説明

粘着剤組成物、粘着剤、両面粘着シート、光学部材用粘着剤、タッチパネル

【課題】 酸性基を含有しないため耐腐食性に優れ、かつ高い凝集力・粘着力をもつため
に耐久性等の光学特性にも優れる粘着剤、とりわけ光学部材用粘着剤の提供する。
【解決手段】 メチルアクリレート(a1)とn−ブチルアクリレート(a2)を(a1):(a2)=3:7〜7:3(重量比)で含有する共重合成分を共重合してなる、酸性基を有しないアクリル系樹脂(A)を主成分として含有してなることを特徴とする粘着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物、粘着剤(感圧接着剤)、ならびに両面粘着シート、光学部材用粘着剤、それを用いて得られるタッチパネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
粘着剤には、被着体を強固に長期間貼り合わせることを目的とする強粘着性の粘着剤や、貼り付け後に被着体から剥離することを前提とする剥離タイプの粘着剤など様々なタイプが存在しており、各種分野ごとに最適の粘着剤が設計され、使用されている。
例えば、強粘着性を示すタイプの粘着剤については、通常、粘着剤中に酸性の官能基を多く導入したり、粘着付与樹脂を大量に使用したりすることによって高い粘着力が付与されており、種々の強粘着性が必要とされる分野で使用されている。
【0003】
また、使用用途によっても、例えば、電子部材、特に精密電子部材に貼り合わせて用いる情報ラベル用途や、電子部材固定用途で使用する粘着剤には、腐食等の問題により酸を用いないタイプ(酸フリー)の粘着剤が使用されており(例えば、特許文献1参照。)、特にタッチパネル等に用いられるITO透明電極やPDP等に用いられる金属メッシュ等の金属及び金属酸化物等が使用される電子ディスプレイ等の光学機器や、デジタル万能ディスク等の光学的記録ディスク(光学的記録媒体)などの光学用途で使用する粘着剤には、耐腐食性に加えて、耐熱性等の厳しい耐久性が必要となるので、凝集力が高く、更に粘着力も高く透明な粘着剤が使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−268335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、光学用途で使用される強粘着性の粘着剤に耐腐食性が求められる場合には、腐食の問題を解決するために特許文献1のような酸フリーの粘着剤を用いると、光学用途の粘着剤に不可欠な、高い凝集力・粘着力が得られなくなってしまうこととなり、依然として両性能を両立させることは困難であった。
【0006】
そこで、本発明ではこのような背景下において、酸性基を含有せず、耐腐食性に優れ、かつ高い凝集力・粘着力を持ち、耐久性や光学特性にも優れる粘着剤、とりわけ光学部材用粘着剤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
しかるに本発明者は、かかる事情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、アクリル系樹脂の共重合成分として通常一般的に用いられる(メタ)アクリル酸等の酸性基を有する化合物を含まない場合においても、共重合モノマー成分としてメチルアクリレートとn−ブチルアクリレートの2種を特定割合で併用することにより、粘着力および保持力に優れ、透明性に優れることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
即ち、本発明の要旨は、メチルアクリレート(a1)とn−ブチルアクリレート(a2)を(a1):(a2)=3:7〜7:3(重量比)で含有する共重合成分を共重合してなる、酸性基を有しないアクリル系樹脂(A)を主成分として含有してなることを特徴とする粘着剤組成物に関するものである。
更には、本発明は、粘着剤ならびに両面粘着シート、光学部材用粘着剤、それらを用い
て得られるタッチパネルに関するものである。
なお、本発明においては、アクリル系樹脂の共重合成分として、メチルアクリレートとn−ブチルアクリレートといった一般的なアクリル酸アルキルエステルを用いるものであるが、通常、粘着剤として最適なガラス転移温度を調節する点から、メチルアクリレートを従来よりも比較的多く用いる場合においては、かかる特定2種の共重合成分を併用することは、一般的には行なおうとはしないものであるところ、かかる2種モノマーを特定割合で併用することで、酸性基を有しないアクリル系樹脂であっても粘着力および保持力、透明性に優れることを見出したものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の粘着剤組成物からなる粘着剤は、両面粘着シート、特には基材を有しない(基材レス)両面粘着シートとして好適に用いることができ、特に光学部材貼り付け用途に有用であり、ガラスやITO透明電極シート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等の光学シート類に対して、強固に接着し、高い光透過性を有し、ヘイズを発生させにくく、さらには、金属や金属酸化物等に対して腐食を発生させない粘着シートを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明するが、これらは望ましい実施態様の一例を示すものである。
なお、本発明において、(メタ)アクリルとはアクリルあるいはメタクリルを、(メタ)アクリロイルとはアクリロイルあるいはメタクリロイルを、(メタ)アクリレートとはアクリレートあるいはメタクリレートをそれぞれ意味するものである。
【0011】
まず、本発明の粘着剤組成物について説明する。
本発明の粘着剤組成物は、アクリル系樹脂(A)を主成分として含有するものである。
