精米器
【課題】精米容器から糠等を除去することで、精米された米を取り出す際に、精米容器から糠等を落下させないようにすることができる精米器を提供すること。
【解決手段】米粒を通さず且つ糠を通す孔が形成された網状部24が設けられた精米容器4と、この精米容器4内で回転してこの精米容器4内の米を撹拌する精米体5と、この精米体5を回転させる電動機16と、この電動機16をPWMにより駆動制御する制御回路37とを有する精米器1であって、前記制御回路37が、デューティー比を調整して前記精米体5の回転速度を制御する回転制御工程を実行すると共に、この回転制御工程におけるデューティー比よりも高いデューティー比で前記電動機16を短時間回転させる終了工程を実行することで、前記精米容器4の内外を流通する気流に変化を与えると共に振動を増加させ、前記精米容器4の外面に付着した糠を除去することができる。
【解決手段】米粒を通さず且つ糠を通す孔が形成された網状部24が設けられた精米容器4と、この精米容器4内で回転してこの精米容器4内の米を撹拌する精米体5と、この精米体5を回転させる電動機16と、この電動機16をPWMにより駆動制御する制御回路37とを有する精米器1であって、前記制御回路37が、デューティー比を調整して前記精米体5の回転速度を制御する回転制御工程を実行すると共に、この回転制御工程におけるデューティー比よりも高いデューティー比で前記電動機16を短時間回転させる終了工程を実行することで、前記精米容器4の内外を流通する気流に変化を与えると共に振動を増加させ、前記精米容器4の外面に付着した糠を除去することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、比較的少量の米を精米するのに適した家庭用の小型精米器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の精米器としては、電動機によって回転させられる精米体によって、精米容器内の米を攪拌し、この米を前記精米容器の側周部の網状部に擦り付けることで、米の表面の糠等を削り落として白米にする、家庭等で用いられる卓上型の精米器が知られている(例えば、特許文献1参照。)。前記精米容器は、糠受容器内に着脱自在に収容される。そして、米から削り落とされた糠等は、前記網状部の外に排出され、前記糠受容器内に溜められる。なお、前記精米容器には、玄米や、精米してから時間が経った白米等が収容される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−229558号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような精米器は、糠等と共に遠心力によって前記網状部の外に流れた気流が、前記網状部の上部からこの網状部内に流入する。このため、一度前記精米容器から排出された糠等の一部が、前記網状部に付着する虞があった。そして、この状態で、前記精米容器を持ち上げると、糠等が落下して床やテーブル等を汚してしまう虞があった。
【0005】
本発明は以上の問題点を解決し、精米容器に付着した糠等を除去することで、精米された米を取り出す際に、精米容器から糠等を落下させないようにすることができる精米器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に記載の精米器は、米粒を通さず且つ糠を通す孔が形成された精米容器と、この精米容器内で回転してこの精米容器内の米を撹拌する精米体と、この精米体を回転させる電動機と、この電動機をPWMにより駆動制御する制御回路とを有する精米器において、前記制御回路が、デューティー比を調整して前記精米体の回転速度を制御する回転制御工程を実行すると共に、この回転制御工程におけるデューティー比よりも高いデューティー比で前記電動機を短時間回転させる終了工程を実行するものである。
【0007】
また、本発明の請求項2に記載の精米器は、請求項1において、前記終了工程の時間を、前記精米体が一回転する時間以上としたものである。
【0008】
また、本発明の請求項3に記載の精米器の制御方法は、米粒を通さず且つ糠を通す孔が形成された精米容器と、この精米容器内で回転してこの精米容器内の米を撹拌する精米体と、この精米体を回転させる電動機と、この電動機をPWMにより駆動制御する制御回路とを有する精米器の制御方法において、前記制御回路が、回転制御工程にて、前記電動機に供給する電力のデューティー比を調整して前記精米体の回転速度を制御し、この回転制御工程に続く終了工程にて、前記回転制御工程におけるデューティー比よりも高いデューティー比で前記電動機を短時間回転させるものである。
【0009】
更に、本発明の請求項4に記載の精米器の制御方法は、請求項3において、前記終了工程を、前記精米体が一回転する時間以上の時間実行するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の精米器及びその制御方法では、前記精米容器内の前記精米体を前記電動機によって回転させると、前記精米容器内の米が前記精米体によって攪拌される。そして、前記精米容器内の米は、前記精米容器の内面と擦れることで表面の糠が除去される。更に、除去された糠は、前記精米容器の外に排出される。そして、終了工程において、回転制御工程よりも高いデューティー比で前記電動機に電力を短時間供給することで、前記精米容器の内外を流通する気流に変化を与えると共に振動を増加させる。これによって、前記精米容器の外面に付着した糠を除去することができる。
【0011】
そして、前記終了工程の時間を、前記精米体が一回転する時間以上としたことで、米も前記精米容器内を一周以上高速で公転するので、米を精米容器の高い位置まで上昇させ、この精米容器の広い範囲で振動を発生させることができるので、精米容器から確実に糠等を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態を示す精米器の断面図である。
【図2】同、精米容器の一部を切り欠いた側面図である。
【図3】同、精米器の電気回路のブロック図である。
【図4】同、始動工程における供給電力の変化を示すグラフである。
【図5】同、始動工程における米の公転速度の変化を概念的に示すグラフである。
【図6】同、三分搗きモードの回転制御工程以降における精米体の回転速度の変化を示すグラフである。
【図7】同、五分搗きモードの回転制御工程以降における精米体の回転速度の変化を示すグラフである。
【図8】同、七分搗きモードの回転制御工程以降における精米体の回転速度の変化を示すグラフである。
【図9】同、白米モードの回転制御工程以降における精米体の回転速度の変化を示すグラフである。
【図10】同、上白米モードの回転制御工程以降における精米体の回転速度の変化を示すグラフである。
【図11】同、終了工程における供給電力の変化を示すグラフである。
【図12】同、回転制御工程終了時における米の動きを示す説明図である。
【図13】同、終了工程時における米の動きを示す説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図1乃至図13に基づいて説明する。なお、本実施形態においては、図1の姿勢を基準として前後及び上下を規定し、図1の左側を前、右側を後とする。1は本発明の精米器である。この精米器1は、精米器本体2と、糠受容器3と、精米容器4と、精米体5と、蓋体6とを有して構成される。
【0014】
前記精米器本体2は、上外殻体7と下外殻体8とで構成される外殻体9を有する。そして、前記上外殻体7の上部前側には取付孔7Aが形成され、この取付孔7Aに操作部10が取り付けられる。また、前記上外殻体7の後側には、上方が開放した有底円筒凹状の収納凹部7Bが設けられる。そして、この収納凹部7Bの底部中央には、貫通孔7Cが形成される。一方、前記下外殻体8の底部には取付凹部8Aが形成される。そして、この取付凹部8Aに、コードリール11が取り付けられる。また、前記下外殻体8の底部には、複数の脚取付部8Bが形成される。これらの脚取付部8Bには、それぞれゴム脚12が取り付けられる。そして、前記外殻体9の内部には、駆動機構13が収容される。この駆動機構13は、金属製のフレーム14と、ベアリングケース15と、電動機16と、一次従動軸17と、小プーリ18と、大プーリ19と、無端状の駆動ベルト20と、一次接続部21とを有して構成される。前記電動機16は、前記フレーム14の前部に取り付けられる。前記一次従動軸17は、前記フレーム14の後部に軸支される。前記小プーリ18は、前記フレーム14を貫通して下方に延びる前記電動機16の回転軸に取り付けられる。前記大プーリ19は、前記フレーム14を貫通して下方に延びる前記一次従動軸17の下端に取り付けられる。前記駆動ベルト20は、前記小プーリ18と大プーリ19との間に掛け渡される。更に、前記一次接続部21は、前記ベアリングケース15を貫通して上方に延びる前記一次従動軸17の上端に取り付けられる。なお、前記フレーム14の後部には、凹状の軸受嵌入部14Aが形成される。そして、この軸受嵌入部14Aを覆うように、前記ベアリングケース15が前記フレーム14の上面に取り付けられる。そして、前記ベアリングケース15の中央上部には、凹状の軸受嵌入部15Aが形成され、この軸受嵌入部15Aにベアリング22が嵌入固定される。一方、前記軸受嵌入部14Aにも、別のベアリング23が嵌入固定される。そして、これらの上下一対のベアリング22,23により、前記フレーム4を貫通する前記一次従動軸17は、その中心軸が垂直方向となるように回動自在に軸支される。また、前記一次接続部21は、前記貫通孔7Cから前記収納凹部7B内に露出する。
