粘着力発現ユニット、粘着ラベル発行装置及びプリンタ
【課題】連続的に穿孔を形成したとしても均一な穿孔形状で全ての穿孔を形成でき、安定した粘着力を発現させること。
【解決手段】非粘着性の機能層で被覆された粘着層を具備する粘着ラベル10を加熱して、その粘着力を発現させるユニットであって、一列に配列された複数の発熱素子31を有し、粘着層側から粘着ラベルを加熱して各発熱素子により機能層に穿孔を形成させるサーマルヘッド30と、粘着ラベルをサーマルヘッドとの間で挟み込みながら搬送させるプラテンローラ32と、複数の発熱素子に熱エネルギーを各別に印加して、その発熱を制御する制御部と、を備え、制御部が、印加を繰り返し行って複数の穿孔が一列に並んだ穿孔ラインを連続的に複数形成する際、前段の穿孔ライン形成時に発熱素子に印加する熱エネルギーよりも、エネルギー量が高い高熱エネルギーを発熱素子に印加して穿孔ラインを形成させる粘着力発現ユニット24を提供する。
【解決手段】非粘着性の機能層で被覆された粘着層を具備する粘着ラベル10を加熱して、その粘着力を発現させるユニットであって、一列に配列された複数の発熱素子31を有し、粘着層側から粘着ラベルを加熱して各発熱素子により機能層に穿孔を形成させるサーマルヘッド30と、粘着ラベルをサーマルヘッドとの間で挟み込みながら搬送させるプラテンローラ32と、複数の発熱素子に熱エネルギーを各別に印加して、その発熱を制御する制御部と、を備え、制御部が、印加を繰り返し行って複数の穿孔が一列に並んだ穿孔ラインを連続的に複数形成する際、前段の穿孔ライン形成時に発熱素子に印加する熱エネルギーよりも、エネルギー量が高い高熱エネルギーを発熱素子に印加して穿孔ラインを形成させる粘着力発現ユニット24を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着ラベルに粘着力を発現させる粘着力発現ユニット、これを備える粘着ラベル発行装置及びプリンタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば食品のPOSラベルや物流・搬送ラベル、医療用ラベル、バゲッジタグ、瓶・缶類の表示ラベル等に用いられる粘着ラベルとしては、基材の表面に形成された記録面(印字面)と、基材の裏面に形成された粘着層と、この粘着層を被覆する剥離紙(セパレータ)と、で構成されているものが広く知られている。
そのため、使用する場合には、記録面に例えばバーコードや価格等の所定の情報を印字した後、剥離紙を粘着層から剥離する必要がある。しかしながら、剥離した剥離紙を回収してリサイクルすることが実際上困難であるため、剥離紙が産業廃棄物となる問題があった。
【0003】
そこで、近年では環境保全や環境負荷軽減の観点から、剥離紙を使用しない粘着ラベルが用いられるようになっている。
例えば、記録面の表面にシリコン樹脂等の離型剤を塗布し、粘着ラベルがロール状に巻回されても記録面と粘着層との離型性が確保されるものが知られている。また、粘着層として加熱により粘着性を発現する熱活性粘着剤層を用いたものも知られている。更には、粘着層の表面全体に非粘着性の樹脂層を被覆し、加熱によりこの樹脂層に穿孔(微小開口)を形成することで粘着層を露出させて、粘着性を発現させるものが提案されている。
【0004】
このうち、粘着層を樹脂層で被覆した粘着ラベルは、樹脂層に穿孔を形成する箇所を自在に制御することによって必要な領域だけに粘着性を発現させたり、それとは逆に穿孔を形成する箇所を減らすことで粘着力を低下させたりする等、粘着力を自在に制御し易いという利点がある。
この場合において、上記樹脂層を加熱して穿孔を形成するための手段としては、複数の発熱素子がライン状に配列されたサーマルヘッドが有効である。これは、所望する発熱素子だけを選択的に発熱させることができ、上記穿孔の形成位置を自在に制御することが可能となるためである。
【0005】
また、上記した樹脂層としては、例えば下記特許文献1に示されるように、穿孔感度が高く、且つサーマルヘッドの発熱素子のサイズに応じた穿孔形状で穿孔を形成し易い感熱穿孔性フィルムが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−44364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、例えばサーマルヘッドを利用して樹脂層に上記穿孔を連続的に複数ラインで形成し、粘着層を密集して露出させることで粘着力を高める場合、全ての穿孔を発熱素子に応じた穿孔形状で形成することが難しい場合があった。
【0008】
この点について詳細に説明する。
図13に示すように、粘着ラベル100を矢印方向にラベル送りしながら、サーマルヘッド110の複数の発熱素子111に熱エネルギーを印加して発熱させ、図14に示すように、粘着ラベル100の樹脂層101に、複数の穿孔120がラベル幅方向に並ぶ穿孔ラインLを複数ライン(図示の場合は3ライン)連続的に形成する場合を例に挙げて説明する。
なお、図14は、全ての穿孔ラインL(L1〜L3)の穿孔120が発熱素子111の形状に対応して形成され、粘着ラベル100の粘着層102が均一に露出した理想的な状態を図示している。
【0009】
はじめに、図13及び図14に示すようにサーマルヘッド110の発熱素子111を発熱させ、粘着ラベル100の樹脂層101に1ライン目の穿孔ラインL(L1)を形成すると、加熱によって溶融された樹脂層101の一部は穿孔120の周囲に拡散するように逃げていくが、溶融された残りの部分については発熱素子111に付着し易い。
そのため、図15及び図16に示すように、この付着した樹脂層101の一部分101aは、粘着ラベル100のラベル送り(図中の矢印方向)と相まって捲れ上がった状態となってしまい易く、さらなるラベル送りによって上記穿孔ラインL(L1)の下流側に位置する樹脂層101上に重なるように流れ込み易かった。
【0010】
これにより、2ライン目の穿孔ラインL(L2)の形成予定箇所における樹脂層101の膜厚(T1)が他の部分の膜厚(T2)よりも厚くなり易かった。そのため、1ライン目と同じ熱量で発熱素子111を発熱させたとしても、所望の穿孔形状で穿孔ラインL(L2)を形成することが難しい、又は1ライン目の穿孔ラインL(L1)よりも小さな開口面積で穿孔ラインL(L2)が形成されてしまう可能性が高かった。
【0011】
その結果、全ての穿孔ラインLの穿孔120を発熱素子111に応じた穿孔形状で形成することは難しく、実際上、図14に示すような理想的な開口状態とすることは困難であった。従って、安定した穿孔形状で穿孔ラインLを形成することができず、所望の粘着力を発現させることができないおそれがあった。
また、上述した問題は、上記特許文献1に記載された感熱穿孔性フィルムを用いた場合でも同様である。そのうえ、感熱穿孔性フィルムを用いた場合には、フィルム自体が高価であるため粘着ラベルのコスト高をも招き易かった。
【0012】
本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その目的は、連続的に穿孔を形成したとしても、均一な穿孔形状で全ての穿孔を形成でき、安定した粘着力を発現させることができる粘着力発現ユニット、これを備える粘着ラベル発行装置及びプリンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、前記課題を解決するために以下の手段を提供する。
(1)本発明に係る粘着力発現ユニットは、基材の一方の面上に設けられた印字可能層、及び他方の面上に設けられ、非粘着性の機能層で被覆された粘着層、を具備する粘着ラベルを加熱して、その粘着力を発現させる粘着力発現ユニットであって、一列に配列された複数の発熱素子を有し、前記粘着層側から前記粘着ラベルを加熱して各発熱素子により機能層に穿孔を形成させるサーマルヘッドと、前記粘着ラベルを前記サーマルヘッドとの間で挟み込みながら搬送させるプラテンローラと、複数の前記発熱素子に熱エネルギーを各別に印加して、その発熱を制御する制御部と、を備え、前記制御部が、前記印加を繰り返し行って複数の前記穿孔が一列に並んだ穿孔ラインを連続的に複数形成する際、前段の穿孔ライン形成時に前記発熱素子に印加する熱エネルギーよりも、エネルギー量が高い高熱エネルギーを前記発熱素子に印加して穿孔ラインを形成させることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る粘着力発現ユニットによれば、制御部がサーマルヘッドの複数の発熱素子に対して熱エネルギーを各別に印加すると、印加された各発熱素子はその熱エネルギーのエネルギー量(熱量)で発熱する。そのため、サーマルヘッドに接している粘着ラベルの機能層のうち、各発熱素子が接している部分だけを局所的に加熱でき、その部分を溶融させて穿孔を形成することができる。これにより、機能層に穿孔が一列に並んだ穿孔ラインを形成することができる。
また、上記穿孔が形成されることで、該穿孔を通じて粘着ラベルの粘着層が露出するので、それにより粘着力を発現させることができる。そして、プラテンローラによる粘着ラベルの搬送に伴って複数の発熱素子への印加を繰り返し行うことで、機能層に上記穿孔ラインを搬送方向に連続的に複数ライン形成することができる。これにより、粘着ラベルの所望する領域に粘着力を発現させることができる。
【0015】
ところで、制御部は複数の穿孔ラインを形成する際、前段の穿孔ラインを形成する際に発熱素子に印加した熱エネルギーよりも、エネルギー量が高い高熱エネルギーを発熱素子に印加することで現時点の穿孔ラインを形成するように制御している。例えば、1本目の穿孔ラインの形成時に印加した熱エネルギーよりも、エネルギー量が高い高熱エネルギーを印加して2本目の穿孔ラインを形成させる。
そのため、1本目の穿孔ライン形成時に、溶融した機能層の一部が仮にサーマルヘッドに付着してしまい、粘着ラベルの搬送に伴って2本目の穿孔ラインの穿孔形成予定位置である機能層上に重なって膜厚が厚くなってしまったとしても、この膜厚が厚くなった機能層を十分なエネルギー量で加熱することができる。従って、1本目の穿孔ラインの形成時と同様に、確実に機能層を溶融することができ、適切に開口した穿孔を具備する穿孔ラインを引き続き形成することができる。
その結果、複数の穿孔ラインにおける全ての穿孔を、発熱素子に対応した均一な穿孔形状で形成することができ、安定した粘着力を粘着ラベルに発現させることができる。
【0016】
(2)上記本発明に係る粘着力発現ユニットにおいて、前記制御部は、複数の前記穿孔ラインを形成するにあたって、同一の前記発熱素子に連続して前記熱エネルギーを印加させる必要がある場合には、その発熱素子に対してのみ前記高熱エネルギーを印加させることが好ましい。
【0017】
この場合には、全ての発熱素子に対して一律に高熱エネルギーを印加させるのではなく、同一の発熱素子に連続して熱エネルギーを印加させる必要がある場合にだけ、その発熱素子に対して高熱エネルギーを印加する。つまり、粘着力を発現させたい領域の位置やサイズ、粘着力の強弱等によって、各穿孔ラインを形成する毎に、印加を必要とする発熱素子と印加を必要としない発熱素子とに分かれる場合がある。このような場合、例えば1本目の穿孔ライン形成時に印加を行った発熱素子を、2本目の穿孔ライン形成時に連続して印加させる場合と、印加させない場合とがある。
制御部は、この2つの場合のうち、同一の発熱素子に対して連続して印加を行う場合に高熱エネルギーを印加させる。これにより、必要とされる発熱素子に対してのみ高熱エネルギーを印加するので、電力消費を抑制することができるうえ、サーマルヘッド自体の温度上昇を抑制し易い。
【0018】
(3)上記本発明に係る粘着力発現ユニットにおいて、前記制御部は、同一の前記発熱素子に対して3ライン以上連続して前記熱エネルギーを印加させる場合には、3ライン目以降については2ライン目に印加した前記高熱エネルギーを引き続き印加することが好ましい。
【0019】
この場合には、同一の発熱素子に連続して印加を行い、穿孔ラインを3ライン以上連続して形成するにあたって、制御部は段階的にエネルギー量を高めるのではなく、3ライン目以降はエネルギー量を高くした2ライン目の高熱エネルギーを引き続き印加する。これにより、電力消費の抑制とサーマルヘッドの温度上昇とをより効果的に抑制し易い。
【0020】
(4)上記本発明に係る粘着力発現ユニットにおいて、前記制御部は、複数の前記穿孔ラインを形成するにあたって、前記高熱エネルギーを印加した前記発熱素子への印加を一旦停止した後、それ以降に行う後段の穿孔ライン形成時に該発熱素子に対して印加を再開する場合には、最初に印加した前記熱エネルギーを印加することが好ましい。
【0021】
この場合には、発熱素子への印加を一旦停止させているので、サーマルヘッドに溶融した機能層の一部が付着したとしても印加を停止させている間に断ち切り易く、それ以降に行う後段の穿孔ラインの穿孔形成予定位置である機能層上にまで引きずってしまい難い。従って、1ライン目の穿孔ラインの形成時と同じ状況で穿孔を形成でき、最初に印加した熱エネルギーを利用して該穿孔を発熱素子に対応した均一な穿孔形状で形成することが可能である。
特に、熱エネルギーのエネルギー量を元に戻すことができるので、無駄な電力消費を抑制し易いうえ、サーマルヘッド自体の温度上昇を抑制し易い。
