説明

精神障害および/または腸のディスバイオシスのインビトロまたはエクスビボ診断方法

本発明は、少なくとも式(I)


(式中、n=1、Raは特に−COOHを表し、Rbは−CH3を表し、Zは特に−CH2CHOHを表し、該化合物は任意に塩の形態、または少なくとも一つの不斉炭素が存在するときには異性体単独もしくはラセミ混合物の形態であってもよい)の少なくとも一つの、精神障害および/または腸のディスバイオシスのインビトロまたはエクスビオ診断方法を実施するための生物学的標識としての使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、精神障害および/または腸のディスバイオシス(dysbioses)を診断するための新規な生物学的標識に関する。
より詳細には、本発明は、精神障害、特に自閉症および/または腸のディスバイオシスのための診断方法、特にインビトロまたはエクスビボの方法に関する。
より詳細には、本発明は、自閉症または自閉症に関連した腸のディスバイオシスを診断する方法、特にインビトロまたはエクスビボの方法に関する。
【背景技術】
【0002】
子供の自閉症は、病原性機構の観点から検討したとき、異質の精神障害である。
この症状は、カナーズシンドロームとも呼ばれ、普通、子供の幼年期(子供が1歳、2歳または3歳のとき)に突発的に起こる。
それは、言語障害により、社交性の欠如、不安を緩和する行動および反復性行動により、ならびに最終的には様々な強度の知恵遅れにより特徴付けられる。この疾患のための遺伝的な素因は、高度に推測される。
【0003】
しかしながら、研究の量が増加した結果、脳の機能不全が、腸内に起源が見られる新陳代謝の不均衡と関連していることが分かった。
腸内細菌叢の不均衡は腸のディスバイオシスとも呼ばれ、極めて頻繁に精神障害を患う人々に確認されている。
【0004】
精神障害、特に自閉症のための診断は、通常、各個人の精密な臨床検査に基づいている。
観察を通しての診断は、一方で中枢神経系の多くの様々な疾患が、自閉症の症状にかなり似た兆候をもたらし、他方で子供に対してなされるこれらの単調な観察が時間内に繰り返され、かつ長時間に亘らなければならず、しかも経験豊富な専門家により病院内で行われなければばらないという事実により、さらに複雑になっている。
【0005】
特許出願EP 0979828は、血液または尿のような生体液における式pyroGlu−Trp−GlyNH2、Gly−Ser−Glu−AsnおよびpyroGlu−Glu−Asp−Serを有するペプチド類を、HPLCまたは上記のペプチド類に対する抗体を用いる免疫沈降のような適当な方法を用いて検出することを含む、自閉症の診断方法に関する。
この出願は、自閉症患者における高い割合の上記の代謝産物が、菌類による感染に関連しているという推定に依拠している。
【0006】
米国特許出願第5686311号は、1)クレブスサイクルに対して作用し得る、または 2)シトラリンゴ酸、クエン酸、酒石酸、フラン−2,5−ジカルボン酸、3−オキソグルタル酸、ジヒドロキシフェニルプロピオン酸、カルボキシクエン酸、5−ヒドロキシメチル−2−フラン酸、カルボキシフラングリシン、フェニルカルボン酸およびアラビノースのような細菌の起源を有する、一連の代謝産物の測定に基づく自閉症の診断方法を開示している。
【0007】
これらの化合物は、自閉症患者からの生体液(尿、血液、唾液、および脳脊髄液)中で、GC/MSにより検出され、それらの割合は健康な患者からのサンプルで検出された割合と比較される。
しかしながら、生物学的標識としてのこれら代謝産物の使用により、常に臨床症状の検討に頼ることなく精神障害を診断し得るとは思われない。
【0008】
Reicheltら(Biol. Psychiatry, 1986, 21 (13) 1279-90;Adv. Biochem. Psychopharmacol., 1981, 28, p.627-43; Med. Hypothese, 1995, 45 (5), p.498-502)は、自閉症の子供において一群のペプチド類を検出し、尿中に存在するこれらのペプチド類のいくつかを精製した。
【0009】
一般的な病原性のメカニズムにより引き起こされる自閉症候群の患者を特定することを目的として、グルテンおよびカゼインのようなこれらのペプチド類はよく検討されている。
上記で言及されたペプチド類は、ある患者のみで検出され、自閉症の全ての場合についてではないと思われる。
【0010】
様々な刊行物は、主要なドーパミン作用性代謝産物−ホモバニリン酸(HVA)−の、またはノルエピネフリンに由来する代謝産物−バニリルマンデル酸(VMA)−の、生体液中での割合を測定することによる、自閉症の研究に関連している。
これらの刊行物は、自閉症が神経生物学的障害に関連していると思われると明記しながら、矛盾した結果を示している。
【0011】
一例として、Robert T. Schltzらの報文(Charney, D.S. and Nestler, E.J. The neurobiology of Mental Illness (第2版), Oxford University Press)を引用することができる。その中で、自閉症患者の脳脊髄液中のHVAレベルは増加または低下のいずれかであり、さもなければ健常者のレベルと同じであると言われている。同じ理由により、HVAの尿中のレベルに関するいくつかの研究は、対象者が自閉症であろうと健康であろうと、これらのレベルは同様であると報告している。
【0012】
Christopher J. McDougleによる報文(J Clin Psychiatry 2005 ; 66(suppl 10))では、自閉症患者におけるHVAの尿中レベルは、健常者のそれと異ならないとも述べられている。
【0013】
同様に、Minderaa RBによる報文(Noradrenergic and adrenergic functioning in autism, Biol Psychiatry . 1994 Aug 15 ; 36 (4) : 237-41. PMID : 79866888、報文の表5)では、健常者および自閉症患者におけるバニリルマンデル酸の尿中の割合が測定されている。自閉症患者は、対照者のそれと同じ尿中のバニリルマンデル酸の割合を有することが示されている。
【0014】
今日まで、先行技術の方法は、生物学的標識による自閉症の迅速および確実な診断の問題に対して満足できる解決をもたらしていないばかりか、それらのいずれもが、生理学的状態と病理学的状況とを区別するには元来不十分であるということが知られている。
【発明の開示】
【0015】
本発明の課題の一つは、精神障害、特に自閉症および/または腸のディスバイオシスを診断するために、高感度で、信頼でき、かつ迅速に使用できる新規な生物学的標識を提供することである。
本発明のもう一つの課題は、精神障害、特に自閉症および/または腸のディスバイオシスのための診断用キットを提供することである。
【0016】
本発明の課題の一つは、単クローン性および多クローン性の抗体、ならびにこれらの抗体を産生し得て、かつ診断用キット中で、または精神障害および/または腸のディスバイオシスの治療用の拮抗剤として用い得るハイブリドーマを提供することである。
【0017】
本発明は、精神障害および/または腸のディスバイオシスを診断するためのインビトロまたはエクスビボの方法を実施するための生物学的標識としての、次の式(I)の少なくとも一つの化合物の使用に関する。
【0018】
【化1】