なお、本発明において主成分とは、上記アクリル系樹脂(A)が粘着剤組成物全量に対して、通常、50重量%以上、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上含有することを意味する。なお、上限としては通常99.99重量%である。
【0012】
本発明で用いられるアクリル系樹脂(A)は、メチルアクリレート(a1)とn−ブチルアクリレート(a2)を(a1):(a2)=3:7〜7:3(重量比)で含有する共重合成分を共重合してなるものであり、酸性基を有しないアクリル系樹脂である。
【0013】
なお、上記「酸性基を有しないアクリル系樹脂」とは、具体的には、酸価が10mgKOH/g以下であることが好ましく、特に好ましくは1mgKOH/g以下、更に好ましくは0.1mgKOH/g以下である。
【0014】
メチルアクリレート(a1)およびn−ブチルアクリレート(a2)の含有割合(重量
比)は、(a1):(a2)=3:7〜7:3であることが必要であるが、好ましくは(a1):(a2)=3.5:6.5〜6.5:3.5、特に好ましくは(a1):(a2)=5:5〜6.5:3.5、更に好ましくは5.5:4.5〜6:4である。
n−ブチルアクリレート(a2)に対するメチルアクリレート(a1)の含有量が多すぎると、ガラス転移温度(Tg)が上がりすぎることにより、粘着性能が低下する傾向があり、少なすぎると粘着力が上がりにくい傾向がある。
【0015】
メチルアクリレート(a1)の含有割合が、共重合成分全体に対して30〜70重量%であることが高い粘着力を得られる点で好ましく、特に好ましくは35〜65重量%、更に好ましくは55〜65重量%である。
【0016】
n−ブチルアクリレート(a2)の合計の含有割合が、共重合成分全体に対して30〜70重量%であることが高い粘着力を得られる点で好ましく、特に好ましくは35〜65重量%、更に好ましくは35〜45重量%である。
【0017】
メチルアクリレート(a1)とn−ブチルアクリレート(a2)の合計の含有割合が、共重合成分全体に対して80〜100重量%であることが高い粘着力を得られる点で好ましく、特に好ましくは90〜99.99重量%、更に好ましくは95〜99.9重量%、殊に好ましくは97〜99.8重量%である。
【0018】
本発明において、共重合成分としては、メチルアクリレート(a1)及びn−ブチルアクリレート(a2)のみからなることも好ましいが、後述の架橋剤(B)との反応点となる点で酸性基以外の官能基を含有するモノマー(a3)を含有することが好ましい。
【0019】
酸性基以外の官能基を含有するモノマー(a3)は、その他の共重合成分と共重合されアクリル系樹脂となった際に、架橋構造の反応点となるものであり、後述する架橋剤(B)の含有する官能基と反応しうる官能基を含有するモノマーを用いればよく、例えば、水酸基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、アセトアセチル基含有モノマー、イソシアネート基含有モノマー、グリシジル基含有モノマー等が挙げられる。これらの中でも、架橋剤と効率的に架橋反応ができる点で水酸基含有モノマーが好ましく用いられる。かかる酸性基以外の官能基を含有するモノマー(a3)は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0020】
水酸基含有モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等のアクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のカプロラクトン変性モノマー、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のオキシアルキレン変性モノマー、その他、2−アクリロイロキシエチル2−ヒドロキシエチルフタル酸、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等の1級水酸基含有モノマー;2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−クロロ2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の2級水酸基含有モノマー;2,2−ジメチル2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の3級水酸基含有モノマーを挙げることができる。
【0021】
上記水酸基含有モノマーの中でも、架橋剤との反応性に優れる点で1級水酸基含有モノマーが好ましく、更には、2−ヒドロキシエチルアクリレートを使用することが、ジ(メタ)アクリレート等の不純物が少なく、製造しやすい点で特に好ましい。
【0022】
なお、本発明で使用する水酸基含有モノマーとしては、不純物であるジ(メタ)アクリレートの含有割合が、0.5%以下のものを用いることも好ましく、更に0.2%以下、殊には0.1%以下のものを使用することが好ましく、具体的には、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートを用いることが低分子量であるため精製しやすい点で好ましい。
【0023】
アミノ基含有モノマーとしては、例えば、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0024】
アセトアセチル基含有モノマーとしては、例えば、2−(アセトアセトキシ)エチル(メタ)アクリレート、アリルアセトアセテート等が挙げられる。
【0025】
イソシアネート基含有モノマーとしては、例えば、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートやそれらのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0026】
