと以外は実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
【0127】
実施例4(粘着剤組成物の調製)
帯電防止剤(A)の溶液1重量部に代えて帯電防止剤(D)の溶液(10重量%)を2重量部を用いたこと以外は実施例1と同様にしてアクリル粘着剤溶液(4)を調製した。
【0128】
(粘着シートの作製)
アクリル粘着剤溶液(1)に代えてアクリル粘着剤溶液(4)を用いたこと以外は実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
【0129】
実施例5(粘着剤組成物の調製)
アクリル系ポリマー(A)の溶液(40重量%)を酢酸エチルで20重量%に希釈した溶液100重量部に代えて、アクリル系ポリマー(B)の溶液(40重量%)を酢酸エチルで20重量%に希釈した溶液100重量部を用いたこと以外は実施例4と同様にしてアクリル粘着剤溶液(5)を調製した。
【0130】
(粘着シートの作製)
アクリル粘着剤溶液(1)に代えてアクリル粘着剤溶液(5)を用いたこと以外は実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
【0131】
実施例6(粘着剤組成物の調製)
アクリル系ポリマー(C)の溶液100重量部に、N,N―ジエチル―N―メチル―N−(2−メトキシエチル)アンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(25℃で液状)0.15重量部、ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールのブロック共重合体(数平均分子量2,000、エチレングリコール比率50重量%)0.15重量部を加えて、常温(25℃)下で約1時間混合攪拌を行った後、多官能モノマーとしてトリメチロールプロパントリアクリレート1.5重量部、重合開始剤としてベンジルジメチルケタール[チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製イルガキュア651]0.1重量部を加えて、常温(25℃)下で約1分間混合攪拌を行ってアクリル粘着剤溶液(6)を調製した。
【0132】
(粘着シートの作製)
上記アクリル粘着剤溶液(6)を、前記の帯電防止処理フィルムの帯電防止処理面とは反対の面に塗布し、厚さ20μmの粘着剤層を形成した。次いで、前記粘着剤層の表面に、片面にシリコーン処理を施した厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムのシリコーン処理面を貼合せた。このフィルムシートを、高圧水銀灯(ウシオ電機社製、UVL−4000−N)にて紫外線照射(照度37mW/cm、光量660mJ/cm)を行うことにより粘着シートを作製した。
【0133】
実施例7(粘着剤組成物の調製)
アクリル系ポリマー(A)の溶液(40重量%)を酢酸エチルで20重量%に希釈し、この溶液100重量部に帯電防止剤(G)の溶液(10重量%)を2重量部、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(日本ポリウレタン工業(株)社製 コロネートHX)0.6重量部、架橋触媒としてジラウリン酸ジブチルスズ(1重量%酢酸エチル溶液)0.4重量部を加えて、常温(25℃)下で約1分間混合攪拌を行ってアクリル粘着剤溶液(7)を調製した。
【0134】
(粘着シートの作製)
アクリル粘着剤溶液(1)に代えてアクリル粘着剤溶液(7)を用いたこと以外は実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
【0135】
実施例8(粘着剤組成物の調製)
アクリル系ポリマー(A)の溶液(40重量%)を酢酸エチルで20重量%に希釈し、この溶液100重量部に帯電防止剤(H)の溶液(10重量%)を1.6重量部、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(日本ポリウレタン工業(株)社製 コロネートHX)0.3重量部、架橋触媒としてジラウリン酸ジブチルスズ(1重量%酢酸エチル溶液)0.4重量部を加えて、常温(25℃)下で約1分間混合攪拌を行ってアクリル粘着剤溶液(8)を調製した。
【0136】
(粘着シートの作製)
アクリル粘着剤溶液(1)に代えてアクリル粘着剤溶液(8)を用いたこと以外は実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
【0137】
比較例1
帯電防止剤(A)の溶液1重量部に代えて1−ブチル−3−メチルピリジニウムトリフルオロメタンスルホネートを(25℃で液状)0.2重量部用いたこと以外は実施例1と同様にしてアクリル粘着剤溶液(8)を調製した。アクリル粘着剤溶液として、このアクリル粘着剤溶液(8)を用いたこと以外は実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
【0138】
比較例2
