説明

精製装置及び精製方法

【課題】より高純度な物質を高収率で生産性よく精製することの出来る精製装置、及び精製方法を提供することを目的とする。
【解決手段】物質を精製する精製部において系内を流れるキャリアガスを精製部に供給する前に加熱し、より高い温度に加熱された気体をキャリアガスとして精製部の気体供給部より供給する。予め加熱されることによってキャリアガスの温度と、精製部の温度との温度差を小さい状態とすることができる。精製部に供給されたキャリアガスは精製部に設けられた気体排出部より排出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物質を精製するための精製装置、及び物質の精製方法に関し、特に物質を気化して精製するための装置、精製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロニクス材料、及び有機薄膜トランジスタに用いられている有機半導体材料などの有機化合物材料は、素子の特性や耐久性に影響を及ぼすため、高い純度が必要とされている。また、工業的に素子を用いて半導体装置、表示装置などのデバイスを作製する場合、上記有機化合物材料を高収率、短時間で効率的に精製できることも求められている。
【0003】
このような有機化合物材料の精製方法として昇華精製法等が用いられており、より高純度な材料を効率的に精製するために研究が行われている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1は、真空チャンバー内に熱源、昇華部、捕集室を設置し、熱源からの加熱により昇華部に設けた有機化合物材料を昇華させ、捕集室に導入し捕集するという昇華精製方法を用いて、効率的に高純度な有機化合物材料を精製するとしている。
【特許文献1】特開2003−88704号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
生産性を高めるためには精製装置の大型化が考えられるが、昇華精製法は精密な熱勾配制御が求められる技術であり、装置の大型化によって精製部の正確な温度制御が困難になる可能性がある。従ってより高性能な有機化合物材料を用いたデバイスの量産化が向けて、より高純度な有機化合物材料を高収率で生産性よく精製する技術が必要とされている。
【0005】
上記課題を鑑み、本発明は、より高純度な物質を高収率で生産性よく精製することの出来る精製装置、及び精製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の精製方法は、熱勾配を有する系(常圧、減圧、真空下でもよい)(以下、精製部ともいう)中で不純物を含む物質を加熱し昇華させ、系中にキャリアガスとして流す不活性気体によって輸送することにより、昇華点及び重量の異なる不純物と目的とする物質とを分離する精製方法である。
【0007】
本発明では、物質を精製する精製部において系内を流れるキャリアガスを精製部に供給する前に加熱し、精製部に近い温度に加熱された気体をキャリアガスとして精製部に供給することを特徴とする。予め加熱されることによってキャリアガスの温度と、精製部の温度との温度差を小さい状態とすることができる。
【0008】
上記精製方法は、熱勾配及びキャリアガスを利用して高精度に不純物と有機化合物とを分別し、高純度な有機化合物を精製する方法である。そのため、精製部において精密な熱勾配制御及びキャリアガスの流量制御が重要である。
【0009】
一方、量産を目的とする装置の大型化に伴って、物質を精製する精製部も大型化する。しかし精製部が大型化されることで、精製部系内の熱の不均一が生じる可能性がある。精製部内の熱の不均一とは同温度で保持されるべき領域が例えば精製部の温度調節手段(加熱部)と距離の関係で温度差を有してしまうことであり、例えば精製部にガラス管を用い、ガラス管の周囲側面を囲むように設けられた温度調節手段を有する場合、温度調節手段に含まれる加熱部と近いガラス管外周付近は温度が高く、ガラス管の中心部付近は温度が低いといった状態である。
【0010】
また、精製部の熱の不均一は精製部を流れるキャリアガスの影響によっても生じる可能性があり、これは、装置の大型化に伴いキャリアガスの流量が大きくなることによってより顕著に問題化する。熱の均一化を得るためには温度調節手段の熱源を増やす等が考えられるが、コストがかかるだけでなく、より大型化、複雑化した装置が必要となってしまう。
【0011】
本発明では、加熱したキャリアガスを精製部に供給することで、キャリアガスによる精製部内の温度低下、熱の不均一化を防ぐことができる。また、加熱されたキャリアガスを精製部内に流すことにより、大型化した精製部内の低温度領域を加熱し、精製部内の温度を均一化することができる。さらに加熱されたキャリアガスにより精製部内の温度勾配がより緩やかに連続的になるため、不純物と目的とする物質とは十分に距離を有して析出することができる。よって、精度の高い分別ができ、より高純度な物質を得ることができる。
【0012】
本発明の精製装置の一形態は、物質を気化して精製する精製部と、精製部に設けられ、精製部に温度勾配を付ける精製部温度調節手段と、精製部の一方の端部に設けられた気体供給手段と、精製部の他方の端部に設けられた気体排出部と、気体温度調節手段とを有し、気体供給手段より供給される気体は気体温度調節手段により加熱され精製部へと供給される。
【0013】
本発明の精製装置の一形態は、物質を気化して精製する精製部と、精製部に設けられ、精製部に温度勾配を付ける温度調節手段と、精製部の一方の端部に設けられた気体供給手段と、精製部の他方の端部に設けられた気体排出部とを有し、気体供給手段より供給される気体は温度調節手段により加熱され精製部へと供給される。
【0014】
本発明の精製装置の一形態は、物質を気化して精製する精製部と、精製部に設けられ、精製部に温度勾配を付ける精製部温度調節手段と、精製部の一方の端部に設けられた気体供給手段と、精製部の他方の端部に設けられた気体排出部と、気体温度調節手段とを有し、気体供給手段より精製部へ第1の気体及び第2の気体が供給され、気体供給手段より供給される第1の気体は気体温度調節手段により加熱され精製部へと供給される。
【0015】
本発明の精製装置の一形態は、物質を気化して精製する精製部と、精製部に設けられ、精製部に温度勾配を付ける温度調節手段と、精製部の一方の端部に設けられた気体供給手段と、精製部の他方の端部に設けられた気体排出部とを有し、気体供給手段より精製部へ第1の気体及び第2の気体が供給され、気体供給手段より供給される第1の気体は温度調節手段により加熱され精製部へと供給される。
【0016】
本発明の精製方法の一形態は、精製部において精製部の一方の端部より他方の端部へ気体を流しながら、物質が設けられた精製部を加熱して物質を気化して精製し、気体は、精製部に供給する前に加熱し、加熱された気体を精製部の一方の端部より供給し、供給された気体を精製部の他方の端部より排出する。
【0017】
本発明の精製方法の一形態は、精製部において精製部の一方の端部より他方の端部へ第1の気体及び第2の気体を流しながら、物質が設けられた精製部を加熱して物質を気化して精製し、第1の気体は、精製部に供給する前に加熱し、加熱された第1の気体を精製部の一方の端部より供給し、供給された第1の気体を精製部の他方の端部より排出し、第1の気体の温度より第2の気体の温度は低い。
【0018】
上記精製部と精製部温度調節手段又は温度調節手段は、接していてもよいし、近接していてもよい。また、一体となって組み込まれた状態となっていてもよい。同様に、上記精製部と気体供給手段とは、接していてもよいし、近接していてもよい。なお、近接するとは、ある程度間隔(空間)を有して設けられている状態を指す。
【0019】
上記構成において、キャリアガスとして用いる精製部に供給される気体(第1の気体、第2の気体)は、不活性気体(窒素(N)、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe))を用いることができる。また、気体の排出は、精製部の気体排出部より排出することができ、気体排出手段を用いて気体排出を行ってもよい。気体排出手段としては、ロータリーポンプ、拡散ポンプなどのポンプ等を用いればよい。
【0020】
また、物質の精製は、常圧下、減圧下、真空下で行うことができ、精製部の圧力の制御は圧力計(真空計)で管理しつつポンプ等で精製部内を排気すればよい。
【0021】
なお、本発明で精製する物質は、気化して精製できるあらゆる物質を範疇に含むものとする。また、本明細書中において精製とは、物質の三態変化を利用するものとし、昇華精製の他、蒸留も範疇に含むものとする。すなわち、固体が液体を経ずに直接その気体になる現象、及び逆に気体が液体を経ずに直接その固体になる現象を利用する精製の他、固体が液体を経て気体になる現象、及び逆に気体が液体を経て固体になる現象を利用する精製も含むものとする。したがって、目的物質は固体として気体から昇華、又は気体から液体へ凝縮するものだけでなく、液体として凝縮するものも含むものとする。また、本明細書では固体として昇華又は凝固することを析出ともいうこととする。