(式中、
nは0または1であり、
Raは−CH2OH、−COOH、−NR12を表し、ここでR1およびR2は独立して水素原子またはC1〜C3のアルキル基を表し、
RbはC1〜C3のアルキル基、好ましくはメチル基を表し、
Zは−CH2−Y−を表し、ここでYはOH基で置換されていてもよいC1〜C2の炭化水素鎖を表し、該鎖は−NH−および/または−CO−基を含んでいてもよく、
前記の化合物は塩の形態であってもよく、少なくとも一つの不斉炭素原子が存在するときには単離された異性体の形態もしくはラセミ混合物としての形態であってもよく、
前記の化合物は、バニリル乳酸、バニリルピルビン酸および3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニルグリコールとは異なっている)
【0019】
本発明では、驚くべきことに、精神障害を有する患者において、上記で定義された少なくとも一つの化合物のピーク値は、健常者から得られる値より顕著に高いことが見出された。
【0020】
驚くべきことに、患者の生物学的サンプルにおける、上記で定義された少なくとも一つの化合物の存在が、自閉症または自閉症を伴った腸のディスバイオシスを有利に診断し得ることも見出された。
【0021】
言い換えれば、有利な方法において、本発明に係る化合物は、精神障害(ディスバイオシスを伴っていてもよい)の診断に特異的であり、精神障害を伴っていないディスバイオシスを診断することができない。
【0022】
「生物学的標識」とは、インビトロまたはエクスビボの診断方法を実施することを可能ならしめる、生物学的標識を意味する。
塩は、アンモニウム、ナトリウム、カリウム、カルシウムまたはマグネシウム塩のような、薬理学的に好適な塩を指すこと意味する。
【0023】
「精神障害」とは、この発明で用いられるように、精神または神経の障害をいう。神経の障害は、神経系の障害に属する。精神障害は、精神的もしくは情緒的な障害、または機能障害である。
【0024】
これらの障害は、Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, 第4版, 改定: DSM-IV-TR, ワシントン, DC: American Psychiatric Association; 2000で特定され、分類されている。
用語「腸のディスバイオシス」は、自閉症タイプの精神障害を患う人々において通常観察される腸内細菌叢の不均衡を意味する。
【0025】
有利な実施態様によれば、本発明は、上記で定義されたように、精神障害および/または腸のディスバイオシスのためのインビトロまたはエクスビボの診断方法を実施するための生物学的標識としての、次の式(I')の少なくとも一つの化合物の使用に関する。
【0026】
【化2】

(式中、
nは0または1であり、
Raは−CH2OH、−COOH、−NR12を表し、ここでR1およびR2は独立して水素原子またはC1〜C3のアルキル基を表し、
RbはC1〜C3のアルキル基、好ましくはメチル基を表し、
Zは−CH2−Y−を表し、ここでYはOH基で置換されていてもよいC1〜C2の炭化水素鎖を表し、該鎖は−NH−および/または−CO−基を含んでいてもよく、
前記の化合物は塩の形態であってもよく、少なくとも一つの不斉炭素原子が存在するときには、単離された異性体の形態もしくはラセミ混合物としての形態であってもよく、
前記の化合物はバニリル乳酸、バニリルピルビン酸または3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニルグリコールとは異なっている)
【0027】
もう一つの有利な実施態様によれば、本発明は、次の式(I)の少なくとも一つの化合物の上記で定義されたような使用に関する。
【0028】
【化3】