【0022】
(5)上記本発明に係る粘着力発現ユニットにおいて、前記高熱エネルギーは、当初に印加した熱エネルギーよりも大きく、且つ2倍以下のエネルギー量とされていることが好ましい。
【0023】
この場合には、高熱エネルギーを印加するにあたって、最大でもエネルギー量を2倍にする程度であるので、電力消費をできるだけ抑制しながら、発熱素子に対応した穿孔形状の穿孔を安定して形成することができる。
【0024】
(6)上記本発明に係る粘着力発現ユニットにおいて、前記制御部は、前記熱エネルギーの印加時よりも印加電圧のパルス幅を長くすることでエネルギー量を高め、前記高熱エネルギーとして印加することが好ましい。
【0025】
この場合には、印加電力を一定(抵抗値及び印加電圧を一定)にしたまま、印加電圧のパルス幅を長く(印加時間を長く)するだけの簡単な制御でエネルギー量を高めることができるので、所望するエネルギー量の熱エネルギーを発熱素子に対して正確に印加し易い。
【0026】
(7)上記本発明に係る粘着力発現ユニットにおいて、前記制御部は、複数の前記穿孔ラインが前記発熱素子間のピッチ以下の狭ピッチで連続的に配列されるように、前記印加を周期的に行うことが好ましい。
【0027】
この場合には、発熱素子に対応した穿孔形状で形成された穿孔を、上記狭ピッチで複数ライン形成できるので、例えば粘着ラベルの所望する領域に粘着力を集中的に発現させて、強い粘着強度を確保し易い。
【0028】
(8)上記本発明に係る粘着力発現ユニットにおいて、前記サーマルヘッドの温度を検出する温度検出センサを備え、前記制御部は、前記温度検出センサで検出された温度に基づいて前記サーマルヘッドの温度特性の変化を算出し、その変化した温度特性に応じてエネルギー量を補正しながら前記印加を行うことが好ましい。
【0029】
この場合には、蓄熱効果によるサーマルヘッドの温度特性に応じてエネルギー量を補正しながら印加を行うので、より適切なエネルギー量の熱エネルギーを印加でき、発熱素子に対応した穿孔形状の穿孔をより安定して形成することができる。
【0030】
(9)上記本発明に係る粘着力発現ユニットにおいて、前記制御部は、前記印加を同時に行う前記発熱素子の数に基づいて前記サーマルヘッドの温度特性の変化を算出し、その変化した温度特性に応じてエネルギー量を補正しながら前記印加を行うことが好ましい。
【0031】
この場合には、同時に印加する発熱素子の数に起因する蓄熱効果によってサーマルヘッドの温度特性が変化するが、該温度特性に応じてエネルギー量を補正しながら印加を行うので、より適切なエネルギー量の熱エネルギーを印加でき、発熱素子に対応した穿孔形状の穿孔をより安定して形成することができる。
【0032】
(10)本発明に係る粘着ラベル発行装置は、上記本発明に係る粘着力発現ユニットと、該粘着力発現ユニットよりも前記搬送方向の上流側に配設され、帯状のラベル用紙を所望の長さにカットして前記粘着ラベルとして粘着力発現ユニットに受け渡すカッターユニットと、を備えていることを特徴とする。
【0033】
本発明に係る粘着ラベル発行装置によれば、カッターユニットによって帯状のラベル用紙を所望する長さにカットした後、粘着力発現ユニットによって所望する領域だけの機能層を加熱して安定した粘着力を発現させることができるので、高品質な粘着ラベルを発行することができる。
【0034】
(11)本発明に係るプリンタは、上記本発明に係る粘着ラベル発行装置と、前記粘着力発現ユニットよりも前記搬送方向の上流側に配設され、前記印字可能層に印字を行う印字ユニットと、を備えていることを特徴とする。
【0035】
本発明に係るプリンタによれば、粘着力発現ユニットによって粘着力を発現させる前に、印字可能層に所望の情報を安定して印字できるので、各種の情報が明瞭に印字され、且つ安定した粘着力が発現された高品質な粘着ラベルを得ることができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、連続的に穿孔ラインを複数形成したとしても、発熱素子に対応した均一な穿孔形状で全ての穿孔を形成することができ、粘着ラベルに安定した粘着力を発現させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係る第1実施形態を示す図であり、粘着力発現ユニットを具備する粘着ラベル発行装置の構成図である。
【図2】図1に示す粘着ラベルの拡大断面図である。
【図3】図1に示す粘着力発現ユニットのサーマルヘッドの平面図である。
【図4】図3に示すサーマルヘッドのA−A断面図である。
【図5】図3に示すサーマルヘッドの電極部及び発熱素子の拡大平面図である。
【図6】図1に示す粘着力発現ユニットの構成図である。
【図7】粘着ラベルの平面図であって、機能層に複数の穿孔ラインを形成し、粘着力を発現させた状態を示す図である。
【図8】本発明に係る第2実施形態を示す図であり、粘着力発現ユニットを具備する粘着ラベル発行装置の構成図である。
【図9】図8に示す粘着力発現ユニットの構成図である。
【図10】粘着ラベルを発行する際のフローチャートである。
【図11】粘着ラベルを発行するにあたって、穿孔ラインと発熱素子との関係を示す図である。
【図12】本発明に係る第3実施形態を示す図であり、粘着ラベル発行装置を具備するプリンタの構成図である。
【図13】従来方法により粘着ラベルに粘着力を発現させる場合の、サーマルヘッド及び粘着ラベルの拡大断面図である。
【図14】機能層に複数の穿孔ラインを形成し、粘着力を発現させた状態を示す図であって、理想的な穿孔形状で穿孔が開口している状態を示す図である。
【図15】図13に示した状態の後、粘着ラベルをラベル送りした状態を示す断面図である。
【図16】図15に示した状態の後、粘着ラベルをさらにラベル送りした状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
<第1実施形態>
以下、本発明に係る第1実施形態を、図面を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態の粘着ラベル発行装置1は、粘着ラベル10用のロール紙Rを使用し、そのロール紙Rから繰り出された帯状のラベル用紙Pを所定の長さにカットして粘着ラベル10とすると共に、該粘着ラベル10に粘着力を発現させた状態で発行する装置である。
なお、本実施形態では、図1に示す状態において、紙面に対して右側を前方F、左側を後方とし、ラベル用紙P及び粘着ラベル10は前方F側に送り出されるものとする。また、紙面に対して上側を上方、下側を下方とする。
【0039】
(粘着ラベル)
上記したロール紙Rは、図示しない芯材に帯状のラベル用紙Pが巻回された構成とされている。そして、上記したように、この帯状のラベル用紙Pがカットされることで粘着ラベル10となる。
この粘着ラベル10は、図2に示すように、基材11と、該基材11の一方の面上に積層された印字可能層12と、基材11の他方の面上に積層された粘着層13と、該粘着層13を被覆してその粘着を規制する非粘着性の機能層14と、を備えている。
【0040】
印字可能層12は、加熱によって発色する感熱性記録層であり、基材11の一方の面上に全面に亘って形成されている。粘着層13は、例えば水、溶剤や熱等を用いなくても常温で僅かな圧力を短時間で加えるだけで粘着性が発現される感圧性粘着剤からなる層であり、基材11の他方の面上に全面に亘って形成されている。
【0041】
なお、上記感圧性粘着剤としては、凝集力と弾性力とを共に有し、且つ高い粘着性を有する一方、容易に剥離可能とされるものが好ましい。但し、粘着層13は、感圧性粘着剤からなるものに限定されず、例えば、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリイソブチレンゴム等のゴム系粘着剤や、ガラス転移点の低いモノマーと高いモノマーとを共重合した非架橋系のアクリル系粘着剤や、高凝集力のシリコンと高粘着力のシリコンレジンとからなるシリコン系粘着剤等からなるものであっても構わない。
【0042】
機能層14は、粘着層13を全面に亘って被覆する層であり、加熱によって穿孔15が形成される感熱性フィルム等からなる。上記穿孔15は、後述するサーマルヘッド30の発熱素子31によって局所的に加熱されることで開口される孔である。そして、この穿孔15が形成されることで樹脂層が穿孔15を通じて外部に露出し、これにより粘着力が発現される。
【0043】
(粘着ラベル発行装置)
続いて、上記粘着ラベル発行装置1について説明する。
図1に示すように、この粘着ラベル発行装置1は、上記ロール紙Rを軸支する保持部20と、該ロール紙Rから繰り出されたラベル用紙Pを前方F側に搬送する第1搬送ローラ21と、該第1搬送ローラ21によって搬送されてきたラベル用紙Pを所望の長さにカットして粘着ラベル10とするカッターユニット22と、カットされた粘着ラベル10を前方F側に搬送する第2搬送ローラ23と、該第2搬送ローラ23によって搬送されてきた粘着ラベル10を機能層14側から加熱して粘着力を発現させる粘着力発現ユニット24と、粘着力が発現された粘着ラベル10を前方F側にさらに搬送する第3搬送ローラ25と、を備えている。
【0044】
(カッターユニット)
カッターユニット22は、ラベル用紙Pを上下に挟んで互いに刃先が向かい合うように配設された固定刃22a及び可動刃22bを有するカッター機構であり、第1搬送ローラ21の搬送方向下流側で、且つ第2搬送ローラ23の搬送方向上流側に配設されている。固定刃22aはラベル用紙Pの下方に配設され、可動刃22bはラベル用紙Pの上方に配設されている。但し、ラベル用紙Pの上方に固定刃22aを配設し、下方に可動刃22bを配設しても構わない。
可動刃22bは、カッター駆動部26による駆動によって、固定刃22aに対して接近離間可能にスライド自在とされており、固定刃22aとの間でラベル用紙Pを上下に挟み込みながら切断することが可能とされている。そして、このカッターユニット22による切断によって得られた粘着ラベル10は、第2搬送ローラ23を介して粘着力発現ユニット24に受け渡される。
【0045】
(粘着力発現ユニット)
粘着力発現ユニット24は、一列に配列された複数の発熱素子31を有し、粘着ラベル10の機能層14を各発熱素子31により各別に加熱することで該機能層14に穿孔15を形成させるサーマルヘッド(ラインサーマルヘッド)30と、粘着ラベル10をサーマルヘッド30との間で挟み込みながら前方F側に搬送させるプラテンローラ32と、を備えている。
【0046】
サーマルヘッド30は、図3及び図4に示すように、放熱性基板であるセラミック基板35と、該セラミック基板35上に全面に亘って積層されたグレーズ層(蓄熱層)36と、該グレーズ層36上に積層された発熱素子31及び電極部37と、発熱素子31及び電極部37の一部を保護する保護層38と、を備えている。
【0047】
セラミック基板35は、図示しないヘッド支持基板によって支持されていると共に、図示しないコイルバネ等によってプラテンローラ32側に付勢されて、該プラテンローラ32の外周面に対して圧接されている。これにより、粘着ラベル10は、サーマルヘッド30とプラテンローラ32との間に挟み込まれ、サーマルヘッド30に対して押し付けられた状態とされている(図4参照)。
上記グレーズ層36は、例えば印刷されたガラスペーストが所定の温度(例えば1300から1500℃)で焼成されることで形成された層とされている。
【0048】
発熱素子31は、グレーズ層36上に、例えばTa−SiO2等からなる発熱抵抗体をスパッタ等で積層し、その後、フォトリソグラフィ技術等によってパターニングされることで形成されている。この際、図5に示すように、発熱素子31はセラミック基板35の長手方向に沿って一列に所定のピッチW1で等間隔に配列されている。なお、各発熱素子31は、平面視略正方形状とされている。
【0049】
電極部37は、図3〜図5に示すように、グレーズ層36上に例えばAl、Cu、Au等をスパッタ等で積層し、その後、フォトリソグラフィ技術等によってパターニングされることで形成されたものであって、上記した複数の発熱素子31の全てに導通した共通電極部37aと、各発熱素子31に対して各別に導通した個別電極部37bと、で構成されている。これにより、電極部37を通じて複数の発熱素子31のそれぞれに対して熱エネルギーを印加して、各別に発熱させることが可能とされている。
【0050】
また、上記した各個別電極部37bには、樹脂等からなる封止部39aで保護されたIC部39が搭載されている。このIC部39は、後述するCPU45と協働して、発熱素子31に対する上記発熱を制御している。
よって、これらIC部39及びCPU45は、複数の発熱素子31に対して電極部37を介して熱エネルギーを各別に印加して、その発熱を制御する制御部40として機能する。
【0051】
保護層38は、電極部37及び発熱素子31の酸化や摩耗を防止するための層であって、例えばSi−O−N、或いはSi−Al−O−N等の硬質金属酸化物等から形成されている。そして、この保護層38は、複数の発熱素子31及び共通電極部37aを完全に覆って保護していると共に、個別電極部37bの一部を覆って保護している。
【0052】