【0022】
また、本発明における精製方法は、無機化合物材料、有機化合物材料、または無機化合物及び有機化合物の混合材料などの物質に用いることができ、特に有機化合物材料に有効である。
【発明の効果】
【0023】
本発明では、精製部に加熱し、精製部との温度差を軽減したキャリアガスを供給することで、キャリアガスによる精製部内の温度低下、熱の不均一化を防ぐことができる。また、加熱されたキャリアガスを精製部内に流すことにより、大型化した精製部内の低温度領域を加熱し、精製部内の温度を均一化することができる。さらに加熱されたキャリアガスにより精製部内の温度勾配がより緩やかに連続的になるため、不純物と目的とする物質とは十分に距離を有して析出することができる。よって、精度の高い分別ができ、より高純度な物質を得ることができる。
【0024】
従って、本発明の精製装置、精製方法により、より高純度な物質を高収率で生産性よく精製することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。但し、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0026】
(実施の形態1)
本実施の形態では、より高純度な物質を高収率で生産性よく精製することを目的とした精製装置、及び精製方法の一例を、図1を用いて説明する。
【0027】
図1(A)は、本発明の精製装置を模式的に示したブロック図であり、図1(B)は断面図である。
【0028】
本発明の精製装置100は、気体供給部102a及び気体排出部102bを含む、試料である物質を気化し目的物質を精製回収するための精製部102と、試料を気化し、精製するための精製部温度調節手段105と、精製部102に気体供給部102aよりキャリアガスとなる気体を供給する気体供給手段101と、精製部102の気体排出部102bよりキャリアガスを排出する気体排出手段103と、気体供給手段101より供給される気体の温度を加熱により調整する気体温度調節手段104を有する。気体供給手段101からのキャリアガスの導入により、気化した試料を円滑に拡散させることができる。なお、本明細書で試料とは、目的物質、不純物、及び溶媒等が混在している物質のことを示す。本実施の形態では精製部102より気体を排気する際、気体排出部102bより気体排出手段103を用いて排出する例を示すが、気体排出手段103は必ずしも用いなくてもよい。
【0029】
図1(B)に示すように、精製部温度調節手段105は、精製部102に近接して設けられており、精製部102は該精製部温度調節手段105により温度勾配を付けられる。具体的には、試料が気化する温度領域、目的物質が析出又は凝縮する温度領域等、少なくとも目的物質を単離、精製、回収できるように、精製部102は温度勾配を付けられる。
【0030】
上記精製部102と精製部温度調節手段105は、接していてもよいし、近接していてもよいし、一体となって組み込まれた状態となっていてもよい。同様に、上記精製部102と気体供給手段101とは、接していてもよいし、近接していてもよいし、一体となって組み込まれた状態となっていてもよい。近接するとは、ある程度間隔(空間)を有して設けられている状態を指す。
【0031】
精製部102としてタングステンやタンタルなどの金属管を用いる場合、金属管に電圧を印加し、加熱することができるため、精製部温度調節手段105として用いることができる。
【0032】
本実施の形態では、物質を精製する精製部102において系内を流れるキャリアガスを精製部102に供給する前に気体温度調節手段104により加熱し、精製部102に近い温度に加熱された気体をキャリアガスとして精製部102に供給することを特徴とする。予め加熱されることによってキャリアガスの温度と、精製部102温度との温度差を小さい状態とすることができる。
【0033】
上記精製方法は、熱勾配及びキャリアガスを利用して高精度に不純物と有機化合物とを分別し、高純度な有機化合物を精製する方法である。そのため、精製部において精密な熱勾配制御及びキャリアガスの流量制御が重要である。
【0034】
一方、量産を目的とする装置の大型化に伴って、物質を精製する精製部も大型化する。しかし精製部が大型化されることで、精製部系内の熱の不均一が生じる可能性がある。精製部内の熱の不均一とは同温度で保持されるべき領域が例えば精製部の温度調節手段(加熱部)と距離の関係で温度差を有してしまうことであり、例えば精製部にガラス管を用い、ガラス管の周囲側面を囲むように設けられた温度調節手段を有する場合、温度調節手段に含まれる加熱部と近いガラス管外周付近は温度が高く、ガラス管の中心部付近は温度が低いといった状態である。
【0035】
また、精製部の熱の不均一は精製部を流れるキャリアガスの影響によっても生じる可能性があり、これは、装置の大型化に伴いキャリアガスの流量が大きくなることによってより顕著に問題化する。熱の均一化を得るためには温度調節手段の熱源を増やす等が考えられるが、コストがかかるだけでなく、より大型化、複雑化した装置が必要となってしまう。
【0036】
本実施の形態では、加熱し、精製部との温度差を軽減したキャリアガスを精製部102に供給することで、キャリアガスによる精製部102内の温度低下、熱の不均一化を防ぐことができる。また、加熱されたキャリアガスを精製部102内に流すことにより、大型化した精製部102内の低温度領域を加熱し、精製部102内の温度を均一化することができる。さらに加熱されたキャリアガスにより精製部102内の温度勾配がより緩やかに連続的になるため、不純物と目的とする物質とは十分に距離を有して析出することができる。よって、精度の高い分別ができ、より高純度な物質を得ることができる。
【0037】
例えば、精製する物質として有機半導体材料であるペンタセンを用いる場合、ペンタセンを昇華させる温度は約280℃、不純物は約220℃付近で除去する。この場合、精製部に供給されるキャリアガスは、約280℃付近の温度に調節すればよいので、加熱されたキャリアガスは精製部における昇華温度より±60℃以内であれば好ましい。
【0038】
上記構成において、キャリアガスとして用いる精製部に供給される気体は、不活性気体(窒素(N)、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe))を用いることができる。また、排出手段としては、ポンプ等を用いればよい。
【0039】
なお、気体供給手段から精製部に導入するキャリアガスは不活性気体以外を用いてもよいが、不活性気体の方が試料や目的物質等の酸化、分解等を抑えることができるので好ましい。もちろん、精製部に存在する試料や目的物質等と反応する気体を用いてはならない。
【0040】
また、物質の精製は、常圧下、減圧下、真空下で行うことができ、精製部の圧力の制御は圧力計(真空計)で管理しつつ気体排出手段103として用いるポンプ等で精製部102内を排気すればよい。また、常圧下であれば気体排出手段103は必ずしも必要でなく用いなくてもよい。
【0041】
気体排出手段及び精製部は、配管等を用いて連結すればよい。また、精製部と気体排出手段との間に液体窒素等を用いた冷却トラップを設けてもよい。真空排気手段によって精製部内を減圧し、真空状態とすると、試料が気化する温度を下げることができる。すなわち、気体排出手段を用いて精製部を減圧すると、試料の昇華又は蒸発温度が低下し、大気圧下では気化しない試料も気化させることが可能となる。
【0042】
精製部102で気化した試料は、蒸気圧の低い方へ拡散していく。蒸気圧は一般に温度の上昇とともに増大する。したがって、気化した試料は温度勾配に従って、温度の低い方へ拡散していく。すなわち、気化した試料は精製管内の圧力及び温度勾配に従って、液体または固体に状態変化する温度で、液体として凝縮または固体として析出する。なお、試料が気化する温度領域が、精製部102の最も高温の領域となる。温度勾配は、一方向に温度が低くなるようにしてもよいし、精製部102の中央を高温領域となるようにし、両方向に温度が低くなるようにしてもよい。この場合も、精製部を流れるキャリアガスの温度は流れる領域の設定温度とほぼ同じ程度に設定することが好ましく、精製部102における温度勾配の設定に従って供給するキャリアガスの温度を設定すればよい。
【0043】
キャリアガスの温度設定は、材料である物質中の目的物が分解等により変質する温度よりも低い事が好ましい。また、キャリアガスの温度設定は温度が高い程温度勾配が緩やかになり、その他の精製部温度調節手段105と同程度の温度にするのが好ましいが、目的物が目的の純度を得られるのならば、精製部温度調節手段105の温度よりも低く設定した方が、回収領域が小さくて済むため回収効率が向上する。
【0044】
材料となる物質が突沸し易いものである場合は、キャリアガスの設定よりも精製部温度調節手段105の設定を低く突沸しない程度に設定するのが好ましい。すると、物質において、キャリアガスに触れている部分から気化していくので突沸を防ぐことができる。好ましくは、キャリアガスの気体温度調節手段104の温度を物質が気化する温度、精製部温度調節手段105の温度を物質が突沸しない程度の温度と設定すればよい。