(式中、
nは0または1であり、
Raは−COOHを表し、
RbはC1〜C3のアルキル基、好ましくはメチル基を表し、
Zは−CH2−Y−を表し、ここでYはOH基で置換されていてもよいC1〜C2の炭化水素鎖を表し、該鎖は−NH−および/または−CO−基を含んでいてもよく、
前記の化合物は塩の形態であってもよく、少なくとも一つの不斉炭素原子が存在するときには、単離された異性体の形態もしくはラセミ混合物としての形態であってもよく、
前記の化合物はバニリル乳酸またはバニリルピルビン酸とは異なっている)
【0029】
もう一つの有利な実施態様によれば、本発明は、次の式(II)の少なくとも一つの化合物の上記で定義されたような使用に関する。
【0030】
【化4】

(式中、n、Ra、Zは上記で定義されたとおりである)
【0031】
もう一つの有利な実施態様によれば、本発明は、式(I)または(II)の少なくとも一つの化合物の上記で定義されたような使用に関する。
(式中、
nは0または1であり、
Raは−COOHを表し、
Zは−CH2−CHOH−、−CH2−CH2−、−CO−NH−CH2−を表し、
前記の化合物はバニリル乳酸とは異なっている)
【0032】
有利な実施態様によれば、本発明は、次の式(I)または(II)の少なくとも一つの化合物の上記で定義されたような使用に関する。
(式中、
nは1であり、
Raは−COOHを表し、
Rbは−CH3を表し、
Zは−CH2−CHOH−を表し、
前記の化合物はバニリル乳酸とは異なっている)
【0033】
本発明の有利な実施態様によれば、式(II)の化合物は次の化合物の一つから選択される。
【化5】

【0034】
本発明のもう一つの有利な実施態様によれば、用いられる式(II)の化合物は、3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル−3−ヒドロキシ−プロピオン酸であり、それは次の式に相当する。
【0035】
【化6】

【0036】
上記で定義された化合物は、3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル−3−ヒドロキシ−プロピオン酸であり、バニリル−3OH−プロピオン酸またはバニリルヒドロアクリル酸とも呼ばれる。
この化合物は、(食物ポリフェノールから誘導されるような)フェルラ酸の細菌分解経路の一つの中間生成物である。
【0037】
本発明において、驚くべきことに、精神障害を患う患者では、3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル−3−ヒドロキシ−プロピオン酸のピーク値が、健常者について得られる値より顕著に高いことが見出された。
【0038】
前記の化合物の顕著なレベルは、適当な方法、特にGC/MSにより証明されたように、試験された全ての患者で、該化合物を、自閉症およびその他の精神障害の診断のための、高感度で、信頼し得る標識として考慮し得る。
【0039】
本発明のもう一つの有利な実施態様によれば、用いられる式(II)の化合物は、バニリン酸であり、次の式に相当する。
【0040】
【化7】

