説明

粘着材層を備えたフィルム材の切断方法

【課題】
粘着材層を備えたフィルム材を細幅に切断するに際し、粘着材層を形成する粘着材が基材からはみ出したり、基材の裏面側に付着したりすることなく、高い幅精度で連続的に切断することができ、しかも、切断後に巻き取られるフィルム材の品質に何ら悪影響を及ぼすことがない粘着材層を備えたフィルム材の切断方法を提供する。
【解決手段】
連続的に繰り出される粘着材層を備えたフィルム材20を、受け皿33に満たされた、沸点が50〜130℃、蒸気圧が30〜2kMPaの有機フッ素化液体により、少なくとも切断刃31の粘着材層との接触部位を湿潤させて切断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着材層を備えたフィルム材を、細幅に切断しながら巻き取っていくにあたり、粘着材が基材からはみ出したり、粘着材が基材の裏面側に付着したりすることなく、高い幅精度で連続的に安定して切断することができる粘着材層を備えたフィルム材の切断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、粘着テープなどのテープ状部材は、幅広のフィルム基材に粘着材層を塗工形成するなどした後に、これを細幅のテープ状に切断しながらロール状に巻き取ることによって製造されている。
また、このようにして粘着テープを製造するにあたり、フィルム材を細幅に切断するための装置としては、例えば、特許文献1などに開示されているようなスリット装置が知られている。
【0003】
特許文献1に開示されているスリット装置は、円盤状の上刃と上部スペーサーリングとを交互に軸に組み付けた上部ユニットと、円盤状の下刃と下部スペーサーリングとを交互に軸に組み付けた下部ユニットとからなるブロック刃方式のスリット装置において、上刃の周面と下刃の周面が対向し、斜向かいの上刃の切刃と下刃の切刃とが摺接し、かつ、隣り合う上刃同士の間隙又は隣り合う下刃同士の間隙を所定幅とすることにより、スリットした粘着テープの中央部と両縁部との厚みの差や、縁部の反りを低減することができるとしている。
【0004】
【特許文献1】特開2000−326284号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者らが鋭意検討を重ねたところ、特許文献1のようなスリット装置によって、粘着材層を備えたフィルム材を細幅に切断して粘着テープを製造するには、未だ改善すべき課題が残されており、その切断の際に、粘着材層を形成する粘着材が、上刃や、下刃に付着して、引きずられるようにして基材からはみ出してしまったり、基材からはみ出した粘着材が、基材の裏面側に付着してしまったりするという不具合があることを見出した。
【0006】
特に、近年にあっては、基材上に形成された粘着材層に導電性微粒子を含有させてなる異方導電性フィルムが、液晶ディスプレイなどの回路接続に多用されており、この種の異方導電性フィルムは、通常、上記したのと同様にしてテープ状に切断したものがリールに巻き取られて製造、供給されている。そして、このような異方導電性フィルムに形成される粘着材層の厚みや、導電性微粒子の含有量などは厳密に管理されているため、異方導電性フィルムを製造する過程において、粘着材が基材からはみ出したり、基材の裏面側に付着したりする不具合が一部にでも生じると、そのような不具合が生じたリールは廃棄しなければならず、製造歩留まりを低下させる要因となってしまう。
【0007】
また、フィルム材を切断する刃(切断刃)を湿潤させることにより、粘着材の付着を防止して、上記不具合を解消することも考えられるが、このようにした場合には、切断刃を湿潤させるのに用いた湿潤液がフィルム材に付着し、切断後に巻き取られるフィルム材に残留して粘着材を膨潤させるなど、フィルム材の品質に悪影響を及ぼすおそれがある。このため、単に切断刃を湿潤させるだけでは、問題の根本的な解決にはならなかった。
【0008】
本発明は、上記のような本発明者らの検討に基づいてなされたものであり、粘着材層を備えたフィルム材を細幅に切断するに際し、粘着材層を形成する粘着材が基材からはみ出したり、基材の裏面側に付着したりすることなく、高い幅精度で連続的に切断することができ、しかも、切断後に巻き取られるフィルム材の品質に何ら悪影響を及ぼすことがない粘着材層を備えたフィルム材の切断方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明に係る粘着材層を備えたフィルム材の切断方法は、基材上に粘着材層を備えたフィルム材を連続的に繰り出しながら切断刃により細幅に切断するにあたり、少なくとも前記切断刃の前記粘着材層との接触部位を、沸点が50〜130℃、蒸気圧が2〜35kPaの有機フッ素化液体に浸漬させて湿潤させた後に、前記フィルム材を切断する方法としてある。