グリシジル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸アリルグリシジル等が挙げられる。
【0027】
これら酸性基以外の官能基を含有するモノマー(a3)は、単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。また、酸性基以外の官能基を含有するモノマー(a3)として、水酸基含有モノマーまたはイソシアネート基含有モノマーを用いる場合、更にアミノ基含有モノマーを併用することも好ましい。
共重合成分中における酸性基以外の官能基を含有するモノマー(a3)の含有割合は、好ましくは0.01〜20重量%、特に好ましくは0.1〜10重量%、更に好ましくは0.2〜3重量%であり、酸性基以外の官能基を含有するモノマー(a3)が少なすぎると、架橋時の架橋点が少なくなりすぎるため、架橋後の凝集力が不足する傾向があり、多すぎると粘着力が下がりすぎる傾向がある。
【0028】
また、本発明では、必要に応じて、共重合成分として、(a1)〜(a3)以外の酸性基を含有しない共重合性モノマー(a4)を含有することもできる。
共重合性モノマー(a4)としては、例えば、メチルメタリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチルメタクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシ化o-フェニルフェニル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、スチレン等の芳香環含有モノマー、(メタ)アクリロイルモルホリン、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド等のアミド系モノマー、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アルキルビニルエーテル、ビニルトルエン、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、イタコン酸ジアルキルエステル、フマル酸ジアルキルエステル、アリルアルコール、アクリルクロライド、メチルビニルケトン、N−アクリルアミドメチルトリメチルアンモニウムクロライド、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアリルビニルケトン等が挙げられる。
【0029】
共重合成分中における共重合性モノマー(a4)の含有割合は、好ましくは0〜20重量%、特に好ましくは1〜15重量%、更に好ましくは2〜10重量%であり、共重合性モノマー(a4)が多すぎると粘着特性が低下しやすい傾向がある。
【0030】
かくして、上記モノマー成分(a1)及び(a2)、好ましくは(a1)〜(a3)(必要に応じて(a4)を含む。)を重合することによりアクリル系樹脂(A)を製造するのであるが、かかる重合に当たっては、溶液ラジカル重合、懸濁重合、塊状重合、乳化重合などの従来公知の方法により行なうことができる。例えば、有機溶媒中に、(a1)〜(a4)等のモノマー成分、重合開始剤を混合あるいは滴下し、還流状態あるいは50〜150℃で2〜20時間重合する。
【0031】
かかる重合に用いられる有機溶剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の脂肪族アルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類等が挙げられる。
【0032】
かかる共重合に使用する重合開始剤としては、通常のラジカル重合開始剤であるアゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル等のアゾ系重合開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の過酸化物系重合開始剤等が具体例として挙げられる。
【0033】
アクリル系樹脂(A)の重量平均分子量については、通常10万〜300万、好ましくは40万〜200万、特に好ましくは50万〜100万、殊に好ましくは70万〜80万である。重量平均分子量が小さすぎると、耐久性能が低下する傾向があり、大きすぎると希釈溶剤を大量に必要とするために、乾燥工程で残溶剤が残りやすくなり、50μm以上の厚塗りがしにくくなる傾向がある。
【0034】
また、アクリル系樹脂(A)の分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は、20以下であることが好ましく、特には10以下が好ましく、更には7以下が好ましく、殊には4以下が好ましい。かかる分散度が高すぎると粘着剤層の耐久性能が低下し、耐久性試験を行なった際に発泡等が発生しやすくなる傾向にある。なお、分散度の下限は、製造の限界の点から、通常2である。
【0035】
更に、アクリル系樹脂(A)のガラス転移温度は、通常−45〜−10℃、好ましくは−40〜−15℃、更に好ましくは−35〜−20℃であり、ガラス転移温度が高すぎると粘着特性が得がたい傾向があり、低すぎると粘着力が低下する傾向がある。
【0036】
尚、上記の重量平均分子量は、標準ポリスチレン分子量換算による重量平均分子量であり、高速液体クロマトグラフィー(日本Waters社製、「Waters 2695(本体)」と「Waters 2414(検出器)」)に、カラム:Shodex GPC KF−806L(排除限界分子量:2×107、分離範囲:100〜2×107、理論段数:10,000段/本、充填剤材質:スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、充填剤粒径:10μm)の3本直列を用いることにより測定されるものであり、数平均分子量も同様の方法で測定することができる。また分散度は重量平均分子量と数平均分子量より求められる。またガラス転移温度はFoxの式より算出されるものである。