【0015】
前記収納凹部7Bには、米から除去される糠や胚芽、或いは米の表面から削り落とされる酸化層等を受けるための前記糠受容器3が着脱自在に挿入される。この糠受容器3は、ほぼ有底円筒状に形成される。そして、前記糠受容器3の底部3Aの中央には、貫通孔3Bが形成される。この貫通孔3Bは、前記収納凹部7Bの貫通孔7Cに対応して、この貫通孔7Cと同軸的に形成される。また、前記貫通孔3Bから上方に延びて前記一次接続部21と後述する二次接続部31の外周を覆うように、筒状部3Cが形成される。
【0016】
そして、前記糠受容器3には、米を収容するための前記精米容器4が着脱自在に挿入される。この精米容器4は、網状部24と、底部材25と、上縁部材26と、円板部27とを有して構成される。前記網状部24は、略円筒状の側周部24Aと、底部24Bと、これらを滑らかに接続する湾曲部24Cとを有して構成される。前記底部材25は、前記網状部24の下部に固定される。前記上縁部材26は、前記網状部24の上部に固定される。更に、前記円板部27は、前記網状部24の底部の内側に設けられる。なお、前記底部材25の中央には、上方に突出した軸受筒部25Aが形成されると共に、その上端には軸孔25Bが形成される。また、前記底部材25には、短円筒状に形成された筒状部25Cが設けられる。この筒状部25Cは、前記精米容器4を前記糠受容器3に対して位置決めすると共に、除去された糠等が前記貫通孔7Cから前記精米器本体2内に侵入するのを防ぐために設けられる。そして、前記軸孔25Bを貫通して、二次従動軸29が、前記軸受筒部25Aに対して回動自在に軸支される。なお、前記軸受筒部25Aに軸支された前記二次従動軸29の中心軸は、垂直となる。更に、前記二次従動軸29の上端には、断面が角丸の正六角形となる係合軸部30が取り付けられる。一方、前記二次従動軸29の下端には、前記一次接続部21に対応して二次接続部31が取り付けられる。そして、前記一次接続部21と二次接続部31とで、前記一次従動軸17の回転を前記二次従動軸29に伝達するカップリング32が構成される。一方、前記上縁部材26には、弦状の把持部33が揺動可能に取り付けられる。
【0017】
前記円板部27は、十分な厚さを有する鋼製である。そして、前記円板部27は、前記網状部24の底部24Bを上方から覆うように、前記精米容器4の内側に設けられる。そして、前記円板部27の外周部27Aは、前記網状部24の湾曲部24Cまで延びると共に、前記外周部27Aは、前記湾曲部24Cに沿って上向きに且つ滑らかに湾曲する。なお、前記円板部27は、前記軸受筒部25Aに対応した孔以外に孔が形成されず、滑らかな表面を有する。
【0018】
前記精米容器4内の二次従動軸29の係合軸部30には、前記精米容器4内の米を撹拌する前記精米体5が着脱可能に取り付けられる。この精米体5は、前記係合軸部30に係合した状態では、前記精米容器4の内部に位置する。そして、前記精米体5は、軸体34と、一対の棒状体35とで構成される。前記軸体34は、前記係合軸部30に係合した状態で、この係合軸部30、ひいては前記二次従動軸29と同軸となる。また、前記棒状体35は、前記軸体34の下部からこの軸体34の軸方向に対して放射方向に突出して設けられる。そして、前記軸体34には、前記係合軸部30に対応して、断面が正六角形となる係合孔部36が形成される。この係合孔部36によって、前記軸体34は、前記係合軸部30、ひいては前記二次従動軸29に対して回り止めされた状態で係合される。また、前記棒状体35は、ステンレス鋼等によって円柱状に形成される。
【0019】
なお、前記円板部27の外周部27Aの外縁は、前記棒状体35の先端35Aが描く軌跡よりも外側まで延びる。また、前記円板部27の外周部27Aの外縁は、前記棒状体35の下端35Bよりも低い。
【0020】
更に、前記収納凹部7B、糠受容器3及び精米容器4の上部を覆うように、前記蓋体6が着脱自在に取り付けられる。なお、この蓋体6は、前記精米容器4の内部が視認できるように、全体が透明な合成樹脂によって構成される。
【0021】
前記精米機本体2には、制御回路37が設けられる。この制御回路37には、精米開始操作部38と、米量設定操作部39と、精白度設定操作部40と、回転速度センサ41と、前記電動機16とが電気的に接続される。なお、前記米量設定操作部39と精白度設定操作部40は、前記操作部10を構成する。また、Pは交流電源である。
【0022】
次に、上記構成の作用について説明する。なお、以下の説明では、玄米から精米する場合について説明する。まず使用者は、前記精米容器4の二次従動軸29の係合軸部30に前記精米体5を取り付けた後、前記精米容器4内に所定量の玄米を収容する。また、前記糠受容器3を前記精米器本体2の収納凹部7Bに取り付ける。この際、前記カップリング32を構成する前記一次接続部21は、前記貫通孔3Bから上方が露出すると共に、前記筒状部3Cによって外周側方が覆われる。そして、前記精米容器4を、前記糠受容器3の内側に装着する。この際、前記カップリング32を構成する前記二次接続部31が前記筒状部3C内に挿入されて前記一次接続部21と係合する。また、前記筒状部25Cが前記筒状部3Cの上部外側を覆うように装着されることで、前記精米容器4が前記糠受容器3に対して位置決めされる。更に、前記収納凹部7Bの上部開口を前記蓋体6によって閉じる。そして、前記コードリール11から図示しないコードを引き出して、このコードのプラグを前記交流電源Pに接続する。次に、前記精米容器4に収容された玄米の量に基づいて、前記米量設定操作部39を操作する。また、前記精米容器4に収容された玄米の目標精米度に基づいて、前記精白度設定操作部40を操作する。これによって、前記制御回路37が前記電動機16を制御するためのパラメータが設定される。更に、前記精米開始操作部38を操作すると、前記制御回路37は、前記電動機16を駆動させる。そして、前記電動機16の駆動力は、小プーリ18から駆動ベルト20、大プーリ19、第一従動軸17、カップリング32、及び二次従動軸29を経て、前記精米体5を回転させる。なお、前記精米体5は、前記小プーリ18と大プーリ19の半径の比率によって、前記電動機16の回転速度に対して所定の減速比で減速されて回転する。
【0023】
そして、前記精米体5を回転させることで、前記精米容器4内の玄米が攪拌されると共に前記精米体5の回転に連れ回る。この際、前記精米容器4内の玄米は、米粒同士が擦れ合ったり、米粒と前記精米容器4とが擦れ合ったりすることで、精米される。なお、米粒は、前記精米容器4内において、円柱状の前記棒状体35をスムーズに乗り越えるように、或いは円柱状の前記棒状体35をスムーズにくぐり抜けるように動く。このため、前記精米容器4内で米粒が必要以上に激しく動かないので、摩擦や衝突による米の温度上昇を低く抑えることができる。そして、精米時における米の温度上昇が抑えられると、米の水分の減少量を低く抑えて砕米の発生を低く抑えることができる。また、精米時における米の温度上昇が抑えられると、熱による米の酸化も抑えられる。従って、米の食味の劣化を抑えることができる。また、前記棒状体35が比較的太い円柱状であり、回転方向前端が鈍いため、前記棒状体35が米粒に衝突した際に、この米粒の局所に衝撃が集中しない。このため、砕米の発生をより低く抑えることができる。
【0024】
米から擦り取られた糠等は、前記精米容器4の網状部24から気流と共に排出され、前記糠受容器3内に貯められる。そして、前述したように、前記筒状部25Cが前記筒状部3Cの上部外側を覆うことで、糠等が前記貫通孔7Cから前記精米器本体2内に侵入することが防止される。
【0025】
米は、前記網状部24を形成する鋼に比べれば軟らかいものである。しかしながら、大量の米が前記網状体24と長い期間擦れると、前記網状体24は摩耗する。そして、この網状体24の摩耗が進行すると、前記網状体24が破れる虞がある。しかしながら、前記網状部24の底部の内側に前記円板部27を設けたことで、米との摩擦が最も大きくなる前記棒状体35の下方が摩耗しにくいので、前記精米容器4が破損しにくい。特に、前記円板部27の外周部27Aの外縁が、前記棒状体35の先端35Aが描く軌跡よりも外側まで延びるので、前記網状部24と米との摩擦が最も大きくなる前記棒状体35の下方全体を摩耗させにくくすることができる。また、前記円板部27に、前記軸受筒部25Aに対応した孔以外に孔がなく、滑らかな表面を有することで、前記円板部27と米との摩擦を小さくすることができる。これによって、前記円板部27自体の摩耗を最小限に抑えることができる。