【0041】
本発明において、驚くべきことに、精神障害を患う患者で、バニリン酸のピーク値は、健常者について得られる値より顕著に高いことが見出された。
上記の化合物は、単独または混合物として、例えばバニリルグリシン(VG)との混合物としてバニリルプロピオン酸(VPA)を、またはバニリン酸(VA)との混合物としてバニリルプロピオン酸(VPA)を、またはバニリルグリシン(VG)およびバニリン酸(VA)との混合物としてバニリルプロピオン酸(VPA)を、バニリルグリシン(VG)との混合物としてバニリン酸(VA)を用いることができる。
【0042】
本発明に含まれる精神障害は、自閉症、発達遅延、アルツハイマー病のような神経変性疾患またはパーキンソン病を含む群に属する。
【0043】
もう一つの有利な実施態様によれば、本発明に含まれる精神障害は、自閉症である。
有利には、腸のディスバイオシスに関連するとき、本発明に含まれる精神障害は自閉症である。
【0044】
本発明は、精神障害および/または腸のディスバイオシスのための、診断および/または予後の方法、特にインビトロまたはエクスビボの方法にも関する。この方法は、患者から得られる生物学的サンプル中に存在する、少なくとも一つの上記で定義された化合物の量の変動を、健常者から得られる生物学的サンプル中に存在するこの(これらの)同じ化合物の量との関連において測定する段階を含むことを特徴とする。
【0045】
例えば尿サンプルにおいて、少なくとも一つの化合物、特に3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル−3−ヒドロキシ−プロピオン酸の量の変動が、クレアチニン1mg当たり20μg以上、好ましくはクレアチニン1mg当たり20〜180μgであれば、診断結果は陽性となる。
【0046】
有利な実施態様によれば、本発明は上記に定義されたような方法に関し、該方法では、健常者から得られた生物学的サンプル中に存在するこれ(これら)と同じ化合物の量との関連で、−適当な方法で−患者から得られた生物学的サンプル中に存在する上記で定義された少なくとも一つの化合物の量が増加していると判断されれば、自閉症および/または腸のディスバイオシスと診断される。
【0047】
もう一つの有利な実施態様によれば、本発明は上記で定義された方法に関し、該方法では、患者から得られた生物学的サンプル中に存在する上記で定義された少なくとも一つの化合物の量、および健常者から得られた生物学的サンプル中に存在するこれ(これら)と同じ化合物の量が、クロマトグラフィにより、分光光度法により、免疫学的方法により、特にELISA検定法または免疫比濁測定法で、好ましくは質量分析器(GC/MS)を取り付けたガスクロマトグラフィにより測定される。
【0048】
これらの方法はこの分野の専門家に知られ、かつ利用されていて、蛋白質、ペプチド類、天然ステロイド類または医薬のような多くの検体を分析するために、生物学的サンプル(血清、尿、血液など)の通常の分析に、うまく適用されている。
【0049】
これらの方法は、P. Tijssenによる著作物((Practice and Theory of Enzyme Immunoassays), Elsevier, Amsterdam 1985)で参照されている。
【0050】
しかしながら、GC/MS方法の主な利点は、操作が簡単であること、解析のため短い時間間隔だけを必要とすること、そしてとりわけ極めて特異的であり、この分野の専門家に知られている他の方法と比較して、生物学的サンプル中の前記の化合物のより鋭敏な特徴づけを可能ならしめて、高い検出感度を有していることである。
【0051】
本発明において、GC/MSによる3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル−3−ヒドロキシ−プロピオン酸の分析および定量は、297および428のm/z比を有する特徴的なイオンフラグメントにより行われ得る。
【0052】
本発明の有利な実施態様によれば、上記で定義されたような方法において、患者から得られた生物学的サンプル中に存在する、式:
【化8】