【0045】
気体温度調節手段104、精製部温度調節手段105としては、ヒータ、ホットプレート等を用いればよく、精製部102(例えば、試料を気化する精製管の近傍等)に近接して設ければよい。なお、図1では気体温度調節手段104を気体供給手段101に、精製部温度調節手段105を精製部102に近接して1つのみ設けた場合を示したが、本発明はこれに限らず、複数個設けても構わない。気体温度調節手段104、精製部温度調節手段105の設置場所や個数は、適宜変更可能である。また、精製部102にかけた温度勾配を一定に保持できるように、保温手段や、精製部102、気体温度調節手段104によって加熱された気体が通過する管などを囲う金属カバー、ガラスウール等の保護カバー等を設けるのが好ましい。
【0046】
なお、精製部102の温度調節をする際に、試料が気化する温度、目的物質が析出又は凝縮する温度等の温度領域を最適な温度に設定する必要がある。これは、目的物質の分解点、昇華点、又は沸点等を調べ、設定すればよい。
【0047】
精製部102は、好ましくは2つ以上の精製管が連なって構成する。精製部102に配置する精製管の個数は、適宜変更可能である。具体的には、試料を配置するための第1の精製管と、精製されて析出又は凝縮した目的物質を回収するための第2の精製管を含む、好ましくは2つ以上の精製管を有していればよい。精製管の基本構造は、中空管である。精製管は、気化した試料(目的物質及び不純物を含む)が通過できるように、少なくとも隣接する精製管との端部には開口が設けられている。精製管としては、ガラス、石英等からなる中空管を用いるのが好ましい。また、本発明はこれに限らず、試料や目的物質及び不純物と反応しない材料で、且つ目的物質の回収時に目的物質中に混入せず、実施温度に耐えうる材料であればよい。なお、常圧で精製する場合において、精製部102を密閉して加熱すると管内の圧力が上がる場合があり、非常に危険である。ゆえに、どちらか一方の端部は開けておかねばならない。したがって、常圧で本精製装置を用いる場合には、少なくとも精製部102に1箇所は外界と通じる開口(気体排出部102b)を設けなければならない。
【0048】
次に、図1に示す精製部102には精製間を固定する固定手段が設けられており、少なくとも、精製管が隣接して配置された状態を保持・固定できる手段であればよい。好ましくは、精製部102が長軸方向に水平となるように保持、固定できる手段であるとよい。固定手段としては、精製部102に含まれる各々の精製管をクランプ等で固定してもよいし、精製管を水平な台に配置してもよい。また、精製管の管外径よりも大きい管内径を有するガラス等の管の中に配置しても構わない。
【0049】
本実施の形態では、精製部に加熱し、精製部との温度差を軽減したキャリアガスを供給することで、キャリアガスによる精製部内の温度低下、熱の不均一化を防ぐことができる。また、加熱されたキャリアガスを精製部内に流すことにより、大型化した精製部内の低温度領域を加熱し、精製部内の温度を均一化することができる。さらに加熱されたキャリアガスにより精製部内の温度勾配がより緩やかに連続的になるため、不純物と目的とする物質とは十分に距離を有して析出することができる。よって、精度の高い分別ができ、より高純度な物質を得ることができる。
【0050】
また、本実施における精製方法は、無機化合物材料、有機化合物材料、または無機化合物及び有機化合物の混合材料などの物質に用いることができ、特に有機化合物材料に有効である。
【0051】
本実施の形態で精製された物質は、有機薄膜トランジスタや有機エレクトロルミネッセンス素子を例とする発光素子などの各種素子に用いることができる。高純度に精製された物質であるので、作製される素子の特性も高めることができる。
【0052】
従って、本実施の形態の精製装置、精製方法により、より高純度な物質を高収率で生産性よく精製することができる。
【0053】
(実施の形態2)
本実施の形態では、より高純度な物質を高収率で生産性よく精製することを目的とした精製装置、及び精製方法の一例を、図2を用いて説明する。実施の形態1の精製装置及び精製方法において、気体の温度調節の手段が異なる例であり、実施の形態1と同様な機能を有する部分は、同様の材料、方法を用いればよく、その繰り返しの説明は省略する。
【0054】
図2(A)は、本発明の精製装置を模式的に示したブロック図であり、図2(B)は断面図である。
【0055】
本実施の形態の精製装置110は、気体供給部112a及び気体排出部112bを含む、試料である物質を気化し目的物質を精製、回収するための精製部112と、精製部112に気体供給部112aよりキャリアガスとなる気体を供給する気体供給手段111と、精製部112の気体排出部112bよりキャリアガスを排出する気体排出手段113と、試料を気化し精製するための精製部温度調節手段及び、気体供給手段111より供給される気体の温度を加熱により調整する気体温度調節手段を兼ねる温度調節手段114を有する。気体供給手段111からのキャリアガスの導入により、気化した試料を円滑に拡散させることができる。本実施の形態では精製部112より気体を排気する際、気体排出部112bより気体排出手段113を用いて排出する例を示すが、気体排出手段113は必ずしも用いなくてもよい。
【0056】
本実施の形態の精製装置110は、物質を精製するため加熱を行う精製部温度調節手段と、精製部112に気体供給手段111より供給されるキャリアガスを加熱する気体温度調節手段とを温度調節手段114を共通して用いて行う。このように温度調節手段を精製部と気体とを共通して用いると、装置が簡略化するため小型化し省スペース化、低コスト化できる。また、精製部と供給される気体とがほぼ同じ温度に加熱され調整されるため、個別で温度設定をしなくとも精製部の温度の均一化を行うことができる。
【0057】
図2(B)に示すように、温度調節手段114は、精製部112に近接して設けられており、精製部112は該温度調節手段114により温度勾配を付けられる。具体的には、試料が気化する温度領域、目的物質が析出又は凝縮する温度領域等、少なくとも目的物質を単離、精製、回収できるように、精製部112は温度勾配を付けられる。
【0058】
上記精製部112と温度調節手段114は、接していてもよいし、近接していてもよいし、一体となって組み込まれた状態となっていてもよい。同様に、上記精製部112と気体供給手段111とは、接していてもよいし、近接していてもよいし、一体となって組み込まれた状態となっていてもよい。なお、近接するとは、ある程度間隔(空間)を有して設けられている状態を指す。
【0059】
精製部112としてタングステンやタンタルなどの金属管を用いる場合、金属管に電圧を印加し、加熱することができるため、温度調節手段114として用いることができる。
【0060】
本実施の形態では、物質を精製する精製部112において系内を流れるキャリアガスを精製部112に供給する前に温度調節手段114により加熱し、精製部112に近い温度に加熱された気体をキャリアガスとして精製部112に供給することを特徴とする。予め加熱されることによってキャリアガスの温度と、精製部112の温度との温度差を小さい状態とすることができる。
【0061】
上記精製方法は、熱勾配及びキャリアガスを利用して高精度に不純物と有機化合物とを分別し、高純度な有機化合物を精製する方法である。そのため、精製部において精密な熱勾配制御及びキャリアガスの流量制御が重要である。
【0062】
一方、量産を目的とする装置の大型化に伴って、物質を精製する精製部も大型化する。しかし精製部が大型化されることで、精製部系内の熱の不均一が生じる可能性がある。精製部内の熱の不均一とは同温度で保持されるべき領域が例えば精製部の温度調節手段(加熱部)と距離の関係で温度差を有してしまうことであり、例えば精製部にガラス管を用い、ガラス管の周囲側面を囲むように設けられた温度調節手段を有する場合、温度調節手段に含まれる加熱部と近いガラス管外周付近は温度が高く、ガラス管の中心部付近は温度が低いといった状態である。
【0063】
また、精製部の熱の不均一は精製部を流れるキャリアガスの影響によっても生じる可能性があり、これは、装置の大型化に伴いキャリアガスの流量が大きくなることによってより顕著に問題化する。熱の均一化を得るためには温度調節手段の熱源を増やす等が考えられるが、コストがかかるだけでなく、より大型化、複雑化した装置が必要となってしまう。
【0064】
本実施の形態では、加熱し、精製部との温度差を軽減したキャリアガスを精製部112に供給することで、キャリアガスによる精製部112内の温度低下、熱の不均一化を防ぐことができる。また、加熱されたキャリアガスを精製部112内に流すことにより、大型化した精製部112内の低温度領域を加熱し、精製部112内の温度を均一化することができる。さらに加熱されたキャリアガスにより精製部112内の温度勾配がより緩やかに連続的になるため、不純物と目的とする物質とは十分に距離を有して析出することができる。よって、精度の高い分別ができ、より高純度な物質を得ることができる。