Tg:共重合体のガラス転移温度(K)
Tga:モノマーAのホモポリマーのガラス転移温度(K) Wa:モノマーAの重量分率
Tgb:モノマーBのホモポリマーのガラス転移温度(K) Wb:モノマーBの重量分率
Tgn:モノマーNのホモポリマーのガラス転移温度(K) Wn:モノマーNの重量分率
(Wa+Wb+・・・+Wn=1)
【0037】
かくして上記酸性基を有しないアクリル系樹脂(A)を主成分とする本発明の粘着剤組成物が得られるわけである。本発明においては、更に架橋剤(B)を含有することが粘着性能をより発揮する点で好ましい。架橋剤(B)を含有してなる粘着剤組成物は、架橋剤により架橋されることで粘着剤となるのである。
【0038】
かかる架橋剤(B)としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、メラミン系架橋剤、アルデヒド系架橋剤、アミン系架橋剤、が挙げられる。これらの中でも、基材との密着性を向上させる点やアクリル系樹脂(A)との反応性の点で、イソシアネート系架橋剤が好適に用いられる。
【0039】
上記イソシアネート系架橋剤としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、水素化トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、およびこれらのポリイソシアネート化合物とトリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体、これらポリイソシアネート化合物のビュレット体やイソシアヌレート体等が挙げられる。
【0040】
上記エポキシ系架橋剤としては、例えば、ビスフェノールA・エピクロルヒドリン型のエポキシ樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエリスリトール、ジグリセロールポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0041】
上記アジリジン系架橋剤としては、例えば、テトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、N,N′−ジフェニルメタン−4,4′−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、N,N′−ヘキサメチレン−1,6−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)等が挙げられる。
【0042】
上記メラミン系架橋剤としては、例えば、へキサメトキシメチルメラミン、ヘキサエトキシメチルメラミン、ヘキサプロポキシメチルメラミン、ヘキサプトキシメチルメラミン、ヘキサペンチルオキシメチルメラミン、ヘキサヘキシルオキシメチルメラミン、メラミン樹脂等が挙げられる。
【0043】
上記アルデヒド系架橋剤としては、例えば、グリオキザール、マロンジアルデヒド、スクシンジアルデヒド、マレインジアルデヒド、グルタルジアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。
【0044】
上記アミン系架橋剤としては、例えば、ヘキサメチレンジアミン、トリエチルジアミン、ポリエチレンイミン、ヘキサメチレンテトラアミン、ジエチレントリアミン、トリエチルテトラアミン、イソフォロンジアミン、アミノ樹脂、ポリアミド等が挙げられる。
【0045】
また、これらの架橋剤(B)は、単独で使用しても良いし、2種以上を併用してもよい。
【0046】
上記架橋剤(B)の含有量は、通常は、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、0.01〜10重量部であることが好ましく、さらに好ましくは0.05〜2重量部、特に好ましくは0.1〜1重量部である。架橋剤(B)が少なすぎると、凝集力が不足し、充分な耐久性が得られない傾向がみられ、多すぎると柔軟性および粘着力が低下しやすくなる傾向がみられる。
【0047】
また、本発明においては、架橋反応を活性エネルギー線を照射することによって行なうこともできる。この場合、多官能(メタ)アクリレートを配合することが好ましく、かかる多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセリンポリグリシジルエーテルポリ(メタ)アクリレート等があげられる。
【0048】
また、粘着剤組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、さらにシランカップリング剤、帯電防止剤、その他のアクリル系粘着剤、その他の粘着剤、ウレタン樹脂、ロジン、ロジンエステル、水添ロジンエステル、フェノール樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、脂肪族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、スチレン系樹脂、キシレン系樹脂等の粘着付与剤、着色剤、充填剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、機能性色素等の従来公知の添加剤や、紫外線あるいは放射線照射により呈色あるいは変色を起こすような化合物を配合することができるが、これら添加剤の配合量は、組成物全体の10重量%以下であることが好ましく、特に好ましくは5重量%以下であり、添加剤として分子量が1万よりも低い低分子成分は極力含まないことが耐久性に優れる点で好ましい。
【0049】
また、上記添加剤の他にも、粘着剤組成物の構成成分の製造原料等に含まれる不純物等が少量含有されたものであっても良い。
【0050】
