説明

糖尿病の処置

ガストリン/CCKレセプターリガンドを補完する因子群の構成因子を含む、膵島新生療法のための組成物および方法を、徐放性送達および標的器官への局所送達のための処方物、装置および方法とともに提供する。また、哺乳動物において膵島新生を誘導する方法、および哺乳動物において膵島新生を誘導する方法が提供される。さらに、糖尿病を処置するためのキットが提供され、このキットは、FACGINTがEGFレセプターリガンドでない場合に、ガストリン/CCKレセプターリガンドおよびFACGINT、容器、ならびに使用のための指示書を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、糖尿病の被験者を、組成物を局所送達および徐放性処方物および方法を用いて、膵島新生療法および免疫抑制剤によって処置する方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
一般的な病気である糖尿病の重症型は、膵臓のβ細胞からのインシュリン分泌が全くないか、相対的に欠乏していることが原因で生じる。そのため、糖尿病患者は、生死に関わる高血糖(高血糖症)合併症を予防するために、外部からのインシュリン注射に依存している。血糖測定とインシュリン治療(インシュリン集中治療(intensive insulin treatment)という非常に厳格な養生法を忠実に守らない限り、高血糖症に起因する慢性的で長期間にわたる器官損傷合併症を防ぐことはできない。インシュリン集中治療は、インシュリンの過剰投与によって、致命的ともなり得る急性かつ重篤な意識変容状態を伴う急性低血糖症のリスクを増加させる。
【0003】
アメリカ合衆国の人口中約百万人の人々が、若年性またはI型の糖尿病を患っており、毎年約3万件ずつ新たな症例が増加している。さらに、膵臓疲労およびインシュリン欠乏をもたらす可能性があるII型糖尿病(成人発症型糖尿病またはインシュリン抵抗性糖尿病とも呼ばれる)の病態を有する患者の数が、疫病のレベルで非常に大量かつ急速に増加している。
【0004】
糖尿病の特徴である異常に高い血糖値(高血糖症)は、治療しないでいると、例えば非治癒性末梢血管潰瘍、失明に至る網膜損傷、腎不全など、さまざまな病的状態を生じる。糖尿病のI型もII型も、患者による血糖値自己測定によって決定した血糖値に応じたインシュリン注射によって処置するが、II型患者のすべてがインシュリン療法を必要とするまで進行するとは限らない。典型的には、一日当たり患者によってインシュリンの反復投与が行われる。糖尿病が重篤な病理状態に至るのは、血糖量の厳格な調節を行わなかったことと相関する。
【0005】
糖尿病の治療法の可能性として、β細胞の機能を回復して、血糖量の変化に応じてインシュリン放出を動的に制御することが考えられる。これは、膵臓移植によって実現可能であるが、この方法は、一般的には、腎不全のために腎臓移植を必要とする糖尿病患者に限られている。また、膵臓移植は、同種移植拒絶および自己免疫による移植膵臓の破壊を防ぐために一生の間免疫抑制を必要とする可能性がある。
【0006】
最近、単離されたヒト膵島調製物の移植によって、長期間ヒト被験者のインシュリン型糖尿病を逆転させることに成功した。しかし、各レシピエントにつき大量のドナー膵島細胞材料が必要であるため、膵島細胞材料の供給が需要に見合うほど十分ではない。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(要旨)
本発明の特徴は、糖尿病症状を処置する方法であって、膵島新生療法のためにガストリン/CCKレセプターリガンド、およびガストリンを補完する因子(FACGINT)を含む組成物を、FACGINTがEGFレセプターリガンドではない場合に、哺乳動物に治療有効量投与する方法である。
【0008】
本明細書において、FACGINTは、以下の群から選択される。グルカゴン様ペプチド1レセプターリガンド、グルカゴン様ペプチド2レセプターリガンド、胃抑制ポリペプチド(GIP)レセプターリガンド、ケラチノサイト成長因子(KGF)レセプターリガンド、ジペプチジルペプチダーゼIVインヒビター、REGタンパク質レセプターリガンド、成長ホルモンレセプターリガンド、プロラクチン(PRL)レセプターリガンド、インシュリン様成長因子(IGF)レセプターリガンド、PTH関連タンパク質(PTHrP)レセプターリガンド、肝細胞成長因子(HGF)レセプターリガンド、骨形成タンパク質(BMP)レセプターリガンド、トランスフォーミング成長因子−β(TGF−β)レセプターリガンド、ラミニンレセプターリガンド、血管作動性腸管ペプチド(VIP)レセプターリガンド、線維芽細胞成長因子(FGF)レセプターリガンド、ケラチノサイト成長因子レセプターリガンド、神経発育因子(NGF)レセプターリガンド、膵島新生関連タンパク質(INGAP)レセプターリガンド、アクチビン−Aレセプターリガンド、血管上皮細胞成長因子(VEGF)レセプターリガンド、エリスロポエチン(EPO)レセプターリガンド、下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド(PACAP)レセプターリガンド、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)レセプターリガンド、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、血小板由来増殖因子(PDGF)レセプターリガンド、およびセクレチンレセプターリガンド。
【0009】
本明細書において、「糖尿病」とは、インシュリンの欠乏、インシュリンに対する抗体産生、または血糖の過剰という生理的な指標を意味する。糖尿病の例は、I型糖尿病、II型糖尿病、妊娠性糖尿病、および前糖尿病症状であるが、これらに限定されるものではない。本明細書において、「哺乳動物」とは、哺乳綱のあらゆる構成生物という通常の意味をもち、ヒトを含む。
【0010】
関連する実施形態において、FACGINTは、グルカゴン様ペプチド1(GLP−1)レセプターリガンド、グルカゴン様ペプチド2(GLP−2)レセプターリガンド、または、成長ホルモンのレセプターリガンドファミリーのリガンドであり、また、ヒト成長ホルモン(HGH)、胎盤性ラクトゲン(PL)、またはプロラクチン(PRL)などの成長ホルモン、またはエキセンジン−4(exendin−4)などのエキセンジンでもよい。
【0011】
本発明の別の特徴は、糖尿病を処置する方法であって、複数の細胞をエキソビボで、FACGINTがEGFレセプターリガンドでない場合に、少なくとも1つのFACGINTおよびガストリン/CCKレセプターリガンドを含む組成物に接触させること、および、それらの細胞を、それらを必要とする哺乳動物に投与して、糖尿病を処置する工程を包含する方法を提供する。該方法の1つの実施形態において、細胞は自家性すなわち被験者由来のものである。あるいは、細胞は、同種の別の個体、またさらには異種に由来する。細胞をエキソビボで使用する方法においては、細胞は膵管細胞でもよい。膵臓細胞は、膵島前駆細胞の供給源である。該方法のさらなる実施形態は、移植段階の前に、細胞をエキソビボで組成物によって処理する工程を包含する。さらに、関連する方法は、この接触段階の前に、細胞をエキソビボで培養する工程を包含する。
【0012】
一般的に、「投与する」または「接触させる」とは、該方法の利用者が、組成物を、哺乳動物のインシュリン分泌細胞の量を増加させるのに有効な量提供されることを意味する。
【0013】
一般的にこれらの方法では、組成物は全身に投与される。さらに、組成物におけるFACGINTの量は、ガストリン/CCKレセプターリガンド不在下で糖尿病の哺乳動物の血糖値を下げるのに必要とされるFACGINTの最小有効量よりも実質的に少ない。該方法は、さらに、血中グルコース、血清グルコース、血中グリコシル化ヘモグロビン、膵臓β細胞塊、血清インシュリン、膵臓インシュリン含量、および形態計測によって決定されたβ細胞塊からなる群から選択されたパラメーターを測定する工程を包含する。一般的に、糖尿病診断を行う当業者は、その診断に一般的な期間絶食させた後、すなわち被験者または患者に食事を与えない期間の後、血液または血清のグルコース量を測定するであろう。標準的な測定法は空腹時血糖(FBG)測定法である。
【0014】
本明細書において、インビボ法は、インシュリン分泌細胞量、インシュリン分泌細胞のグルコース応答性、膵島前駆細胞の増殖量、および成熟インシュリン分泌細胞の量からなる群から選ばれたパラメーターの測定であって、遺伝的糖尿病マウス(NODマウス)または(ストレプトゾトシンすなわちSTZによって)糖尿病を誘発された齧歯類などの実験動物である哺乳動物において測定する工程をさらに包含する。
【0015】
本明細書における別の実施形態は、哺乳動物において膵島新生を誘導する方法であって、FACGINTがEGFレセプターリガンドでなければ、FACGINTおよびガストリン/CCKレセプターリガンドを一緒に含む組成物を、膵島前駆細胞の膵組織内での増殖を増加させるのに十分な量、哺乳動物に投与して膵島新生を誘導する方法である。
【0016】
本明細書におけるさらに別の実施形態は、哺乳動物において膵島新生を誘導する方法であって、FACGINTがEGFレセプターリガンドでない、FACGINTおよびガストリン/CCKレセプターリガンドを合わせて含む組成物を、膵臓のインシュリン分泌β細胞の数を哺乳動物の体内で増加させるのに十分な量投与する工程を包含する方法である。
【0017】
したがって、本発明の実施形態は、FACGINTがEGFレセプターリガンドでない場合に、FACGINTおよびガストリン/CCKレセプターリガンドを含む組成物である。実施形態によっては、組成物は、膵島前駆細胞の増殖を誘発して、成熟したインシュリン分泌細胞の数を増加させるのに効果的な投与量で提供される。同様に、いくつかの実施形態において、組成物は、膵島前駆細胞を成熟したインシュリン分泌細胞に分化させるのに効果的な投与量で提供される。
【0018】
組成物は、医薬的に許容されるキャリアに入れて提供することも可能である。
【0019】
また、本明細書において提供されるのは、糖尿病を処置するためのキットであって、FACGINTがEGFレセプターリガンドでない場合に、ガストリン/CCKレセプターリガンドおよびFACGINT、容器、ならびに使用説明書を含むキットである。キットの組成物は、1つ以上の単位用量にして提供することも可能である。キットの組成物は、医薬的に許容されるキャリアをさらに含む。
【0020】
本明細書における発明の別の特徴は、移植細胞の糖尿病レシピエントにおいて、幹細胞をインシュリン分泌細胞へと増大および分化させ、また、FACGINTがEGFレセプターリガンドでない場合に、ガストリン/CCKレセプターリガンドおよびFACGINTのそれぞれを有効量含む組成物をレシピエントに投与する方法である。該方法において、細胞は、例えばヒトまたはブタから得ることができる。さらに、移植細胞は、膵島、臍帯、胚または幹細胞株から得られる。あるいは、幹細胞を細胞の糖尿病レシピエントの体内でインシュリン分泌細胞へと増大および分化させる方法は、細胞をレシピエントに移植して、ガストリン/CCKレセプターリガンドならびにFACGINTまたはEGFレセプターリガンドをそれぞれ有効量含む徐放型組成物を投与することである。
【0021】
これらの方法によれば、一般的にガストリン/CCKレセプターリガンドはガストリンである。関連する実施形態において、ガストリンはガストリン−17であり、例えばこのガストリンはガストリン1−17Leu15である。
【0022】
さらに、これらの方法によれば、レシピエントに細胞を移植するには、器官の中に直接注射したり、静脈投与したりという経路を使用する。細胞を注射するとは、例えば膵臓、腎臓および肺などの器官の中に局所的に送達することである。さらに、細胞を注射するとは、経皮的または経肝的に門脈に送達される。これらの方法のいずれかにおいて、処置の間超音波またはMRIなどの画像化技術を用いて、器官から、または器官へと続く静脈または動脈にカテーテルを挿入することも可能である。
【0023】
局所的に細胞を送達する方法は、内視鏡的逆行性胆道膵管造影法(ERCP)、超音波内視鏡誘導細針送達(EUS−FNAD)、膵臓動脈への注射、門脈への注射、膵臓内注射、および肝動脈への注射などいくつかの方法から選択される。これらの技術では、使用者は、処置の間、超音波またはMRIなど、いくつかの画像化技術の1つに従って行うことも可能である。
【0024】
提供される本発明の別の特徴は、ヒトの糖尿病を処置するための移植に必要とされる幹細胞の量を減少させる方法であって、FACGINTがEGFレセプターリガンドでない場合に、ガストリン/CCKレセプターリガンドおよびFACGINTのそれぞれの有効量を投与する工程を包含するが、有効量の投与がない以外では同じレシピエントに細胞を移植するときに比べて細胞量が低下している方法である。
【0025】
本発明の関連実施形態において、本発明は、ガストリン/CCKレセプターリガンド、およびFACGINTがEGFレセプターリガンドでない場合に、1種類以上のFACGINTを含む組成物を提供する。組成物は、膵島前駆細胞の成熟したインシュリン分泌細胞への分化を誘導するのに効果的な用量で提供される。組成物は、医薬的に許容されるキャリアに入れて提供することも可能である。
【0026】
糖尿病を処置するために、FACGINTがEGFレセプターリガンドでない場合に、1種類以上のFACGINT、およびガストリン/CCKレセプターリガンド、容器および使用のための指示書を備えるキットがさらに提供される。
【0027】
上記方法のいずれも、被験者に免疫抑制剤を投与する工程をさらに包含することも可能である。上記方法のいずれにおいても、併用する成分を同時に、例えば1時間以内または1日以内に送達することが可能であり、または、例えば1日よりも長い間隔、2日以上よりも長い間隔、1週間よりも長い間隔など、連続的に送達することも可能である。
【0028】
免疫応答を抑制するための薬剤の例は、例えばラパマイシン、コルチコステロイド、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル、シクロスポリン、シクロホスファミド、メトトレキサート、6−メルカプトプリン、FK506、15−デオキシスペルグアリン(15−deoxyspergualin)、FTY720、ミトキサントロン、2−アミノ−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2[2−(4−オクチルフェニル)エチル]プロパン−1,3−ジオールヒドロクロリド、6−(3−ジメチル−アミノプロピオニル)フォルスコリン、およびデメチムノマイシン(demethimmunomycin)からなる群の少なくとも1つの薬剤である。
【0029】