図1及び図4に示すようにプラテンローラ32は、後述するCPU45によって駆動が制御された駆動モータ41によって前方F側に回転させられるゴムローラであって、粘着ラベル10をサーマルヘッド30との間で挟み込みながら前方F側に搬送させている。
【0053】
また、本実施形態の粘着力発現ユニット24は、図6に示すように、CPU45と、このCPU45によって実行される制御プログラム等が格納されたROM46と、機能層14に形成する穿孔15の形成パターンデータ等が格納されるRAM47と、この穿孔15の形成パターンデータ等の入力、設定又は呼び出し等を行うための操作部48と、穿孔15の形成パターンデータ等を表示する表示部49と、CPU45と上記した各機能部と間のデータの入出力を行うインターフェース部(I/F部)50と、を備えている。
上記インターフェース部50には、サーマルヘッド30のIC部39、プラテンローラ32の駆動モータ41、第1〜第3搬送ローラ21、23、25やカッター駆動部26がそれぞれ接続されており、それぞれ作動が制御されている。
【0054】
また、CPU45及びIC部39からなる制御部40は、プラテンローラ32の駆動に伴って複数の発熱素子31に熱エネルギーへの印加を繰り返し行うことで、図2及び図7に示すように、粘着ラベル10の機能層14に複数の穿孔15が一列に並んだ穿孔ラインLを連続的に複数形成するように制御を行っている。なお、図示の例では、穿孔ラインLを搬送方向に連続的に3ライン形成した場合を図示している。
特に、制御部40は、前段の穿孔ラインLの形成時に発熱素子31に印加する熱エネルギーよりも、エネルギー量が高い高熱エネルギーを発熱素子31に印加して穿孔ラインLを形成させるように制御している。
【0055】
なお、上記エネルギー量は印加電圧のパルス幅と印加電力とに基づいて決定されるものであり、印加電力は発熱素子31の平均抵抗値と該発熱素子31への印加電圧とに基づいて決定されるものである。
本実施形態では、制御部40は上記パルス幅を長く(印加時間を長く)することでエネルギー量を高め、高熱エネルギーとして印加するように制御している。
【0056】
(粘着ラベルの作製)
次に、上記のように構成された粘着力発現ユニット24を具備する粘着ラベル発行装置1を利用して、粘着力を発現させた状態で粘着ラベル10を発行する場合について説明する。なお、本実施形態では、ロール紙Rとされている段階で、既に印字可能層12に情報が印字されているものとする。
【0057】
まず、CPU45は、第1〜第3搬送ローラ21、23、25を駆動させると共に駆動モータ41を作動させてプラテンローラ32を回転させ、さらに各IC部39を作動させてサーマルヘッド30の複数の発熱素子31に対して熱エネルギーを各別に印加させる。
【0058】
第1搬送ローラ21が駆動することによって、図1に示すように、保持部20に軸支されているロール紙Rからラベル用紙Pが繰り出され、カッターユニット22の固定刃22aと可動刃22bとの間を通過しながら前方F側に搬送される。そして、ラベル用紙Pが所望の長さ分だけ通過すると、CPU45がカッター駆動部26を作動させ、可動刃22bを固定刃22aに向けてスライド移動させる。これにより、ラベル用紙Pを可動刃22bと固定刃22aとの間で挟み込みながら切断することができ、所望の長さに調整された粘着ラベル10とすることができる。
【0059】
そして、カットされた粘着ラベル10は、第2搬送ローラ23によってさらに前方F側に搬送され、粘着力発現ユニット24のサーマルヘッド30とプラテンローラ32との間に送られ、該プラテンローラ32によってサーマルヘッド30に押し付けられながら前方F側に搬送される。
【0060】
この間、制御部40がサーマルヘッド30の複数の発熱素子31に対して熱エネルギーを各別に印加させるので、印加された各発熱素子31はその熱エネルギーのエネルギー量(熱量)で発熱する。そのため、プラテンローラ32によってサーマルヘッド30に押し付けられている粘着ラベル10の機能層14のうち、保護層38を介して各発熱素子31が接している部分だけを局所的に加熱することができ、その部分を溶融させて穿孔15を形成することができる。これにより、図7に示すように、機能層14に穿孔15が一列に並んだ1ライン目の穿孔ラインL(L1)を形成することができる。
【0061】
また、上記穿孔15が形成されることで、該穿孔15を通じて粘着ラベル10の粘着層13が露出するので、それにより粘着力を発現させることができる。そして、プラテンローラ32による粘着ラベル10の搬送に伴って、複数の発熱素子31への印加を繰り返し行うことで、機能層14に上記穿孔ラインLを搬送方向に連続的に3つ(L1〜L3)を形成することができる。これにより、粘着ラベル10の所望する領域に粘着力を発現させることができる。
【0062】
ところで、制御部40は穿孔ラインLを形成する際、前段の穿孔ラインLを形成する際に発熱素子31に印加した熱エネルギーよりも、エネルギー量が高い高熱エネルギーを発熱素子31に印加することで現時点の穿孔ラインLを形成するように制御している。
つまり、1本目の穿孔ラインL(L1)の形成時に印加した熱エネルギーよりも、エネルギー量が高い高熱エネルギーを印加して2本目の穿孔ラインL(L2)を形成させる。具体的には、印加電力を一定(発熱素子31の抵抗値及び印加電圧を一定)にしたまま、印加電圧のパルス幅を長く(印加時間を長く)することでエネルギー量を高めて、高熱エネルギーを印加する。
【0063】
そのため、1本目の穿孔ラインL(L1)の形成時に、溶融した機能層14の一部が仮にサーマルヘッド30に付着してしまい、粘着ラベル10の搬送に伴って2本目の穿孔ラインL(L2)の穿孔形成予定位置である機能層14上に重なって膜厚が厚くなってしまったとしても、この膜厚が厚くなった機能層14を十分なエネルギー量で加熱することができる。従って、確実に機能層14を溶融させることができ、1本目の穿孔ラインL(L1)の形成時と同様に、適切に開口した穿孔15を具備する穿孔ラインLを引き続き形成することができる。
その結果、図7に示すように、3本の穿孔ラインL(L1〜L3)における全ての穿孔15を、発熱素子31に対応した均一な穿孔形状で形成することができ、粘着ラベル10に安定した粘着力を発現させることができる。
【0064】
そして、粘着力が発現された粘着ラベル10は、その後、第3搬送ローラ25によって前方F側に搬送される。これにより、粘着力を発現させた状態で、粘着ラベル10を発行させることができる。
【0065】
上記したように、本実施形態の粘着ラベル発行装置1によれば、カッターユニット22によってラベル用紙Pを所望する長さにカットした後、粘着力発現ユニット24によって所望する領域だけに安定した粘着力を発現させることができ、高品質な粘着ラベル10を発行することができる。
【0066】
なお、上記実施形態では、第1〜第3搬送ローラ21、23、25を具備したが、これらは必須なものではなく具備しなくても構わないし、搬送経路等に応じて3つ以上設けても構わない。また、その設置位置は自由に設定して構わない。
また、印加電圧のパルス幅を長くすることでエネルギー量を高めたが、この場合に限定されるものではなく、例えば印加電圧を大きくすることでエネルギー量を高めても構わない。但し、印加電圧を変化させる場合よりもパルス幅を長くする場合の方が簡単な制御でエネルギー量を高めることができるので、所望するエネルギー量の熱エネルギーを発熱素子31に対して正確に印加し易い。
【0067】
また、上記実施形態において、高熱エネルギーを印加する場合、当初に印加した熱エネルギーのエネルギー量よりも大きく、且つ2倍以下のエネルギー量であれば構わない。具体的には、粘着ラベル10の機能層14の材料や膜厚等によって変動するが、当初に印加した熱エネルギーのエネルギー量よりも略1.3〜1.7倍程度大きいエネルギー量を具備する高熱エネルギーを印加すれば、発熱素子31に対応した穿孔形状の穿孔15を形成することが可能となる。
特に、この場合には最大でもエネルギー量を2倍にする程度で済むので、電力消費をできるだけ抑制しながら発熱素子31に対応した穿孔形状の穿孔15を安定して形成することができる。
【0068】
また、上記実施形態において、図7に示すように、複数の穿孔ラインLが発熱素子31間のピッチW1以下の狭ピッチW2で連続的に配列されるように、印加を周期的に行うと良い。こうすることで、発熱素子31に対応した穿孔形状で形成された穿孔15を、上記狭ピッチW2で複数ライン形成できるので、例えば粘着ラベル10の所望する領域に粘着力を集中的に発現させて、強い粘着強度を確保し易い。
【0069】
<第2実施形態>
次に、本発明に係る第2実施形態について説明する。なお、この第2実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
【0070】
本実施形態の粘着ラベル発行装置60は、図8に示すように、搬送されてきた粘着ラベル10の有無を検出する第1検出センサ61及び第2検出センサ62と、サーマルヘッド30の温度を検出する温度検出センサ63と、を備えている。
【0071】
上記第1検出センサ61は、粘着力発現ユニット24と第2搬送ローラ23との間に配設されており、粘着力発現ユニット24まで粘着ラベル10が搬送されてきた否かを検出している。また、上記第2検出センサ62は、粘着力発現ユニット24と第3搬送ローラ25との間に配設されており、粘着力発現ユニット24から粘着ラベル10が送り出されたか否かを検出している。これら第1検出センサ61及び第2検出センサ62としては、例えば光電式の非接触センサ等であり、図9に示すように、インターフェース部50を通じて検出結果をCPU45に出力している。
上記温度検出センサ63は、例えばセラミック基板35に内蔵されたサーミスタであり、同様にインターフェース部50を通じて検出結果をCPU45に出力している。
【0072】
また、本実施形態のCPU45は、操作部48を介して予め入力された穿孔15の形成パターンデータに基づいて、各穿孔ラインLを形成するにあたって、複数の発熱素子31を、印加を必要とする発熱素子31と印加を必要としない発熱素子31とに区分けし、印加データとしてRAM47に記憶させている。そして、この記憶された印加データに基づいて、印加を必要とする発熱素子31だけに熱エネルギーを印加して、穿孔ラインLを複数形成するように制御している。
【0073】
この際、制御部40は、同一の発熱素子31に連続して熱エネルギーを印加させる必要がある場合には、その発熱素子31に対してのみ高熱エネルギーを印加させるように制御している。
また、同一の発熱素子31に対して3ライン以上連続して熱エネルギーを印加させる場合には、3ライン目以降については2ライン目に印加した高熱エネルギーを引き続き印加するように制御している。
更に、高熱エネルギーを印加した発熱素子31への印加を一旦停止した後、それ以降に行う後段の穿孔ラインLの形成時に該発熱素子31に対して印加を再開する場合には、最初に印加した熱エネルギーを印加するように制御している。
【0074】
加えて、本実施形態の制御部40は、温度検出センサ63で検出されたサーマルヘッド30の温度と、印加を同時に行う発熱素子31の数と、に基づいてサーマルヘッド30の温度特性の変化を算出し、その変化した温度特性に応じてエネルギー量を補正しながら印加を行うように設定されている。
【0075】
(粘着ラベルの作製)
次に、上記のように構成された粘着ラベル発行装置60を利用して、粘着ラベル10を発行する場合について、図10に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0076】
はじめに、操作部48を介して、粘着ラベル10のサイズ情報、サーマルヘッド30の発熱素子31の合計数(同時に印加できる発熱素子31の最大ドット数)を入力する(S1)と共に、粘着力を発現させる穿孔15の形成パターンデータ(穿孔ラインLの数m等)を入力する(S2)。
すると、制御部40は、これらの入力データをRAM47に記憶させると共に、上記形成パターンデータに基づいて、各穿孔ラインLのそれぞれについて、印加を必要とする発熱素子31と印加を必要としない発熱素子31とに区分けし、印加データとして記憶させる。
【0077】
次いで、制御部40は、1ライン目の穿孔ラインL(L1)を形成するにあたって、上記入力データ及び印加データに基づいて、記憶された発熱素子31の合計数に対して、印加が必要とされる発熱素子31の数がどの程度の割合であるか把握し、複数回(n回)に分割して印加を行う分割数及びそのグループ分けを行う(S3)。
つまり、発熱素子31の合計数(合計ドット数)が例えば640個であって、印加が必要とされる発熱素子31の数が320個の場合、一度に発熱素子31の合計数の半分にあたる320個の発熱素子31に印加を行うと、サーマルヘッド30自体の温度が上昇し易い。そのため、印加が必要とされる320個の発熱素子31を分割して複数のグループに分け、グループ毎に印加を行うための設定である。また、同時に印加する発熱素子31の数を減らすことは、ピーク電流を抑制し、電源への負担を軽減することにも寄与する。
【0078】
次いで、制御部40は温度検出センサ63からの検出結果に基づいて、現時点でのサーマルヘッド30の温度を把握する(S4)。そして、制御部40は、サーマルヘッド30の温度と、上記1グループにおける発熱素子31の数と、に基づいて印加電圧のパルス幅を設定する(S5)。