上記粘着剤組成物は、実質的に酸を含まないことが耐腐食性に優れる点で好ましく、実質的に酸を含まないとは、粘着剤組成物の酸価が、通常10mgKOH/g以下、好ましくは1mgKOH/g以下、特に好ましくは0.1mgKOH/g以下であることを意味する。
【0051】
かくして、本発明では、上記粘着剤組成物が硬化されて粘着剤が得られるのである。
【0052】
本発明においては、上記粘着剤を光学部材用粘着剤として用いることが好ましく、かかる粘着剤からなる粘着剤層を光学部材上に積層形成することにより、粘着剤層付き光学部材を得ることができる。
【0053】
かかる光学部材としては、ITO電極膜等の透明電極膜、偏光板、位相差板、楕円偏光板、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、電磁波シールドフィルム、近赤外線吸収フィルム、ARフィルム等が挙げられる。これらの中でも、透明電極膜であるときが本発明の効果を顕著に発揮でき、腐食が起こりにくく、高い粘着力が得られる点で好ましく、特に好ましくはITO(インジウムチンオキサイド)電極膜である。
【0054】
上記粘着剤層付き光学部材には、粘着剤層の光学部材面とは逆の面に、さらに離型シートを設けることが好ましく、実用に供する際には、上記離型シートを剥離してから粘着剤層と被着体を貼合することとなる。かかる離型シートとしては、シリコン系の離型シートを用いることが好ましい。
【0055】
上記離型シートが貼合された粘着剤層付き光学部材を作製するに際して、粘着剤組成物を架橋させる方法については、〔1〕光学部材上に、粘着剤組成物を塗布し、乾燥した後、離型シートを貼合し、エージング処理を行う方法、〔2〕離型シート上に、粘着剤組成物を塗布し、乾燥した後、光学部材を貼合し、エージング処理を行なう方法により行なうことができる。これらの中でも、〔2〕の方法が光学部材を痛めない点、作業性や安定製造の点で好ましい。
【0056】
なお、粘着剤組成物に架橋剤(B)を用いる場合には、上記方法を用いて粘着剤層付き光学部材を製造した後にエージング処理を施すことが好ましい。かかるエージング処理は、粘着物性のバランスをとるために行なうものであり、エージングの条件としては、温度は通常室温〜70℃、時間は通常1日〜30日であり、具体的には、例えば23℃で1日〜20日間、好ましくは、23℃で3〜10日間、40℃で1日〜7日間等の条件で行なえばよい。
【0057】
上記粘着剤組成物の塗布に際しては、この粘着剤組成物を溶剤に希釈して塗布することが好ましく、希釈濃度としては、好ましくは10〜80重量%、特に好ましくは20〜60重量%である。また、上記溶剤としては、粘着剤組成物を溶解させるものであれば特に限定されることなく、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等のエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、メタノール、エタノール、プロピルアルコール等のアルコール系溶剤を用いることができる。これらの中でも、溶解性、乾燥性、価格等の点から酢酸エチル、メチルエチルケトン、トルエンが好適に用いられる。そして、上記粘着剤組成物の塗布は、ロールコーティング、ダイコーティング、グラビアコーティング、コンマコーティング、スクリーン印刷等の慣用の方法により行なわれる。
【0058】
ここまで、一旦離型シートが貼合された粘着剤層付き光学部材を製造した後に、かかる上記離型シートを剥離してから粘着剤層と被着体(その他光学部材)を貼合する粘着剤の使用方法について説明したが、本発明においては、上記粘着剤を用いて両面粘着シートを作製することも好ましく、かかる両面粘着シートを用いて光学部材どうしを貼合する方法を用いてもよい。
【0059】
かかる両面粘着シートとしては、上記粘着剤を用いて公知一般の構成の両面粘着シートを用いればよいが、特には透明性に優れ、構成する厚みに対しての粘着力が高い点で基材レス両面粘着シートを用いることが好ましい。かかる基材レス両面粘着シートは、離型シート上に上記粘着剤からなる粘着剤層を形成した後、該粘着剤層の離型シートのない側に、更に別の離型シートを貼合することにより得ることができる。使用方法は、一方の離型シートを剥がして被着体に貼合した後、他方の離型シートを剥がして被着体に貼合すればよい。
【0060】
上記粘着剤層付き光学部材の粘着剤層、および両面テープの粘着剤層のゲル分率については、耐久性能と粘着力の点から30〜90%であることが好ましく、特には40〜80%が好ましく、殊には60〜70%であることが好ましい。ゲル分率が低すぎると凝集力が不足することに起因する耐久性不足になる傾向がある。また、ゲル分率が高すぎると凝集力の上昇により粘着力が低下してしまう傾向がある。
【0061】
なお、光学部材用粘着剤のゲル分率を上記範囲に調整するにあたっては、例えば、架橋剤の種類と量を調整すること等により達成される。
【0062】
上記ゲル分率は、架橋度(硬化度合い)の目安となるもので、例えば、以下の方法にて算出される。すなわち、基材となる高分子シート(例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム等)に粘着剤層が形成されてなる粘着シート(セパレーターを設けていないもの)を200メッシュのSUS製金網で包み、トルエン中に23℃×24時間浸漬し、金網中に残存した不溶解の粘着剤成分の重量百分率をゲル分率とする。ただし、基材の重量は差し引いておく。
【0063】
また、得られる粘着剤層付き光学部材における粘着剤層の厚みは、5〜300μmが好ましく、特には10〜200μmが好ましく、更には40〜150μmが好ましい。この粘着剤層の厚みが薄すぎると粘着物性が安定しにくい傾向があり、厚すぎると光学部材全体の厚みが増しすぎてしまう傾向がある。
特に衝撃吸収や空気層等の空隙を埋めるための用途に用いる場合に、40μm以上の厚みで用いることが好ましい。
【0064】
