説明

精神障害を治療するための2,2,3,3,テトラメチルシクロプロパンカルボン酸誘導体の使用

本発明は、精神障害、好ましくは双極性障害を治療する薬剤を調製するための、2,2,3,3テトラメチルシクロプロパンカルボン酸誘導体化合物の使用に関する。本発明はさらに、MIPシンターゼの阻害剤を調製するための化合物の使用、および精神障害を治療するための化合物を含む薬剤組成物に関する。精神障害、好ましくは双極性障害を治療する方法、およびMIPシンターゼ活性を有する酵素を阻害する方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精神障害、およびより詳細には双極性障害の治療に関する。
【0002】
(背景技術)
双極性障害
双極性障害、すなわち躁うつ病は、生涯有病率1〜2%である一般的な疾患である(Weissman,M.M.,Leaf,P.J.,Tischler,G.L.,Blazer,D.G.,Karno,M.,Bruce,M.L.,Florio,L.P.,1988.Affective disorders in five United States communities.Psychol Med 18:141〜53)。中間に全快を伴う一時的な経過は、この障害の重大な影響と矛盾する。躁病およびうつ病の発作の再発による度重なる影響は、結婚および家庭の崩壊、失業、出世の妨げ、および結果として生じる財政困難をもたらす。双極性患者の約15%が自殺し、身体疾患による死亡率も上昇する(Angst J,Clayton P.Premorbid personality of depressive,bipolar,and schizophrenic patients with special reference to suicidal issues.Compr Psychiatry 1986;27:511〜32;Dilsaver SC,Change in the meaning of diagnostic concepts in psychiatry,J Clin Psychiatry 1987;9:152〜162)。リチウムを使用することにより、関連医療費を削減し、生産性を回復することによって、1969〜1979年の間に米国で40億ドルの出費が減じたという1つの推計が、より広範な社会への影響を浮き彫りにしている(Reifman,A、Wyatt RJ.Lithium:a brake in the rising cost of mental illness,Arch Gen Psychiatry 1980;37:385〜388)。
【0003】
精神安定剤としてのリチウムの有効性の発見は、双極性障害を有する患者の治療に革命をもたらした。50年が経過しても、リチウムは依然として、急性躁病相のため、ならびに再発性躁病およびうつ病エピソードを予防するための治療の柱となっている(Goodwin FK,Jamison KR.Manic−depressive illness New York:Oxford University Press,1990)。しかしながら、精神医学でもっとも重要な治療法の1つとして役割を果たしているにもかかわらず、リチウムの精神安定作用の生化学的基礎は、充分に解明されないままである(Manji HK,Lenox RH.Lithium:a molecular transducer of mood−stabilization in the treatment of bipolar disorder.Neuropsychopharmacology 1998;3:161〜166)。さらに、著しい数の患者がリチウムにほとんど反応しないことを示す証拠が増加しており、患者の20〜40%は、リチウムに充分な抗躁反応を示さず、その他多くはリチウムに助けられているものの、依然として著しい罹患率である(Kramlinger KG,Post RM、The addition of lithium to carbamazepine.Antidepressant efficacy in treatment−resistant depression.Arch Gen Psychiatry 1989;46:794〜800;Chou JC.Recent advances in treatment of acute mania.J Clin Psychopharmacol 1991;11:3〜21)。より最近では、分枝鎖脂肪酸のバルプロ酸(VPA)が、双極性障害の治療に用いられている(Bowden CL,Brugger AM,Swann AC,Calabrese JR,Janicak PG,Petty F.,Dilsaver SC,Davis JM,Rush AJ,Small JG,et al.Efficacy of divalproex vs lithium and placebo in the treatment of mania.The Depakote Mania Study Group.JAMA 1994;271:918〜924)。リチウムと同様に、これも完全に有効ではない。リチウムおよびバルプロ酸塩には多数の生化学的効果および細胞効果があるものの、作用の治療的機序との関連性は解明されていないが、しかしながら、イノシトール代謝の役割については相当な支持が得られている。
【0004】
イノシトール生合成
イノシトール(I)は、2つのステップでデノボ合成される。第1ステップ、グルコース6−リン酸(グルコース6−P)のイノシトール−1−リン酸(I−1−P)への変換は、myo−イノシトール−1−リン酸(MIP)シンターゼによって触媒される。経路の第2ステップは、myo−イノシトールモノホスファターゼ(IMPase)による、I−1−Pのイノシトールへの変換である。このステップは、デノボ合成経路によるイノシトールの生成、およびホスファチジルイノシトール(PI)サイクルでの再生利用に共通である。
【0005】
リチウムおよびバルプロ酸塩(VPA)の効果
イノシトールが双極性障害において重要な役割を果たす可能性があることを示す証拠が増加している。
【0006】
生化学研究は、リチウムがIMPaseを非競合的に阻害することを示した(Hallcher LM,Sherman WR.The effects of lithium ion and other agents on the activity of myo−inositol−1−phosphatase from bovine brain.J Biol Chem 1980;255:10896〜10901;Atack JR,Broughton HB,Pollack SJ.Structure and mechanism of inositol monophosphatase.FEBS Lett 1995;361:1〜7)。観察されたリチウムによる非競合的阻害、それにより生じるイノシトールレベルの低下、イノシトールリン酸の増加、およびそれに続くホスホイノシチドサイクルのダウンレギュレーションに基づいて、HallcherおよびSherman(Hallcher LM,Sherman WR.The effects of lithium ion and other agents on the activity of myo−inositol−1−phosphatase from bovine brain.J Biol Chem 1980;255:10896〜10901)、ならびにBerridge(Berridge M.Phosphoinositides and signal transduction.Rev Clin Basic Pharm 1985;5 Suppl:5〜13)は、リチウムが脳のイノシトールの枯渇によって作用し、患者において過度に刺激されたPIサイクルを抑制するというイノシトール枯渇仮説を提唱した。この仮説は、慢性のリチウム投与により、ラットの脳でアゴニスト刺激ホスホイノシチド加水分解が減少するという証拠によって支持される(Kendall DA,Nahorski SR.Acute and chronic lithium treatments influence agonist and depolarization−stimulated inositol phospholipid hydrolysis in rat cerebral cortex.J Pharmacol Exp Ther 1987;241:1023〜7;Casebolt, T.L.,Jope R.S.Long−term lithium treatment selectively reduces receptor−coupled inositol phospholipid hydrolysis in rat brain.Biol Psychiatry 1989;25:329〜40;Godfrey PP,McClue SJ,White AM,Wood A.J.,Grahame−Smith DG.Subacute and chronic in vivo lithium treatment inhibits agonist− and sodium fluoride−stimulated inositol phosphate production in rat cortex.J Neurochem 1989;52:498〜506)。リチウムと同様に、VPAも酵母(Vaden DL,Ding D,Peterson B,Greenberg ML.Lithium and valproate decrease inositol mass and increase expression of the yeast INO1 and INO2 genes for inositol biosynthesis.J Biol Chem 2001;276(18):15466〜71)、タマホコリカビ(Dictyostelium)(Williams RS,Cheng L,Mudge AW,Harwood AJ.A common mechanism of action for three mood−stabilizing drugs.Nature 2002;417(6886):292〜5)、および哺乳動物(Williams RS,Cheng L,Mudge AW,Harwood AJ.A common mechanism of action for three mood−stabilizing drugs.Nature 2002;417(6886):292〜5;O’Donnell T,Rotzinger S,Nakashima TT,Hanstock CC,Ulrich M,Silverstone PH.Chronic lithium and sodium valproate both decrease the concentration of myo−inositol and increase the concentration of inositol monophosphates in rat brain.Brain Res 2000;880(1〜2):84〜91)においてイノシトール枯渇を引き起こすことが近年報告された。さらに、リチウム、VPA、およびカルバマゼピンは、すべて新生ラット後根神経節(DRG)細胞の成長円錐の伸長を増大することも最近見出された。これらの効果は、myo−イノシトールの添加によって逆転し、これはイノシトール枯渇機序の考えを支持する(Williams RS,Cheng L,Mudge AW,Harwood AJ.A common mechanism of action for three mood−stabilizing drugs,Nature 2002;417(6886):292〜5)。
【0007】
双極性障害を治療する新規な薬剤を発見するために、様々な試みがなされた。
【0008】
米国特許第6,555,585号は、VPAおよび2−バルプロエン酸の誘導体を用いて、双極性障害の躁病を治療する方法を開示している。これらの化合物の抗躁病効果は、アンフェタミン誘発性の活動過多モデルを用いて評価された。このモデルは、躁病患者の活動過多に対する、誘発された動物の活動レベルの増大に焦点を当てる。ある薬剤を用いた前処置により、齧歯動物において誘発性の活動過多が逆転した場合、ヒト躁病の治療において、その薬剤が有効である可能性を示唆する。米国特許第6,555,585号に開示されている化合物は、主として双極性疾患の躁病の治療に有効であることが認められているので不都合である。
【0009】
さらに、これも双極性障害(躁病とうつ病の両方)の治療に有用である広域スペクトラム抗てんかん薬、VPAの使用は、肝毒性および奇形遺伝性があり、したがって妊娠可能年齢の女性および子供に投与できないことを含む、相当な副作用のため制限されている(Baille,T.A.et al.In Antiepileptic Drugs,eds.R.H.Levy et al.Raven Press,New York.pp.641〜651(1989))。
【0010】
したがって、上記の制限のない、双極性障害(躁病とうつ病の両方)を治療するための新規な薬剤の必要性が広く認識されており、それらの薬剤を有することは非常に有利であろう。
【0011】
米国特許第5,880,157号は、てんかんを治療するための、2,2,3,3テトラメチルシクロプロパンカルボン酸の誘導体を開示している。Isoherranen N.等、2002は、ヒトてんかんの種々の動物(齧歯動物)モデルにおいて、N−メチルテトラメチルシクロプロピルカルボキサミド(M−TMCD)およびその代謝産物の抗けいれん作用を研究し、神経管欠損(NTD)を誘発する能力および神経毒性を評価した(Isoherranen N.et al.Anticonvulsant profile and teratogenicity of N−methyl−tetramethylcyclopropyl carboxamide;A new antiepileptic drug.Epilepsia 2002;43:115〜126)。M−TMCD(VPAのシクロプロピル類似体)は、抗けいれん薬としてより強力であり、安全限界が広く、奇形遺伝性がなく、肝毒性を潜在的に欠くため、VPAに比べて有利であることがわかっている。
【0012】
(本発明の概要)
本発明は、精神障害を治療する薬剤を調製するための、式Iの化合物の使用に関する。
【化1】