あるいは、免疫応答を抑制するための薬剤の例は、例えば抗体のアミノ酸配列を含むタンパク質である。したがって、免疫応答を抑制するための薬剤は、hul 124、BTI−322、アロトラップ(allotrap)−HLA−B270、OKT4A、エンリモマブ(Enlimomab)、ABX−CBL、OKT3、ATGAM、バシリキシマブ(basiliximab)、ダクリズマブ(daclizumab)、チモグロブリン(thymoglobulin)、ISAtx247、Medi−500、Medi−507、アレファセプト、エファリズマブ(efalizumab)、インフリキシマブ(infliximab)およびインターフェロンの少なくとも1つである。膵島新生療法用組成物および免疫応答抑制用薬剤は、連続的に投与されるか、同時に投与することも可能である。
【0030】
特定の実施形態において、膵島新生療法用組成物の少なくとも1つ、および免疫応答抑制用薬剤が全身に投与される。例えば、膵島新生療法用組成物はボーラスとして投与される。したがって、少なくとも1つの膵島新生療法用組成物および免疫応答抑制用薬剤は、静脈内、皮下、腹腔内または筋肉内という経路によって投与される。さらに、ある実施形態において、免疫応答抑制用薬剤は経口投与される。一般的に、免疫応答抑制用薬剤は、FK506、ラパマイシン、およびダクリズマブの少なくとも1つである。さらに、一定の実験的パラメーターの測定を必要としない、本明細書における方法のいずれか1つの実施形態によれば、被験者はヒトである。
【0031】
また、本明細書において特徴としているのは、容器、免疫抑制剤、およびFACGINTがEGFレセプターリガンドでない場合に、FACGINTを含むINT組成物を含む、糖尿病の被験者を処置するキットである。
【0032】
また、本明細書において提供されるのは、I.N.T.TM治療組成物を徐放するための薬学的組成物であって、ガストリンレセプターリガンド、およびEFGレセプターまたはFACGINTを含み、少なくとも1つのガストリンレセプターリガンドまたはEGFレセプターリガンドもしくはFACGINTが徐放性処方物になっている組成物である。本組成物は、さらに免疫抑制のための薬剤を含むことも可能である。徐放性処方物の実施形態の例は、組成物の少なくとも1つの成分のPEG化であり、および少なくとも1つの成分の処方物が多小胞(multivesicular)脂質ベースのリポソームになっているものである。EGFレセプターリガンドの例は、EGFおよびTGFαからなる群から選択される。FACGINTの例は、グルカゴン様ペプチド1レセプターリガンド、グルカゴン様ペプチド2レセプターリガンド、胃抑制ポリペプチド(GIP)レセプターリガンド、ケラチノサイト成長因子(KGF)レセプターリガンド、ジペプチジルペプチダーゼIVインヒビター、REGタンパク質レセプターリガンド、成長ホルモンレセプターリガンド、プロラクチン(PRL)レセプターリガンド、インシュリン様成長因子(IGF)レセプターリガンド、PTH関連タンパク質(PTHrP)レセプターリガンド、肝細胞成長因子(HGF)レセプターリガンド、骨形成タンパク質(BMP)レセプターリガンド、トランスフォーミング成長因子−β(TGF−β)レセプターリガンド、ラミニンレセプターリガンド、血管作動性腸管ペプチド(VIP)レセプターリガンド、線維芽細胞成長因子(FGF)レセプターリガンド、ケラチノサイト成長因子レセプターリガンド、神経発育因子(NGF)レセプターリガンド、膵島新生関連タンパク質(INGAP)レセプターリガンド、アクチビン−Aレセプターリガンド、血管上皮細胞成長因子(VEGF)レセプターリガンド、エリスロポエチン(EPO)レセプターリガンド、下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド(PACAP)レセプターリガンド、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)レセプターリガンド、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、血小板由来増殖因子(PDGF)レセプターリガンド、およびセクレチンレセプターリガンドからなる群から選ばれた少なくとも1つである。あるいは、EGFレセプターリガンドは低分子量薬剤である。組成物は、非経口投与のために処方することも可能である。あるいは、組成物を経口投与用に処方することも可能である。組成物は、皮下、腹腔内、静脈内、および筋肉内への注射からなる群から選ばれた投与経路用に処方することも可能である。1つの実施形態において、ガストリンレセプターリガンド、またはEGFレセプターリガンドもしくはFACGINTの少なくとも1つを全身投与用に処方する。
【0033】
さらに、上記組成物を局所送達用に処方することも可能であり、局所送達は膵臓を標的とする。局所送達の類型の例には、内視鏡的逆行性胆道膵管造影法(ERCP)、超音波内視鏡誘導細針送達(EUS−FNAD)、膵臓動脈への注射、門脈への注射、膵臓内注射、および肝動脈への注射などがある。これらは、処置の間行われる超音波およびMRIなどの画像化技術と併用することが可能である。
【0034】
いくつかの実施形態において、本組成物は、経皮および粘膜からの送達からなる群から選ばれる投与経路用に処方される。これらの組成物のいずれも、徐放用の処方と組み合わせて機械装置によって送達するために処方することも可能であり、あるいは、機械装置を使用して処方物を長時間にわたって送達するように処方することも可能である。この装置は、例えば、分解可能なインプラント、経皮パッチ、カテーテル、埋め込みポンプ、経皮ポンプ、輸液ポンプ、およびイオン導入装置である。
【0035】
上記組成物および医薬的組成物は、皮下、腹腔内、静脈内、および膵臓内からなる群から選択される投与経路用に処方することも可能である。例えば、静脈内経路は門脈の中に通じている。装置を使用することができ、その装置はポンプでもよい。上記方法および組成物によるのと同様、徐放性処方物によって投与を局所的に行うことが可能である。例えば、局所投与は、内視鏡的逆行性胆道膵管造影法(ERCP)、超音波内視鏡誘導細針送達(EUS−FNAD)、膵臓動脈への注射、門脈への注射、膵臓内注射、および肝動脈への注射からなる群から選択された経路によって送達される。あるいは、徐放性の処方物および装置によって投与は全身的になり得る。薬学的組成物は有効量で提供することができる。また、本明細書において特徴的なのは、上記徐放性処方物のいずれかの組成物を1回投与量以上含むキットである。
【0036】
また特徴的なのは、糖尿病被験者をI.N.T.TM組成物で処置する頻度を減らす方法であって、組成物の少なくとも1つの成分を徐放性処方物として調製する工程、および同じ組成物を異なって処方したものの場合よりも処置の間隔を長く開けたプロトコールにしたがって、被験者に組成物を投与する工程を包含する方法である。投与は、内視鏡的逆行性胆道膵管造影法(ERCP)、超音波内視鏡誘導細針送達(EUS−FNAD)、膵臓動脈への注射、門脈への注射、膵臓内注射、および肝動脈への注射からなる群から選択された経路によって送達することが可能である。画像化技術を用いて、これらの処置の間、カテーテルを正しい位置に導くことが可能である。
【0037】
また、特徴とするのは、糖尿病である被験者においてI.N.T.TM組成物の効力を高める方法であって、成分の少なくとも1つが、徐放を生じさせるよう処方されているI.N.T.TM組成物を被験者に投与する工程、および、被験者の治療において、投与された該組成物の効果と、上記のように処方された成分は含まないが、それ以外は同一である組成物の効果とを、被験者における糖尿病の症状を緩和または消失させるために必要となる徐放性処方物量の減少を測定して比較すると、徐放性処方組成物を有するI.N.T.TM組成物の効果が促進される結果となる工程を包含する方法である。該方法の一実施形態において、効果の比較とは、さらに組成物の毒性を分析して、組成物投与後の好ましくない症状の減少または緩和が、成分の少なくとも1つが徐放を生じさせるよう処方されている組成物における毒性が、そのように処方されている成分は含まないが、それ以外は同一である組成物に比較して低下していることを示すことである。これらの方法のいずれかにおいて、成分の徐放性処方物の例は、PEG化および多小胞脂質ベースのリポソームである。
【0038】
I.N.T.TM組成物の効果を促進する、これらの方法のいずれかにおいて、徐放性処方物を有する成分は、EGFおよびTGFαからなる群から選ばれるEGFレセプターリガンドである。あるいは、これらの方法の実施形態において、FACGINTは、グルカゴン様ペプチド1レセプターリガンド、グルカゴン様ペプチド2レセプターリガンド、胃抑制ポリペプチド(GIP)レセプターリガンド、ケラチノサイト成長因子(KGF)レセプターリガンド、ジペプチジルペプチダーゼIVインヒビター、REGタンパク質レセプターリガンド、成長ホルモンレセプターリガンド、プロラクチン(PRL)レセプターリガンド、インシュリン様成長因子(IGF)レセプターリガンド、PTH関連タンパク質(PTHrP)レセプターリガンド、肝細胞成長因子(HGF)レセプターリガンド、骨形成タンパク質(BMP)レセプターリガンド、トランスフォーミング成長因子−β(TGF−β)レセプターリガンド、ラミニンレセプターリガンド、血管作動性腸管ペプチド(VIP)レセプターリガンド、線維芽細胞成長因子(FGF)レセプターリガンド、ケラチノサイト成長因子レセプターリガンド、神経発育因子(NGF)レセプターリガンド、膵島新生関連タンパク質(INGAP)レセプターリガンド、アクチビン−Aレセプターリガンド、血管上皮細胞成長因子(VEGF)レセプターリガンド、エリスロポエチン(EPO)レセプターリガンド、下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド(PACAP)レセプターリガンド、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)レセプターリガンド、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、血小板由来増殖因子(PDGF)レセプターリガンド、およびセクレチンレセプターリガンドからなる群から選ばれた少なくとも1つである。さらに、代替的には、成分は低分子量薬剤である。これらの方法のいずれかにおいて、投与とは、非経口、経口、経皮、皮下、筋肉、腹腔内、静脈内、膵内および筋肉内からなる群から選択される経路によって送達することである。
【0039】
例えば、投与によって局所的分布が生じる。さらに、該方法は、組成物を有効量にして投与する工程を包含する。またさらに、該方法は、投与前に、徐放装置を使用するために組成物を処方する工程を包含する。例えば、該装置は、分解性インプラント、経皮貼布、カテーテル、埋め込み式ポンプ、経皮ポンプ、輸液ポンプ、およびイオン導入装置からなる群から選ばれる。例えば、該装置はポンプである。これらの方法のいずれかにおける投与は、門脈への注射という、静脈内経路によることも可能である。
【0040】
また、特徴とするのは、糖尿病被験者を処置する頻度を減少させる方法であって、I.N.T.TM組成物を長時間継続して放出させることにより被験者に投与するための装置、例えばポンプを調製すること、該装置を被験者に提供する工程、および、該装置を置換または再充填して被験者を繰り返し処置する工程を包含する方法である。該ポンプは経皮ポンプ、フルオロカーボン(flurorcarbon)噴霧ポンプ、浸透圧ポンプ、ミニ浸透圧ポンプ、埋め込み式ポンプ、または輸液ポンプでもよい。あるいは、該装置は、分解性インプラント、非分解性インプラント、粘膜付着性インプラント、経皮貼布、カテーテル、およびイオン導入装置からなる群から選ばれる。非分解性インプラントの例はシラスティックである。分解性インプラントの別の例は、デンプン、ビニルスターチ(vinylstarch)、ジプロピレングリコールジアクリレート(DPGDA)、トリプロピレングリコールジアクリレート(TPGDA)、ペクチン、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース(CAP)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルセルロース/酢酸プロピオン酸セルロース(HPC/CAP)、メタクリル酸メチル(MMA)、メタクリル酸ブチル(BMA)、メタクリル酸ヒドロキシメチル(HEMA)、アクリル酸エチルへキシル(EHA)、メタクリル酸オクタデシル(ODMA)およびジメタクリル酸エチレングリコール(EGDMA)からなる群から選ばれる少なくとも1つであってもよい。
【0041】
また、特徴とするのは、細胞を受容する糖尿病患者の体内で幹細胞をインシュリン分泌細胞に増大および分化させる方法であって、以下のステップ、レシピエントに細胞を移植するステップ、および、ガストリン/CCKレセプターリガンドならびにFACGINTもしくはEGFレセプターリガンドのそれぞれを有効量含む徐放性組成物を投与するステップを含み、該幹細胞がレシピエントの体内でインシュリン分泌細胞に増大および分化する方法である。
【0042】
また、特徴とするのは、グルカゴン様ペプチド1(GLP−1)レセプターリガンドおよびガストリン/CCKレセプターリガンドを含む、糖尿病を処置するための組成物である。例えば、GLP−1レセプターリガンドはGLP−1である。また、特徴とするのは、成長ホルモン(GH)レセプターリガンドおよびガストリン/CCKレセプターリガンドを含む、糖尿病を処置するための組成物である。例えば、GHはヒト成長ホルモン(HGH)である。また、特徴とするのは、プロラクチン(PL)レセプターリガンドおよびガストリン/CCKレセプターリガンドを含む、糖尿病を処置するための組成物である。例えば、PLはヒトPLである。これらの組成物のいずれかにおいて、ガストリンの例は、15位アミノ酸にLeu残基をもつ17アミノ酸のガストリンIである。これらの組成物のいずれも、さらに免疫抑制用の薬剤を有することが可能である。これらの組成物のいずれも、さらに徐放用に処方することが可能である。
【0043】
また、特徴とするのは、糖尿病の被験者を処置するための方法であって、ガストリン/CCKレセプターリガンドおよびグルカゴン様ペプチド1(GLP−1)レセプターリガンドを含む組成物を被験者に投与する方法である。また、特徴とするのは、糖尿病の被験者を処置するための方法であって、ガストリン/CCKレセプターリガンドおよび成長ホルモン(GH)レセプターリガンドを含む組成物を被験者に投与する方法である。また、特徴とするのは、糖尿病の被験者を処置するための方法であって、ガストリン/CCKレセプターリガンドおよびプロラクチン(PL)レセプターリガンドを含む組成物を被験者に投与する方法である。これらの方法のいずれも、免疫抑制用の薬剤投与する工程を包含し得る。これらの方法のいずれも、少なくとも1つのレセプターリガンドまたは薬剤を、徐放性装置を用いて投与する工程を包含することも可能である。これらの方法のいずれも、少なくとも1つのレセプターリガンドまたは徐放性薬剤を処方する工程を包含することも可能である。これらの方法のいずれも、I型糖尿病またはII型糖尿病になっている糖尿病被験者で使用することが可能である。
