説明

粘膜表面への、薬学的化合物の送達に適する薬学的キャリアデバイス

【課題】薬学的化合物の特定領域への送達、および処置部位の保護のために、粘膜表面へ接着する、水浸食性の薬学的キャリアを提供すること。
【解決手段】粘膜表面と接触して置かれる第一の水浸食性接着層、および第二の水浸食性非接着裏張り層を有する層状のフィルムを含む薬学的キャリアデバイスであって、ここで該デバイスは、該第一の第一の水浸食性接着層、第二の水浸食性接着層または両方の層に、薬剤を取り込み得る、薬学的キャリアデバイスであって、1つの実施形態において、上記第一の水浸食性接着層が、アルキルセルロースまたはヒドロキシアルキルセルロース、および生体接着性ポリマーを含む、薬学的キャリアデバイス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、概括すると、薬学的化合物の特定領域への送達、および処置部位の保護のために、粘膜表面へ接着する、水浸食性の薬学的キャリアに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
体内組織、疾患、負傷の、特定領域の処置は、迅速に処理するために、特別な薬学的成分が処置部位に有効な時間、維持されることが必要である。通常、自然の体液が局所的に適用した薬学的成分をすぐに洗い流す性質を持つとすれば、湿った粘膜組織の特定領域の処置には問題がある。口内では唾液、粘膜組織の自然の置換、および食物、飲み物の摂取や会話時の動きが、薬学的キャリアの効果及び残留時間を制限するという問題があった。
【0003】
生体接着キャリアーは、当該分野で公知であり、ゲル、ペースト物、錠剤、およびフィルムを含む。しかし、これらの製品は効果的、かつ市販的に適切な薬学的送達デバイスとしての好ましい特性のひとつ、あるいはいくつかを欠落し得る。生体接着キャリアのユーザーによって好ましい幾つかの特性の中には、水浸食性、処置部位への取扱いと適用が容易であること、使用が容易であること、異物感が最小限であること、そして粘膜組織への単一方向かつ特定の放出が含まれている。粘膜表面の処置のために効果的、かつ使用者に負担がかからないような製品の他の好ましい特性としては、薬学的に認可された成分、または材料の使用、適用時の粘膜表面上への即時的な接着、患部組織の保護、または薬学的成分の送達のための残留時間の増加、および患部組織からの送達デバイスの除去が容易かまたは送達部位での送達デバイスの自然浸食が含まれる。
【0004】
粘膜組織や、とりわけ口腔での適用に使用される生体接着ゲルは当該分野で公知である。一例として、米国特許第5,192,802号では、ナトリウムカルボキシメチルセルロースとキサンタンガムの混合物から製造された生体接着性の歯発生(teething)ゲルが記載されている。このゲルは、口腔潰瘍傷、熱性疱疹、および痔疾の処置にも使用可能性を有し得る。しかし、この種類の薬学的キャリアは唾液のような体液がそれを処置部位からすぐに洗い流すとすれば、非常に限られた残留時間しかない。生体接着ゲルについては米国特許第5,314,915号;第5,298,258号 および第5,642,749号にも記載がある。これらの特許に記載されているゲルは、水性または油性の媒体と、異なるタイプの生体接着剤とゲル化剤とを使用している。
【0005】
義歯を固定するためのペーストは別のタイプの当該分野で公知の生体接着製品である。しかし、これらの調製物は、組織の保護や薬物の特定領域への送達よりも、局所麻酔薬のような薬剤は歯肉痛を軽減するために、このペースト中に使用され得るが、義歯をガムに固定するために接着性が主として使用される。米国特許第4,894,232号と第4,518,721号は義歯を固定するペーストを記載している。米国特許第4,518,721号にはナトリウムカルボキシメチルセルロースとポリエチレングリコール中のポリエチレンオキシドとの組合せが記載されている。
【0006】
ペーストは、フィルム状保護材として、および薬物送達システムとしても使用されている。フィルム状で接着特性を持っている一例は、商品名Orabase(登録商標)−Bで市販の製品であり、これは口内の痛みを軽減するための濃いゲル状またはペースト状である。成分はグアルゴム、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、トラガカントゴム、およびペクチンを含む。それは、適用領域にしびれを与えるにも関わらず、そのフィルム形成能と生体接着性は続かない。従って、この製品には限られた残留時間しかない。
【0007】
生体接着性をもつ錠剤は米国特許第4,915,948号に記載がある。このデバイスで用いられる水溶性の生体接着性物質はキサンタンガムまたはペクチンをポリオールの様に接着性を促進させる物質と組み合わせて使用している。生体接着性を持つ錠剤を用いることにより残留時間は改善されたが、それらは特に口内での使用の場合、錠剤の堅さ、サイズが大きいこと、および遅い溶解時間のために不快感を与え、使用者に都合が悪かった。
【0008】
生体接着性の錠剤は、米国特許第4,226,848号; 第4,292,299号;および第4,250,163号にも記載され、平均厚さが0.2から2.5mmの単層、又は二層のデバイスである。これらの特許に記載の生体接着性の錠剤は、セルロースエーテルの様な非接着性の成分、ポリアクリル酸、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、またはポリビニルピロリドンの様な生体接着性成分、および錠剤化のための結合剤を使用している。セルロース誘導体は水浸食性であっても、または、水浸食性でなくてもよい。
【0009】
より薄く可撓性であり、従って異物感が減少する包帯、あるいは生体接着性の積層フィルムの使用が、米国特許第3,996,934号と第4,286,592号に記載されている。これらの製品は、皮膚または粘膜を経て薬剤を送達するのに使用される。積層フィルムは通常、接着性の層、蓄積層、および裏張り層を含む。所定の速度で一定時間の間皮膚を通して薬剤を放出するように設計された生体接着性のデバイスは、通常、水溶性でなく、それゆえに体液によって溶解されないか洗い流されない。
【0010】
皮膚を通しての薬剤の送達のためのフィルムシステムに加えて、粘膜表面上の使用のためのフィルム送達システムがまた、公知である。これらのタイプのシステムは、水に不溶性で通常、積層、押し出しまたは多層のフィルムの形態であり、米国特許第4,517,173号;第4,572,832号; 第4,713,243号; 第4,900,554号; 第5,137,729号 に記載がある。特許第4,517,173号には、薬学的層、低水溶性の層、及び中間層を含む少なくとも3つの層からなる膜接着性フィルムの記載と請求がある。薬学的層は、薬剤、ならびにヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースから選択されたセルロース誘導体を含む。低水溶性の層は、低水溶性の脂肪酸と一種類以上のセルロース誘導体を組合せて作られ、中間層はセルロース誘導体から作られる。特許第4,572,832号は口内送達用の軟質フィルムに関し、これは水溶性タンパク質、ポリオール、および多価アルコール(例えばセルロース、および多糖類)の組み合わせ使用によって作られ、そしてまた、色材や香料を用いることを教示している。特許第4,713,243号には、40〜95%の水溶性のヒドロキシプロピルセルロース、5〜60%の水不溶性のエチレンオキシド、0〜10%の水不溶性のエチルセルロース、プロピルセルロース、ポリエチレンまたはポリプロピレン、および医薬から製造される単層または多層の、生体接着性の薄いフィルムの記載がある。このフィルムは、3層の積層体であり、生体接着層、蓄積層、および水不溶性である外側の保護層を含む。特許第5,137,729号では全身的な薬剤を含み、水に不溶性の酢酸ビニルホモポリマーであるアクリル酸ポリマー、およびセルロース誘導体の混合物を含む口内の粘膜に適用できる軟質の接着性フィルムを教示している。最後に、特許第4,900,554号では、アクリル酸ポリマー、水に不溶性のセルロース誘導体、および薬物調製物の混合物を含む接着層、ならびに水に不溶性または難溶性の裏張り層を有する、口腔内での使用のためのデバイスの記載がある。この接着層は薬学的調製物の粘膜表面への適用を含み、薬剤を送達する。さらに第4,990,554号には「体組織へ適用のための接着デバイスを達成することは、3つの成分すべて、すなわち、アクリル酸ポリマー、水不溶性のセルロース誘導体、水不溶性または難溶性の裏張り層が揃わなければ困難である。」の記載がある。
【0011】
JP56−100714には、コーティング層と活性構成成分層を含む調製の記載がある。コーティング層は粘膜に接着し、セルロースエーテル、またはアクリル酸ポリマー、もしくはその塩を含有する。活性構成成分層は、脂質および油、ワックス、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、多価アルコールまたはグリセロールエステルのような水不溶性物質含むを軟膏のベースを含んでいる。界面活性剤と活性構成成分も活性構成成分層に含まれる。したがって、活性構成成分層は必須の水に浸食されない物質と混合されている。粘膜組織上への接着によって口腔で適用される薄いフィルムの従来の例はすべて、本来水不溶性、または架橋することにより水不溶性になるポリマーを利用し、長い残留時間を請求している。したがって、残念ながら上述した薄いフィルムの例は、良好な接着特性を持つ、水に浸食性のデバイスを提供しない。したがって、所望の薬剤の量の放出のために、この水不溶性ポリマーから成る薄いフィルムは、適用部位からはがされねばならない。このようなはがすことは、粘膜組織から組織をしばしば剥離させ、患者に痛みを伴う。当該分野で必要とされることは、水に浸食性の、良好な接着性、および患者に最小限の苦痛しか与えない、薬学的成分の特定領域への送達を提供する薬学的送達デバイスである。