【0026】
なお、前記円板部27に孔が形成されないので、米から取り除かれた糠等は、下方に排出されない。しかしながら、前記円板部27の外周部27Aの外縁が前記棒状体35の下端35Bよりも低いので、米から取り除かれた糠等は、気流と共に前記網状部24から遠心力の働く水平方向に排出される。そして、この排出は、前記円板部27によって妨げられることがない。更に、前記円板部27と米との摩擦が小さく、且つ、前記円板部27の外周部27Aが前記湾曲部24Cに沿って上向きに滑らかに湾曲するので、前記精米体5によって撹拌された米は、遠心力によって前記外周部27Aに向かって勢いよく移動した後、この外周部27Aに沿って滑らかに且つ勢いよく上向きに上昇する。そして、勢いよく上昇した米は、前記網状部24の側周部24Aに沿って上昇し、この側周部24Aと擦れることで、糠等が取り除かれる。なお、前述した通り、米が前記側周部24Aに沿って勢いよく上昇することで、米が前記側周部24Aに沿って高い位置まで達する。このため、前記側周部24Aにおいて米が擦れる面積を大きくすることができる。従って、前記網状部24の底部24Bに米が擦れないことによる精米効率の低下が抑えられる。
【0027】
米は、前記側周部24Aに沿う高い位置ほど、前記網状部24との摩擦によって公転速度が低下する。従って、前記側周部24Aに沿う高い位置ほど、米に働く遠心力は低下する。このため、遠心力によって前記精米容器4から排出される気流は、前記側周部24Aに沿って上方ほど弱くなり、ある高さから上では、逆に前記精米容器4内に流入する。そして、この高さより上では、米は、前記精米容器4の中央に向かって移動する。換言すれば、この高さ以下では、米は前記側周部24Aに沿って移動する。従って、気流に乗った糠等は、前記網状部24の側周部24Aの上部を通って、前記糠受容器3から前記精米容器4内に流入しようとする。この際、糠等が前記網状体24の側周部24Aの上部外面に付着する。
【0028】
前記制御回路37による電動機16の制御について詳述する。前記制御回路37による電動機16の制御の工程は、始動工程と、この始動工程に続く回転制御工程からなる。始動工程は、前記電動機16に供給する電力を徐々に増加させる工程である。この始動工程は、前記精米容器4に収容された米の抵抗に抗して前記精米体5を回転させる電動機16の負荷を低減させるために実行される。なお、この始動工程では、精米量及び精白度に依らず一定の制御が行われると共に、前記回転速度センサ41からの信号は参照されない。また、回転制御工程は、前記回転速度センサ41からの信号に基づいて、前記電動機16へ供給する電力を調整することで、前記精米体5の回転速度を制御する工程である。
【0029】
前記始動工程は、第一工程と、この第一工程に続いて実行される第二工程と、この第二工程に続いて実行される第三工程とからなる。前記第一工程では、供給電力を緩やかに増加させる。前記第二工程では、前記第一工程よりも供給電力を急激に増加させる。前記第三工程では、前記第二工程よりも供給電力を緩やかに増加させる。なお、本実施形態は、図4に示すように、PWM制御によりデューティー比を増加させることで、前記電動機16に供給する電力を増加させる。そして、本実施形態は、第一工程において、20%から24%まで、約0.1秒毎に1%ずつデューティー比を増加させる。また、第二工程において、24%から51%まで、約0.1秒毎に3%ずつデューティー比を増加させる。更に、第三工程において、51%から73.5%まで、約0.1秒毎に1.5%ずつデューティー比を増加させる。
【0030】
第一工程では、デューティー比の上昇率が低く抑えられるため、前記精米体5の回転速度も緩やかに上昇する。これによって、一見、前記精米容器4内での玄米の公転速度も緩やかに上昇するように思われる。しかしながら、本実施形態のような、円柱状の棒状体35を有する精米体5を用いた精米器1では、前記精米体5の回転速度を急激に上昇させた場合、前記精米体5ばかりが回転して玄米が殆ど公転しない、空回りに近い状態となる。これは、前記棒状体35が米の中をスムーズに通るため、玄米が前記精米体5に連れ回りしにくく、玄米の公転速度が上昇しにくいからである。本実施形態のように、前記精米体5の回転速度が緩やかに上昇するようにした場合、玄米が前記精米体5に連れ回りし易くなり、玄米の公転速度を徐々に上昇させることができる。結果的に、前記精米体5の公転速度を急激に上昇させた場合に比べ、玄米の公転速度を速く上昇させることができる。
【0031】
第一工程で玄米が回転し始めたことで、玄米が動きやすくなるので、第二工程でデューティー比を急激に上昇させると、それに連れて、玄米の公転速度も急速に上昇する。なお、前記第二工程において、玄米の公転速度が上昇すると、この玄米と前記網状体24とが擦れることで発生する前記精米容器4の振動の振動数も徐々に高くなる。そして、玄米が所定の速度帯Vになると、前記精米容器4の振動数が前記精米器本体2の共振周波数と重なる。これによって、前記精米器本体2が大きく振動する。なお、この共振周波数は、前記精米器本体2の構造によって異なる。しかしながら、前述した通り、第二工程では、供給電力を急激に上昇させて、前記精米体5の回転速度及び玄米の公転速度を急激に上昇させることで、玄米を速度帯Vよりも高い速度まで短時間で上昇させることができる。これによって、前記精米器本体2が共振する時間帯を短くして、速やかに共振を収束させることができる。
【0032】
なお、第二工程中において、速度帯Vで玄米が公転する時間帯は、前記精米容器4内の玄米の量によって異なる。前記精米容器4に収容された玄米の量が少ない場合、玄米の速度の上昇が比較的速いので、早い時間帯に速度帯Vまで上昇する。一方、前記精米容器4に収容された玄米の量が多い場合、玄米の速度の上昇が比較的遅いので、遅い時間帯に速度帯Vまで上昇する。しかしながら、第二工程の時間帯は、最小精米量の玄米を精米する場合に玄米が速度帯Vとなる時間帯T1と、最大精米量の玄米を精米する場合に玄米が速度帯Vとなる時間帯T2とを含むように設定される。従って、前記精米器本体2の共振現象は、必ず第二工程中に起きる。そして、この第二工程中に起きた共振現象は、前述した通り、速やかに収束する。
【0033】
そして、第三工程では、デューティー比の上昇率を再び低くすることで、始動工程終了時における前記精米体5の回転速度及び玄米の公転速度が高くなり過ぎるのを防止することができる。このように、前記精米体5の回転速度及び玄米の公転速度を高くし過ぎないことで、砕米の発生を抑えることができる。また、前記精米容器4に収容された玄米の量が少ない場合、始動工程終了時における玄米の公転速度が高くなり過ぎると、始動工程から回転制御工程に移行した際に、前記精米容器4内で玄米が滑らかに動かない。これは、精米量が少ない場合、始動工程に続く回転制御工程で設定された前記精米体5の回転速度が低いので、前記精米体5の回転速度が大きく低下することになるためである。しかしながら、第三工程において、デューティー比の上昇率を低くすることで、始動工程から回転制御工程に滑らかに繋がるようにして、前記精米容器4内で玄米を滑らかに公転させることができる。
【0034】
そして、回転制御工程では、前記精米体5の回転速度を検出した前記回転速度センサ41からの信号に基づき、前記制御回路37が前記電動機16への供給電力を制御することで、前記精米体5の回転速度を制御する。なお、始動工程から回転制御工程に移行する際、前記精米容器4内の玄米の量及び設定された精白度等によって、前記精米体5の回転速度を上昇させる場合も下降させる場合もあり得る。
【0035】
回転制御工程における前記精米体5の回転速度と時間との関係を、幾つか例示する。なお、本実施形態では、最小精米量は1合(約0.18L)である。また、最大精米量は5合(約0.90L)である。
【表1】
【0036】
回転制御工程の初期において、米は玄米の状態であり、表面が滑らかではないので、前記精米体5によって公転させられる米と前記網状部24との摩擦は大きい。従って、公転する米が前記網状部24に衝突した際の米の速度低下は大きい。これは、回転制御工程の初期において、米に加わる衝撃が比較的大きいことを意味する。しかしながら、前述した通り、回転制御工程の初期において、前記精米体5の回転速度を低く抑えることによって、米の公転速度も低く抑えられる。この結果、米が前記網状部24に衝突した際に米に加わる衝撃を小さくすることができる。従って、砕米の発生を抑制することができる。