【0044】
また、特徴とするのは、膵島移植物の機能性β細胞塊を、精製された膵島移植物を受容する糖尿病患者レシピエントの体中で増大する方法であって、哺乳動物に有効量のガストリン/CCKレセプターリガンドおよびFACGINTを投与する方法である。
【0045】
また、特徴とするのは、糖尿病患者に膵島調製物を移植する工程、および有効量のガストリン/CCKレセプターリガンドおよびFACGINTを投与する工程を包含する、ヒト糖尿病を処置する方法である。したがって、この方法において、FACGINTは、プロラクチンであるプロラクチンレセプターリガンドを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
(特定の実施形態の詳細な説明)
膵島新生治療(I.N.T.TM)のための組成物は、ガストリン/CCKレセプターリガンド、ならびにEFGレセプターリガンドまたはガストリン膵島新生療法補完因子(FACGINT)を含む。
【0047】
FACGINT、および、例えばガストリンなどのガストリン/CCKレセプターリガンドの併用剤を用いた投与による糖尿病治療は、いずれの単一成分のみによる治療に対しても、驚くほどの効力、効能および有用性の促進をもたらす。このため、本明細書において、FACGINTという用語は「ガストリン」は、ガストリンの投与を「補完する」ことを意味する。「補完する」という用語は、必ずしもガストリンとFACGINTの協同作用を意味するわけではなく、この用語は、ガストリンとFACGINTの投与に比べると、併用剤を投与した方が、併用剤で使用する用量では糖尿病を改善するのにずっと効果的であることを意味する。
【0048】
本明細書において、特定のリガンドに対するレセプターに関連して用いられる場合、「レセプターリガンド」という用語は、そのレセプターと結合または相互作用するか、それを刺激する組成物または化合物を意味する。
【0049】
「FACGINT」という用語は、多種多様な成長因子成長ホルモン、1種類以上の該因子ホルモンを修飾する因子、および、これらの成長ホルモンおよび成長因子の結合に関係する1種類以上のレセプターに対するリガンドおよびエフェクターを含み、これらの用語は、通常、以下のものと理解され、以下に例示されるが、これらに限定されるものではない。PTHrPなどのPTH関連タンパク質(PTHrP)レセプターリガンド(PTHrP;Garcia−Ocana,A.,et al.,2001,J.Clin.Endocrin.Metab.86:984−988);HGFなどの肝細胞成長因子(HGF)レセプターリガンド(HGF;Nielsen,J.et a1.,1999,J Mol Med 77:62−66);FGFなどの線維芽細胞成長因子(FGF);KGFなどのケラチノサイト成長因子レセプターリガンド;NGFなどの神経発育因子(NGF)レセプターリガンド;GIPなどの胃抑制ポリペプチド(GIP)レセプター;TGFβなどのトランスフォーミング成長因子−ベータ(TGF−β)レセプターリガンド(米国特許出願第2002/0072115号(2002年6月13日公開));ラミニン−1などのラミニンレセプターリガンド;INGAPなどの膵島新生関連タンパク質(INGAP)レセプターリガンド;BMP−2などの骨形成タンパク質(BMP)レセプターリガンド;VIPなどの血管作動性腸管ペプチド(VIP)レセプターリガンド;GLP−1およびエキセンジン−4などのグルカゴン様ペプチド1レセプターリガンド、GLP−2などのグルカゴン様ペプチド2(GLP−2)レセプターリガンド、および、その完全性に関与する酵素を阻害することによってGLP−1のレベルに間接的に影響を与えるジペプチジルペプチダーゼIVインヒビター(Hughes,T.et al.,2002,Am Diabetes Assoc Abstract 272−or);REGタンパク質などのREGタンパク質レセプターリガンド;GHなどの成長ホルモン(GH)レセプターリガンド、PRLおよび胎盤性ラクトゲン(PL)などのプロラクチン(PRL)レセプターリガンド;IGF−1およびIGF−2などのインシュリン様成長因子(1型および2型)レセプターリガンド;EPOなどのエリスロポエチン(EPO)レセプターリガンド(http://www.drinet.org/html/august_2002_.htm);ベータセルリン(同じくEGFファミリーの一員と考えられている);アクチビンAなどのアクチビン−Aレセプターリガンド;VEGFなどの血管上皮細胞成長因子(VEGF)レセプターリガンド;BMP−2などの骨形成タンパク質(BMP)レセプターリガンド;VIPなどの血管作動性腸管ペプチド(VIP)レセプターリガンド;VEGFなどの血管上皮細胞成長因子(VEGF)レセプターリガンド;PACAPなどの下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド(PACAP)レセプターリガンド;G−CSFなどの顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)レセプターリガンド;GM−CSHなどの顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF);PDGFなどの血小板由来増殖因子(PDGF)レセプターリガンド;およびセクレチンなどのセクレチンレセプターリガンド。
【0050】
本明細書においてFACGINTの例として示されている成長因子、酵素、酵素インヒビター、ペプチド、タンパク質およびホルモンのいかなるものについても、既知の類似体、変異体および誘導体のすべてが、天然のものであるか、変異誘発法によって作成されたものであるか、また設計されて合成されたものであるかを問わず、すべてそのFACGINTと同等と見なされるべきである。また、同等と見なされるものの中には、複合体、すなわち1つ以上の化学基を付加して誘導された組成物、およびその混合物が含まれる。コードする遺伝子は、例えば、オリゴヌクレオチド特異的変異誘発法によってヒト組換体の類似体など、そのFACGINT類似体を作成することによって改変することも可能である。さらに、1つ以上のアミノ酸残基の同一性または位置は、標的変異法(targeted mutagenesis)によって変えることができる。タンパク質の一次アミノ酸配列は、グリコシル化、アセチル化、または、1種類以上の脂質、リン酸、および/またはアセチル基など、その他の補助的分子の付加によるなど、複合体によって増強することができる。さらに、鎖の中の各アミノ酸残基は、酸化、還元、またはその他の誘導体化によって修飾することができる。FACGINTを切断して、活性を保持している断片を得ることができる。FACGINTのアゴニスト、プロドラッグ、または代謝生成物は、そのFACGINTと同等である。ポリペプチドまたはタンパク質の全体または断片を、免疫グロブリンおよびその他のサイトカインなど、他のペプチドまたはタンパク質と融合させることができる。本質的にタンパク質性であるFACGINTの変異体には、一次転写産物の選択的スプライシングによって、タンパク質分解的切断によって、または、二量体化、重合、リン酸化、グリコシル化、硫酸化および脱アミドなど、その他の翻訳後改変によって得ることができる。複合体は、例えば、ポリアルキレングリコール部分を含む非天然性ポリマーに結合したFACGINTを含む組成物などがある。また、この用語は、元となるペプチドのアミノ酸残基を1個以上、例えばアルキル化、アシル化、エステル形成またはアミド形成など化学修飾して得られる誘導体も含む。さらに、FACGINTの合成を誘導するか、またはFACGINTの作用を模倣する薬剤も、同等の化合物と考えられる。単数形で「FACGINT」と表記しても、本明細書記載の例示的FACGINTから得られる1種類以上の化合物を意味することもある。
【0051】
本明細書におけるこの用語のいくつかの使用法において、FACGINTという用語は、文脈において明らかなように、EGFレセプターリガンドを含まないと明記されている。しかし、EGFやTGFなどのEGFレセプターリガンドは、糖尿病の症状を改善するためにガストリンを補完することができるため、本明細書に定義されているとおりFACGINTの例であって、本明細書における組成物、方法およびキットの他の具体的実施形態における成分に含まれる。ガストリン/CCKレセプターリガンドとともにEGFレセプターリガンドを投与することを含むI.N.T.療法のある実施形態については、以前に記載されているため(米国特許第5,885,956号および第6,288,301号)、本明細書に示されているような併用剤や処方物においてこれらの薬剤を使用しない旨記載している。
【0052】
本明細書において「膵前駆細胞」または「β細胞前駆細胞」または「膵島前駆細胞」という用語は、膵臓のβ膵島細胞に分化することのできる前駆細胞であって、無制限に自己再生できるという幹細胞の特徴を有していても、いなくてもよい。「β細胞新生」または「膵島新生」とは、分化によって新しいβ細胞が形成されることを意味し、無制限に自己再生できるという幹細胞の特徴を有していても、いなくてもよい。「グルコース応答的に」インシュリンを分泌するとは、血液中のグルコース濃度に応じてインシュリンを分泌することを意味する。生理学的に正常な哺乳動物では、血中グルコース濃度が上昇すると、ランゲルハンス島のβ細胞がインシュリンを分泌する。すなわち、血中グルコース濃度に応答してインシュリン分泌が誘導されるのである。
【0053】
レセプターの「アゴニスト」とは、例えば、哺乳動物に内在するポリペプチド成長因子またはサイトカイン、またはその変異体もしくは一部、または類似体、ペプチド性模倣剤もしくは低分子薬剤などであって、その内在性ポリペプチド因子のレセプターに結合してそれを活性化できるあらゆる組成物である。本明細書に記載されている成長因子またはサイトカインのいずれについても、同等のものとは、アミノ酸配列が実質的に同一と見なされるものであって、例えば、本明細書に記載されているペプチドまたはタンパク質と50%の配列同一性、60%の配列同一性、70%の配列同一性、または80%の配列同一性を有する。別の実施形態において、本明細書におけるアゴニスト組成物は、アゴニスト誘導物質を含むが、それらは、動物に投与されたとき、または、培養中の細胞、器官または組織に提供されたとき、その動物、細胞、器官または組織によって産生されるアゴニストの量を増加させることのできる物質であると考えられる。例えば、プロラクチン放出ペプチドは、プロラクチンに分泌を促進する。レセプターリガンドは、その定義の範囲内に、特定のFACGINTに対するレセプターに対するレセプターアゴニストを含み、そのアゴニストが構造的にFACGINTに関連していると否とを問わない。
【0054】
1つの実施形態において、本発明は、例えばガストリンなどのガストリン/CCKレセプターリガンド、およびGLP−1、PRLまたはGHなどのFACGINTの両者を含む組成物を投与することによって、糖尿病などの糖尿病症状を処置する方法を提供する。特定のメカニズムによって限定されることなく、ガストリン/CCKレセプターリガンドおよびFACGINTは、それぞれ膵島前駆細胞の成熟したインシュリン分泌細胞への分化をもたらすのに十分な量提供される。組成物中のFACGINTおよびガストリン/CCKレセプターリガンドのそれぞれを全身的または局所的に投与することができる。あるいは、FACGINTおよびガストリン/CCKレセプターリガンドの一方または両者を、発現ベクターに組み込まれた核酸融合構築物を有する細胞によってインサイチュで発現させることも可能である。融合構築物は、典型的には、プレプロガストリンペプチド前駆体をコードする配列、およびFACGINTをコードする配列も含む。
【0055】
ガストリン/CCKレセプターリガンドおよびEGFレセプターリガンドの投与は、治療を停止した後も治療効果が続くように、膵島新生の効果を長引かせるように行うことができる。2002年7月18日に公開されたPCT出願PCT/US02/00685(WO 02/055152)を参照のこと。治療効果の持続時間は、組成物投与のためのプロトコール継続時間よりも長い。
【0056】
残存する多能膵管細胞から成熟インシュリン分泌細胞への再生的分化は、糖尿病、特に若年開始型糖尿病を処置するために提供されている組成物および方法を用いることによって、また、全身投与のため、または膵臓内でインサイチュ発現させるために提供されている因子または組成物をこのように併用することによって得ることができる。
【0057】
細胞移植の必要性をなくすβ細胞置換法とは、β細胞の再生促進法である。初期の研究では、β細胞は限られた再生能しか持たないと示唆されていたが、膵臓のインシュリン分泌β細胞は動的な細胞集団を含まれることが次第に認識されるようになっている。β細胞塊は、存在するβ細胞の増殖によって膨張することができる(β細胞増殖)。妊娠中、成長ホルモンであるプロラクチン(Holstad,M.et al.,J.Endocrinol.163:229−234)と胎盤性ラクトゲン(Nielsen,J.H.,et al.,J.Mol.Med.77:62−66,1999)はβ細胞の増殖を促進して、β細胞塊を増加させる。しかし、この拡大した細胞塊大は、ホルモンの刺激が続くことに依存している。出産後、拡大したβ細胞塊は、プロラクチンと胎盤性ラクトゲンの減少に応答して、妊娠していない時のレベルまで縮小する(Logothetopoulos,J.(1972)in Handbook of Physiology(Am.Physiol.Soc.,Washington,DC),Section 7,Chapter 3,pp67−76)。
【0058】
この生理学的情報から、ガストリンレセプターリガンド、およびEGFレセプターリガンドまたはFACGINTのいずれかの投与に応答したβ細胞再分化を評価する上で重要な側面は、成長因子による処理を停止した後、拡大したβ細胞塊を相当な時間維持できるか否かという点である。免疫抑制剤の有無を問わず、I.N.T.組成物と併用して徐放性処方物を使用することで、医療現場を頻繁に訪れる必要や自己治療の必要がなくなる。
【0059】
β細胞の新生は、細胞数および細胞塊の両面における増加として測定され、血漿インシュリン量または膵臓インシュリン含量の増加をもたらす。糖尿病治療において長期に効力を保つことが、I.N.T.の所望の結果である。
【0060】
本発明の実施形態は、ガストリン/CCKリガンドとともに投与されるFACGINTを、糖尿病を処置するために使用するための改善された方法および組成物を提供する。1つの実施形態において本発明は、成分単独で達成されるよりも高い効能、効力および有用性を達成するためにガストリンとFACGINTの併用剤を提供して、この併用剤について治療可能比の改善をもたらす。ガストリンとFACGINTの併用剤による治療は、成分単独で治療した後に観察されるよりも大きな血糖値低下をもたらし、この血糖量の低下は、治療を停止した後長時間維持さえる。本明細書において「FACGINT」という語句は、「1種類以上のFACGINT」または「少なくとも1種類のFACGINT」も意味する。