【0012】
FR−A−2582 942には、口内の粘膜への適用のための接着性の医療用テープの記載がある。このテープは、腸内で可溶のポリマーを含む裏張り層、および水溶性ポリマーを含む医薬品を含む層を含む。
【0013】
ヨーロッパ特許出願 EP−A−0 262 422は、薬品の蓄積層、接着層、および裏打ち層からなる、持続放出投薬デバイスを教示している。裏張り層は唾液に不溶である。
【0014】
ヨーロッパ特許出願 EP−A−O 159 604は、粘膜上で使用するための、持続放出調製物を教示している。層は第一および第二ポリマー成分の混合物から調製され、第一のポリマー成分は、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、アルギン酸またはその塩、ならびに無水マレイン酸およびメチルビニルエーテルの交互共重合体を含み、第二のポリマー成分は、ポリアクリル酸またはその塩を含んでいる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
(項目1) 粘膜表面と接触して置かれる第一の水浸食性接着層、および第二の水浸食性非接着裏張り層を有する層状のフィルムを含む薬学的キャリアデバイスであって、ここで該デバイスは、該第一の第一の水浸食性接着層、第二の水浸食性接着層または両方の層に、薬剤を取り込み得る、薬学的キャリアデバイス。
(項目2) 前記第一の水浸食性接着層が、アルキルセルロースまたはヒドロキシアルキルセルロース、および生体接着性ポリマーを含む、項目1に記載の薬学的キャリアデバイス。
(項目3) 項目1に記載の薬学的キャリアデバイスであって、前記第一の水浸食性接着層が、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、エチレンオキシド−プロピレンオキシドコポリマー、コラーゲンおよび誘導体、ゼラチン、アルブミン、ポリアミノ酸および誘導体、ポリホスファゼン、多糖類および誘導体、ならびにキチンおよびキトサンから、単独または組み合わせて選択されるフィルム形成ポリマーと、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、およびナトリウムカルボキシメチルセルロースから、単独または組み合わせて選択される生体接着性ポリマーを含む、薬学的キャリアデバイス。
(項目4) 項目1に記載の薬学的キャリアデバイスであって、前記第二の水浸食性非接着裏張り層が、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、またはエチレンオキシド−プロピレンオキシドコポリマーを、単独または組み合わせて含む、項目1に記載のデバイス。
(項目5) 前記第一の水浸食性接着層に、薬剤が存在する、項目1に記載の薬学的キャリアデバイス。
(項目6) 前記層状のフィルムが2つの層を有し、そして全体の厚さ0.1mm〜1mmを有する、項目1に記載の薬学的キャリアデバイス。
(項目7) 項目1に記載の薬学的キャリアデバイスであって、該デバイスがさらに、前記第一の接着層と前記第二の裏張り層との間に第三の層を含み、そして、ここで該第三の層が、該第一の接着層を取り囲みかつ前記粘膜表面に接触するのに十分な表面積を有する水浸食性接着層である、薬学的キャリアデバイス。
(項目8) 前記第一の水浸食性接着層に、薬剤が存在する、項目7に記載の薬学的キャリアデバイス。
(項目9) 1つ以上の前記層がさらに、前記デバイスの浸食性の速度を調整するように働く成分を含む、項目1に記載の薬学的キャリアデバイス。
(項目10) 項目9に記載の薬学的デバイスであって、前記成分が、ポリラクチド、ポリグリコリド、ラクチド−グリコリドコポリマー、ポリ−ε−カプロラクトンおよび誘導体、ポリオルトエステルおよび誘導体、ポリ酸無水物および誘導体、エチルセルロース、酢酸ビニル、酢酸セルロース、またはポリイソブチレンの、単独または組み合わせの水ベースの乳濁液である、項目7に記載のデバイス。
(項目11) 前記成分が、アルキルグリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オレイン酸グリセロール、セバシン酸グリセロール、ステアリン酸グリセロール、もしくはグリセロールエステル、またはフタル酸エステルである、項目9に記載の薬学的デバイス。
(項目12) 前記1つ以上の層がさらに、前記デバイスの浸食性の速度を調整するように働く成分を含む、項目7に記載の薬学的デバイス。
(項目13) 項目12に記載の薬学的デバイスであって、前記成分が、ポリラクチド、ポリグリコリド、ラクチド−グリコリドコポリマー、ポリ−ε−カプロラクトンおよび誘導体、ポリオルトエステルおよび誘導体、ポリ酸無水物および誘導体、エチルセルロース、酢酸ビニル、酢酸セルロース、またはポリイソブチレンの、単独または組み合わせの水ベースの乳濁液である、薬学的デバイス。
(項目14) 前記成分が、アルキルグリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オレイン酸グリセロール、セバシン酸グリセロール、ステアリン酸グリセロール、もしくはグリセロールエステル、またはフタル酸エステルである、項目12に記載の薬学的デバイス。
(項目15) 項目1に記載の薬学的デバイスであって、前記第一の層、前記第二の層または両方の層に組み込まれ得る薬剤が、抗炎症性鎮痛剤、ステロイド性抗炎症剤、抗ヒスタミン薬、局所麻酔薬、殺菌剤、消毒剤、血管収縮薬、止血剤、化学療法薬、抗生物質、角質溶解剤、焼灼剤、抗ウイルス剤、抗リウマチ薬、抗高血圧薬、気管支拡張薬、抗コリン薬(anticholigernic)、抗貧血(antimenimic)化合物、ホルモン、巨大分子、ペプチド、タンパク質、またはワクチンを、単独または組み合わせて含む、項目1に記載の薬学的デバイス。
(項目16) 前記第一の水浸食性接着層が、ヒドロキシエチルセルロール、ポリアクリル酸、およびナトリウムカルボキシメチルセルロースを含み;前記第二の水浸食性非接着裏張り層が、ヒドロキシエチルセルロースを含み;および、前記組み込まれる薬剤が塩酸ジクロニンを含む、項目1に記載のデバイス。
(項目17) 薬剤の局所的送達のための粘膜表面に接着する層状フィルムディスクであって、該ディスクは水浸食性の第一の接着層および水浸食性の第二の非接着裏張り層を含み、該薬剤または薬剤の組み合わせが、該第一の接着層、該第二の非接着裏張り層、または該第一の接着層および該第二の非接着裏張り層の両方に存在し、該層状フィルムディスクは全体の厚さ0.1mm〜1mmを有する、層状フィルムディスク。
(項目18) 項目15に記載の層状フィルムディスクであって、ここで、前記薬剤または薬剤の組み合わせが、抗炎症性鎮痛剤、ステロイド性抗炎症剤、抗ヒスタミン薬、局所麻酔薬、殺菌剤、消毒剤、血管収縮薬、止血剤、化学療法薬、抗生物質、角質溶解剤、焼灼剤、抗ウイルス剤、抗リウマチ薬、抗高血圧薬、気管支拡張薬、抗コリン薬(anticholigernic)、抗貧血(antimenimic)化合物、ホルモン、巨大分子、ペプチド、タンパク質、またはワクチンを、単独または組み合わせて含む、層状フィルムディスク。
(項目19) 粘膜表面、周辺組織、および体液を処置する方法であって、該方法は、処置部位の保護ならびに該粘膜表面、該周辺組織、および該体液への薬剤の送達のために該処置部位に接着フィルムを適用する工程を含み、該接着フィルムは水浸食性の層状薬剤キャリアデバイスを含む、方法。
(項目20) 前記層状薬剤キャリアデバイスが、第一の水浸食性接着層および第二の水浸食性非接着裏張り層を含み、該第一および第二の層がそれぞれ0.01mm〜0.9mmの厚さを有する、項目19に記載の方法。
(項目21) 前記層状キャリアデバイスが、前記第一の層内または第二の層内に組み込まれた薬剤をさらに含む、項目20に記載の方法。
(項目22) 項目21に記載の方法であって、前記第一の水浸食性接着層が、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはヒドロキシエチルメチルセルロースから、単独または組み合わせて選択されるフィルム形成ポリマーと、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、またはナトリウムカルボキシメチルセルロースから、単独または組み合わせて選択される生体接着性ポリマーとを含む、方法。
(項目23) 前記第二の水浸食性非接着裏張り層が、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、またはエチレンオキシド−プロピレンオキシドコポリマーを、単独または組み合わせて含む、項目22に記載の方法。