を有する上記の化合物の量が、健常者から得られた生物学的サンプル中に存在する同じ化合物の量と比較して、増加していると判断されれば、自閉症および/または腸のディスバイオシスと診断される。
【0053】
有利な実施態様によれば、本発明で用いられる生物学的サンプルは、尿、血液、唾液、脳脊髄液または大便から選択される。
【0054】
もう一つの有利な実施態様によれば、本発明は上記で定義された方法に関し、該方法では、患者から得られた尿サンプル中に存在する上記で定義された少なくとも一つの化合物の量、特に3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル−3−ヒドロキシ−プロピオン酸の化合物の量は、クレアチニン1mg当たり20μg以上であり、特にクレアチニン1mg当たり20〜180μgである。
【0055】
本発明は、上記で定義された少なくとも一つの化合物の少なくとも一つを指向した、特に3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル−3−ヒドロキシ−プロピオン酸に対する、単クローン性または多クローン性の抗体に関する。
【0056】
単クローン性の抗体は、この分野の専門家に知られている従来技術に従って、結合蛋白質またはペプチドと組み合わされた、上記で定義された化合物の一つ、例えば3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル−3−ヒドロキシ−プロピオン酸を用いて、マウスの免疫処置により得られる。
【0057】
免疫処置後に得られる免疫細胞は、ヒポキサンチン・グアニン・ホスホリボシル転移酵素に対して不完全なマウスの骨髄腫と融合される。
選択的な媒体はハイブリドーマを生き残らせ、3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル−3−ヒドロキシ−プロピオン酸に対して特異的な抗体を分泌するハイブリドーマの選択は、従来の免疫学的技術に従って行われる。
【0058】
本発明は、精神障害および/または腸のディスバイオシスのための診断キットにも関し、該キットは次のものを含む:
− 生物学的サンプルにおいて、上記で定義された少なくとも一つの化合物の存在を検出し得る、一以上の試薬、特に上記で定義された少なくとも一つの化合物に対する抗体
− 場合によっては、精神障害および/または腸のディスバイオシスの陽性診断を示す所定量の、少なくとも一つの上記化合物を含む対照サンプル、
− 場合によっては、精神障害および/または腸のディスバイオシスの陰性診断を示す所定量の、少なくとも一つの上記化合物を含む対照サンプル。
【0059】
キットを製造するために採用される方法は、拮抗ELISAタイプのものである。
ペルオキシダーゼもしくはフルオロクロムと接合した上記で定義された化合物、例えば3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル−3−ヒドロキシ−プロピオン酸、または放射性同位体でラベルされた複合体と、限定数の結合部位(吸収された抗体)のための、サンプル中に存在する3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル−3−ヒドロキシ−プロピオン酸との間の拮抗に基づいている。
【0060】
結合した複合体の量は、放射能の計測により、もしくは蛍光定量により、または色素形成性もしくは発色性の基質を加えて分光検出することにより検出される。定量結果は、キット中で確認され得る標準的な間隔と比較して得られる。
強度の測定値は、標品またはサンプル中に存在する3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル−3−ヒドロキシ−プロピオン酸の量に反比例する。
【0061】
本発明は、上記で定義されたような単クローン性抗体を産生し得るハイブリドーマ、特に3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル−3−ヒドロキシ−プロピオン酸に対する単クローン性抗体に関する。
本発明は、精神障害および/または腸のディスバイオシスを治療するための上記で定義された少なくとも一つの化合物の拮抗剤の使用に関する。
拮抗剤は、上記の化合物に対する多クローン性または単クローン性の抗体から選択するのが有利である。
【0062】
図面の説明
図1:
図1は、質量分析器(GC/MS)を取り付けたガスクロマトグラフィにより得られた、健常対照者の尿サンプルの分析後のクロマトグラムに相当する。この図は、様々なトリメチルシリル誘導化合物(TMS)の濃度を示しており、ここでピークをA 乳酸;B 尿素;C 内部標準;D 2−オキソグルタル酸;E 馬尿酸;F 3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル−3−ヒドロキシ−プロピオン酸;G クエン酸のように同定する。
【0063】
図2:
図2は、質量分析器(GC/MS)を取り付けたガスクロマトグラフィにより得られた、自閉症の子供の尿サンプルの分析後のクロマトグラムに相当する。この図は、様々なトリメチルシリル誘導化合物(TMS)の濃度を示しており、ここでピークをA 乳酸;B 尿素;C 内部標準;D 2−オキソグルタル酸;E 馬尿酸;F 3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル−3−ヒドロキシ−プロピオン酸;G クエン酸のように同定する。
【0064】
図3:
図3は、質量分析器(GC/MS)を取り付けたガスクロマトグラフィにより得られたクロマトグラムに相当し、自閉症患者において確認された3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル−3−ヒドロキシ−プロピオン酸のTMS誘導体として同定される化合物のマススペクトルが特徴付けられている。x軸はイオンフラグメントのダルトン中の質量に相当する。イオンフラグメント297および428により、化合物Aすなわち3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル−3−ヒドロキシ−プロピオン酸が同定される。
【0065】
図4:
図4は、それぞれ27人の健常対照者(A)と27人の自閉症患者(B)との間の、3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル−3−ヒドロキシ−プロピオン酸のTMS誘導体の量に関する、比較棒グラフに相当する。x軸は、クレアチニン1mg当たりの3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル−3−ヒドロキシ−プロピオン酸のμg量に相当する。中央値は、それらの95%百分位数とともに示されている。自閉症患者中における前記の化合物の量は、クレアチニン1mg当たり20μg以上であり、健常対照者では、クレアチニン1mg当たり0〜15μgである。
【0066】
さらに、クロマトグラフィ分析からのデータは、自閉症患者での前記化合物の量と、健常対照者での量0−0.07(結果は開示されていない)との面積比は0.1以上であることを示す。MannおよびWhitney試験は、Ucal 図の3.2とは顕著な差異を示す。
【0067】
図5:
図5は、62人の健常対照者(A)と、深刻な発達遅延により特徴付けられるが自閉症でない精神障害を患う45人の患者(B)との間の、3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル−3−ヒドロキシ−プロピオン酸のTMS誘導体の量に関する、比較棒グラフに相当する。
【0068】
x軸は、クレアチニン1mg当たりの3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル−3−ヒドロキシ−プロピオン酸の量(μg)に相当する。中央値をそれらの95%百分位数とともに示す。非自閉症の様々な神経障害を患う患者での前記化合物の量は、クレアチニン1mg当たり20μg以上であり、健常対照者ではクレアチニン1mg当たり0〜15μgである。
【0069】
さらに、クロマトグラフィ分析からのデータは、非自閉症の様々な神経障害を患う患者についての前記化合物の割合と、健常対照者についてのものとの間の面積比は、健常対照者については0〜0.07であり、グループ(B)(結果は開示されていない)からの患者については0.1以上であることを示している。MannおよびWhitney試験は、Ucal 図の4.74とは顕著な差異を示す。
【0070】
図6:
図6は、それぞれ27人の健常対照者(A)と27人の自閉症患者(B)との間の、バニリルグリシン(VG)のTMS誘導体の量に関する棒グラフを示す。x軸はバニリルグリシンの量の面積比に相当する。中央値をそれらの95%百分位数とともに示す。
【0071】