【0061】
β細胞促進剤であるエキセンジン(GLP−1アナログ)が、グルコースに対する耐性を向上させ、軽い糖尿病をもつ部分的膵切除モデルの体内でβ細胞塊を増大させた(Xu,G.et al.,Diabetes 48:2270−2276,1999)。しかし、グルコース耐性の向上とβ細胞再生との間の因果関係は、最終的に確認されてはいなかった。本明細書においてFACGINTの例として示されているGLP−1は、単独で投与されると食欲を減退させて、インシュリン耐性を低下させることによってグルコースのクリアランスを促進するが、このプロセスは、β細胞刺激とは別個であるかもしれない。したがって、エキセンジン処理群において、血漿インシュリンレベルが上がらずに下がったという知見は、観察されたグルコース耐性の改善は、β細胞刺激の結果でなかったことを示唆している。さらに、β細胞増殖に対するエキセンジンの効果を評価は、これらの研究で使用された膵切除モデルによって複雑化している。膵臓の外科的アブレーションによって生じる炎症は、単独で膵島再生を促進するガストリンおよびTGFαなど、膵島に作用する成長因子の発現を引き起こす。実際、膵切除だけを行った後にβ細胞再生が促進されたことが報告されている(Bonner−Weir,S.,Diabetes 42:1715−1720,1993;Sharma,A.et al.,Diabetes 48:507−513,1999)。したがって、膵切除によって誘導されるこれら因子の不在下で、エキセンジンがβ細胞再生を促進できたかはこれまで明確ではなかった。
【0062】
本明細書において、「糖尿病」という用語は、実験動物モデルを含む哺乳動物において現れる糖尿病症状であって、I型およびII型糖尿病、初期糖尿病、および軽微なインシュリン減少または血糖量の軽微な上昇を特徴とする前糖尿病症状などヒト型を含む症状を意味する。「前糖尿病症状」とは、糖尿病またはその関連症に罹っていると思われる哺乳動物を記述するもので、例えば、糖尿病とは正式に診断されていないが、インシュリンまたはグルコースのレベルに関して徴候を示している哺乳動物、家族歴、遺伝的素因、またはII型糖尿病の場合には肥満によって糖尿病または関連症に感受性である哺乳動物、または、以前糖尿病または関連症に罹っていて、再発の危険にさらされている哺乳動物を表している。
【0063】
本明細書において、「ガストリン/CCKレセプターリガンド」という用語は、ガストリン/CCKレセプターに結合し、それと相互作用し、または、それを刺激する化合物の如何なるものも包含する。このようなガストリン/CCKレセプターリガンドの例は、2001年9月11日米国特許第6,288,301号に示されており、ガストリン34(大ガストリン)、ガストリン17(小ガストリン)、およびガストリン8(ミニガストリン)など、さまざまな形態のガストリン、CCK 58、CCK 33、CCK 22、CCK 12およびCCK 8など、さまざまな形態のコレシストキニン、およびその他のガストリン/CCKレセプターリガンドを含む。一般的に、ガストリン/CCKレセプターリガンドは、Trp−Met−Asp−Phe−アミドというカルボキシル末端アミノ酸配列を共通して有する。また、上記の活性型類似体、および上記の断片およびその他の修飾体も想定されており、ペプチドおよび非ペプチドのアゴニスト、またはA71378など、ガストリン/CCKレセプターの部分アゴニストなどがある(Lin et al.,Am.J.Physiol.258(4 Pt 1):G648,1990)。
【0064】
ガストリン17などの小型ガストリンは、ペプチド合成によって経済的に調製され、合成ペプチドは市販されている。15位にメチオニンまたはロイシンを有するヒトガストリン17などの合成ヒトガストリン17も、Bachem AG,Bubendorf,SwitzerlandおよびResearchplusから購入することができる。また、ガストリン/CCKレセプターリガンドは、上記リガンドの活性型類似体、断片およびその他の修飾体を含み、例えば、内在性哺乳動物ガストリンとアミノ酸配列を共有し、例えば60%の配列同一性、70%の同一性、または80%の同一性を有する。また、このようなリガンドには、内在性ガストリン、コレシストキニン、または組織保存所から得られる同様の活性をもつ活性型ペプチドの分泌を増加させる化合物も含まれる。これらの例は、胃放出ペプチド、胃酸の分泌を抑制するオメプラゾール、およびCCK刺激を増加させるダイズトリプシンインヒビターである。
【0065】
糖尿病治療を必要としている個体において、糖尿病を処置する方法は、ガストリン/CCKレセプターリガンドとFACGINTの両者を提供する組成物を個体に投与する工程を包含する。特定のメカニズムによって限定されることなく、ガストリン/CCKレセプターリガンドおよびFACGINTは、膵島前駆細胞を成熟したインシュリン分泌細胞に分化させるのに十分な用量提供される。
【0066】
本明細書において、「処置する」または「改善する」という用語は、糖尿病の症状を1つ以上軽減または除去することを意味する。本明細書において提供される方法は、特定のメカニズムによって限定されることなく、ガストリン/CCKレセプターリガンドおよびFACGINTの両者を、糖尿病の哺乳動物に分化再生させる量投与して、膵臓内で機能的なグルコース応答型インシュリン分泌β細胞の数を増加させるために膵島新生を促進させる工程を包含する。該方法は、一般的に、I型または若年性糖尿病などの糖尿病に対して有効である。ガストリンとFACGINTの併用は、それぞれの成分で見られるよりも顕著な膵島新生応答の促進をもたらすと考えられる。ガストリン/CCKレセプターリガンドの一例はガストリンであり、FACGINTの例はGLP−1、PRLおよびGHである。
【0067】
本明細書における本発明の別の実施形態は、外植された膵臓組織をガストリン/CCKレセプターリガンドおよびFACGINTによってエクスビボで処理する工程、および、処理された膵臓組織を哺乳動物に導入する工程を包含する方法である。この方法においても、ガストリン/CCKレセプターリガンドの一例はガストリンであり、FACGINTの例はGLP−1、PRLおよびGHである。
【0068】
別の実施形態において、本発明は、ガストリン/CCKレセプターリガンドを刺激する方法であって、キメラインシュリンプロモーターとガストリンとの融合遺伝子を膵臟細胞に提供して該遺伝子を発現させる工程を包含する方法を提供する。さらに別の実施形態において、FACGINTを刺激する方法であって、遺伝子組換えによって哺乳動物に導入された、例えばGLP−1、PRLまたはGHであるFACGINTをコードする遺伝子を発現させる工程を包含する方法が提供される。ガストリン/CCKレセプターリガンド遺伝子も、同様に遺伝子組換えによって、好ましくは米国特許第5,885,856号に示されているようなヒトプレプロガストリンペプチド前駆体を提供することが可能である。
【0069】
本明細書において、哺乳動物という用語は、ヒト、サル、マウスやラットなどの齧歯類、イヌ、ネコ、農業上重要な動物、すなわちプロテインブタ、ヤギ、ヒツジ、ウマ、ゴリラやチンバンジーなどのサルなど哺乳綱の動物を含むが、これらに限定されるものではない。各哺乳動物は、本明細書で特定されているように非糖尿病、前糖尿病、または糖尿病である。
【0070】
全身投与方式は、経皮、髄腔内、筋内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、および経口の経路を含むが、これらに限定されるものではない。組成物は、例えば、輸液またはボーラス注射によって、上皮または粘膜皮膚上皮(例えば口腔粘膜、直腸、膣、鼻腔、および腸粘膜など)を通しての吸収によって、適当な経路で投与することができ、また、他の生物活性薬剤とともに投与することも可能である。投与経路の例は、例えば皮下注射によるなど、全身的なものである。
【0071】
本明細書において、「プロラクチン」という用語は、この用語が、例えばヒトプロラクチンなど、プロラクチンの活性を有するタンパク質因子の技術分野において知られているように、内在性哺乳動物プロラクチンと実質的な配列類似性を共有するポリペプチドを意味する。内在性ヒトプロラクチンは、下垂体によって産生される199アミノ酸のポリペプチドである。この用語は、内在性プロラクチンの欠失、挿入、または置換による変異体であって、その活性を保持しているプロラクチンの類似体を包含し、他の生物種および天然の変異体に由来するプロラクチンを含む。プロラクチンの機能は、米国特許第6,333,031号(活性化アミノ酸配列)および第6,413,952号(金属錯体リガンドアゴニスト)に記載されているような、プロラクチンレセプターに対するアゴニスト活性をもつ組成物、ならびにプロラクチンアゴニストとして作用するヒト成長ホルモンの類似体であるG120RhGH(Mode et al.,1996,Endocrinol.137(2):447−454)、および米国特許第5,506,107号および第5,837,460号に記載されているようなプロラクチンレセプターに対するリガンドを含む。また、プロラクチン関連タンパク質であるS179D、ヒトプロラクチン、および胎盤性ラクトゲンも含まれる。
【0072】
PRL、GHおよびPLは、構造的、免疫学的および生物学的機能が共通なポリペプチドホルモンファミリーの仲間であるから(「Pancreatic Growth and Regeneration」,Ed.N.Sarvetnick,Ch.1.Brejie,T.et al.,1997に概説されている)、本明細書においてPRL/GH/PLファミリーと呼ばれている。PRLおよびGHは、脊椎動物の下垂体前葉によって分泌される。PRLは、浸透圧調節、生殖、泌乳、および免疫調節を含む広範な生物学的機能に関与する。GHは、成長および形態形成に関係する生理学的プロセスに関係している。関連するレセプターリガンドは、「PRL/GH/PL」レセプターリガンドと呼ばれる。FACGINTを、ペプチドおよびタンパク質の構造的類似性、ガストリンの補完に関する機能的類似性、1種類以上のレセプターへの結合に関する機能的類似性などに基づいてさまざまな群に分類することも、それぞれ本発明のさまざまな実施形態の範囲に含まれる。プロラクチンレセプターリガンドは、PRLおよびPLを含み、成長ホルモンレセプターリガンドはGHを含む。
【0073】
本明細書において、「GLP−1レセプターリガンド」という用語は、GLP−1レセプターに結合し、それと相互作用し、または、それを刺激する化合物の如何なるものも包含する。GLP−1レセプターの例はGLP−1およびエキセンジン−4である。グルカゴン様ペプチド−1は、腸内内分泌細胞の中で、アミドであるGLP−1の分子形(従来7−36位と指定された残基を有する)に、GLP−1(7−37)と同じように合成される。GLP−1の生物活性に関する初期の研究は、完全長のN−末端伸長型のGLP−1(1−37および1−36、ただし後者はアミド)を利用した。より長いGLP−1分子は、通常、生物活性をもたない。後になって、最初の6アミノ酸を除去すると、実質的に生物活性が促進されたGLP−1分子の短縮形になることが分かった。
【0074】
循環している生物活性型GLP−1の大部分は、GLP−1(7−36)アミドの形で見られ、少量であるが生物活性型GLP−1(7−37)も検出される。Orskov,C.et al.,Diabetes 1994,43:335−339を参照。両ペプチドとも、ほぼ同じ量の生物活性を示す。GLP−1は、栄養分の摂取に応答して腸の内分泌細胞から分泌され、栄養吸収後の代謝恒常性において複合的な役割を演じる。GLP−1の調節は、ジペプチジルペプチダーゼ(DPP−IV)による第2位のアラニン残基におけるペプチドのN末端分解によって生じる。概要についてはDPP−IVを参照。GLP−1の生物活性は、グルコース依存型インシュリン分泌の促進、インシュリンの生合成の促進、グルカゴン分泌の阻害の促進、胃内容排出の促進、および食物摂取の阻害を含む。Drucker,D.,Endocrin 142:521−527,2001に概説されているように、GLP−1は、さらにいくつかの作用を消化管および中枢神経系において有すると考えられる。GLP−1組成物の例には、BIM 51077(DPP−IVによる分解に耐性のGLP−1アナログ類似体。Beaufour Ipsenより購入可能)、AC2592(GLP−1、Amylin,San Diego CAより)、ThGLP−1(GLP−1、修飾アミノ酸および脂肪酸が結合。Theratechnologies,Saint−Laurent,Quebec,Canadaより)、DAC(商標)としても知られているCJC−1131、GLP−1(アルブミンに共有結合するよう加工されたGLP−1類似体。Conjuchem,Montreal,Quebec,Canada)、LY315902および徐放性LY315902(DPP−IV耐性のGLP−1アナログ類似体。Eli Lilly,Indianapolis,INより)、低分子量GLP−1模倣薬、アルブゴン(Albugon)(Human Genome Science,Rochville,MDから発売されているアルブミン:GLP−1融合ペプチド)、NN2211としても知られているリラグルタイド(Liraglutide)(GLP−1分子をアシル化することで得られた長時間作用型GLP−1誘導体で、血流に入ると、DPP−IVによる分解および腎クリアランスから守ってくれるアルブミンとさかんに結合する。Novo Nordisk,Denmarkより購入可能。Elbrond et al.,Diabetes Care 2002 Aug 25(8):1398−404)。
【0075】
エキセンジンの一例であるエキセンジン−4は、Heloderma suspectum(アメリカドクトカゲ)の毒液から得られた新規のペプチドであり、GLP−1(7−36)アミドに53%の相同性を示す。これは、DPP−IVによる分解に耐性であるため、グルカゴン様ペプチド1(GLP−1)レセプターの長時間作用型で強力なアゴニストとして機能する。エキセンジン−4は、GLP−1と同様の性質をもち、胃内容排出、インシュリン分泌、食物摂取、およびスルカゴン分泌を調節する。エキセンジン−4の例は、エキセナチド(exenatide)(AC2993としても知られる合成型。Amylin)、エキセナチドLAR(長時間作用型)、ZP10(6個のリジン残基が付加された修飾型エキセンジン−4。Aventis/Zealand Pharma)、およびAP10(長時間作用用処方物。Alkermes,Cambridge MA)などである。生理学的研究から、トランスジェニック哺乳動物におけるエキセンジン−4の持続発現が、グルコース恒常性、細胞塊、または食物摂取に混乱を与えないこと(Biaggio,L.et al.,J.Biol Chem 275:34472−34477,2000)が示されているため、エキセンジン−4の生理学的作用については完全に理解されていない。
