説明

精神および神経疾患の治療中の有害事象を予測するためのシステムおよび方法

【解決課題】本発明は、自殺願望および/または自殺行為といった精神的および神経的な有害な事象予測する特徴ならびにインデックスを導き出して算出するシステムおよび方法を提供する。
【解決手段】データ取得ユニット(DAU)を組み込んだユニットは、後に続く処理のために被検者からEEG信号を得るのに使用される。このDAUは典型的には、一体的なアナログ‐デジタル(A−D)コンバータを備えるコンピュータシステムと、被検者の頭皮に配置される一組の電極とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自殺願望および/または自殺行為といった精神的および神経的な有害な事象を予測する特徴ならびにインデックスを導き出して算出するシステムおよび方法に関する。
関連出願の説明
本発明は、2005年1月12日に出願された米国仮出願番号第60/643,350号の優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
鬱病は、年間1700万人のアメリカ人が患う気分障害であって、これらの患者によって970万回の医師訪問を引き起こしている。患者には様々な効果を及ぼし、鬱状態、いらいら感、睡眠障害、扇動感、罪悪感、無気力、倦怠感、自発性の欠如、集中力の欠如、自殺率の増加を引き起こす。薬理学的な抗鬱剤が数多くあり、一旦適正な処置がなされると、その効果は非常に高い。
【0003】
大鬱病性障害は、自殺を遂行することが最も多い精神医学的な診断である。米国自殺学協会(American Association of Suicidology)は、治療を受けていない患者において生涯自殺率は20%近くにもなることをウェブサイトで発表している。自殺をした人の約3分の2は、その死亡時には鬱状態であった。フィンランドで行われた研究において、大鬱病性障害を患っており、かつ自殺をした71人のうち、たった45%がその死亡時に治療を受けており、3分の1が抗鬱薬を飲んでいた。
【0004】
何人かの鬱状態の患者の薬理学的治療によって、その青年期において自殺を考えたり自殺を試みたりする危険性を高める可能性があることが証拠をもって示されている。有害事象(特に自殺)に発展する危険性が高い患者を識別する方法を開発することは患者と臨床医の双方に大変有益となろう。
【0005】
クック等は、前部前頭葉の脳波記録(electroencephalographic(EEG))コーダンス、定量的なEEG(quantitative EEG(QEEG))パラメータがフルオキセチン抗鬱療法に対する好ましい反応を予測することを示した。グリーンウォルド等(米国特許出願第10/337,088)は、鬱の重症度を評価し、薬理学的な抗鬱治療に対する反応を予測するためにバイスペクトル特性の利用によるEEGインデックスの使用を記載している。副作用の負担(臨床訪問一回あたりの副作用の平均数として特徴付けられる)が、偽薬(プラセボ)制御グループではなく抗鬱治療を受ける患者の偽薬導入期の間、EEGインデックス(前頭葉前部のコーダンス)の変化に相関していることが報告されている。
【0006】
他の者は、異常な脳波(EEG)活動が、様々な精神疾患および行動(鬱、自殺、攻撃的)に関与していることを観察し、EEGアルファ帯域パワー(アルファアシメトリ)の内部半球状分布の差異(特に頭皮の後部領域)が思春期の女性の自殺未遂者のグループと、対照標準グループとの間で異なった。具体的には、この対照標準グループは、自殺未遂者と比較して左半球よりも右のEEGアルファ帯域パワーが大きいことを示した。この研究は、自殺行動の危険性の予測ではなかったが、EEGパターンの観察研究は自殺未遂の後に行われた。いくつかの研究員は、発作性のEEG異常によって患者の自殺の危険性が増加することを報告している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、自殺願望および/または自殺行為といった精神的および神経的な有害な事象を予測する特徴ならびにインデックスを導き出して算出するシステムおよび方法である。本発明の方法は更に、精神疾患の治療の前およびその間に、自殺願望および/または行為が発生する可能性を予測する。こうした特徴およびインデックスを獲得するために、パワースペクトルおよび時間領域の値が被検者から得られた生体電位から導き出される。このシステムおよび方法は、自殺願望または自殺行為といった精神性および神経性の有害事象の症状の変化(特に悪化)を経験しそうな人であってかつ(例えば自殺の)危険性がある人を識別する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