帯電防止剤(A)の溶液1重量部に代えてN,N―ジエチル―N―メチル―N−(2−メトキシエチル)アンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(25℃で液状)を0.05重量部用いたこと以外は実施例1と同様にしてアクリル粘着剤溶液(9)を調製した。アクリル粘着剤溶液として、このアクリル粘着剤溶液(9)を用いたこと以外は実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
【0139】
比較例3
帯電防止剤(A)の溶液1重量部に代えて、1−ブチル−3−メチルピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(25℃で液状)0.2重量部を用いたこと以外は実施例1と同様にしてアクリル粘着剤溶液(10)を調製した。アクリル粘着剤溶液として、このアクリル粘着剤溶液(10)を用いたこと以外は実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
【0140】
比較例4
帯電防止剤(A)の溶液1重量部に代えて帯電防止剤(E)の溶液(10重量%)を2重量部用いたこと以外は実施例1と同様にしてアクリル粘着剤溶液(11)を調製した。アクリル粘着剤溶液として、このアクリル粘着剤溶液(11)を用いたこと以外は実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
【0141】
比較例5(粘着剤組成物の調製)
アクリル系ポリマー(A)の溶液(40重量%)を酢酸エチルで20重量%に希釈した溶液100重量部に、帯電防止剤(F)の溶液(50重量%)を4重量部、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物(日本ポリウレタン工業(株)製、コロネートL)0.53重量部、架橋触媒としてジラウリン酸ジブチルスズ(1重量%酢酸エチル溶液)0.4重量部を加えて、常温(25℃)下で約1分間混合攪拌を行ってアクリル粘着剤溶液(12)を調製した。
【0142】
(粘着シートの作製)
アクリル粘着剤溶液として、このアクリル粘着剤溶液(12)を用いたこと以外は実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
【0143】
比較例6(粘着剤組成物の調製)
アクリル系ポリマー(D)の溶液(40重量%)を酢酸エチルで20重量%に希釈し、この溶液100重量部に、N,N―ジエチル―N―メチル―N−(2−メトキシエチル)アンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(25℃で液状)0.2重量部、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(日本ポリウレタン工業(株)社製 コロネートHX)0.8重量部、架橋触媒としてジラウリン酸ジブチルスズ(1重量%酢酸エチル溶液)0.4重量部を加えて、常温(25℃)下で約1分間混合攪拌を行ってアクリル粘着剤溶液(13)を調製した。
【0144】
(粘着シートの作製)
アクリル粘着剤溶液として、このアクリル粘着剤溶液(13)を用いたこと以外は実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
【0145】
上記の実施例、比較例等で得られた粘着シートについて、以下の要領で、剥離帯電圧、浮きの発生および粘着力を評価した。
【0146】
[剥離帯電圧]
粘着シートを幅70mm、長さ130mmのサイズにカットし、セパレーターを剥離した後、あらかじめ除電しておいた厚み1mm、幅70mm、長さ100mmのアクリル板に貼り合わせたフッ素化合物により表面処理された偏光板[日東電工(株)社製、SEG1224DUARC150T、サイズ;幅70mm、長さ100mm]表面に片方の端部が30mmはみ出すようにハンドローラーにて圧着する。23℃×50%RHの環境下に一日放置した後、図1に示すように所定の位置にサンプルをセットする。30mmはみ出した片方の端部を自動巻取り機に固定し、剥離角度150°、剥離速度10m/minとなるように剥離する。このときに発生する偏光板表面の電位を所定の位置に固定してある電位測定機[春日電機(株)社製KSD−0103]にて測定した。測定は、23℃×50%RHの環境下で行った。
【0147】
[浮きの発生]
フッ素樹脂により表面処理された偏光板[日東電工(株)社製、SEG1224DUARC150T]に粘着シートを0.25MPaの圧力でラミネートしたサンプルを幅30mm、長さ30mmのサイズにカットし、偏光板側に貼り合わされているセパレーターを剥離した。これを、厚み1.3mm、幅65mm、長さ165mmのスライドグラス(松浪硝子工業(株)、水縁磨)にハンドローラーにて圧着し評価サンプルとする。これを23℃の環境下に一日放置した後、50℃×5atmの環境で40分間オートクレーブ処理を行う。その後、80℃の環境で2時間放置した後、偏光板から粘着シートが浮いているかどうかを目視にて確認した。評価基準は浮きの発生が認められない場合を○、浮きの発生が認められる場合を×とした。
【0148】
[粘着力測定]