自閉症患者(B)での中央値は0.2であり、健常対照者(A)での中央値は0.04である。バニリルグリシン(VG)について、自閉症患者での前記化合物の量の面積比は0.12〜0.72であり、健常対照者ではそれが0〜0.1である。MannおよびWhitney試験は、Ucal 図の3.6とは顕著な差異を示す。
バニリン酸(VA)およびバニリルプロピオン酸(VPA)も試験され、自閉症患者において健常対照者のそれよりも高い面積比を示した。
【0072】
図7:
図7は、それぞれ38人の対照者(A)および40人の自閉症患者(B)についてのバニリン酸(VA)のTMS誘導体の量に関する棒グラフを示す。x軸はバニリン酸の量の面積比に相当する。中央値をそれらの95%百分位数とともに示す。自閉症患者(B)での中央値は0.44であり、健常対照者(A)での中央値は0.124である。さらに、クロマトグラフィ分析からのデータは、内部標準に関連して、自閉症患者での前記化合物の量の面積比は0.16〜1.07であり、健常対照者のそれは0.07〜0.45であることを示す。MannおよびWhitney試験は、Ucal 図の3.63とは顕著な差異を示す。
【0073】
図8:
図8は、それぞれ38人の対照者(A)および40人の自閉症患者(B)についての、バニリルプロピオン酸(VPA)のTMS誘導体の量に関する棒グラフを示す。x軸はバニリルプロピオン酸の量の面積比に相当する。中央値をそれらの95%百分位数とともに示す。自閉症患者(B)での中央値は0.04であり、健常対照者(A)での中央値は、0.011である。
【0074】
クロマトグラフィ分析からのデータは、内部標準に関連して、自閉症患者での前記化合物の量の面積比が0.014〜0.053であり、健常対照者でのそれが0.003〜0.022であることを示す。MannおよびWhitney試験は、Ucal 図の4.47とは顕著な差異を示す。
【0075】
図9:
図9は、27人の健常対照者(A)、27人の自閉症患者(B)および18人の腸のディスバイオシスを患う非自閉症患者(C)の間での、ジヒドロキシフェニルプロピオン酸のTMS誘導体の量に関する比較棒グラフに相当する。中央値をそれらの95%百分位数とともに示す。腸のディスバイオシスを患う非自閉症患者での前記化合物の量の面積比は、自閉症患者のそれより高い。
【0076】
実験の部
【実施例1】
【0077】
自閉症患者での3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル−3−ヒドロキシ−プロピオン酸の頻度および量
27人の自閉症患者からの尿のGC/MS分析により、3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル−3−ヒドロキシ−プロピオン酸のものと同じ特徴(保持時間およびマススペクトル)を有する重要なピークを確認し得る。このピークを、297および428のm/z比を有する特定のイオンフラグメントのピークの下に含まれる部分の積分により定量した。
【0078】
患者の尿について行われた分析は、本発明中に記載される化合物が尿中で検出される場合の頻度が、統計的には、27人の健常者と比較したとき、自閉症患者では異なることを示す。用いられる内部標準は、o−ヒドロキシフェニル酢酸であり、その定量はイオンフラグメント296、281、252および164に基づいている。結果を、図1〜4に報告する。
【実施例2】
【0079】
他の精神障害を患う患者での3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル−3−ヒドロキシ−プロピオン酸の頻度および量
他の精神障害を患う45人の患者の尿のGC/MS分析は、3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル−3−ヒドロキシ−プロピオン酸と同じ特徴(保持時間およびマススペクトル)を有する重要なピークを確認し得る。このピークを、297および428のm/z比を有する特定のイオンフラグメントのピークの下に含まれる部分の積分により定量した。
【0080】
数人の患者の尿について行われた分析は、本発明で記載された化合物が尿中で検出される場合の頻度が、62人の健常者と比較したとき、精神障害および/または精神運動障害を患う非自閉症患者では、統計的に異なっていることを示す。
用いられる内部標準は、o−ヒドロキシフェニル酢酸であり、その定量はイオンフラグメント296、281、252および164に基づいている。結果を図5に報告する。
【実施例3】
【0081】
自閉症患者でのバニリルグリシン(VG)の頻度および量
用いられる手順は、実施例1のそれと同じである。バニリルグリシンのそれらと同じ特徴(保持時間およびマススペクトル)を有する重要なピークを確認し得た。このピークを、369、354および223のm/z比を有する特定のイオンフラグメントのピークの下に含まれる部分の積分により定量した。結果を図6に報告する。
【実施例4】
【0082】
自閉症患者でのバニリン酸(VA)の頻度および量
用いられる手順は実施例1のそれと同じである。バニリン酸(VA)のそれらと同じ特徴(保持時間およびマススペクトル)を有する重要なピークを確認し得た。このピークを、312、297および267のm/z比を有する特定のイオンフラグメントのピークの下に含まれる部分の積分により定量した。結果を図7に報告する。
【実施例5】
【0083】
自閉症患者でのバニリルプロピオン酸(VPA)の頻度および量
用いられる手順は実施例1のそれと同じである。バニリルプロピオン酸(VPA)のそれらと同じ特徴(保持時間およびマススペクトル)を有する重要なピークを確認し得た。このピークを340、310および325のm/z比を有する特定のイオンフラグメントのピークの下に含まれる部分の積分により定量した。結果を図8に報告する。
【実施例6】
【0084】
自閉症患者および腸のディスバイオシスを患う非自閉症患者でのジヒドロキシフェニルプロピオン酸の頻度および量
用いられる手順は実施例1のそれと同じであり、18人のディスバイオシスを患う患者、27人の自閉症患者および27人の健常者を含む。ジヒドロキシフェニルプロピオン酸のそれらと同じ特徴(保持時間およびマススペクトル)を有する重要なピークを確認し得た。このピークを、398、267および179のm/z比を有する特定のイオンフラグメントのピークの下に含まれる部分の積分により定量した。
【0085】
図9の結果は、ジヒドロキシフェニルプロピオン酸が、精神障害を伴わないディスバイオシスを診断し得ることを示している。言い換えれば、それは、精神障害の診断にとって特定の生物学的標識になるとは思われない。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】質量分析器(GC/MS)を取り付けたガスクロマトグラフィにより得られた、健常対照者の尿サンプルの分析後のクロマトグラムを示す。
【図2】質量分析器(GC/MS)を取り付けたガスクロマトグラフィにより得られた、自閉症の子供の尿サンプルの分析後のクロマトグラムを示す。
【図3】質量分析器(GC/MS)を取り付けたガスクロマトグラフィにより得られたクロマトグラムを示す。
【0087】
【図4】それぞれ27人の健常対照者(A)と27人の自閉症患者(B)との間の、3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル−3−ヒドロキシ−プロピオン酸のTMS誘導体の量に関する、比較棒グラフを示す。
【図5】62人の健常対照者(A)と、深刻な発達遅延により特徴付けられるが自閉症でない精神障害を患う45人の患者(B)との間の、3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル−3−ヒドロキシ−プロピオン酸のTMS誘導体の量に関する比較棒グラフを示す。
【0088】
【図6】それぞれ27人の健常対照者(A)と27人の自閉症患者(B)との間の、バニリルグリシン(VG)のTMS誘導体の量に関する棒グラフを示す。
【図7】それぞれ38人の対照者(A)および40人の自閉症患者(B)についてのバニリン酸(VA)のTMS誘導体の量に関する棒グラフを示す。
【0089】
【図8】それぞれ38人の対照者(A)および40人の自閉症患者(B)についての、バニリルプロピオン酸(VPA)のTMS誘導体の量に関する棒グラフを示す。図9:
【図9】27人の健常対照者(A)、27人の自閉症患者(B)および18人の腸のディスバイオシスを患う非自閉症患者(C)の間での、ジヒドロキシフェニルプロピオン酸のTMS誘導体の量に関する比較棒グラフを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
精神障害および/または腸のディスバイオシスのための、インビトロまたはエクスビボ診断方法を実施するための生物学的標識としての、次の式(I)の少なくとも一つの化合物の使用:
【化1】