図1および2を参照にすると、図1に示される本発明の好適な実施例は、データ取得ユニット(Data Acquisition Unit(DAU))20を組み込んでおり、このユニットは、後に続く処理のためにステップ22において被検者10からEEG信号を得るのに使用される。このDAU20は典型的には、一体的なアナログ‐デジタル(A−D)コンバータ25を備えるコンピュータシステムと、被検者10の頭皮に配置して図示されている一組の電極とからなる。一つの電極15のみが示されているが、EEG信号を得るのに使用される複数の電極のいかなる組合せも本発明において使用することができる。A−Dコンバータ25は、ステップ24において電極15から得られたアナログEEG信号を、標本化された一組の信号値に変換するのに使用され、この標本化された一組の信号値は、データ算出ユニット(Data Computation Unit(DCU))30の処理装置35によって分析することができる。DCU30は、処理装置35と、DAU20からの標本化された値を受信する通信装置とを組み込む。好適な実施例において、DAU20およびDCU30の処理装置は一体の同じものである。しかし、別の実施例においては、DAU20はEEG信号を取得し、標本化されたEEG信号を通信リンク上で遠隔のDCU30に発信する。係る通信リンクは、直列もしくは並列データライン、ローカルネットワークもしくは広域ネットワーク、電話線、インターネット、またはワイヤレス接続となることができる。評価を行う臨床医は、キーボード40および表示装置50を使用してDCU30と通信することができる。DAU20から離れたDCU30を利用する前記別の実施例において、付加的なキーボードおよび表示装置を臨床医が使用するためにDAU20に取り付けることもできる。
【0009】
DCU30がDAU20から標本値を受信した後、ステップ26においてDCU30は、まず、患者の動き、瞬き、電気的雑音等から生じる人為現象があるか否かについてEEG標本信号を調べる。そこで検出された人為現象はその信号から取り除かれるか、または人為現象を含む信号の部分を更なる処理から除去する。EEG信号は更に、高周波および/または低周波の雑音源(例えば筋電図や無線周波妨害や動作による人為的なもの)から人為的なものを減少するためまたは除去するために濾過される。低域フィルタリングも、関連する信号帯域よりも上の周波数のパワーを減少させるためにサンプリング(標本化)する前に使用され、不適当な標本周波数(エイリアシング)のためにより低い周波数で人為的にパワーが現れることがないようにする。
【0010】
DCU30は次にステップ28において、人為現象を無くしたEEGデータから一組のパラメータを算出する。パラメータは、パワースペクトルアレー、上位のスペクトルアレー、コーダンス(例えば米国特許第5,269,315号および米国特許第5,309,923号等に記載されている)、Z変換された変数、エントロピー測定法、および時間‐領域測定法から導き出され、これらには、様々なデータ系列に適用される様々な技術から導き出される複数のパラメータ(テンプレートマッチング、ピーク検出、閾値超過、ゼロ交差およびヨース記述子等)が含まれるがこれらに限定されない。データのいくらかの態様を定量化する係るパラメータを「特徴(features)」と呼ぶ。「特徴」はパラメータの組合せからも形成することができる。インデックスは、変数として一または複数の特徴を組み込む関数である。インデックスの関数は線形もしくは非線形となり得、または、ニュートラルネットワークといった代替形態を有し得る。ステップ32において、DCU30は、被検者が有害事象(自殺願望または自殺行為)を経験する可能性を予測する一連の特徴およびインデックスを全てのパラメータから算出する。これらの特徴およびインデックスは、ステップ34の表示装置50においてユーザに表示することができる。DCU30がDAU20から隔離されている前記実施例において、その結果はDAU20の表示装置に送信されるか、Eメールを介して患者の医師に送信されるかインターネットのウェブサイトを介して入手可能とすることができる。
【0011】
