説明

粘着面が二重の貼付用温熱体構造物

【課題】粘着剤の粘着力を小さくして角質をとりにくくしても身体からの落下を防ぐことができる貼付用温熱体構造物を提供する。
【解決手段】酸素の存在下で発熱する発熱組成物を収容した扁平状袋体からなり、前記扁平状袋体が、少なくとも一部が通気性を有する通気面と粘着層を有する粘着面とを有する、貼付用温熱体構造物であって、前記粘着面が、発熱組成物と接する側に位置しており発熱組成物を通過させない内被シート(A)と、被着体と接する側に位置しており粘着層を担持する外被シート(B)とからなり、前記内被シート(A)と外被シート(B)とが、周縁部で接着されており、かつ、該周縁部以外では未接着部及び/又は被着体貼付時に離れうる部分を有していることを特徴とする、貼付用温熱体構造物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貼付用の温熱体構造物に関する。特に、皮膚に直接貼付して用いるのに適した温熱体構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
空気と接触して発熱する発熱組成物を収容した通気性袋からなる温熱体は、肩こり、神経痛、筋肉痛等及び種々の原因による慢性的な疼痛を軽減するための医療用具として、また、防寒のためのカイロとして、一般に広く用いられている。
この温熱体のうち、皮膚に直接貼付するものについては、使用中の発汗や体の動きにより温熱体が剥がれやすくなる問題がある。そのため、粘着剤の粘着力を強くすることが考えられたが、粘着力を強くすると使用後に剥がす時に皮膚の角質の余分の剥れや痛みが生じたりした。
【0003】
これらの解決策として、発熱剤を内部に含むシート状袋の片面に親水性不織布を介して疎水性の粘着剤をストライプ状又はドット状に形成したことを特徴とする皮膚適用発熱シートが提案されている(例えば、特許文献1)。
しかし、汗が、塗布された粘着剤の間の空間を通り、親水性不織布に十分吸収されるようにするためには、粘着剤面積を減らさざるを得ない。そのため、この提案によっても、皮膚への貼着が十分でないという問題があった。
【0004】
【特許文献1】特開2000−139990号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、粘着剤の粘着力を小さくして角質をとりにくくしても身体からの落下を防ぐことができる貼付用温熱体構造物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記問題点を改善すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、
〔1〕 酸素の存在下で発熱する発熱組成物を収容した扁平状袋体からなり、前記扁平状袋体が、少なくとも一部が通気性を有する通気面と粘着層を有する粘着面とを有する、貼付用温熱体構造物であって、
前記粘着面が、発熱組成物と接する側に位置しており発熱組成物を通過させない内被シート(A)と、被着体と接する側に位置しており粘着層を担持する外被シート(B)とからなり、
前記内被シート(A)と外被シート(B)とが、周縁部で接着されており、かつ、該周縁部以外では未接着部及び/又は被着体貼付時に離れうる部分を有していることを特徴とする、貼付用温熱体構造物;
〔2〕 前記内被シート(A)と外被シート(B)とが、周縁部以外でも部分的に接着されている、前記〔1〕記載の貼付用温熱体構造物;
〔3〕前記外被シート(B)が伸縮性を有するものである前記〔1〕又は〔2〕記載の貼付用温熱体構造物;
〔4〕 前記粘着層が剥離シートで覆われており、温熱体構造物が実質的に酸素を通過させない外袋に密封されている、前記〔1〕〜〔3〕のいずれか1項記載の貼付用温熱体構造物、
を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の貼付用温熱体構造物は、少なくとも下記の効果を奏する。
(1)強粘着性の粘着剤を使用しなくとも、被着体からの構造物の剥がれが生じにくく落下しにくい。