(項目24) 項目23に記載の方法であって、前記薬剤が、抗炎症性鎮痛剤、ステロイド性抗炎症剤、抗ヒスタミン薬、局所麻酔薬、殺菌剤、消毒剤、血管収縮薬、止血剤、化学療法薬、抗生物質、角質溶解剤、焼灼剤、抗ウイルス剤、抗リウマチ薬、抗高血圧薬、気管支拡張薬、抗コリン薬(anticholigernic)、抗貧血(antimenimic)化合物、ホルモン、巨大分子、ペプチド、タンパク質、またはワクチンを、単独または組み合わせて含む、方法。
(項目25) 皮膚の創傷または熱傷を処置する方法であって、該方法は処置部位の保護ならびに該皮膚への薬剤の送達のために該処置部位に接着フィルムを適用する工程を含み、該接着フィルムは水浸食性の層状薬剤キャリアデバイスを含む、方法。
(項目26) 前記層状薬剤キャリアデバイスが、第一の水浸食性接着層および第二の水浸食性非接着裏張り層を含み、該第一の層および第二の層が、それぞれ0.01mm〜0.9mmの厚さを有する、項目25に記載の方法。
(項目27) 前記層状キャリアデバイスが、前記第一または第二の層内に組み込まれる薬剤をさらに含む、項目26に記載の方法。
(項目28) 前記第一の水浸食性接着層が、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはヒドロキシエチルメチルセルロースから、単独または組み合わせて選択されるフィルム形成ポリマーと、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、またはナトリウムカルボキシメチルセルロースから、単独または組み合わせて選択される生体接着性ポリマーとを含む、項目27に記載の方法。
(項目29) 前記第二の水浸食性非接着裏張り層が、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、またはエチレンオキシド−プロピレンオキシドコポリマーを、単独または組み合わせて含む、項目28に記載の方法。
(項目30) 前記薬剤が、抗炎症性鎮痛剤、ステロイド性抗炎症剤、抗ヒスタミン薬、局所麻酔薬、殺菌剤、消毒剤、血管収縮薬、止血剤、化学療法薬、抗生物質、角質溶解剤、焼灼剤、抗ウイルス剤、抗リウマチ薬、抗高血圧薬、気管支拡張薬、抗コリン薬(anticholigernic)、抗貧血(antimenimic)化合物、ホルモン、巨大分子、ペプチド、タンパク質、またはワクチンを、単独または組み合わせて含む、項目29に記載の方法。
【0016】
発明の要旨
本発明は、適用部位(周囲組織、および血液やリンパ液などの他の体液)の保護、およびその部位への薬学的化合物の局所的送達を提供し、有効な残留時間を有し、最小限の不快さで、使用が簡便な粘膜表面への適用のための新規の水浸食性の薬学的キャリアデバイスに関する。
【0017】
ひとつの実施態様では、薬学的送達デバイスは水浸食性の層状のフィルムディスクを含んでいる。このデバイスは接着性の層および裏打ち層を有する層状のフィルムディスクを含み、この二層の両者は水浸食性であり、一枚以上の層中に薬剤を有している。
【0018】
別の実施態様では、薬学的送達デバイスは第一の接着層と第二の裏打ち層の間に、第三の層をさらに含んでいる。第三の層は上述した第一の接着層を包み込み、かつ粘膜表面に接触するのに十分な表面積を持つ、水浸食性の接着層である。このように、薬学的化合物の特定領域への送達が、粘膜層に向かって一方向の様式で、達成され得る。
【0019】
接着層(多層を含む)はヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、エチレンオキシドプロピレンオキシドコポリマー、コラーゲンおよびその誘導体、ゼラチン、アルブミン、ポリアミノ酸およびその誘導体、ポリホスファゼン、多糖類およびその誘導体、キチン、またはキトサンのようなフィルム形成ポリマーを単独か組み合わせて含み、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、またはカルボキシメチルセルロースナトリウムのような生体接着ポリマーを単独か組み合わせて含む。
【0020】
非接着性の有しない裏打ち層(多層を含む)はヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、またはエチレンオキシドプロピレンオキシドコポリマーを単独か組み合わせて含む。
【0021】
本発明の別の実施態様では、1つ以上のデバイスの層がさらに浸食性の速度を調整し、薬剤の放出およびデバイスの寿命を変化させる簡便な方法を提供するために作用する成分を含む。浸食性の速度を調整するために作用する成分は、ポリアクチド、ポリグリコリド、ラクチド−グリコリドコポリマー、ポリ−ε−カプロラクトンおよびその誘導体、ポリオルトエステルおよびその誘導体、ポリ無水物およびその誘導体、エチルセルロース、酢酸ビニル、酢酸セルロース、ならびにポリイソブチレンを単独、または組み合わせた水ベースのエマルジョンである。侵食性の速度を調整するように働く他の成分は、アルキルグリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オレイン酸グリセロール、セバシン酸グリセロール、ステアリン酸グリセロールもしくはグリセロールエステル、またはフタル酸エステルの単独または組み合わせである。
【0022】
本発明の別の実施態様では、デバイスの層の数はさらに、浸食性の速度を調整し、ならびに薬剤の放出およびデバイスの寿命を変える簡便な方法を与えるように変化させ得る。
好ましい実施態様では、裏打ち層は、異なる浸食性の速度を持つ二枚以上の層を含む。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、三層を成しているフィルムディスクであり、ここで層2および層3は生体接着層であり、層1は裏打ち層である。
【図2】図2は、三層を成しているフィルムディスクであり、ここで二つの層は生体接着層であり、もうひとつの層は裏打ち層である。生体接着層である層3(これは粘膜組織に接着する)はより小さな表面積からなり、第二の生体接着層である層2によって包まれ、一方向の送達を与える。層1は裏打ち層である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
発明の詳細な説明
本明細書中で使用される用語「水浸食性」とは、成分、デバイス、層などが唾液の様な水ベースの媒体中で経時的に浸食することを意味する。そのような水中での浸食は、溶解、分散、摩擦、重力などの要素に起因し得る。
【0025】
本明細書中で使用される用語「浸食性の速度」または「浸食の速度」は、キャリアデバイスからの薬剤の放出のタイミング(放出のプロフィール)ならびにそのデバイス自体の時間の経過による浸食のタイミング(寿命、またはデバイスの残留時間)をいう。本明細書で記載のように、浸食性の速度は、デバイス中の成分のタイプおよび量、デバイス中の層の厚さおよび数、およびデバイス中の添加剤、または賦形剤などの要素に基づいている。デバイスの成分全てが水溶性が極めて高い場合、浸食性の速度は溶解性の速度と極めて似ている。
【0026】
本発明においては、粘膜表面に接着する新規の水浸食性薬学的デバイスが提供される。本発明は濡れた表面を持ち、体液の影響を受けやすい体内組織(例えば口、膣、または他のタイプの粘膜表面)、疾病、または傷の局所的処置における特別の用途が見出されている。このデバイスは薬剤を送達し、そして粘膜表面への適用および接着において保護層を提供し、そして、組織、および他の体液に包まれた処置部位へ薬剤を送達する。このデバイスは水溶液や唾液などの体液中での浸食の調整、および送達と同時、または送達に続くフィルムの遅い自然な浸食が与えられると、処置部位での効果的な薬剤送達のために適切な残留時間を提供する。ひとつの実施態様では、薬学成分送達デバイスは、接着層および裏打ち層(両方、水浸食性であり、両方、もしくは一方に薬学的成分を有している)を有する、層状フィルムディスクを含む。
【0027】
処置部位からゲルを洗い流してしまう唾液などの体液の性質による極めて限られた残留時間しか持たない、当該分野で公知である生体接着ゲル、およびペーストとは異なり、本発明はそれの薄膜性の一貫性および成分によって残留時間の増加を示す。Orajel(登録商標)、Orabase(登録商標)、もしくはKanka(登録商標)などの水性のゲル、またはペーストの代表的な残留時間は数分である。この短い残留時間は限られた、または低い接着性による結果である。代表的な水性ゲルでは、粘膜接着性成分は溶液、懸濁液、もしくは膨潤体(swollen)中のいずれかにある。しかし、粘膜表面へ適用されると、水ベースのゲルは、親油性の粘膜表面にすぐには浸透しない。これらのゲルの組成および親水性は、唾液とすぐに混合する傾向があり、ゲルの異なる成分をすぐに引き離すこと、および残留時間を制限することをもたらす。同様の傾向として、ペーストに関して、粘度の増加のタイミングがわずかだけ遅れることが予想される。本発明は、その固体形成、および粘膜表面へのその即効的な接着によって、接着を保証する長持ちする接触(高分子鎖および粘膜組織の糖タンパク質のからみ合いの結果による)を与える。唾液および他の水性媒体における、浸食の速度は、デバイスの物理的な状態の影響を受ける。ゲル、または溶液が唾液および/または他の体液とすぐに混合するのに対して、同じかまたは類似の成分の固体形態(例えば、本発明のフィルム)は、より遅く溶解(浸食)する。
【0028】