前記好適な実施例において、EEGデータはロードアイランド、ウォーリックに所在のグラステレファクター社(Grass−Telefactor)によって販売されるモデルF−E5SHCの銀塩化銀電極を使用して収集される。二極性の4チャンネル電極の組合せを利用することが好ましく、4つのペアの電極F7−Fpz、F8−Fpz、Al−FpzおよびA2−Fpz(A1が左の耳たぶであって、A2が右の耳たぶである)(ジャスパーの電極配置の国際10−20システム)のそれぞれの間の電位差として収集された各EEGチャンネルを伴う。全ての電極が頭髪の生え際の下に配置される場合、これらの電極はマサチューセッツ州ニュートンのアスペクトメディカルシステムズ社(Aspect Medical Systems, Inc.)によって製造されるZipprep(登録商標)、またはグラステレファクター社(Grass−Telefactor, Inc.)によって製造されるような他の銀塩化銀であることが好ましい。電極が髪の中に配置される場合、金杯タイプの電極を使用することができ、様々な製造業者によって提供されているような、コロジオンか、身体的拘束(例えば電極キャップ配置装置等)かのどちらかによって適所に保持される。様々な異なる電極の配置または組合せが使用され得る。
【0012】
前記好適な実施例において、EEG信号はA−Dコンバータ25によって一秒につき128個の標本を採られる。その間、被検者の瞬きによる人為現象を最小限にするために被検者は目を閉じていることが好ましい。各電極のペアからのEEG標本信号は独立して処理される。最初の処理を一つのチャンネルに際して記載しているが、各チャネルに際しても同じであると理解されよう。EEG標本信号はオーバーラップしない2秒間隔に分割される。好適な実施例において、4分のEEGデータが処理され、120セットのオーバーラップしていない連続する2秒の間隔からなる。各2秒間において、パワースペクトル(0.5Hz解像度)は、信号のDC(オフセット)要素を除去するために第1の平均のトレンド除去をし、ハミング・ウィンドーを有する時間を掛けることによってスペクトル漏れ(スミアリング)を最小限にした後、高速フーリエ変換(FFT)を使用して計算される。120セットの時間の平均パワースペクトルはこの120セットの各セットに関してパワースペクトルの対応する周波数の中央値を計算することによって算出される。絶対パワーおよび相対パワーは予め設定された1セットの周波数帯(これらは、シータ(4−7.5Hz)、アルファ(8−11.5Hz)、シータ+アルファ(4−11.5Hz)および合計パワー(2−20Hz)周波数帯である)のための中央のパワースペクトルから算出される。絶対パワーは、中央パワースペクトル内の各特定の周波数帯内のパワーの合計として算出され、相対パワーは合計パワー周波数帯の絶対パワーに対する特定の周波数帯の絶対パワーの比率として算出される。様々な絶対パワーおよび相対パワーならびに、EEGチャンネル内の絶対パワーおよび相対パワーの組合せ、積、比率は、候補となる特徴のプールを形成するように組み合わせられる。
【0013】
候補となる特徴のプールがパワースペクトル特性を超えて延在することができ、EEG情報を示す他の方法から導き出された特徴を含むことは当業者には自明であることが理解されよう(バイスペクトル分析、時間周波数分析、エントロピー測定、フラクタル測定、相関次元を含み、更に、コヒーレンス、クロススペクトル、クロスバイスペクトル特性および相互情報測定を含むクロスチャネル分析を含む)。
【0014】
好適な実施例において、EEG特徴の1セットが、被検者が抗鬱治療に反応する可能性を予測する値であるインデックスを形成するために組み込まれる。使用されるインデックス、変数および係数の数学的構造ならびにそれらの組合せの方法が、統計的なモデリング技法を使用して開発された。
【0015】