(2)皮膚から剥がすときに違和感がなく、角質の剥がれが少ないため、皮膚に対する安全性が高い。
(3)使用中を通して快適なフィット感及び定常的な温熱効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の温熱体構造物は、基本的に、酸素の存在下で発熱する発熱組成物と、それを収容する袋体とからなる。本発明の温熱体構造物の構造例を、図1に示す。なお、本発明の温熱体構造物は、動きにつれて変形する被着体、特に人体の皮膚に直接貼付する場合に適しているので、以下において皮膚に貼付する場合を中心に説明するが、被着体としては、人体に限らず、例えば衣類等であってもよい。
【0009】
発熱組成物を収容する袋体は、扁平状の形態である。ここでいう扁平状とは、2つの主要な面を有し、全体として扁平状の形態であればよく、たとえばマチ部分のような主要な面以外の面があってもよい。これらの2つの主要な面は、一方が、少なくとも一部が通気性を有する通気面であり、他方が、粘着層を有する粘着面である。
【0010】
通気面は、少なくとも一部が通気性を有する単層又は積層シートで構成されている。このような通気性のシートとしては、一般に単層又は積層の多孔質フィルム又はシートが用いられる。フィルム又はシートを構成する樹脂としては、従来温熱体で用いられる公知のものが使用でき、目的に応じて、必要発熱量、温度、用いる発熱組成物等に合わせて適切な通気度のものを適宜選択することができる。通気性フィルム又はシートの厚さは、好ましくは20μm〜1mm程度が好適に用いられる。
【0011】
上記のフィルム又はシートは、不織布等の被覆材と積層されていてもよい。このような被覆材も、従来温熱体に用いられるものが使用でき、ナイロン、ビニロン、ポリエステル、レーヨン、アセテート、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等の人工繊維;綿、麻、絹等の天然繊維を、1種又は2種以上含む、布(不織布、織布)、紙、フィルムなどが挙げられる。感触、保温性、コスト等の点から、不織布が好ましい。特に好ましい不織布の目付けは、20〜100g/m程度である。
通気面を構成するシートとしては、特に、熱可塑性合成樹脂フィルムにナイロン、ポリエステル繊維等の不織布をラミネートした通気性シートが一般に多く使用されている。
【0012】
通気性を有するシートの通気性は、ガーレ法(JIS P−8117)による測定で約2000〜約60,000秒/100ccが好ましく、約10,000〜約50,000秒/100ccが特に好ましい。また、透湿性は、リッシー法(JIS K−7129A法)による測定で100〜1000g/(m・24hr)の範囲のものが好ましく、特に好ましくは100〜500g/(m・24hr)である。なお、これらの測定法以外の測定法によって測定した場合であっても、これらの測定法による数値に換算することができる。
【0013】
粘着層を有する粘着面は、少なくとも2枚のシートからなっており、これらの必須の2枚は、(A)発熱組成物と接する側に位置し、発熱組成物を通過させない内被シート、及び(B)被着体と接する側に位置し、粘着層を担持する外被シートである。この内被シート(A)と外被シート(B)とは、周縁部で接着されており、かつ該周縁部以外では未接着部及び/又は被着体貼付時に離れうる部分を有していることを特徴とする。ここで「被着体貼付時に」とは被着体に貼付している時の意味である。
【0014】
本発明の温熱体構造物は、粘着面が上記のように構成されていることにより、強粘着性の粘着剤を使用せずとも被着体からの剥れが生じにくくなる。さらに、強粘着性の粘着剤を使用しないでよいため、剥がす際の被着体への負担が軽減され、皮膚の角質等を剥がす力も弱まり、皮膚に対する安全性も向上することになる。また、内被シート(A)と外被シート(B)との間に存在する「離れ」の部分の空間が汗や水分の存在場所となり、汗を吸収することと同じになり、皮膚へ優しくなり、発赤、疼痛等の低温やけどが生じにくくなるという効果も奏する。