また、当該分野で公知である生体接着性の錠剤とは異なり、本発明の薬学的デバイスは、処置部位へ効果的な薬剤送達を提供するのに十分な時間の間の、異物の適用に関わる不快感を最小限にする。しばしば先行技術の生体接着性の錠剤の使用者は、とりわけ口腔での使用時の硬さ、大きさ、および浸食性の場合の遅い溶解時間による不快な感覚を経験している。さらに、生体接着性の錠剤の代表的な厚さが水溶性であり得てもそうでなくても、2、3ミリメーターで厚いことから、好ましい適用部位は上部歯肉領域である。送達される化合物のタイプ、それらの生物学的利用能、および薬物動態が制限されるので、この部位は、特定領域への送達に通常、満足なものでない。錠剤とは対照的に、本発明のデバイスは、不快感が最小かつ使用が簡便であると共に、効果的な残留時間の利点を提供し、その薄さや可撓性の形態のため、特定領域ならびに全身の薬剤の送達のための適切なビヒクルでもある。
【0029】
最後は、当該分野で公知である皮膚、または粘膜を通しての薬剤の送達に使用されるフィルムシステムとは異なり、本発明のデバイスは水浸食性の成分から作られ、したがって生体分解性である。水浸食性の成分の使用は、薬剤が適用部位に残留する間、自然の体液がキャリアを遅く溶解し、または浸食して、デバイスを一定時間を超えて浸食させる。包帯や他の非水浸食性フィルムシステムとは異なり、本発明の使用者は処置後のデバイスを除去する必要がない。適用において、水吸収がデバイスを軟化し、そして時間が経つにつれてデバイスは徐々に溶解または浸食されるので、使用者は粘膜表面か体腔内に異物の存在の感覚を経験することもない。
【0030】
本発明のデバイスの残留時間は、製剤に使用されている水浸食性ポリマーの浸食速度、およびそれらのそれぞれの濃度に依存する。浸食速度は調節され得るが、例えば、異なる溶解特性を持つ成分または化学的に異なるポリマー(例えば、ヒドロキシエチルセルロース、及びヒドロキシプロピルセルロース)を一緒に混合することによって、分子量グレードが異なる同じポリマー(例えば、低分子量、および中分子量のヒドロキシエチルセルロースの混合)を使用することによって、種々の親油性の度合、または水溶性の特性(本質的に不溶性の成分を含む)の賊形薬、1または可塑剤を使用することによって、架橋剤(
例えば、グリオキサールを部分的な架橋のためにヒドロキシエチルセルロースのようなポリマーと併用して)を使用することによって、または、放射線照射、または硬化の後処理(これらは一度得られたフィルムの結晶性または相転移を含むフィルムの物理状態を変え得る)によって調節され得る。これらのストラテジーは、デバイスの浸食の速度を変更する目的で単独、または組み合わせて使用され得る。
【0031】
適用において、薬学的送達デバイスは粘膜表面に接着し、適所で保持される。水吸収はデバイスを軟化し、そのことから、異物の感覚が減少する。デバイスは粘膜表面に載るので、薬剤の送達が起こる。残留時間は、選択された薬剤の送達の所望のタイミングおよびキャリアの所望の寿命に依存する広範にわたって調節され得る。しかし一般に、残留時間はおよそ数分からおよそ数日の間に調節される。好ましくは、ほとんどの薬剤のための残留時間はおよそ30分からおよそ24時間に調節される。より好ましくは残留時間はおよそ1時間からおよそ8時間に調節される。薬物送達を供することに加えて、デバイスは一度粘膜表面に接着すると、それは処置部位の保護も供し、浸食性の包帯として作用する。
【0032】
一つの実施態様において、本発明は、接着層および類似しているかまたは異なる親水性を有する成分からなり得る非接着性の裏打ち層を有するフィルムディスクを含む。薬学的成分は、各層中に含まれ得るが、好ましくは接着層中に含まれる。接着層は処置部位に最も近く裏打ち層が内部を保護するのでより遅い浸食時間を有し、接着層は典型的には最初に侵食する。
【0033】
接着層は少なくとも一種類のフィルム形成水浸食性ポリマー(「フィルム形成ポリマー」)および生体接着性能の公知の、少なくとも一種類の薬理学的に受容可能なポリマー(「生体接着ポリマー」)を含有し得る。フィルム形成ポリマーはヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、エチレンオキシド−プロピレンオキシドコポリマー、コラーゲンおよび誘導体、ゲラチン、アルブミン、ポリアミノ酸および誘導体、ポリホスファゼン、多糖類および誘導体、キチンおよびキトサンを、単独か組み合わせて含み得る。好ましくは、フィルム形成ポリマーは、ヒドロキシエチルセルロースを含む。好ましくは、ヒドロキシエチルセルロースの場合、平均分子量(Mwは極限粘度測定から測定される)は、10〜10の範囲と、より好ましくは10〜10の範囲であり、一方、ヒドロキシプロピルセルロースの場合、平均分子量(Mwはサイズ排除クロマトグラフィーによって得られた)は、50x10〜1.5x10の範囲、より好ましくは80x10〜5x10の範囲である。
【0034】
接着層の生体接着性ポリマーは、ポリアクリル酸(PAA)(これは、部分的に架橋され得るか、もしくは架橋され得ない)、ナトリウムカルボキシメチルセルロース(NaCMC)およびポリビニルピロリドン(PVP)、またはそれらの組み合わせを包含し得る。これらの生体接
着性ポリマーは、乾燥した被膜状態において、良好かつ即効性の粘膜接着特性を有するため、好ましい。ナトリウムカルボキシメチルセルロースの場合は、0.7の置換度で、50,000〜700,000の典型的平均分子量を包含する。そして、好ましくは60,000から500,000の典型的平均分子量を包含する。置換範囲は、0.5と1.5との間、好ましくは0.6と0.9との間で変動する。ポリビニルピロリドンは、その平均分子量によって特徴付けられ得、5,000と150,000との間、好ましくは10,000と100,000との間の平均分子量を包含する。PAAとあるグレードのPVPとの同時使用は、1つもしくは両方の成分の沈澱をもたらし得る。この沈澱は、均一な層を得るために理想的であり得ず、かつ、そのデバイスの全体的な接着特性を僅かに変化させ得る。
【0035】
特定の理論に縛られることは望まないが、本発明の接着特性は、ポリマー鎖のもつれ、および粘膜表面の糖タンパク質との相互作用の結果である、と考えられている。鎖および側鎖ならびに架橋剤を含む生体接着性ポリマーの化学的性質は、粘膜構成成分とポリマーとの間、またはポリマー間(例えば、物理的もつれ、ファンデルワールス力、および水素結合)の相互作用を発生させる。粘膜組織の成分が、個体別に異なっており、経時的に自然に変化すると仮定すると、生体接着性ポリマーの組み合わせの使用、または同じポリマーの異なるグレードの物の組み合わせの使用が好ましい。少なくとも2つの生体接着性ポリマーを併用して使用することは、デバイスの接着能力を最大化するが、単一の生体接着性ポリマーを使用することも、同様に効果的である。
【0036】
接着層において被膜を形成しているポリマーに対する、生体接着性ポリマーの割合は、薬剤のタイプ、および用いられる薬剤の量に依存して変動する。しかしながら、接着層において組み合わせられた成分の含有量は、通常、5重量%と95重量%との間であり、好ましくは、10重量%と80重量%との間である。異なった生体接着性ポリマー(PAA、NaCMC、およびPVP)の重量パーセントの面から、いくつかの実施例を、以下に提供する。そして当業者は、この実施例を用いて、所定の適用に対する所望の特徴を有する薬学的デバイスを得るためのパーセンテージを容易に調節できる。好ましい組み合わせには、PAAとNaCMC、NaCMCとPVP、もしくはPAAとPVPが包含され、そして、同じポリマーの異なるグレードを使用することも包含される。
【0037】
非接着性裏打ち層は、水侵食性(water−erodable)の被膜を形成する、薬剤的に受容可能なポリマー(例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、エチレンオキシド−プロピレンオキシドコポリマー、コラーゲンおよび誘導体、ゼラチン、アルブミン、ポリアミノ酸および誘導体、ポリフォスファゼン、多糖類および誘導体、キチンおよびキトサン)を単体もしくは組み合わせて含有し得る。裏打ち層成分は、所望の侵食速度に依存して、架橋され得るか、もしくは架橋され得ない。1つの実施態様では、好ましい裏打ち層成分は、ヒドロキシエチルセルロース、もしくはヒドロキシプロピルセルロースを含有し、そして、より好ましくは、ヒドロキシエチルセルロースを含有する。好ましくは、ヒドロキシエチルセルロースの場合、その平均分子量(固有粘度の測定から評価されたMw)は、10〜10の範囲内であり、より好ましくは、10〜10の範囲内である。一方、ヒドロキシプロピルセルロースの場合、その平均分子量(サイズ排除クロマトグラフィー測定から得られたMw)は、50x10〜1.5x10の範囲内であり、そして好ましくは、80x10〜5x10の範囲内である。
【0038】
上記のように、層(接着層、裏打ち層、もしくは両方)の1つもしくはそれ以上の侵食速度は、残留時間および薬物の放出プロフィールを変更するため、多くの異なった方法で変化させ得る。1つの方法は、被膜形成ポリマーを架橋する、もしくは可塑化することによるものである。当該分野で公知の架橋剤は、本発明において使用するのに適しており、グリオキサール、プロピレングリコール、グリセロール、異なった大きさのジヒドロキシ−ポリエチレングリコール、ブチレングリコール、およびそれらの組み合わせが挙げられる。用いられる架橋剤の量は特定のポリマーおよび架橋剤に依存して変動し得るが、通常は、ポリマー材料の5%モル当量を越えるべきでなく、そして、好ましくは、0〜3%モル当量のポリマー材料を含有する。
【0039】