【0013】
(式中、RおよびRは、同一であるか異なっており、独立して、水素およびC〜Cアルキル基から独立に選択される)
本発明の好ましい実施形態によれば、RまたはRの一方は、C〜Cアルキル基であり、他方は、水素である。
【0014】
さらに、本発明の好ましい実施形態によれば、C〜Cアルキル基は、直鎖または分枝鎖アルキル基である。
【0015】
さらに、本発明の好ましい実施形態によれば、C〜Cアルキル基は、メチル基である。
【0016】
さらに、本発明の好ましい実施形態によれば、精神障害は、双極性障害である。
【0017】
さらに、本発明の好ましい実施形態によれば、化合物は、式Iの化合物と薬剤として許容される担体を含む薬剤組成物として投与される。
【0018】
さらに、本発明の好ましい実施形態によれば、化合物の投与経路は、経口、非経口、局所、経皮、直腸、および口腔投与からなる群から選択される。
【0019】
さらに、本発明の好ましい実施形態によれば、化合物の投与経路は、経口および非経口投与からなる群から選択される。
【0020】
さらに、本発明の好ましい実施形態によれば、非経口投与経路は、静脈内、筋肉内、腹腔内、および皮下投与からなる群から選択される。
【0021】
さらに、本発明の好ましい実施形態によれば、化合物は、1日当たり約1mgから約1000mgの範囲で投与される。
【0022】
さらに、本発明の好ましい実施形態によれば、化合物は、1日当たり約20mgから約500mgの範囲で投与される。
【0023】
本発明はまた、哺乳動物において精神障害を治療する方法であって、その哺乳動物に治療上有効量の式Iの化合物を投与するステップを含む方法に関する。
【化2】

【0024】
(式中、RおよびRは、同一であるか異なっており、水素およびC〜Cアルキル基から独立に選択される)
本発明の好ましい実施形態によれば、RまたはRの一方は、C〜Cアルキル基であり、他方は、水素である。
【0025】
さらに、本発明の好ましい実施形態によれば、C〜Cアルキル基は、直鎖または分枝鎖アルキル基である。
【0026】
さらに、本発明の好ましい実施形態によれば、C〜Cアルキル基は、メチル基である。
【0027】
さらに、本発明の好ましい実施形態によれば、精神障害は、双極性障害である。
【0028】
さらに、本発明の好ましい実施形態によれば、哺乳動物は、ヒトである。
【0029】
さらに、本発明の好ましい実施形態によれば、式Iの化合物は、式Iの化合物と薬剤として許容される担体を含む薬剤組成物として投与される。
【0030】
さらに、本発明の好ましい実施形態によれば、投与経路は、経口、非経口、局所、経皮、直腸、および口腔投与からなる群から選択される。
【0031】
さらに、本発明の好ましい実施形態によれば、投与経路は、経口および非経口投与からなる群から選択される。
【0032】
さらに、本発明の好ましい実施形態によれば、非経口投与経路は、静脈内、筋肉内、腹腔内、および皮下投与からなる群から選択される。
【0033】
さらに、本発明の好ましい実施形態によれば、治療上有効量は、1日当たり約1mgから約1000mgの範囲である。
【0034】
さらに、本発明の好ましい実施形態によれば、治療上有効量は、1日当たり約20mgから約500mgの範囲である。
【0035】
本発明はさらに、薬剤として許容される担体、および有効成分として治療上有効量の式Iの化合物を含む、精神障害を治療するための薬剤組成物に関する。
【化3】

【0036】
(式中、RおよびRは、同一であるか異なっており、水素およびC〜Cアルキル基から独立に選択される)
本発明はさらに、MIPシンターゼの阻害剤を調製するための、式Iの化合物の使用に関し、
【化4】

【0037】
(式中、RおよびRは、同一であるか異なっており、水素およびC〜Cアルキル基から独立に選択される)
本発明はさらに、MIPシンターゼ活性を有する酵素を阻害する方法であって、酵素を有効量の式Iの化合物と接触させるステップを含む方法に関する。
【化5】

