説明

粘着型光学フィルム、その製造方法および画像表示装置、並びに粘着剤塗布液およびその製造方法

【課題】加熱耐久性、加湿耐久性、高コントラストを満足できる、粘着型光学フィルムを提供すること。
【解決手段】光学フィルムの少なくとも片側に、粘着剤層が積層されている粘着型光学フィルムであって、前記粘着剤層は、溶存酸素濃度が、0.02〜3mg/Lの粘着剤塗布液を塗布した後、乾燥することにより形成されたものであることを特徴とする粘着型光学フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着型光学フィルムおよびその製造方法に関する。さらには、本発明は、前記粘着型光学フィルムを用いた液晶表示装置、有機EL表示装置等の画像表示装置に関する。前記光学フィルムとしては、偏光板、位相差板、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、さらにはこれらが積層されているものを用いることができる。さらには、本発明は、粘着型光学フィルムの粘着剤層の形成に用いる粘着剤塗布液およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置等の画像表示装置の形成に際しては、当該装置を形成する偏光板や位相差板等の各種の光学フィルムが粘着剤層を介して液晶セル等の被着体に貼り合わせられる。前記光学フィルムを液晶セル等の表示パネルに瞬時に固定できること、光学フィルムを固着させるのに乾燥工程を必要としないこと等のメリットを有することから、粘着剤は、光学フィルムの片面に予め粘着剤層として設けられている場合が多い。
【0003】
前記粘着剤には、環境促進試験として通常行われる加熱および加湿等による耐久試験に対して粘着剤に起因する発泡、剥がれ等の不具合が発生しないことが求められる。
【0004】
また上記液晶表示装置等においては、高コントラストな表示が求められる。液晶表示装置等における画像表示は、光学フィルムとともに粘着剤層を通して行なわれるため、高コントラストな表示を得るには、粘着剤層においても高品位な塗布外観が要求される。例えば、粘着剤層に気泡が異物などの欠陥が存在すると画像表示の欠陥となり、画像表示装置としての商品価値が低くなる。
【0005】
従来から、上記用途に係る粘着剤層の形成に用いる粘着剤としては、有機溶剤型粘着剤、水分散型粘着剤等が用いられている。近年、環境負荷の観点から有機溶剤の使用を低減することが望まれており、有機溶剤型粘着剤から、分散媒として水を用いて、水中に粘着剤成分を分散させた水分散型粘着剤への転換が望まれている。水分散型粘着剤としては、例えば、耐熱性、耐湿性の観点から、リン酸系モノマーを用いた水分散型のアクリル系粘着剤が提案されている(特許文献1)。しかしながら、水分散型粘着剤は、粘着剤成分の他に当該粘着剤成分を水中に分散させるための界面活性剤を含有しているため、泡立ち易い性質があり、水分散型粘着剤により得られる粘着剤層では微細気泡が混入しやすく、高コントラストを満足し難い。また、微細気泡は、加熱耐久試験においても、加熱発泡の核になるため加熱耐久性の点からも好ましくない。特に、近年では、画像表示装置の大型化に伴い、大型サイズの光学フィルムに適用される粘着剤層においても、生産効率等の観点から高い歩留まりで、塗布外観の良好な粘着剤層を形成すること要求される。そのため、光学用途への水分散型粘着剤の適用は困難であった。
【0006】
一方、水分散型のアクリル系粘着剤を含む各種の粘着剤等の処理液に含まれる気泡を自動制御により脱泡すること、また、当該自動制御による脱泡を、処理液の溶存酸素濃度の値に基づいて制御することが提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−186661号公報
【特許文献2】特開2006−102608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、粘着型光学フィルムにおける粘着剤層の形成にあたり、粘着剤中の気泡を脱泡して、溶存酸素濃度を単に限りなくゼロに近づけるだけでは、加熱耐久性、加湿耐久性、高コントラストを満足できる、粘着型光学フィルムを得ることは困難であった。
【0009】
本発明は、加熱耐久性、加湿耐久性、高コントラストを満足できる、粘着型光学フィルムおよびその製造方法を提供することを目的とする。さらには、本発明は、粘着型光学フィルムの粘着剤層の形成に用いる粘着剤塗布液およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
また本発明は、前記粘着型光学フィルムを用いた画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、粘着型光学フィルムにおける粘着剤層の形成にあたり、粘着剤中の気泡を脱泡して、溶存酸素濃度を単に限りなくゼロに近づけるだけでは、加熱耐久性、加湿耐久性、高コントラストを満足させることが困難であるが、一方、粘着剤塗布液が最低限(所要量)の溶存酸素濃度を有する場合には加熱耐久性、加湿耐久性、高コントラストを満足できることから、粘着剤塗布液は溶存酸素濃度を所定範囲で含有することが重要であることを見出した結果、下記粘着型光学フィルム等を見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち本発明は、光学フィルムの少なくとも片側に、粘着剤層が積層されている粘着型光学フィルムであって、
前記粘着剤層は、溶存酸素濃度が、0.02〜3mg/Lの粘着剤塗布液を塗布した後、乾燥することにより形成されたものであることを特徴とする粘着型光学フィルム、に関する。
【0013】
粘着剤塗布液の溶存酸素濃度を前記所定範囲に制御することで、加熱耐久性、加湿耐久性、高コントラストを満足できる、粘着型光学フィルムが得られる。なお、溶液中の溶存酸素濃度は、乳化重合時における重合阻害の観点から窒素置換の目安とされたり、紫外線硬化型材料の硬化(重合)を阻害させるために基準とはされているが、粘着剤塗布液(特に、水分散型の粘着剤塗布液)の溶存酸素濃度の制御によって、得られる粘着剤層の塗布外観、さらには粘着型光学フィルムに係る、加熱耐久性、加湿耐久性、高コントラストを満足させることに関する知見はなかった。
【0014】
加熱耐久性は、加熱環境下での気泡の発生の有無に係り、粘着剤塗布液の溶存酸素濃度は小さいほど好ましい。一方、溶存酸素濃度が3mg/Lを超える場合には、粘着剤層が形成された後において、粘着剤塗布液中に含まれていた気泡が起点(発泡の核)となって、加熱環境下での気泡の発生が多くなり好ましくない。
【0015】
加湿耐久性は、加湿環境下での粘着剤層の剥がれの有無に係わり、粘着剤塗布液の溶存酸素濃度が多くても、粘着剤層の剥がれは生じにくい。一方、溶存酸素濃度が0.02mg/Lより低い場合の明確な理由は定かではないが、粘着剤層が形成された後においても酸素が少なくなりすぎて、粘着剤塗布液中に含有されていた残存ラジカルが活性化するものと推察される。その結果、当該残存ラジカルと残存モノマーが反応して、低分子ポリマー(オリゴマー)が生成されて、粘着剤層の剥がれが生じると考えられる。但し、本発明は、この推察により何ら制限ないし限定されない。
【0016】
高コントラストは、形成された粘着剤層に起因するコントラストの悪化がないことに係る。粘着剤塗布液の溶存酸素濃度を0.02mg/Lより低くする場合には、通常、脱泡時に激しい撹拌が施されるが、撹拌しすぎると、例えば、水分散型の粘着剤塗布液(エマルション)では、エマルション粒子に大きな剪断力がかかり、分散液(エマルション)の分散状態が不安定化する。通常、安定な分散液中ではエマルション粒子は各粒子が単独で均一に分散しているが、不安定な分散液ではエマルション粒子は二次、三次の凝集体になって不均一な分散状態になる。かかる不安定な分散液を塗布、乾燥して得られる粘着剤層の表面は、前記凝集体に平滑性が悪化して、その結果、コントラストが悪化する。また、有機溶剤型粘着剤においても、粘着剤塗布液の溶存酸素濃度を0.02mg/Lより低くする場合には、長時間または高真空度での脱泡処理が必要になる。そうすると、脱泡処理過程での有機溶剤や反応性希釈剤が揮発し、その結果、粘着剤塗布液の粘度が上昇し、粘着剤層の塗膜表面の平滑性が悪化して、コントラストが悪化する。一方、溶存酸素濃度が3mg/Lを超える場合には、形成された粘着剤層における外観気泡(大きな気泡)による、乱反射によって、コントラストが悪化する。
【0017】
前記粘着型光学フィルムにおいて、粘着剤塗布液としては、例えば、少なくともベースポリマーが水中に分散含有されている分散液からなる水分散型粘着剤が用いられる。
【0018】
前記粘着剤塗布液が水分散型粘着剤の場合には、加熱耐久性、加湿耐久性、高コントラストの観点から、当該水分散型粘着剤の溶存酸素濃度は、0.05〜2mg/Lであることが好ましく、さらには0.1〜1mg/Lであることが好ましく、さらには0.1〜0.5mg/Lであることが好ましい。
【0019】
前記水分散型粘着剤におけるベースポリマーとしては、(メタ)アクリル系ポリマーが好適である。また、前記ベースポリマーである、(メタ)アクリル系ポリマーは、乳化重合により得られたものが好ましい。
【0020】
前記粘着型光学フィルムにおいて、粘着剤塗布液としては、例えば、少なくともベースポリマーが有機溶剤中に溶解されている溶液からなる有機溶剤型粘着剤を用いることができる。
【0021】
前記粘着剤塗布液が有機溶剤型粘着剤の場合には、加熱耐久性、加湿耐久性、高コントラストの観点から、当該有機溶剤型粘着剤の溶存酸素濃度が、0.1〜2mg/Lであることが好ましく、さらには0.5〜1mg/Lであることが好ましい。
【0022】
有機溶剤型粘着剤は、水分散型粘着剤のように乳化剤などの親水性成分が含まれていないため、有機溶剤型粘着剤により形成される粘着剤層の吸水率は、水分散型粘着剤により形成される粘着剤層の吸水率に比べて低い。加熱耐久性の発泡は、溶存酸素濃度の他に、上記粘着剤層の吸水率も影響を受ける。即ち、粘着剤層の吸水率が高い方が発泡も起こり易い。従って、有機溶剤型粘着剤により形成される粘着剤層の加熱耐久性(発泡)は、水分散型粘着剤により形成される粘着剤層よりも吸水率が低いため、同じ溶存酸素濃度であっても、吸水率の影響を受けにくく、その分、好ましい範囲において、高い溶存酸素濃度を許容できる。