【0065】
上記構成において、キャリアガスとして用いる精製部に供給される気体は、不活性気体(窒素(N)、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe))を用いることができる。また、排出手段としては、ポンプ等を用いればよい。
【0066】
なお、気体供給手段から精製部に導入するキャリアガスは不活性気体以外を用いてもよいが、不活性気体の方が試料や目的物質等の酸化、分解等を抑えることができるので好ましい。もちろん、精製部に存在する試料や目的物質等と反応する気体を用いてはならない。
【0067】
また、有機化合物の精製は、常圧下、減圧下、真空下で行うことができ、精製部の圧力の制御は圧力計(真空計)で管理しつつ気体排出手段113として用いるポンプ等で精製部112内を排気すればよい。また、常圧下であれば気体排出手段113は必ずしも必要でないため用いなくてもよい。
【0068】
気体排出手段及び精製部は、配管等を用いて連結すればよい。また、精製部と気体排出手段との間に液体窒素等を用いた冷却トラップを設けてもよい。真空排気手段によって精製部内を減圧し、真空状態とすると、試料が気化する温度を下げることができる。すなわち、気体排出手段を用いて精製部を減圧すると、試料の昇華又は蒸発温度が低下し、大気圧下では気化しない試料も気化させることが可能となる。
【0069】
精製部112で気化した試料は、蒸気圧の低い方へ拡散していく。蒸気圧は一般に温度の上昇とともに増大する。したがって、気化した試料は温度勾配に従って、温度の低い方へ拡散していく。すなわち、気化した試料は精製管内の圧力及び温度勾配に従って、液体または固体に状態変化する温度で、液体として凝縮または固体として析出する。なお、試料が気化する温度領域が、精製部112の最も高温の領域となる。温度勾配は、一方向に温度が低くなるようにしてもよいし、精製部112の中央を高温領域となるようにし、両方向に温度が低くなるようにしてもよい。この場合も、精製部を流れるキャリアガスの温度は流れる領域の設定温度とほぼ同じ程度に設定することが好ましく、精製部112における温度勾配の設定に従って供給するキャリアガスの温度を設定すればよい。
【0070】
キャリアガスの温度設定は、材料である物質中の目的物が分解等により変質する温度よりも低い事が好ましい。また、キャリアガスの温度設定は温度が高い程温度勾配が緩やかになり、その他の温度調節手段114と同程度の温度にするのが好ましいが、目的物が目的の純度を得られるのならば、温度調節手段114の温度よりも低く設定した方が、回収領域が小さくて済むため回収効率が向上する。
【0071】
材料となる物質が突沸し易いものである場合は、キャリアガスの設定よりも温度調節手段114の設定を低く突沸しない程度に設定するのが好ましい。すると、物質において、キャリアガスに触れている部分から気化していくので突沸を防ぐことができる。
【0072】
温度調節手段114としては、ヒータ、ホットプレート等を用いればよく、精製部112(例えば、試料を気化する精製管の近傍等)に近接して設ければよい。なお、図2では温度調節手段114を精製部112に近接して1つのみ設けた場合を示したが、本発明はこれに限らず、複数個設けても構わない。温度調節手段114の設置場所や個数は、適宜変更可能である。また、精製部112にかけた温度勾配を一定に保持できるように、保温手段や、精製部112、温度調節手段114によって加熱された気体が通過する管などを囲う保護カバー等を設けるのが好ましい。
【0073】
なお、精製部112の温度調節をする際に、試料が気化する温度、目的物質が析出又は凝縮する温度等の温度領域を最適な温度に設定する必要がある。これは、目的物質の分解点、昇華点、又は沸点等を調べ、設定すればよい。
【0074】
精製部112は、好ましくは2つ以上の精製管が連なって構成する。精製部112に配置する精製管の個数は、適宜変更可能である。具体的には、試料を配置するための第1の精製管と、精製されて析出又は凝縮した目的物質を回収するための第2の精製管を含む、好ましくは2つ以上の精製管を有していればよい。精製管の基本構造は、中空管である。精製管は、気化した試料(目的物質及び不純物を含む)が通過できるように、少なくとも隣接する精製管との端部には開口が設けられている。精製管としては、ガラス、石英等からなる中空管を用いるのが好ましい。また、本発明はこれに限らず、試料や目的物質及び不純物と反応しない材料で、且つ目的物質の回収時に目的物質中に混入せず、実施温度に耐えうる材料であればよい。なお、常圧で精製する場合において、精製部112を密閉して加熱すると管内の圧力が上がる場合があり、非常に危険である。ゆえに、どちらか一方の端部は開けておかねばならない。したがって、常圧で本精製装置を用いる場合には、少なくとも精製部112に1箇所は外界と通じる開口(気体排出部112b)を設けなければならない。
【0075】
次に、図2に示す精製部112には精製間を固定する固定手段が設けられており、少なくとも、精製管が隣接して配置された状態を保持・固定できる手段であればよい。好ましくは、精製部112が長軸方向に水平となるように保持、固定できる手段であるとよい。固定手段としては、精製部112に含まれる各々の精製管をクランプ等で固定してもよいし、精製管を水平な台に配置してもよい。また、精製管の管外径よりも大きい管内径を有するガラス等の管の中に配置しても構わない。
【0076】
また、本実施における精製方法は、無機化合物材料、有機化合物材料、または無機化合物及び有機化合物の混合材料などの物質に用いることができ、特に有機化合物材料に有効である。
【0077】
本実施の形態で精製された物質は、有機薄膜トランジスタや有機エレクトロルミネッセンス素子を例とする発光素子などの各種素子に用いることができる。高純度に精製された物質であるので、作製される素子の特性も高めることができる。
【0078】
本実施の形態では、精製部に加熱し、精製部との温度差を軽減したキャリアガスを供給することで、キャリアガスによる精製部内の温度低下、熱の不均一化を防ぐことができる。また、加熱されたキャリアガスを精製部内に流すことにより、大型化した精製部内の低温度領域を加熱し、精製部内の温度を均一化することができる。さらに加熱されたキャリアガスにより精製部内の温度勾配がより緩やかに連続的になるため、不純物と目的とする物質とは十分に距離を有して析出することができる。よって、精度の高い分別ができ、より高純度な物質を得ることができる。
【0079】
従って、本実施の形態の精製装置、精製方法により、より高純度な物質を高収率で生産性よく精製することができる。
【0080】
(実施の形態3)
本実施の形態では、より高純度な物質を高収率で生産性よく精製することを目的とした精製装置、及び精製方法の一例を、図3を用いて説明する。実施の形態1の精製装置及び精製方法において、気体温度調節手段を詳細に説明する例であり、実施の形態1と同様な機能を有する部分は、同様の材料、方法を用いればよく、その繰り返しの説明は省略する。
【0081】
図3(A)は、本発明の精製装置を模式的に示したブロック図であり、図3(B)は断面図である。
【0082】
本発明の精製装置120は、気体供給部122a及び気体排出部122bを含む、試料である物質を気化し目的物質を精製、回収するための精製部122と、試料を気化し、精製するための精製部温度調節手段125と、精製部122に気体供給部122aよりキャリアガスとなる気体を供給する気体供給手段121と、精製部122の気体排出部122bよりキャリアガスを排出する気体排出手段123と、気体供給手段121より供給される気体の温度を加熱により調整する気体温度調節手段124を有する。気体供給手段121(121a、121b)からのキャリアガスの導入により、気化した試料を円滑に拡散させることができる。本実施の形態では精製部122より気体を排気する際、気体排出部122bより気体排出手段123を用いて排出する例を示すが、気体排出手段123は必ずしも用いなくてもよい。
【0083】
図3(B)に示すように、精製部温度調節手段125は、精製部122に近接して設けられており、精製部122は該精製部温度調節手段125により温度勾配を付けられる。具体的には、試料が気化する温度領域、目的物質が析出又は凝縮する温度領域等、少なくとも目的物質を単離、精製、回収できるように、精製部122は温度勾配を付けられる。
【0084】
上記精製部122と精製部温度調節手段125は、接していてもよいし、近接していてもよいし、一体となって組み込まれた状態となっていてもよい。同様に、上記精製部122と気体供給手段121とは、接していてもよいし、近接していてもよいし、一体となって組み込まれた状態となっていてもよい。近接するとは、ある程度間隔(空間)を有して設けられている状態を指す。
【0085】
精製部122としてタングステンやタンタルなどの金属管を用いる場合、金属管に電圧を印加し、加熱することができるため、精製部温度調節手段125として用いることができる。
【0086】