残留時間および薬物の放出プロフィールを変化させるもう1つの方法は、層の侵食能力の速度を調節することに作用する、1つおよびそれ以上の層において成分を利用することである。これらの成分は、利用される特定の薬剤送達デバイスに広く依存して変化するが、好ましい成分は、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸−グリコール酸コポリマー、ポリ−ε−カプロラクトンおよび誘導体、ポリオルトエステルおよび誘導体、ポリ無水物および誘導物、エチルセルロース、酢酸ビニル、酢酸セルロース、シリコーン、ポリイソブチレンおよび誘導体の水ベースエマルジョンを、単独でもしくは組み合わせて含む。
【0040】
上記のような水ベースエマルジョンにおいて使用される典型的な乳剤は、好ましくは、リノール酸、パルミチン酸、ミリストール酸、ラウリン酸、ステアリン酸、セトレイン酸、もしくはオレイン酸と、ナトリウムもしくはカリウム水酸化物とから選択される場合にインサイチュで得られるか、あるいはソルビトールおよびソルビトール無水物のラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸もしくはオレイン酸のエステル、モノオレイン酸、モノステアリン酸、モノパルミチン酸、モノラウリン酸、脂肪アルコール、アルキルフェノール、アリール(alyl)エーテル、アルキルアリールエーテル、モノステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、およびモノパルミチン酸ソルビタンを包含するポリオキシエチレン誘導体から選択される。
【0041】
さらに、水不溶性のポリマー材料、例えばポリエステル脂肪族ファミリー(乳酸−グリコール酸のコポリマー、カプロラクトンなど)のような場合、平均分子量(Mw)は、10〜10の範囲内であり、より好ましくは、10〜10の範囲内である。一方、セルロース誘導体ファミリー(エチルセルロース、酢酸セルロースなど)の場合、平均分子量(固有粘度の測定から評価されたMw)は、10〜10の範囲内で、より好ましくは、10〜10の範囲内である。
【0042】
しかし、どの層においても、侵食速度を変更する別の方法は、フィルムを同時に可塑化する賦形剤を使用することによる。層(複数層)の侵食挙動を変更する、適した賦形剤もしくは可塑化剤は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールのようなアルキルグリコール、オレイン酸、セバシン酸、ステアリン酸もしくは、グリセロール、フタル酸およびその他のエステルを包含し得る。
【0043】
層の厚さおよび数を調節することにより、本発明のデバイスの侵食速度を変更することもまた、可能である。典型的には、層が厚くなるほど、薬剤の放出が遅くなり、かつ放出プロフィールが長くなる。対応して、層が多く存在するほど、薬剤の放出が遅くなり、かつ放出プロフィールが長くなる。1つの好ましい実施態様では、裏打ち層は、異なった侵食速度を有する2つもしくはそれ以上の層を包含する。
【0044】
さらに、明確な分子量特徴を有する異なったポリマー、もしくは類似したポリマーの組み合わせは、どの層においても、好ましいフィルム形成能力、力学的特性、および溶解の速度を達成するために使用され得る。本発明において使用されるいくつかの組み合わせは、以下の実施例で提供され、3/4のヒドキシエチルセルロース、および1/4のヒドロキシプロピルセルロースを包含する。すなわち、4/5の低分子量ヒドロキシエチルセルロースおよび1/5の中分子量ヒドロキシエチルセルロース、または、8/9の低分子量ヒドロキシエチルセルロースおよび1/9の高分子量ヒドロキシエチルセルロースを包含する。前記のように、水侵食性ポリマーの組み合わせは、デバイスの侵食速度を変更するために使用され得る。特に好ましい組み合わせには、1/2のヒドロキシエチルセルロース、1/6のヒドロキシプロピルセルロース、および2/6のシュードラテックス(pseudolatex)(すなわち、ポリマーのエマルジョン、乳酸−グリコール酸コポリマーのエマルジョンである)が挙げられる。
【0045】
本発明の薬学的成分は、単独薬剤、もしくは薬剤の組み合わせを包含し、これは接着層、裏打ち層、もしくはその両方において組み込まれ得る。単独、もしくは組み合わせて使用され得る薬剤は、抗炎症鎮痛剤、ステロイド性抗炎症剤、抗ヒスタミン剤、局所麻酔薬、殺菌剤および消毒剤、血管収縮神経薬、止血薬、化学療法剤、抗生物質、角質溶解薬、焼灼剤、抗ウイルス剤、抗リウマチ薬、抗高血圧薬、気管支拡張薬、抗コリン作用薬、アンチメニミック(antimenimic)化合物、ホルモンおよび高分子、ペプチド、タンパク質、およびワクチンを包含する。
【0046】
抗炎症鎮痛剤の例には、アセトアミノフェン、サリチル酸メチル、サリチル酸モノグリコール、アスピリン、メフェナム酸、フルフェナム酸、インドメタシン、ジクロフェナク、アルクロフェナク、ジクロフェナクナトリウム、イブプロフェン、ケトプロフェン、ナプロキセン、プラノプロフェン、フェノプロフェン、スリンダク、フェンクロフェナク、クリダナク、フルルビプロフェン、フェンチアザク、ブフェキサマック、ピロキシカム、フェニルブタゾン、オキシフェンブタゾン、クロフェゾン、ペンタゾシン、メピリゾール、チアラミド塩酸塩などが挙げられ、ステロイド性抗炎症剤の例には、ヒドロコルチゾン、プレドニソロン、デキサメサゾン、トリアムシノロンアセトニド、フルオシノロンアセトニド、酢酸ヒドロコルチゾン、酢酸プレドニソロン、メチルプレドニソロン、酢酸デキサメタゾン、ベタメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、フルメタゾン、フルオロメトロン、二プロピオン酸ベクロメタゾン、フルオシノニドなどが挙げられる。
【0047】
抗ヒスタミン剤の例としては、ジフェンヒドラミン塩酸塩、サリチル酸ジフェンヒドラミン、ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン塩酸塩、クロルフェニラミンマレイン酸イソチペンジル塩酸塩、トリペレナミン塩酸塩、プロメタジン塩酸塩、メスジラジン塩酸塩などを包含する。局所麻酔薬の例としては、ジブカイン塩酸塩、ジブカイン、リドカイン塩酸塩、リドカイン、ベンゾカイン、p−ブチルアミノ安息香酸−2−(ジ(die)−エチルアミノ)エチルエステル塩酸塩、プロカイン塩酸塩、テトラカイン、テトラカイン塩酸塩、クロロプロカイン塩酸塩、オキシプロカイン塩酸塩、メピバカイン、コカイン塩酸塩、ピペロカイン塩酸塩、ジクロニン、ジクロニン塩酸塩などが挙げられる。
【0048】
殺菌剤及び消毒剤の例には、チメロサール、フェノール、チモール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、クロルヘキシジン、ポビドンヨード、塩酸セチルピリジニウム、オイゲノール、臭化トリメチルアンモニウムなどが挙げられる。血管収縮剤の例には、硝酸ナファゾリン、テトラヒドロゾリン塩酸塩、オキシメタゾリン塩酸塩、フェニルエフェリン塩酸塩、トラマゾリン塩酸塩などを包含する。止血剤の例には、トロンビン、フィトナジオン、硫酸プロタミン、アミノカプロン酸、トラネキサム酸、カルバゾクロム、カルバゾクロム硫酸ナトリウム、ルチン、ヘスペリジンなどを包含する。
【0049】
化学療法剤の例には、スルファミン、スルファチアゾール、スルファジアジン、ホモスルファミン、スルフィソキサゾール、スルフィソミジン、サルファメチゾール、ニトロフラゾンなどが挙げられる。抗生物質の例には、ペニシリン、メチシリン、オキサシリン、セファロチン、セファロジン、エリスロマイシン、リンコマイシン、テトラサイクリン、クロルテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、メタサイクリン、クロラムフェニコール、カナマイシン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、バシトラシン、シクロセリンなどが挙げられる。
【0050】
角質溶解剤の例には、サリチル酸、ポドフィルム樹脂、ポドリフォックス(podolifox)、およびカンタリジンが挙げられる。焼灼剤の例は、クロロ酢酸、および硝酸銀が挙げられる。抗ウイルス剤の例には、プロテアーゼ阻害剤、チミジンキナーゼ阻害剤、糖もしくは糖タンパク質合成阻害剤、構造タンパク質合成阻害剤、接着もしくは吸着阻害剤、およびヌクレオシド類似体(例えば、アシクロビル、ペンシクロビル、バラシクロビル、ガンシクロビル)が挙げられる。
【0051】
タンパク質、ペプチド、ワクチン、遺伝子などの例には、ヘパリン、インスリン、LHRH、TRH、インターフェロン、オリゴヌクレリド(oligonuclides)、カルシトニン、およびオクトレオチドを包含する。
【0052】
用いられるべき活性薬剤の量は、所望される処理強度および層の組成に依存する。しかし好ましくは、薬学的成分は、デバイスの約0.001重量%〜約99重量%、より好ましくは、約0.003重量%〜約30重量%、および最も好ましくは、約0.005重量%〜約20重量%からなる。
【0053】
可塑化剤、調味および着色剤、ならびに防腐剤は、接着層、裏打ち層、もしくは両方の層における本発明の薬剤送達デバイスに含まれ得る。含有量は、薬剤もしくは他の成分に依存して変動し得る。しかし一般的には、デバイスの50総重量%、好ましくは30総重量%、最も好ましくは15総重量%に過ぎない量を包含する。