すなわち、内被シート(A)は、通気面を構成するシートとともに剛性のある発熱組成物収容部を形成しており、発熱組成物が発熱して硬くなると、貼着している皮膚の動きに追従できなくなる。そのため、内被シートのみの場合又は内被シート(A)と外被シート(B)とが完全に固定されている場合には、皮膚への粘着力を強くしないと剥れやすい。これに対し、使用時に(A)と(B)との間に固定されていない部分(本発明では「離れ」という)が存在すると(B)が貼着している皮膚が動いた場合でも、その動きが自由度のある「離れ」(固定されていない部分)で緩和されて構造物の上部の発熱組成物収容部に伝わるため、構造物自体が剥れ難くなる。
【0015】
前記内被シート(A)及び外被シート(B)は、少なくとも周縁部において接着されている。周縁部の接着は、全周にわたっていてもよく、また、周の一部のみの接着でもよい。これらのシートは、周縁部以外でも部分的に接着されていることができる。周縁部以外でも部分的に接着されていると、内被シート(A)と外被シート(B)との離れによる被着体の受ける熱ムラが少なくなるので好ましい。接着されている面積は、周縁部を含め内被シート(A)の面積に対して、2%以上が好ましく、3%以上がより好ましく、5%以上が特に好ましい。また、67%以下であることが好ましく、45%以下がより好ましく、24%以下が特に好ましい。2%以上であると(A)と(B)とが分離して温熱体構造物の発熱組成物収容部のみが落下する怖れが少なくなり、67%以下であると温熱体構造物が被着体から剥がれて落下する怖れが少なくなる。
【0016】
内被シート(A)と外被シート(B)とを接着する方法に限定はないが、好ましくは接着剤、ヒートシール等で接着する方法である。接着剤としては公知のものが使用できるが、ホットメルト型接着剤が好ましい。ヒートシール方法も公知の方法でよい。
内被シート(A)と外被シート(B)との接着のパターンは、特に限定されない。例えば全体の面積を二分割、四分割等に分割するように間隔をあけて直線又は曲線状に接着したり、又はストライプ状又はドット状等に接着してもよい。接着パターンの例を図3に示す。
【0017】
温熱体構造物を被着体に貼着して使用する際に、内被シート(A)と外被シート(B)との間に離れが存在するためには、両者がもともと部分的に接着されていて接着部以外は離れているか、最初は一部又は周縁部以外の全部が「仮留め」されており、使用中に仮留め部分が剥れて離れとなることが可能である。前者の場合は、貼着前から「離れ」が存在するが、後者の場合は貼着中に被着体の動きによって仮留め部分が徐々に剥離して(A)と(B)との間に「離れ」が発生するものである。離れの面積の制御しやすさの点では、特に好ましいのは前者である。
【0018】
本発明に関して「接着」が少なくとも使用前及び使用中において容易に分離しない程度に固着されていることを意味するのに対し、「仮留め」は、仮に留めてあるので、若干の力が加わることにより容易に剥がれる程度の留め方をいう。仮留めの場合は、接着力を弱くする方法、例えば接着力が弱い接着剤の使用、接着剤の使用量の低減等によって所望の接着を得ることができる。また、(A)と(B)を重ねた後に(B)側から粘着剤を塗布し、粘着剤の一部が(B)を通過して(A)に達し、(A)と(B)とが軽く接着し仮留めされたのと同じ状態になることを利用してもよい。
上記の場合、粘着剤は公知のものを使用することができ、例えば後述する粘着剤を使用できる。
【0019】
内被シート(A)及び外被シート(B)は、それぞれ、通気面を構成する通気性シートについて上述したのと同様の通気性シートで形成することができるが、部分的又は全面的に非通気性シートで形成されていてもよい。非通気性シートは、単層シートに限定されず、積層シートであってもよい。内被シート(A)としては、具体的には、(ア):非通気性フィルム又は通気性フィルムのみ、(イ):非通気性フィルム又は通気性フィルムと不織布との積層物、(ウ):(ア)同士の積層物等が挙げられるが、効果の面から好ましくは、(ア)、(イ)であり、特に好ましくは(イ)である。(ア)〜(ウ)において非通気性フィルムを用いれば袋体は片面通気性を示し、通気性フィルムを用いれば両面通気性を示す。