【0010】
このような方法とすることにより、切断後に巻き取られるフィルム材の品質に何ら悪影響を及ぼすことなく、切断刃に粘着材が付着するのを防止して、粘着材が基材からはみ出したり、基材の裏面側に付着したりすることなく、高い幅精度でフィルム材を連続的に安定して切断することができる。
【0011】
また、このような本発明に係る粘着材層を備えたフィルム材の切断方法にあっては、蒸発速度の適性化を図る観点から、前記有機フッ素化液体の蒸気密度が5〜20であるのが好ましい。
【0012】
また、本発明に係る粘着材層を備えたフィルム材の切断方法では、粘着材などを溶かしてしまったり、粘着材などとの間で化学反応を起こしてしまったりするのを避けるために、切断刃を湿潤させる湿潤液として有機フッ素化液体を用いるが、前記有機フッ素化液体としては、炭素数3〜9のフッ素化物を主成分とするものを用いるのが好ましく、なかでも、炭素数6〜8の完全フッ素化物を主成分とするものや、ハイドロフルオロエーテルを用いるのが好ましい。
【0013】
また、本発明に係る粘着材層を備えたフィルム材の切断方法は、前記切断刃が、先細り状とされた刃先部を周端に有する円板状の複数の上刃を、所定間隔で支持軸に組み付けてなる上刃連装体と、軸心にほぼ平行な平坦面を周端に有する円板状の複数の下刃を、所定間隔で支持軸に組み付けてなる下刃連装体とからなり、前記フィルム材の繰り出しと同期して回転する前記上刃連装体と前記下刃連装体との間に、前記フィルム材を挿通させて切断する方法とすることができる。
このような方法とすれば、切断時のフィルム材の位置ずれなどを抑止して、フィルム材の切断を精度よく行うことができる。
【0014】
また、本発明に係る粘着材層を備えたフィルム材の切断方法は、前記粘着材層が前記上刃連装体と対向するように、前記フィルム材を繰り出すとともに、前記上刃の刃先部側を前記有機フッ素化液体により湿潤させる方法とすることができる。
このような方法とすれば、粘着材層と、切断刃との接触面積が小さくなるようにして、切断刃への粘着材の付着をより有効に回避することができる。
【0015】
このような、本発明に係る粘着材層を備えたフィルム材の切断方法は、前記フィルム材が、異方導電性フィルムである場合に特に好適であり、前記粘着材層の粘着力が0.15N以上のときに、本発明の効果が顕著となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、粘着材層を備えたフィルム材を細幅に切断するに際して、特定の有機フッ素化液体により切断刃を湿潤させることにより、粘着材層を形成する粘着材が切断刃に付着するのを防止することができる。このため、フィルム材を切断する際に、粘着材が基材からはみ出したり、基材の裏面側に付着したりすることなく、高い幅精度で連続的に安定して切断することができる。
しかも、切断刃を湿潤させる有機フッ素化液体は、切断されたフィルム材が巻き取られるまでの間に消失するため、フィルム材の品質に何ら悪影響を及ぼすことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。
なお、図1は、本発明に係る粘着材層を備えたフィルム材の切断方法を実施するのに好適なスリット装置の一例を示す概略図である。
【0018】
図1に示すスリット装置10において、巻出軸11には、粘着材層を備えたフィルム材20が巻き取られたロール21が取り付けられている。そして、フィルム材20は、ロール21から、送りローラ12を介して切断刃ユニット30に繰り出されるようになっている。
【0019】
本実施形態で切断する対象となる粘着材層を備えたフィルム材20としては、例えば、必要に応じて離型処理が施された、ポリエチレンテレフタレート,四フッ化エチレン,四フッ化エチレン−エチレン共重合体,ポリイミドなどからなる基材上に、エポキシ系樹脂,ウレタン系樹脂,アクリル系樹脂などを単独で、又は適宜混合するとともに、必要に応じて種々の添加剤を配合してなる粘着材を塗工してなるものが挙げられる。
【0020】
また、本実施形態において、切断刃ユニット30は、上刃連装体31と、下刃連装体32とを備えて構成されている。
図2に示すように、上刃連装体31には、先細り状とされた刃先部を周端に有する円板状の複数の上刃311が、スペーサ312を介して支持軸313に所定間隔で組み付けられている。一方、下刃連装体32には、軸心にほぼ平行な平坦面を周端に有する円板状の複数の下刃321が、スペーサ322を介して支持軸323に所定間隔で組み付けられている。そして、上刃連装体32に組み付けられた各上刃311の刃先部が、下刃連装体32に組み付けられた各下刃321の間に挿入され、それぞれの上刃311と、対応する下刃321とによってフィルム材20を切断することができるように、上刃連装体31と、下刃連装体32との軸心距離などの相対的な位置関係が調整されている。