つまり、サーマルヘッド30の温度及び同時に印加する発熱素子31の数に基づいて、印加する熱エネルギーのエネルギー量を設定する。
【0079】
次いで、制御部40は、第1搬送ローラ21、第2搬送ローラ23及びカッター駆動部26を作動させることで、ラベル用紙Pをカットして粘着ラベル10とし、該粘着ラベル10を粘着力発現ユニット24に向けて搬送させる(S6)。ここで、制御部40は、第1検出センサ61によって粘着ラベル10の搬送方向先端部が検出される(S7)と、サーマルヘッド30の発熱素子31のうちグループ分けした発熱素子31に対して、上記パルス幅で熱エネルギーを印加させる(S8)。そして、該印加をn回繰り返し行って、全てのグループの発熱素子31への印加を行う。
【0080】
これにより、図11に示すように、粘着ラベル10の機能層14に1ライン目の穿孔ラインL(L1)を形成することができる。なお、図中には、サーマルヘッド30の発熱素子31のうち、電圧が印加された発熱素子31を合わせて図示している。また、図中における点線は印加を行わなかった発熱素子31を示す。
【0081】
上記した1ライン目の穿孔ラインL(L1)の形成が終了すると、制御部40は、2ライン目の穿孔ラインL(L2)を形成するにあたって、再び上記入力データ及び印加データに基づいて、記憶された発熱素子31の合計数に対して、印加が必要とされる発熱素子31の数がどの程度の割合であるか把握し、複数回(n回)に分割して印加を行う分割数及びそのグループ分けを行う(S10)。
特に、上記グループ分けを行う際、1ライン目の穿孔ラインL(L1)の形成時に、同一の発熱素子31を再び連続的に印加させる必要があるグループと、1ライン目には印加をせず、2ライン目ではじめて印加を行う必要があるグループと、にグループ分けする。
【0082】
次いで、制御部40は、発熱素子31を再び連続的に印加させる必要があるグループについては、1ライン目の形成時に印加したパルス幅よりも数倍(略1.3〜1.7倍)長いパルス幅で発熱素子31に印加を行うように設定する(S11)。つまり、エネルギー量を大きくした高熱エネルギーを印加するように設定する。
これに対して、1ライン目には印加をせず、2ライン目で印加を行う必要があるグループについては、1ライン目の形成時に印加したパルス幅と同じパルス幅で印加を行うように設定する(S12)。
なお、上述したいずれの場合も、温度検出センサ63による検出結果に基づき、サーマルヘッド30の温度に応じたエネルギー量の温度補正を行う。
【0083】
そして、制御部40は、グループ分けした発熱素子31に対して、上記各パルス幅で熱エネルギーを印加させ、該印加をn回繰り返し行って、全てのグループの発熱素子31への印加を行う(S8)。これにより、図11に示すように、粘着ラベル10の機能層14に2ライン目の穿孔ラインL(L2)を形成することができる。
【0084】
そして、上記した動作を同様に繰り返し行うことで、3ライン目の穿孔ラインL(L3)、4ライン目の穿孔ラインL(L4)といったように、複数の穿孔ラインLを形成することができ、粘着ラベル10の機能層14に対して、入力された穿孔15の形成パターンデータ通りに穿孔15を形成することができる。
【0085】
そして、制御部40は、全ての穿孔15を形成した後、サーマルヘッド30の発熱素子31への印加を停止する(S20)と共に、第2検出センサ62によって粘着ラベル10の搬送方向後端部が検出(S21)されたことを受けて、プラテンローラ32の駆動を停止させる。そして、粘着ラベル10が設定位置まで前方F側に搬送された時点で、第3搬送ローラ25を停止させる(S22)。
これにより、形成パターンデータ通りに開口した穿孔15によって粘着力が発現された粘着ラベル10を発行することができる。
【0086】
特に、本実施形態によれば、2本目以降の穿孔ラインLの形成時において、全ての発熱素子31に対して一律に高熱エネルギーを印加させるのではなく、同一の発熱素子31に連続して熱エネルギーを印加させる必要がある場合にだけ、その発熱素子31に対して高熱エネルギーを印加している。(具体的には、図11に示す発熱素子31(31a)のみに高熱エネルギーを印加。)従って、必要とされる発熱素子31に対してのみ高熱エネルギーを印加できるので、サーマルヘッド30自体の温度上昇を抑制し易い。
【0087】
また、同一の発熱素子31に連続して印加を行う場合、制御部40は段階的にエネルギー量を高めるのではなく、3ライン目以降は一度だけエネルギー量を高くした2ライン目の高熱エネルギーを引き続き印加する。(具体的には、図11に示す発熱素子31(31b)に2ライン目と同じエネルギー量の高熱エネルギーを印加。)これにより、電力消費の抑制とサーマルヘッド30の温度上昇とをより効果的に抑制し易い。
【0088】
なお、この場合であっても、3ライン目以降の穿孔ラインLにおける穿孔15を、発熱素子31に対応した均一な穿孔形状で形成することが可能である。つまり、例えば1本目の穿孔ラインL(L1)の形成時に溶融してサーマルヘッド30に付着した機能層14の一部が、2本目の穿孔ラインL(L2)の穿孔形成予定位置である機能層14上に重なってしまったとしても、その部分は一旦加熱されて温度が上昇しているため溶融し易い。そのため、2本目の穿孔ラインL(L2)の形成時に穿孔15の周囲に拡散させて逃がし易く、再度サーマルヘッド30に付着して、3本目の穿孔ラインL(L3)の穿孔形成予定位置である機能層14上に重なってしまい難い。
従って、3ライン目以降、段階的に機能層14の膜厚が厚くなり難いと考えられるので、上記した作用効果を奏効することができる。
【0089】
また、制御部40は、3ライン目以降の穿孔ラインLを形成する際、高熱エネルギーを印加した発熱素子31への印加を一旦停止した後、該発熱素子31に再度印加を行う場合には、最初に印加した熱エネルギーを印加している。(具体的には、図11に示す発熱素子31(31c)に熱エネルギーを印加。)
特に、発熱素子31への印加を一旦停止させているので、サーマルヘッド30に溶融した機能層14の一部が付着していたとしても、印加が停止されているので、それ以降に行う後段の穿孔ラインLの穿孔形成予定位置である機能層14上にまで引きずられ難くなる。従って、1ライン目の穿孔ラインL(L1)の形成時と同じ状況で穿孔15を形成でき、最初に印加した熱エネルギーを利用して穿孔15を発熱素子31に対応した均一な穿孔形状で形成することが可能である。特に、エネルギー量を元に戻すので、さらなる電力消費の抑制を図り易い。
【0090】
更に、温度検出センサ63によりサーマルヘッド30の温度を検出し、蓄熱効果によるサーマルヘッド30の温度特性に応じてエネルギー量を補正しながら印加を行うので、より適切なエネルギー量の熱エネルギーを印加でき、発熱素子31に対応した穿孔形状の穿孔15をより安定して形成することができる。
また、同時に印加する発熱素子31の数に起因する蓄熱効果によってもサーマルヘッド30の温度特性が変化するが、この場合にも対応可能である。
【0091】
<第3実施形態>
次に、本発明に係る第3実施形態について説明する。なお、この第3実施形態においては、第2実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
【0092】
図12に示すように、本実施形態のプリンタ70は、上記した粘着ラベル発行装置1と、第1搬送ローラ21よりも搬送方向上流側に配設され、印字可能層12に印字を行う印字ユニット71と、を備えている。
【0093】
印字ユニット71は、図示しない発熱素子が一列に配列され、ラベル用紙Pの印字可能層12を加熱して発色させることで印字を行う印字用サーマルヘッド72と、ラベル用紙Pを印字用サーマルヘッド72との間で挟み込みながら前方F側に搬送する印字用プラテンローラ73と、を備えている。
なお、印字用サーマルヘッド72及び印字用プラテンローラ73は、上記した粘着力発現ユニット24のサーマルヘッド30及びプラテンローラ32と同様の構成とされており、いずれもCPU45によって作動が制御されている。
【0094】
このように構成されたプリンタ70によれば、粘着力発現ユニット24によって粘着力を発現させる前に、印字可能層12に所望の情報を安定して印字することができるので、各種の情報が明瞭に印刷され、且つ安定した粘着力が発現された高品質な粘着ラベル10を得ることができる。
なお、本実施形態において、印字ユニット71は粘着力発現ユニット24よりも搬送方向の上流側に配設されていれば良く、例えばカッターユニット22と粘着力発現ユニット24との間に配設されていても構わない。
【0095】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0096】
L…穿孔ライン
P…ラベル用紙
W1…発熱素子の間のピッチ
W2…穿孔ライン間のピッチ(狭ピッチ)
1、60…粘着ラベル発行装置
10…粘着ラベル
11…基材
12…印字可能層
13…粘着層
14…機能層
15…穿孔
22…カッターユニット
24…粘着力発現ユニット
30…サーマルヘッド
31…発熱素子
32…プラテンローラ
40…制御部
63…温度検出センサ
70…プリンタ
71…印字ユニット
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着ラベルに粘着力を発現させる粘着力発現ユニット、これを備える粘着ラベル発行装置及びプリンタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば食品のPOSラベルや物流・搬送ラベル、医療用ラベル、バゲッジタグ、瓶・缶類の表示ラベル等に用いられる粘着ラベルとしては、基材の表面に形成された記録面(印字面)と、基材の裏面に形成された粘着層と、この粘着層を被覆する剥離紙(セパレータ)と、で構成されているものが広く知られている。
そのため、使用する場合には、記録面に例えばバーコードや価格等の所定の情報を印字した後、剥離紙を粘着層から剥離する必要がある。しかしながら、剥離した剥離紙を回収してリサイクルすることが実際上困難であるため、剥離紙が産業廃棄物となる問題があった。
【0003】
そこで、近年では環境保全や環境負荷軽減の観点から、剥離紙を使用しない粘着ラベルが用いられるようになっている。
例えば、記録面の表面にシリコン樹脂等の離型剤を塗布し、粘着ラベルがロール状に巻回されても記録面と粘着層との離型性が確保されるものが知られている。また、粘着層として加熱により粘着性を発現する熱活性粘着剤層を用いたものも知られている。更には、粘着層の表面全体に非粘着性の樹脂層を被覆し、加熱によりこの樹脂層に穿孔(微小開口)を形成することで粘着層を露出させて、粘着性を発現させるものが提案されている。
【0004】
このうち、粘着層を樹脂層で被覆した粘着ラベルは、樹脂層に穿孔を形成する箇所を自在に制御することによって必要な領域だけに粘着性を発現させたり、それとは逆に穿孔を形成する箇所を減らすことで粘着力を低下させたりする等、粘着力を自在に制御し易いという利点がある。
この場合において、上記樹脂層を加熱して穿孔を形成するための手段としては、複数の発熱素子がライン状に配列されたサーマルヘッドが有効である。これは、所望する発熱素子だけを選択的に発熱させることができ、上記穿孔の形成位置を自在に制御することが可能となるためである。
【0005】
また、上記した樹脂層としては、例えば下記特許文献1に示されるように、穿孔感度が高く、且つサーマルヘッドの発熱素子のサイズに応じた穿孔形状で穿孔を形成し易い感熱穿孔性フィルムが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−44364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、例えばサーマルヘッドを利用して樹脂層に上記穿孔を連続的に複数ラインで形成し、粘着層を密集して露出させることで粘着力を高める場合、全ての穿孔を発熱素子に応じた穿孔形状で形成することが難しい場合があった。
【0008】
この点について詳細に説明する。
図13に示すように、粘着ラベル100を矢印方向にラベル送りしながら、サーマルヘッド110の複数の発熱素子111に熱エネルギーを印加して発熱させ、図14に示すように、粘着ラベル100の樹脂層101に、複数の穿孔120がラベル幅方向に並ぶ穿孔ラインLを複数ライン(図示の場合は3ライン)連続的に形成する場合を例に挙げて説明する。
なお、図14は、全ての穿孔ラインL(L1〜L3)の穿孔120が発熱素子111の形状に対応して形成され、粘着ラベル100の粘着層102が均一に露出した理想的な状態を図示している。
【0009】
はじめに、図13及び図14に示すようにサーマルヘッド110の発熱素子111を発熱させ、粘着ラベル100の樹脂層101に1ライン目の穿孔ラインL(L1)を形成すると、加熱によって溶融された樹脂層101の一部は穿孔120の周囲に拡散するように逃げていくが、溶融された残りの部分については発熱素子111に付着し易い。
そのため、図15及び図16に示すように、この付着した樹脂層101の一部分101aは、粘着ラベル100のラベル送り(図中の矢印方向)と相まって捲れ上がった状態となってしまい易く、さらなるラベル送りによって上記穿孔ラインL(L1)の下流側に位置する樹脂層101上に重なるように流れ込み易かった。