非通気性シートに用いられるフィルム、不織布の材質等は、公知のもの、例えば通気性シートに用いられるものと同じものが挙げられる。
【0020】
外被シート(B)としては、内被シート(A)と同様のものを使用することができるが、通気性及び/又は透湿性を有し、感触のよいものが好ましい。このようなものとして、上述した被覆材、すなわちナイロン、ビニロン、ポリエステル、レーヨン、アセテート、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等の人工繊維;綿、麻、絹等の天然繊維を、1種又は2種以上含む、布(不織布、織布)、紙、フィルムなどが挙げられ、感触、保温性、コスト等の点から、布、特に不織布が好ましい。特に好ましい不織布の目付けは、20〜100g/m程度である。また、被着体の動きに追随するものがよく密着して剥がれにくくなるので、(B)としては柔らかいもの又は伸縮性を有するものが特に好ましい。伸縮性は一方向であっても二方向であってもよい。このような外被シート(B)の伸縮性は、材質そのものによっても、製法や構成によっても付与される。材質としては前記の不織布に用いられたものと同じ材質が適用できるが、特に熱可塑性樹脂からなるものが伸縮性となりやすい。不織布の製法としては抄紙法、カード法、メルトブロー法、スパンボンド法及びウォータージェット法等が挙げられるが、柔軟性の面でウォータージェット法が好ましい。構成としては、(i)不織布そのものであっても、(ii)不織布と伸縮性ネットを組み合わせたものであってもよい。具体例として、例えば、(i)スパンレース不織布、(ii)伸縮性ネット〔コンウェッドネット(商品名)等;例えばSEBS樹脂(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン樹脂)等の熱可塑性樹脂製のネット〕を通し高圧水流でポリエステル繊維等をネットに絡ませたもの、このようなネットと不織布とを押出しラミネートする際の圧着部を凹凸構造のニップロールで筋状に圧着することで完全に接着していない列と接着した列とが交互になるようにして伸縮性を付与したもの等が挙げられる。このような外被シート(B)の例としては、例えば、上記素材のスパンレース不織布等が挙げられる。
【0021】
外被シート(B)上には、粘着層が担持されている。粘着層を形成するには、外被シート(B)(例えば不織布)に粘着剤又はゲルを塗布してもよく、また、両面テープを貼付してもよい。粘着層は、外被シート(B)の全面又は部分的に形成することができる。外被シート(B)の粘着層が担持されている部分は実質的に非通気性となりうるので、粘着層の形成部分の調節によって外被シートの通気性をコントロールすることもできる。汗の吸収などの観点から好ましくは、粘着層は、外被シート(B)上に部分的に設けられている。
【0022】
粘着剤としては、公知のものが使用でき、従来当該分野で使用されたものが使用できる。具体的には、例えば、ゴム系粘着剤組成物、アクリル系粘着剤組成物、その他の熱可塑性樹脂(例えば、ポリアミド系、ポリエチレン系、セルロース系樹脂)を主成分とする粘着剤組成物等が挙げられる。
粘着層の厚さは、特に限定されるものではないが、好ましくは5〜1,500μmであり、より好ましくは10〜1,000μmである。
粘着力は、好ましくは0.8N/10mm以上、1.5N/10mm以下であるが、1.2N/10mm以下が特に好ましい。なお、粘着力の測定は、JIS Z0237(180度引き剥がし粘着力)により測定することができる。
【0023】
本発明の温熱体構造物に用いられる粘着剤は、従来皮膚貼着用として用いられてきた強粘着剤の粘着力よりも弱い粘着性のものであることができる。これを用いても剥がれが生じにくい。むしろ、低粘着性の粘着剤を用いると温熱体構造物を使用後皮膚から剥がす際に、皮膚表面からの角質を過剰に剥がさなくてすむので皮膚表面の保護という意味から好ましい。ここでいう弱粘着性又は低粘着性とは、従来の一般的な皮膚に貼付するための粘着剤の粘着性よりも小さい粘着性であり、具体的には、例えば上記の1.5N/10mm以下の粘着力のものが好ましい。