施設内倫理委員会(Institutional Review Board)の認可および書面によるインフォームドコンセントを得た後、大鬱病障害(MDD)のDSM−IV判定基準(精神疾患診断統計マニュアル(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders))を満たした36人の外来患者は、薬品表示されかつ柔軟な服用量で選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)抗鬱薬による8週間の予定の試行治療に入った。17項目のハミルトン鬱評価が、抑鬱状態の変化を評価するために、薬物を投与されていない「ベースライン」と、1週間目、4週間目、8週間目になされた。「治療反応」は、8週目でベースラインから少なくとも50%のHam−D評価の減少として規定された。各検査(ベースライン、1週目、4週目および8週目)において、4チャンネルEEGは一秒につき128個の標本を採られ、マサチューセッツ州ニュートンのアスペクトメディカルシステムズ(Aspect Medical Systems)によって販売されるアスペクトA1000EEGモニター(Aspect A1OOO EEG Monitor)を使用してコンピュータに記録された。上記のように、候補となるEEG特徴のプールが各記録から抽出された。
【0016】
従属変数としてバイナリ治療反応を使用して、モデルに組み込まれた場合に治療反応を予測したベースラインおよび1週目に測定されたこれらの候補となるEEG特徴を認識するためにロジスティック回帰が使用された。結果として生成されたロジスティックモデルは、治療に対する反応の確率を予測した(「Pred2」、0から100%で評価される):
【数1】

ここにおいて、MRT12はチャンネルA1−FpzおよびA2−Fpz上で算出された相対シータパワーの平均値であって、
MRT12one_weekは1週間目で測定されたMRT12の値であって、
BMRT12はベースラインで測定されたMRT12の値であって、
MRT78one_weekは1週間目で測定されたMRT78の値であって、
DRTAS12は、チャンネルA1−Fpz上の組み合わされた相対シータ+アルファパワーから、チャンネルA2−Fpz上で組み合わされた相対シータ+アルファパワーを引いた値であって(よってDRTAS12は左マイナス右の非対称の測定である)、
DRTAS12one_weekは、1週間目で測定されたDRTAS12の値であって、
BDRTAS12は、ベースラインで測定されたDRTAS12の値である。
【0017】
好適な実施例において、インデックスPred2およびその要素の構造は、更に精密化され、有害事象を起こす被検者の確率を予測できるインデックスを生成する。好適な実施例において、有害事象は自殺願望である(例えば、神経認知の評価スケールによって定量化されるように、自殺を考えたり、行動を起こしたりすること)。
【0018】
自殺願望を予測するためのPred2インデックスの能力を評価するために、以下のモデルを開発するための付加的な被検者が合計42人の被検者用のデータベースに加えられた。ハミルトン鬱病評価尺度の項目3について、自殺願望の新たな(または悪化する)徴候を発現した人を認識するために各被検者を診察した。Pred2およびその要素は、どの被検者が自殺願望の新たな徴候または悪化する徴候を有するかを予測できるか否かを決定するために評価される。これらの変数は更に、これらの変数が自殺願望の徴候の重大度についてベースラインからの変化に相関するか否かを決定するために評価された。
【0019】
2進値を与えられた変数(自殺グループ)は、被検者が1週目および4週目での検診で自殺願望の新たな徴候または悪化の徴候が現れるか否かを示すために算出された。Pred2の分散分析(患者が後に受ける抗鬱治療(エスシタロプラム、フルオキセチンまたはベンラファクシン)を考慮に入れる)は、治療グループの間の相違を考慮した場合にPred2の値が自殺願望が悪化した(WorseSI)グループと自殺願望が悪化していない(NotWorseSI)グループ (p=0.005)との間で顕著に異なることを示した。(図3において、ボックス内側の水平の線は各サブグループにおけるデータ点の平均値であって、ボックスの上下の端部はそれぞれ75パーセンタイル値および25パーセンタイル値であって、ボックスの長さが四分位数間範囲である。ボックスの上下にある「ひげ」の端部の水平ラインは、各サブグループのデータポイントの最も極値を示す。)Pred2は、図4に示されるように、治療の最初の4週間以内の自殺願望(SI)の最大の悪化にも相関した(スピアマンの順位相関(R) = −0.307, p=0.047)。加えて、ベースラインの左マイナス右に相関するシータ+アルファ非対称(BDRTAS12)は、WorseSIとNotworseSIグループとの間で著しく異なる境界線であった(p=0.053)。新たな自殺願望化(SI)の症状を現した被検者は、ポジティブな(すなわち左に優位な)非対称を一般的に有する。特徴BDRTAS12は、患者が後に受ける抗鬱治療がどれかに関わらず、同様に成すようである(図5)。