【0038】
(式中、RおよびRは、同一であるか異なっており、水素およびC〜Cアルキル基から独立に選択される)
(定義)
本明細書では、M−TMCDという用語は、等しくN−メチル−2,2,3,3−テトラメチルシクロプロパンカルボキサミド、N−メチル−テトラメチルシクロプロパンカルボキサミド、およびN−メチル−テトラメチルシクロプロピルカルボキサミドを指す。
【0039】
本発明のより完全な理解、および利点の多くは、添付の図面と併せて考慮されるとき、以下の詳細な説明を参照することによって明らかとなるであろう。
【0040】
(本発明の詳細な説明)
本発明は、精神障害、好ましくは双極性障害を治療するための、2,2,3,3−テトラメチルシクロプロパンカルボン酸誘導体化合物(式Iの化合物)の使用を開示する。
【0041】
本発明は、精神障害を治療する薬剤を調製するための、式Iの化合物の使用を提供し、
【化6】

【0042】
式中、RおよびRは、同一であるか異なっており、独立して、水素およびC〜Cアルキル基から選択される。
【0043】
本明細書では、「治療する」という用語は、予防的および/または治療的使用を含み、疾患または障害の進行を無効にする、予防する、緩和する、遅延する、または逆転する、あるいは疾患または障害の臨床症状の発現を実質的に予防することを指す。
【0044】
本明細書では、「治療上有効量」という用語は、治療するという用語に関して定義した効果の少なくとも1つをも引き起こすのに充分な化合物の量を指す。
【0045】
本発明はさらに、哺乳動物において精神障害を治療する方法であって、その哺乳動物に治療上有効量の式Iの化合物を投与することを含む方法を提供し、
【化7】

【0046】
(式中、RおよびRは、同一であるか異なっており、水素およびC〜Cアルキル基から独立に選択される)
好ましくは、RまたはRの一方は、C〜Cアルキル基であり、他方は、水素である。
【0047】
本発明の好ましい実施形態によれば、式Iの化合物は、構造式IIの化合物である。
【化8】

【0048】
(式中、Rは、C〜Cアルキル基および水素から独立に選択される)
構造式IまたはIIの化合物において、
好ましくは、C〜Cアルキル基は、C〜Cアルキル基であり、もっとも好ましくは、C〜Cアルキル基は、メチル基である。
【0049】
もっとも好ましい化合物は、N−メチル−2,2,3,3−テトラメチルシクロプロパンカルボキサミド(M−TMCD)である。(式Iにおいてもっとも好ましくは、RまたはRの一方は、メチル基であり、他方は、水素であり、式IIにおいてもっとも好ましくは、Rは、メチル基である)。C〜Cアルキル基は、直鎖または分枝鎖アルキル基であってもよい。C〜Cアルキル基は、直鎖または分枝鎖アルキル基であってもよい。
【0050】
本明細書に数値の範囲、たとえば「1〜6」が記載されているとき、この場合の基、アルキル基が、炭素原子1個、炭素原子2個、炭素原子3個など、6個までの炭素原子を含有できることを意味する。
【0051】
好ましくは、精神障害は、双極性障害である。本発明の化合物は、精神安定剤の平行作用を有し、したがって双極性障害の躁病およびうつ病相の両方の治療に有用であることが期待される。
【0052】
哺乳動物は、ヒトであってもよい。
【0053】
好ましくは、式Iの化合物は、式Iの化合物、および薬剤として許容される担体を含む薬剤組成物として投与される。
【0054】
本明細書では、「薬剤として許容される担体」という用語は、対象(哺乳動物)に著しい刺激を与えず、投与される化合物(有効成分)の生物活性および特性を無効にしない不活性非毒性担体または希釈剤を指す。
【0055】
本明細書では、「薬剤として許容される担体」という用語は、ラクトース、塩化ナトリウム、グルコース、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、セルロース、セルロースの低級アルキルエーテル、ステアリン酸、ケイ酸アルミニウム、ポリエチレングリコール、カカオ脂、高級アルコール、高級アルコールのエステル、ゼラチン、半合成グリセリド、水、アルコール、油、脂肪酸、液体製剤、エマルション製剤、および懸濁液製剤などの、標準的な薬剤として許容されている任意の担体を包含する。
【0056】
「薬剤として許容される担体」は、ポリマーまたはロウなどの、当分野で知られている任意の持続放出材料を含むことができる。
【0057】
結合剤、崩壊剤、吸着剤、潤滑剤、湿潤剤、緩衝剤、等張剤、界面活性剤、懸濁化剤、およびポリマーなどの追加の賦形剤を、薬剤組成物に添加することができる。
【0058】
さらに、必要であれば、着色剤、保存剤、香味剤、甘味剤、および他の成分を、薬剤組成物に添加することができる。
【0059】
薬剤として許容される担体は、固体、半固体、または液体材料であることができる。
【0060】
選択される薬剤として許容される担体は、組成物の最終形態によって決まる。
【0061】
薬剤組成物の最終形態は、たとえば液体、エマルション、懸濁液、溶液、シロップ、エリキシル、ドロップ、スプレー、クリーム、軟膏、ローション、ゲル、ペースト、吸入剤、粉末、顆粒、錠剤、カプレット、丸剤、カプセル、ロゼンジ、トローチ、坐剤、経皮パッチ、または注射剤であることができる。
【0062】
投与経路は、たとえば経口、非経口、局所、経皮、直腸、または口腔投与であることができる。
【0063】
好ましくは、投与経路は、経口、あるいは静脈内、筋肉内、腹腔内、または皮下投与などの非経口であり、もっとも好ましい投与経路は、経口である。
【0064】
たとえば錠剤またはカプセル剤の形態である、経口投与用の組成物が好ましい。
【0065】
典型的な固体担体が、ラクトース、デンプン、グルコース、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、第二リン酸カルシウム、マンニトールなどの不活性物質である錠剤およびカプセル剤などの経口で用いるための組成物は、結合剤(たとえばポリビニルピロリドン、またはヒドロキシプロピルメチルセルロース)、潤滑剤(たとえばステアリン酸マグネシウム、タルク、またはシリカ)、崩壊剤(たとえばデンプングリコール酸ナトリウム)、または湿潤剤(たとえばラウリル硫酸ナトリウム)などの薬剤として許容される賦形剤を用いて、通常の手段で調製することができる。錠剤は、当分野でよく知られている方法で被覆することができる。
【0066】
経口投与用の液体調剤は、たとえば溶液、シロップ、エリキシル、エマルション、または懸濁液の形態をとることができる。液体形態での経口投与の場合、式Iの化合物は、エタノール、グリセロール、水、またはそれらの混合物などの、経口の薬剤として許容される任意の担体と組み合わせることができる。
【0067】
さらに、そのような液体調剤は、懸濁化剤(たとえばセルロース誘導体、または水素添加食用脂)、乳化剤(たとえばレシチン、またはアカシア)、非水性ビヒクル(たとえば扁桃油、油性エステル、エチルアルコール、または精製植物油)、および保存剤(たとえばp−ヒドロキシ安息香酸メチルまたはp−ヒドロキシ安息香酸プロピル)などの薬剤として許容される添加剤を用いて、通常の手段で調製することができる。これらの調剤はさらに、必要に応じて緩衝塩、香味剤、着色剤、および甘味剤を含有することもできる。
【0068】
非経口投与の場合、組成物は、油性または水性ビヒクルの懸濁液、溶液、またはエマルションの形態であることができ、懸濁化剤、乳化剤、または分散剤などの薬剤として許容される添加剤を含有することができる。
【0069】
直腸投与用の本発明の薬剤組成物は、坐剤として提供することができ、これは1種または複数の本発明の化合物を、たとえばカカオ脂、ポリエチレングリコール、または半合成グリセリドを含む適切な担体と混合することによって調製することができる。
【0070】
局所または経皮投与用の剤形には、これに限定されるものではないが、スプレー、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、溶液、パッチ、および吸入剤が含まれる。経皮パッチは、身体に化合物の制御送達を提供するという別の利点を有する。経皮組成物は、化合物を適切な担体(液体、半固体、または固体担体)に溶解または分散することによって調製することができる。化合物の流動速度は、速度制御膜を提供するか、あるいはポリマーマトリクスまたはゲルに活性化合物を分散することによって制御できる。
【0071】
口腔投与用の本発明の薬剤組成物は、嚥下するのではなく口中に滞留し、その結果、口腔に有効成分を放出するように適応させる。口腔組成物は、錠剤、ロゼンジ、またはトローチの形態であることができる。もっとも一般的には、組成物をかむか舐めることによって、口中に有効成分が放出される。たとえばポリマー材料の円板形態の錠剤を用いることもでき、これは口腔壁に付着し、舐めることなく、化合物は徐々に放出される。
【0072】
口腔投与用の組成物は、スクロース、マンニトール、ソルビトール、アカシア、トラガカント、ゼラチン、グリセリン、ラクトース、炭酸カルシウム、またはリン酸マグネシウムなどの担体を含んでもよい。
【0073】
ロゼンジは通常、スクロース、およびアカシア、またはトラガカントなどの香味ベースに活性化合物を含む。トローチは、ゼラチン、およびグリセリン、またはスクロース、およびアカシアなどの不活性ベースに化合物を含んでもよい。
【0074】
メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、またはメタクリル酸およびアクリル酸のコポリマーなどの低溶解速度を有する接着剤を、口腔組成物の調製に用いてよい。追加の賦形剤を添加してもよく、たとえばポリビニルピロリドンなどの結合剤、サッカリンカルシウムなどの甘味剤、ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、マルトールまたはバニリンなどの香味剤である。
【0075】
本発明の薬剤組成物は、当分野の技術者によく知られている製薬方法で調製してもよい。一般にRemington’s Pharmaceutical Sciences,16th ed.,Mack Publishing Company,Easton,Pennsylvania(1980)を参照されたい。
【0076】
本発明の実施において、薬剤組成物に混入される化合物の量は、大きく異なる可能性がある。正確な量を決定するときに考慮される要因は、当分野の技術者によく知られている。そのような要因の例には、これに限定されるものではないが、治療される対象の年齢、性別、および体重、疾患の重症度、投与形態、用いられる投与経路、ならびに組成物が投与される頻度が含まれる。
【0077】
好ましくは、化合物の治療上有効量は、1日当たり約1mgから約1000mgの範囲であり(好ましくは経口投与)、もっとも好ましくは、治療上有効量は、1日当たり約20mgから約500mgの範囲である。
【0078】
経口投与の場合、化合物の治療上有効量は、非経口投与より数倍多くてもよい。
【0079】
日用量は、単回投与、または24時間かけて複数回投与してもよい。
【0080】
式Iの化合物は、他の抗精神薬と組み合わせることができる。
【0081】
本発明はさらに、薬剤として許容される担体、および有効成分として、本発明に記載の治療上有効量の式Iの化合物を含む、精神障害(好ましくは、双極性障害)を治療するための薬剤組成物を提供する。
【0082】
本明細書では、「MIPシンターゼ活性を有する酵素を阻害する」または「MIPシンターゼの阻害剤」という用語は、酵素活性に対する化合物の効果を説明するために用いることができる。したがって、酵素活性の分析に適用される「阻害する」という用語は、完全に阻害から部分的に阻害の効果の範囲を包含する。「阻害する」という用語は、in vitro系、ならびにin vivo系の両方に適用できる。
【0083】
阻害を判定する検定の例を、実施例2に提供する。
【0084】
本発明はさらに、MIPシンターゼの阻害剤を調製するための、式Iの化合物の使用を提供する。
【化9】