【0021】
このような切断刃ユニット30において、上刃連装体31と、下刃連装体32とは、フィルム材20の繰り出しに同期して、図1中矢印方向に回転するように、図示しない駆動手段に接続されている。そして、上刃連装体31と、下刃連装体32との間にフィルム材20を挿通させることによって、挿通されたフィルム材20が所定幅のテープ状に切断されるが、このときの上刃311及び下刃321のそれぞれの組み付け間隔が、フィルム材20の切断幅になる。
本実施形態において、フィルム材20の切断幅は、好ましくは0.5〜4.0mmであり、より好ましくは1.0〜3.0mmである。
【0022】
本実施形態に用いる切断刃ユニット30としては、この種のスリット装置に従来から用いられている種々のものを利用することができるが、上記したような切断刃ユニット30を用いれば、下刃連装体32に組み付けられた下刃321の周端の平坦面にフィルム材20を支持した状態で、フィルム材20を切断することになり、切断時のフィルム材20の位置ずれなどを抑止して、フィルム材20の切断を精度よく行うことができるため好ましい。
【0023】
また、上記したような切断刃ユニット30によってフィルム材20を切断するにあたり、フィルム材20の粘着材層が上刃連装体31と対向するようにフィルム材20を繰り出せば、粘着材層と、切断刃(上刃311)との接触面積が小さくなるようにすることができる。
【0024】
そして、本実施形態にあっては、上刃連装体31と、下刃連装体32との間にフィルム材20を挿通して切断するに際して、上刃連装体31に組み付けられているそれぞれの上刃311の刃先部側を湿潤液に浸漬させ、少なくとも粘着材層との接触部位を湿潤させることにより、粘着材層を形成する粘着材が、上刃311に付着するのを防止している。
これにより、本実施形態によれば、粘着材層を形成する粘着材が切断刃(上刃311)に付着して、引きずられるようにして基材からはみ出してしまったり、基材からはみ出した粘着材が、基材の裏面側に付着してしまったりするというような不具合を、有効に回避することができる。
【0025】
ここで、図1に示す例では、上刃連装体31の下方に設けられた受け皿33に湿潤液を満たしておき、この湿潤液に上刃311の刃先側を浸漬して湿潤させた後に、下刃連装体31との間に挿通されるフィルム材20を切断するようにしてある。また、本実施形態において、上刃311の刃先部を湿潤させるのに用いる湿潤液としては、沸点が50〜130℃、好ましくは60〜120℃、より好ましくは70〜110℃であり、蒸気圧が2〜35kPa、好ましくは3〜25kPa、より好ましくは4〜20kPaの有機フッ素化液体が用いられる。
また、湿潤液としての有機フッ素化液体の蒸気密度は、空気を1とした場合に、5〜20であるのが好ましく、より好ましくは8〜15である。
なお、上記沸点は常圧(1atm)での値とし、上記蒸気圧及び蒸気密度は常温(20〜25℃)での値とする。
【0026】
後述するように、切断刃ユニット30によって細幅に切断されたフィルム材20a,20bは、リール50に巻き取られていくが、単に切断刃(上刃311)を湿潤させただけでは、切断時に付着した湿潤液が残留したままフィルム材20a,20bが巻き取られてしまい、残留した湿潤液が粘着材を膨潤させるなどして、フィルム材20a,20bの品質に悪影響を及ぼしてしまうおそれがある。
しかしながら、本実施形態では、切断刃(上刃311)を湿潤させる湿潤液として、上記のような有機フッ素化液体を用いることにより、フィルム材20a,20bに付着した湿潤液は、フィルム材20a,20bが巻き取られるまでの間に十分に蒸発して消失させることができ、残留する湿潤液によってフィルム材20a,20bの品質に悪影響が及ぼされることがない。
【0027】
本実施形態において、切断刃(上刃311)を湿潤させる有機フッ素化液体は、フィルム材20を切断するまでは切断刃(上刃311)が湿潤されている状態を維持し、フィルム材20が切断された直後に蒸発して消失するのが理想ではあるが、フィルム材20を切断した後、フィルム材20a,20bが巻き取られるまでの間に消失するものであればよい。
湿潤液として用いる有機フッ素化液体の沸点、及び蒸気圧が上記範囲に満たないと、蒸発速度が遅く、フィルム材20が巻き取られるまでに蒸発しきらずに、フィルム材20に有機フッ素化液体が残留してしまうおそれがある。一方、有機フッ素化液体の沸点、及び蒸気圧が上記範囲を超える場合は、蒸発速度が速すぎて、受け皿33に頻繁に湿潤液を補充しなければならなくなるため、連続的なフィルム材20の切断を安定して行う上で好ましくない。そして、蒸発速度の適性化を図る観点から、有機フッ素化液体の蒸発密度は上記範囲にあるのが好ましい。
【0028】