【0020】
SI症状の将来的な現れの予測因子としての、ベースラインの相対的なシータ+アルファ非対称(BDRTAS12)の使用は、このデータセットにおいて下記の成績を出した。67%の感度、78%の特異性、76%の精度(33%のポジティブ予測精度(positive predictive accuracy(PPA))および93%のネガティブ予測精度(negative predictive accuracy(NPA))とを備える)。1週目で測定されたシータ+アルファ非対称(BDRTAS12one_week)は、被検者の誰がSI症状を現すかの識別力を向上する付加的な情報を提供する(図6)。最初に新たなSI症候を現した被検者におけるEEG非対称は、ベースラインで>0であって、1週間の治療の後にも著しい下降は起こらなかった。SI症状を現しそうであるとしてBDRTAS12>0およびDRTAS12one_week>−0.02の両方を有する被検者と、SI症候を現しそうに無い残りの被検者とを分類する検出ルールを使用して、このデータセットにおいて下記の成績を達成した。67%の感度、89%の特定性および86%の精度でかつ、50%のPPAおよび94%のNPAを備える。
【0021】
図5は、DRTAS12one_week対BDRTAS12の関係の原点(0,0)からの距離が、特定の個人における自殺願望の可能性の予測因子であることを示している。自殺願望を経験したこれら全ての患者は、DRTAS12one_week対BDRTAS12散布図の中心に密集した。起点から遠いデータポイントに対応する患者のうち、自殺願望の例は無かった。従って、本発明の別の実施例は、DRTAS12one_week対BDRTAS12の絶対値の合計から導き出される。
【数2】

自殺願望の危険性が非常に低い場合は、Indexsuicide_ideation > 0.06の値に関連する。別の実施例において、自殺願望の危険性の数学的に直観的な測定は、下記のような計算式で、図5の散布図の起点からのデータポイントの距離として構成することができる。
【数3】

起点からの距離が増加する場合(Indexsuicide_ideation2の値の増加として表される)は、自殺願望の確率が減少することを予測する。
【0022】
EEG Pred2インデックスおよびEEG非対称は、DRTAS12one_week対BDRTAS12が治療に対する反応の有益な予測因子であって、かつ有害事象(特に自殺願望)の可能性の有益な予測因子である。最初の治療に反応するこれらの測定の変化は、予測能力を改善し得る付加的な情報を提供することができる。これらの測定は薬理学的治療に関しての反応を予測するために開発されたが、治療の他の形態(これらには精神療法、電撃療法(ECT)、トランス磁気刺激ならびに神経刺激の様々な形態(深い脳刺激および末梢神経刺激(例えば迷走神経刺激)が含まれるがこれらに限定されない)への反応を予測することも期待される。
【0023】
好適な実施例のインデックス(測定)は、鬱病治療に関する反応および事象を予期するために開発されたが、精神および神経疾患(不安、双極性鬱病、躁病、精神分裂症、強迫性障害および痴呆が含まれるがこれらに限定されない)の他の種類を治療する場合に、これらの測定は反応および/または有害事象を予測することができることも期待される。
【0024】
上記の研究はEEG Pred2インデックス、EEG非対称特徴DRTAS12one_week対BDRTAS12およびインデックスIndexsuicide_ideationおよびIndexsuicide_ideation2は、有害な症状(自殺願望および自殺行為の変化を含む)の発症を予測するのに使用することができる。これらのインデックスおよび他のEEGに基づくインデックス(以下、EEGインデックスとして呼ばれる)は、治療のために症状の最終的な発症を予測するために、治療の前に使用することもできる。
【0025】
EEGインデックスは、治療の過程を通して有害な症状の発症を予測するために計算され、使用されることができる。
【0026】
EEGインデックスは、身体症状、性的な副作用、吐き気、おう吐および他の症状(精神および/または神経の状態の改善の症状とはみられないもの)といった他の有害な症状を予測するために使用することができる。
【0027】