【0010】
これにより、2ライン目の穿孔ラインL(L2)の形成予定箇所における樹脂層101の膜厚(T1)が他の部分の膜厚(T2)よりも厚くなり易かった。そのため、1ライン目と同じ熱量で発熱素子111を発熱させたとしても、所望の穿孔形状で穿孔ラインL(L2)を形成することが難しい、又は1ライン目の穿孔ラインL(L1)よりも小さな開口面積で穿孔ラインL(L2)が形成されてしまう可能性が高かった。
【0011】
その結果、全ての穿孔ラインLの穿孔120を発熱素子111に応じた穿孔形状で形成することは難しく、実際上、図14に示すような理想的な開口状態とすることは困難であった。従って、安定した穿孔形状で穿孔ラインLを形成することができず、所望の粘着力を発現させることができないおそれがあった。
また、上述した問題は、上記特許文献1に記載された感熱穿孔性フィルムを用いた場合でも同様である。そのうえ、感熱穿孔性フィルムを用いた場合には、フィルム自体が高価であるため粘着ラベルのコスト高をも招き易かった。
【0012】
本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その目的は、連続的に穿孔を形成したとしても、均一な穿孔形状で全ての穿孔を形成でき、安定した粘着力を発現させることができる粘着力発現ユニット、これを備える粘着ラベル発行装置及びプリンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、前記課題を解決するために以下の手段を提供する。
(1)本発明に係る粘着力発現ユニットは、基材の一方の面上に設けられた印字可能層、及び他方の面上に設けられ、非粘着性の機能層で被覆された粘着層、を具備する粘着ラベルを加熱して、その粘着力を発現させる粘着力発現ユニットであって、一列に配列された複数の発熱素子を有し、前記粘着層側から前記粘着ラベルを加熱して各発熱素子により機能層に穿孔を形成させるサーマルヘッドと、前記粘着ラベルを前記サーマルヘッドとの間で挟み込みながら搬送させるプラテンローラと、複数の前記発熱素子に熱エネルギーを各別に印加して、その発熱を制御する制御部と、を備え、前記制御部が、前記印加を繰り返し行って複数の前記穿孔が一列に並んだ穿孔ラインを連続的に複数形成する際、前段の穿孔ライン形成時に前記発熱素子に印加する熱エネルギーよりも、エネルギー量が高い高熱エネルギーを前記発熱素子に印加して穿孔ラインを形成させることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る粘着力発現ユニットによれば、制御部がサーマルヘッドの複数の発熱素子に対して熱エネルギーを各別に印加すると、印加された各発熱素子はその熱エネルギーのエネルギー量(熱量)で発熱する。そのため、サーマルヘッドに接している粘着ラベルの機能層のうち、各発熱素子が接している部分だけを局所的に加熱でき、その部分を溶融させて穿孔を形成することができる。これにより、機能層に穿孔が一列に並んだ穿孔ラインを形成することができる。
また、上記穿孔が形成されることで、該穿孔を通じて粘着ラベルの粘着層が露出するので、それにより粘着力を発現させることができる。そして、プラテンローラによる粘着ラベルの搬送に伴って複数の発熱素子への印加を繰り返し行うことで、機能層に上記穿孔ラインを搬送方向に連続的に複数ライン形成することができる。これにより、粘着ラベルの所望する領域に粘着力を発現させることができる。
【0015】
ところで、制御部は複数の穿孔ラインを形成する際、前段の穿孔ラインを形成する際に発熱素子に印加した熱エネルギーよりも、エネルギー量が高い高熱エネルギーを発熱素子に印加することで現時点の穿孔ラインを形成するように制御している。例えば、1本目の穿孔ラインの形成時に印加した熱エネルギーよりも、エネルギー量が高い高熱エネルギーを印加して2本目の穿孔ラインを形成させる。
そのため、1本目の穿孔ライン形成時に、溶融した機能層の一部が仮にサーマルヘッドに付着してしまい、粘着ラベルの搬送に伴って2本目の穿孔ラインの穿孔形成予定位置である機能層上に重なって膜厚が厚くなってしまったとしても、この膜厚が厚くなった機能層を十分なエネルギー量で加熱することができる。従って、1本目の穿孔ラインの形成時と同様に、確実に機能層を溶融することができ、適切に開口した穿孔を具備する穿孔ラインを引き続き形成することができる。
その結果、複数の穿孔ラインにおける全ての穿孔を、発熱素子に対応した均一な穿孔形状で形成することができ、安定した粘着力を粘着ラベルに発現させることができる。
【0016】
(2)上記本発明に係る粘着力発現ユニットにおいて、前記制御部は、複数の前記穿孔ラインを形成するにあたって、同一の前記発熱素子に連続して前記熱エネルギーを印加させる必要がある場合には、その発熱素子に対してのみ前記高熱エネルギーを印加させることが好ましい。
【0017】
この場合には、全ての発熱素子に対して一律に高熱エネルギーを印加させるのではなく、同一の発熱素子に連続して熱エネルギーを印加させる必要がある場合にだけ、その発熱素子に対して高熱エネルギーを印加する。つまり、粘着力を発現させたい領域の位置やサイズ、粘着力の強弱等によって、各穿孔ラインを形成する毎に、印加を必要とする発熱素子と印加を必要としない発熱素子とに分かれる場合がある。このような場合、例えば1本目の穿孔ライン形成時に印加を行った発熱素子を、2本目の穿孔ライン形成時に連続して印加させる場合と、印加させない場合とがある。
制御部は、この2つの場合のうち、同一の発熱素子に対して連続して印加を行う場合に高熱エネルギーを印加させる。これにより、必要とされる発熱素子に対してのみ高熱エネルギーを印加するので、電力消費を抑制することができるうえ、サーマルヘッド自体の温度上昇を抑制し易い。
【0018】
(3)上記本発明に係る粘着力発現ユニットにおいて、前記制御部は、同一の前記発熱素子に対して3ライン以上連続して前記熱エネルギーを印加させる場合には、3ライン目以降については2ライン目に印加した前記高熱エネルギーを引き続き印加することが好ましい。
【0019】
この場合には、同一の発熱素子に連続して印加を行い、穿孔ラインを3ライン以上連続して形成するにあたって、制御部は段階的にエネルギー量を高めるのではなく、3ライン目以降はエネルギー量を高くした2ライン目の高熱エネルギーを引き続き印加する。これにより、電力消費の抑制とサーマルヘッドの温度上昇とをより効果的に抑制し易い。
【0020】
(4)上記本発明に係る粘着力発現ユニットにおいて、前記制御部は、複数の前記穿孔ラインを形成するにあたって、前記高熱エネルギーを印加した前記発熱素子への印加を一旦停止した後、それ以降に行う後段の穿孔ライン形成時に該発熱素子に対して印加を再開する場合には、最初に印加した前記熱エネルギーを印加することが好ましい。
【0021】
この場合には、発熱素子への印加を一旦停止させているので、サーマルヘッドに溶融した機能層の一部が付着したとしても印加を停止させている間に断ち切り易く、それ以降に行う後段の穿孔ラインの穿孔形成予定位置である機能層上にまで引きずってしまい難い。従って、1ライン目の穿孔ラインの形成時と同じ状況で穿孔を形成でき、最初に印加した熱エネルギーを利用して該穿孔を発熱素子に対応した均一な穿孔形状で形成することが可能である。
特に、熱エネルギーのエネルギー量を元に戻すことができるので、無駄な電力消費を抑制し易いうえ、サーマルヘッド自体の温度上昇を抑制し易い。
【0022】
(5)上記本発明に係る粘着力発現ユニットにおいて、前記高熱エネルギーは、当初に印加した熱エネルギーよりも大きく、且つ2倍以下のエネルギー量とされていることが好ましい。
【0023】
この場合には、高熱エネルギーを印加するにあたって、最大でもエネルギー量を2倍にする程度であるので、電力消費をできるだけ抑制しながら、発熱素子に対応した穿孔形状の穿孔を安定して形成することができる。
【0024】
(6)上記本発明に係る粘着力発現ユニットにおいて、前記制御部は、前記熱エネルギーの印加時よりも印加電圧のパルス幅を長くすることでエネルギー量を高め、前記高熱エネルギーとして印加することが好ましい。
【0025】
この場合には、印加電力を一定(抵抗値及び印加電圧を一定)にしたまま、印加電圧のパルス幅を長く(印加時間を長く)するだけの簡単な制御でエネルギー量を高めることができるので、所望するエネルギー量の熱エネルギーを発熱素子に対して正確に印加し易い。
【0026】
(7)上記本発明に係る粘着力発現ユニットにおいて、前記制御部は、複数の前記穿孔ラインが前記発熱素子間のピッチ以下の狭ピッチで連続的に配列されるように、前記印加を周期的に行うことが好ましい。
【0027】
この場合には、発熱素子に対応した穿孔形状で形成された穿孔を、上記狭ピッチで複数ライン形成できるので、例えば粘着ラベルの所望する領域に粘着力を集中的に発現させて、強い粘着強度を確保し易い。
【0028】
(8)上記本発明に係る粘着力発現ユニットにおいて、前記サーマルヘッドの温度を検出する温度検出センサを備え、前記制御部は、前記温度検出センサで検出された温度に基づいて前記サーマルヘッドの温度特性の変化を算出し、その変化した温度特性に応じてエネルギー量を補正しながら前記印加を行うことが好ましい。
【0029】
この場合には、蓄熱効果によるサーマルヘッドの温度特性に応じてエネルギー量を補正しながら印加を行うので、より適切なエネルギー量の熱エネルギーを印加でき、発熱素子に対応した穿孔形状の穿孔をより安定して形成することができる。
【0030】
(9)上記本発明に係る粘着力発現ユニットにおいて、前記制御部は、前記印加を同時に行う前記発熱素子の数に基づいて前記サーマルヘッドの温度特性の変化を算出し、その変化した温度特性に応じてエネルギー量を補正しながら前記印加を行うことが好ましい。
【0031】
この場合には、同時に印加する発熱素子の数に起因する蓄熱効果によってサーマルヘッドの温度特性が変化するが、該温度特性に応じてエネルギー量を補正しながら印加を行うので、より適切なエネルギー量の熱エネルギーを印加でき、発熱素子に対応した穿孔形状の穿孔をより安定して形成することができる。
【0032】
(10)本発明に係る粘着ラベル発行装置は、上記本発明に係る粘着力発現ユニットと、該粘着力発現ユニットよりも前記搬送方向の上流側に配設され、帯状のラベル用紙を所望の長さにカットして前記粘着ラベルとして粘着力発現ユニットに受け渡すカッターユニットと、を備えていることを特徴とする。
【0033】
本発明に係る粘着ラベル発行装置によれば、カッターユニットによって帯状のラベル用紙を所望する長さにカットした後、粘着力発現ユニットによって所望する領域だけの機能層を加熱して安定した粘着力を発現させることができるので、高品質な粘着ラベルを発行することができる。
【0034】
(11)本発明に係るプリンタは、上記本発明に係る粘着ラベル発行装置と、前記粘着力発現ユニットよりも前記搬送方向の上流側に配設され、前記印字可能層に印字を行う印字ユニットと、を備えていることを特徴とする。
【0035】
本発明に係るプリンタによれば、粘着力発現ユニットによって粘着力を発現させる前に、印字可能層に所望の情報を安定して印字できるので、各種の情報が明瞭に印字され、且つ安定した粘着力が発現された高品質な粘着ラベルを得ることができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、連続的に穿孔ラインを複数形成したとしても、発熱素子に対応した均一な穿孔形状で全ての穿孔を形成することができ、粘着ラベルに安定した粘着力を発現させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係る第1実施形態を示す図であり、粘着力発現ユニットを具備する粘着ラベル発行装置の構成図である。
【図2】図1に示す粘着ラベルの拡大断面図である。
【図3】図1に示す粘着力発現ユニットのサーマルヘッドの平面図である。
【図4】図3に示すサーマルヘッドのA−A断面図である。
【図5】図3に示すサーマルヘッドの電極部及び発熱素子の拡大平面図である。
【図6】図1に示す粘着力発現ユニットの構成図である。
【図7】粘着ラベルの平面図であって、機能層に複数の穿孔ラインを形成し、粘着力を発現させた状態を示す図である。
【図8】本発明に係る第2実施形態を示す図であり、粘着力発現ユニットを具備する粘着ラベル発行装置の構成図である。
【図9】図8に示す粘着力発現ユニットの構成図である。
【図10】粘着ラベルを発行する際のフローチャートである。
【図11】粘着ラベルを発行するにあたって、穿孔ラインと発熱素子との関係を示す図である。
【図12】本発明に係る第3実施形態を示す図であり、粘着ラベル発行装置を具備するプリンタの構成図である。
【図13】従来方法により粘着ラベルに粘着力を発現させる場合の、サーマルヘッド及び粘着ラベルの拡大断面図である。
【図14】機能層に複数の穿孔ラインを形成し、粘着力を発現させた状態を示す図であって、理想的な穿孔形状で穿孔が開口している状態を示す図である。
【図15】図13に示した状態の後、粘着ラベルをラベル送りした状態を示す断面図である。
【図16】図15に示した状態の後、粘着ラベルをさらにラベル送りした状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