【0085】
(式中、RおよびRは、同一であるか異なっており、水素およびC〜Cアルキル基から独立に選択される)
好ましくは、RまたはRの一方は、C〜Cアルキル基であり、他方は、水素である。
【0086】
好ましくは、C〜Cアルキル基は、C〜Cアルキル基であり、もっとも好ましくは、C〜Cアルキル基は、メチル基である。
【0087】
〜Cアルキル基は、直鎖または分枝鎖アルキル基であってよい。
【0088】
〜Cアルキル基は、直鎖または分枝鎖アルキル基であってよい。
【0089】
もっとも好ましい化合物は、N−メチル−2,2,3,3−テトラメチルシクロプロパンカルボキサミド(M−TMCD)である。
【0090】
好ましくは、式Iの化合物は、上に定義した構造式IIの化合物であり、式中、Rは、独立して、C〜Cアルキル基および水素から選択される。
【0091】
好ましくは、MIPシンターゼは、哺乳動物MIPシンターゼである。
【0092】
好ましくは、MIPシンターゼは、哺乳動物脳MIPシンターゼである。
【0093】
好ましくは、哺乳動物MIPシンターゼは、ヒトMIPシンターゼである。
【0094】
好ましくは、哺乳動物脳MIPシンターゼは、ヒト脳MIPシンターゼである。
【0095】
本明細書では、「有効量」という用語は、コントロールと比べて、統計的に有意にMIPシンターゼを阻害する量を指す。
【0096】
本発明はまた、MIPシンターゼ活性を有する酵素を阻害する方法であって、酵素を有効量の式Iの化合物と接触させることを含む方法を提供する。
【化10】