【0024】
本発明の温熱体構造物は、通常、未使用時には、その粘着層の表面が剥離シートで覆われている。この剥離シートの材料は、従来から発熱剤の粘着層の被覆用シートとして使用されているものであれば、いずれであってもよい。例えば、各種プラスチック・フィルムや薄層金属、プラスチック・フィルムと紙との積層体が、剥離シートとして用いられる。また、剥離シートには、シリコーン系、アルキルアクリレート系、フッ素系等の剥離コート剤が塗布されていてもよい。プラスチック・フィルムを構成する高分子化合物の例としては、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、及びポリ塩化ビニルが挙げられる。
【0025】
本発明における偏平状袋に収容される発熱組成物は、酸素と接触して発熱する組成物であればよく、従来公知のものを特に制限なく使用することができ、その製造方法も周知である。一般的には、酸化反応により発熱する鉄粉等の金属粉と水を必須成分とし、活性炭、食塩や塩化カリウム等の無機塩化物、及び吸水性ポリマー、バーミキュライト、おが屑、シリカ系物質等の保水剤等を含む組成物が使用されている。例えば、発熱体の重量を100%として、鉄35〜80重量%、活性炭1〜10重量%、塩化物1〜10重量%、水5〜45重量%、保水剤1〜45重量%からなるものが挙げられる。
発熱組成物は、一般的には粉体(粒状物を含む)であるが、それに限らず、アルコールの含有、加圧等の手段によってシート状に成形されていてもよい(例えば特開平2000−60886、WO00/13626)。
温熱体の使用目的、所要発熱温度などに応じて、当業者は適宜最適な発熱組成物を設計し製造することができる。
【0026】
本発明の温熱体構造物の製造方法は、通常の製造方法でよく、例えば、内被シート(A)に粘着層を剥離シートで覆った外被シート(B)を積層してから、この内被シートと通気面を構成するシートとをヒートシールして偏平状袋体を製造してもよい。あるいは、内被シート(A)に粘着層未形成の外被シート(B)を積層してから、この内被シートと通気面を構成するシートとをヒートシールして偏平状袋体を形成し、その後、外被シート(B)に粘着剤を塗布して粘着層を形成してもよい。さらには、通気面を構成するシートと内被シート(A)とからなる発熱組成物収容部を先に形成してから、内被シート(A)に外被シート(B)(粘着層は既に形成されていてもよく、この後に形成してもよい)を積層してもよい。発熱組成物はいずれの時点で入れてもよい。
【0027】
本発明の温熱体構造物は、通常、製造後使用時まで、実質的に酸素を透過させない外袋に密封されて保存される。一般的には、上記のように粘着層の表面が剥離シートで被覆された状態で、耐湿非通気性材料で構成されている外袋に入れられて保存される。外袋が非通気性であるので、発熱組成物は空気(酸素)と接触できず、化学反応して発熱することなく保存されるのである。外袋を開封すると、空気(酸素)が通気性シートを通過して発熱体に到達し、それによって化学反応が開始され、反応熱が放出される。外袋用材料の代表例として、アルミニウム薄層とポリマー・フィルムとが積層されてなるものが挙げられる。
【実施例】
【0028】
以下に、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0029】
(発熱組成物の製造)
鉄粉55.0部、活性炭7.0部、NaCl 2.0部、水29.9部と、「サンフレッシュST−571」(三洋化成社製、吸水性樹脂)3.0部、バーミキュライト3.1部を室温で30分間攪拌混合して発熱組成物を調合した。この発熱組成物を、以下の実施例及び比較例の各々の温熱体構造物の作製において使用した。
なお、ここで「部」は特に断らない限り「重量部」である。
【0030】
(粘着剤Aの製造)