【0023】
また本発明は、前記粘着型光学フィルムの製造方法であって、
粘着剤塗布液を、溶存酸素濃度が、0.02〜3mg/Lになるように脱泡処理を行なう工程(1)、
支持基材の片面または両面に、脱泡処理工程(1)が行なわれた粘着剤塗布液を塗布する工程(2)、および、
塗布された粘着剤塗布液を乾燥して粘着剤層を形成する工程(3)を有することを特徴とする粘着型光学フィルムの製造方法、に関する。
【0024】
また本発明は、前記粘着型光学フィルムを少なくとも1枚用いていることを特徴とする画像表示装置、に関する。
【0025】
また本発明は、光学フィルムの少なくとも片側に、粘着剤層が積層されている粘着型光学フィルムの当該粘着剤層の形成に用いる粘着剤塗布液であって、
当該粘着剤塗布液は、溶存酸素濃度が、0.02〜3mg/Lであることを特徴とする粘着剤塗布液、に関する。
【0026】
また本発明は、前記粘着剤塗布液の製造方法であって、
粘着剤塗布液に、溶存酸素濃度が、0.02〜3mg/Lになるように脱泡処理を行なうことを特徴とする、粘着剤塗布液の製造方法、に関する。
【発明の効果】
【0027】
本発明の粘着型光学フィルムは、粘着剤塗布液の溶存酸素濃度を0.05〜3mg/Lに制御することで、加熱耐久性、加湿耐久性、高コントラストを満足している。
【0028】
なお、アクリル系ポリマーのエマルションを乳化重合により製造するにあたって、乳化重合時の溶存酸素濃度について、特開2005−42061号公報には1.5ppm(1.5mg/L)、特開2009−19181号公報には4ppm(4mg/L)であることに関する記載がある。しかし、当該公報に記載の乳化重合で得られたエマルションの溶存酸素濃度は、乳化重合時の溶存酸素濃度よりも大きくなり、本発明のように、溶存酸素濃度を0.05〜3mg/Lに制御したものは、従来の乳化重合で得られたエマルションとは差別化される。
【0029】
本発明の粘着型光学フィルムは、上記のように、粘着剤塗布液に、上記所定の溶存酸素濃度になるように脱泡処理工程(1)を施した後、塗布工程(2)、および、粘着剤層を形成する工程(3)を施すことにより得られる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の粘着型光学フィルムの製造において、粘着剤塗布液の搬送に減圧搬送装置が適用される場合の粘着剤塗布システムを示す概略説明図の一例である。
【図2】粘着剤塗布システムにて行われる処理操作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の粘着剤層は、所定の溶存酸素濃度に調整された粘着剤塗布液を塗布した後、乾燥することにより形成される。
【0032】
粘着剤の材料としては各種のものを用いることができ、例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、ポリビニルアルコール系粘着剤、ポリビニルピロリドン系粘着剤、ポリアクリルアミド系粘着剤、セルロース系粘着剤などがあげられる。
【0033】
また、粘着剤塗布液としては、水分散型粘着剤、有機溶剤型粘着剤、ホットメルト型粘着剤等の各種の形態で用いることができる。前記粘着剤の形態は、粘着剤の種類に応じて選択される。また前記各粘着剤は、放射線硬化型粘着剤として用いることもできる。
【0034】
粘着剤塗布液としては、環境負荷の観点から、水分散型粘着剤が好適に用いられる。水分散型粘着剤は、上記の通り水分散液であり、その粘度は、100mPa・s〜10000mPa・sの範囲の高粘度である場合にも好適に適用できる。かかる高粘度を有する水分散型粘着剤が、粘着剤層を形成すうるうえで好適である。水分散型粘着剤の粘度は、好ましくは1000mPa・s〜5000mPa・sの範囲である。水分散型粘着剤の粘度の値は、HAAKE社製粘度計(RheoStress1)を使用し、温度30℃で剪断速度=1(1/s)の条件で測定された値である。
【0035】
水分散型粘着剤は少なくともベースポリマーが水中に分散含有されている分散液である。当該分散液としては、通常は、界面活性剤の存在下にベースポリマーが分散しているものが用いられるが、ベースポリマーが水中に分散含有されているものであれば、自己分散性ベースポリマーの自己分散によって、分散液になっているものを用いることができる。
【0036】
また、分散液中のベースポリマーは、モノマーを界面活性剤の存在下において乳化重合したり、または分散重合したりすることにより得られたものがあげられる。
【0037】
また、分散液は、別途製造したベースポリマーを、乳化剤の存在下に水中で乳化分散することにより製造することができる。乳化方法としては、ポリマーと乳化剤を予め加熱溶融し、または加熱溶融することなく、それらと水とを、例えば加圧ニーダー、コロイドミル、高速攪拌シャフト等の混合機を用いて、高剪断をかけて均一に乳化分散させた後、分散粒子が融着凝集しないように冷却して所望の水分散体を得る方法(高圧乳化法)や、ポリマーを予めベンゼン、トルエン、酢酸エチル等の有機溶剤に溶解した後、前記乳化剤及び水を添加し、例えば高速乳化機を用いて、高剪断をかけて均一に乳化分散させた後、減圧−加熱処理等により有機溶剤を除去して所望の水分散体とする方法(溶剤溶解法)等が挙げられる。
【0038】
有機溶剤型粘着剤は、少なくともベースポリマーが有機溶剤中に溶解されている溶液である。溶液中のベースポリマーは、モノマーを有機溶剤中で、溶液重合したりすることにより得られる。また、別途製造したベースポリマーを、有機溶剤に溶解することにより製造することができる。有機溶剤の種類はベースポリマーに応じて適宜に選択して用いられる。
【0039】
有機溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;酢酸エチル等のエステル類;クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン等のケトン類;その他、N−メチル−2−ピロリドン、ピリジン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、ブチロニトリル、二硫化炭素等があげられる。
【0040】
前記粘着剤のなかでも、本発明では、光学的透明性に優れ、適宜な濡れ性と凝集性と接着性の粘着特性を示して、耐候性や耐熱性などに優れる点からアクリル系粘着剤が好ましく使用される。前記粘着剤塗布液としては、水分散型のアクリル系粘着剤が好ましい。
【0041】
アクリル系粘着剤は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルのモノマーユニットを主骨格とする(メタ)アクリル系ポリマーをベースポリマーとする。なお、(メタ)アクリル酸アルキルエステルはアクリル酸アルキルエステルおよび/またはメタクリル酸アルキルエステルをいい、本発明の(メタ)とは同様の意味である。
【0042】
(メタ)アクリル系ポリマーの主骨格を構成する、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基の炭素数1〜18のものを例示できる。例えば、前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、アミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、2−エチルヘキシル基、イソオクチル基、ノニル基、デシル基、イソデシル基、ドデシル基、イソミリスチル基、ラウリル基、トリデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、等を例示できる。これらは単独であるいは組み合わせて使用することができる。これらアルキル基の平均炭素数は3〜9であるのが好ましい。
【0043】
また、フェノキシエチル(メタ)アクリレートのような芳香族環を含有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを用いることができる。芳香族環を含有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、これを重合したポリマーを前記例示の(メタ)アクリル系ポリマーに混合して用いることができるが、透明性の観点から、芳香族環を含有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合して用いるのが好ましい。
【0044】
前記(メタ)アクリル系ポリマー中には、接着性や耐熱性の改善を目的に、(メタ)アクリロイル基またはビニル基等の不飽和二重結合を有する重合性の官能基を有する、1種類以上の共重合モノマーを共重合により導入することができる。そのような共重合モノマーの具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリルや(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)−メチルアクリレートなどのヒドロキシル基含有モノマー;(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸などのカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物基含有モノマー;アクリル酸のカプロラクトン付加物;スチレンスルホン酸やアリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などのスルホン酸基含有モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート、ポリアルキレンオキシド(メタ)アクリレート燐酸エステルなどの燐酸基含有モノマーなどがあげられる。
【0045】