【0097】
(式中、RおよびRは、同一であるか異なっており、水素およびC〜Cアルキル基から独立に選択される)
好ましくは、RまたはRの一方は、C〜Cアルキル基であり、他方は、水素である。
【0098】
好ましくは、C〜Cアルキル基は、C〜Cアルキル基であり、もっとも好ましくは、C〜Cアルキル基は、メチル基である。
【0099】
〜Cアルキル基は、直鎖または分枝鎖アルキル基であってもよい。
【0100】
〜Cアルキル基は、直鎖または分枝鎖アルキル基であってもよい。
【0101】
もっとも好ましい化合物は、N−メチル−2,2,3,3−テトラメチルシクロプロパンカルボキサミド(M−TMCD)である。
【0102】
好ましくは、式Iの化合物は、上に定義した構造式IIの化合物であり、式中、Rは、独立して、C〜Cアルキル基および水素から選択される。
【0103】
好ましくは、MIPシンターゼは、哺乳動物MIPシンターゼである。
【0104】
好ましくは、MIPシンターゼは、哺乳動物脳MIPシンターゼである。
【0105】
好ましくは、哺乳動物MIPシンターゼは、ヒトMIPシンターゼである。
【0106】
好ましくは、哺乳動物脳MIPシンターゼは、ヒト脳MIPシンターゼである。
【0107】
好ましくは、MIPシンターゼは、哺乳動物の体内に存在し、有効量は、治療上有効量である。
【0108】
本出願人等は、ヒト脳MIPシンターゼが、in−vitroで治療上適切なVPA濃度によって特に阻害され、in−vivoではマウスへのVPA投与が、脳のイノシトールレベルを低減することをここに見出した。
【0109】
本発明において、驚いたことに、N−メチル−2,2,3,3−テトラメチルシクロプロパンカルボキサミド(M−TMCD)は、MIPシンターゼ活性を93%阻害し、一方、バルプロ酸のアミドであるバルプロミド(VPD)はわずか34%であることが見出された。DRG成長円錐に対するM−TMCDおよびVPDの効果もこれと一致する。VPDは、成長円錐の伸長の増大を示さなかったが、M−TMCDは、VPAと同様の効果を有した。
【0110】
M−TMCDは、効力が高く、以前の研究で安全限界が広く、奇形遺伝性がないことが示されているため、双極性障害の治療に非常に有利である(米国特許第5,880,157号;Isoherranen N.et al.Anticonvulsant profile and teratogenicity of N−methyl−tetramethylcyclopropyl carboxamide;A new antiepileptic drug.Epilepsia 2002;43:115〜126)。M−TMCDはさらに、肝毒性を潜在的に欠くため有利である。したがって、M−TMCDは、妊娠可能年齢の女性および子供に投与することができる。
【0111】
以下の実験の詳細は、本発明の理解を助けるために示すものであり、添付の請求の範囲に示す本発明を多少なりとも限定するものではなく、限定するものであると解釈されるべきではない。
【0112】
(実施例)
化合物の合成
本発明の式Iの化合物は、Sterling他(米国特許第5,880,157号)に記載の方法および手順、あるいは当分野の技術者に明らかであろうそれらの変法に従って調製することができる。
【0113】
M−TMCDを、その開示の全体を参照により本明細書の一部とする、Sterling他(米国特許第5,880,157号)に開示されている方法に従って調製した。
【0114】
実験例
この研究で、本出願人等は、ヒト脳MIPシンターゼが、in−vitroで治療上適切なVPA濃度によって特に阻害され、in−vivoではマウスへのVPA投与が、脳のイノシトールレベルを低減するという仮説を試験した。
【0115】
M−TMCDの考えられる抗双極効果(精神安定効果)の評価を、本研究において調査した。ヒト脳MIPシンターゼ活性に対するM−TMCDの効果を研究し、VPAおよびVPDと比較した。
【0116】
このMIPシンターゼモデルは、双極性障害の調査、および抗双極薬の開発に許容される(Agam G,Shamir A,Shaltiel G,Greenberg ML.Myo−inositol−1−phosphate(MIP)synthase:a possible new target for antibipolar drugs.Bipolar Disorder.2002;4 Suppl 1:15〜20)。
【0117】
実施例1
実験のプロトコル
動物
この研究は、Ben−Gurion University(Beer Sheva、Israel)の動物の使用に関する施設内審査委員会(Institutional Review Committee for the Use of Animals)によって承認されたものであり、国立医療研究所の動物実験指針(Council NR, editor.,Guide for the care and use of laboratory animals.Washington D.C.:National Academy Press;1996)の発表に従って手順を実行した。急性VPA投与では、雄のICR(Harlan)マウス(20〜25g)を、5つのグループに分けた(各グループn=13)。2つのグループは、単回用量の食塩水を腹腔内(IP)に注射し、3つのグループは、異なる用量のVPAを単回注射した(300、600、800mg/kg)。9日または28日間、1日に2回、IPによる400mg/kg/日のVPAにより、血中VPAレベルは、治療上適切な血漿レベルに近い0.27±0.02mMとなった(Chen G,Zeng WZ,Yuan PX,Huang LD,Jiang YM,Zhao ZH,et al.The mood−stabilizing agents lithium and valproate robustly increase the levels of the neuroprotective protein bcl−2 in the CNS.J Neurochem 1999;72(2):879〜82)。マウスではヒトに比べてVPAの半減期が10倍長いため、ヒトと同様の血漿レベルを得るために、マウスではより高用量のVPAの投与が必要である(Loscher W.Valproate:a reappraisal of its pharmacodynamic properties and mechanisms of action.Prog Neurobiol 1999;58(1):31〜59)。食塩水を注射したグループの1つは、注射直後に屠殺した。他の4つのグループはすべて、注射1時間後に屠殺した。屠殺直後に、すべてのマウスから前頭皮質を摘出し、さらに処置するまで凍らせた(−70℃)。慢性VPA投与では、雄のICR(Harlan)マウス(20〜25g)の2つのグループで2種の独立した実験を行った。実験1:グループ1のマウス(n=29)を、飲料水中のVPA(12.5g/l)で11日間処置した。グループIIのマウス(n=30、コントロール)は、VPAを含まない同じ水を飲ませた。実験2:グループIのマウス(n=15)は、14日間、1日に2回(IP)、漸増用量のVPA(400〜800mg/kg/日)を注射した。グループIIのマウス(n=13、コントロール)は、1日に2回、食塩水を注射した(IP)。その後、動物を屠殺し、脳を摘出し、上述のとおり処置した。
【0118】
脳イノシトールレベルのガスクロマトグラフィによる測定
マウス脳の遊離イノシトールレベルを、キャピラリーカラムを用いて、Shapiro J等(Shapiro J,Belmaker RH,Beigon A,Seker A,Agam G.Scyllo−Inositol in Post−Mortem Brain of Suicide Victims,Bipolar,Unipolar and Schizophrenic Patients.J Neural Transm 2000;107:603〜607)に記載のとおり、気−液クロマトグラフィ(GC)によって、トリメチルシリル(TMS)誘導体として分析した。毎日の標準曲線の相関係数は、常に0.987を超えた。再現信頼性をラットの脳で試験した。ラットの4つの脳から2つの異なる標本をサンプリングしたとき、相関係数は0.80であった。単一の脳抽出物を10の個別の試料に分け、それぞれ単独に検定したとき、変動係数は23.5%であった。それぞれの試料抽出物は、少なくとも2重に検定した。結果は反復検定の平均で示した。検定は、各回がすべての比較グループの試料を含むように、盲検かつバランスデザインで行った。
【0119】
結果
マウス脳イノシトールレベルに対する急性および慢性VPA投与の効果
ガスクロマトグラフィを用いて、単回用量のVPAを注射したマウスの前頭皮質イノシトールレベルを直接測定した。マウスへの急性VPA投与により、試験を行ったすべての濃度で、前頭皮質イノシトール濃度が統計的有意に20%減少したことがわかった(図1)。コントロールグループ(食塩水注射直後、または注射1時間後に屠殺した動物)は共にまったく同じ平均イノシトールレベルを示したため、これらの2つのグループをプールした。2匹のマウス(コントロールグループの1匹および800mg/kgVPAグループの1匹)のイノシトールレベルは、各グループ平均の2標準偏差を超えたため除外した。
【0120】
リチウムを用いた同様の観察において、11日間、マウスに飲料水でVPAを投与、または14日間、IPでVPA注射をした場合、脳イノシトールレベルは枯渇しないことが見出された(表1)。
【0121】

(表1)慢性VPA投与はマウス全脳イノシトールレベルに影響を与えない
処置 コントロール VPA
飲料水中のVPA 32.5±2.0 30.1±1.7
(n=30) (n=29)