<第1実施形態>
以下、本発明に係る第1実施形態を、図面を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態の粘着ラベル発行装置1は、粘着ラベル10用のロール紙Rを使用し、そのロール紙Rから繰り出された帯状のラベル用紙Pを所定の長さにカットして粘着ラベル10とすると共に、該粘着ラベル10に粘着力を発現させた状態で発行する装置である。
なお、本実施形態では、図1に示す状態において、紙面に対して右側を前方F、左側を後方とし、ラベル用紙P及び粘着ラベル10は前方F側に送り出されるものとする。また、紙面に対して上側を上方、下側を下方とする。
【0039】
(粘着ラベル)
上記したロール紙Rは、図示しない芯材に帯状のラベル用紙Pが巻回された構成とされている。そして、上記したように、この帯状のラベル用紙Pがカットされることで粘着ラベル10となる。
この粘着ラベル10は、図2に示すように、基材11と、該基材11の一方の面上に積層された印字可能層12と、基材11の他方の面上に積層された粘着層13と、該粘着層13を被覆してその粘着を規制する非粘着性の機能層14と、を備えている。
【0040】
印字可能層12は、加熱によって発色する感熱性記録層であり、基材11の一方の面上に全面に亘って形成されている。粘着層13は、例えば水、溶剤や熱等を用いなくても常温で僅かな圧力を短時間で加えるだけで粘着性が発現される感圧性粘着剤からなる層であり、基材11の他方の面上に全面に亘って形成されている。
【0041】
なお、上記感圧性粘着剤としては、凝集力と弾性力とを共に有し、且つ高い粘着性を有する一方、容易に剥離可能とされるものが好ましい。但し、粘着層13は、感圧性粘着剤からなるものに限定されず、例えば、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリイソブチレンゴム等のゴム系粘着剤や、ガラス転移点の低いモノマーと高いモノマーとを共重合した非架橋系のアクリル系粘着剤や、高凝集力のシリコンと高粘着力のシリコンレジンとからなるシリコン系粘着剤等からなるものであっても構わない。
【0042】
機能層14は、粘着層13を全面に亘って被覆する層であり、加熱によって穿孔15が形成される感熱性フィルム等からなる。上記穿孔15は、後述するサーマルヘッド30の発熱素子31によって局所的に加熱されることで開口される孔である。そして、この穿孔15が形成されることで樹脂層が穿孔15を通じて外部に露出し、これにより粘着力が発現される。
【0043】
(粘着ラベル発行装置)
続いて、上記粘着ラベル発行装置1について説明する。
図1に示すように、この粘着ラベル発行装置1は、上記ロール紙Rを軸支する保持部20と、該ロール紙Rから繰り出されたラベル用紙Pを前方F側に搬送する第1搬送ローラ21と、該第1搬送ローラ21によって搬送されてきたラベル用紙Pを所望の長さにカットして粘着ラベル10とするカッターユニット22と、カットされた粘着ラベル10を前方F側に搬送する第2搬送ローラ23と、該第2搬送ローラ23によって搬送されてきた粘着ラベル10を機能層14側から加熱して粘着力を発現させる粘着力発現ユニット24と、粘着力が発現された粘着ラベル10を前方F側にさらに搬送する第3搬送ローラ25と、を備えている。
【0044】
(カッターユニット)
カッターユニット22は、ラベル用紙Pを上下に挟んで互いに刃先が向かい合うように配設された固定刃22a及び可動刃22bを有するカッター機構であり、第1搬送ローラ21の搬送方向下流側で、且つ第2搬送ローラ23の搬送方向上流側に配設されている。固定刃22aはラベル用紙Pの下方に配設され、可動刃22bはラベル用紙Pの上方に配設されている。但し、ラベル用紙Pの上方に固定刃22aを配設し、下方に可動刃22bを配設しても構わない。
可動刃22bは、カッター駆動部26による駆動によって、固定刃22aに対して接近離間可能にスライド自在とされており、固定刃22aとの間でラベル用紙Pを上下に挟み込みながら切断することが可能とされている。そして、このカッターユニット22による切断によって得られた粘着ラベル10は、第2搬送ローラ23を介して粘着力発現ユニット24に受け渡される。
【0045】
(粘着力発現ユニット)
粘着力発現ユニット24は、一列に配列された複数の発熱素子31を有し、粘着ラベル10の機能層14を各発熱素子31により各別に加熱することで該機能層14に穿孔15を形成させるサーマルヘッド(ラインサーマルヘッド)30と、粘着ラベル10をサーマルヘッド30との間で挟み込みながら前方F側に搬送させるプラテンローラ32と、を備えている。
【0046】
サーマルヘッド30は、図3及び図4に示すように、放熱性基板であるセラミック基板35と、該セラミック基板35上に全面に亘って積層されたグレーズ層(蓄熱層)36と、該グレーズ層36上に積層された発熱素子31及び電極部37と、発熱素子31及び電極部37の一部を保護する保護層38と、を備えている。
【0047】
セラミック基板35は、図示しないヘッド支持基板によって支持されていると共に、図示しないコイルバネ等によってプラテンローラ32側に付勢されて、該プラテンローラ32の外周面に対して圧接されている。これにより、粘着ラベル10は、サーマルヘッド30とプラテンローラ32との間に挟み込まれ、サーマルヘッド30に対して押し付けられた状態とされている(図4参照)。
上記グレーズ層36は、例えば印刷されたガラスペーストが所定の温度(例えば1300から1500℃)で焼成されることで形成された層とされている。
【0048】
発熱素子31は、グレーズ層36上に、例えばTa−SiO2等からなる発熱抵抗体をスパッタ等で積層し、その後、フォトリソグラフィ技術等によってパターニングされることで形成されている。この際、図5に示すように、発熱素子31はセラミック基板35の長手方向に沿って一列に所定のピッチW1で等間隔に配列されている。なお、各発熱素子31は、平面視略正方形状とされている。
【0049】
電極部37は、図3〜図5に示すように、グレーズ層36上に例えばAl、Cu、Au等をスパッタ等で積層し、その後、フォトリソグラフィ技術等によってパターニングされることで形成されたものであって、上記した複数の発熱素子31の全てに導通した共通電極部37aと、各発熱素子31に対して各別に導通した個別電極部37bと、で構成されている。これにより、電極部37を通じて複数の発熱素子31のそれぞれに対して熱エネルギーを印加して、各別に発熱させることが可能とされている。
【0050】
また、上記した各個別電極部37bには、樹脂等からなる封止部39aで保護されたIC部39が搭載されている。このIC部39は、後述するCPU45と協働して、発熱素子31に対する上記発熱を制御している。
よって、これらIC部39及びCPU45は、複数の発熱素子31に対して電極部37を介して熱エネルギーを各別に印加して、その発熱を制御する制御部40として機能する。
【0051】
保護層38は、電極部37及び発熱素子31の酸化や摩耗を防止するための層であって、例えばSi−O−N、或いはSi−Al−O−N等の硬質金属酸化物等から形成されている。そして、この保護層38は、複数の発熱素子31及び共通電極部37aを完全に覆って保護していると共に、個別電極部37bの一部を覆って保護している。
【0052】
図1及び図4に示すようにプラテンローラ32は、後述するCPU45によって駆動が制御された駆動モータ41によって前方F側に回転させられるゴムローラであって、粘着ラベル10をサーマルヘッド30との間で挟み込みながら前方F側に搬送させている。
【0053】
また、本実施形態の粘着力発現ユニット24は、図6に示すように、CPU45と、このCPU45によって実行される制御プログラム等が格納されたROM46と、機能層14に形成する穿孔15の形成パターンデータ等が格納されるRAM47と、この穿孔15の形成パターンデータ等の入力、設定又は呼び出し等を行うための操作部48と、穿孔15の形成パターンデータ等を表示する表示部49と、CPU45と上記した各機能部と間のデータの入出力を行うインターフェース部(I/F部)50と、を備えている。
上記インターフェース部50には、サーマルヘッド30のIC部39、プラテンローラ32の駆動モータ41、第1〜第3搬送ローラ21、23、25やカッター駆動部26がそれぞれ接続されており、それぞれ作動が制御されている。
【0054】
また、CPU45及びIC部39からなる制御部40は、プラテンローラ32の駆動に伴って複数の発熱素子31に熱エネルギーへの印加を繰り返し行うことで、図2及び図7に示すように、粘着ラベル10の機能層14に複数の穿孔15が一列に並んだ穿孔ラインLを連続的に複数形成するように制御を行っている。なお、図示の例では、穿孔ラインLを搬送方向に連続的に3ライン形成した場合を図示している。
特に、制御部40は、前段の穿孔ラインLの形成時に発熱素子31に印加する熱エネルギーよりも、エネルギー量が高い高熱エネルギーを発熱素子31に印加して穿孔ラインLを形成させるように制御している。
【0055】
なお、上記エネルギー量は印加電圧のパルス幅と印加電力とに基づいて決定されるものであり、印加電力は発熱素子31の平均抵抗値と該発熱素子31への印加電圧とに基づいて決定されるものである。
本実施形態では、制御部40は上記パルス幅を長く(印加時間を長く)することでエネルギー量を高め、高熱エネルギーとして印加するように制御している。
【0056】
(粘着ラベルの作製)
次に、上記のように構成された粘着力発現ユニット24を具備する粘着ラベル発行装置1を利用して、粘着力を発現させた状態で粘着ラベル10を発行する場合について説明する。なお、本実施形態では、ロール紙Rとされている段階で、既に印字可能層12に情報が印字されているものとする。
【0057】
まず、CPU45は、第1〜第3搬送ローラ21、23、25を駆動させると共に駆動モータ41を作動させてプラテンローラ32を回転させ、さらに各IC部39を作動させてサーマルヘッド30の複数の発熱素子31に対して熱エネルギーを各別に印加させる。
【0058】
第1搬送ローラ21が駆動することによって、図1に示すように、保持部20に軸支されているロール紙Rからラベル用紙Pが繰り出され、カッターユニット22の固定刃22aと可動刃22bとの間を通過しながら前方F側に搬送される。そして、ラベル用紙Pが所望の長さ分だけ通過すると、CPU45がカッター駆動部26を作動させ、可動刃22bを固定刃22aに向けてスライド移動させる。これにより、ラベル用紙Pを可動刃22bと固定刃22aとの間で挟み込みながら切断することができ、所望の長さに調整された粘着ラベル10とすることができる。
【0059】
そして、カットされた粘着ラベル10は、第2搬送ローラ23によってさらに前方F側に搬送され、粘着力発現ユニット24のサーマルヘッド30とプラテンローラ32との間に送られ、該プラテンローラ32によってサーマルヘッド30に押し付けられながら前方F側に搬送される。
【0060】
この間、制御部40がサーマルヘッド30の複数の発熱素子31に対して熱エネルギーを各別に印加させるので、印加された各発熱素子31はその熱エネルギーのエネルギー量(熱量)で発熱する。そのため、プラテンローラ32によってサーマルヘッド30に押し付けられている粘着ラベル10の機能層14のうち、保護層38を介して各発熱素子31が接している部分だけを局所的に加熱することができ、その部分を溶融させて穿孔15を形成することができる。これにより、図7に示すように、機能層14に穿孔15が一列に並んだ1ライン目の穿孔ラインL(L1)を形成することができる。
【0061】
また、上記穿孔15が形成されることで、該穿孔15を通じて粘着ラベル10の粘着層13が露出するので、それにより粘着力を発現させることができる。そして、プラテンローラ32による粘着ラベル10の搬送に伴って、複数の発熱素子31への印加を繰り返し行うことで、機能層14に上記穿孔ラインLを搬送方向に連続的に3つ(L1〜L3)を形成することができる。これにより、粘着ラベル10の所望する領域に粘着力を発現させることができる。
【0062】
ところで、制御部40は穿孔ラインLを形成する際、前段の穿孔ラインLを形成する際に発熱素子31に印加した熱エネルギーよりも、エネルギー量が高い高熱エネルギーを発熱素子31に印加することで現時点の穿孔ラインLを形成するように制御している。
つまり、1本目の穿孔ラインL(L1)の形成時に印加した熱エネルギーよりも、エネルギー量が高い高熱エネルギーを印加して2本目の穿孔ラインL(L2)を形成させる。具体的には、印加電力を一定(発熱素子31の抵抗値及び印加電圧を一定)にしたまま、印加電圧のパルス幅を長く(印加時間を長く)することでエネルギー量を高めて、高熱エネルギーを印加する。
【0063】
そのため、1本目の穿孔ラインL(L1)の形成時に、溶融した機能層14の一部が仮にサーマルヘッド30に付着してしまい、粘着ラベル10の搬送に伴って2本目の穿孔ラインL(L2)の穿孔形成予定位置である機能層14上に重なって膜厚が厚くなってしまったとしても、この膜厚が厚くなった機能層14を十分なエネルギー量で加熱することができる。従って、確実に機能層14を溶融させることができ、1本目の穿孔ラインL(L1)の形成時と同様に、適切に開口した穿孔15を具備する穿孔ラインLを引き続き形成することができる。