【0037】
米が前記網状部24と擦れることで、或いは米の粒同士が擦れることで、米の表面の糠等が徐々に削り落とされる。この結果、米の表面は、徐々に滑らかになってゆく。そして、このように米の表面が徐々に滑らかになってゆくと、米と前記網状部24との摩擦が徐々に小さくなってゆく。この結果、米が前記網状部24に衝突した際の米の速度低下が徐々に小さくなってゆく。従って、米が前記網状部24に衝突した際に受ける衝撃も、徐々に小さくなってゆく。このため、回転制御工程の進行に伴って、前記精米体5の回転速度を上昇させる余地が生ずる。即ち、回転制御工程の進行に伴って、前記精米体5の回転速度を上昇させたとしても、米粒が前記網状部24から受ける衝撃が過大にならない。従って、回転制御工程の進行に伴って、前記精米体5の回転速度を上昇させることで、砕米の発生を抑制しつつ、精米時間を短縮することができる。
【0038】
そして、前記制御回路37は、精白度に拘わらず、回転制御工程に続いて終了工程を実行する。なお、この終了工程は、精米量が1合〜3合(約0.54L)の場合に実行される。この終了工程は、図11に示すように、デューティー比100%で1秒間、前記電動機16に電力を供給する。この間、前記精米体5の回転速度は制御されない。実際には、前記精米体5の回転速度は、終了工程において、3000rpm程度まで上昇する。この際、前記精米体5の回転速度及び米の公転速度は、回転制御工程における前記精米体5の回転速度及び米の公転速度よりも上昇する。このため、前記精米容器4の網状部24を通過する気流が変化すると共に、米の公転に伴う振動が増加する。詳述すると、前記精米体5の回転速度及び米の公転速度が上昇することで、米が受ける遠心力も上昇する。そして、前記精米体5がある回転速度以上で回転するようになると、米が前記網状部24の側周部24Aに沿って公転しながらその上端部まで上昇する。この状態では、前記側周部24A全体で、気流が前記精米容器4内から精米容器4外に流出する。この際、米が前記網状部24全体と擦れることで、前記網状部24全体が振動すると共に前記網状部24の振動が増加して、糠が網状部24から離れやすくなっていることと相まって、糠が気流によって外方に押し出される。この結果、前記精米容器4の網状部24の外面に付着していた糠は、前記精米容器4から除去され、前記糠受容器3内に落下する。このため、精米終了後に前記精米容器4を前記精米器本体2から取り出した際に、前記網状部24に付着した糠が床等に落下するという問題が発生しにくいようにすることができる。なお、精米量が4合(約0.72L)以上の場合、回転制御工程時に米が前記網状部24の側周部24Aの上端部まで上昇することで、前記網状部24全体が振動してこの網状部24に糠が付着しにくいため、終了工程を実行する必要がない。
【0039】
なお、終了工程の時間は、以下の条件を全て満たす範囲であれば良い。
(1)精白度に実質的な影響を与えない程度の短い時間であること。終了工程の時間が長すぎると、前記精米体5の回転速度が高められることと相まって、より多くの糠が除去されてしまう。
(2)砕米発生率が基準値以下に抑えられる程度の短い時間であること。終了工程の時間が長すぎると、前記精米体5の回転速度が高められることと相まって、砕米発生率が上昇してしまう。
(3)前記網状部24に付着した全ての糠を除去することができる程度の長い時間であること。この時間は、最低でも、デューティー比100%の電力が前記電動機16に供給された後、前記精米体5が1回転することができる時間以上である。この場合、米は、全体として高速で前記網状部24の内周に沿って一周以上公転する。また、この際、米は、前記精米容器4の網状部24に沿って高い位置まで上昇するので、この網状部24の広い範囲で振動を発生させることができる。更に、終了工程の時間は、米が、回転制御工程の終了時における前記側周部24Aに沿う高さH1から、前記側周部24Aの上端部の高さH2に達することができる時間以上であることが望ましい。即ち、終了工程の時間は、図12の状態から、公転速度が高められた米が前記精米容器4内を公転しながら上昇することで、図13の状態になるのに十分な時間であることが望ましい。
【0040】
例えば、本実施形態では、回転制御工程における前記精米体5の回転回数が最小となる場合(三分搗き/1合)、前記精米体5は、回転制御工程において約1250回転する。前記精米体5の終了工程における回転速度が3000rpmまで上昇すると仮定した場合、この終了工程の1秒間で、前記精米体5は50回転する。即ち、前記回転制御工程における前記精米体5の回転回数に対する、前記終了工程における前記精米体5の回転回数の割合は約4%である。そして、前記精米体5の回転回数が4%程度増加したとしても、精白度に実質的な影響を与えることがない。また、前記精米体5の回転回数が4%程度増加したとしても、砕米発生率に実質的な影響を与えることもない。更に、終了工程が1秒程度あれば、この1秒間で、前記網状部24の側周部24Aに沿って、その上端部の高さH2まで米が上昇する。これによって、米との摩擦で前記網状部24全体が振動すると共に前記網状部24の振動が増加するので、前記精米容器4の網状部24に付着した糠等を十分除去することができる。なお、本実施形態では、回転制御工程における前記精米体5の回転回数が最大となる場合(上白米/3合)、前記精米体5は、回転制御工程において約8480回転する。この場合、前記回転制御工程における前記精米体5の回転回数に対する、前記終了工程における前記精米体5の回転回数の割合は約0.6%である。従って、前記精米体5の回転回数が最小となる場合よりも、更に影響は小さくなる。
【0041】
一方、終了工程におけるデューティー比は、前記網状部24の側周部24Aに沿って米を回転させながら、この米を前記網状部24の側周部24Aに沿って、その上端部の高さH2まで上昇させることができる程度の回転速度で、前記精米体5を回転させることができる範囲であれば良い。例えば、本実施形態では、前記電動機16に供給する電力のデューティー比を100%としている。このデューティー比の電力を前記電動機16に供給して前記精米体5を回転させれば、最小精米量であっても、米が前記側周部24Aの上端の高さH2に達する。
【0042】
以上のように本発明は、米粒を通さず且つ糠を通す孔が形成された網状部24が設けられた精米容器4と、この精米容器4内で回転してこの精米容器4内の米を撹拌する精米体5と、この精米体5を回転させる電動機16と、この電動機16をPWMにより駆動制御する制御回路37とを有する精米器1であって、前記制御回路37が、デューティー比を調整して前記精米体5の回転速度を制御する回転制御工程を実行すると共に、この回転制御工程におけるデューティー比よりも高いデューティー比で前記電動機16を短時間回転させる終了工程を実行することで、前記精米容器4の内外を流通する気流に変化を与えると共に振動を増加させ、前記精米容器4の外面に付着した糠を除去することができるものである。
【0043】
また、本発明は、前記終了工程の時間を、前記精米体が一回転する時間以上としたことで、米も前記精米容器4内を一周以上高速で公転するので、米を前記精米容器4の高い位置まで上昇させ、この精米容器4の広い範囲で振動を発生させることができるので、前記精米容器4から確実に糠等を除去することができるものである。
【0044】
なお、本発明は以上の実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、上記実施形態では、終了工程を、デューティー比100%で1秒間としたが、回転制御工程におけるデューティー比よりも十分高いデューティー比で、且つ、上述した条件を満たす時間であれば、デューティー比及び時間は任意である。
【符号の説明】
【0045】
1 精米器
4 精米容器
5 精米体
16 電動機
24 網状部
37 制御回路
【技術分野】
【0001】
本発明は、比較的少量の米を精米するのに適した家庭用の小型精米器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の精米器としては、電動機によって回転させられる精米体によって、精米容器内の米を攪拌し、この米を前記精米容器の側周部の網状部に擦り付けることで、米の表面の糠等を削り落として白米にする、家庭等で用いられる卓上型の精米器が知られている(例えば、特許文献1参照。)。前記精米容器は、糠受容器内に着脱自在に収容される。そして、米から削り落とされた糠等は、前記網状部の外に排出され、前記糠受容器内に溜められる。なお、前記精米容器には、玄米や、精米してから時間が経った白米等が収容される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−229558号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような精米器は、糠等と共に遠心力によって前記網状部の外に流れた気流が、前記網状部の上部からこの網状部内に流入する。このため、一度前記精米容器から排出された糠等の一部が、前記網状部に付着する虞があった。そして、この状態で、前記精米容器を持ち上げると、糠等が落下して床やテーブル等を汚してしまう虞があった。