「SIS5505」(スチレン・イソプレン共重合体、JSR社製)28.8部、「アルコンP−100」(水素化石油樹脂、荒川化学社製)24.4部、「P−350P」(流動パラフィン、村松石油研究所製)37.4部、「HV−300」(ポリブテン、新日本化学社製)8.4部、「IRUGANOX 1010」(酸化防止剤、CIBA製)1.0部を150℃で60分間攪拌混合してホットメルト粘着剤Aを作製した。
この粘着剤を後述する実施例1で使用した非通気性シートの不織布側に130g/m塗布した場合の粘着力は、0.9N/10mmであった(JIS Z0237)。
【0031】
(実施例1)(片面通気性の温熱体構造物)
図2に示す構造の温熱体構造物(95mm×130mm)を、以下のようにして作製した。
まず、それぞれ95mm×130mmの大きさに切り取った、ポリエチレン製多孔質フィルム及びナイロン製不織布(スパンボンド、旭化成社製、目付け量:40g/m2)をラミネートした通気性シート(通気度:15,000秒/100cc、JIS P−8117)と、ポリエステル製不織布7830(スパンレース、シンワ社製、30g/m)に非通気性の低密度ポリエチレンフィルム(ジェイフィルム社製、40μm厚)をラミネートした非通気性シートとを、ポリエチレン面同士を内側にして重ね合わせ、周縁部の三方をヒートシールした後、上記の発熱組成物を20g充填し、周縁部の残りの一方をヒートシールした。
一方、同じ大きさのポリエステル製不織布7840(スパンレース、シンワ社製、40g/m)を用意し、この片面の全面に上記のホットメルト粘着剤Aを塗布(130g/m)して粘着剤層を形成し、その上から離型シートを貼っておいた。
上記で作製した発熱組成物を充填した袋体のポリエステル製不織布7830の周縁部5mm幅、及び横中央5mm幅(図3のパターンE)に接着剤(「インスタントロック34−601A」、日本エヌエスシー社製)を塗布し、この塗布面に、粘着層を有するポリエステル製不織布7840の粘着剤Aが塗布されてない面を重ね合わせて接着して固定し、温熱体構造物Iを得た。
【0032】
(実施例2)(両面通気性の温熱体構造物)
ポリエステル製不織布7830に非通気性の低密度ポリエチレンフィルムをラミネートしたものに替えて、ポリエチレン製通気性多孔質フィルムにポリエステル製不織布7830(スパンレース、シンワ社製、30g/m)をラミネートしたものを用いたこと以外は、実施例1と同様にして両面通気性の温熱体構造物IIを得た。
【0033】
(実施例3)(接着剤の塗布パターンを変えた温熱体構造物)
接着剤の塗布形態をパターンEに替えて、図3のパターンFを用いたこと以外は、実施例1と同様にして温熱体構造物IIIを得た。
【0034】
(実施例4)(接着剤の塗布パターンを変えた温熱体構造物)
接着剤の塗布形態をパターンEに替えて、図3のパターンIを用いたこと以外は、実施例1と同様にして温熱体構造物IVを得た。パターンIにおけるドットは直径約4mmの略円形状であり、縦方向に19個、横方向に14個が、それぞれ3mmピッチで並んでいた。
【0035】
(実施例5)(接着剤の塗布パターンを変えた温熱体構造物)
接着剤の塗布形態をパターンEの中央の接着部1本に替えて、20mm幅を2本等間隔で接着部を設けたこと以外は、実施例1と同様にして温熱体構造物Vを得た。
【0036】
(実施例6)(接着剤の塗布パターンを変えた温熱体構造物)
接着剤の塗布形態をパターンEの中央の接着部1本に替えて、30mm幅を2本等間隔で接着部を設けたこと以外は、実施例1と同様にして温熱体構造物VIを得た。
【0037】
(実施例7)(接着剤の塗布パターンを変えた温熱体構造物)
接着剤の塗布形態をパターンEの中央の接着部1本に替えて、24mm幅を3本等間隔で接着部を設けたこと以外は、実施例1と同様にして温熱体構造物VIIを得た。
【0038】
(比較例1)(粘着面に外被シートを有さない温熱体構造物)
実施例1において、外被シートである不織布(ポリエステル製不織布7840)を用いずに、発熱組成物を充填した袋体のポリエステル製不織布7830上に直接粘着層を設けたこと以外は、実施例1と同様にして温熱体構造物VIIIを得た。
【0039】
(比較例2)(粘着面に外被シートを有さず、強粘着剤を用いた温熱体構造物)