その結果、図7に示すように、3本の穿孔ラインL(L1〜L3)における全ての穿孔15を、発熱素子31に対応した均一な穿孔形状で形成することができ、粘着ラベル10に安定した粘着力を発現させることができる。
【0064】
そして、粘着力が発現された粘着ラベル10は、その後、第3搬送ローラ25によって前方F側に搬送される。これにより、粘着力を発現させた状態で、粘着ラベル10を発行させることができる。
【0065】
上記したように、本実施形態の粘着ラベル発行装置1によれば、カッターユニット22によってラベル用紙Pを所望する長さにカットした後、粘着力発現ユニット24によって所望する領域だけに安定した粘着力を発現させることができ、高品質な粘着ラベル10を発行することができる。
【0066】
なお、上記実施形態では、第1〜第3搬送ローラ21、23、25を具備したが、これらは必須なものではなく具備しなくても構わないし、搬送経路等に応じて3つ以上設けても構わない。また、その設置位置は自由に設定して構わない。
また、印加電圧のパルス幅を長くすることでエネルギー量を高めたが、この場合に限定されるものではなく、例えば印加電圧を大きくすることでエネルギー量を高めても構わない。但し、印加電圧を変化させる場合よりもパルス幅を長くする場合の方が簡単な制御でエネルギー量を高めることができるので、所望するエネルギー量の熱エネルギーを発熱素子31に対して正確に印加し易い。
【0067】
また、上記実施形態において、高熱エネルギーを印加する場合、当初に印加した熱エネルギーのエネルギー量よりも大きく、且つ2倍以下のエネルギー量であれば構わない。具体的には、粘着ラベル10の機能層14の材料や膜厚等によって変動するが、当初に印加した熱エネルギーのエネルギー量よりも略1.3〜1.7倍程度大きいエネルギー量を具備する高熱エネルギーを印加すれば、発熱素子31に対応した穿孔形状の穿孔15を形成することが可能となる。
特に、この場合には最大でもエネルギー量を2倍にする程度で済むので、電力消費をできるだけ抑制しながら発熱素子31に対応した穿孔形状の穿孔15を安定して形成することができる。
【0068】
また、上記実施形態において、図7に示すように、複数の穿孔ラインLが発熱素子31間のピッチW1以下の狭ピッチW2で連続的に配列されるように、印加を周期的に行うと良い。こうすることで、発熱素子31に対応した穿孔形状で形成された穿孔15を、上記狭ピッチW2で複数ライン形成できるので、例えば粘着ラベル10の所望する領域に粘着力を集中的に発現させて、強い粘着強度を確保し易い。
【0069】
<第2実施形態>
次に、本発明に係る第2実施形態について説明する。なお、この第2実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
【0070】
本実施形態の粘着ラベル発行装置60は、図8に示すように、搬送されてきた粘着ラベル10の有無を検出する第1検出センサ61及び第2検出センサ62と、サーマルヘッド30の温度を検出する温度検出センサ63と、を備えている。
【0071】
上記第1検出センサ61は、粘着力発現ユニット24と第2搬送ローラ23との間に配設されており、粘着力発現ユニット24まで粘着ラベル10が搬送されてきた否かを検出している。また、上記第2検出センサ62は、粘着力発現ユニット24と第3搬送ローラ25との間に配設されており、粘着力発現ユニット24から粘着ラベル10が送り出されたか否かを検出している。これら第1検出センサ61及び第2検出センサ62としては、例えば光電式の非接触センサ等であり、図9に示すように、インターフェース部50を通じて検出結果をCPU45に出力している。
上記温度検出センサ63は、例えばセラミック基板35に内蔵されたサーミスタであり、同様にインターフェース部50を通じて検出結果をCPU45に出力している。
【0072】
また、本実施形態のCPU45は、操作部48を介して予め入力された穿孔15の形成パターンデータに基づいて、各穿孔ラインLを形成するにあたって、複数の発熱素子31を、印加を必要とする発熱素子31と印加を必要としない発熱素子31とに区分けし、印加データとしてRAM47に記憶させている。そして、この記憶された印加データに基づいて、印加を必要とする発熱素子31だけに熱エネルギーを印加して、穿孔ラインLを複数形成するように制御している。
【0073】
この際、制御部40は、同一の発熱素子31に連続して熱エネルギーを印加させる必要がある場合には、その発熱素子31に対してのみ高熱エネルギーを印加させるように制御している。
また、同一の発熱素子31に対して3ライン以上連続して熱エネルギーを印加させる場合には、3ライン目以降については2ライン目に印加した高熱エネルギーを引き続き印加するように制御している。
更に、高熱エネルギーを印加した発熱素子31への印加を一旦停止した後、それ以降に行う後段の穿孔ラインLの形成時に該発熱素子31に対して印加を再開する場合には、最初に印加した熱エネルギーを印加するように制御している。
【0074】
加えて、本実施形態の制御部40は、温度検出センサ63で検出されたサーマルヘッド30の温度と、印加を同時に行う発熱素子31の数と、に基づいてサーマルヘッド30の温度特性の変化を算出し、その変化した温度特性に応じてエネルギー量を補正しながら印加を行うように設定されている。
【0075】
(粘着ラベルの作製)
次に、上記のように構成された粘着ラベル発行装置60を利用して、粘着ラベル10を発行する場合について、図10に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0076】
はじめに、操作部48を介して、粘着ラベル10のサイズ情報、サーマルヘッド30の発熱素子31の合計数(同時に印加できる発熱素子31の最大ドット数)を入力する(S1)と共に、粘着力を発現させる穿孔15の形成パターンデータ(穿孔ラインLの数m等)を入力する(S2)。
すると、制御部40は、これらの入力データをRAM47に記憶させると共に、上記形成パターンデータに基づいて、各穿孔ラインLのそれぞれについて、印加を必要とする発熱素子31と印加を必要としない発熱素子31とに区分けし、印加データとして記憶させる。
【0077】
次いで、制御部40は、1ライン目の穿孔ラインL(L1)を形成するにあたって、上記入力データ及び印加データに基づいて、記憶された発熱素子31の合計数に対して、印加が必要とされる発熱素子31の数がどの程度の割合であるか把握し、複数回(n回)に分割して印加を行う分割数及びそのグループ分けを行う(S3)。
つまり、発熱素子31の合計数(合計ドット数)が例えば640個であって、印加が必要とされる発熱素子31の数が320個の場合、一度に発熱素子31の合計数の半分にあたる320個の発熱素子31に印加を行うと、サーマルヘッド30自体の温度が上昇し易い。そのため、印加が必要とされる320個の発熱素子31を分割して複数のグループに分け、グループ毎に印加を行うための設定である。また、同時に印加する発熱素子31の数を減らすことは、ピーク電流を抑制し、電源への負担を軽減することにも寄与する。
【0078】
次いで、制御部40は温度検出センサ63からの検出結果に基づいて、現時点でのサーマルヘッド30の温度を把握する(S4)。そして、制御部40は、サーマルヘッド30の温度と、上記1グループにおける発熱素子31の数と、に基づいて印加電圧のパルス幅を設定する(S5)。
つまり、サーマルヘッド30の温度及び同時に印加する発熱素子31の数に基づいて、印加する熱エネルギーのエネルギー量を設定する。
【0079】
次いで、制御部40は、第1搬送ローラ21、第2搬送ローラ23及びカッター駆動部26を作動させることで、ラベル用紙Pをカットして粘着ラベル10とし、該粘着ラベル10を粘着力発現ユニット24に向けて搬送させる(S6)。ここで、制御部40は、第1検出センサ61によって粘着ラベル10の搬送方向先端部が検出される(S7)と、サーマルヘッド30の発熱素子31のうちグループ分けした発熱素子31に対して、上記パルス幅で熱エネルギーを印加させる(S8)。そして、該印加をn回繰り返し行って、全てのグループの発熱素子31への印加を行う。
【0080】
これにより、図11に示すように、粘着ラベル10の機能層14に1ライン目の穿孔ラインL(L1)を形成することができる。なお、図中には、サーマルヘッド30の発熱素子31のうち、電圧が印加された発熱素子31を合わせて図示している。また、図中における点線は印加を行わなかった発熱素子31を示す。
【0081】
上記した1ライン目の穿孔ラインL(L1)の形成が終了すると、制御部40は、2ライン目の穿孔ラインL(L2)を形成するにあたって、再び上記入力データ及び印加データに基づいて、記憶された発熱素子31の合計数に対して、印加が必要とされる発熱素子31の数がどの程度の割合であるか把握し、複数回(n回)に分割して印加を行う分割数及びそのグループ分けを行う(S10)。
特に、上記グループ分けを行う際、1ライン目の穿孔ラインL(L1)の形成時に、同一の発熱素子31を再び連続的に印加させる必要があるグループと、1ライン目には印加をせず、2ライン目ではじめて印加を行う必要があるグループと、にグループ分けする。
【0082】
次いで、制御部40は、発熱素子31を再び連続的に印加させる必要があるグループについては、1ライン目の形成時に印加したパルス幅よりも数倍(略1.3〜1.7倍)長いパルス幅で発熱素子31に印加を行うように設定する(S11)。つまり、エネルギー量を大きくした高熱エネルギーを印加するように設定する。
これに対して、1ライン目には印加をせず、2ライン目で印加を行う必要があるグループについては、1ライン目の形成時に印加したパルス幅と同じパルス幅で印加を行うように設定する(S12)。
なお、上述したいずれの場合も、温度検出センサ63による検出結果に基づき、サーマルヘッド30の温度に応じたエネルギー量の温度補正を行う。
【0083】
そして、制御部40は、グループ分けした発熱素子31に対して、上記各パルス幅で熱エネルギーを印加させ、該印加をn回繰り返し行って、全てのグループの発熱素子31への印加を行う(S8)。これにより、図11に示すように、粘着ラベル10の機能層14に2ライン目の穿孔ラインL(L2)を形成することができる。
【0084】
そして、上記した動作を同様に繰り返し行うことで、3ライン目の穿孔ラインL(L3)、4ライン目の穿孔ラインL(L4)といったように、複数の穿孔ラインLを形成することができ、粘着ラベル10の機能層14に対して、入力された穿孔15の形成パターンデータ通りに穿孔15を形成することができる。
【0085】
そして、制御部40は、全ての穿孔15を形成した後、サーマルヘッド30の発熱素子31への印加を停止する(S20)と共に、第2検出センサ62によって粘着ラベル10の搬送方向後端部が検出(S21)されたことを受けて、プラテンローラ32の駆動を停止させる。そして、粘着ラベル10が設定位置まで前方F側に搬送された時点で、第3搬送ローラ25を停止させる(S22)。
これにより、形成パターンデータ通りに開口した穿孔15によって粘着力が発現された粘着ラベル10を発行することができる。
【0086】
特に、本実施形態によれば、2本目以降の穿孔ラインLの形成時において、全ての発熱素子31に対して一律に高熱エネルギーを印加させるのではなく、同一の発熱素子31に連続して熱エネルギーを印加させる必要がある場合にだけ、その発熱素子31に対して高熱エネルギーを印加している。(具体的には、図11に示す発熱素子31(31a)のみに高熱エネルギーを印加。)従って、必要とされる発熱素子31に対してのみ高熱エネルギーを印加できるので、サーマルヘッド30自体の温度上昇を抑制し易い。
【0087】
また、同一の発熱素子31に連続して印加を行う場合、制御部40は段階的にエネルギー量を高めるのではなく、3ライン目以降は一度だけエネルギー量を高くした2ライン目の高熱エネルギーを引き続き印加する。(具体的には、図11に示す発熱素子31(31b)に2ライン目と同じエネルギー量の高熱エネルギーを印加。)これにより、電力消費の抑制とサーマルヘッド30の温度上昇とをより効果的に抑制し易い。
【0088】
なお、この場合であっても、3ライン目以降の穿孔ラインLにおける穿孔15を、発熱素子31に対応した均一な穿孔形状で形成することが可能である。つまり、例えば1本目の穿孔ラインL(L1)の形成時に溶融してサーマルヘッド30に付着した機能層14の一部が、2本目の穿孔ラインL(L2)の穿孔形成予定位置である機能層14上に重なってしまったとしても、その部分は一旦加熱されて温度が上昇しているため溶融し易い。そのため、2本目の穿孔ラインL(L2)の形成時に穿孔15の周囲に拡散させて逃がし易く、再度サーマルヘッド30に付着して、3本目の穿孔ラインL(L3)の穿孔形成予定位置である機能層14上に重なってしまい難い。
従って、3ライン目以降、段階的に機能層14の膜厚が厚くなり難いと考えられるので、上記した作用効果を奏効することができる。
【0089】
また、制御部40は、3ライン目以降の穿孔ラインLを形成する際、高熱エネルギーを印加した発熱素子31への印加を一旦停止した後、該発熱素子31に再度印加を行う場合には、最初に印加した熱エネルギーを印加している。(具体的には、図11に示す発熱素子31(31c)に熱エネルギーを印加。)