【0005】
本発明は以上の問題点を解決し、精米容器に付着した糠等を除去することで、精米された米を取り出す際に、精米容器から糠等を落下させないようにすることができる精米器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に記載の精米器は、米粒を通さず且つ糠を通す孔が形成された精米容器と、この精米容器内で回転してこの精米容器内の米を撹拌する精米体と、この精米体を回転させる電動機と、この電動機をPWMにより駆動制御する制御回路とを有する精米器において、前記制御回路が、デューティー比を調整して前記精米体の回転速度を制御する回転制御工程を実行すると共に、この回転制御工程におけるデューティー比よりも高いデューティー比で前記電動機を短時間回転させる終了工程を実行するものである。
【0007】
また、本発明の請求項2に記載の精米器は、請求項1において、前記終了工程の時間を、前記精米体が一回転する時間以上としたものである。
【0008】
また、本発明の請求項3に記載の精米器の制御方法は、米粒を通さず且つ糠を通す孔が形成された精米容器と、この精米容器内で回転してこの精米容器内の米を撹拌する精米体と、この精米体を回転させる電動機と、この電動機をPWMにより駆動制御する制御回路とを有する精米器の制御方法において、前記制御回路が、回転制御工程にて、前記電動機に供給する電力のデューティー比を調整して前記精米体の回転速度を制御し、この回転制御工程に続く終了工程にて、前記回転制御工程におけるデューティー比よりも高いデューティー比で前記電動機を短時間回転させるものである。
【0009】
更に、本発明の請求項4に記載の精米器の制御方法は、請求項3において、前記終了工程を、前記精米体が一回転する時間以上の時間実行するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の精米器及びその制御方法では、前記精米容器内の前記精米体を前記電動機によって回転させると、前記精米容器内の米が前記精米体によって攪拌される。そして、前記精米容器内の米は、前記精米容器の内面と擦れることで表面の糠が除去される。更に、除去された糠は、前記精米容器の外に排出される。そして、終了工程において、回転制御工程よりも高いデューティー比で前記電動機に電力を短時間供給することで、前記精米容器の内外を流通する気流に変化を与えると共に振動を増加させる。これによって、前記精米容器の外面に付着した糠を除去することができる。
【0011】
そして、前記終了工程の時間を、前記精米体が一回転する時間以上としたことで、米も前記精米容器内を一周以上高速で公転するので、米を精米容器の高い位置まで上昇させ、この精米容器の広い範囲で振動を発生させることができるので、精米容器から確実に糠等を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態を示す精米器の断面図である。
【図2】同、精米容器の一部を切り欠いた側面図である。
【図3】同、精米器の電気回路のブロック図である。
【図4】同、始動工程における供給電力の変化を示すグラフである。
【図5】同、始動工程における米の公転速度の変化を概念的に示すグラフである。
【図6】同、三分搗きモードの回転制御工程以降における精米体の回転速度の変化を示すグラフである。
【図7】同、五分搗きモードの回転制御工程以降における精米体の回転速度の変化を示すグラフである。
【図8】同、七分搗きモードの回転制御工程以降における精米体の回転速度の変化を示すグラフである。
【図9】同、白米モードの回転制御工程以降における精米体の回転速度の変化を示すグラフである。
【図10】同、上白米モードの回転制御工程以降における精米体の回転速度の変化を示すグラフである。
【図11】同、終了工程における供給電力の変化を示すグラフである。
【図12】同、回転制御工程終了時における米の動きを示す説明図である。
【図13】同、終了工程時における米の動きを示す説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図1乃至図13に基づいて説明する。なお、本実施形態においては、図1の姿勢を基準として前後及び上下を規定し、図1の左側を前、右側を後とする。1は本発明の精米器である。この精米器1は、精米器本体2と、糠受容器3と、精米容器4と、精米体5と、蓋体6とを有して構成される。
【0014】
前記精米器本体2は、上外殻体7と下外殻体8とで構成される外殻体9を有する。そして、前記上外殻体7の上部前側には取付孔7Aが形成され、この取付孔7Aに操作部10が取り付けられる。また、前記上外殻体7の後側には、上方が開放した有底円筒凹状の収納凹部7Bが設けられる。そして、この収納凹部7Bの底部中央には、貫通孔7Cが形成される。一方、前記下外殻体8の底部には取付凹部8Aが形成される。そして、この取付凹部8Aに、コードリール11が取り付けられる。また、前記下外殻体8の底部には、複数の脚取付部8Bが形成される。これらの脚取付部8Bには、それぞれゴム脚12が取り付けられる。そして、前記外殻体9の内部には、駆動機構13が収容される。この駆動機構13は、金属製のフレーム14と、ベアリングケース15と、電動機16と、一次従動軸17と、小プーリ18と、大プーリ19と、無端状の駆動ベルト20と、一次接続部21とを有して構成される。前記電動機16は、前記フレーム14の前部に取り付けられる。前記一次従動軸17は、前記フレーム14の後部に軸支される。前記小プーリ18は、前記フレーム14を貫通して下方に延びる前記電動機16の回転軸に取り付けられる。前記大プーリ19は、前記フレーム14を貫通して下方に延びる前記一次従動軸17の下端に取り付けられる。前記駆動ベルト20は、前記小プーリ18と大プーリ19との間に掛け渡される。更に、前記一次接続部21は、前記ベアリングケース15を貫通して上方に延びる前記一次従動軸17の上端に取り付けられる。なお、前記フレーム14の後部には、凹状の軸受嵌入部14Aが形成される。そして、この軸受嵌入部14Aを覆うように、前記ベアリングケース15が前記フレーム14の上面に取り付けられる。そして、前記ベアリングケース15の中央上部には、凹状の軸受嵌入部15Aが形成され、この軸受嵌入部15Aにベアリング22が嵌入固定される。一方、前記軸受嵌入部14Aにも、別のベアリング23が嵌入固定される。そして、これらの上下一対のベアリング22,23により、前記フレーム4を貫通する前記一次従動軸17は、その中心軸が垂直方向となるように回動自在に軸支される。また、前記一次接続部21は、前記貫通孔7Cから前記収納凹部7B内に露出する。
【0015】
前記収納凹部7Bには、米から除去される糠や胚芽、或いは米の表面から削り落とされる酸化層等を受けるための前記糠受容器3が着脱自在に挿入される。この糠受容器3は、ほぼ有底円筒状に形成される。そして、前記糠受容器3の底部3Aの中央には、貫通孔3Bが形成される。この貫通孔3Bは、前記収納凹部7Bの貫通孔7Cに対応して、この貫通孔7Cと同軸的に形成される。また、前記貫通孔3Bから上方に延びて前記一次接続部21と後述する二次接続部31の外周を覆うように、筒状部3Cが形成される。
【0016】
そして、前記糠受容器3には、米を収容するための前記精米容器4が着脱自在に挿入される。この精米容器4は、網状部24と、底部材25と、上縁部材26と、円板部27とを有して構成される。前記網状部24は、略円筒状の側周部24Aと、底部24Bと、これらを滑らかに接続する湾曲部24Cとを有して構成される。前記底部材25は、前記網状部24の下部に固定される。前記上縁部材26は、前記網状部24の上部に固定される。更に、前記円板部27は、前記網状部24の底部の内側に設けられる。なお、前記底部材25の中央には、上方に突出した軸受筒部25Aが形成されると共に、その上端には軸孔25Bが形成される。また、前記底部材25には、短円筒状に形成された筒状部25Cが設けられる。この筒状部25Cは、前記精米容器4を前記糠受容器3に対して位置決めすると共に、除去された糠等が前記貫通孔7Cから前記精米器本体2内に侵入するのを防ぐために設けられる。そして、前記軸孔25Bを貫通して、二次従動軸29が、前記軸受筒部25Aに対して回動自在に軸支される。なお、前記軸受筒部25Aに軸支された前記二次従動軸29の中心軸は、垂直となる。更に、前記二次従動軸29の上端には、断面が角丸の正六角形となる係合軸部30が取り付けられる。一方、前記二次従動軸29の下端には、前記一次接続部21に対応して二次接続部31が取り付けられる。そして、前記一次接続部21と二次接続部31とで、前記一次従動軸17の回転を前記二次従動軸29に伝達するカップリング32が構成される。一方、前記上縁部材26には、弦状の把持部33が揺動可能に取り付けられる。