【0054】
透過賦活薬は、薬剤の吸着を改良するためにデバイスに添加され得る。一般的には、透過賦活薬は、薬剤が含まれるべき層に添加され得る。適切な透過賦活薬は、天然、もしくは合成胆汁塩(フシジン酸ナトリウム;グリココール酸もしくはデオキシコール酸;脂肪酸および誘導体(例えば、ラウリル酸ナトリウム、オレイン酸、オレイルアルコール、モノオレイン、)およびパルミトイルカルニチン;キレート剤(例えば、EDTA二ナトリウム、クエン酸ナトリウムおよびラウリル硫酸ナトリウム、アゾン、コール酸ナトリウム、5−メトキシサリチル酸ナトリウム、ラウリル酸ソルビタン、グリセリルモノラウリン酸、オクトキシノニル(octoxynonyl)−9、ラウレト(laureth)−9、ポリソルベートなど)を包含する。
【0055】
デバイスの厚さは、各々の層の厚さおよび層の数に依存して、変動し得る。上記に記載のように、層の厚さおよび数は、侵食速度を変動させるために調節され得る。好ましくは、デバイスが2層のみを有する場合、厚さは0.05mm〜1mm、より好ましくは0.1mm〜0.5mmの範囲内で変動し得る。各々の層の厚さは、層化されたデバイスの全体的な厚さ10%〜90%の範囲内で変動し得、および好ましくは、30%〜60%の範囲内で変動し得る。そのため、各々の層の好ましい厚さは、0.01mm〜0.9mm、および好ましくは、0.03mm〜0.6mmの範囲内で変動し得る。
【0056】
一方、本発明のデバイスは、2層を必要とする。すなわち、接着層と裏打ち層であり、さらなる層を有することはしばしば好ましい。2層を必要とすることが利点である原因は、薬剤の特異的な一方向の流れが粘膜層について必要とされる場合である。上記に記載された層状デバイスは、いくつかの方向性放出(すなわち、放出は、主に粘膜層に向かうので、例えば口もしくは膣腔には向かわない)を提供する。しかし、薄い被膜の膨張特性により、少量の薬剤が、全ての層がほぼ同じ表面領域の層であり、かつ互いに表面の頂部に本質的に存在する場合、デバイスおよび裏打ち層の側面を通して放出もされ得る。優先的(が、特異的ではない)放出は、多様な薬剤について受容可能でありかつ望ましくさえある一方で、他の薬剤は、粘膜組織への一方向性かつ特異的な放出を必要とし得る。
【0057】
一方向性の放出が所望され得る場合の例は、送達されるべき薬剤が、特異的な治療ウィンドウ(window)を有する、もしくは胃腸管に吸収されたとき、好ましくない副作用を有する場合である。さらにいくつかの薬剤は、酵素的に分解される。それゆえ、粘膜透過性の一方向性送達を可能にし、かつ存在する酵素(例えば口中もしくは膣腔中)から送達される薬剤を保護する生体侵食性の粘膜接着システムは、利点を有する。
【0058】
一方向性の放出が所望されるこのような例において、付加的な層は第1の接着層と第2の裏打ち層との間に位置し得る。第3の層は、前記第1番目の接着層を包囲する、および粘膜表面に接触するために十分な表面領域を有する水侵食性接着層である。第3番目の層は、第1番目の接着層について上記のどのような成分も包含し得る。そして、それゆえ第1番目の接着層と同様もしくは異なる成分であり得る。図2は、第1番目の接着層を包囲する第3番目の層を有しているディスクを示したものである。
【0059】
生体接着層が、他の層よりも表面領域が小さい層であるべきである場合、通常、約5%
と約50%との間、好ましくは約10%と約30%との間で他の層より小さい。
【0060】
前記の様式において、薬剤の局在型送達は、一方向性の様式において達成され得る。例えば、薬剤が第1番目の接着層に存在していると、デバイスの側面および背面からの放出が妨げられる。薬剤が裏打ち層に存在すると、デバイスが吸着するための粘膜層に入ることが妨げられる。同様に、薬剤が第1番目の接着層および裏打ち層に存在すると、混合が妨げられる。
【0061】
本発明の薬剤送達デバイスは、当該分野で既知の多数な方法により調製され得る。1つの実施態様では、成分は、水媒体または水と低級アルカノールとの組み合わせに溶解されて、コーティングに使用され得る溶液、ゲル、または懸濁液を調製する。本発明において使用する溶媒は、水、メタノール、エタノール、もしくは低級アルキルアルコール(例えば、イソプロピルアルコール)、あるいはアセトンを包含し得る。被膜中の最終溶媒含有量、もしくは残渣の含有量は、どちらか一方もしくは両方の層の結果をもたらし得る。溶媒は、可塑化剤、もしくは侵食率改変剤としても使用され得る。
【0062】
各々の溶液は、基質上に被覆される。結果的に、成分の1つが、懸濁液中に存在し得る。各々の溶液は、当該分野で公知の技術(例えば、被膜浸漬、被膜コーティング、被膜キャスティング、スピンコーティング、もしくは噴霧乾燥(適切な基質を使用する))によりキャストされそして加工されて、薄いフィルムになる。次いで、薄い被膜を乾燥させる。所望ならば、乾燥工程は、プロセスを容易にするため、どの型の乾燥機でも達成され得る。しかし、当業者が理解しているように、溶液残渣(これは、侵食速度に影響し得る)は、乾燥手順に依存する。被膜層は、独立して被膜され得、次いで共に積層され得るか、もしくはその他の頂部に被膜され得る。
【0063】
2つの層がともに積層され、もしくは相互の表面に被覆された後に得られる被膜は、所望ならば、粘膜組織に適用するために適切な形状のあらゆる型に削除され得る。適切な形状には、円板、楕円、正方形、長方形、平行六面体(parallepiped)および薄片状、網目状、または多孔性被膜が挙げられ得る(それはデバイスが使用されるべき目的および位置に依存する)。同様に、本発明のデバイスの表面領域は、デバイスが使用されるべき主要な要因と共に多くの要因に依存して、必然的に変動する。典型的には、表面領域は、約0.1〜約30平方センチメートル、好ましくは、0.5〜約20平方センチメートルであり得る。
【0064】
局在および全身的な薬剤送達のために粘膜表面、周辺組織、および体液を処理する方法もまた提供されている。1つの実施態様において、この方法は、処置部位および薬剤送達に対して保護を提供するために、本発明の接着性被膜を処置部位へ適用することを包含する。接着被膜は、本明細書中で提供される任意の層状のデバイスを包含し得る。好ましい実施態様においては、その方法は、上記のように第1番目の接着層および第2番目の非接着性裏打ち層を有する、層化された薬物キャリアデバイスの適用を包含し、それぞれの層は0.01mm〜0.9mmの厚さを有する。薬物、もしくは薬物の組み合わせは、接着層、非接着性裏打ち層、もしくは両方の層に存在し得る。
【0065】
一方、この用途において記載された薬学的キャリアは、容易に粘膜組織(本来湿った組織である)に接着するが、その他の表面(例えば皮膚、もしくは創傷)にもまた使用され得る。本発明の水溶性被膜は、皮膚が適用する前に、水性ベースの液体(例えば、水、唾液、および汗)で濡れている場合皮膚に接着する。被膜は、代表的には、例えばシャワー、入浴および洗浄によって水と接触することによって侵食するまで皮膚に接着する。被膜は、組織に重大なダメージを与えることなく剥がすことによってもまた、容易に除去され得る。
【0066】
一方、皮膚と接触するが、被膜は、適用された領域を保護するための洗浄可能かつ侵食性の絆創膏として作用し得る。治癒プロセスを容易にするため、および創傷あるいは火傷を細菌および細片から保護するために、経皮的薬剤送達システムとして被膜を使用することが可能である。従来の代替品を越える本発明の重要な利点は、洗浄可能な被膜であるだけでなく、汗が従来の経皮的パッチが有していたようなその利点を妨げることもしくは減少することなく、デバイスの接着を助けることである。
【0067】
本発明の薬学的キャリアは、創傷用の包帯(wound dressing)としても使用され得る。物理的な、適合性の酸素および水分透過性であり、かつ可撓性の仕切(これは洗浄除去され得る)を提供することによって、被膜は、創傷を保護するだけでなく、治癒、無菌性、乱切を促進して、痛みを和らげるか、もしくは病人の症状を包括的に改善するために、薬剤を送達し得る。以下に記載されるいくつかの実施例は、皮膚または創傷に適用するために最も適している。当業者が理解するように、処方物は、特異的な親水性/吸湿性の賦形剤を配合することを必要とし得、この賦形剤は、長期に渡って、乾燥した皮膚上に良好な接着を維持することを助ける。この方法で利用される場合の本発明の別の利点は、皮膚上に被膜の存在を注目されたくないのであれば、染料または着色物質を用いる必要がないことである。一方、被膜が注目されることを所望するならば、染料または着色物質が用いられ得る。
【0068】
実施例1
非接着性裏打ち層のための100mlの溶液を、87.98重量%の水(米国薬局方)(water USP)、0.02重量%のFD&Cレッド40染料、12重量%のヒドロキシエチルセルロース(Mw9x10)を使用して作製した。WernerMathis Labcoaterを使用して、基材(Maylar 1000Dもしくは3M ScotchPak 1022のような他のポリエステルフィルム)を設定した。裏打ち層溶液の90mlを、1.5mmの開口部を有するナイフオーバーロールの前に設定した。次いでこの溶液を、ガラス基材の上にキャストし、そしてフィルムを、130℃で8〜9分間乾燥した。乾燥工程の後、0.14mmの厚さの赤らんだフィルムが得られた。
【0069】
この手順を使用して、フィルムを、乾燥後に基材から容易に剥離し得るか、もしくは、後に積層するため、あるいは接着層のための基材として使用するために基材上に残され、そして巻かれ得る。