特に、発熱素子31への印加を一旦停止させているので、サーマルヘッド30に溶融した機能層14の一部が付着していたとしても、印加が停止されているので、それ以降に行う後段の穿孔ラインLの穿孔形成予定位置である機能層14上にまで引きずられ難くなる。従って、1ライン目の穿孔ラインL(L1)の形成時と同じ状況で穿孔15を形成でき、最初に印加した熱エネルギーを利用して穿孔15を発熱素子31に対応した均一な穿孔形状で形成することが可能である。特に、エネルギー量を元に戻すので、さらなる電力消費の抑制を図り易い。
【0090】
更に、温度検出センサ63によりサーマルヘッド30の温度を検出し、蓄熱効果によるサーマルヘッド30の温度特性に応じてエネルギー量を補正しながら印加を行うので、より適切なエネルギー量の熱エネルギーを印加でき、発熱素子31に対応した穿孔形状の穿孔15をより安定して形成することができる。
また、同時に印加する発熱素子31の数に起因する蓄熱効果によってもサーマルヘッド30の温度特性が変化するが、この場合にも対応可能である。
【0091】
<第3実施形態>
次に、本発明に係る第3実施形態について説明する。なお、この第3実施形態においては、第2実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
【0092】
図12に示すように、本実施形態のプリンタ70は、上記した粘着ラベル発行装置1と、第1搬送ローラ21よりも搬送方向上流側に配設され、印字可能層12に印字を行う印字ユニット71と、を備えている。
【0093】
印字ユニット71は、図示しない発熱素子が一列に配列され、ラベル用紙Pの印字可能層12を加熱して発色させることで印字を行う印字用サーマルヘッド72と、ラベル用紙Pを印字用サーマルヘッド72との間で挟み込みながら前方F側に搬送する印字用プラテンローラ73と、を備えている。
なお、印字用サーマルヘッド72及び印字用プラテンローラ73は、上記した粘着力発現ユニット24のサーマルヘッド30及びプラテンローラ32と同様の構成とされており、いずれもCPU45によって作動が制御されている。
【0094】
このように構成されたプリンタ70によれば、粘着力発現ユニット24によって粘着力を発現させる前に、印字可能層12に所望の情報を安定して印字することができるので、各種の情報が明瞭に印刷され、且つ安定した粘着力が発現された高品質な粘着ラベル10を得ることができる。
なお、本実施形態において、印字ユニット71は粘着力発現ユニット24よりも搬送方向の上流側に配設されていれば良く、例えばカッターユニット22と粘着力発現ユニット24との間に配設されていても構わない。
【0095】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0096】
L…穿孔ライン
P…ラベル用紙
W1…発熱素子の間のピッチ
W2…穿孔ライン間のピッチ(狭ピッチ)
1、60…粘着ラベル発行装置
10…粘着ラベル
11…基材
12…印字可能層
13…粘着層
14…機能層
15…穿孔
22…カッターユニット
24…粘着力発現ユニット
30…サーマルヘッド
31…発熱素子
32…プラテンローラ
40…制御部
63…温度検出センサ
70…プリンタ
71…印字ユニット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の一方の面上に設けられた印字可能層、及び他方の面上に設けられ、非粘着性の機能層で被覆された粘着層、を具備する粘着ラベルを加熱して、その粘着力を発現させる粘着力発現ユニットであって、
一列に配列された複数の発熱素子を有し、前記粘着層側から前記粘着ラベルを加熱して各発熱素子により機能層に穿孔を形成させるサーマルヘッドと、
前記粘着ラベルを前記サーマルヘッドとの間で挟み込みながら搬送させるプラテンローラと、
複数の前記発熱素子に熱エネルギーを各別に印加して、その発熱を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記印加を繰り返し行って複数の前記穿孔が一列に並んだ穿孔ラインを連続的に複数形成する際、前段の穿孔ライン形成時に前記発熱素子に印加する熱エネルギーよりも、エネルギー量が高い高熱エネルギーを前記発熱素子に印加して穿孔ラインを形成させることを特徴とする粘着力発現ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の粘着力発現ユニットにおいて、
前記制御部は、複数の前記穿孔ラインを形成するにあたって、同一の前記発熱素子に連続して前記熱エネルギーを印加させる必要がある場合には、その発熱素子に対してのみ前記高熱エネルギーを印加させることを特徴とする粘着力発現ユニット。
【請求項3】
請求項2に記載の粘着力発現ユニットにおいて、
前記制御部は、同一の前記発熱素子に対して3ライン以上連続して前記熱エネルギーを印加させる場合には、3ライン目以降については2ライン目に印加した前記高熱エネルギーを引き続き印加することを特徴とする粘着力発現ユニット。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の粘着力発現ユニットにおいて、
前記制御部は、複数の前記穿孔ラインを形成するにあたって、前記高熱エネルギーを印加した前記発熱素子への印加を一旦停止した後、それ以降に行う後段の穿孔ライン形成時に該発熱素子に対して印加を再開する場合には、最初に印加した前記熱エネルギーを印加することを特徴とする粘着力発現ユニット。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の粘着力発現ユニットにおいて、
前記高熱エネルギーは、当初に印加した熱エネルギーよりも大きく、且つ2倍以下のエネルギー量とされていることを特徴とする粘着力発現ユニット。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の粘着力発現ユニットにおいて、
前記制御部は、前記熱エネルギーの印加時よりも印加電圧のパルス幅を長くすることでエネルギー量を高め、前記高熱エネルギーとして印加することを特徴とする粘着力発現ユニット。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の粘着力発現ユニットにおいて、
前記制御部は、複数の前記穿孔ラインが前記発熱素子間のピッチ以下の狭ピッチで連続的に配列されるように、前記印加を周期的に行うことを特徴とする粘着力発現ユニット。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の粘着力発現ユニットにおいて、
前記サーマルヘッドの温度を検出する温度検出センサを備え、
前記制御部は、前記温度検出センサで検出された温度に基づいて前記サーマルヘッドの温度特性の変化を算出し、その変化した温度特性に応じてエネルギー量を補正しながら前記印加を行うことを特徴とする粘着力発現ユニット。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の粘着力発現ユニットにおいて、
前記制御部は、前記印加を同時に行う前記発熱素子の数に基づいて前記サーマルヘッドの温度特性の変化を算出し、その変化した温度特性に応じてエネルギー量を補正しながら前記印加を行うことを特徴とする粘着力発現ユニット。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の粘着力発現ユニットと、
該粘着力発現ユニットよりも前記搬送方向の上流側に配設され、帯状のラベル用紙を所望の長さにカットして前記粘着ラベルとして粘着力発現ユニットに受け渡すカッターユニットと、を備えていることを特徴とする粘着ラベル発行装置。
【請求項11】
請求項10に記載の粘着ラベル発行装置と、
前記粘着力発現ユニットよりも前記搬送方向の上流側に配設され、前記印字可能層に印字を行う印字ユニットと、を備えていることを特徴とするプリンタ。
【請求項1】
基材の一方の面上に設けられた印字可能層、及び他方の面上に設けられ、非粘着性の機能層で被覆された粘着層、を具備する粘着ラベルを加熱して、その粘着力を発現させる粘着力発現ユニットであって、
一列に配列された複数の発熱素子を有し、前記粘着層側から前記粘着ラベルを加熱して各発熱素子により機能層に穿孔を形成させるサーマルヘッドと、
前記粘着ラベルを前記サーマルヘッドとの間で挟み込みながら搬送させるプラテンローラと、
複数の前記発熱素子に熱エネルギーを各別に印加して、その発熱を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記印加を繰り返し行って複数の前記穿孔が一列に並んだ穿孔ラインを連続的に複数形成する際、前段の穿孔ライン形成時に前記発熱素子に印加する熱エネルギーよりも、エネルギー量が高い高熱エネルギーを前記発熱素子に印加して穿孔ラインを形成させることを特徴とする粘着力発現ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の粘着力発現ユニットにおいて、
前記制御部は、複数の前記穿孔ラインを形成するにあたって、同一の前記発熱素子に連続して前記熱エネルギーを印加させる必要がある場合には、その発熱素子に対してのみ前記高熱エネルギーを印加させることを特徴とする粘着力発現ユニット。
【請求項3】
請求項2に記載の粘着力発現ユニットにおいて、
前記制御部は、同一の前記発熱素子に対して3ライン以上連続して前記熱エネルギーを印加させる場合には、3ライン目以降については2ライン目に印加した前記高熱エネルギーを引き続き印加することを特徴とする粘着力発現ユニット。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の粘着力発現ユニットにおいて、
前記制御部は、複数の前記穿孔ラインを形成するにあたって、前記高熱エネルギーを印加した前記発熱素子への印加を一旦停止した後、それ以降に行う後段の穿孔ライン形成時に該発熱素子に対して印加を再開する場合には、最初に印加した前記熱エネルギーを印加することを特徴とする粘着力発現ユニット。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の粘着力発現ユニットにおいて、
前記高熱エネルギーは、当初に印加した熱エネルギーよりも大きく、且つ2倍以下のエネルギー量とされていることを特徴とする粘着力発現ユニット。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の粘着力発現ユニットにおいて、
前記制御部は、前記熱エネルギーの印加時よりも印加電圧のパルス幅を長くすることでエネルギー量を高め、前記高熱エネルギーとして印加することを特徴とする粘着力発現ユニット。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の粘着力発現ユニットにおいて、
前記制御部は、複数の前記穿孔ラインが前記発熱素子間のピッチ以下の狭ピッチで連続的に配列されるように、前記印加を周期的に行うことを特徴とする粘着力発現ユニット。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の粘着力発現ユニットにおいて、
前記サーマルヘッドの温度を検出する温度検出センサを備え、
前記制御部は、前記温度検出センサで検出された温度に基づいて前記サーマルヘッドの温度特性の変化を算出し、その変化した温度特性に応じてエネルギー量を補正しながら前記印加を行うことを特徴とする粘着力発現ユニット。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の粘着力発現ユニットにおいて、
前記制御部は、前記印加を同時に行う前記発熱素子の数に基づいて前記サーマルヘッドの温度特性の変化を算出し、その変化した温度特性に応じてエネルギー量を補正しながら前記印加を行うことを特徴とする粘着力発現ユニット。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の粘着力発現ユニットと、
該粘着力発現ユニットよりも前記搬送方向の上流側に配設され、帯状のラベル用紙を所望の長さにカットして前記粘着ラベルとして粘着力発現ユニットに受け渡すカッターユニットと、を備えていることを特徴とする粘着ラベル発行装置。
【請求項11】
請求項10に記載の粘着ラベル発行装置と、
前記粘着力発現ユニットよりも前記搬送方向の上流側に配設され、前記印字可能層に印字を行う印字ユニットと、を備えていることを特徴とするプリンタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2013−43670(P2013−43670A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181937(P2011−181937)
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】
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