比較例1における粘着剤Aに替えて、強粘着性の粘着剤(「DERMATAK34−447A」、ホットメルト粘着剤B、日本エヌエスシー社製)を用いたこと以外は、比較例1と同様にして温熱体構造物IXを得た。なお、この粘着剤を実施例1で使用した非通気性シートの不織布側に130g/m塗布した場合の粘着力は、1.6N/10mmであった。
【0040】
(比較例3)(内被シートと外被シートとが全面接着されている温熱体構造物)
非通気性シートの不織布と粘着剤層を担持する不織布とを重ねる際に粘着剤Aを全面に塗布したこと以外は、実施例1と同様にして温熱体構造物Xを得た。
【0041】
上記温熱体構造物I〜Xについて以下の試験を行った。
粘着力の測定は前記の方法によった。
【0042】
(装着性の試験)
上記温熱体構造物I〜Xを被験者30名の背中の腰部に貼付し、8時間後の状況を観察した。10種類あるので、1日に1種類を用い、10日間かけて実施した。下記に該当する人数をカウントした。
(イ)温熱体構造物の剥がれも落下もなく、剥がすときの違和感もなかった。
(ロ)温熱体構造物の部分的な剥がれがあったが、落下はなく、剥がすときの違和感もなかった。
(ハ)温熱体構造物の落下はなかったが、剥がすときの違和感があった。
(ニ)温熱体構造物が落下した。
【0043】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】図1は、本発明の温熱体構造物の例の横断面図である。図の上側が通気面、下側が粘着面である。(A)は、袋体の通気面及び粘着面の両方が通気性を有するシートで形成されている例、(B)は粘着面の内被シートが非通気性のシートで形成されている例を示す。
【図2】図2は、実施例1で製造した本発明の温熱体構造物の構造を示す図である。(A)は、温熱体の模式的な斜視図であり、(B)、(C)及び(D)はそれぞれ(A)における線X−X、Y−Y及びZ−Zで切断した場合の断面図を示す。
【図3】図3は、本発明の温熱体構造物における内被シート及び外被シートの接着パターンの例を示す図である。(A)〜(K)の各パターンにおいて、黒い部分は接着されている部分、白抜きの部分は接着されていない部分を表す。
【符号の説明】
【0045】
a:被覆材(例えば不織布)
b:通気性フィルム(例えば多孔質膜)
c:非通気性フィルム
d:被覆材(例えば不織布)
e:接着剤
f:外被シート(例えば不織布)
g:粘着層
h:発熱組成物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素の存在下で発熱する発熱組成物を収容した扁平状袋体からなり、前記扁平状袋体が、少なくとも一部が通気性を有する通気面と粘着層を有する粘着面とを有する、貼付用温熱体構造物であって、
前記粘着面が、発熱組成物と接する側に位置しており発熱組成物を通過させない内被シート(A)と、被着体と接する側に位置しており粘着層を担持する外被シート(B)とからなり、
前記内被シート(A)と外被シート(B)とが、周縁部で接着されており、かつ、該周縁部以外では未接着部及び/又は被着体貼付時に離れうる部分を有していることを特徴とする、貼付用温熱体構造物。
【請求項2】
前記内被シート(A)と外被シート(B)とが、周縁部以外でも部分的に接着されている、請求項1記載の貼付用温熱体構造物。
【請求項3】
前記外被シート(B)が伸縮性を有するものである請求項1又は2記載の貼付用温熱体構造物。
【請求項4】
前記粘着層が剥離シートで覆われており、温熱体構造物が実質的に酸素を通過させない外袋に密封されている、請求項1〜3のいずれか1項記載の貼付用温熱体構造物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2008−18110(P2008−18110A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−193489(P2006−193489)
【出願日】平成18年7月14日(2006.7.14)
【出願人】(000112509)フェリック株式会社 (14)
【Fターム(参考)】