【0017】
前記円板部27は、十分な厚さを有する鋼製である。そして、前記円板部27は、前記網状部24の底部24Bを上方から覆うように、前記精米容器4の内側に設けられる。そして、前記円板部27の外周部27Aは、前記網状部24の湾曲部24Cまで延びると共に、前記外周部27Aは、前記湾曲部24Cに沿って上向きに且つ滑らかに湾曲する。なお、前記円板部27は、前記軸受筒部25Aに対応した孔以外に孔が形成されず、滑らかな表面を有する。
【0018】
前記精米容器4内の二次従動軸29の係合軸部30には、前記精米容器4内の米を撹拌する前記精米体5が着脱可能に取り付けられる。この精米体5は、前記係合軸部30に係合した状態では、前記精米容器4の内部に位置する。そして、前記精米体5は、軸体34と、一対の棒状体35とで構成される。前記軸体34は、前記係合軸部30に係合した状態で、この係合軸部30、ひいては前記二次従動軸29と同軸となる。また、前記棒状体35は、前記軸体34の下部からこの軸体34の軸方向に対して放射方向に突出して設けられる。そして、前記軸体34には、前記係合軸部30に対応して、断面が正六角形となる係合孔部36が形成される。この係合孔部36によって、前記軸体34は、前記係合軸部30、ひいては前記二次従動軸29に対して回り止めされた状態で係合される。また、前記棒状体35は、ステンレス鋼等によって円柱状に形成される。
【0019】
なお、前記円板部27の外周部27Aの外縁は、前記棒状体35の先端35Aが描く軌跡よりも外側まで延びる。また、前記円板部27の外周部27Aの外縁は、前記棒状体35の下端35Bよりも低い。
【0020】
更に、前記収納凹部7B、糠受容器3及び精米容器4の上部を覆うように、前記蓋体6が着脱自在に取り付けられる。なお、この蓋体6は、前記精米容器4の内部が視認できるように、全体が透明な合成樹脂によって構成される。
【0021】
前記精米機本体2には、制御回路37が設けられる。この制御回路37には、精米開始操作部38と、米量設定操作部39と、精白度設定操作部40と、回転速度センサ41と、前記電動機16とが電気的に接続される。なお、前記米量設定操作部39と精白度設定操作部40は、前記操作部10を構成する。また、Pは交流電源である。
【0022】
次に、上記構成の作用について説明する。なお、以下の説明では、玄米から精米する場合について説明する。まず使用者は、前記精米容器4の二次従動軸29の係合軸部30に前記精米体5を取り付けた後、前記精米容器4内に所定量の玄米を収容する。また、前記糠受容器3を前記精米器本体2の収納凹部7Bに取り付ける。この際、前記カップリング32を構成する前記一次接続部21は、前記貫通孔3Bから上方が露出すると共に、前記筒状部3Cによって外周側方が覆われる。そして、前記精米容器4を、前記糠受容器3の内側に装着する。この際、前記カップリング32を構成する前記二次接続部31が前記筒状部3C内に挿入されて前記一次接続部21と係合する。また、前記筒状部25Cが前記筒状部3Cの上部外側を覆うように装着されることで、前記精米容器4が前記糠受容器3に対して位置決めされる。更に、前記収納凹部7Bの上部開口を前記蓋体6によって閉じる。そして、前記コードリール11から図示しないコードを引き出して、このコードのプラグを前記交流電源Pに接続する。次に、前記精米容器4に収容された玄米の量に基づいて、前記米量設定操作部39を操作する。また、前記精米容器4に収容された玄米の目標精米度に基づいて、前記精白度設定操作部40を操作する。これによって、前記制御回路37が前記電動機16を制御するためのパラメータが設定される。更に、前記精米開始操作部38を操作すると、前記制御回路37は、前記電動機16を駆動させる。そして、前記電動機16の駆動力は、小プーリ18から駆動ベルト20、大プーリ19、第一従動軸17、カップリング32、及び二次従動軸29を経て、前記精米体5を回転させる。なお、前記精米体5は、前記小プーリ18と大プーリ19の半径の比率によって、前記電動機16の回転速度に対して所定の減速比で減速されて回転する。
【0023】
そして、前記精米体5を回転させることで、前記精米容器4内の玄米が攪拌されると共に前記精米体5の回転に連れ回る。この際、前記精米容器4内の玄米は、米粒同士が擦れ合ったり、米粒と前記精米容器4とが擦れ合ったりすることで、精米される。なお、米粒は、前記精米容器4内において、円柱状の前記棒状体35をスムーズに乗り越えるように、或いは円柱状の前記棒状体35をスムーズにくぐり抜けるように動く。このため、前記精米容器4内で米粒が必要以上に激しく動かないので、摩擦や衝突による米の温度上昇を低く抑えることができる。そして、精米時における米の温度上昇が抑えられると、米の水分の減少量を低く抑えて砕米の発生を低く抑えることができる。また、精米時における米の温度上昇が抑えられると、熱による米の酸化も抑えられる。従って、米の食味の劣化を抑えることができる。また、前記棒状体35が比較的太い円柱状であり、回転方向前端が鈍いため、前記棒状体35が米粒に衝突した際に、この米粒の局所に衝撃が集中しない。このため、砕米の発生をより低く抑えることができる。
【0024】
米から擦り取られた糠等は、前記精米容器4の網状部24から気流と共に排出され、前記糠受容器3内に貯められる。そして、前述したように、前記筒状部25Cが前記筒状部3Cの上部外側を覆うことで、糠等が前記貫通孔7Cから前記精米器本体2内に侵入することが防止される。
【0025】
米は、前記網状部24を形成する鋼に比べれば軟らかいものである。しかしながら、大量の米が前記網状体24と長い期間擦れると、前記網状体24は摩耗する。そして、この網状体24の摩耗が進行すると、前記網状体24が破れる虞がある。しかしながら、前記網状部24の底部の内側に前記円板部27を設けたことで、米との摩擦が最も大きくなる前記棒状体35の下方が摩耗しにくいので、前記精米容器4が破損しにくい。特に、前記円板部27の外周部27Aの外縁が、前記棒状体35の先端35Aが描く軌跡よりも外側まで延びるので、前記網状部24と米との摩擦が最も大きくなる前記棒状体35の下方全体を摩耗させにくくすることができる。また、前記円板部27に、前記軸受筒部25Aに対応した孔以外に孔がなく、滑らかな表面を有することで、前記円板部27と米との摩擦を小さくすることができる。これによって、前記円板部27自体の摩耗を最小限に抑えることができる。
【0026】
なお、前記円板部27に孔が形成されないので、米から取り除かれた糠等は、下方に排出されない。しかしながら、前記円板部27の外周部27Aの外縁が前記棒状体35の下端35Bよりも低いので、米から取り除かれた糠等は、気流と共に前記網状部24から遠心力の働く水平方向に排出される。そして、この排出は、前記円板部27によって妨げられることがない。更に、前記円板部27と米との摩擦が小さく、且つ、前記円板部27の外周部27Aが前記湾曲部24Cに沿って上向きに滑らかに湾曲するので、前記精米体5によって撹拌された米は、遠心力によって前記外周部27Aに向かって勢いよく移動した後、この外周部27Aに沿って滑らかに且つ勢いよく上向きに上昇する。そして、勢いよく上昇した米は、前記網状部24の側周部24Aに沿って上昇し、この側周部24Aと擦れることで、糠等が取り除かれる。なお、前述した通り、米が前記側周部24Aに沿って勢いよく上昇することで、米が前記側周部24Aに沿って高い位置まで達する。このため、前記側周部24Aにおいて米が擦れる面積を大きくすることができる。従って、前記網状部24の底部24Bに米が擦れないことによる精米効率の低下が抑えられる。
【0027】
米は、前記側周部24Aに沿う高い位置ほど、前記網状部24との摩擦によって公転速度が低下する。従って、前記側周部24Aに沿う高い位置ほど、米に働く遠心力は低下する。このため、遠心力によって前記精米容器4から排出される気流は、前記側周部24Aに沿って上方ほど弱くなり、ある高さから上では、逆に前記精米容器4内に流入する。そして、この高さより上では、米は、前記精米容器4の中央に向かって移動する。換言すれば、この高さ以下では、米は前記側周部24Aに沿って移動する。従って、気流に乗った糠等は、前記網状部24の側周部24Aの上部を通って、前記糠受容器3から前記精米容器4内に流入しようとする。この際、糠等が前記網状体24の側周部24Aの上部外面に付着する。
【0028】