(式中、
nは0または1であり、
Raは−CH2OH、−COOH、−NR12を表し、ここでR1およびR2は独立して水素原子またはC1〜C3のアルキル基を表し、
RbはC1〜C3のアルキル基、好ましくはメチル基を表し、
Zは−CH2−Y−を表し、ここでYはOH基で置換されていてもよいC1〜C2の炭化水素鎖を表し、該鎖は−NH−および/または−CO−基を含んでいてもよく、
前記の化合物は塩の形態であってもよく、少なくとも一つの不斉炭素原子が存在するときには単離された異性体の形態もしくはラセミ混合物としての形態であってもよく、
前記の化合物は、バニリル乳酸、バニリルピルビン酸および3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニルグリコールとは異なっている)。
【請求項2】
精神障害および/または腸のディスバイオシスのためのインビトロまたはエクスビボ診断方法を実施するための生物学的標識としての、次の式(I')の少なくとも一つの化合物の請求項1に記載の使用:
【化2】

(式中、
nは0または1であり、
Raは−CH2OH、−COOH、−NR12を表し、ここでR1およびR2は独立して水素原子またはC1〜C3のアルキル基を表し、
RbはC1〜C3のアルキル基、好ましくはメチル基を表し、
Zは−CH2−Y−を表し、ここでYはOH基で置換されていてもよいC1〜C2の炭化水素鎖を表し、該鎖は−NH−および/または−CO−基を含んでいてもよく、
前記の化合物は塩の形態であってもよく、少なくとも一つの不斉炭素原子が存在するときには、単離された異性体の形態もしくはラセミ混合物としての形態であってもよく、
前記の化合物はバニリル乳酸、バニリルピルビン酸および3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニルグリコールとは異なっている)。
【請求項3】
次の式(I)の少なくとも一つの化合物の、請求項1または2に記載の使用:
【化3】

(式中、
nは0または1であり、
Raは−COOHを表し、
RbはC1〜C3のアルキル基、好ましくはメチル基を表し、
Zは−CH2−Y−を表し、ここでYは、OH基で置換されていてもよいC1〜C2の炭化水素鎖を表し、該鎖は−NH−および/または−CO−基を含んでいてもよく、
前記の化合物は塩の形態であってもよく、少なくとも一つの不斉炭素原子が存在するときには、単離された異性体の形態もしくはラセミ混合物としての形態であってもよく、
前記の化合物はバニリル乳酸およびバニリルピルビン酸とは異なっている)。
【請求項4】
次の式(II)の少なくとも一つの化合物の請求項1〜3に記載の使用:
【化4】