また、本実施形態では、湿潤液が粘着材などを溶かしてしまったり、粘着材などとの間で化学反応を起こしてしまったりするのを避けるために、湿潤液として有機フッ素化液体を用いるが、このような有機フッ素化液体としては、例えば、炭素数3〜9のフッ素化物を主成分とするものを用いるのが好ましく、なかでも、炭素数6〜8の完全フッ素化物を主成分とするものや、ハイドロフルオロエーテルが好ましい。
より具体的には、炭素数6〜8の完全フッ素化物を主成分とする有機フッ素化液体としては、住友スリーエム社製の「フロリナート(商品名)」などが市販品として入手可能であり、なかでも、FC−84、FC−77が好ましい。また、ハイドロフルオロエーテルとしては、メチルノナフルオロイソブチルエーテル、メチルノナフルオロブチルエーテル、エチルノナフルオロイソブチルエーテル、エチルノナフルオロブチルエーテル等が挙げられる。これらは、単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0029】
このようにして切断刃ユニット30によって細幅に切断されたフィルム材20a,20bは、その送り方向が、幅方向に沿って交互に二方向に分けられ、一つおきに、第一の幅広げローラ40aと、第二の幅広げローラ40bへと、それぞれに送られる。そして、図3に示すように、隣り合うフィルム材20a(20b)との間隔が、各幅広げローラ40a(40b)によって広げられた、それぞれのフィルム材20a(20b)は、ラフガイド13と、巻取ガイド14とにより張力が調整されながら、巻取軸15に取り付けられたリール50に巻き取られていく。
なお、切断幅の調整などのために不要となるフィルム材20の両端部分は、フィルム材20を切断した後に、必要に応じて図示しない耳巻取機に巻き取るようにすることもできる。
【0030】
以上のような本実施形態によれば、粘着材層を備えたフィルム材20を細幅に切断するに際し、切断後に巻き取られるフィルム材20a,20bの品質に何ら悪影響を及ぼすことなく、粘着材が基材からはみ出したり、基材の裏面側に付着したりするのを防止することができ、特に、粘着材層の厚みや、導電性微粒子の含有量などが厳密に管理されている異方導電性フィルムを製造する過程において、このような異方導電性フィルムを所定の細幅に切断するのに好適である。
【0031】
また、粘着材の切断刃への付着は、粘着材の粘着力が大きくなるほど発生しやすくなるが、粘着材の粘着力が0.15N以上のときに本実施形態を適用すると、本実施形態の効果を顕著に得ることができ、より好適には0.2N以上である。
なお、粘着材の粘着力は、接触加重1N/cm、接触時間1秒、温度50度の条件下で、直径5mmのプローブを粘着材に接触させた後に、プローブを粘着材との接着面から垂直方向に引き剥がすのに要する力とする。
【実施例】
【0032】
次に、具体的な実施例を挙げ、本発明をより詳細に説明する。
【0033】
[実施例1〜5]
ポリエチレンテレフタレートからなる幅65mmの基材上に、アクリルゴムを主成分とする粘着材層が40μmの厚みで塗工形成されたフィルム材20をロール状に巻き取り、図1に示すスリット装置10の巻出軸11に取り付けた。
なお、粘着材層の粘着力は0.25Nであった。
【0034】
一方、湿潤液として表1に示す有機フッ素化液体を用い、これを受け皿33に満たして、上刃連装体31に組み付けられた上刃311の刃先側が湿潤液に浸漬されるようにした。そして、粘着材層が上刃連装体31と対向するようにフィルム材20を繰り出して、フィルム材20を2.0mm幅に切断し、切断されたフィルム材20a,20bをそれぞれリール50に巻き取った。
なお、フィルム材20を切断してからリール50に巻き取るまでに要した時間は、5秒であった。また、不要となったフィルム材20の両端部分は、耳巻取機に巻き取った。
【0035】
[比較例1〜2]
湿潤液として表1に示す有機フッ素化液体を用いた以外は、上記実施例と同様にして、フィルム材を切断した。
【0036】
[比較例3]
湿潤液としてアセトンを用いた以外は、上記実施例と同様にして、フィルム材を切断した。
【0037】
[比較例4]
湿潤液としてエタノールを用いた以外は、上記実施例と同様にして、フィルム材を切断した。
【0038】
これらの実施例、及び比較例について、下記の評価基準により評価し、その結果を表1に併せて示した。
【0039】
【表1】

【0040】
[評価1:湿潤効果]
フィルム材を切断する際に、切断刃への粘着材の付着が全く認められなかったものを○、若干の付着が認められたものを△とした。
【0041】
[評価2:速乾性]
フィルム材を切断した後、フィルム材に付着した湿潤液が、フィルム材を巻き取るまでに完全に消失していたものを○、若干の残留が認められたものを△、付着した湿潤液の大部分が残留していたものを×とした。
【0042】