また、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミドやN−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドなどの(N−置換)アミド系モノマー;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチルなどの(メタ)アクリル酸アルキルアミノアルキル系モノマー;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系モノマー;N−(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミドやN−(メタ)アクリロイル−6−オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−8−オキシオクタメチレンスクシンイミド、N−アクリロイルモルホリンなどのスクシンイミド系モノマー;N−シクロヘキシルマレイミドやN−イソプロピルマレイミド、N−ラウリルマレイミドやN−フェニルマレイミドなどのマレイミド系モノマー;N−メチルイタコンイミド、N−エチルイタコンイミド、N−ブチルイタコンイミド、N−オクチルイタコンイミド、N−2−エチルヘキシルイタコンイミド、N−シクロヘキシルイタコンイミド、N−ラウリルイタコンイミドなどのイタコンイミド系モノマー、なども改質目的のモノマー例としてあげられる。
【0046】
さらに改質モノマーとして、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、N−ビニルピロリドン、メチルビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾール、ビニルモルホリン、N−ビニルカルボン酸アミド類、スチレン、α−メチルスチレン、N−ビニルカプロラクタムなどのビニル系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアノアクリレート系モノマー;(メタ)アクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有アクリル系モノマー;(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコールなどのグリコール系アクリルエステルモノマー;(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、フッ素(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレートや2−メトキシエチルアクリレートなどのアクリル酸エステル系モノマーなども使用することができる。さらには、イソプレン、ブタジエン、イソブチレン、ビニルエーテル等があげられる。
【0047】
また、共重合モノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と多価アルコールとのエステル化物等の(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の不飽和二重結合を2個以上有する多官能性モノマーや、ポリエステル、エポキシ、ウレタンなどの骨格にモノマー成分と同様の官能基として(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の不飽和二重結合を2個以上付加したポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートなどを用いることもできる。
【0048】
(メタ)アクリル系ポリマーは、全構成モノマーの重量比率において、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とし、(メタ)アクリル系ポリマー中の前記共重合モノマーの割合は、特に制限されないが、前記共重合モノマーの割合は、全構成モノマーの重量比率において、0〜20%程度、0.1〜15%程度、さらには0.1〜10%程度であるのが好ましい。
【0049】
これら共重合モノマーの中でも、接着性、耐久性の点から、ヒドロキシル基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマーが好ましく用いられる。これら共重合モノマーは、水分散粘着剤が架橋剤を含有する場合に、架橋剤との反応点になる。ヒドロキシル基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマーなどは分子間架橋剤との反応性に富むため、得られる粘着剤層の凝集性や耐熱性の向上のために好ましく用いられる。
【0050】
共重合モノマーとして、ヒドロキシル基含有モノマーおよびカルボキシル基含有モノマーを含有する場合、これら共重合モノマーは、前記共重合モノマーの割合で用いられるが、カルボキシル基含有モノマー0.1〜10重量%およびヒドロキシル基含有モノマー0.01〜2重量%を含有することが好ましい。カルボキシル基含有モノマーは、0.2〜8重量%がより好ましく、さらには0.6〜6重量%が好ましい。ヒドロキシル基含有モノマーは、0.03〜1.5重量%がより好ましく、さらには0.05〜1重量%が好ましい。
【0051】
このような(メタ)アクリル系ポリマーの製造は、溶液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合、分散重合等の各種ラジカル重合などの公知の製造方法を適宜選択できる。また、得られる(メタ)アクリル系ポリマーは、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体などのいずれでもよい。
【0052】
なお、溶液重合においては、重合溶媒として、例えば、酢酸エチル、トルエンなどの有機溶剤が用いられる。具体的な溶液重合例としては、反応は窒素などの不活性ガス気流下で、重合開始剤を加え、通常、50〜70℃程度で、5〜30時間程度の反応条件で行われる。
【0053】
乳化重合では、乳化剤の存在下、適宜の重合開始剤を用いて、常法により行い、水分散液を調製する。乳化重合は、一般的な一括重合、連続滴下重合、分割滴下重合などにより行う。重合温度は30〜90℃程度で行うことができる。
【0054】
ラジカル重合に用いられる重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤などは特に限定されず適宜選択して使用することができる。なお、(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、重合開始剤、連鎖移動剤の使用量、反応条件により制御可能であり、これらの種類に応じて適宜のその使用量が調整される。
【0055】
重合開始剤としては、たとえば、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2′−アゾビス(N,N′−ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロライド、2,2´−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]ヒドレイトなどのアゾ系、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパ−オキサイドなどの過酸化物系や、過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムなどのレドツクス系開始剤などがあげられる。また、得られるポリマーの分子量の調整のために、必要に応じて、メルカプタン類、メルカプトプロピオン酸エステル類などに代表される適宜の連鎖移動剤を使用してもよい。
【0056】
乳化剤としては、乳化重合において用いられるアニオン系乳化剤やノニオン系乳化剤を特に制限なく使用できる。たとえば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウムなどのアニオン系乳化剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルなどのノニオン系乳化剤などがあげられる。また、アニオン系乳化剤およびノニオン系乳化剤のいずれの場合にも、乳化剤中にプロペニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基などの反応性官能基を導入したラジカル重合性乳化剤を用いるのが好ましい。ラジカル重合性乳化剤は、たとえば、特開平4−50204号公報、特開平4−53802号公報に記載されている。
【0057】
前記乳化剤の使用量は、特に制限されないが、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とするモノマー成分100重量部に対して、0.3〜5重量部程度とするのが好ましい。乳化剤の使用量は、より好ましくは0.7〜4重量部である。
【0058】
本発明の(メタ)アクリル系ポリマーは、通常、重量平均分子量が100万〜300万の範囲のものが用いられる。耐久性、特に耐熱性を考慮すれば、重量平均分子量は150万〜250万であるものを用いるのが好ましい。さらに、170万〜250万であることがより好ましく、180万〜250万であることがさらに好ましい。重量平均分子量が100万よりも小さいと、耐熱性の点で好ましくない。また、重量平均分子量が300万よりも大きくなると貼り合せ性、接着力が低下する点でも好ましくない。なお、重量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定し、ポリスチレン換算により算出された値をいう。
【0059】