【0076】
ジペプチジルペプチダーゼIV(DPP−IV)インヒビターは、776アミノ酸からなり、その基質にGLP−1、GLP−2およびGIPを含む膜結合型ペプチダーゼDPP−IVの活性を阻害する化合物を意味する。DPP−IVによるGLP−1の不活性化が、生体内におけるGLP−1の生物活性を決定する因子である。DPP−IVインヒビターの例は、イソロイシン・チアゾリジド(thiazolidide)、バリン−プルロリジド(purrolidide)、NVP−DPP738(Novartis,Cambridge,MA)、LAF237(Novartis)、P32/98(Probiodrug AG,Halle,Germany)、およびP93/01(Probiodrug)などである。
【0077】
本明細書において、「EGFレセプターリガンド」という用語は、EGFレセプターを刺激して、同じまたは隣接する組織内、または同一個体の中でガストリン/CCKレセプターも刺激されると、インシュリン産生膵島細胞の新生を誘導する化合物を含む。そのようなEGFレセプターリガンドの例は、EGF1−53である全長EGFなどであり、さらに、EGF1−48、EGF1−49、EGF1−52、ならびにそれらの断片および活性型類似体などである。EGFレセプターリガンドの別の例は、1−48、1−47、1−51、ならびにアンフィレグリン(amphiregulin)およびポックス・ウイルス成長因子を含むTGFα型、ならびに、ガストリン/CCKレセプターリガンドと同じ相乗作用を示すEGFレセプターリガンドなどである。これらは、上記したものの活性型類似体、断片および修飾体を含む。また、CarpenterおよびWahl、Peptide Growth Factors(SpornおよびRoberts 編)、Springer Verlag、1990年の第4章を参照。
【0078】
EFGレセプターリガンドを含む化合物グループには、さらに「修飾されたEGF」が含まれ、正常型または野生型のEGFの変異体を含む。修飾は、EGFのクリアランス速度など、1種類以上の生物活性に影響することが示されている。この用語は、例えば、さまざまな残基位置に1つ以上のアミノ酸置換をもつヒトEGFの配列と実質的に類似したアミノ酸配列をもつペプチドを含む。
【0079】
組換え型EGFは、構造および活性が変化するように遺伝子改変されており、例えば、21位のメチオニンがロイシン残基で置換されているEGFが記載されている(米国特許第4,760,023号)。51残基の組換えヒトEGF(hEGF)、すなわちhEGFの52位と53位にあるC末端残基2個を欠失し、51位に中性アミノ酸置換をもつものは、EGF活性を保持し、微生物生産の間および被験者に投与した後、プロテアーゼ分解に対してより耐性が強い。EGFおよびTGFαと有意な類似性を有するタンパク質ファミリーをコードする一連の核酸分子が記述されてきた(WO 00/29438)。中性または酸性のアミノ酸で置換される16位の残基にヒスチジンをもつEGFムテイン(変異型EGF)であって、低いpH値で活性を保持する型が記載されている(WO 93/03757)。EGFおよびTGFαの化学的類似化合物および断片は、EGFレセプターファミリーのさまざまな分子に結合する能力を保持している(米国特許第4,686,283号)。EGFまたはTGFαのさまざまな改変によって、組換えタンパク質の産生、インビトロおよびインビボでの安定性、およびインビボ活性の1つ以上に影響を与える有益な特性が付与される。本明細書の実施例において使用される組換え改変型EGFレセプターリガンドの一例は、長さ51アミノ酸で、51位にアスパラギンを有するC末端欠失型ヒトEGF(本明細書においてEGF51Nと呼ぶ)であって、実質的にI.N.T.TM活性を保持し、正常型または野生型のhEGFと少なくともほぼ同じかそれよりも高いインビボおよび/またはインビトロでの安定性を有する(PCT/US02/33907として2003年5月15日に公開され、その全体が参照として本明細書に組み込まれるS.Magil et al.)。
【0080】
本明細書において、「成長ホルモン」という用語は、内在性の哺乳動物成長ホルモンと実質的なアミノ酸配列同一性をもち、哺乳動物の成長ホルモンの生物活性を有するポリペプチドを含む。ヒト成長ホルモンは、191アミノ酸を一本鎖で含み、分子量約22 kDalのポリペプチドである(Goeddel et al.,1979,Nature 281:544−548;Gray et al.,1985,Gene 39:247−254)。本用語は、欠失、挿入または置換を有する類似体、および別種生物および自然変異体由来の成長ホルモンを包含する。Cunningham et al.,1989,Science 243:1330−1336および1989,Science 244:1081−1085、ならびにWO 90/05185および米国特許第5,506,107号参照。
【0081】
本明細書において、「エリスロポエチン」という用語は、内在性哺乳動物EPOまたはその変異体、または、例えばEPO模倣薬EMP1などのEPOレセプターアゴニスト(Johnson et al.,2000,Nephr Dial Tranpl 15:1274−1277)、または既述されている模倣薬(Wrighton et al.,1996,Science 273:458−464;米国特許第5,773,569号;Kaushansky,2001,Ann NY Acad Sci 938:131−138)、EPOレセプターアゴニスト活性を有する抗体(例えば米国特許第5,885,574号、WO 96/40231など参照)、および米国特許第6,333,031号および第6,413,952号に開示されているアミノ酸配列である。
【0082】
本明細書において、「PACAP」という用語は、内在的に産生されるPACAP、またはその類似体もしくは変異体であって、実質的なアミノ酸同一性または類似性を有するか、またはマクサディラン(maxadilan)(Moro et al.,1997,J Biol Chem 272:966−970)などのPACAPレセプターアゴニストと同じ生物活性を有するものを意味する。有用なPACAP変異体は、米国特許第5,128,242号、第5,198,542号、第5,208,320号、および第6,242,563号に開示されている38アミノ酸および27アミノ酸の変異体であるが、これらに限定されるものではない。
【0083】
(薬学的組成物)
さまざまな実施形態において、本発明は、FACGINTとガストリン/CCKレセプターリガンドを併用したものを治療上有効な量含む薬学的組成物を提供する。本明細書に記載された薬学的組成物はすべて、免疫抑制剤の有無を問わず、徐放のため、局所または全身に送達するための成分または装置の有無を問わず処方することが可能である。薬学的に許容されるキャリアまたは賦形剤を付加することも可能である。キャリアは、食塩水、緩衝食塩水、デキストロース、水、グリセロール、エタノール、およびこれらを併用したものなどであるが、これらに限定されるものではない。処方物は、投与方式に適合したものでなければならない。本明細書において、「有効量」とは、認められている医学的エンドポイント、この場合には、糖尿病の症状の改善を達成するのに十分な量の治療薬剤または併用薬剤の量である。有効量は、本明細書に記載されているように、関連するパラメーターを測定する既存の方法によって当業者が実験的に決定することも可能である。
【0084】
本明細書において、組成物は、湿潤剤もしくは乳化剤またはpH緩衝剤を含むことも可能である。組成物は、溶液、懸濁液、乳液、錠剤、丸薬、カプセル、徐放用処方物、または粉末にすることができる。組成物は、トリグリセリドなどの伝統的な結合剤またはキャリアを用いて坐薬として処方することも可能である。経口用処方物は、医薬品等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなど、通常のキャリアを含むことも可能である。例えば、リポソームへの封入、微粒子、マイクロカプセルなど、さまざまな送達系が知られており、本発明に係る組成物を投与するために使用することができる。
【0085】
例示的な実施形態において、本明細書では、組成物は、例えば人間に皮下投与に適合させた薬学的組成物として通常の手順で処方される。典型的には、皮下投与用の組成物は、滅菌した等張水性緩衝液である。必要ならば、組成物は、注射部位の痛みを和らげるために可溶化剤および局所麻酔薬を含むことも可能である。一般的に、成分は、例えば乾燥粉末、凍結乾燥粉末、または無水濃縮液として、活性成分量を表示したアンプルまたは小袋に入れて、別々に、または一投薬単位として一緒に提供される。輸液によって投与される場合には、滅菌された医薬品等級の水、緩衝液、または食塩水を含んだ輸液瓶で調剤することができる。注射によって投与される場合には、注射用滅菌水または食塩水のアンプルを提供して、投与する前に成分を混合するようにしてもよい。本明細書において、組成物は、さまざまな成分にして、坐薬として処方して、重量で約0.5%から約10%の活性成分を含むものとすることが可能であり、また、経口用処方物は、好ましくは約10%から約95%の活性成分を含む。
【0086】
一日分の投薬量は、一回で投与するか、複数に小分けした用量に分け、一日に何度か投与する。
【0087】
本発明に係る組成物は、中性型または塩型として処方することも可能である。医薬的に許容される塩類は、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などからの遊離アミノ基によって形成されるもの、および、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどからの遊離カルボキシル基によって形成されるものなどである。
【0088】
具体的な疾患または症状を処置するのに有効な、本発明に係る治療薬の量は、その疾患または症状の性質によって異なり、通常の臨床技術によって決定することができる。処方物中の正確な使用用量も、投与経路によって、また、病気または疾患の重篤さによっても異なるので、臨床医および各患者の環境を判断して決定されるべきである。インシュリンまたはCペプチドの血中量、および空腹時のグルコースまたはグルコース投与量の通常の測定は、当業者によって測定される。有用用量は、インビトロまたは動物モデル実験系から得られた用量応答曲線から、薬理学分野の当業者によって推定され得る。投与に適した用量範囲は、通常、1日あたり、体重1kgに対し約0.01マイクログラムから約10,000マイクログラムのI.N.T.TM化合物であり、例えば、1日あたり、1kgに対して約0.01マイクログラムから約1マイクログラム、約0.1マイクログラムから約10マイクログラム、約1マイクログラムから約500マイクログラム、約10マイクログラムから約10mgである。このように、適当な投与用量の範囲は、通常、1日あたり、体重1kgに対し約0.01マイクログラムから約10ミリグラムである。
【0089】
他の実施形態において、本発明は、本発明に係る薬学的組成物の成分が1種類以上入った容器を1個以上含む医薬用パックまたはキットを提供する。このようなパックまたはキットには、ガストリン/CCKレセプターリガンドおよび/または1種類以上のFACGINT、またはEGFレセプターリガンド、および1種類以上の免疫抑制剤を個別または合わせたものを1単位投薬量含む容器が存在する。パックまたはキットのこれら成分の1つ以上を、徐放用に、または徐放用装置の補充薬として挿入するために処方することができ、または、局所送達するために処方することができる。このような容器には、使用説明書、医薬品または生物関連商品の製造、使用または販売を規制する行政機関によって定められた形式の注意書であって、ヒト用に製造、使用または販売することに対する該機関の承認を示す注意書など、さまざまな資料を添付することができる。いくつかの実施形態において、キットまたはパックには、コンピューターによって読み取り可能な形式にして組み込まれたソフトウエアを付随させることも可能である。
【0090】
1つの態様において、本発明は、膵島新生治療(I.N.T.TM)の組成物および方法を特徴としており、例えば、ガストリンとFACGINTを免疫抑制剤と併用して、新生のβ細胞の成長を生体内で促進して、膵島量を増加させ、例えば糖尿病のヒトおよび動物において、糖尿病患者における糖耐性の改善をもたらすことを特徴としている。
【0091】
ガストリン/CCKレセプターリガンドおよびEGFレセプターリガンドもしくはFACGINTは、1回の併用量で投与することができ、または、ある順序で別々に投与することも可能である。これらの組成物の「有効な併用量」とは、空腹時血糖の減少、またはインシュリン分泌細胞の量の増加、またはインシュリンの血中濃度の増加、またはβ細胞塊の増大をもたらす量である。1つの実施形態において、ガストリン/CCKレセプターリガンドは、長さ17アミノ酸残基で、15位の残基がロイシン(1−17Leu15、本明細書では17Leu15という)になっているヒトガストリンであり、さらに、EGFレセプターリガンドはヒトEGF51N(PCT/US02/33907として2003年5月12日に公開され、その全体が参照として本明細書に組み込まれるS.Magil et al.)である。有効量は、ガストリン/CCKレセプターリガンド対EGFレセプターリガンドを1よりも大きな比率で含む。例えば、ガストリン/CCKレセプターリガンド対EGFレセプターリガンドの比率が10よりも大きな比率で含む。利用しやすい投薬経路は、例えば皮下ボーラスなどの全身注射である。
【0092】
さらなる実施形態において、レシピエント被験者は、免疫系を抑制する薬剤を投与される。例えば、この薬剤は、低分子量の有機化学薬であって、例えば、タクロリムス、シロリムス、シクロスポリン、およびコルチゾン、および表1に示すような他の薬剤の少なくとも1つである。別の実施形態において、この薬剤は抗体であり、例えば、この抗体は、抗CD11a、およびこれも表1に示すような抗体である。さらに別の代替的態様において、免疫抑制剤は、例えば抗GFAPまたは抗S100βなど、免疫スケジュール後に被験者によって産生される抗体でもよい。被験者は糖尿病であってもよく、例えば、被験者は非肥満性糖尿病またはストレプトゾトシン処理したマウス(NODマウス)である。被験者はヒトでもよく、例えば、I型またはII型の糖尿病患者、前糖尿病症状を示す患者、または妊娠性糖尿病の患者、または、過去に糖尿病であった患者、例えば、過去に妊娠していたときに妊娠性糖尿病であった患者などである。
【0093】