[評価3:基材フィルムの品質への影響]
基材フィルムの品質への影響が全く認められなかったものを○、若干の影響が認められたものを△、粘着材を溶解してしまったものを×とした。
【0043】
[評価4:安定性]
湿潤液を頻繁に補充する必要がなかったものを○、湿潤液の補充頻度が比較的多かったが、許容範囲内のものを△、湿潤液を頻繁に補充しなければならなかったり、臭気などへの対策が必要であったりしたものを×とした。
【0044】
以上、本発明について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、前述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
【0045】
例えば、前述した実施形態では、上刃連装体31に粘着材層を対向させてフィルム材20を切断しているが、粘着材層を下刃連装体32に対向させてフィルム材20を切断するようにすることもでき、この場合には、下刃連装体32に組み付けられた下刃321の粘着材層と接触する部位を、有機フッ素化液体により湿潤させればよい。
【0046】
また、前述したように、切断刃としては、この種のスリット装置に用いられている種々のものを利用できるが、そのような場合であっても、前述した有機フッ素化液体によって、少なくとも切断刃の粘着材層との接触部位を湿潤させるようにすればよい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
以上説明したように、本発明は、粘着材層を備えたフィルム材を連続的に安定して細幅に切断する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係る粘着材層を備えたフィルム材の切断方法の実施に好適なスリット装置の一例を示す概略図である。
【図2】切断刃ユニットの一例を示す説明図である。
【図3】幅広げローラの一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0049】
10 スリット装置
20 フィルム材
30 切断刃ユニット
31 上刃連装体
311 上刃
32 下刃連装体
321 下刃
33 受け皿

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に粘着材層を備えたフィルム材を連続的に繰り出しながら切断刃により細幅に切断するにあたり、
少なくとも前記切断刃の前記粘着材層との接触部位を、
沸点が50〜130℃、蒸気圧が2〜35kPaの有機フッ素化液体に浸漬させて湿潤させた後に、
前記フィルム材を切断することを特徴とする粘着材層を備えたフィルム材の切断方法。
【請求項2】
前記有機フッ素化液体の蒸気密度が5〜20である請求項1に記載の粘着材層を備えたフィルム材の切断方法。
【請求項3】
前記有機フッ素化液体が、炭素数3〜9のフッ素化物を主成分とするものである請求項1〜2のいずれか1項に記載の粘着材層を備えたフィルム材の切断方法。
【請求項4】
前記有機フッ素化液体が、炭素数6〜8の完全フッ素化物を主成分とするものである請求項3に記載の粘着材層を備えたフィルム材の切断方法。
【請求項5】
前記有機フッ素化液体が、ハイドロフルオロエーテルである請求項3に記載の粘着材層を備えたフィルム材の切断方法。
【請求項6】
前記切断刃が、
先細り状とされた刃先部を周端に有する円板状の複数の上刃を、所定間隔で支持軸に組み付けてなる上刃連装体と、
軸心にほぼ平行な平坦面を周端に有する円板状の複数の下刃を、所定間隔で支持軸に組み付けてなる下刃連装体とからなり、
前記フィルム材の繰り出しと同期して回転する前記上刃連装体と前記下刃連装体との間に、前記フィルム材を挿通させて切断する請求項1〜5のいずれか1項に記載の粘着材層を備えたフィルム材の切断方法。
【請求項7】
前記粘着材層が前記上刃連装体と対向するように、前記フィルム材を繰り出すとともに、
前記上刃の刃先部側を前記有機フッ素化液体により湿潤させる請求項6に記載の粘着材層を備えたフィルム材の切断方法。
【請求項8】
前記フィルム材が、異方導電性フィルムである請求項1〜7のいずれか1項に記載の粘着材層を備えたフィルム材の切断方法。
【請求項9】
前記粘着材層の粘着力が0.15N以上である請求項1〜8のいずれか1項に記載の粘着材層を備えたフィルム材の切断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−90460(P2007−90460A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−280487(P2005−280487)
【出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】