本発明の粘着剤層の粘着力は、被着体の材料等に応じて適宜決定されるが、例えば、ガラス基板、ポリカーボネート板、ポリメチルメタクリレート板、ITO層を蒸着したPETシートに貼着する場合には、5N/25mm〜100N/25mmの粘着力を有することが好ましく、更には10N/25mm〜50N/25mmが好ましい。
【0065】
なお、上記粘着力は、つぎのようにして算出される。厚み100μmのPETシート上に厚み25μmの粘着剤層が形成された粘着剤層付きPETを、幅25mm幅に裁断し、離型シートを剥離して、粘着剤層側をソーダガラス等に25mm×100mmの上記粘着シートを23℃、相対湿度50%の雰囲気下で2kgゴムローラー2往復で加圧貼付し、同雰囲気下で30分放置した後、常温で剥離速度300mm/minで180度剥離強度(N/25mm)を測定した。
【0066】
本発明の粘着剤層の全線透過率は、90%以上であることが好ましく、特に好ましくは92%以上である。かかる全線透過率が低すぎると、透過性が低いためディスプレイ用途で使用しにくい傾向がある。なお、全光線透過率の上限は通常95%である。
【0067】
本発明の粘着剤層のヘイズ値は、10%以下であることが好ましく、特に好ましくは1%以下である。かかるヘイズが高すぎると、ディスプレイ用として使用したときに、画像が不鮮明になる傾向がある。なお、ヘイズ値の下限は通常0.00%である。
【0068】
上記、全線透過率およびヘイズ値はJIS K7361−1に準拠したヘイズメーターを使用して測定した値である。
【0069】
本発明の粘着剤層の色差b値は、1以下であることが好ましく、特に好ましくは0.5以下である。かかる色差b値が高すぎると、ディスプレイ用として使用したときに、本来の色が出にくくなる傾向がある。なお、色差b値の下限は通常−1である。
なお、かかる色差b値は、JIS K7105に準拠して測定したものであり、測定は、色差計(Σ90:日本電色工業社製)を用いて、透過条件で行なった。
【0070】
なお、本発明における、ヘイズ、全光線透過率、色差b値の測定は、粘着剤層のみを、ガラス板(コーニング社製無アルカリガラス「イーグルXG」)に貼着し測定した値である。
【0071】
本発明の粘着剤組成物からなる粘着剤は、両面粘着シート、特には基材を有しない(基材レス)両面粘着シートとして好適に用いることができ、特には、粘着力が高く、耐熱信頼性や耐衝撃信頼性に優れ、高い光透過性を有し、ヘイズを発生させにくく、金属や金属酸化物等に対して腐食を発生させない点で、ガラスやITO透明電極シート、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等の光学シート類、偏光フィルム、位相差フィルム、光学補償フィルム、輝度向上フィルム等の光学部材貼り付け用途に有用である。更に、これら光学部材を含んでなるタッチパネルに対して好適に用いることができる。
【実施例】
【0072】
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中、「部」、「%」とあるのは、断りのない限り重量基準を意味する。
【0073】
まず、下記のようにして各種アクリル系樹脂を調製した。なお、アクリル系樹脂の重量平均分子量、ガラス転移温度の測定に関しては、前述の方法にしたがって測定した。
なお、粘度の測定に関しては、JIS K5400(1990)の4.5.3回転粘度計法に準じて測定した。
【0074】
〔アクリル樹脂(A)の調製〕(表1参照。)
[アクリル系樹脂(A−1)]
還流冷却器、撹拌器、窒素ガスの吹き込み口及び温度計を備えた4ツ口丸底フラスコに、メチルアクリレート(a1)40部、n−ブチルアクリレート(a2)、59部、2-ヒドロキシエチルアクリレート(a3)1部及び酢酸エチル120部を仕込み、加熱還流開始後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1部を加え、酢酸エチル還流温度で3時間反応後、アゾビスイソブチロニトリル0.1部、酢酸エチル20部を加え、更に4時間反応し、酢酸エチルにて希釈してアクリル系樹脂(A−1)溶液(重量平均分子量55万、分散度4.3、ガラス転移温度−34℃、固形分38%、粘度8000mPa・s(25℃))を得た。
【0075】
[アクリル系樹脂(A−2)]
還流冷却器、撹拌器、窒素ガスの吹き込み口及び温度計を備えた4ツ口丸底フラスコに、メチルアクリレート(a1)60部、n−ブチルアクリレート(a2)39部、2-ヒドロキシエチルアクリレート(a3)1部及び酢酸エチル150部を仕込み、加熱還流開始後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1部を加え、酢酸エチル還流温度で3時間反応後、アゾビスイソブチロニトリル0.1部、酢酸エチル20部を加え、更に4時間反応し、酢酸エチルにて希釈してアクリル系樹脂(A−2)溶液(重量平均分子量55万、分散度4.4、ガラス転移温度−21℃、固形分33%、粘度8000mPa・s(25℃))を得た。
【0076】
[アクリル系樹脂(A’−1)]
還流冷却器、撹拌器、窒素ガスの吹き込み口及び温度計を備えた4ツ口丸底フラスコに、メチルアクリレート(a1)80部、n−ブチルアクリレート(a2)、19部、2-ヒドロキシエチルアクリレート(a3)1部及び酢酸エチル100部、トルエン40部を仕込み、加熱還流開始後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1部を加え、還流温度で3時間反応後、アゾビスイソブチロニトリル0.1部、酢酸エチル10部を加え、更に4時間反応し、酢酸エチルにて希釈してアクリル系樹脂(A’−1)溶液(重量平均分子量40万、分散度3.8、ガラス転移温度−7℃、固形分40%、粘度8000mPa・s(25℃))を得た。
【0077】
[アクリル系樹脂(A’−2)]