さらに、新たに成長したβインシュリン分泌細胞または膵島の大きさおよび機能を評価するとは、膵島β細胞塊、膵島β細胞数、膵島β細胞の割合、血中グルコース、血清グルコース、血中グリコシル化ヘモグロビン、膵臓β細胞塊、膵臓β細胞数、空腹時血漿Cペプチド含量、血清インシュリン、および膵臓インシュリン含量など、通常の生理的または診断用のパラメーターを測定することである。
【0094】
糖尿病としては、一定の場合に自己免疫疾患であるため、I.N.T.TMの実施形態は、治療有効量の、例えば、EGFおよびガストリン/CCKのそれぞれに対するレセプターのリガンド、または、ガストリンとEGFの組み合わせ、およびFACGINTとガストリン/CCKの組み合わせなど、FACGINTおよびガストリン/CCKのそれぞれを、免疫系を抑制する1種類以上の薬剤、すなわち免疫抑制剤でも治療されている被験者または患者に全身投与する態様である。
【0095】
いくつか異なったエンドポイントを用いて、ガストリンおよびEGFもしくはFACGINTによる治療と、ガストリンおよびEGFもしくはFACGINTを併用したものによる治療のいずれと、免疫抑制剤とが糖尿病を改善、すなわち、膵島移植物において機能的なβ細胞塊を増加させるか判断することができる。それらは、マウスに、グルコースまたはアルギニンなどのβ細胞刺激剤を注射した後、循環ヒトCペプチドおよびヒトインシュリンの血漿における濃度上昇を測定すること;ヒトインシュリン免疫応答性の増加または膵島移植物から抽出されたmRNA量の増加によって示されるガストリン/EGF治療に対する応答;および、処理された動物の膵島を形態計測によって測定されるβ細胞数の増加などである。
【0096】
本明細書において、「移植する」という用語は、細胞、組織、または器官の組成物を、当技術分野において確立された方法または本明細書に記載されている方法によって哺乳動物の体内に導入することを意味する。組成物は「移植物」であり、哺乳動物はレシピエントである。移植物およびレシピエントは同系、同種異系または異種である。本明細書において、「自己の」という用語は、移植物がレシピエントの細胞、組織、または器官に由来することを意味する。
【0097】
ヒトの膵島のβ細胞機能が促進したことは、ストレプトゾトシンで誘導されたか、または遺伝的に(非肥満性糖尿病またはNODとして知られているマウス系統を用いて)糖尿病になったレシピエントマウスにおいて高血糖症が逆転することによっても示され得る。ガストリンによって、EGFまたはFACGINTによって、および1種類以上の免疫抑制剤によって糖尿病レシピエント被験者を処理した後のβ細胞機能の上昇は、インシュリンを中止したときの生存率の向上、および、空腹時血糖値で表される高血糖症の矯正によって示される。さらに、膵臓インシュリンおよび血漿C−ペプチドがともに増加することが観察されている。
【0098】
(表1.免疫抑制剤の例とその商業的供給源)
【0099】
【表1−1】

【0100】
【表1−2】

【0101】
【表1−3】

【0102】
【表1−4】

【0103】
【表1−5】

【0104】
【表1−6】

【0105】
本明細書において、「免疫抑制剤」または「免疫を抑制するための薬剤」という用語は、免疫応答を抑制する薬剤を意味する。免疫抑制剤の例を表1に示す。また、これらの薬剤の誘導体または機能的等価物は、本明細書および請求の範囲に記載された発明の実施形態にとって適当だと考えられる。
【0106】
本明細書において、投薬スケジュールとは、例えば、I.N.T.TM組成物を構成する成分、または、FACGINTとガストリン/CCKレセプターリガンドの併用、および1種類以上の免疫抑制剤をそれぞれ有効量にして、同時または互いに特定の間隔、例えば、互いに1日以内に、または併合調処方物として、または別々に投与される、本明細書で提供される組成物のいずれかを投与するためのプロトコールを意味し、1日あたりなどという単位時間当たりに送達される組成物の量、および各組成物が投与される時間の長さまたは周期を含む。
【0107】
インシュリン依存性の糖尿病患者のほとんどが、少なくとも毎日インシュリン注射を必要とする。一定の病気の状況の下では、糖尿病患者は、1日に複数回インシュリンを投与したり、糖尿病を管理するための食事をしたり、また、頻繁にグルコース量を観察した結果でインシュリン投与を表示したり、病気を最適に管理するために糖尿病患者に必要とされる他の活動であって、1日に5回も行う必要がある活動をしたりする必要がある。
【0108】
免疫抑制剤との併用による膵島新生療法の成功によって糖尿病から寛解したことは、空腹時血糖量が低下することによって、また、糖消費を規定食により投与するとそれに反応して上昇する血糖量とその期間とが減少することによって示される。膵島新生に成功すると、血糖量を監視して得られるデータが示すように、インシュリン投与を、例えば、1日に5回注射していたのを2回に、1日に2回注射していたのを1回に、1回から0回に減らすことができる。糖尿病学における当業者は、糖尿病患者を処置する際に、インシュリン投与量を空腹時で他の生理的な条件下における血糖量に調整することに慣れている。
【0109】
被験者に投与される組成物の投薬量は、吸収、分布、循環液における半減期速度、代謝、排出、および本明細書記載の実施形態のレセプターリガンドの毒性に関する基準を含む標準的なデータにおける、例えば、霊長類と齧歯類の各種など、生物種ごとの既知の違いに合わせて調整される。一般に、齧歯類に対しては、霊長類の約6倍から約100倍高い投薬用量に調整する。
【0110】
表1の免疫抑制剤またはその他同等の薬剤は、製造業者から提供されたところに従って投与され、薬理学分野の当業者に知られているとおり、被験者の体重に対して標準化する。例えば、タクロリムスは、通常、注射または経口で投与され、シロリムスは、通常経口で投与される。
【0111】
レセプターリガンド組成物および免疫抑制剤を投与する方式は、皮下、経皮、髄腔内、筋内、腹腔内、静脈内、鼻腔内、および経口という経路などであるが、これらに限定されるものではない。化合物は、例えば、輸液またはボーラス注射によって、ポンプによって、上皮または粘膜皮膚上皮(例えば口腔粘膜、直腸、および腸粘膜など)を通しての吸収によって、適当な経路で投与することができる。本明細書においてレセプターリガンドは、単一のまたは複数の他の生物活性薬剤と併用して投与することができる。例えば、本明細書記載の組成物および方法を受けるレシピエントには、もし細菌感染が見られたら、1種類以上の抗生物質を投与することが可能であり、また、頭痛がするようならアスピリンを投与することも可能である。本明細書におけるレセプターリガンドの投与は、好ましくは、全身経路による。
【0112】
1つの実施形態において、本発明は、例えばガストリンなどのガストリン/CCKレセプターリガンドと、EGFレセプターリガンドか、例えばGLP−1、GHまたはプロラクチンなどのFACGINTかのいずれかを含み、徐放するように処方された組成物を投与して、膵島前駆細胞を成熟したインシュリン分泌細胞に分化させることによって糖尿病を処置する方法を提供する。組成物中のFACGINTおよびガストリン/CCKレセプターリガンドはともに全身に、または経口で投与することができる。
【0113】
特定のメカニズムによって限定されることなく、ガストリンなどのガストリン/CCKレセプターリガンドと、EGFレセプターリガンドか、または本明細書で定義した、例えば、GLP−1、GHもしくはプロラクチンなど1種類以上のFACGINTかいずれか一方とを、それらだけで、または免疫抑制剤とともに、また、これら1種類以上のレセプターリガンドもしくは因子もしくは薬剤のいずれかを、本明細書に記載されているようにして、または薬理学分野における当業者に知られている同等の方法によって、徐放するよう処方して投与した後、長期間有効な膵島新生が達成される。
【0114】
一般的な実施形態において、本発明は、糖尿病を予防または処置する方法であって、1種類以上のEGFレセプターリガンド、またはGLP−1、エキセンジン−4、成長ホルモン、プロラクチンなどのFACGINTを、ガストリン/CCKレセプターリガンドと併用して含み、EGFレセプターリガンドもしくはFACGINTならびにガストリン/CCKレセプターリガンドのそれぞれが、哺乳動物においてインシュリン分泌β細胞の数を増加させるのに十分な量になっている徐放性処方物を含む組成物を、それを必要とする哺乳動物に投与して、それによって糖尿病を治療または予防することを含む方法を提供する。
【0115】
糖尿病被験者および患者をFACGINTの徐放性処方物で処置するための組成物は、PTHrPなどのPTH関連タンパク質(PTHrP)レセプターリガンド(PTHrP;Garcia−Ocana,A.,et al.,2001,J.Clin.Endocrin.Metab.86:984−988);HGFなどの肝細胞成長因子(HGF)レセプターリガンド(HGF;Nielsen,J.et a1.,1999,J Mol Med 77:62−66);FGFなどの線維芽細胞成長因子(FGF);KGFなどのケラチノサイト成長因子レセプターリガンド;NGFなどの神経発育因子(NGF)レセプターリガンド;GIPなどの胃抑制ポリペプチド(GIP)レセプター;TGFβなどのトランスフォーミング成長因子ベータ(TGFβ)レセプターリガンド(米国特許出願第2002/0072115号(2002年6月13日公開));ラミニン−1などのラミニンレセプターリガンド;INGAPなどの膵島新生関連タンパク質(INGAP)レセプターリガンド;BMP−2などの骨形成タンパク質(BMP)レセプターリガンド;VIPなどの血管作動性腸管ペプチド(VIP)レセプターリガンド;GLP−1およびエキセンジン−4などのグルカゴン様ペプチド1レセプターリガンド、GLP−2などのグルカゴン様ペプチド2レセプターリガンド、および、その完全性に関与する酵素を阻害することによってGLP−1のレベルに間接的に影響を与えるジペプチジルペプチダーゼIVインヒビター(Hughes,T.et al.,2002,Am Diabetes Assoc Abstract 272−or);REGタンパク質などのREGレセプターリガンド;GHなどの成長ホルモン(GH)レセプターリガンド、PRLおよび胎盤性ラクトゲン(PL)などのプロラクチン(PRL)レセプターリガンド;IGF1およびIGF−2などのインシュリン様成長因子(1型および2型)レセプターリガンド;EPOなどのエリスロポエチン(EPO)レセプターリガンド(http://www.drinet.org/html/august_2002_.htm);ベータセルリン(EGFファミリーの一員と考えられている);アクチビンAなどのアクチビン−Aレセプターリガンド;血管アクチビン−A;VEGFなどの血管上皮細胞成長因子(VEGF)レセプターリガンド;BMP−2などの骨形成タンパク質(BMP)レセプターリガンド;VIPなどの血管作動性腸管ペプチド(VIP)レセプターリガンド;VEGFなどの血管上皮細胞成長因子(VEGF)レセプターリガンド;PACAPなどの下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド(PACAP)レセプターリガンド;G−CSFなどの顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)レセプターリガンド;GM−CSHなどの顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF);PDGFなどの血小板由来増殖因子(PDGF)レセプターリガンド;およびセクレチンなどのセクレチンレセプターリガンド。これらの徐放性処方物は、免疫を抑制する薬剤を含むこともできる。
【0116】
1つの実施形態において、組成物の徐放性処方物は全身に投与される。あるいは、組成物を局所的に投与するか、局所送達用の装置または手段を用いることもできる。哺乳動物は糖尿病の哺乳動物であり、例えば、哺乳動物は、その哺乳動物の寿命の約1%以上の期間糖尿病が続いている。一般的に、組成物中のガストリン/CCKレセプターリガンド、FACGINTまたはEGFレセプターリガンドの徐放性処方物の量は、単独で糖尿病の哺乳動物において血糖を低下させるのに必要とされる最少有効量よりも実質的に低い。FACGINTもしくはEGFレセプターリガンドおよびガストリン/CCKレセプターリガンドは、併用して、長期間にわたって膵島前駆細胞の分化を誘導してグルコース応答性インシュリン分泌膵島細胞にするのに十分な量にして提供される。
【0117】
本発明の別の実施形態は、FACGINTまたはEGFレセプターリガンドと、ガストリン/CCKレセプターリガンドを併用して、膵島前駆細胞の増殖を増加させて膵臓組織とならせ、それによって糖尿病を治療または予防するのに十分な量になるようにして含む組成物の徐放性処方物を、それを必要とする哺乳動物に投与することを含む、糖尿病を予防または処置する方法を提供する。
【0118】
別の態様において、本発明は、糖尿病を予防または処置する方法であって、FACGINTまたはEGFレセプターリガンドと、ガストリン/CCKレセプターリガンドを併用し、それぞれが、哺乳動物の体内で膵臓インシュリン分泌β細胞の数を増加させるのに十分な量になるようにして含む組成物の徐放性処方物を、それを必要とする哺乳動物に投与すること、および、膵島新生の量を測定することを含み、それによって糖尿病を予防または処置する方法を提供する。組成物を投与すると、該組成物を投与する前に測定した血糖量よりも血糖量が低くなり、例えば、組成物の投与によって、血糖が、該組成物を投与する前に測定した血糖量よりも約50%または約70%低下する。哺乳動物では、グリコシル化ヘモグロビン濃度が、該組成物を投与する前に測定したグリコシル化ヘモグロビン濃度に比べ低下する。哺乳動物では、血清インシュリン濃度が、該組成物を投与する前に測定した血清インシュリン濃度に比べ上昇する。哺乳動物では、膵臓インシュリン濃度が、該組成物を投与する前に測定した膵臓インシュリン濃度に比べ上昇する。
【0119】
別の態様において、本発明は、哺乳動物において膵島新生を誘導する方法であって、FACGINTまたはEGFレセプターリガンドと、ガストリン/CCKレセプターリガンドを併用して、それぞれが、膵島前駆細胞の増殖を増加させて膵臓組織とならせるのに十分な量になるようにして含む組成物の徐放性処方物を哺乳動物に投与し、それによって糖尿病を予防または処置することを含む、糖尿病を予防または処置する方法を提供する。
【0120】
別の態様において、本発明は、哺乳動物において膵島新生を誘導する方法であって、FACGINTまたはEGFレセプターリガンドと、ガストリン/CCKレセプターリガンドを併用した徐放性処方物を含む組成物を、それぞれが、哺乳動物の体内で膵臓のインシュリン分泌β細胞の数を増加させるのに十分な量にして投与することを含む方法を提供する。
【0121】