上記の発明が好適な実施例を参照にして記載されてきたが、当業者によって様々な変更および修正がなされるであろう。こうした全ての変更および修正は添付の請求の範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、精神および神経疾患の治療の間の有害事象を予測するための本発明のシステムのブロック図である。
【図2】図2は、本発明の方法のステップの流れ図である。
【図3】図3は、抗鬱治療によって層別化される、自殺願望が悪化している(Worsening Suicide Ideation (SI))グループおよび自殺願望が悪化していない(Not Worsening SI)グループ用のインデックスPred2の値を示すエラーバーグラフである。
【図4】図4は、Pred2の値に対して、最初の4週間の治療においてHam−D項目3において観察されるベースラインからの最大変化を示すエラーバーグラフである。
【図5】図5は、抗鬱治療によって層別化される、自殺願望が悪化しているグループおよび自殺願望が悪化していないグループ用の左マイナス右の相対的なシータ+アルファの非対称特性(BDRTAS12)のベースライン値を示すエラーバーグラフである。
【図6】図6は、ベースライン(BDRTAS12)において1週間目(DRTAS12)で測定された、左マイナス右の相対的なシータ+アルファの非対称特性(BDRTAS12)の散布図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
精神性および神経性の有害事象を生体電位信号から予測する方法であって、
被検者から生体電位信号を得るステップと、
この生体電位信号から少なくとも一つのパラメータを算出するステップと、
この少なくとも一つのパラメータから少なくとも一つの生体電位の特徴を導き出すステップと、
この少なくとも一つの生体電位の特徴の使用によって有害事象を予測するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
有害事象は自殺願望である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
有害事象は自殺行為である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも一つの特徴は相対シータ周波数帯パワーである請求項1に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも一つの特徴は相対シータ+アルファ周波数帯非対称である請求項1に記載の方法。
【請求項6】
精神性および神経性の有害事象を生体電位信号から予測する方法であって、
被検者から生体電位信号を得るステップと、
この生体電位信号から少なくとも一つのパラメータを算出するステップと、
この少なくとも一つのパラメータから第1の生体電位の特徴および第2の生体電位の特徴を導き出すステップと、
前記有害事象を予測するために、前記少なくとも二つの生体電位の特徴の組合せから導き出されるインデックスを生成するステップと、
を含む方法。
【請求項7】
心因性および神経性の有害事象を生体電位信号から予測する方法であって、
被検者から生体電位信号を得るステップと、
この生体電位信号から少なくとも一つのパラメータを算出するステップと、
このパラメータから、第1のタイムポイントで第1の生体電位の特徴と、第2のタイムポイントで第2の生体電位の特徴とを導き出すステップと、
前記有害事象を予測するために、前記少なくとも二つの生体電位の特徴の組合せから導き出されるインデックスを生成するステップと、
を含む方法。
【請求項8】
精神性および神経性の有害事象を生体電位信号から予測する方法であって、
被検者から生体電位信号を得るステップと、
この生体電位信号から少なくとも一つのパラメータを算出するステップと、
治療前の状態で第1の生体電位の特徴を測定するステップと、
前記被検者の治療の開始の後に前記パラメータから第2の生体電位の特徴を測定するステップと、
前記第1の生体電位の特徴および前記第2の生体電位の特徴を組み合わせることによってインデックスを生成するステップと、
前記インデックスの使用によって前記有害事象を予測するステップと、
を含む方法。
【請求項9】
第1および第2の特徴を組み合わせたインデックスは、これら2つの特徴によって示される起点からの距離である請求項8の方法。
【請求項10】