前記水分散型粘着剤、有機溶剤型粘着剤等は、放射線硬化型の粘着剤として用いることができる。放射線硬化型として用いる場合には、前記粘着剤のベースポリマーとして、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の放射線硬化性の官能基を有する放射線硬化性ベースポリマーを用いたり、ベースポリマー(前記放射線硬化性ベースポリマーの場合を含む)に、さらに反応性希釈剤を配合したりして用いられる。また放射線硬化型の態様としては、例えば、ベースポリマーを形成するモノマーまたはその部分重合物を含有してなり、電子線や紫外線等の放射線を照射することでベースポリマーを含有する粘着剤層を形成できるものを含む(この場合は、ベースポリマーを形成するモノマーまたはその部分重合物がベースポリマーとされる)。放射線硬化型の粘着剤は、重合開始剤を含有できる。上記では、放射線硬化型の粘着剤を水分散型または有機溶剤型で用いる場合を記載しているが、放射線硬化型の粘着剤は、無溶剤(ホットメルト型の場合を含む)でも適用できる。
【0060】
放射線硬化性ベースポリマーは、官能基aを有するベースポリマーと、当該官能基aと反応性を有する官能基bおよび(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の重合性の炭素−炭素二重結合を有する化合物を反応させて得られる。官能基aおよび官能基bとしては、例えば、カルボキシル基、酸無水物基、ヒドロキシ基、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基、アジリジン基などがあげられ、これらの中から互いに反応可能な組み合わせを適宜選択して使用できる。放射線硬化型の場合にも、粘着剤のベースポリマーとしては、アクリル系ポリマーが好ましい。
【0061】
反応性希釈剤は、前記放射線硬化性の官能基を少なくとも一つ有するラジカル重合性等のモノマーおよび/またはオリゴマー成分が用いられる。
【0062】
放射線硬化型粘着剤により形成される粘着剤層は、粘着剤層を形成する樹脂の吸水率が低いため、加熱耐久性(発泡)の溶存酸素濃度の基準が、好ましい範囲において、水分散型粘着剤を用いる場合に比べて高くなる。なお、放射線硬化型粘着剤において、粘着剤塗布液の溶存酸素濃度を低い場合には、光学フィルム(例えば、偏光板の透明保護フィルム)の材料にもよるが、酸素阻害が殆ど起こらなくなって、放射線が照射される光学フィルムがダメージを受けてコントラストが低下する傾向にもある。
【0063】
本発明の粘着剤塗布液は、上記のベースポリマー(放射線硬化型の場合は、ベースポリマーの他、ベースポリマーを形成するモノマーまたはその部分重合物、反応性希釈剤)に加えて、架橋剤を含有することができる。アクリル系粘着剤の場合に用いられる架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、金属キレート系架橋剤などの一般に用いられているものを使用できる。これら架橋剤は、官能基含有単量体を用いることにより重合体中に導入した官能基と反応して架橋する効果を有する。
【0064】
ベースポリマーと架橋剤の配合割合は特に限定されないが、通常、ベースポリマー(固形分)100重量部に対して、架橋剤(固形分)10重量部程度以下の割合で配合される。前記架橋剤の配合割合は、0.001〜10重量部が好ましく、さらには0.01〜5重量部程度が好ましい。
【0065】
さらには、本発明の粘着剤塗布液には、必要に応じて、粘着付与剤、可塑剤、ガラス繊維、ガラスビーズ、金属粉、その他の無機粉末等からなる充填剤、顔料、着色剤、充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤等を、また本発明の目的を逸脱しない範囲で各種の添加剤を適宜に使用することもできる。また微粒子を含有して光拡散性を示す粘着剤層などとしても良い。なお、粘着剤塗布液が水分散液の場合には、これら添加剤も分散液として配合することができる。
【0066】
本発明の粘着型光学フィルムの粘着剤層は、上記粘着剤塗布液により形成される。粘着剤塗布液の固形分濃度は、通常、1〜70重量%程度である。塗布される粘着剤塗布液は、前述のように、溶存酸素濃度が、0.02〜3mg/Lに制御されたものが用いられる。溶存酸素濃度の制御は、粘着剤塗布液に、脱泡処理を行なう工程(1)を施すことにより行なうことができる。脱泡処理工程(1)は、脱泡装置に係るタンク内を10kPa程度以下、好ましくは5kPa以下、さらに好ましくは2kPa以下に減圧することにより行なわれる。
【0067】
次いで、支持基材の片面または両面に、脱泡処理工程(1)が行なわれた粘着剤塗布液を塗布する工程(2)、および、塗布された粘着剤塗布液を乾燥して粘着剤層を形成する工程(3)が順次に施される。
【0068】
前記粘着型光学フィルムの製法方法において、前記脱泡処理工程(1)の後における粘着剤塗布液の溶存酸素濃度は、脱泡処理工程(1)の前における粘着剤塗布液の溶存酸素濃度の10%以下であることが好ましい。
【0069】
前記脱泡処理工程(1)により、粘着剤塗布液の溶存酸素濃度を、処理前の15%以下に制御することで、粘着剤層において生じる気泡を大幅に低減することができる。溶存酸素濃度を、処理前の10%以下、さらには8%以下、さらには5%以下にするのが好ましい。
【0070】
前記粘着型光学フィルムの製法方法において、前記脱泡処理工程(1)を行なう脱泡装置のタンクと、前記塗布工程(2)に粘着剤塗布液を供給するためのポンプセットタンクが、連結管を介して連結されており、前記脱泡処理工程(1)が行なわれた粘着剤塗布液は、脱泡装置のタンク内の圧力よりも、ポンプセットタンク及び連結管内の圧力が、1kPa〜50kPa小さくなるように、各圧力を設定して、脱泡装置のタンクからポンプセットタンクへ搬送されることが好ましい。
【0071】
また前記粘着型光学フィルムの製法方法において、前記脱泡処理工程(1)を行なう脱泡装置のタンクと、前記塗布工程(2)に粘着剤塗布液を供給するためのポンプセットタンクが、バッファタンクを介して、かつ連結管を介して連結されており、前記脱泡処理工程(1)が行なわれた粘着剤塗布液は、脱泡装置のタンク内の圧力よりも、バッファタンク及び連結管内の圧力が、1kPa〜50kPa小さくなるように、各圧力を設定して、脱泡装置のタンクからバッファタンクへ搬送され、バッファタンク内の粘着剤塗布液は、バッファタンクの圧力よりも、ポンプセットタンク及び連結管内の圧力が、1kPa〜50kPa小さくなるように、各圧力を設定して、バッファタンクからポンプセットタンクへ搬送されることが好ましい。
【0072】
上記製造方法では、粘着剤塗布液に、脱泡処理工程(1)が施された後に、塗布工程(2)、次いで粘着剤層の形成工程(3)が施される。かかる脱泡処理工程(1)により、粘着剤塗布液は、所定の溶存酸素濃度になるように気泡が除去されており、かつ、脱泡処理された粘着剤塗布液は、脱泡装置からポンプセットタンクへ、減圧下で減圧手段を介して圧力差を利用して搬送される。このように、脱泡装置、連結管及びポンプセットタンクは減圧状態にあり、粘着剤塗布液を脱泡装置から連結管を介してポンプセットタンクに搬送する際、系内に空気が残存する場合においても空気が粘着剤塗布液に気泡として混入したり溶解することを確実に防止することができる。また、粘着剤塗布液に気泡が再混入した場合においても容易に気液界面まで誘導して破泡させることができる。また、圧力差を利用して粘着剤塗布液の搬送が行われることから、粘着剤塗布液の搬送量を容易に調整することができる。更に、送液用のポンプが不要となり、これよりポンプのせん断や熱の影響により粘着剤塗布液の特性が変質してしまうことを防止することができる。なお、各タンクの圧力差は、1kPa〜50kPaの範囲にあることが望ましく、更には5kPa〜20kPaの範囲にあることが望ましい。なお、最初の状態(搬送される水分散型粘着剤のない状態)では、前記タンクの圧力差は前記範囲を超えていてもよい。
【0073】
上記粘着剤層の形成にあたり、脱泡処理工程(1)で脱泡処理された粘着剤塗布液を、脱泡装置からポンプセットタンクへ、減圧下で減圧手段を介して圧力差を利用して搬送することで、塗布工程(2)における、粘着剤塗布液の溶存酸素濃度を所定範囲に、容易に維持することができる。
【0074】
従来より、粘着剤塗布液を脱気・脱泡しながら、粘着剤塗布液を搬送する各種の方法・装置が提案されている。例えば、特開2004−249215号公報には、脱気装置へ送水される脱気前の塗布液又は脱気装置から排水された脱気後の塗布液の少なくとも一方の溶存酸素濃度を溶存酸素濃度検出手段により検出し、溶存酸素濃度検出手段による検出結果に基づき制御手段が脱気調整手段を制御して脱気装置の脱気度を調整するように構成された脱気システムが記載されている。また、特開2000−262956号公報には、塗布ヘッドへ塗布液の送液を開始する際に、塗布液を塗布ヘッドへ供給する送液系内を減圧してから液封液で満たし、その後塗布液で液封液を押出置換するように構成された送液方法が記載されている。
【0075】
前記特許文献に記載された脱気システムや送液方法では、塗布液が脱気装置を介してインラインで連続的に脱気されている。しかしながら、かかる方法は、塗布液の粘度が一般に100mPa・s未満である低粘度である場合に限られ、100mPa・s以上の粘度、特に、1000mPa・s以上の粘度を有する高粘度の塗布液の場合には、脱気装置を介してインラインで連続的に脱気することは困難であり、一般的にバッチ方式で脱気・脱泡処理が行われている。
【0076】
前記のように、高粘度の塗布液をバッチ方式で脱気・脱泡処理する場合、多量の高粘度の塗布液を一度に脱気・脱泡処理することが可能であるが、このように脱気・脱泡された塗布液は一度に使用されるものではない。かかる場合、前記のように脱気・脱泡された塗布液は、一旦バッファタンク等の貯留タンクで貯留され、このように貯留された塗布液はその塗布が行われる直前でポンプを介してポンプセットタンク等に搬送された後、塗布ヘッドに供給されるように構成されている。前記したように、高粘度の塗布液がバッチ方式で脱気・脱泡される場合には、塗布ヘッドに供給するまでに複数段のタンクに渡って搬送されていくこととなり、また、塗布液の搬送にポンプが使用されることから、気泡が塗布液に溶解される虞が多分に存するものである。
【0077】
塗布液に気泡が溶解されると、塗布ヘッドにより塗布されて形成される粘着剤層中に気泡が残存して外観が悪くなったり、また、粘着剤層の厚さにバラツキが発生してしまう。また、粘着剤層の乾燥後に気泡が残存してしまう。これを解消するためには、塗布液に溶解している空気を再度脱気・脱泡するとともに、脱気・脱泡後の塗布液の管理を厳重に行う必要があり、かかる場合には、余分な脱気・脱泡処理を行うこととなり、工程上大きなロスが発生してしまう。