前記制御回路37による電動機16の制御について詳述する。前記制御回路37による電動機16の制御の工程は、始動工程と、この始動工程に続く回転制御工程からなる。始動工程は、前記電動機16に供給する電力を徐々に増加させる工程である。この始動工程は、前記精米容器4に収容された米の抵抗に抗して前記精米体5を回転させる電動機16の負荷を低減させるために実行される。なお、この始動工程では、精米量及び精白度に依らず一定の制御が行われると共に、前記回転速度センサ41からの信号は参照されない。また、回転制御工程は、前記回転速度センサ41からの信号に基づいて、前記電動機16へ供給する電力を調整することで、前記精米体5の回転速度を制御する工程である。
【0029】
前記始動工程は、第一工程と、この第一工程に続いて実行される第二工程と、この第二工程に続いて実行される第三工程とからなる。前記第一工程では、供給電力を緩やかに増加させる。前記第二工程では、前記第一工程よりも供給電力を急激に増加させる。前記第三工程では、前記第二工程よりも供給電力を緩やかに増加させる。なお、本実施形態は、図4に示すように、PWM制御によりデューティー比を増加させることで、前記電動機16に供給する電力を増加させる。そして、本実施形態は、第一工程において、20%から24%まで、約0.1秒毎に1%ずつデューティー比を増加させる。また、第二工程において、24%から51%まで、約0.1秒毎に3%ずつデューティー比を増加させる。更に、第三工程において、51%から73.5%まで、約0.1秒毎に1.5%ずつデューティー比を増加させる。
【0030】
第一工程では、デューティー比の上昇率が低く抑えられるため、前記精米体5の回転速度も緩やかに上昇する。これによって、一見、前記精米容器4内での玄米の公転速度も緩やかに上昇するように思われる。しかしながら、本実施形態のような、円柱状の棒状体35を有する精米体5を用いた精米器1では、前記精米体5の回転速度を急激に上昇させた場合、前記精米体5ばかりが回転して玄米が殆ど公転しない、空回りに近い状態となる。これは、前記棒状体35が米の中をスムーズに通るため、玄米が前記精米体5に連れ回りしにくく、玄米の公転速度が上昇しにくいからである。本実施形態のように、前記精米体5の回転速度が緩やかに上昇するようにした場合、玄米が前記精米体5に連れ回りし易くなり、玄米の公転速度を徐々に上昇させることができる。結果的に、前記精米体5の公転速度を急激に上昇させた場合に比べ、玄米の公転速度を速く上昇させることができる。
【0031】
第一工程で玄米が回転し始めたことで、玄米が動きやすくなるので、第二工程でデューティー比を急激に上昇させると、それに連れて、玄米の公転速度も急速に上昇する。なお、前記第二工程において、玄米の公転速度が上昇すると、この玄米と前記網状体24とが擦れることで発生する前記精米容器4の振動の振動数も徐々に高くなる。そして、玄米が所定の速度帯Vになると、前記精米容器4の振動数が前記精米器本体2の共振周波数と重なる。これによって、前記精米器本体2が大きく振動する。なお、この共振周波数は、前記精米器本体2の構造によって異なる。しかしながら、前述した通り、第二工程では、供給電力を急激に上昇させて、前記精米体5の回転速度及び玄米の公転速度を急激に上昇させることで、玄米を速度帯Vよりも高い速度まで短時間で上昇させることができる。これによって、前記精米器本体2が共振する時間帯を短くして、速やかに共振を収束させることができる。
【0032】
なお、第二工程中において、速度帯Vで玄米が公転する時間帯は、前記精米容器4内の玄米の量によって異なる。前記精米容器4に収容された玄米の量が少ない場合、玄米の速度の上昇が比較的速いので、早い時間帯に速度帯Vまで上昇する。一方、前記精米容器4に収容された玄米の量が多い場合、玄米の速度の上昇が比較的遅いので、遅い時間帯に速度帯Vまで上昇する。しかしながら、第二工程の時間帯は、最小精米量の玄米を精米する場合に玄米が速度帯Vとなる時間帯T1と、最大精米量の玄米を精米する場合に玄米が速度帯Vとなる時間帯T2とを含むように設定される。従って、前記精米器本体2の共振現象は、必ず第二工程中に起きる。そして、この第二工程中に起きた共振現象は、前述した通り、速やかに収束する。
【0033】
そして、第三工程では、デューティー比の上昇率を再び低くすることで、始動工程終了時における前記精米体5の回転速度及び玄米の公転速度が高くなり過ぎるのを防止することができる。このように、前記精米体5の回転速度及び玄米の公転速度を高くし過ぎないことで、砕米の発生を抑えることができる。また、前記精米容器4に収容された玄米の量が少ない場合、始動工程終了時における玄米の公転速度が高くなり過ぎると、始動工程から回転制御工程に移行した際に、前記精米容器4内で玄米が滑らかに動かない。これは、精米量が少ない場合、始動工程に続く回転制御工程で設定された前記精米体5の回転速度が低いので、前記精米体5の回転速度が大きく低下することになるためである。しかしながら、第三工程において、デューティー比の上昇率を低くすることで、始動工程から回転制御工程に滑らかに繋がるようにして、前記精米容器4内で玄米を滑らかに公転させることができる。
【0034】
そして、回転制御工程では、前記精米体5の回転速度を検出した前記回転速度センサ41からの信号に基づき、前記制御回路37が前記電動機16への供給電力を制御することで、前記精米体5の回転速度を制御する。なお、始動工程から回転制御工程に移行する際、前記精米容器4内の玄米の量及び設定された精白度等によって、前記精米体5の回転速度を上昇させる場合も下降させる場合もあり得る。
【0035】
回転制御工程における前記精米体5の回転速度と時間との関係を、幾つか例示する。なお、本実施形態では、最小精米量は1合(約0.18L)である。また、最大精米量は5合(約0.90L)である。
【表1】
【0036】
回転制御工程の初期において、米は玄米の状態であり、表面が滑らかではないので、前記精米体5によって公転させられる米と前記網状部24との摩擦は大きい。従って、公転する米が前記網状部24に衝突した際の米の速度低下は大きい。これは、回転制御工程の初期において、米に加わる衝撃が比較的大きいことを意味する。しかしながら、前述した通り、回転制御工程の初期において、前記精米体5の回転速度を低く抑えることによって、米の公転速度も低く抑えられる。この結果、米が前記網状部24に衝突した際に米に加わる衝撃を小さくすることができる。従って、砕米の発生を抑制することができる。
【0037】
米が前記網状部24と擦れることで、或いは米の粒同士が擦れることで、米の表面の糠等が徐々に削り落とされる。この結果、米の表面は、徐々に滑らかになってゆく。そして、このように米の表面が徐々に滑らかになってゆくと、米と前記網状部24との摩擦が徐々に小さくなってゆく。この結果、米が前記網状部24に衝突した際の米の速度低下が徐々に小さくなってゆく。従って、米が前記網状部24に衝突した際に受ける衝撃も、徐々に小さくなってゆく。このため、回転制御工程の進行に伴って、前記精米体5の回転速度を上昇させる余地が生ずる。即ち、回転制御工程の進行に伴って、前記精米体5の回転速度を上昇させたとしても、米粒が前記網状部24から受ける衝撃が過大にならない。従って、回転制御工程の進行に伴って、前記精米体5の回転速度を上昇させることで、砕米の発生を抑制しつつ、精米時間を短縮することができる。
【0038】
そして、前記制御回路37は、精白度に拘わらず、回転制御工程に続いて終了工程を実行する。なお、この終了工程は、精米量が1合〜3合(約0.54L)の場合に実行される。この終了工程は、図11に示すように、デューティー比100%で1秒間、前記電動機16に電力を供給する。この間、前記精米体5の回転速度は制御されない。実際には、前記精米体5の回転速度は、終了工程において、3000rpm程度まで上昇する。この際、前記精米体5の回転速度及び米の公転速度は、回転制御工程における前記精米体5の回転速度及び米の公転速度よりも上昇する。このため、前記精米容器4の網状部24を通過する気流が変化すると共に、米の公転に伴う振動が増加する。詳述すると、前記精米体5の回転速度及び米の公転速度が上昇することで、米が受ける遠心力も上昇する。そして、前記精米体5がある回転速度以上で回転するようになると、米が前記網状部24の側周部24Aに沿って公転しながらその上端部まで上昇する。この状態では、前記側周部24A全体で、気流が前記精米容器4内から精米容器4外に流出する。この際、米が前記網状部24全体と擦れることで、前記網状部24全体が振動すると共に前記網状部24の振動が増加して、糠が網状部24から離れやすくなっていることと相まって、糠が気流によって外方に押し出される。この結果、前記精米容器4の網状部24の外面に付着していた糠は、前記精米容器4から除去され、前記糠受容器3内に落下する。このため、精米終了後に前記精米容器4を前記精米器本体2から取り出した際に、前記網状部24に付着した糠が床等に落下するという問題が発生しにくいようにすることができる。なお、精米量が4合(約0.72L)以上の場合、回転制御工程時に米が前記網状部24の側周部24Aの上端部まで上昇することで、前記網状部24全体が振動してこの網状部24に糠が付着しにくいため、終了工程を実行する必要がない。