本実施の形態では、物質を精製する精製部122において、気体供給手段121より供給された気体の一部を精製部122に供給する前に気体温度調節手段124の気体加熱手段127により加熱し、精製部122に近い温度に調節された気体をキャリアガスとして精製部122に供給することを特徴とする。予め加熱された気体を含ませ供給する気体の温度を調節することによってキャリアガスの温度と、精製部122の温度との温度差を小さい状態とすることができる。
【0087】
図3(B)を用いて、気体供給手段121より精製部122に供給されるキャリアガスの供給方法をより詳細に説明する。図3(B)において、気体供給手段121より供給される気体は供給量を制御する活栓であるコック129a、129bの開閉によって供給される。図3(B)においては気体供給手段121より気体は2個所の供給口より供給される例を示すが、供給口は一つでもよく、供給管が枝分かれすることによって、気体を複数の経路によって運搬することもできる。
【0088】
図3(C)に気体供給手段を複数設けそれぞれの気体供給手段より供給管を通して気体を供給する例を示す。図3(C)においては気体供給手段121aよりコック129aを通して第2の気体を供給し、気体供給手段121bよりコック129bを通して第1の気体を供給する。気体供給手段121aと気体供給手段121bとが供給する気体は異なる物質でもよいし、同一物質でもよい。同一の場合は、図3(B)のように気体供給手段121aと気体供給手段121bと一つにすると、装置の仕様が簡便とすることができ好ましい。
【0089】
気体温度調節手段124によって気体供給手段121のコック129bを通過して供給された気体は供給管132を通って気体加熱手段127で加熱され、高温の第1の気体となって供給管133へ供給される。一方、気体供給手段121のコック129aを通過して供給された気体は、加熱されないため、第1の気体より温度の低い第2の気体である。この温度の異なる第1の気体及び第2の気体を混合し、精製部へ供給するのに適した温度に調節する。温度をモニターするための気体の温度を測定する温度計を供給管134に設けるとよい。温度調整された気体は供給管134を通って精製部122へ供給される。このように温度の異なる複数の気体を用いることでより供給する気体の温度制御を正確に行うことができる。また、コック129a、129bによってもそれぞれの流量を適宜制御することができるため、キャリアガスの温度制御がより精密に行うことができる。例えば、精製中の精製部の温度変化などにも適宜対応してキャリアガスの温度を制御することができる。
【0090】
本実施の形態では、加熱し、精製部との温度差を軽減したキャリアガスを精製部122に供給することで、キャリアガスによる精製部122内の温度低下、熱の不均一化を防ぐことができる。また、加熱されたキャリアガスを精製部122内に流すことにより、大型化した精製部122内の低温度領域を加熱し、精製部122内の温度を均一化することができる。さらに加熱されたキャリアガスにより精製部122内の温度勾配がより緩やかに連続的になるため、不純物と目的とする物質とは十分に距離を有して析出することができる。よって、精度の高い分別ができ、より高純度な物質を得ることができる。
【0091】
上記構成において、キャリアガスとして用いる精製部に供給される気体(第1の気体、第2の気体)は、不活性気体(窒素(N)、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe))を用いることができる。また、排出手段としては、ポンプ等を用いればよい。
【0092】
なお、気体供給手段から精製部に導入するキャリアガスは不活性気体以外を用いてもよいが、不活性気体の方が試料や目的物質等の酸化、分解等を抑えることができるので好ましい。もちろん、精製部に存在する試料や目的物質等と反応する気体を用いてはならない。
【0093】
また、物質の精製は、常圧下、減圧下、真空下で行うことができ、精製部の圧力の制御は圧力計(真空計)で管理しつつ気体排出手段123として用いるポンプ等で精製部122内を排気すればよい。また、常圧下であれば気体排出手段123は必ずしも必要でなく用いなくてもよい。
【0094】
気体排出手段及び精製部は、配管等を用いて連結すればよい。また、精製部と気体排出手段との間に液体窒素等を用いた冷却トラップを設けてもよい。真空排気手段によって精製部内を減圧し、真空状態とすると、試料が気化する温度を下げることができる。すなわち、気体排出手段を用いて精製部を減圧すると、試料の昇華又は蒸発温度が低下し、大気圧下では気化しない試料も気化させることが可能となる。
【0095】
気体温度調節手段124、精製部温度調節手段125(気体加熱手段127)としては、ヒータ、ホットプレート等を用いればよく、精製部122(例えば、試料を気化する精製管の近傍等)に近接して設ければよい。なお、図3では気体温度調節手段124を気体供給手段121に、精製部温度調節手段125を精製部122に近接して1つのみ設けた場合を示したが、本発明はこれに限らず、複数個設けても構わない。気体温度調節手段124、精製部温度調節手段125の設置場所や個数は、適宜変更可能である。また、精製部122にかけた温度勾配を一定に保持できるように、保温手段や、精製部122、気体温度調節手段124によって加熱された気体が通過する供給管133、134などを囲う保護カバー等を設けるのが好ましい。
【0096】
なお、精製部122の温度調節をする際に、試料が気化する温度、目的物質が析出又は凝縮する温度等の温度領域を最適な温度に設定する必要がある。これは、目的物質の分解点、昇華点、又は沸点等を調べ、設定すればよい。
【0097】
精製部122は、好ましくは2つ以上の精製管が連なって構成する。精製部102に配置する精製管の個数は、適宜変更可能である。具体的には、試料を配置するための第1の精製管と、精製されて析出又は凝縮した目的物質を回収するための第2の精製管を含む、好ましくは2つ以上の精製管を有していればよい。精製管の基本構造は、中空管である。精製管は、気化した試料(目的物質及び不純物を含む)が通過できるように、少なくとも隣接する精製管との端部には開口が設けられている。精製管としては、ガラス、石英等からなる中空管を用いるのが好ましい。また、本発明はこれに限らず、試料や目的物質及び不純物と反応しない材料で、且つ目的物質の回収時に目的物質中に混入せず、実施温度に耐えうる材料であればよい。なお、常圧で精製する場合において、精製部122を密閉して加熱すると管内の圧力が上がる場合があり、非常に危険である。ゆえに、どちらか一方の端部は開けておかねばならない。したがって、常圧で本精製装置を用いる場合には、少なくとも精製部122に1箇所は外界と通じる開口(気体排出部122b)を設けなければならない。
【0098】
次に、図3に示す精製部122には精製間を固定する固定手段が設けられており、少なくとも、精製管が隣接して配置された状態を保持・固定できる手段であればよい。好ましくは、精製部122が長軸方向に水平となるように保持、固定できる手段であるとよい。固定手段としては、精製部122に含まれる各々の精製管をクランプ等で固定してもよいし、精製管を水平な台に配置してもよい。また、精製管の管外径よりも大きい管内径を有するガラス等の管の中に配置しても構わない。
【0099】
また、本実施における精製方法は、無機化合物材料、有機化合物材料、または無機化合物及び有機化合物の混合材料などの物質に用いることができ、特に有機化合物材料に有効である。
【0100】
本実施の形態で精製された物質は、有機薄膜トランジスタや有機エレクトロルミネッセンス素子を例とする発光素子などの各種素子に用いることができる。高純度に精製された物質であるので、作製される素子の特性も高めることができる。
【0101】
本実施の形態では、精製部に加熱し、精製部との温度差を軽減したキャリアガスを供給することで、キャリアガスによる精製部内の温度低下、熱の不均一化を防ぐことができる。また、加熱されたキャリアガスを精製部内に流すことにより、大型化した精製部内の低温度領域を加熱し、精製部内の温度を均一化することができる。さらに加熱されたキャリアガスにより精製部内の温度勾配がより緩やかに連続的になるため、不純物と目的とする物質とは十分に距離を有して析出することができる。よって、精度の高い分別ができ、より高純度な物質を得ることができる。
【0102】
従って、本実施の形態の精製装置、精製方法により、より高純度な物質を高収率で生産性よく精製することができる。
【0103】
(実施の形態4)
本実施の形態では、より高純度な物質を高収率で生産性よく精製することを目的とした精製装置、及び精製方法の一例を、図4を用いて説明する。実施の形態2の精製装置及び精製方法において、気体の温度調節手段を詳細に説明する例であり、実施の形態2と同様な機能を有する部分は、同様の材料、方法を用いればよく、その繰り返しの説明は省略する。
【0104】
図4(A)は、本発明の精製装置を模式的に示したブロック図であり、図4(B)は断面図である。
【0105】