別の態様において、本発明は、ガストリン/CCKレセプターリガンド、およびFACGINTもしくはEGFレセプターリガンドを含むが、これらの薬剤のいずれかが徐放性処方物に処方されている組成物を特徴とする。該組成物は、膵島前駆細胞の増殖を誘導して、成熟したインシュリン分泌細胞とするのに有効な量になっている。さらに、該組成物は、膵島前駆細胞の分化を誘導して、成熟したインシュリン分泌細胞とするのに有効な量になっている。この組成物は医薬上許容され得るキャリアに入れることが可能である。この組成物は、免疫応答を抑制する薬剤を含むこともできる。
【0122】
別の態様において、本発明は、ガストリン/CCKレセプターリガンド、およびFACGINTもしくはEGFレセプターリガンドを含む組成物であるが、これらの薬剤のいずれかが徐放性処方物として存在する組成物、容器、および使用説明書を含む、糖尿病を治療または予防するためのキットを提供する。該組成物は、免疫抑制のための薬剤を含むことも可能である。キットの組成物は、医薬上許容され得るキャリアをさらに含むことも可能である。キットの組成物は、単位投薬量で存在することも可能である。
【0123】
本明細書で提供される本発明の別の実施形態は、幹細胞を、細胞の糖尿病レシピエントの体内でインシュリン分泌細胞に増大させ分化させる方法であって、レシピエントに細胞を移植すること、および、ガストリン/CCKレセプターリガンドならびにFACGINTもしくはEGFレセプターリガンドを、そのうちの1つ以上が徐放性処方物として存在するものを、それぞれ有効量含む組成物を投与することを含む方法である。例えば、移植される細胞はヒトから得られる。さらに、移植される細胞は、膵島、臍帯、胚、または幹細胞株列から得られる。一般的に、ガストリン/CCKレセプターリガンドはヒトガストリン1−17Leu15である。一般的に、EGFレセプターリガンドは、EGFまたはTGFα、あるいは、構造的に、EGFまたはTGFαのそれぞれに実質的に一致するポリペプチドであって、EGFまたはTGFαのそれぞれの生物学的機能と実質的に同一の機能を有するポリペプチドである。関連する実施形態において、例えば幹細胞などの細胞は、器官への直接注射、および静脈内投与から選択された経路によって移植される。例えば、膵臓、腎臓、および肝臓から選択された器官に細胞を注射する。あるいは、経皮または経肝経路を用いて、細胞を門脈に投与する。どちらの場合も、移植前に、細胞をエクスビボで組成物によって処理することができる。
【0124】
本明細書で提供される本発明の別の実施形態は、有効量の投与がなければ同じレシピエントに移植される細胞と比較して少ない細胞量の幹細胞を糖尿病レシピエントに移植してヒト糖尿病患者を処置する方法であって、ガストリン/CCKレセプターリガンドならびにFACGINTもしくはEGFレセプターリガンドの徐放性処方物を有効量レシピエントに投与することを含む方法である。レシピエントには、免疫系を抑制する薬剤をさらに投与することも可能である。例えば、この薬剤は、FK506、ラパマイシン、シクロスポリン、およびコルチゾンからなる群から選択された化学薬剤である。あるいは、該薬剤は抗体であり、例えば、抗体は抗CD−4である。提供される方法で幹細胞を含むものにおいて、移植前の細胞は、家族の一員から得ることができ、後に使用するために保存しておくことができる。
【0125】
本発明の一実施形態は、ガストリン/CCKリガンドとともに投与されるFACGINTまたはEGFレセプターリガンドであって、その1種類以上が徐放性処方物に処方されているものを使用して糖尿病を処置するための改良法および組成物を提供する。1つの実施形態において、本発明は、FACGINTまたはEGFレセプターリガンドと併用されるガストリンのいずれかの徐放処方物であって、FACGINTまたはEGFレセプターリガンド単独で、または、処方物全体の即時の生体利用度を提供するために投与されるこれら3つの薬剤のいずれかを併用して達成されるよりも高い効力、効能および有用性を達成する徐放性処方物を提供する。本発明は、徐放性処方物について、即時に生体利用が可能な処方物よりも優れた治療可能比を提供する。
【0126】
徐放性処方物の使用によって、さらに一層長い時間血糖の低下を続けることが可能になる。
【0127】
ガストリン/CCKレセプターリガンドと、EGFレセプターリガンドまたはFACGINTとを徐放性処方物において全身投与に併用すると、非徐放性直接的処方物にして投与したときよりも高い効力を有した。ガストリン/FACGINTを併用、またはガストリン/EGFレセプターリガンドを併用した徐放性処方物でグルコース耐性の向上および膵臓のインシュリン量の増加が見られた。
【0128】
治療法を必要としている個体において糖尿病を処置するための方法は、ガストリン/CCKレセプターリガンドおよびFACGINT、またはガストリン/CCKレセプターリガンドおよびEGFレセプターリガンドを提供する組成物であって、膵島前駆細胞の成熟したインシュリン分泌細胞への分化をもたらすのに十分な量の組成物の徐放性処方物を個体に投与することを含む。分化する細胞は、膵管に残留している潜在的膵島前駆細胞である。インシュリン依存性糖尿病、特にI型または若年性の糖尿病を処置する方法は、好ましくは全身に、分化再生させる量のガストリン/CCKレセプターリガンドおよびFACGINT、またはガストリン/CCKレセプターリガンドおよびEGFレセプターリガンドを、どちらか一方または両方の薬剤が徐放性処方物になっているものを、糖尿病の哺乳動物に投与して、膵島新生を促進し、膵臓内で機能的なグルコース応答型インシュリン分泌β細胞の数を増加させることを含む。いずれかが徐放性処方物になっている、ガストリンと、FACGINTまたはEGFレセプターリガンドを併用することによって、同じ薬剤を非徐放性の直接的処方物にした場合に見られる膵島新生よりも顕著な膵島新生反応の促進がもたらされるはずである。ガストリン/CCKレセプターリガンドの例は、本明細書に記載したとおり、ガストリンまたはその合成ガストリン誘導体であり、FACGINTの例は、GLP−1、GH、およびプロラクチンである。EGFレセプターリガンドの例は、組換えヒトEGF、例えば、C末端と51位のアスパラギン残基に欠失をもつ、長さ51アミノ酸のヒト組換え変異型EGFであるEGF51Nである。
【0129】
あるいは、経皮または経肝経路を用いて、細胞を門脈に投与する。どちらの場合も、移植前に、細胞をエクスビボで組成物によって処理することができる。
【0130】
(徐放および局所送達のための処方および投与法)
ガストリン/CCKレセプターリガンド、またはEGFレセプターリガンドもしくはFACGINTである薬剤の少なくとも1つの投与が、持続的または調節された放出によって行われるように処方する。本明細書において「徐放」とは、少なくとも1種類のI.N.T.TM治療薬の材料、装置、処方、および/または投与を組み合わせて、その組み合わせもしくは1種類以上のI.N.T.剤、または免疫抑制剤が、時間に応じてレシピエントに一定量、継続的に、または周期的など非継続的に供給されるようにすることを意味する。放出が持続する時間は分単位、時間単位、日単位、週単位、またさらには月単位となることもある。活性物質の放出を、長時間にわたって一定に行うことも可能であり、あるいは、放出が長時間にわたって周期的に行われるようにすることも可能である。放出は無条件に行うことができ、あるいは、環境中にある組成物または他の外部事象に応答して放出を開始させることも可能である。例えば、インシュリンやグルコースなど内在性の組成物によって放出を開始させることもでき、または、薬剤の投与に応ずるなどして、外部から供給される組成物によって開始させることもできる。
【0131】
徐放は、治療薬の全用量を即時もしくは非常に急速に送達するか、その組成物の全部を投与後非常に短時間に生体利用可能にして、薬剤の大部分を非常に短時間でレシピエントが生体利用できるようにする非徐放性処方物と対比される。一服用量を実質的に即座に生体利用可能にする例は、ボーラスの腹腔内注射など非経口的にまたは経口的に投与されるか、またはさらに、数時間にわたる静脈内点滴によって投与される薬剤水溶液などである。すなわち、心臓血管造影剤を静脈内に投与すると、15分以内に動脈系全体に循環し、抗腫瘍薬を静脈内に点滴すると、点滴が終了して数秒間でその全部が生体利用可能となる。これに対し、徐放性処方物は、長期間にわたって生体利用可能性をもたらすこと、また、薬剤の初期濃度が高いことによって生じる可能性のある副作用を防ぐという二点でレシピエントである患者のためになる。Mathiowitz,E.,Encyclopedia of Controlled Drug Delivery.1999.New York;John Wiley参照。
【0132】
徐放性処方物は、薬剤の局所(または標的)投与だけでなく、全身投与を提供するために開発されてきた。本明細書において概説されている、さまざまな材料、装置および投与経路が、ガストリン/CCKレセプターリガンド、およびEGFレセプターリガンドまたはFACGINTなどのI.N.T.TM剤とともに使用される。
【0133】
例えば、複数のタイプのペレットを含むハードゼラチンカプセルであって、一部のペレットのコーティングがより速く溶けるように、各タイプが異なった厚さにコーティングされているカプセルなど、経口の徐放系も利用可能になっている。Banga,A.,Bus.Brief.:Pharmatech 2002:151−154参照。経口浸透系では、半透性膜を通って錠剤に入り込んだ液体が、胃腸管の変わりやすい条件とは独立して中心成分に浸透圧を生じさせる。例えば、成長因子のようなタンパク質など、高分子である薬剤を保護するために、部位特異的送達、プロテアーゼインヒビター、キャリア系、または、ポリアクリル酸骨格および生体接着性を含むヒドロゲルなどの処方物を含む方法がある。
【0134】
ほとんどのタンパク質薬剤は、非経口的に送達され、タンパク質の非経口的送達のための調節放出法は、ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド;PLGA)などの乳酸のポリマーであって、薬剤を含む中心を有する生物分解性小球体を形成して、約1ヶ月間にわたって薬剤を放出するポリマーの使用を含む。さらに、タンパク質、またはタンパク質を含むリポソーム(下記参照)を、ポリエチレングリコール(PEG)を共有結合的に付加してPEG化することも可能である。
【0135】
全身への送達および局所送達の両方に経皮送達を利用することが可能である。前記したような浸透促進剤を、経皮貼布と併用して送達を向上させたり、イオン導入、フォノフォレシス(phonophoresis)、マイクロポレーション(microporation)、または電気穿孔のための装置と、可能な装用電気装置とともに併用したりして使用することができる。
【0136】
本明細書において「局所送達」とは、他の器官や組織は治療しないで特定の標的器官または組織を実質的に処置するような、または、標的組織または器官が受ける治療の程度が、非標的組織または器官よりも2倍以上、5倍以上、10倍以上になるような、経路ならびに処方物もしくは装置またはその両者によって投与することを意味する。
本明細書において「徐放」とは、を意味する。通常、本明細書では、標的器官は膵臓である。本明細書において示すように、移植または多細胞移植物用の細胞は、門脈への注射によって膵臟に局所送達することができ、すなわち、膵動脈、肝動脈、門脈または膵管に注射して薬剤を送達することができる。埋め込まれていないポンプ、すなわち外部にあって、ポンプを器官に接続させるカテーテルによって組成物を膵臓などの標的器官に送達するポンプを使用することも可能である。埋め込み式ポンプを使用して組成物を局所送達することも可能である。
【0137】
局所送達するための他の方法は、内視鏡的逆行性胆道膵管造影法(ERCP)、サンプリングのためではなく、本明細書で提供される薬学的組成物の送達に適応させた超音波内視鏡下穿刺生検法(EUS−FNAB)などであるが、これらに限定されるものではない。例えば、Wang et al.,Transpl.Int.1995,8:268−272参照。これらの技術は、診断または予後判定の目的で工夫されたものであるが、本明細書記載の組成物である、本明細書記載のI.N.T.TM組成物などを免疫抑制剤と併用し、および/または徐放性処方物として送達するために適合させることができる。Yano et.al.,1994,Transpl Int 7 Suppl 1:S187−193;Ricordi et al.,1994,Transpl Proc.26:3479;およびMunoz−Acedo et al.,1995,J Endocrin 145:227−234も参照。
【0138】
薬剤送達のための埋め込み式ポンプ、または埋め込みできない(外部)ポンプが、例えば癌や糖尿病など、いくつかの病気を処置するための薬剤送達に使用されている。ポンプは、蠕動ポンプ、フルオロカーボン噴霧ポンプ、または、ミニ浸透圧ポンプ(Blanchard,S.,1996,Biomedical Engineering Applications,North Carolina State University)などの浸透圧ポンプなどであり得る。蠕動ポンプは、ポンプのヘッドを作動させる各電気パルスによって一定量の薬剤を送達する。このポンプ、電子機器および電源は、シラスティックで覆われたチタン製容器の中に置かれる。薬剤保存容器は、例えば60 psiという実質的圧力にも耐えることができるシリコンゴム製の小袋である。この保存容器は、ポリプロピレン製の引き込み口から再補給することができる。フルオロカーボンポンプは、ポンプを操作するために液体フルオロカーボンを使用する。浸透圧ポンプは、一定の速度で薬剤を放出するために浸透圧を利用する。ポンプの例は、MiniMed MicroMed 407Cポンプである(Medtronic,Inc.,Northridge,CA)。さらに、2種類の埋め込み可能な部品、輸液ポンプ、および髄腔内カテーテルを含む、髄腔内薬剤送達装置(Medronic)を使用することも可能である。カテーテルが脊髄の髄腔内に挿入されていて、皮膚の下をくぐってポンプに接続されている間に、ポンプを腹部から皮下ポケットに挿入する。そして、一定の流速または速度を変えて薬剤を送達する。さらに、腹腔内ポンプ、例えば埋め込み式ポンプを用いて、本明細書記載の組成物を、例えばカテーテルによって局所的に、または全身に送達することができる。
【0139】
湿らせた状態を維持し、その直下に血管系がある上皮領域への粘膜送達は、乾いた上皮表面の組織を通って経皮送達するよりもより効率がよいことがある。粘膜表面とは、鼻、胚、直腸、口腔、眼、および性器などである。粘膜表面の例は、鼻および肺である。
【0140】
徐放用小球体(microsphere)に使用される材料は、主にポリマーであり、記述されているように、PEG、また、ポリエチレンオキシド(PEO)と呼ばれるもの、およびPGLAである。ポリマー媒体を直接注射して、被験者の体内で次第に加水分解または分解されて治療薬剤を放出することも可能である。例えばPEGなどのポリメラーゼの分子量は、放出速度を調節するために変えることができる。タンパク質治療薬をPEG化またはPEGを共有結合させることによって、細網内皮系(RES)のクリアランス機構などのクリアランス機構に関係するレセプターからタンパク質を保護する。あるいは、多糖類を使用して、RESに対する因子を標的することも可能である(1996年9月10日発行の米国特許第5,554,386号)。RESの器官は、肝臓、脾臓および骨髄などである。