厚み90μmのトリアセチルセルロースフィルム[富士写真フィルム(株)製、フジタック]を幅70mm、長さ100mmにカットし、60℃の水酸化ナトリウム水溶液(10重量%)に1分間浸漬した後、蒸留水にて洗浄し被着体を作製した。上記被着体を23℃×50%RHの環境で1日放置した後、幅25mm、長さ100mmのサイズにカットした粘着シートを0.25MPaの圧力でラミネートし、評価サンプルを作製した。ラミネート後30分間放置した後、万能引張試験機にて剥離速度10m/分、剥離角度180°で剥離したときの粘着力を測定した。測定は23℃×50%RHの環境で行った。
【0149】
以上の結果を表1に示す。
【0150】
【表1】

上記表1の結果から明らかなように、本発明の実施例1〜8の粘着シートは、偏光板への剥離帯電圧が抑制され、かつ、浮きの発生もないことが明らかとなった。これに対して、エチレンオキシド基含有化合物を含有していない比較例1、2、3及び6では、フッ素化合物により表面処理された偏光板への剥離帯電圧が高い結果となった。また、エチレンオキシド基の含有比率が0重量%であるポリエーテルポリオールを用いた比較例4では、フッ素化合物により表面処理された偏光板への剥離帯電圧が高い結果となった。さらに、ポリエーテルポリオールとアルカリ金属塩からなる帯電防止剤を用いた比較例5では、偏光板への剥離耐電圧は低く抑えられているが、浮きの発生が認められる結果となった。このように比較例1〜6の粘着シートでは、剥離帯電圧の抑制と、浮きの発生の抑制とを両立させることができなかった。
【図面の簡単な説明】
【0151】
【図1】実施例等で剥離帯電圧の測定に使用した電位測定部の概略構成図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン性液体、エチレンオキシド基含有化合物、及びベースポリマーとしてガラス転移温度Tgが0℃以下のポリマーを含有してなることを特徴とする粘着剤組成物。
【請求項2】
前記イオン性液体が、含窒素オニウム塩、含硫黄オニウム塩、または含リンオニウム塩の何れか1種以上である請求項1記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
前記イオン性液体が、下記一般式(A)〜(D)で表される一種以上のカチオンを含む請求項1又は2に記載の粘着剤組成物。
【化1】

[式(A)中のRaは、炭素数4から20の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良く、RbおよびRcは、同一又は異なって、水素または炭素数1から16の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良い。但し、窒素原子が2重結合を含む場合、Rcはない。]
[式(B)中のRdは、炭素数2から20の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良く、Re、Rf、およびRgは、同一又は異なって、水素または炭素数1から16の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良い。]
[式(C)中のRhは、炭素数2から20の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良く、Ri、Rj、およびRkは、同一又は異なって、水素または炭素数1から16の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良い。]
[式(D)中のZは、窒素、硫黄、又はリン原子を表し、Rl、Rm、Rn、およびRoは、同一又は異なって、炭素数1から20の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良い。但しZが硫黄原子の場合、Roはない。]
【請求項4】
前記エチレンオキシド基含有化合物が、エチレンオキシド基を有するポリエーテル系ポリマー又はアクリル系ポリマーである請求項1〜3いずれかに記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
ガラス転移温度Tgが0℃以下のポリマーが、炭素数1〜14のアルキル基を有すアクリレートおよび/またはメタクリレートの1種以上を主成分とするアクリル系ポリマーである請求項1〜4いずれかに記載の粘着剤組成物。
【請求項6】
支持体の片面または両面に請求項1〜5いずれかに記載の粘着剤組成物を含む粘着剤層を有することを特徴とする粘着シート類。
【請求項7】
支持体の片面または両面に請求項1〜5いずれかに記載の粘着剤組成物を含む粘着剤層を有することを特徴とする表面保護フィルム。

【図1】
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【公開番号】特開2006−16595(P2006−16595A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−70742(P2005−70742)
【出願日】平成17年3月14日(2005.3.14)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】