本実施の形態の精製装置140は、気体供給部142a及び気体排出部142bを含む、試料である物質を気化し目的物質を精製、回収するための精製部142と、精製部142に気体供給部142aよりキャリアガスとなる気体を供給する気体供給手段141と、精製部142の気体排出部142bよりキャリアガスを排出する気体排出手段143と、試料を気化し精製するための精製部温度調節手段及び、気体供給手段141より供給される気体の温度を加熱により調整する気体温度調節手段144における気体加熱を兼ねる温度調節手段145を有する。気体供給手段141からのキャリアガスの導入により、気化した試料を円滑に拡散させることができる。本実施の形態では精製部112より気体を排気する際、気体排出部142bより気体排出手段143を用いて排出する例を示すが、気体排出手段143は必ずしも用いなくてもよい。
【0106】
本実施の形態の精製装置140は、物質を精製するため加熱を行う精製部温度調節手段と、精製部142に気体供給手段141より供給されるキャリアガスを加熱する気体温度調節手段144における加熱を、温度調節手段145を用いて共通して行う。このように温度調節手段における加熱を精製部と気体とを共通して用いると、装置が簡略化するため小型化し省スペース化、低コスト化できる。また、精製部と供給される気体とがほぼ同じ温度に加熱され調整されるため、個別で温度設定をしなくとも精製部の温度の均一化を行うことができる。
【0107】
図4(B)に示すように、温度調節手段145は、精製部142に近接して設けられており、精製部142は該温度調節手段145により温度勾配を付けられる。具体的には、試料が気化する温度領域、目的物質が析出又は凝縮する温度領域等、少なくとも目的物質を単離、精製、回収できるように、精製部142は温度勾配を付けられる。
【0108】
上記精製部142と温度調節手段145は、接していてもよいし、近接していてもよいし、一体となって組み込まれた状態となっていてもよい。同様に、上記精製部142と気体供給手段141とは、接していてもよいし、近接していてもよいし、一体となって組み込まれた状態となっていてもよい。近接するとは、ある程度間隔(空間)を有して設けられている状態を指す。
【0109】
精製部142としてタングステンやタンタルなどの金属管を用いる場合、金属管に電圧を印加し、加熱することができるため、温度調節手段145として用いることができる。
【0110】
本実施の形態では、物質を精製する精製部142において、気体供給手段141より供給された気体の一部を精製部142に供給する前に温度調節手段145により加熱し、気体温度調節手段144により高い温度に調節された気体をキャリアガスとして精製部142に供給することを特徴とする。予め加熱された気体を含ませ供給する気体の温度を調節することによってキャリアガスの温度と、精製部142の温度との温度差を小さい状態とすることができる。
【0111】
図4(B)を用いて、気体供給手段141より精製部142に供給されるキャリアガスの供給方法をより詳細に説明する。図4(B)において、気体供給手段141より供給される気体は供給量を制御するコック149a、149bの開閉によって供給される。図4(B)においては気体供給手段141より気体は2個所の供給口より供給される例を示すが、供給口は一つでもよく、供給管が枝分かれすることによって、気体を複数の経路によって運搬することもできる。
【0112】
図4(C)に気体供給手段を複数設けそれぞれの気体供給手段より供給管を通して気体を供給する例を示す。図4(C)においては気体供給手段141aよりコック149aを通して第2の気体を供給し、気体供給手段141bよりコック149bを通して第1の気体を供給する。気体供給手段141aと気体供給手段141bとが供給する気体は異なる物質でもよいし、同一物質でもよい。同一の場合は、図4(B)のように気体供給手段141aと気体供給手段141bと一つにすると、装置の仕様が簡便とすることができ好ましい。
【0113】
気体温度調節手段144において気体供給手段141のコック149bを通過して供給された気体は供給管152を通って温度調節手段145の加熱部で加熱され、高温の第1の気体となって供給管153へ供給される。一方、気体供給手段141のコック149aを通過して供給された気体は、加熱されないため、第1の気体より温度の低い第2の気体である。この温度の異なる第1の気体及び第2の気体を混合し、精製部へ供給するのに適した温度に調節する。温度をモニターするための気体の温度を測定する温度計を供給管154に設けるとよい。温度調整された気体は供給管154を通って精製部142へ供給される。このように温度の異なる複数の気体を用いることでより供給する気体の温度制御を正確に行うことができる。また、コック149a、149bによってもそれぞれの流量を適宜制御することができるため、キャリアガスの温度制御がより精密に行うことができる。例えば、精製中の精製部の温度変化などにも適宜対応してキャリアガスの温度を制御することができる。
【0114】
本実施の形態では、加熱し、精製部との温度差を軽減したキャリアガスを精製部142に供給することで、キャリアガスによる精製部142内の温度低下、熱の不均一化を防ぐことができる。また、加熱されたキャリアガスを精製部142内に流すことにより、大型化した精製部142内の低温度領域を加熱し、精製部142内の温度を均一化することができる。さらに加熱されたキャリアガスにより精製部142内の温度勾配がより緩やかに連続的になるため、不純物と目的とする物質とは十分に距離を有して析出することができる。よって、精度の高い分別ができ、より高純度な物質を得ることができる。
【0115】
上記構成において、キャリアガスとして用いる精製部に供給される気体は、不活性気体(窒素(N)、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe))を用いることができる。また、排出手段としては、ポンプ等を用いればよい。
【0116】
なお、気体供給手段から精製部に導入するキャリアガスは不活性気体以外を用いてもよいが、不活性気体の方が試料や目的物質等の酸化、分解等を抑えることができるので好ましい。もちろん、精製部に存在する試料や目的物質等と反応する気体を用いてはならない。
【0117】
また、物質の精製は、常圧下、減圧下、真空下で行うことができ、精製部の圧力の制御は圧力計(真空計)で管理しつつ気体排出手段143として用いるポンプ等で精製部142内を排出管155を通して排気すればよい。また、常圧下であれば気体排出手段143は必ずしも必要でなく用いなくてもよい。
【0118】
気体排出手段及び精製部は、配管等を用いて連結すればよい。また、精製部と気体排出手段との間に液体窒素等を用いた冷却トラップを設けてもよい。真空排気手段によって精製部内を減圧し、真空状態とすると、試料が気化する温度を下げることができる。すなわち、気体排出手段を用いて精製部を減圧すると、試料の昇華又は蒸発温度が低下し、大気圧下では気化しない試料も気化させることが可能となる。
【0119】
温度調節手段145としては、ヒータ、ホットプレート等を用いればよく、精製部142(例えば、試料を気化する精製管の近傍等)に近接して設ければよい。なお、図2では温度調節手段145を精製部142に近接して1つのみ設けた場合を示したが、本発明はこれに限らず、複数個設けても構わない。温度調節手段145の設置場所や個数は、適宜変更可能である。また、精製部142にかけた温度勾配を一定に保持できるように、保温手段や、精製部142、気体温度調節手段144によって加熱された気体が通過する供給管153、154などを囲う保護カバー等を設けるのが好ましい。
【0120】
なお、精製部142の温度調節をする際に、試料が気化する温度、目的物質が析出又は凝縮する温度等の温度領域を最適な温度に設定する必要がある。これは、目的物質の分解点、昇華点、又は沸点等を調べ、設定すればよい。
【0121】
精製部142は、好ましくは2つ以上の精製管が連なって構成する。精製部142に配置する精製管の個数は、適宜変更可能である。具体的には、試料を配置するための第1の精製管と、精製されて析出又は凝縮した目的物質を回収するための第2の精製管を含む、好ましくは2つ以上の精製管を有していればよい。精製管の基本構造は、中空管である。精製管は、気化した試料(目的物質及び不純物を含む)が通過できるように、少なくとも隣接する精製管との端部には開口が設けられている。精製管としては、ガラス、石英等からなる中空管を用いるのが好ましい。また、本発明はこれに限らず、試料や目的物質及び不純物と反応しない材料で、且つ目的物質の回収時に目的物質中に混入せず、実施温度に耐えうる材料であればよい。なお、常圧で精製する場合において、精製部142を密閉して加熱すると管内の圧力が上がる場合があり、非常に危険である。ゆえに、どちらか一方の端部は開けておかねばならない。したがって、常圧で本精製装置を用いる場合には、少なくとも精製部142に1箇所は外界と通じる開口(気体排出部142b)を設けなければならない。
【0122】