注射のVPA 29.0±2.7 27.9±3.2
(n=13) (n=15)
結果は平均±標準誤差である

考察
この研究で、本出願人等は、マウスへの急性VPA投与は、前頭皮質イノシトール濃度を20%低減するが、慢性VPA投与は低減しないことを見出した。これは、リチウムおよびVPAは共に脳イノシトールレベルに短期的な効果を有するが、長期処置後に、濃度が非処置のレベルに戻ることを示唆している。これはイノシトール代謝を再調整して、myo−イノシトール濃度を回復させる長期適応過程を表している可能性がある。細胞内イノシトールの急激な減少はさらに、遺伝子発現の変化など、精神安定化に関連する一連の二次性変化を引き起こす可能性がある。
【0122】
細胞内遊離イノシトールは、3つの供給源から供給される。食餌に由来する特定のmyo−イノシトールの取り込み、IMPaseによるホスホイノシチドからのイノシトール部分の再生利用、およびMIPシンターゼによるグルコース−6−リン酸からイノシトール−1−リン酸へのデノボ合成、その後のIMPaseによる脱リン酸化である(Fisher SK,Novak JE,Agranoff BW.Inositol and higher inositol phosphates in neural tissues:homeostasis,metabolism and functional significance.J Neurochem 2002;82(4):736〜54)。
【0123】
酵母では、VPAはmyo−イノシトールの濃度を低減するが、イノシトール−1−リン酸を増加しない。これは、VPAは、イノシトールを再生利用するのではなく、イノシトール合成を変化させる可能性のあることを示唆している(Vaden DL,Ding D,Peterson B,Greenberg ML.Lithium and valproate decrease inositol mass and increase expression of the yeast INO1 and INO2 genes for inositol biosynthesis.J Biol Chem 2001;276(18):15466〜71)。実際、本出願人等は、ヒト脳MIPシンターゼ活性が、治療上適切なVPA濃度によって阻害可能であることを、本発明において示している。そのような阻害は、リチウムによるIMPaseの阻害と類似の様式で、急性相において前頭皮質イノシトールの枯渇をもたらす。したがって、本出願人等の結果はさらに、2種の抗双極薬に共通の機構を示唆する抗双極治療の分子機構における最初の事象に関して、Berridgeのイノシトール枯渇仮説の詳細な説明となる(Berridge MJ.Phosphoinositides and signal transductions.Rev Clin Basic Pharm 1985;5 Suppl:5S〜13S)。2種の抗双極薬は異なる標的を介して作用するが、共に前頭皮質細胞内イノシトールレベルを低下する同じ作用を誘発する。リチウムとは対照的に、VPAはIMPase活性に影響を及ぼさないことが示されているため(Vadnal R.Parthasarathy R、Myo−inositol monophosphatase:diverse effects of lithium,carbamazepine,and valproate.Neuropsychopharmacology 1995;12(4):277〜85)、VPA処置に続くin−vivoでのイノシトールレベルの急激な減少は、MIPシンターゼ合成の直接阻害の結果である可能性がもっとも高い。
【0124】
実施例2
実験のプロトコル
ヒト脳MIPシンターゼ活性
死後のヒト前前頭皮質(0.5mlの50mMトリスHCl、pH7.4中、湿重量1mg)を、音波破砕し(Ultrasonic Processor、Newtown、CT、4℃、出力ワット0.1で15秒)、4℃、9000Xgで20分間遠心分離した後、得られた5μlの上清画分を、5mUのIMPase(Sigma、St.Louis)を含むか、または含まない、4mMのD−グルコース−6−リン酸、1.25μCiのD−グルコース−6−リン酸[14C]、1.6mMのNAD、0.45mMのKCl、5.4mMのMgCl、および0.9mMのトリスHCl、pH7.6を含有する20μlの反応混合物に添加した。様々な濃度の薬剤を用いて、または用いずに(表2および表3)、37℃で、3時間インキュベートした(直線範囲内)。50μlの冷再蒸留水(ddHO)を添加して、この反応を停止した。1mlのddHO中1.25gの強塩基アニオン樹脂(Amberjet 4200、Rohm and Haas、Philadelphia)を含む試験管に、80μlのうち70μlを添加した。この混合物を10分間ボルテックスし、その後、室温、10,000Xgで10分間遠心分離し、14Cカウント用(Liquid Scintillation Counter、Kontron、Basel)に200μlの上清を採取した。酵素活性は、IMPaseを含む測定値からIMPaseを含まない値を減じることによって算出した。測定は3重で行った。
【0125】
表2は、ヒト脳MIPシンターゼ活性の起こりうる阻害に関して研究した薬剤、および治療濃度と比較したそれらの濃度を詳細に示す。各薬剤は2回試験し、各実験は3重で行った。
【0126】
ヒト脳収集物の使用は、本出願人等の病院のヘルシンキ委員会(IRB)に承認された。
【表2】

【0127】
ラットニューロンDRG(後根神経節)外植片
新生のSprague−Dawleyラットの脊髄部位からDRGを切り取り、5%CO、37℃で、マウス7S型神経成長因子(NGF−7s、25ng/ml)を添加した無血清培地において、ポリオルニチンおよびラミニンで被覆したカバースリップ上で個別に培養した。接着24時間後、シトシンβ−アラビノフラノシド(ara−C、10μM)を24時間添加して、非神経細胞を殺した。新鮮な無血清培地中のVPA、VPD、およびM−TMCD(1mM)を、DRG外植片に添加して24時間暴露した。その後、室温で20分間、PBS(リン酸緩衝食塩水)中の4%パラホルムアルデヒドに固定した。成長円錐を倒立顕微鏡(Zeiss Axiovert)で分析し、NIHイメージソフトウェアを用いて測定した。
【0128】
結果
VPAはヒト脳粗ホモジネートのMIPシンターゼ活性を阻害する
ヒト脳ホモジネートのMIPシンターゼ活性に対するVPAのin−vitro効果を研究した。ディクソンプロット(図2)は、ヒト脳MIPシンターゼ活性が、Ki0.21mMで、治療濃度のVPA(血漿範囲0.35〜0.7mM)によって阻害されることを示す。0.525mMのVPA存在下および不在下において、0.48〜2.48mMの範囲の基質(グルコース−6−リン酸)濃度で、MIPシンターゼ活性を測定した。ラインウィーバー・バークプロットで示した結果は、VPAによるMIPシンターゼの非競合的阻害を明らかにしている(図3)。グルコース−6−リン酸に関するMIPシンターゼのKm、および図から導かれるVmaxは、それぞれ0.625mM、および0.02nmol/分×タンパク質mgである。0.525mMのVPA存在下において、Kmは変化しないが、Vmaxは0.006nmol/分×タンパク質mgに低下する。
【0129】
KmおよびVmaxは、ミカエリス−メンテン定数である。Christopher K.Mathews and K.E.Van Holde.Biochemistry.The Benjamin/cummings Publishing Company,Inc.1990(357〜362)を参照されたい。
【0130】
VPA、VPD、およびM−TMCDによるMIPシンターゼ阻害はラットニューロンに対するそれらの効果と相関する
驚いたことに、同程度の濃度で、M−TMCDはMIPシンターゼ活性を93%阻害したが、VPDは34%しか阻害しないことが見出された(表3)。DRG成長円錐に対するVPDおよびM−TMCDの効果もこれと一致する。VPDは、成長円錐の伸長の増大を示さなかったが、M−TMCDは、VPAと同様の効果を有した(図4)。
【表3】