【0070】
実施例2
非接着性裏打ち層のための100mlの溶液を、94.98重量%の水(米国薬局方)、0.02重量%のFD&Cレッド40染料、および5重量%のヒドロキシプロピルセルロースを使用して作製した。実施例1の手順を使用し、0.16mmの厚さのフィルムを得た。
【0071】
実施例3
非接着性裏打ち層のための100mlの溶液を、84.98重量%の水(米国薬局方)、0.02重量%のFD&Cレッド40染料、12重量%のヒドロキシエチルセルロース、および3重量%のヒドロキシプロピルセルロースを使用して作製した。本実施例では、全体的なポリマー材料は、溶液中に15%の濃度であった。2つの異なったタイプのポリマー材料の混合物は、全体的な機械的特性、および裏打ちフィルムの侵食速度特性を変更した。ついで溶液を、ポリエステル基材上にキャストし、そして90℃で一晩中乾燥させた。ナイフの開口部を3mmに設定し、0.3mmの厚さのフィルムが得られた。
【0072】
実施例4
非接着性裏張り層用の100mlの溶液を、87.98重量%の水(米国薬局方(USP))、0.02重量%のFD&C赤色40号染料、10重量%ヒドロキシエチルセルロース(Mw9×10)、および2重量%のヒドロキシエチルセルロース(Mw7×10)を用いて作製した。ここでは2つの異なる種類のヒドロキシエチルセルロースを混合することで支持膜の機械的特性および浸食速度を改変した。次いで、この溶液をポリエステル基板上にキャストし、135℃で12分乾燥させた。ナイフの隙間(opening)を3mmに設定することで0.27mmの薄膜を得た。
【0073】
実施例5
非接着性裏張り層用の100mlの溶液を、87.98重量%の水(米国薬局方)、0.02重量%のFD&C赤色40号染料、11.75重量%のヒドロキシエチルセルロース(Mw9×10)、および0.25重量%のヒドロキシエチルセルロース(Mw1.3×10)を用いて作製した。実施例1の手順を用いて0.14mmの薄膜を得た。
【0074】
ここでは2つの異なるグレードのヒドロキシエチルセルロースを混合することで、支持膜の機械的特性および浸食速度を改変した。この比は生体接着板の浸食パターンおよび滞留時間を調節するのに使用され得る。実施例1の裏張り層(これは12重量%のヒドロキシエチルセルロース(Mw9×10)で構成され、約21分の浸食時間を有する(表2を参照))と比較して、本実施例の裏張り層(2つのグレードのヒドロキシエチルセルロースの組合せで構成される)は、約69分の浸食時間を有する(表2を参照)。
【0075】
実施例6
非接着性裏張り層用の100mlの溶液を、87.98重量%の水(米国薬局方)、0.02重量%のFD&C赤色40号染料、11.95重量%ヒドロキシエチルセルロース(Mw9×10)、および0.05重量%の40%グリオキサール水溶液を用いて作製した。実施例1の手順を用いて0.13mmの膜を得た。
【0076】
ここでグリオキサールを架橋剤として作用し、裏張り層の浸食速度の低下を誘導した。実施例1の裏張り層(これはグリオキサールを含まず、約21分の浸食時間を有する(表2を参照))と比較して、本実施例の裏張り層(グリオキサールを含む(incorporate))は約57分の浸食時間を有する(表2を参照)。
【0077】
実施例7
非接着性裏張り層用の100mlの溶液を、87.98重量%の水(米国薬局方)、0.02重量%のFD&C赤色40号染料、11.8重量%のヒドロキシエチルセルロース、0.1重量%の40%グリオキサール水溶液、および0.1%のハッカ甘味料(sweetpeppermint flavor)を用いて作製した。ここで、実施例6のようにグリオキサールは架橋剤として作用し、グリオキサールを含まない裏張り層と比較して支持膜の浸食速度の低下を誘導した。ハッカ甘味料を香味剤として添加した。
【0078】
実施例8
実施例1に記載のように、実施例5、6、および7の溶液を、それぞれポリエステル基板上にキャストした。ナイフを用いるかわりにメイヤーバー(meier’s bar)を用いて基板を被膜した。膜を90℃で一晩乾燥させた。この乾燥した膜は、約0.17mmの厚さを有して、より厚くなった。
【0079】
実施例9
実施例1の溶液をビーカー中で調製した。次いで完全に浸るまで溶液にマイクロスライドをすばやく浸し、溶液から取り出して室温で約1時間放置した。次いでマイクロスライドを90℃で一晩乾燥させた。得られるフィルムは不均質であり、平均の厚さは約0.2mmであった。
【0080】
実施例10
非接着性裏張り層用の100mlの溶液を、84重量%の水(米国薬局方)、0.02重量%のFD&C赤色40号染料、11重量%のヒドロキシエチルセルロース(Mw9×10)、1重量%のヒドロキシエチルセルロース(Mw7×10)、0.1重量%の40%グリオキサール水溶液、3重量%のグリオキサール、および1重量%のメントールを用いて作製した。ここでグリオキサールは架橋剤として作用し、支持膜の浸食速度の低下を誘導した。また、2つの異なるグレードのヒドロキシエチルセルロースの混合物を用いて、メントールのゆっくりとした放出を達成した。この膜は先に示したようにポリエステル基板(film)上に被膜した。
【0081】
実施例11
接着層用の100mlの溶液を、88.6重量%の水(米国薬局方)、1.8重量%のヒドロキシエチルセルロース(Natrosol(登録商標)99−250 L NF(Aqualon))、2.6%重量%のポリアクリル酸(Noveon(登録商標) AA1 米国薬局方(USP)(BF Goodrich))、4.5%のナトリウムカルボキシメチルセルロース(cellulosegum 7 LF PH(Aqualon))、および2.5重量%の塩酸ジクロニンを用いて作製した。混合して懸濁剤が形成された。
【0082】
ここで塩酸ジクロニンは任意の他の活性医薬でも容易に代用することができる。しかし活性医薬の化学的特性(例えば、溶解度、対イオン、および融点)は、プロセス(例えば、特定の溶媒における溶解、溶液の温度の変化など)の全体のわずかな改変を必要とし得る。次の実施例では1つのわずかな改変を例示する。
【0083】
実施例12
接着層用の100mlの溶液を、74.6重量%の水(米国薬局方)、1.8重量%のヒドロキシエチルセルロース、2.6重量%のポリアクリル酸、4.5%のナトリウムカルボキシメチルセルロース、2.5重量%のベンゾカイン、および14重量%のエチルアルコールを用いて作製した。活性医薬としてのベンゾカインの使用の際にはベンゾカインは水よりもアルコールに溶解度が高いのでまずエチルアルコールに溶解することが必要であった。
【0084】
最終溶液において、ベンゾカインは非常に微細な粉末の形態で沈殿する傾向がある。しかし、膜の特性および生体接着性はそのままである。
【0085】
実施例13
接着層用の100mlの溶液を、91重量%の水(米国薬局方)、2重量%のヒドロキシエチルセルロース、2.5重量%のポリアクリル酸、および4.5%のナトリウムカルボキシメチルセルロースを用いて作製した。接着層の組成は改変され得、そして以下の表1に記載される範囲内で変更され得る:
【0086】
【表1】

【0087】
各成分の相対部はその成分の化学的適合性および得られる滞留時間に依存する。
【0088】
実施例14
接着層用の100mlの溶液を、90重量%の水(米国薬局方)、1重量%の硫酸ブタカイン、2重量%のヒドロキシエチルセルロース、2.5重量%のポリビニルピロリドン、および4.5重量%のナトリウムカルボキシメチルセルロースを用いて作製した。溶液をロール上のナイフ(knifeover roll)を用いてマイラー(Mylar)基板上に被膜した。
【0089】
実施例15
接着層用の100mlの溶液を作製した。溶液の全組成は48.6%の水、40%のエチルアルコール、1.8%のヒドロキシルエチルセルロース、2.6%のポリアクリル酸、4.5%のナトリウムカルボキシメチルセルロース、および2.5%の塩酸ジクロニンであった。しかしここで、塩酸ジクロニンを、まず40mlのエチルアルコールに溶解して、次いで48.6mlの水を塩酸ジクロニン/エチルアルコール溶液に添加し、その後に他の成分を添加した。
【0090】
さらなる溶媒としてエチルアルコールを使用することにより、実施例11(水を唯一の溶媒として使用した)のものよりもわずかに粘性のある懸濁液を得た。
【0091】
実施例16
実施例12の手順に従って、接着層用の100mlの溶液を調製した。次いで、実施例1で用いられる手順に従って溶液を被膜した。得られた膜は0.12mmの厚さであった。
【0092】
実施例17
実施例12の手順に従って、接着層用の100mlの溶液を調製した。溶液を、実施例1に従って調製した支持膜の上面に被膜した。支持膜の厚さを考慮して、ナイフの間隔を調整した。被膜した後、層状の膜(layeredfilm)を130℃で15分乾燥させた。0.27mmの、2層の層状の膜が形成した。
【0093】
実施例18
膜が十分乾燥していなかったことを除いては、実施例14の手順に従って、生体接着膜を調製した。支持膜を実施例1に従って調製した。裏張り層をこの基板から剥がし、まだ湿気を帯びている間に、生体接着膜の上面に積層させ、圧力をかけて2つの膜をともに封着させた。圧力を膜にかけることで、良好な界面接着を得た。0.38mmの、2層の層状の膜を形成した。
【0094】
実施例19