次に、図4に示す精製部142には精製間を固定する固定手段が設けられており、少なくとも、精製管が隣接して配置された状態を保持・固定できる手段であればよい。好ましくは、精製部142が長軸方向に水平となるように保持、固定できる手段であるとよい。固定手段としては、精製部142に含まれる各々の精製管をクランプ等で固定してもよいし、精製管を水平な台に配置してもよい。また、精製管の管外径よりも大きい管内径を有するガラス等の管の中に配置しても構わない。
【0123】
また、本実施における精製方法は、無機化合物材料、有機化合物材料、または無機化合物及び有機化合物の混合材料などの物質に用いることができ、特に有機化合物材料に有効である。
【0124】
本実施の形態で精製された物質は、有機薄膜トランジスタや有機エレクトロルミネッセンス素子を例とする発光素子などの各種素子に用いることができる。高純度に精製された物質であるので、作製される素子の特性も高めることができる。
【0125】
本実施の形態では、精製部に加熱し、精製部との温度差を軽減したキャリアガスを供給することで、キャリアガスによる精製部内の温度低下、熱の不均一化を防ぐことができる。また、加熱されたキャリアガスを精製部内に流すことにより、大型化した精製部内の低温度領域を加熱し、精製部内の温度を均一化することができる。さらに加熱されたキャリアガスにより精製部内の温度勾配がより緩やかに連続的になるため、不純物と目的とする物質とは十分に距離を有して析出することができる。よって、精度の高い分別ができ、より高純度な物質を得ることができる。
【0126】
従って、本実施の形態の精製装置、精製方法により、より高純度な物質を高収率で生産性よく精製することができる。
【0127】
(実施の形態5)
本実施の形態では、より高純度な物質を高収率で生産性よく精製することを目的とした精製装置、及び精製方法の一例を、図5、6を用いて説明する。実施の形態2、4の精製装置及び精製方法において、気体の温度調節手段を詳細に説明する例であり、実施の形態2、4と同様な機能を有する部分は、同様の材料、方法を用いればよく、その繰り返しの説明は省略する。特に、固体試料を用いて、目的物質及び不純物を固体として析出する昇華精製方法について、説明する。
【0128】
図5、6は、本発明の精製装置を模式的に示した断面図である。
【0129】
本実施の形態の精製装置は、気体供給部202a及び気体排出部202bを含む、試料である物質を気化し目的物質を精製、回収するための精製部202と、精製部202に気体供給部202aよりキャリアガスとなる気体を供給する気体供給手段201と、精製部202の気体排出部202bよりキャリアガスを排出する気体排出手段203と、試料を気化し精製するための精製部温度調節手段及び、気体供給手段201より供給される気体の温度を加熱により調整する気体温度調節手段における気体加熱を兼ねる温度調節手段205を有する。気体供給手段201からのキャリアガスの導入により、気化した試料を円滑に拡散させることができる。本実施の形態では精製部202より気体を排気する際、気体排出部202bより気体排出手段203を用いて排出する例を示すが、気体排出手段203は必ずしも用いなくてもよい。
【0130】
本実施の形態において、気体供給手段201より供給される気体は精製部202の周辺の一部を囲むようにして設けられている温度調節手段205の外周に巻き付くように供給管210(210a、210b)を設ける。供給管210b内を通過する気体は、温度調節手段205によって加熱され、高温に加熱された気体として供給管210aを通過して精製部202へ供給することができる。
【0131】
本実施の形態の精製装置は、物質を精製するため加熱を行う精製部温度調節手段と、精製部202に気体供給手段201より供給されるキャリアガスを加熱する気体温度調節手段における加熱を、温度調節手段205を用いて共通して行う。このように温度調節手段における加熱を精製部と気体とを共通して用いると、装置が簡略化するため小型化し省スペース化、低コスト化できる。また、精製部と供給される気体とがほぼ同じ温度に加熱され調整されるため、個別で温度設定をしなくとも精製部の温度の均一化を行うことができる。
【0132】
図5に示すように、温度調節手段205は、精製部202に近接して設けられており、精製部202は該温度調節手段205により温度勾配を付けられる。具体的には、試料が気化する温度領域、目的物質が析出又は凝縮する温度領域等、少なくとも目的物質を単離、精製、回収できるように、精製部202は温度勾配を付けられる。
【0133】
上記精製部202と温度調節手段205は、接していてもよいし、近接していてもよいし、一体となって組み込まれた状態となっていてもよい。同様に、上記精製部202と気体供給手段201とは、接していてもよいし、近接していてもよいし、一体となって組み込まれた状態となっていてもよい。近接するとは、ある程度間隔(空間)を有して設けられている状態を指す。
【0134】
精製部202としてタングステンやタンタルなどの金属管を用いる場合、金属管に電圧を印加し、加熱することができるため、温度調節手段205として用いることができる。
【0135】
本実施の形態では、物質を精製する精製部202において、気体供給手段201より供給された気体の一部を精製部202に供給する前に温度調節手段205により加熱され高い温度に調節された気体をキャリアガスとして精製部202に供給することを特徴とする。予め加熱された気体を含ませ供給する気体の温度を調節することによってキャリアガスの温度と、精製部202の温度との温度差を小さい状態とすることができる。
【0136】
図5を用いて、気体供給手段201より精製部202に供給されるキャリアガスの供給方法をより詳細に説明する。図5において、気体供給手段201より供給される気体は供給量を制御するコック211a、211bの開閉によって供給される。図5においては気体供給手段201より気体は1個所の供給口より供給され、供給管が枝分かれすることによって、気体を複数の経路によって運搬する例を示すが、供給口は複数あってもよい。
【0137】
図6に気体供給手段を複数設けそれぞれの気体供給手段より供給管を通して気体を供給する例を示す。図6においては気体供給手段201aよりコック211aを通して第2の気体を供給し、気体供給手段201bよりコック211bを通して第1の気体を供給する。気体供給手段201aと気体供給手段201bとが供給する気体は異なる物質でもよいし、同一物質でもよい。同一の場合は、図5のように気体供給手段201aと気体供給手段201bと一つにすると、装置の仕様が簡便とすることができ好ましい。
【0138】
気体供給手段201のコック211bを通過して供給された気体は供給管210を通って温度調節手段205の加熱部で加熱され、高温の第1の気体となって供給管へ供給される。一方、気体供給手段201のコック211aを通過して供給された気体は、加熱されないため、第1の気体より温度の低い第2の気体である。この温度の異なる第1の気体及び第2の気体を混合し、精製部へ供給するのに適した温度に調節する。温度をモニターするための気体の温度を測定する温度計212を供給管に設けるとよい。温度調整された気体は供給管を通って精製部202へ供給される。このように温度の異なる複数の気体を用いることでより供給する気体の温度制御を正確に行うことができる。また、コック211a、211bによってもそれぞれの流量を適宜制御することができるため、キャリアガスの温度制御がより精密に行うことができる。例えば、精製中の精製部の温度変化などにも適宜対応してキャリアガスの温度を制御することができる。
【0139】
本実施の形態では、加熱し、精製部との温度差を軽減したキャリアガスを精製部202に供給することで、キャリアガスによる精製部202内の温度低下、熱の不均一化を防ぐことができる。また、加熱されたキャリアガスを精製部202内に流すことにより、大型化した精製部202内の低温度領域を加熱し、精製部202内の温度を均一化することができる。さらに加熱されたキャリアガスにより精製部202内の温度勾配がより緩やかに連続的になるため、不純物と目的とする物質とは十分に距離を有して析出することができる。よって、精度の高い分別ができ、より高純度な物質を得ることができる。
【0140】
上記構成において、キャリアガスとして用いる精製部に供給される気体は、不活性気体(窒素(N)、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe))を用いることができる。また、排出手段としては、ポンプ等を用いればよい。
【0141】
なお、気体供給手段から精製部に導入するキャリアガスは不活性気体以外を用いてもよいが、不活性気体の方が試料や目的物質等の酸化、分解等を抑えることができるので好ましい。もちろん、精製部に存在する試料や目的物質等と反応する気体を用いてはならない。
【0142】
また、物質の精製は、常圧下、減圧下、真空下で行うことができ、精製部の圧力の制御は圧力計(真空計)で管理しつつ気体排出手段203として用いるポンプ等で精製部202内を排出管215を通して排気すればよい。また、常圧下であれば気体排出手段203は必ずしも必要でなく用いなくてもよい。
【0143】