【0131】
VPAおよびM−TMCDによるヒト脳MIPシンターゼ活性阻害の特異性
本出願人等は、ヒト脳MIPシンターゼ活性に対する他の向精神薬の効果を調べた。それらの治療域上限値より1.5倍高い濃度で、他の抗けいれん精神安定剤、カルバマゼピン、ラモトリジン、またはフェニトイン、定型抗精神病薬、ハロペリドール、およびクロルプロマジン、非定型抗精神病薬、クロザピン、あるいは三環系抗うつ剤、クロミプラミン、およびイミプラミンは(表1)、いずれもMIPシンターゼ活性を阻害しなかった。
【0132】
考察
グルコース−6−リン酸は、MIPシンターゼの基質である。O’Donnell等(O’Donnell T,Rotzinger S,Nakashima TT,Hanstock CC,Ulrich M,Silverstone PH.Chronic lithium and sodium valproate both decrease the concentration of myo−inositol and increase the concentration of inositol monophosphates in rat brain.Brain Res 2000;880(1〜2):84〜91)は、ラットの脳で、基礎グルコース−6−リン酸濃度0.226μmol/gを測定した。ヒトおよびラットで類似の脳グルコース−6−リン酸レベルを仮定すると、in−vivoMIPシンターゼ活性は、ヒトの脳において、そのVmaxの半分未満であり、著しい範囲の調節操作が可能となる。本研究のすべてのコントロール実験(薬剤を添加しない)から得られたヒト脳MIPシンターゼVmaxの0.02〜0.2nmol/分×タンパク質mgの範囲は、Barnett等(Barnett JE,Brice RE,Corina DL.A colorimetric determination of inositol monophosphates as an assay for D−glucose 6−phosphate−1L−myoinositol 1−phosphate cyclase.Biochem J 1970;119(2):183〜6)によってラット精巣で認められたVmax、0.104nmol/分×タンパク質mgと同程度であり、Eisenberg等(Eisenberg F,Jr.D−myoinositol 1−phosphate as product of cyclization of glucose 6−phosphate and substrate for a specific phosphatase in rat testis.J Biol Chem 1967;242(7):1375〜82)のVmaxとは異なる。
【0133】
VPAのヒト脳MIPシンターゼKiに関して得られた値、ディクソンプロットから0.21mM、ラインウィーバー・バークプロットから0.24mMは、充分に一致している。VPAの脳内薬剤レベルは、血中レベル約20%であるから(Loscher W.Valproate:a reappraisal of its pharmacodynamic properties and mechanisms of action.Prog Neurobiol 1999;58(1):31〜59)、VPAの治療血漿レベルは、この組織でMIPシンターゼ活性を約50%阻害するのに充分であろう。VPAによるMIPシンターゼ活性の非競合的阻害は、VPAが酵素の触媒部位とは異なる領域と相互作用することを示唆しており、SteinおよびGeigerによる酵母酵素の3次元構造の研究に基づく、VPAはその研究で視覚化された基質結合腔の疎水性表面を標的にするという推測(Stein AJ,Geiger JH.The crystal structure and mechanism of 1−L−myo−inositol−1−phosphate synthase.J Biol Chem 2002;277(11):9484〜91)とは相反する。ヒト脳組織および神経細胞培養において、細胞内遊離イノシトールを供給する3つの経路は、同程度の次のVmax値を示す。ナトリウム−myo−イノシトール輸送体(SMIT)による取り込みの場合−0.06〜0.10nmol/分×タンパク質mg(Hertz L,Wolfson M,Hertz E,Agam G,Richards M,Belmaker RH.Lithium−inositol interactions:synthesis,uptake,turnover.In:Honig A,Van Praag HM,editors.Depression:neurobiological,psychopathological and therapeutic advances.chichester:Weiley;1997、pp.519〜534)、IMPaseによるイノシトール−1−リン酸の脱リン酸化の場合−0.2〜2.0nmol/分×タンパク質mg(Shaltiel G,Shamir A,Nemanov L,Yaroslavsky Y,Nemets B,Ebstein RP et al.Inositol Monophosphatase Activity in Brain and Lymphocyte−derived Cell Lines of Bipolar,Schizophrenic and Unipolar Patients.World J Biol Psychiatry 2001;2:95〜8)。これにより、MIPシンターゼに関する計算値0.02〜0.20nmol/分×タンパク質mgは、細胞内脳myo−イノシトールに有意な寄与をする。
【0134】
本出願人等は、ヒト脳酵素の阻害は、VPAおよびM−TMCDに特異的であり、他の抗双極薬、定型抗精神病薬、非定型抗精神病薬、および三環系抗うつ剤では実証され得ない。
【0135】
興味深いことに、ヒト脳MIPシンターゼ活性に対するVPDおよびM−TMCDの阻害効果はまた、ラットDRGの成長円錐に対する効果と相関する。
【0136】
本出願人等は、治療上適切な濃度のVPAが、脳myo−イノシトールレベルを低減することを示した。しかしながら、本出願人等は、VPAの標的、同様にM−TMCDの標的は、リチウムの標的とは異なることを見出した。リチウムは、IMPaseを阻害し、したがってイノシトールの再生利用およびデノボ合成の両方に影響を及ぼすが、VPAおよびM−TMCDの影響はデノボ合成に限定される。
【0137】
本研究の結果は、M−TMCDは、効力が高く、以前の研究で安全限界が広く、奇形遺伝性がないことが示されているため、VPAおよびVPDに比べて双極性障害の治療に好ましいことを示している(米国特許第5,880,157号;Isoherranen N.et al.,Anticonvulsant profile and teratogenicity of N−methyl−tetramethylcyclopropyl carboxamide;A new antiepileptic drug.Epilepsia 2002;43:115〜126)。M−TMCDはさらに、肝毒性を潜在的に欠くため有利である。したがって、M−TMCDは、妊娠可能年齢の女性および子供に投与することができる。
【0138】
本発明を特定の実施形態に関連して述べたが、多くの代替、変更、および変形が当分野の技術者に明白であろうことは明らかである。したがって、添付の請求の範囲の精神および範囲内であるそのようなすべての代替、変更、および変形を包含することが意図される。
【0139】
本明細書に言及したすべての刊行物、特許、および特許出願は、それぞれ個々の刊行物、特許、または特許出願が具体的かつ個別に参照により本明細書に組み込まれると指示されたと同じように、それらの全体を参照により本明細書の一部とする。
【図面の簡単な説明】
【0140】
【図1】VPAの単回用量を注射したマウスの前頭皮質イノシトールレベルを例示する図である。結果は平均±標準誤差である。分散分析:F=3.14、df3,59、p=0.031 *事後LSD試験:コントロール対300mg/kgVPA、p=0.038;コントロール対600mg/kgVPA、p=0.018;コントロール対800mg/kgVPA、p=0.024。W.W.=湿重量。
【図2】ヒト脳ホモジネートにおけるMIPシンターゼ活性に対するVPAのin−vitro効果を例示する図である(ディクソンプロット)。結果は平均+標準誤差である。X軸と最良適合線の交点=−Ki。
【0141】
n=10(0mM)、5(0.35mM)、7(0.525mM)、7(0.7mM)、および3(1.4mM)。
【0142】
MIP=myo−イノシトール−1−リン酸、VPA=バルプロ酸、V=VPA不在下の活性、VVPA=適切な濃度のVPA存在下の活性。
【図3】VPAによるMIPシンターゼの非競合的阻害を例示する図である(ラインウィーバー・バークプロット)。各点は、2〜3重検定の平均+標準誤差を表す。MIP=myo−イノシトール−1−リン酸、VPA=バルプロ酸。
【0143】
X軸と最良適合線の交点=−/Km。
【0144】
Y軸と最良適合線の交点=1/Vmax。
【図4】ラットニューロンDRGの伸長に対する、バルプロ酸(VPA)、バルプロミド(VPD)、およびM−TMCDの効果を例示する図である。
【0145】
a.コントロール、b.1mM VPA、c.1mM VPD、d.1mM M−TMCD。
【0146】
ヒストグラムは、成長円錐の面積の度数分布を示す。
【0147】
Y軸の単位は、%である。
【0148】
X軸の単位は、伸長面積μmである。
【0149】
灰色の棒グラフ=縮小成長円錐(伸長面積<50マイクロm)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
精神障害を治療する薬剤を調製するための、式Iの化合物の使用。
【化1】