少なくとも一つのパラメータが、相対的なEEGシータパワーと相対的な結合したシータ+アルファ非対称との組合せを使用して算出される請求項1に記載の生体電位信号から精神性および神経性の有害事象を予測する方法。
【請求項11】
精神性および神経性の有害事象を生体電位信号から予測するシステムであって、
被検者から生体電位信号を得るためのデータ収集装置と、
前記生体電位信号から少なくとも一つのパラメータを算出し、この少なくとも一つのパラメータから少なくとも一つの生体電位の特徴を導き出すための処理装置と、
前記少なくとも一つの生体電位の特長の使用によって有害事象を予測するための分析装置と、
を含むシステム。
【請求項12】
有害事象は自殺願望である請求項11に記載の精神性および神経性の有害事象を生体電位信号から予測するシステム。
【請求項13】
有害事象は自殺行為である請求項11に記載の精神性および神経性の有害事象を生体電位信号から予測するシステム。
【請求項14】
少なくとも一つの特徴は、相対的なシータ周波数帯パワーである請求項1に記載の精神性および神経性の有害事象を生体電位信号から予測するシステム。
【請求項15】
少なくとも一つの特徴は、相対的なシータ+アルファ周波数帯非対称である請求項1(請求項11の間違いだと思われる)に記載の精神性および神経性の有害事象を生体電位信号から予測するシステム。
【請求項16】
精神性および神経性の有害事象を生体電位信号から予測するシステムであって、
被検者から生体電位信号を得るためのデータ収集装置と、
前記生体電位信号から少なくとも一つのパラメータを算出し、このパラメータから第1の生体電位の特徴および第2の生体電位の特徴を導き出し、前記有害事象を予測するためのインデックスを生成するための処理装置と、
を備えるシステム。
【請求項17】
精神性および神経性の有害事象を生体電位信号から予測するシステムであって、
被検者から生体電位信号を得るためのデータ収集装置と、
処理装置であって、
前記生体電位信号から少なくとも一つのパラメータを算出するためと、
このパラメータから、第1のタイムポイントで第1の生体電位の特徴と第2のタイムポイントで第2の生体電位の特徴とを導き出すためと、
前記有害事象を予測するために、前記少なくとも2つの生体電位の特徴の組合せから導き出されるインデックスを生成するためと、
前記有害事象を予測するために、前記第1と第2の生体電位の特徴の組合せから導き出されるインデックスを生成するための処理装置と、
を備えるシステム。
【請求項18】
精神性および神経性の有害事象を生体電位信号から予測するシステムであって、
被検者から生体電位信号を得るためのデータ収集装置と、
処理装置であって、
前記生体電位信号から少なくとも一つのパラメータを算出するためと、
治療前の状態で第1の生体電位の特徴を測定するためと、
前記被検者の治療の開始の後に前記パラメータから第2の生体電位の特徴を測定するためと、
前記第1の生体電位の特徴および前記第2の生体電位の特徴を組み合わせることによるインデックスの使用によって有害事象を予測するために、このインデックスを生成するための処理装置と、
を備えるシステム。
【請求項19】
第1および第2の特徴を組み合わせたインデックスは、これら2つの特徴によって示される起点からの距離である請求項18に記載の精神性および神経性の有害事象を生体電位信号から予測するシステム。
【請求項20】
少なくとも一つのパラメータは、相対的なEEGシータパワーと相対的な結合されたシータ+アルファ非対称との組合せを使用して算出される請求項11に記載の精神性および神経性の有害事象を生体電位信号から予測するシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−526388(P2008−526388A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−550586(P2007−550586)
【出願日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際出願番号】PCT/US2006/001059
【国際公開番号】WO2006/076478
【国際公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【出願人】(500568240)アスペクト メディカル システムズ,インク. (8)
【Fターム(参考)】