還流冷却器、撹拌器、窒素ガスの吹き込み口及び温度計を備えた4ツ口丸底フラスコに、n−ブチルアクリレート(a2)、99部、2-ヒドロキシエチルアクリレート(a3)1部及び酢酸エチル100部を仕込み、加熱還流開始後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1部を加え、酢酸エチル還流温度で3時間反応後、アゾビスイソブチロニトリル0.1部、酢酸エチル20部を加え、更に4時間反応し、酢酸エチルにて希釈してアクリル系樹脂(A’−2)溶液(重量平均分子量75万、分散度5.1、ガラス転移温度−56℃、固形分33%、粘度8000mPa・s(25℃))を得た。
【0078】
[アクリル系樹脂(A’−3)]
還流冷却器、撹拌器、窒素ガスの吹き込み口及び温度計を備えた4ツ口丸底フラスコに、メチルアクリレート(a1)、60部、2−エチルヘキシルアクリレート(a4)39部、2-ヒドロキシエチルアクリレート(a3)1部及び酢酸エチル60部を仕込み、加熱還流開始後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1部を加え、酢酸エチル還流温度で3時間反応後、アゾビスイソブチロニトリル0.1部、酢酸エチル20部を加え、更に4時間反応し、酢酸エチルにて希釈してアクリル系樹脂(A’−3)溶液(重量平均分子量60万、分散度4.8、ガラス転移温度−29℃、固形分40%、粘度8000mPa・s(25℃))を得た。
【0079】
[アクリル系樹脂(A’−4)]
還流冷却器、撹拌器、窒素ガスの吹き込み口及び温度計を備えた4ツ口丸底フラスコに、メチルアクリレート(a1)40部、エチルアクリレート(a4)59部、2-ヒドロキシエチルアクリレート(a3)1部及び酢酸エチル100部、トルエン40部を仕込み、加熱還流開始後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1部を加え、酢酸エチル還流温度で3時間反応後、アゾビスイソブチロニトリル0.1部、酢酸エチル20部を加え、更に4時間反応し、酢酸エチルにて希釈してアクリル系樹脂(A’−4)溶液(重量平均分子量30万、分散度3.1、ガラス転移温度−10℃、固形分30%、粘度8000mPa・s(25℃))を得た。
【0080】
[アクリル系樹脂(A’−5)]
還流冷却器、撹拌器、窒素ガスの吹き込み口及び温度計を備えた4ツ口丸底フラスコに、n−ブチルアクリレート(a2)、94部、アクリル酸6部及び酢酸エチル100部を仕込み、加熱還流開始後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1部を加え、酢酸エチル還流温度で3時間反応後、アゾビスイソブチロニトリル0.1部、酢酸エチル20部を加え、更に4時間反応し、酢酸エチルにて希釈してアクリル系樹脂(A’−5)溶液(重量平均分子量85万、分散度5.9、ガラス転移温度−50℃、固形分32%、粘度8000mPa・s(25℃))を得た。
【0081】
【表1】

【0082】
[架橋剤(B)]
架橋剤(B−1)として、以下のものを用意した。
・トリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネート付加物の55%酢酸エチル溶液(日本ポリウレタン社製、「コロネートL−55E」)
架橋剤(B−2)として、以下のものを用意した。
・ヘキサメチレンジイソシアネート(日本ポリウレタン社製、「コロネートHX」)
【0083】
〔実施例1〜6〕
上記のようにして調製,準備した各配合成分を、下記の表2に示す割合で配合することにより光学部材用粘着剤形成材料となる粘着剤組成物を調製し、これを酢酸エチルにて希釈し(粘度〔500〜10000mPa・s(25℃)〕)粘着剤組成物溶液を作製した

【0084】
〔比較例1〜6〕
実施例1〜6と同様に、下記の表2に示す割合で配合することにより光学部材用粘着剤形成材料となる粘着剤組成物を調製し、これを酢酸エチルにて希釈し(粘度〔500〜10000mPa・s(25℃)〕)粘着剤組成物溶液を作製した。
【0085】
そして、上記で得られた粘着剤組成物溶液を、ポリエステル系離型シートに、乾燥後の厚みが20μm(実施例1〜4、比較例1〜6)または50μm(実施例5および6)となるように塗布し、90℃で3分間乾燥した後、形成された粘着剤層側をポリエステル系離型シートで貼り合わせ40℃の条件下で10日間エージングさせて基材レス両面粘着シートを得た。
【0086】
前記基材レス両面粘着シートの粘着剤から一方の面の離型シートを剥がし、100μmPETに押圧し、粘着剤層付きPETフィルムを得た。
【0087】
このようにして得られた粘着剤層付きPETフィルムを用いて、ゲル分率、粘着力、保持力、耐腐食性を下記に示す各方法に従って測定・評価した。これらの結果を下記の表2に併せて示した。
【0088】
〔ゲル分率〕
上記粘着剤層付きPETフィルムを40×40mmに裁断した後、離型シートを剥がし、粘着剤層側を50×100mmのSUSメッシュシート(200メッシュ)に貼合してから、SUSメッシュシートの長手方向に対して中央部より折り返してサンプルを包み込んだ後、トルエン250gの入った密封容器にて浸漬した際の重量変化にてゲル分率(%)の測定を行なった。
【0089】
[粘着力]
上記粘着剤層付きPETについて、幅25mm幅に裁断し、離型シートを剥離して、粘着剤層側をソーダガラスに25mm×100mmの上記粘着シートを23℃、相対湿度50%の雰囲気下で2kgゴムローラー2往復で加圧貼付し、同雰囲気下で30分放置した後、常温で剥離速度300mm/minで180度剥離強度(N/25mm)を測定した
。評価基準は下記の通りである。
(評価)
◎・・・20N/25mm以上
○・・・10N/25mm以上20N/25mm未満
△・・・5N/25mm以上10N/25mm未満
×・・・5N/25mm未満
【0090】
[保持力]