【0078】
本発明では、バッチ方式で脱気・脱泡処理を行う場合においても、粘着剤塗布液を搬送するに際して、粘着剤塗布液へ気泡が混入溶解されることを確実に防止することが可能であり、上記粘着剤層を形成することができる。
【0079】
前記工程(1)乃至工程(3)は一連の工程で行なうことができるが、前記脱泡処理工程(1)を行なう脱泡装置のタンクと、前記塗布工程(2)に粘着剤塗布液を供給するためのポンプセットタンクは、連結管を介して連結しており、前記脱泡処理工程(1)が行なわれた粘着剤塗布液は、各タンク内の圧力差を利用して、脱泡装置からポンプセットタンクへ搬送されるのが好ましい。また、脱泡装置のタンクとポンプセットタンクは、バッファタンクを介して、かつ連結管を介することができ、その場合にも、粘着剤塗布液は、脱泡装置からポンプセットタンクへ各タンク内の圧力差を利用して、脱泡装置からポンプセットタンクへ搬送されるのが好ましい。
【0080】
以下、本発明の粘着剤層の形成にあたり、粘着剤塗布液に施される、脱泡処理工程(1)および、脱泡処理工程(1)から塗布工程(2)への減圧搬送方法工程について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る粘着剤塗布液の塗布システムを示す概略説明図であり、脱泡装置のタンクとポンプセットタンクは、バッファタンクを介して、かつ連結管を介している場合である。なお、図1では、バッファタンクが1つ設けられている場合が示されているが、バッファタンクは複数設けることができる。バッファタンクが複数も設けられる場合には、バッファタンクの間は連結管を介して連結されており、粘着剤塗布液を搬送するバッファタンクの圧力よりも、搬送されるバッファタンク及び連結管内の圧力が、1kPa〜50kPa小さくなるように、各圧力が設定されて、前記同様に各バッファタンク内の圧力差を利用して、粘着剤塗布液が搬送される。当該減圧搬送に係る塗布システムは粘着剤塗布液が水分散型粘着剤の場合に好適である。
【0081】
図1において、粘着剤塗布システムSは、基本的に、バッチ方式で密閉タンク11内に投入された粘着剤を含有する粘着剤塗布液2の脱泡処理を行う脱泡装置1、密閉タンク11内で脱泡された粘着剤塗布液2を一時的に貯留する密閉タンク31を有するバッファタンク3、バッファタンク3の密閉タンク31から搬送される粘着剤塗布液2を塗布用に貯留する密閉タンク51を有するポンプセットタンク5、ポンプセットタンク5の密閉タンク51から粘着剤塗布液2をフィルタ93を介して塗布装置94まで送液する送液ポンプ92、及び、脱泡装置1の密閉タンク11、バッファタンク3の密閉タンク31、ポンプセットタンク5の密閉タンク51等を減圧する真空ポンプ7から構成されている。
【0082】
ここに、脱泡装置1の密閉タンク11とバッファタンク3の密閉タンク31とは、連結管4を介して連結されており、かかる連結管4にて、密閉タンク11側にはドレンバルブ14、バッファタンク3の密閉タンク31側には開閉バルブ41が介装されている。また、バッファタンク3の密閉タンク31とポンプセットタンク5の密閉タンク51とは、連結管6を介して連結されており、かかる連結管6にて、バッファタンク3の密閉タンク31側にはドレンバルブ33、ポンプセットタンク5の密閉タンク51側には開閉バルブ61が介装されている。更に、ポンプセットタンク5の下流側にはドレンバルブ53が介装され、ポンプ92に連結されている。
【0083】
また、脱泡装置1の密閉タンク11は、真空バルブ16を介して吸引管8により真空ポンプ7に連結されており、また、バッファタンク3の密閉タンク31は、真空バルブ35を介して吸引管8により真空ポンプ7に連結されている。更に、ポンプセットタンク5の密閉タンク51は、真空バルブ55を介して吸引管8により真空ポンプ7に連結されている。
【0084】
脱泡装置1は密閉タンク11を有しており、かかる密閉タンク11内には、粘着剤塗布液2を撹拌するための撹拌羽根12が配設されている。密閉タンク11の上部には、圧力計13、リークバルブ15及び吸引管8に介装された真空バルブ16が設けられている。脱泡装置1における密閉タンク11内の圧力は、リークバルブ15及び真空バルブ16の開度を操作・調整することにより調整される。また、脱泡装置1の密閉タンク11には、粘着剤塗布液2を密閉タンク11に供給するチャージタンク91が連結管96を介して連結されており、チャージタンク91から密閉タンク11に供給される粘着剤塗布液2の量は、開閉バルブ95の開閉を制御することにより調整される。
【0085】
バッファタンク3は、密閉タンク31を有しており、かかる密閉タンク31の上部には、圧力計32、リークバルブ34及び吸引管8に介装された真空バルブ35が設けられている。密閉タンク31内の圧力は、リークバルブ34及び真空バルブ35の開度を操作・調整することにより調整される。
【0086】
ポンプセットタンク5は、密閉タンク51を有しており、かかる密閉タンク51の上部には、圧力計52、リークバルブ54及び吸引管8に介装された真空バルブ55が設けられている。密閉タンク51内の圧力は、リークバルブ54及び真空バルブ55の開度を操作・調整することにより調整される。
【0087】
続いて、前記のように構成された粘着剤塗布システムSにて行われる処理操作について、図2に基づき説明する。図2は粘着剤塗布システムにて行われる処理操作を示すフローチャートである。
【0088】
先ず、開閉バルブ95を開放することによりチャージタンク91から粘着剤塗布液2が脱泡操作1の密閉タンク11内に投入される(S1)。続いて、脱泡装置1にて粘着剤塗布液2の脱泡処理工程(1)が行われる(S2)。かかる脱泡時には、真空バルブ16は開状態にされ、他のリークバルブ15、開閉バルブ95、ドレンバルブ14は閉状態にされる。そして、真空ポンプ7により密閉タンク11内が減圧されるとともに、撹拌羽根12の回転が行われる。これにより、粘着剤塗布液2の脱泡処理が行われる。脱泡処理工程(1)は、脱泡操作1の密閉タンク11内を、10kPa程度以下、好ましくは5kPa以下、さらに好ましくは2kPa以下に減圧することにより行なわれる。
【0089】
前記脱泡処理が終了した後、撹拌羽根12の回転が停止され、リークバルブ15の開度を調整して密閉タンク11内の圧力が所定の設定圧力に調整される(S3)。この後、全てのバルブを閉状態にして脱泡装置1内が密閉系に保持される。
【0090】
次に、バッファタンク3を構成する密閉タンク31に設けられた真空バルブ35及び開閉バルブ41が開状態にされ、真空ポンプ7を介して密閉タンク31及び連結管4が減圧される。このとき、減圧の程度は、送液系内の残存空気量を決定して粘着剤塗布液2内に気泡の混入を防止するための重要な因子であり、本実施形態の減圧搬送装置では、絶対圧で50kPa以下、好ましくは20kPa以下、更に好ましくは7kPa以下である。送液経路に空気が存在すると、そこで気液界面が発生し、粘着剤塗布液2の移動によって粘着剤塗布液2内部に気泡を取り込んでしまう可能性が高くなることから、前記のように送液系内を減圧する必要がある。また、粘着剤塗布液2の性質によって飽和蒸気圧が異なることから、送液時の温度に依存して粘着剤塗布液2が沸騰をしないように送液系内の圧力を設定する必要がある。
【0091】
また、リークバルブ34の開度を操作・調整することにより密閉タンク31及び連結管4内が所定設定圧力に調整される(S4)。この調整状態で、密閉タンク11の下流側にて連結管4に介装されているドレンバルブ14が開状態にされる。このとき、脱泡装置1の密閉タンク11とバッファタンク3の密閉タンク31及び連結管4との間で圧力差が発生し、かかる圧力差に基づいて密閉タンク11から密閉タンク31への粘着剤塗布液2の搬送が開始される(S5)。このとき、前記のように圧力差によって粘着剤塗布液2の搬送を行う場合に、送液流量を制御するためには、送液の上流部と下流部との圧力差が重要な因子となり、例えば、本実施形態では、1kPa〜50kPaの範囲にあることが望ましく、更には5kPa〜20kPaの範囲にあることが望ましい。ここに、圧力差が大きすぎると液流量は大きくなり、その結果、気液界面の変動が早くなって気泡を取り込みやすくなる。本実施形態の場合、圧力差が50kPa以上になると、粘着剤塗布液2内に気泡が混入される場合が多くなり、また、圧力差が1kPa以下になると、送液流量は極めて小さくなり、生産には適さなくなる。
【0092】
前記粘着剤塗布液2の搬送中、脱泡装置1側のリークバルブ15及びバッファタンク3側のリークバルブ34の開度を調整することにより、脱泡装置1の密閉タンク11とバッファタンク3の密閉タンク31内がそれぞれ所定の設定圧力に調整される(S6)。このとき、粘着剤塗布液2が密閉タンク11から完全に抜けきる前にドレンバルブ14及び開閉バルブ41が閉状態にされる。これにより、粘着剤塗布液2が完全に抜けきる際に発生する空気の流れに起因して気泡が混入することを防止することができる。
【0093】
ここに、バッファタンク3の密閉タンク31内に搬送された粘着剤塗布液2を密閉タンク31内で保存する場合、密閉タンク31内は開放系にしても密閉系にしてもよい。また、密閉系にした場合であっても、バッファタンク3の密閉タンク31内は、常圧であっても減圧であってもよい。尚、密閉タンク31内が減圧状態であれば、静置脱泡を促進することができる。
【0094】
続いて、ポンプセットタンク5を構成する密閉タンク51の真空バルブ55及び開閉バルブ61が開状態にされ、真空ポンプ7を介して密閉タンク51及び連結管6が減圧される。また、リークバルブ54の開度を操作・調整することにより密閉タンク51及び連結管6内が所定設定圧力に調整される(S7)。この調整状態で、密閉タンク31の下流側にて連結管6に介装されているドレンバルブ33が開状態にされる。このとき、密閉タンク31と密閉タンク51及び連結管6との間で圧力差が発生し、かかる圧力差に基づいて密閉タンク31から密閉タンク51への粘着剤塗布液2の搬送が開始される(S8)。この場合には、前記同様に、送液の上流部と下流部との圧力差が、1kPa〜50kPaの範囲にあることが望ましく、更には5kPa〜20kPaの範囲にあることが望ましい。