気体排出手段及び精製部は、配管等を用いて連結すればよい。また、図6に示すように精製部と気体排出手段との間に液体窒素等を用いた冷却トラップを設けてもよい。真空排気手段によって精製部内を減圧し、真空状態とすると、試料が気化する温度を下げることができる。すなわち、気体排出手段を用いて精製部を減圧すると、試料の昇華又は蒸発温度が低下し、大気圧下では気化しない試料も気化させることが可能となる。精製部202内の圧力を制御する場合、図6に示すように真空計257を設けると良く、コールドトラップ部258を設けてもよい。
【0144】
温度調節手段205としては、ヒータ、ホットプレート等を用いればよく、精製部202(例えば、試料を気化する精製管の近傍等)に近接して設ければよい。なお、図5、図6では温度調節手段205を精製部202に近接して1つのみ設けた場合を示したが、本発明はこれに限らず、複数個設けても構わない。温度調節手段205の設置場所や個数は、適宜変更可能である。また、精製部202にかけた温度勾配を一定に保持できるように、保温手段や、精製部202、温度調節手段205によって加熱された気体が通過する供給管210a、210bなどを囲う保護カバー等を設けるのが好ましい。
【0145】
なお、精製部202の温度調節をする際に、試料が気化する温度、目的物質が析出又は凝縮する温度等の温度領域を最適な温度に設定する必要がある。これは、目的物質の分解点、昇華点、又は沸点等を調べ、設定すればよい。
【0146】
精製部202は、好ましくは2つ以上の精製管が連なって構成する。精製部202に配置する精製管の個数は、適宜変更可能である。具体的には、試料を配置するための第1の精製管と、精製されて析出又は凝縮した目的物質を回収するための第2の精製管を含む、好ましくは2つ以上の精製管を有していればよい。精製管の基本構造は、中空管である。精製管は、気化した試料(目的物質及び不純物を含む)が通過できるように、少なくとも隣接する精製管との端部には開口が設けられている。精製管としては、ガラス、石英等からなる中空管を用いるのが好ましい。また、本発明はこれに限らず、試料や目的物質及び不純物と反応しない材料で、且つ目的物質の回収時に目的物質中に混入せず、実施温度に耐えうる材料であればよい。なお、常圧で精製する場合において、精製部202を密閉して加熱すると管内の圧力が上がる場合があり、非常に危険である。ゆえに、どちらか一方の端部は開けておかねばならない。したがって、常圧で本精製装置を用いる場合には、少なくとも精製部202に1箇所は外界と通じる開口(気体排出部202b)を設けなければならない。
【0147】
次に、図5、6に示す精製部202には精製間を固定する固定手段が設けられており、少なくとも、精製管が隣接して配置された状態を保持、固定できる手段であればよい。好ましくは、精製部202が長軸方向に水平となるように保持、固定できる手段であるとよい。固定手段としては、精製部202に含まれる各々の精製管をクランプ等で固定してもよいし、精製管を水平な台に配置してもよい。また、精製管の管外径よりも大きい管内径を有するガラス等の管の中に配置しても構わない。
【0148】
また、本実施における精製方法は、無機化合物材料、有機化合物材料、または無機化合物及び有機化合物の混合材料などの物質に用いることができ、特に有機化合物材料に有効である。
【0149】
本実施の形態で精製された物質は、有機薄膜トランジスタや有機エレクトロルミネッセンス素子を例とする発光素子などの各種素子に用いることができる。高純度に精製された物質であるので、作製される素子の特性も高めることができる。
【0150】
本実施の形態では、精製部に加熱し、精製部との温度差を軽減したキャリアガスを供給することで、キャリアガスによる精製部内の温度低下、熱の不均一化を防ぐことができる。また、加熱されたキャリアガスを精製部内に流すことにより、大型化した精製部内の低温度領域を加熱し、精製部内の温度を均一化することができる。さらに加熱されたキャリアガスにより精製部内の温度勾配がより緩やかに連続的になるため、不純物と目的とする物質とは十分に距離を有して析出することができる。よって、精度の高い分別ができ、より高純度な物質を得ることができる。
【0151】
従って、本実施の形態の精製装置、精製方法により、より高純度な物質を高収率で生産性よく精製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0152】
【図1】本発明の精製装置を示したブロック図及び断面図である。
【図2】本発明の精製装置を示したブロック図及び断面図である。
【図3】本発明の精製装置を示したブロック図及び断面図である。
【図4】本発明の精製装置を示したブロック図及び断面図である。
【図5】本発明の精製装置を示した断面図である。
【図6】本発明の精製装置を示した断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物質を気化して精製する精製部と、前記精製部に設けられ、前記精製部に温度勾配を付ける精製部温度調節手段と、前記精製部の一方の端部に設けられた気体供給手段と、前記精製部の他方の端部に設けられた気体排出部と、気体温度調節手段とを有し、
前記気体供給手段より供給される気体は前記気体温度調節手段により加熱され前記精製部へと供給されることを特徴とする精製装置。
【請求項2】
物質を気化して精製する精製部と、前記精製部に設けられ、前記精製部に温度勾配を付ける温度調節手段と、前記精製部の一方の端部に設けられた気体供給手段と、前記精製部の他方の端部に設けられた気体排出部とを有し、
前記気体供給手段より供給される気体は前記温度調節手段により加熱され前記精製部へと供給されることを特徴とする精製装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、前記気体は不活性気体であることを特徴とする精製装置。
【請求項4】
物質を気化して精製する精製部と、前記精製部に設けられ、前記精製部に温度勾配を付ける精製部温度調節手段と、前記精製部の一方の端部に設けられた気体供給手段と、前記精製部の他方の端部に設けられた気体排出部と、気体温度調節手段とを有し、
前記気体供給手段より前記精製部へ第1の気体及び第2の気体が供給され、
前記気体供給手段より供給される第1の気体は前記気体温度調節手段により加熱され前記精製部へと供給されることを特徴とする精製装置。
【請求項5】
物質を気化して精製する精製部と、前記精製部に設けられ、前記精製部に温度勾配を付ける温度調節手段と、前記精製部の一方の端部に設けられた気体供給手段と、前記精製部の他方の端部に設けられた気体排出部とを有し、
前記気体供給手段より前記精製部へ第1の気体及び第2の気体が供給され、
前記気体供給手段より供給される第1の気体は前記温度調節手段により加熱され前記精製部へと供給されることを特徴とする精製装置。
【請求項6】
請求項4又は請求項5において、前記第1の気体及び前記第2の気体は不活性気体であることを特徴とする精製装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項において、前記気体排出部より前記気体を排出する気体排出手段を有することを特徴とする精製装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項において、前記物質は有機化合物材料であることを特徴とする精製装置。
【請求項9】
精製部において前記精製部の一方の端部より他方の端部へ気体を流しながら、物質が設けられた精製部を加熱して前記物質を気化して精製し、
前記気体は、前記精製部に供給する前に加熱し、前記加熱された気体を前記精製部の一方の端部より供給し、前記供給された気体を前記精製部の他方の端部より排出することを特徴とする精製方法。
【請求項10】
請求項9において、前記気体は不活性気体であることを特徴とする精製方法。
【請求項11】
精製部において前記精製部の一方の端部より他方の端部へ第1の気体及び第2の気体を流しながら、物質が設けられた精製部を加熱して前記物質を気化して精製し、
前記第1の気体は、前記精製部に供給する前に加熱し、前記加熱された第1の気体を前記精製部の一方の端部より供給し、前記供給された第1の気体を前記精製部の他方の端部より排出し、
前記第1の気体の温度より前記第2の気体の温度は低いことを特徴とする精製方法。
【請求項12】
請求項11において、前記気体は不活性気体であることを特徴とする精製方法。
【請求項13】
請求項9乃至12のいずれか一項において、前記精製部において前記物質を減圧下で気化し精製することを特徴とする精製方法。
【請求項14】
請求項9乃至13のいずれか一項において、前記物質は有機化合物材料を用いることを特徴とする精製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−12479(P2008−12479A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−188235(P2006−188235)
【出願日】平成18年7月7日(2006.7.7)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】