(式中、RおよびRは、同一であるか異なっており、水素およびC〜Cアルキル基から独立に選択される)
【請求項2】
またはRの一方がC〜Cアルキル基であり、他方が水素である、請求項1に記載の式Iの化合物の使用。
【請求項3】
前記C〜Cアルキル基が直鎖または分枝鎖アルキル基である、請求項1または2に記載の式Iの化合物の使用。
【請求項4】
前記C〜Cアルキル基がメチル基である、請求項1に記載の式Iの化合物の使用。
【請求項5】
前記C〜Cアルキル基がメチル基である、請求項2に記載の式Iの化合物の使用。
【請求項6】
前記精神障害が双極性障害である、請求項1に記載の式Iの化合物の使用。
【請求項7】
前記化合物が、式Iの化合物と薬剤として許容される担体を含む薬剤組成物として投与される、請求項1に記載の式Iの化合物の使用。
【請求項8】
前記化合物の投与経路が、経口、非経口、局所、経皮、直腸、および口腔投与からなる群から選択される、請求項1に記載の式Iの化合物の使用。
【請求項9】
前記化合物の投与経路が、経口および非経口投与からなる群から選択される、請求項1に記載の式Iの化合物の使用。
【請求項10】
前記非経口投与経路が、静脈内、筋肉内、腹腔内、および皮下投与からなる群から選択される、請求項8または9に記載の式Iの化合物の使用。
【請求項11】
前記化合物が、1日当たり約1mgから約1000mgの範囲で投与される、請求項1に記載の式Iの化合物の使用。
【請求項12】
前記化合物が、1日当たり約20mgから約500mgの範囲で投与される、請求項1に記載の式Iの化合物の使用。
【請求項13】
哺乳動物において精神障害を治療する方法であって、前記哺乳動物に治療上有効量の式Iの化合物を投与するステップを含む方法。
【化2】

(式中、RおよびRは、同一であるか異なっており、水素およびC〜Cアルキル基から独立に選択される)
【請求項14】
またはRの一方がC〜Cアルキル基であり、他方が水素である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記C〜Cアルキル基が直鎖または分枝鎖アルキル基である、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記C〜Cアルキル基がメチル基である、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記C〜Cアルキル基がメチル基である、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記精神障害が双極性障害である、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記哺乳動物がヒトである、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
式Iの前記化合物が、式Iの化合物と薬剤として許容される担体を含む薬剤組成物として投与される、請求項13に記載の方法。
【請求項21】
投与経路が、経口、非経口、局所、経皮、直腸、および口腔投与からなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項22】
投与経路が、経口および非経口投与からなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項23】
前記非経口投与経路が、静脈内、筋肉内、腹腔内、および皮下投与からなる群から選択される、請求項21または22に記載の方法。
【請求項24】
前記治療上有効量が、1日当たり約1mgから約1000mgの範囲である、請求項13に記載の方法。
【請求項25】
前記治療上有効量が、1日当たり約20mgから約500mgの範囲である、請求項13に記載の方法。
【請求項26】
薬剤として許容される担体、および有効成分として治療上有効量の式Iの化合物を含む、精神障害を治療するための薬剤組成物。
【化3】

(式中、RおよびRは、同一であるか異なっており、水素およびC〜Cアルキル基から独立に選択される)
【請求項27】
MIPシンターゼの阻害剤を調製するための、式Iの化合物の使用。
【化4】

(式中、RおよびRは、同一であるか異なっており、水素およびC〜Cアルキル基から独立に選択される)
【請求項28】
またはRの一方がC〜Cアルキル基であり、他方が水素である、請求項27に記載の式Iの化合物の使用。
【請求項29】
前記C〜Cアルキル基が直鎖または分枝鎖アルキル基である、請求項27または28に記載の式Iの化合物の使用。
【請求項30】
前記C〜Cアルキル基がメチル基である、請求項27に記載の式Iの化合物の使用。
【請求項31】
前記C〜Cアルキル基がメチル基である、請求項28に記載の式Iの化合物の使用。
【請求項32】
前記MIPシンターゼが哺乳動物MIPシンターゼである、請求項27に記載の式Iの化合物の使用。
【請求項33】
前記MIPシンターゼが哺乳動物脳MIPシンターゼである、請求項27に記載の式Iの化合物の使用。
【請求項34】
前記哺乳動物MIPシンターゼがヒトMIPシンターゼである、請求項32に記載の式Iの化合物の使用。
【請求項35】
前記哺乳動物脳MIPシンターゼがヒト脳MIPシンターゼである、請求項33に記載の式Iの化合物の使用。
【請求項36】
MIPシンターゼ活性を有する酵素を阻害する方法であって、前記酵素を有効量の式Iの化合物と接触させるステップを含む方法。
【化5】

(式中、RおよびRは、同一であるか異なっており、水素およびC〜Cアルキル基から独立に選択される)
【請求項37】
またはRの一方がC〜Cアルキル基であり、他方が水素である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記C〜Cアルキル基が直鎖または分枝鎖アルキル基である、請求項36または37に記載の方法。
【請求項39】
前記C〜Cアルキル基がメチル基である、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
前記C〜Cアルキル基がメチル基である、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
前記MIPシンターゼが哺乳動物MIPシンターゼである、請求項36に記載の方法。
【請求項42】
前記MIPシンターゼが哺乳動物脳MIPシンターゼである、請求項36に記載の方法。
【請求項43】
前記哺乳動物MIPシンターゼがヒトMIPシンターゼである、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記哺乳動物脳MIPシンターゼがヒト脳MIPシンターゼである、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
前記MIPシンターゼが哺乳動物の体内に存在し、前記有効量が治療上有効量である、請求項36に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−500205(P2007−500205A)
【公表日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−531007(P2006−531007)
【出願日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【国際出願番号】PCT/IL2004/000455
【国際公開番号】WO2004/105746
【国際公開日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(504389234)イッサム リサーチ デベロップメント カンパニー オブ ザ ヘブリュー ユニバーシティー オブ エルサレム (5)
【出願人】(505438971)ベン ギュリオン ユニバーシティ オブ ザ ネゲブ リサーチ アンド デベロップメント オーソリティ (1)
【Fターム(参考)】