【0095】
前記粘着剤塗布液2の搬送中、バッファタンク3側のリークバルブ34及びポンプセットタンク5側のリークバルブ54の開度を調整することにより、バッファタンク3の密閉タンク31とポンプセットタンク5の密閉タンク51内がそれぞれ所定の設定圧力に調整される。このとき、粘着剤塗布液2が密閉タンク31から完全に抜けきる前にドレンバルブ33及び開閉バルブ61が閉状態にされる。これにより、粘着剤塗布液2が完全に抜けきる際に発生する空気の流れに起因して気泡が混入することを防止することができる。
【0096】
前記のように、粘着剤塗布液2をポンプセットタンク5の密閉タンク51に搬送した後、ドレンバルブ53が開状態にされるとともに送液ポンプ92が駆動される。これにより、粘着剤塗布液2は、送液ポンプ92からフィルタ93を経て塗布装置94に搬送される。塗布装置94では、支持基材の片面または両面に、粘着剤塗布液2を塗布する工程(2)、次いで、塗布された粘着剤塗布液2を乾燥して粘着剤層を形成する工程(3)が施される(S9)。なお、水分散型粘着剤2の塗布装置94への搬送は、フィルタ93に、まず、水を流してフィルタ93の気泡を除去し、さらに水分散型粘着剤2を1〜3時間程度、密閉タンク51に循環させて、フィルタ93内の水を水分散型粘着剤2で置換した後に行なうことが好ましい。なお、図1では記載されていないが、水分散型粘着剤2の循環は、フィルタ93と塗布装置94を連結する送液管にバルブを設け、かつ当該送液管から分かれて密閉タンク51に連結する循環管を設けて、前記バルブの開閉により循環を行なったり、取り外し可能な送液管を密閉タンク51に直接連結させたりすることにより行なうことができる。
【0097】
尚、前記システムにおける真空ポンプ7や各種バルブの操作は、各圧力計13、32、52の指針を確認して手動で行われてもよいし、また、各圧力計13、32、52の指針に基づく制御により遠隔指示により自動的に行われてもよい。また、真空ポンプ7は1つでもよいし、複数であってもよい。
【0098】
続いて、前記したように、粘着剤塗布液2の脱泡前から塗布時に至る粘着剤塗布液2における溶存酸素濃度の測定について説明する。ここに、粘着剤塗布液2における溶存酸素濃度に着目する理由は、粘着剤塗布液2に空気が溶解している場合には粘着剤塗布液2の乾燥時に空気が気泡として発生し、その気泡に起因して種々の問題が発生するからであり、脱泡から塗布に至る間で粘着剤塗布液2の溶存酸素濃度を厳格に管理する必要がある。尚、粘着剤塗布液2中に溶解した空気量の定量を行うにつき、一般に溶存酸素濃度を使用して粘着剤塗布液2中に溶解している空気量が表される。
【0099】
粘着剤塗布液2における溶存酸素濃度は、脱泡装置にて脱泡処理工程(1)が行われる前(脱泡前)、脱泡処理が行われた後(脱泡後)に測定される。図1では、バッファタンク3の密閉タンク31に搬送された後(搬送後)にも測定される。また、塗布される粘着剤塗布液2の溶存酸素濃度が、塗布工程(2)の前に測定される。本発明における粘着剤塗布液2の溶存酸素濃度の測定は、具体的には実施例の記載による。
【0100】
脱泡装置1の密閉タンク11の底部には、図1に示すように、溶存酸素測定器100が配置されており、かかる溶存酸素測定器100を介して、密閉タンク11内に粘着剤塗布液2が投入された脱泡前及び粘着剤塗布液2の脱泡後に、粘着剤塗布液2の溶存酸素濃度を測定することができる。なお、水分散型粘着剤2の溶存酸素濃度の測定は、脱泡前及び脱泡後に水分散型粘着剤2を系外にサンプルとして取り出し、測定器により測定してもよい。
【0101】
また、バッファタンク3の密閉タンク31の底部には、図1に示すように、溶存酸素測定器101が配置されており、かかる溶存酸素測定器101を介して、粘着剤塗布液2をバッファタンク3に搬送した後における粘着剤塗布液2の溶存酸素濃度を測定することができる。上記同様に、水分散型粘着剤2の溶存酸素濃度の測定は、水分散型粘着剤2を系外にサンプルとして取り出し、測定器により測定してもよい。
【0102】
更に、ポンプセットタンク5の密閉タンク51の底部には、図1に示すように、溶存酸素測定器102が配置されており、かかる溶存酸素測定器102を介して、塗布工程(2)の前において、粘着剤塗布液2のフィルタ循環前及び循環後の溶存酸素濃度を測定することができる。その他、塗布工程(2)の前に複数の粘着剤塗布液サンプルを抽出して各粘着剤塗布液サンプルの溶存酸素濃度、及び、塗布工程(2)の後に、最終溶存酸素濃度を測定することができる。なお、図1では、塗布工程(2)の前の粘着剤塗布液2の溶存酸素濃度は、塗布装置94の手前(コーターの寸前の箇所)で、粘着剤塗布液2をサンプリングして測定した値である。また、塗布工程(2)の後の粘着剤塗布液2の溶存酸素濃度は、塗布終了時に、塗布装置94の手前に(コーターの寸前の箇所)残存していた、粘着剤塗布液2をサンプリングして測定した値である。
【0103】
次いで、上記塗布工程(2)および粘着剤層の形成工程(3)について説明する。これら工程により光学フィルムに粘着剤層が形成された粘着型光学フィルムが得られる。支持基材は各種の材料を用いることができ、例えば、光学フィルムやセパレータがあげられる。
【0104】
支持基材がセパレータの場合、例えば、前記粘着剤塗布液をセパレータなどに塗布し、乾燥して粘着剤層を形成する。前記セパレータに形成した粘着剤層を、光学フィルムに転写することで、粘着型光学フィルムが得られる。支持基材として光学フィルムを用いる場合には、直接、光学フィルムに前記粘着剤塗布液を塗布し、乾燥して光学フィルム上に粘着剤層を形成することで、粘着型光学フィルムが得られる。
【0105】
塗布工程(2)には、各種方法が用いられる。具体的には、例えば、ロールコート、キスロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、ディップロールコート、バーコート、ナイフコート、エアーナイフコート、カーテンコート、リップコート、ダイコーターなどによる押出しコート法などの方法があげられる。
【0106】
また、粘着剤層の形成工程(3)では、粘着剤塗布液に応じた通常の条件を採用できる。例えば、水分散型粘着剤では、乾燥温度(例えば40〜150℃)、乾燥時間(20秒〜30分間)を採用できる。有機溶剤型粘着剤では、乾燥温度(例えば40〜200℃)、乾燥時間(20秒〜30分間)を採用できる。また、前記粘着剤を、放射線硬化型で用いる場合には、前記乾燥工程とととともに、または乾燥工程の後に、電子線(加速電圧5〜300kV)や紫外線(例えば、100〜500mJ/m)等の放射線を照射する。
【0107】
粘着剤層の厚さは、特に制限されず、例えば、1〜100μm程度である。好ましくは、5〜50μmであり、より好ましくは10〜30μmである。
【0108】
セパレータの構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルフィルムなどのプラスチックフィルム、紙、布、不織布などの多孔質材料、ネット、発泡シート、金属箔、およびこれらのラミネート体などの適宜な薄葉体などをあげることができるが、表面平滑性に優れる点からプラスチックフィルムが好適に用いられる。
【0109】
そのプラスチックフィルムとしては、前記粘着剤層を保護し得るフィルムであれば特に限定されず、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフイルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルムなどがあげられる。
【0110】
前記セパレータの厚みは、通常5〜200μm、好ましくは5〜100μm程度である。前記セパレータには、必要に応じて、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系もしくは脂肪酸アミド系の離型剤、シリカ粉などによる離型および防汚処理や、塗布型、練り込み型、蒸着型などの帯電防止処理もすることもできる。特に、前記セパレータの表面にシリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理などの剥離処理を適宜おこなうことにより、前記粘着剤層からの剥離性をより高めることができる。
【0111】
前記粘着剤層が露出する場合には、実用に供されるまでセパレータで粘着剤層を保護してもよい。なお、上記の粘着部材の作製にあたって用いた、剥離処理したシートは、そのまま粘着型光学フィルムのセパレータとして用いることができ、工程面における簡略化ができる。
【0112】
また、支持基材が光学フィルムの場合には、光学フィルムの表面に、粘着剤層との間の密着性を向上させるために、アンカー層を形成したり、コロナ処理、プラズマ処理などの各種易接着処理を施した後に粘着剤層を形成することができる。また、粘着剤層の表面には易接着処理をおこなってもよい。
【0113】
上記アンカー層の形成材としては、好ましくは、ポリウレタン、ポリエステル、分子中にアミノ基を含むポリマー類から選ばれるアンカー剤が用いられ、特に好ましくは、分子中にアミノ基を含んだポリマー類である。分子中にアミノ基を含むポリマー類は、分子中のアミノ基が粘着剤中のカルボキシル基等と反応またはイオン性相互作用などの相互作用を示すため、良好な密着性が確保される。
【0114】
分子中にアミノ基を含むポリマー類としては、例えば、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリビニルピリジン、ポリビニルピロリジン、ジメチルアミノエチルアクリレート等の含アミノ基含有モノマーの重合体などをあげることができる。
【0115】
光学フィルムとしては、液晶表示装置等の画像表示装置の形成に用いられるものが使用され、その種類は特に制限されない。例えば、光学フィルムとしては偏光板があげられる。偏光板は偏光子の片面または両面には透明保護フィルムを有するものが一般に用いられる。
【0116】