実施例1の手順に従い、支持膜用の様々な溶液を、下の表2の組成に従って調製した。膜形成後、1/2インチのディスクをダイカット(die cut)し、両面テープ(double sidedtape)に設置した。次いでテープをマイクロスライド上に固定した。浸食動態(kinetics)を水中で評価した:スライドを、50rpmの一定速度で撹拌される、100mlビーカーの水に浸した。浸食時間を、ディスクが完全にビーカー中の水に浸透した瞬間から測定した。パーセンテージ(%)とは、溶液の濃度をいう。
【0095】
【表2】

【0096】
この結果は、それぞれのサンプルにおいて同様の表面状態と仮定すると、処方物の組成に依存して浸食時間が変化することを示す。水は唾液の組成に似かよっておらず、この実験ではインビボにおける滞留時間を正確に複製することはできないが、この実験は、本発明の実施において用いる種々の組成の浸食時間のインビトロでの比較を提供する。
【0097】
実施例20
0.19mmから0.21mmとの間の厚さを有する直径1/2インチのディスクを6人の健康なボランティアに投与した。裏張り層を実施例1に従って調製し、そして、接着層を実施例15に従って調製した(一方は、塩酸ジクロニンを活性薬学的成分として含み、もう一方は、そのかわりにベンゾカインを含む)。接着層を、裏張り層の上面に被膜し、層状のディスクを形成した。この層状のディスクを口腔中に置き、ディスクを適所に置いた時点から浸食時間を測定した。
【0098】
参加者に、ディスクの取り扱いおよびしびれの影響についての関係を0から3のスケールで評価を質問した(3は非常に良い、2は良い、1は普通、0は悪い)。参加者は、また、接着するのに必要な時間;滞留時間;もしあれば、身体への異物感(foreign body sensation)、およびその持続時間;およびディスクの浸食についても評価した。最後に、参加者に、全般的に、ディスク効果、およびその全般的な印象、ならびに薬学的成分、塩酸ジクロニン(D)またはベンゾカイン(B)のどちらが好ましいかについての評価を質問した。結果を以下の表3に示す。
【0099】
【表3】

【0100】
この結果は、初心者にはディスクの取り扱いが難しくなり得るが、接着性は即時であり、身体への異物感が少しだけであり(ディスクが膨んだ2、3分の後に消失する)、そしてしびれが効果的であることを示す。
【0101】
実施例21
裏張り層の1kg調製物を、43.49重量%の水、43.49重量%のエチルアルコール、0.02%のFD&C赤色40号染料、12重量%ヒドロキシエチルセルロース(Mw9×10)および1重量%の40%グリオキサール水溶液を用いて作製した。次いで別の実施例1に記載された支持溶液のバッチ1kgを調製した。WernerMathis Labcoaterを用いて、基板(Mylar 1000Dまたは3M ScotchPak 1022のような他のポリエステル膜)を設置した。実施例1に従って調製した90mlの裏張り層溶液を、0.7mmの隙間を有するロール上のナイフの前に設置した。次いで溶液を基板上にキャストし、そして膜を130℃で8〜9分乾燥させた。乾燥工程の後に、0.09mmの厚さの赤みを帯びた膜が完成品となった。次いでこの実施例で最初に記載された支持溶液を0.8mmの隙間を用いてナイフオーバーロール法(knifeover roll technique)を用いて第一層の上面に直接キャストした。この得られた2重層支持膜は0.15mmの厚
さであった。
【0102】
実施例22
実施例15に記載されたように得られる裏張り層の調製物をロール上のナイフでキャストし、130℃で8〜9分乾燥させた。次いで、43.49重量%の水、43.49重量%のエチルアルコール、0.02%のFD&C赤色40号染料、12重量%ヒドロキシエチルセルロース(Mw9×10)および1重量%の40%グリオキサール水溶液を用いる裏張り層の調製物を、先の乾燥された膜(第1層は0.05mmの厚さであった)の上面に直接塗布した。この得られた2重層支持膜は0.12mmの厚さであった。
【0103】
実施例23
この処方物に架橋剤を組み込む場合、熱硬化が、生体接着層(単数または複数)がキャストされる前もしくはキャストされた後に、物質のさらなる架橋を引き起こし得る。膜の熱硬化は、膜を時間−温度サイクルに曝すことによって行われる。たとえば、実施例22の最後で得た膜は150℃に5分間、120℃に10分間、または膜の成分の安定性の必要条件に適応する任意の温度/時間に曝すことができる。
【0104】
実施例24
実施例5に記載されたように得られた裏張り層の調製物をロール上のナイフを用いてキャストし、130℃で8〜9分乾燥させた。42.49重量%の水、42.49重量%のエチルアルコール、0.02%のFD&C赤色40号染料、11重量%ヒドロキシエチルセルロース(Mw9×10)、2重量%のポリエチレングリコール6000、および2重量%のプロピレングリコールを用いる裏張り層の調製物を、先の乾燥膜の上面に(第1層の厚さは0.06mm)直接塗布した。この得られた2重層支持膜は0.12mmの厚さであった。
実施例25
42.49重量%の水、42.49重量%のエチルアルコール、0.02%のFD&C赤色40号染料、10重量%ヒドロキシエチルセルロース(Mw9×10)、4重量%のヒドロプロピルセルロース(Mw5×10)を用いる、裏張り層の調製物をナイフオーバーロール法を用いて塗布した。次いで先の乾燥膜(第1層は0.07mmの厚さ)の上面に直接、支持調製品(42.49重量%の水、42.49重量%のエチルアルコール、0.02%のFD&C赤色40号染料、12重量%ヒドロキシエチルセルロース(Mw9×10)、および3重量%のオレイン酸からなる)を、キャストし、乾燥した。この得られた2重層支持膜は0.15mmの厚さであった。
【0105】
実施例26
接着層の調製物を、45.6重量%の水(米国薬局方)、45重量%のエチルアルコール、2重量%のヒドロキシエチルセルロース(Natrosol(登録商標)99−250 L NF(Aqualon))、2.9重量%のポリアクリル酸(Noveon(登録商標) AA1 米国薬局方(BF Goodrich))、および4.5重量%のナトリウムカルボキシメチルセルロース(cellulosegum 7 LF PH(Aqualon))を用いて作製した。この調製物は生体接着調製物であるが、いかなる医薬品も含まない。
【0106】
実施例27
接着層用の100mlの溶液を、45.1重量%の水(米国薬局方)、45重量%のエチルアルコール、1.8重量%のヒドロキシエチルセルロース(Natrosol(登録商標)99−250 L NF(Aqualon))、2.6重量%のポリアクリル酸(Noveon(登録商標) AA1 米国薬局方(BF Goodrich))、4.5%のナトリウムカルボキシメチルセルロース(cellulosegum 7 LF PH(Aqualon))、および1重量%の硫酸テルブタリンを用いて作製した。
【0107】
実施例28
実施例25に従って得られた膜を本実施例の最終多層膜用の基板として用いる。実施例26の生体接着調製物を、実施例25の膜上に直接キャストし、乾燥させた。次いでナイフオーバーロールシステムにより実施例27の調製物を上面にキャストした。最終4層膜は0.240mmであった。この膜の組成は医薬品がなお側面を介して拡散して得る場合、口腔内のテルブタリンの放出を、完全ではないにしても、抑制する。この副拡散を避けるため、本発明者らは、前述の設計を少し変化させなければならない。
【0108】
実施例29
実施例25に従って得られた膜を本実施例の最終多層膜用の基板として用いる。実施例26の生体接着調製物を、実施例25の膜上に直接キャストし乾燥させる。このようにして3層膜を得る(最後の層は生体接着性であるが、いかなる薬剤をも含まない)。次いで実施例27の調製物をマスク(mask)を用いて塗布し、そして乾燥させた(マスクは0.500mmのポリエステルフィルムであり、これは、ダイカットした楕円状を3重層積層体に堆積した)。この工程は必要があれば繰り返し得る。次いでマスクを剥がす。この最終膜は、積層裏張り層、および積層生体接着層から構成される、3/4層膜である。最終成分は医薬品を含み、そして、図に示すようにより小さな表面のものである。このシステムを用いることで、側面(sides)もしくは裏側からの拡散は制限され、粘膜組織への薬剤の拡散は1方向性となる。
【0109】
実施例30
ピロカルピンHClのかわりにフルオシノニドを用いることを除いて、以上の実施例に従い、マスクを用いるかわりにスクリーンコーティング法(screencoating technique)を用いて同じタイプのフィルムを構築した。例えば堆積(deposition)、溶液の吹き付け(spraying)、もしくは最終層のダイカット(diecutting off)のような他の技術でも十分である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−270153(P2010−270153A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−198381(P2010−198381)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【分割の表示】特願2005−182632(P2005−182632)の分割
【原出願日】平成9年10月16日(1997.10.16)
【出願人】(507143369)アリウス・トゥー・インコーポレーテッド (2)
【Fターム(参考)】