上記粘着剤層付きPETを、25mm×25mmになるよう裁断し、離型シートを剥離して、粘着剤層側を研磨SUS板に貼着し、80℃の条件下にて1kgの荷重をかけて、JIS Z 0237の保持力の測定法に準じてズレを評価した。評価基準は下記の通りである。
(評価)
○・・・1440分経過後でズレを生じない
△・・・1440分経過後でズレを生じる
×・・・1440分経過するまでに落下する
【0091】
〔腐食性評価方法〕
上記粘着剤層付きPETフィルムの離型シートを剥離して、粘着剤層側を、銅板に貼り合わせた後、60℃90%RHの雰囲気下で7日間保存した。その後、PETフィルム側から銅箔の表面を目視で観察して、銅板表面の腐食の有無を確認した。
(評価)
○・・・腐食が認められない
×・・・腐食が認められる
【0092】
[全光線透過率]及び[ヘイズ]
・全光線透過率及びヘイズ測定用サンプルの製造
上記基材レス両面粘着シートを3cm×4cmに裁断し、一方の面の離型シートを剥がし、粘着剤層側を無アルカリガラス板(コーニング社製、イーグルXG)に押圧して、さらに他方の離型シートを剥離して、全光線透過率及びヘイズ測定用サンプルを得た。
・全光線透過率及びヘイズ値の測定
上記全光線透過率及びヘイズ測定用サンプルの拡散透過率及び全光線透過率を、HAZE MATER NDH2000(日本電色工業社製)を用いて測定した。なお、本機はJIS K7361−1に準拠している。
なお、ヘイズ値は、得られた拡散透過率と全光線透過率の値を下記式に代入して算出した。
ヘイズ値(%)=(拡散透過率/全光線透過率)×100
【0093】
[色差b値]
全光線透過率及びヘイズ測定用サンプルと同様のサンプルを使用し、JIS K7105に準拠して測定した。測定は、色差計(Σ90:日本電色工業社製)を用いて、透過条件で行なった。
【0094】
なお、ガラス板のみについて、上記全光線透過率、ヘイズ、色差b値を測定した際の値は、全光線透過率93%、ヘイズ0.1%、色差b値0.2であった。
【0095】
【表2】

【0096】
実施例1〜4の粘着剤は、粘着力が高く、透明性、耐腐食性にも優れるものであった。
また、厚塗り塗工した実施例5および6においても粘着力、透明性、耐腐食性に優れるものであり、更にアクリル系樹脂(A−1)よりもメチルアクリレート含有量の多いアクリル系樹脂(A−2)を用いた実施例6の方がより高い粘着力を示すことがわかる。
一方、比較例1〜5の粘着剤は、粘着力が低く、強粘着用途の粘着剤としては実用に耐えうるレベルにないものである。
また、アクリル系樹脂の構成モノマーとして酸成分であるアクリル酸を使用した比較例6の粘着剤は、粘着力は充分高いものの腐食性を有しており、耐腐食性が要求される光学用途では使用できないものであった。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明の粘着剤組成物からなる粘着剤は、両面粘着シート、特には基材を有しない(基材レス)両面粘着シートとして好適に用いることができ、特には、接着力が高く、耐熱信頼性や耐衝撃信頼性に優れ、高い光透過性を有し、ヘイズを発生させにくく、金属や金属酸化物等に対して腐食を発生させない点で、ガラスやITO透明電極シート、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等の光学シート類、偏光フィルム、位相差フィルム、光学補償フィルム、輝度向上フィルム等の光学部材貼り付け用途に有用である。更に、これら光学部材を含んでなるタッチパネルに対して好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メチルアクリレート(a1)とn−ブチルアクリレート(a2)を(a1):(a2)=3:7〜7:3(重量比)で含有する共重合成分を共重合してなる、酸性基を有しないアクリル系樹脂(A)を主成分として含有してなることを特徴とする粘着剤組成物。
【請求項2】
メチルアクリレート(a1)とn−ブチルアクリレート(a2)の合計の含有割合が、共重合成分全体に対して、80〜100重量%であることを特徴とする請求項1記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
共重合成分が、酸性基以外の官能基を有するモノマー(a3)を含有することを特徴とする請求項1記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
酸性基以外の官能基を有するモノマー(a3)が、水酸基含有モノマーであることを特徴とする請求項3記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
架橋剤(B)を含有してなることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の粘着剤組成物。
【請求項6】
請求項1〜5いずれか記載の粘着剤組成物が、架橋されてなることを特徴とする粘着剤。
【請求項7】
全光線透過率が90%以上、ヘイズ値が10%以下、かつ色差b値が1以下であることを特徴とする請求項6記載の粘着剤。
【請求項8】
請求項6または7記載の粘着剤を含む粘着剤層を含有することを特徴とする両面粘着シート。
【請求項9】
請求項6または7記載の粘着剤を用いてなることを特徴とする光学部材用粘着剤。
【請求項10】
光学部材が透明導電膜であることを特徴とする請求項9記載の光学部材用粘着剤。
【請求項11】
請求項9または10記載の光学部材用粘着剤を含む粘着剤層を含有することを特徴とするタッチパネル。

【公開番号】特開2011−225835(P2011−225835A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66392(P2011−66392)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000004101)日本合成化学工業株式会社 (572)
【Fターム(参考)】