偏光子は、特に限定されず、各種のものを使用できる。偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等があげられる。これらの中でも、ポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素などの二色性物質からなる偏光子が好適である。これらの偏光子の厚さは特に制限されないが、一般的に5〜80μm程度である。
【0117】
ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸した偏光子は、例えば、ポリビニルアルコールをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3〜7倍に延伸することで作成することができる。必要に応じてホウ酸や硫酸亜鉛、塩化亜鉛等を含んでいても良いヨウ化カリウムなどの水溶液に浸漬することもできる。さらに必要に応じて染色前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗してもよい。ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるほかに、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラなどの不均一を防止する効果もある。延伸はヨウ素で染色した後に行っても良いし、染色しながら延伸しても良いし、また延伸してからヨウ素で染色しても良い。ホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液や水浴中でも延伸することができる。
【0118】
透明保護フィルムを構成する材料としては、例えば透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性などに優れる熱可塑性樹脂が用いられる。このような熱可塑性樹脂の具体例としては、トリアセチルセルロース等のセルロース樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、環状ポリオレフィン樹脂(ノルボルネン系樹脂)、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、およびこれらの混合物があげられる。なお、偏光子の片側には、透明保護フィルムが接着剤層により貼り合わされるが、他の片側には、透明保護フィルムとして、(メタ)アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化性樹脂または紫外線硬化型樹脂を用いることができる。透明保護フィルム中には任意の適切な添加剤が1種類以上含まれていてもよい。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、可塑剤、離型剤、着色防止剤、難燃剤、核剤、帯電防止剤、顔料、着色剤などがあげられる。透明保護フィルム中の上記熱可塑性樹脂の含有量は、好ましくは50〜100重量%、より好ましくは50〜99重量%、さらに好ましくは60〜98重量%、特に好ましくは70〜97重量%である。透明保護フィルム中の上記熱可塑性樹脂の含有量が50重量%以下の場合、熱可塑性樹脂が本来有する高透明性等が十分に発現できないおそれがある。
【0119】
また光学フィルムとしては、例えば反射板や反透過板、位相差板(1/2や1/4等の波長板を含む)、視覚補償フィルム、輝度向上フィルムなどの液晶表示装置等の形成に用いられることのある光学層となるものがあげられる。これらは単独で光学フィルムとして用いることができる他、前記偏光板に、実用に際して積層して、1層または2層以上用いることができる。
【0120】
偏光板に前記光学層を積層した光学フィルムは、液晶表示装置等の製造過程で順次別個に積層する方式にても形成することができるが、予め積層して光学フィルムとしたものは、品質の安定性や組立作業等に優れていて液晶表示装置などの製造工程を向上させうる利点がある。積層には粘着層等の適宜な接着手段を用いうる。前記の偏光板と他の光学層の接着に際し、それらの光学軸は目的とする位相差特性などに応じて適宜な配置角度とすることができる。
【0121】
本発明の粘着型光学フィルムは液晶表示装置等の各種画像表示装置の形成などに好ましく用いることができる。液晶表示装置の形成は、従来に準じて行いうる。すなわち液晶表示装置は一般に、液晶セル等の表示パネルと粘着型光学フィルム、及び必要に応じての照明システム等の構成部品を適宜に組み立てて駆動回路を組み込むことなどにより形成されるが、本発明においては本発明による粘着型光学フィルムを用いる点を除いて特に限定は無く、従来に準じうる。液晶セルについても、例えばTN型やSTN型、π型、VA型、IPS型などの任意なタイプのものを用いうる。
【0122】
液晶セル等の表示パネルの片側又は両側に粘着型光学フィルムを配置した液晶表示装置や、照明システムにバックライトあるいは反射板を用いたものなどの適宜な液晶表示装置を形成することができる。その場合、本発明による光学フィルムは液晶セル等の表示パネルの片側又は両側に設置することができる。両側に光学フィルムを設ける場合、それらは同じものであっても良いし、異なるものであっても良い。さらに、液晶表示装置の形成に際しては、例えば拡散板、アンチグレア層、反射防止膜、保護板、プリズムアレイ、レンズアレイシート、光拡散板、バックライトなどの適宜な部品を適宜な位置に1層又は2層以上配置することができる。
【実施例】
【0123】
以下に、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各例中の部および%はいずれも重量基準である。
【0124】
実施例1
(水分散型粘着剤の調製)
冷却管、窒素導入管、温度計および撹拌装置を備えた反応容器に、水30部および過硫酸アンモニウム0.3部を仕込み、撹拌下に1時間窒素置換した。このときの水溶液の溶存酸素濃度は0.2mg/Lであった。ここにアクリル酸ブチル95部、アクリル酸5部および乳化剤としてポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸アンモニウム(第一工業製薬(株)の商品名「ハイテノールLA−16」)1.0部(固形分換算)を水70部で乳化したものを80℃で3時間かけて滴下し、さらに80℃で2時間熟成を行った。その後、室温まで冷却し、10重量%アンモニア水によりpH8に調整して、固形分39%のアクリル系共重合体エマルションを得た。なお、本乳化重合時の溶存酸素濃度は熟成完成段階までのいずれの工程においても0.2mg/Lであった。その後、冷却し、窒素置換しないで中和工程を行なった。こうして、得られたアクリル系共重合体エマルションの溶存酸素濃度は6.50mg/Lであった。このアクリル系共重合体エマルションに、その固形分(アクリル系共重合体)100部に対し、オキサゾリン基を含有する水溶性架橋剤として(株)日本触媒の商品名「エポクロスWS−700」(オキサゾリン基当量:220g・solid/eq.)0.1部(固形分換算)を混合して、水分散型アクリル系粘着剤(架橋剤を含めたものの固形分39%,粘度6000mPa・s)とした。
【0125】
(水分散型粘着剤の脱泡処理)
図1に従って、下記操作を行なった。先ず、上記水分散型粘着剤(80kg)2を脱泡装置1の密閉タンク11内に投入した。この状態で水分散型粘着剤2をサンプリングして溶存酸素計100を介して脱泡前の溶存酸素濃度を測定したところ、7.25mg/Lであった。
【0126】
密閉タンク11内に投入した水分散型粘着剤2について30分間脱泡処理を行った。ここに、脱泡時には、真空バルブ16を開状態とし、また、その他の脱泡装置1に繋がるバルブは全て閉状態とし、密閉タンク11の内部圧力を10kPaにして撹拌羽根12を回転させることにより減圧脱泡を行った。その後、脱泡装置1の密閉タンク11内の水分散型粘着剤2を、バッファタンク3の密閉タンク31、次いでポンプセットタンク5の密閉タンク51へ搬送した。なお、前記各搬送工程では、各タンク間の圧力差を利用して水分散型粘着剤2を搬送した。また、上記密閉タンク51へ搬送された水分散型粘着剤2を、送液ポンプ92により塗布装置94に搬送して粘着剤層の形成を行なった。
【0127】
なお、溶存酸素濃度の測定は、サンプリングして取り出した水分散型粘着剤(約150ml)を200mlの広口ガラス瓶に入れ、その中に、溶存酸素濃度計(Dissolved Oxgen Meter/model,Thermo Electron Co.)を用い、その電極を投入して、ゆっくりと撹拌させながら計測した。測定温度は26℃で行なった。他の、溶存酸素濃度の測定も同様に行なった。
【0128】
(粘着剤層の形成および粘着型偏光板の作成)
上記の搬送された水分散型粘着剤2を、剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ38μm)からなるセパレータの表面に、乾燥後の厚みが20μmになるようにダイコーターにより塗布した後、120℃で5分間乾燥して、粘着剤層を形成した。当該粘着剤層を、偏光板(日東電工社製,3G−DU)に転写して、粘着型偏光板を得た。なお、塗布される水分散型粘着剤2に溶存酸素濃度は、2.98mg/Lであった。当該塗布直前の水分散型粘着剤2の溶存酸素濃度は、塗布装置94の手前(コーターの寸前の箇所)で、水分散型粘着剤2をサンプリングして測定した。
【0129】
実施例2〜6、比較例1〜4
実施例1において、水分散型粘着剤に対する脱泡処理の条件を表1に示すように変えたこと以外は、実施例1と同様にして粘着型偏光板を得た。
【0130】
実施例7
(有機溶剤型粘着剤の調製)
冷却管、窒素導入管、温度計及び撹拌装置を備えた反応容器に、アクリル酸ブチル100部、アクリル酸5部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル0.075部および2,2´−アゾビスイソブチロニトリル0.3部を酢酸エチルと共に加えて溶液を調製した。次いで、この溶液に窒素ガスを吹き込みながら撹拌して、60℃で4時間反応させて、重量平均分子量220万のアクリル系ポリマーを含有する溶液を得た。さらに、この(メタ)アクリル系ポリマーを含有する溶液に、酢酸エチルを加えて固形分濃度を30%に調整したアクリル系ポリマー溶液(A)を得た。