【0039】
なお、終了工程の時間は、以下の条件を全て満たす範囲であれば良い。
(1)精白度に実質的な影響を与えない程度の短い時間であること。終了工程の時間が長すぎると、前記精米体5の回転速度が高められることと相まって、より多くの糠が除去されてしまう。
(2)砕米発生率が基準値以下に抑えられる程度の短い時間であること。終了工程の時間が長すぎると、前記精米体5の回転速度が高められることと相まって、砕米発生率が上昇してしまう。
(3)前記網状部24に付着した全ての糠を除去することができる程度の長い時間であること。この時間は、最低でも、デューティー比100%の電力が前記電動機16に供給された後、前記精米体5が1回転することができる時間以上である。この場合、米は、全体として高速で前記網状部24の内周に沿って一周以上公転する。また、この際、米は、前記精米容器4の網状部24に沿って高い位置まで上昇するので、この網状部24の広い範囲で振動を発生させることができる。更に、終了工程の時間は、米が、回転制御工程の終了時における前記側周部24Aに沿う高さH1から、前記側周部24Aの上端部の高さH2に達することができる時間以上であることが望ましい。即ち、終了工程の時間は、図12の状態から、公転速度が高められた米が前記精米容器4内を公転しながら上昇することで、図13の状態になるのに十分な時間であることが望ましい。
【0040】
例えば、本実施形態では、回転制御工程における前記精米体5の回転回数が最小となる場合(三分搗き/1合)、前記精米体5は、回転制御工程において約1250回転する。前記精米体5の終了工程における回転速度が3000rpmまで上昇すると仮定した場合、この終了工程の1秒間で、前記精米体5は50回転する。即ち、前記回転制御工程における前記精米体5の回転回数に対する、前記終了工程における前記精米体5の回転回数の割合は約4%である。そして、前記精米体5の回転回数が4%程度増加したとしても、精白度に実質的な影響を与えることがない。また、前記精米体5の回転回数が4%程度増加したとしても、砕米発生率に実質的な影響を与えることもない。更に、終了工程が1秒程度あれば、この1秒間で、前記網状部24の側周部24Aに沿って、その上端部の高さH2まで米が上昇する。これによって、米との摩擦で前記網状部24全体が振動すると共に前記網状部24の振動が増加するので、前記精米容器4の網状部24に付着した糠等を十分除去することができる。なお、本実施形態では、回転制御工程における前記精米体5の回転回数が最大となる場合(上白米/3合)、前記精米体5は、回転制御工程において約8480回転する。この場合、前記回転制御工程における前記精米体5の回転回数に対する、前記終了工程における前記精米体5の回転回数の割合は約0.6%である。従って、前記精米体5の回転回数が最小となる場合よりも、更に影響は小さくなる。
【0041】
一方、終了工程におけるデューティー比は、前記網状部24の側周部24Aに沿って米を回転させながら、この米を前記網状部24の側周部24Aに沿って、その上端部の高さH2まで上昇させることができる程度の回転速度で、前記精米体5を回転させることができる範囲であれば良い。例えば、本実施形態では、前記電動機16に供給する電力のデューティー比を100%としている。このデューティー比の電力を前記電動機16に供給して前記精米体5を回転させれば、最小精米量であっても、米が前記側周部24Aの上端の高さH2に達する。
【0042】
以上のように本発明は、米粒を通さず且つ糠を通す孔が形成された網状部24が設けられた精米容器4と、この精米容器4内で回転してこの精米容器4内の米を撹拌する精米体5と、この精米体5を回転させる電動機16と、この電動機16をPWMにより駆動制御する制御回路37とを有する精米器1であって、前記制御回路37が、デューティー比を調整して前記精米体5の回転速度を制御する回転制御工程を実行すると共に、この回転制御工程におけるデューティー比よりも高いデューティー比で前記電動機16を短時間回転させる終了工程を実行することで、前記精米容器4の内外を流通する気流に変化を与えると共に振動を増加させ、前記精米容器4の外面に付着した糠を除去することができるものである。
【0043】
また、本発明は、前記終了工程の時間を、前記精米体が一回転する時間以上としたことで、米も前記精米容器4内を一周以上高速で公転するので、米を前記精米容器4の高い位置まで上昇させ、この精米容器4の広い範囲で振動を発生させることができるので、前記精米容器4から確実に糠等を除去することができるものである。
【0044】
なお、本発明は以上の実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、上記実施形態では、終了工程を、デューティー比100%で1秒間としたが、回転制御工程におけるデューティー比よりも十分高いデューティー比で、且つ、上述した条件を満たす時間であれば、デューティー比及び時間は任意である。
【符号の説明】
【0045】
1 精米器
4 精米容器
5 精米体
16 電動機
24 網状部
37 制御回路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
米粒を通さず且つ糠を通す孔が形成された精米容器と、この精米容器内で回転してこの精米容器内の米を撹拌する精米体と、この精米体を回転させる電動機と、この電動機をPWMにより駆動制御する制御回路とを有する精米器において、
前記制御回路が、デューティー比を調整して前記精米体の回転速度を制御する回転制御工程を実行すると共に、この回転制御工程におけるデューティー比よりも高いデューティー比で前記電動機を短時間回転させる終了工程を実行することを特徴とする精米器。
【請求項2】
前記終了工程の時間を、前記精米体が一回転する時間以上としたことを特徴とする請求項1記載の精米器。
【請求項3】
米粒を通さず且つ糠を通す孔が形成された精米容器と、この精米容器内で回転してこの精米容器内の米を撹拌する精米体と、この精米体を回転させる電動機と、この電動機をPWMにより駆動制御する制御回路とを有する精米器の制御方法において、
前記制御回路が、回転制御工程にて、前記電動機に供給する電力のデューティー比を調整して前記精米体の回転速度を制御し、この回転制御工程に続く終了工程にて、前記回転制御工程におけるデューティー比よりも高いデューティー比で前記電動機を短時間回転させることを特徴とする精米器の制御方法。
【請求項4】
前記終了工程を、前記精米体が一回転する時間以上の時間実行することを特徴とする請求項3記載の精米器の制御方法。
【請求項1】
米粒を通さず且つ糠を通す孔が形成された精米容器と、この精米容器内で回転してこの精米容器内の米を撹拌する精米体と、この精米体を回転させる電動機と、この電動機をPWMにより駆動制御する制御回路とを有する精米器において、
前記制御回路が、デューティー比を調整して前記精米体の回転速度を制御する回転制御工程を実行すると共に、この回転制御工程におけるデューティー比よりも高いデューティー比で前記電動機を短時間回転させる終了工程を実行することを特徴とする精米器。
【請求項2】
前記終了工程の時間を、前記精米体が一回転する時間以上としたことを特徴とする請求項1記載の精米器。
【請求項3】
米粒を通さず且つ糠を通す孔が形成された精米容器と、この精米容器内で回転してこの精米容器内の米を撹拌する精米体と、この精米体を回転させる電動機と、この電動機をPWMにより駆動制御する制御回路とを有する精米器の制御方法において、
前記制御回路が、回転制御工程にて、前記電動機に供給する電力のデューティー比を調整して前記精米体の回転速度を制御し、この回転制御工程に続く終了工程にて、前記回転制御工程におけるデューティー比よりも高いデューティー比で前記電動機を短時間回転させることを特徴とする精米器の制御方法。
【請求項4】
前記終了工程を、前記精米体が一回転する時間以上の時間実行することを特徴とする請求項3記載の精米器の制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−45454(P2012−45454A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−187588(P2010−187588)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(000109325)ツインバード工業株式会社 (176)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(000109325)ツインバード工業株式会社 (176)
【Fターム(参考)】
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