(式中、n、RaおよびZは請求項1〜3で定義されたとおりである)。
【請求項5】
式(I)または(II)の少なくとも一つの化合物の、請求項1〜4のいずれかに記載の使用:
(式中、
nは0または1であり、
Raは−COOHを表し、
Zは−CH2−CHOH−、−CH2−CH2−、−CO−NH−CH2−を表し、
前記の化合物はバニリル乳酸とは異なっている)。
【請求項6】
式(I)または(II)のいずれかの化合物の、請求項1〜5のいずれかに記載の使用:
(式中、
nは1であり、
Raは−COOHを表し、
Rbは−CH3を表し、
Zは−CH2−CHOH−を表し、
前記の化合物はバニリル乳酸とは異なっている)。
【請求項7】
式(II)の化合物が次の化合物の一つから選択されることを特徴とする、請求項4に記載の使用。
【化5】

【請求項8】
前記の化合物が次の式に相当することを特徴とする、請求項4に記載の使用。
【化6】

【請求項9】
前記の化合物が次の式に相当することを特徴とする、請求項4に記載の使用。
【化7】

【請求項10】
精神障害が、自閉症、発達遅延、アルツハイマー病およびパーキンソン病のような神経変性疾患を含む群に属することを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の使用。
【請求項11】
前記の精神障害が自閉症であることを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の使用。
【請求項12】
腸のディスバイオシスに関連するとき、前記の精神障害が自閉症であることを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載の使用。
【請求項13】
患者から得られる生物学的サンプル中に存在する、請求項1〜9のいずれかで定義される少なくとも一つの化合物の量の変動を、健常者から得られる生物学的サンプル中に存在するこれ(これら)と同じ化合物の量との関連において測定する段階を含むことを特徴とする、精神障害および/または腸のディスバイオシスのインビトロまたはエクスビボ診断方法。
【請求項14】
患者から得られる生物学的サンプル中に存在する、請求項1〜9のいずれかで定義される少なくとも一つの化合物の量の増加を、健常者から得られる生物学的サンプル中に存在するこれ(これら)と同じ化合物の量と関連させて、適当な方法により判定することが、自閉症および/または腸のディスバイオシスの診断に相当することを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
患者から得られる生物学的サンプル中に存在する、請求項1〜9のいずれかで定義される少なくとも一つの化合物の量、および健常者から得られる生物学的サンプル中に存在するこれ(これら)と同じ化合物の量が、クロマトグラフィにより、分光光度法により、免疫学的方法により、特にELISA分析法または免疫比濁測定法により、好ましくは質量分析器(GC/MS)と組み合わさったガスクロマトグラフィにより測定されることを特徴とする、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
患者から得られる生物学的サンプル中に存在する、式:
【化8】

の前記化合物の量が、健常者から得られる生物学的サンプル中に存在する同じ化合物の量との関連で、増加しているとする判定が、自閉症および/または腸のディスバイオシスの診断に相当することを特徴とする、請求項13〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
生物学的サンプルが、尿、血液、唾液、脳脊髄液または大便から選択されることを特徴とする、請求項13〜16のいずれかに記載のインビトロまたはエクスビボ診断方法。
【請求項18】
患者から得られる尿サンプル中に存在する、請求項1〜9の一つで定義される少なくとも一つの化合物の量、特に化合物3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル−3−ヒドロキシ−プロピオン酸の量が、クレアチニン1mg当たり20μg以上、特にクレアチニン1mg当たり20〜180μgであることを特徴とする、請求項13〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
次のものを含む、精神障害および/または腸のディスバイオシスのための診断キット:
− 生物学的サンプルにおいて、請求項1〜9のいずれかで定義される少なくとも一つの化合物の存在を検出し得る、一つ以上の試薬、特に請求項1〜9のいずれかで定義される少なくとも一つの化合物に対する抗体、
− 場合によっては、精神障害および/または腸のディスバイオシスについて陽性診断を示す所定量の、少なくとも一つの前記化合物を含む対照サンプル、
− 場合によっては、精神障害および/または腸のディスバイオシスについて陰性診断を示す所定量の、少なくとも一つの前記化合物を含む対照サンプル。
【請求項20】
請求項1〜9のいずれかで定義される少なくとも一つの化合物に対する、特に3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル−3−ヒドロキシ−プロピオン酸に対する単クローン性または多クローン性の抗体。
【請求項21】
請求項20で定義される単クローン性抗体を産生し得るハイブリドーマ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2009−533665(P2009−533665A)
【公表日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−504783(P2009−504783)
【出願日】平成19年4月13日(2007.4.13)
【国際出願番号】PCT/FR2007/000626
【国際公開番号】WO2007/119004
【国際公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(508307997)
【氏名又は名称原語表記】AURE
【住所又は居所原語表記】24−30,rue du Linnois,F−54000 Nancy,FRANCE
【Fターム(参考)】