【0131】
前記アクリル系ポリマー溶液(A)の固形分100部に対して、架橋剤として、0.6部のイソシアネート基を有する化合物を主成分とする架橋剤(日本ポリウレタン(株)製,商品名「コロネートL」)と、シランカップリング剤として、0.075部のγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製,商品名「KMB−403」)とをこの順に配合して、有機溶剤型粘着剤を調製した。
【0132】
(有機溶剤型粘着剤の脱泡処理および粘着剤層の形成)
実施例1において、水分散型粘着剤の代わりに、上記で調製した有機溶剤型粘着剤を用いたこと以外は、実施例1と同様にして脱泡処理、搬送処理を行なった後、実施例1と同様にして粘着剤層を形成した。また、実施例1と同様に当該粘着剤層を、偏光板(日東電工社製,3G−DU)に転写して、粘着型偏光板を得た。
【0133】
実施例8〜11、比較例5〜6
実施例7において、有機溶剤型粘着剤に対する脱泡処理の条件を表2に示すように変えたこと以外は、実施例7と同様にして粘着型偏光板を得た。
【0134】
実施例12
(放射線硬化型の有機溶剤型粘着剤の調製)
実施例7と同様の方法で調製したアクリル系ポリマー溶液(A)の固形分100部に対して、メタクリル酸グリシジル4.5部及び触媒として、ジブチルスズラウレート0.3部を添加し、常温常圧下で24時間反応させて、前記アクリル系ポリマー(A)にメタクリロイル基を導入した、放射線硬化性ベースポリマーを得た。当該放射線硬化性ベースポリマーの固形分100部に対して、光重合開始剤(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)0.4部を配合して、放射線硬化型の有機溶剤型粘着剤を調製した。
【0135】
(放射線硬化型の有機溶剤型粘着剤の脱泡処理および粘着剤層の形成)
実施例1において、水分散型粘着剤の代わりに、上記で調製した放射線硬化型の有機溶剤型粘着剤を用いたこと以外は、実施例1と同様にして脱泡処理、搬送処理を行なった後、実施例1と同様の操作を行なった。さらに、紫外線をセパレータ側から照射して(高圧水銀灯120W灯,照射距離10cm,ラインスピード5m/min)、粘着剤層を形成した。また、実施例1と同様に当該粘着剤層を、偏光板(日東電工社製,3G−DU)に転写して、粘着型偏光板を得た。
【0136】
実施例13〜16、比較例7〜8
実施例12において、放射線硬化型の有機溶剤型粘着剤に対する脱泡処理の条件を表3に示すように変えたこと以外は、実施例12と同様にして粘着型偏光板を得た。
【0137】
上記実施例および比較例で得られた粘着型偏光板について以下の評価を行った。評価結果を表1乃至表3に示す。
【0138】
<加熱耐久性>
粘着型偏光板(15インチサイズ)を、無アルカリガラス(コーニング1737,厚み0.7mm)に貼り付け、50℃、0.5MPaのオートクレーブにて15分間処理を行った。次いで、このサンプルを80℃の条件下で500時間の処理を行った。処理されたサンプル(粘着型偏光板における粘着剤層)の気泡の発生度合いを下記の基準により、光学顕微鏡にて、その個数と大きさを確認し、下記基準で評価した。(但し、処理前からある気泡は除いて評価した。)
5:最大長さ100μm以上の気泡が1cm中になし。
4:最大長さ100μm以上の気泡が1cm中に5個以下。
3:最大長さ100μm以上の気泡が1cm中に6個から10個。
2:最大長さ100μm以上の気泡が1cm中に11個から100個。
1:最大長さ100μm以上の気泡が1cm中に6個から101個以上。
【0139】
<加湿耐久性>
粘着型偏光板(15インチサイズ)を、無アルカリガラス(コーニング1737,厚み0.7mm)に貼り付け、50℃、0.5MPaのオートクレーブにて15分間処理を行った。次いで、このサンプルを60℃、95%R.H.の環境下で、500時間の処理を行った。処理されたサンプルの粘着型偏光板と無アルカリガラスの間の剥がれの度合いを目視で確認し、下記基準で評価した。
5:剥がれの発生なし。
4:粘着型偏光板の端部から0.1mm以内の箇所に剥がれが発生。
3:粘着型偏光板の端部から0.5mm以内の箇所に剥がれが発生。
2:粘着型偏光板の端部から1.0mm以内の箇所に剥がれが発生。
1:粘着型偏光板の端部から1.0mm以上の箇所に剥がれが発生。
【0140】
<コントラスト>
VAモードの液晶セルを含む市販の液晶表示装置(ソニー社製,40インチ液晶テレビ,商品名「BraviaKDL−46V1」)から液晶パネルを取り出し、液晶セルの上下に配置されていた偏光板等の光学フィルムを全て取り除いた。この液晶セルのガラス板の表裏を洗浄したものを液晶セルAとした。当該液晶セルAの視認側に、実施例および比較例で得られた粘着型偏光板を、偏光板の吸収軸方向が液晶セルAの長辺方向と実質的に平行になるように、粘着型偏光板の粘着剤層側を液晶セルAに貼り合せた。次いで、液晶セルAの視認側とは反対側(バックライト側)にも、前記と同じ実施例および比較例で得られた粘着型偏光板を、偏光板の吸収軸方向が液晶セルAの長辺方向と実質的に直交するように、粘着型偏光板の粘着剤層側を液晶セルAに貼り合せた。これを液晶パネルAとする。液晶パネルAの視認側の粘着型偏光板とバックライト側の粘着型偏光板の各偏光板の吸収軸方向は実質的に直交である。液晶パネルAを、元の液晶表示装置のバックライトユニットと結合し、液晶表示装置Aを作製した。
【0141】
≪コントラストの測定≫
液晶表示装置Aの正面方向のコントラスト比の測定方法:23℃の暗室でバックライトを点灯させてから30分間経過した後、トプコン社製の製品名「BM−5」を用いて、レンズをパネル情報の50cm位置に配置し、白画像および黒画像を表示した婆いのXYZ表示系のY値を測定した。白画像におけるY値(YW:白輝度)と黒画像におけるY値(YB:黒輝度)とから、正面方向のコントラスト比「YW/YB」を算出した。
コントラストは、2600以上であることが好ましく、2700以上、2800以上、2900以上、さらには3000以上であるのが好ましい。
【0142】
【表1】

【0143】
【表2】

【0144】
【表3】

【符号の説明】
【0145】
1 脱泡装置
2 粘着剤塗布液
3 バッファタンク
4 連結管
5 ポンプセットタンク
7 真空ポンプ
6 連結管
11 密閉タンク
13 真空バルブ
31 密閉タンク
51 密閉タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学フィルムの少なくとも片側に、粘着剤層が積層されている粘着型光学フィルムであって、
前記粘着剤層は、溶存酸素濃度が、0.02〜3mg/Lの粘着剤塗布液を塗布した後、乾燥することにより形成されたものであることを特徴とする粘着型光学フィルム。
【請求項2】
粘着剤塗布液が、少なくともベースポリマーが水中に分散含有されている分散液からなる水分散型粘着剤であることを特徴とする請求項1記載の粘着型光学フィルム。
【請求項3】
前記水分散型粘着剤の溶存酸素濃度が、0.05〜2mg/Lであることを特徴とする請求項1または2記載の粘着型光学フィルム。
【請求項4】
前記水分散型粘着剤の溶存酸素濃度が、0.1〜1mg/Lであることを特徴とする請求項1または2記載の粘着型光学フィルム。
【請求項5】
前記水分散型粘着剤の溶存酸素濃度が、0.1〜0.5mg/Lであることを特徴とする請求項1または2記載の粘着型光学フィルム。
【請求項6】
前記水分散型粘着剤におけるベースポリマーが、(メタ)アクリル系ポリマーであることを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の粘着型光学フィルム。
【請求項7】
前記ベースポリマーである、(メタ)アクリル系ポリマーが、乳化重合により得られたものであることを特徴とする請求項6記載の粘着型光学フィルム。
【請求項8】
粘着剤塗布液が、少なくともベースポリマーが有機溶剤中に溶解されている溶液からなる有機溶剤型粘着剤であることを特徴とする請求項1記載の粘着型光学フィルム。
【請求項9】
前記有機溶剤型粘着剤の溶存酸素濃度が、0.1〜2mg/Lであることを特徴とする請求項8記載の粘着型光学フィルム。
【請求項10】
前記有機溶剤型粘着剤の溶存酸素濃度が、0.5〜1mg/Lであることを特徴とする請求項8記載の粘着型光学フィルム。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の粘着型光学フィルムの製造方法であって、
粘着剤塗布液を、溶存酸素濃度が、0.02〜3mg/Lになるように脱泡処理を行なう工程(1)、
支持基材の片面または両面に、脱泡処理工程(1)が行なわれた粘着剤塗布液を塗布する工程(2)、および、
塗布された粘着剤塗布液を乾燥して粘着剤層を形成する工程(3)を有することを特徴とする粘着型光学フィルムの製造方法。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれかに記載の粘着型光学フィルムを少なくとも1枚用いていることを特徴とする画像表示装置。
【請求項13】
光学フィルムの少なくとも片側に、粘着剤層が積層されている粘着型光学フィルムの当該粘着剤層の形成に用いる粘着剤塗布液であって、
当該粘着剤塗布液は、溶存酸素濃度が、0.02〜3mg/Lであることを特徴とする粘着剤塗布液。
【請求項14】
請求項13記載の粘着剤塗布液の製造方法であって、
粘着剤塗布液に、溶存酸素濃度が、0.02〜3mg/Lになるように脱泡処理を行なうことを特徴とする、粘着剤塗布液の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−280854(P2010−280854A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−136539(P2009−136539)
【出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】