【0141】
ホモポリマー、またはポリ(乳酸−コ−エチレングリコール)すなわちPLA−PEGなどのコポリマーは、粘性液を形成することができ、治療用タンパク質薬と混合できる。粘度は、PLA−PEGの分子量によって変化する。一定の条件下では、治療薬は、被験者に注射されるとポリマーと共沈殿し、拡散によって溶媒が消失して、好ましい放出速度をもつ持続性薬剤が形成される(Whitaker,M.,et al.,Bus.Brief:Pharmatech 2002:1−5)。
【0142】
治療薬を封入した小球体の重合体から微粒子が形成される。小球体に使用するポリマーは、ポリ(乳酸)またはPLA、ポリ(グリコール酸)またはPGA、およびPLA−PGAコポリマーなどである。本発明に係るタンパク質など、ある量の治療薬は、まず、粒子の外側に非特異的に結合しているタンパク質が噴出し、その後の拡散による段階、そして浸食による最後の段階であって、ポリマー組成、分子量、微粒子の大きさ、およびpHなどの生理学的条件によって制御することができる段階などの複数の段階で放出される。タンパク質は、溶媒で、または凍結噴霧(frozen−atomization)処理または超音波処理によって乳化し、さらに溶媒を抽出するために、その懸濁液を液体窒素中で凍結させた凍結乾燥粉末などの固体になっていれば、小球体の製造工程でのタンパク質の安定性が増進される。小球体は、例えば超臨界二酸化炭素(scCO)などの超臨界流体から作ることができる。
【0143】
薬剤送達に適した生物分解性ブロックポリマーとその合成法が、Kumar,N.et al.,Adv.Drug Deliv.Rev.53(2001):23−44に記載されている。コポリマーは、ランダム、交互、またはブロック(ジ型またはトリ型)でよく、形状は、直鎖状、または星状または接ぎ木状(graft)(櫛形)でよい。ポリマーは、大量の水性溶液を保持する三次元の疎水性ポリマーネットワークであるヒドロゲルを形成することができる。ヒドロゲルに使用されるポリマーは、クロスリンキングまたは他の化学的付加体によって不溶性となる。
【0144】
デンプン、ビニルデンプン、ジプロピレングリコールジアクリレート(DPGDA)、トリプロピレングリコールジアクリレート(TPGDA)、ペクチン、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース(CAP)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルセルロース/酢酸プロピオン酸セルロース(HPC/CAP)、メタクリル酸メチル(MMA)、メタクリル酸ブチル(BMA)、メタクリル酸ヒドロキシメチル(HEMA)、アクリル酸エチルへキシル(EHA)、メタクリル酸オクタデシル(ODMA)およびジメタクリル酸エチレングリコール(EGDMA)からなる群から選ばれる少なくとも1つなどの材料から生物分解性のインプラントを調製することができる。Gil,M.et al.,Boletim de Biotecnologia 2002,72:13−19参照。
【0145】
ポリマーに加えて、天然および合成の脂質を徐放性処方物に使用することができる。DepoFoam(商標)(Skye Pharma,London,England)は、治療薬を封入するために多小胞の脂質粒子(リポソーム)を形成する(米国特許第5,993,850号、およびYe,Q.et al.,2000 J.Controlled Rel.64:155−166参照)。脂質は、正味負荷電の両親媒性であり、ステロール、または両性イオン性脂質であり、リポソームを作成する方法は非酸性的である。リポソームに活性治療薬を取り込む方法も提供されている。治療薬は、ガストリン/CCKレセプターリガンド、EGFレセプターリガンド、およびFACGINTの1つ以上であり得る。
【0146】
別のリポソーム用脂質も本発明の範囲に含まれる。例えばコムギセラミドなどのセラミドなどである植物の極性脂質は、プロラミンなどのタンパク質とともにゲルを形成するのに有効で、その中に経皮または経粘膜で送達するための1種類以上の治療薬を入れることができる。2002年6月25日発行の米国特許第6,410,048号参照。プロラミンの例は、コムギグリアジン、トウモロコシゼインなどである。徐放性薬処方物および装置に使用される他の天然ポリマーは、コラーゲン(EP−A−O 621 044)、キチン(米国特許第4,393,373号)、およびキトサン、脱アシル化型キチンなどである。
【0147】
例えば糖脂質、非エステル型脂肪酸、脂肪族アルコール、脂肪族アルコールの脂肪酸エステル型、シクロヘキサノール、脂肪酸、グルセロールのエステル、グリコール、または脂肪族アルコールのエーテルまたはグリコールなどの浸透促進剤が、典型的な浸透促進剤であり、安定化剤、可溶化剤、界面活性剤および可塑剤など、その他の成分も、経皮装置に入れることができる。2002年9月12日に公開された米国特許出願第20020127254号参照。
【0148】
脂質およびさまざまなタイプのポリマーを使用して、薬剤送達のための「ナノ粒子」を形成させる。M.Kumar,2002,J.Pharm.Pharmaceut.Sci.3:234−258に概説されている。これらの粒子中の薬剤荷重は、ほとんどの脂質親和性薬剤でもっとも大きいことが分かっている。ポリ乳酸、レシチンおよびホスファチジルコリンもしくはコレステロールを含むリポソームで、長期継続する放出が見いだされている。
【0149】
本明細書に記載した方法によって、例えば、RESを標的するよう設計された材料、またはRESの細胞を避けるようためにさまざまな材料からなるリポソームを使用して局所的(標的)徐放が得られる。さらに別の標的法は、抗体または可溶性組換えレポーターをリポソームまたは小球体の外部表面に連結させて使用することなどである。さらに、本明細書に記載されているような徐放性処方物は、特定の標的器官に局所送達するために、例えばポンプなど本明細書記載の装置のいずれかで使用できるように調整することが可能である。
【0150】
別の実施形態において、本発明は、治療有効量のFACGINTまたはEGFレセプターリガンド、およびガストリン/CCKレセプターリガンドの併用剤を含む徐放性薬学的組成物を提供する。薬学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤を加えることもできる。キャリアは、食塩水、緩衝食塩水、デキストロース、水、グリセロール、エタノール、およびこれらを併用したものなどであるが、これらに限定されるものではない。処方物は、投与方式に適合したものでなければならない。
【0151】
別段の定義がない場合、本明細書における科学技術用語はすべて、本発明の属する技術分野における当業者に広く理解されている意味をもつものとする。本明細書に記載されている方法および材料と類似または同等のものも、本発明を実施する際に使用することができる。以上、本発明をさまざまな実施形態で十分に説明したが、更なる実施形態を以下の実施例および請求の範囲において例示的に記載するが、それらは、本発明をさらに制限するものと解してはならない。引用文献のすべての内容は、その全体が参照として本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0152】
(実施例)
(実施例1:GLP−1レセプターリガンド、グルカゴン様ペプチド1(GLP−1)、およびガストリン/CCKレセプターリガンドであるガストリンによる治療は、発病間もない糖尿病のNODマウスの病気進行を防止する。)
非肥満型糖尿病マウス(NOD)系統は、ヒトI型糖尿病の病因と多くの共通する特徴をもつ表現型をもつ。典型的には、NODマウスは、4週齢になると早くも、破壊性の自己免疫性膵島炎とβ細胞破壊を示す。これらのマウスでは、通常10〜15週齢で糖尿病を発症し、典型的な血糖濃度が約7mMから約10mMとなり(これに対し、正常なマウスでは約3.0〜6.6mMである)、膵臓のインシュリン量が、正常なマウスのそれよりも約95%より大きく減少する。病気が進行するにつれて、NODマウスは、次第に慢性糖尿病の深刻な徴候を示し、血糖量は約25から約30mMとなり、膵臓のインシュリン量は実質的に0にまで低下する。このように病気が重篤になった段階では、約99%よりも多い量のβ細胞が破壊されている。
【0153】
本実施例では、GLP−1およびガストリンの両方を投与すれば、高血糖症、ケトアシドーシスおよび死亡を防止でき、また、発病間もない糖尿病のNODマウスにおいて膵島インシュリン含量を増加させるかどうかを判定するために、発病間もない糖尿病のNODマウスにおけるGLP−1とガストリンを併用して治療した場合の効果を調べた。使用したI.N.T.TM化合物は、15位アミノ酸にLeu残基をもつ17アミノ酸残基の合成ヒトガストリンIというガストリンである。使用されたGLP−1は、ヒト/マウスGLP−1の生物活性断片(該断片が切り出された前駆体と比較すると7−36位にある残基を有する。Bachem H6795から得た)であるGLP−1である。
【0154】
12〜14週齢の非肥満型糖尿病(NOD)マウスの雌を、糖尿病の発病(空腹時血糖>8.0から15mmol/l)について観察し、症状が出てきてから48時間以内に2つのマウス群を以下のように処理した。一方の群は媒体だけで処理し、もう一方の群には100μg/kg/日のGLP−1を投与したが、各処理は1日2回腹腔内経路で投与した。
【0155】
治療を14日間行った。動物の空腹時血糖量(FBG)を毎週測定した。絶食させてから12時間後、また、最後のペプチドまたは媒体を注射してから24時間後にFBG値を測定した。治療を停止してから、その後4週間(2週目から6週目)すべてのマウスのFBG値を観察して、治療的処理を終了した後にも高血糖症の防止が継続するかを判定した。14日目に処理を停止し、FBG値を得るため18日目にマウスをサンプリングした(表2に示す)。
【0156】
(表2.グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)およびガストリン併用療法により、発病間もない糖尿病のNODマウスを処置する。)
【0157】
【表2−1】

【0158】
【表2−2】

【0159】
GLP−1(100μg/kg/日)およびガストリン(3μg/kg/日)を腹腔内注射により、それぞれ上記した群のNOD雌マウスに1日2回投与した。12〜14週の糖尿病マウスを、糖尿病が発症してから2日以内に使用した(通常、6.5mMよりも高いFBGをもつと考えられる)。
【0160】
プロトコールには、これらのマウスを6週目に再びサンプリングして、FBGとC−ペプチドを測定するために血液を採取すること、および、膵臓インシュリンを測定して、膵島の炎症(膵島炎)のスコアを付けるためにマウスを殺すことが含まれている。処理を開始してからは、マウスは、インシュリン置換処理も免疫抑制も受けなかった。以下のパラメーターを測定した。生存率、膵臓インシュリン値、膵島の炎症の有無、および空腹時血糖値。
【0161】
結果は、媒体で処理された対照群(群1)の動物では、この模擬処理を受けている期間中空腹時血糖(FBG)値が連続的に上昇し、0日目の11mMから18日目には24mMになった。
【0162】
これに対し、GLP−1およびガストリンで処理されたマウスではFBG値(7.9mM グルコース)が、媒体で処理されたマウス(24.4mM)と比較して顕著に低くなり、実際、媒体で処理されたマウスで生じた血糖値の3分の1よりも低い値にまで低下した(表2)。もっとも重要で驚くべきことには、FBG値を低下させる上で、GLP−1とガストリンを併用した方が、ガストリン単独またはGLP−1単独のとき(それぞれ19.0mMおよび15.8mMというFBG値)よりも効果的であった。この併用で処理されたマウスにおいてのみ、FBGが正常の範囲に入るレベルにまで低下した。GLP−1およびガストリンで処理されたマウスにおける血糖値の改良調節法は、これらマウスの膵臓におけるインシュリン存在量の顕著な増加と関連していることが期待される。
【0163】
要するに、本実験におけるこれらの結果は、糖尿病を発症して間もないマウスにおいて、短時間低用量のGLP−1およびガストリンによる処理は、病気の進行を防止し、症状を逆転させて、ほぼ正常な血糖値が得られたことを示している。さらに、GLP−1およびガストリンで処理されたマウスにおけるこの顕著な血糖値の減少は、治療を停止した後も一定期持続した。これらの動物において、データが、膵臓のインシュリン存在量の改善を示すこと、および、これらの効果が、治療終了後も長い期間持続することが明らかになることが期待されている。
【0164】
NOD雌マウスの別の群を、プロラクチンレセプターリガンドであるプロラクチン(PRL)と、ガストリン/CCKレセプターリガンドで、また、成長ホルモンレセプターリガンドである成長ホルモン(GH)と、ガストリン/CCKレセプターリガンドであるガストリンで処理した。これらの処理によってFBGとその他のパラメーターについて、本明細書においてGLP−1で得られたデータと同じようなデータが示されると予想される。
【0165】
(実施例2:PEG化の有無による組成物の比較)
徐放性処方物が、ボーラスまたは非徐放的送達用に処方物されている以外は同じ処方物よりも、高い効能を提供できるか否かを決定するために、PEG化処方物か非PEG化処方物のいずれかにしたI.N.T.TM組成物でNODマウスを処理するプロトコールを比較して実験を行う。I.N.T.TM組成物の1つ以上の成分をPEG化すると、治療薬が体内で活性型に保持される時間の長さを延長することができる。
【0166】
本実験は、I.N.T.TM組成物の1つ以上の薬剤の徐放性処方物を投与すると、直接投与用、すなわち非徐放性放出投与用に処方物された、I.N.T.TM組成物と比較して、NODマウスの糖尿病症状を改善できることを示す。
【0167】
(実施例3:組成物投与の投薬頻度の比較)
徐放性処方物が、非徐放性の直接用処方物よりも高い効能を提供できるか否かを決定するために、I.N.T.TM組成物をNODマウスに1日に3回投与するプロトコールと1日に1回投与するプロトコールとを比較するように実験を工夫する。
【0168】
その結果、I.N.T.TM組成物の徐放性処方物で得られたものに匹敵するような、I.N.T.TM組成物の長期にわたる生体利用能によって、効能を改善できる、すなわち、I.N.T.TM組成物の直接的または非徐放性の処方物と比較すると、NODマウスの糖尿病症状の病状をより改善でき、そのような症状の改善に必要とされる投薬頻度を減らせることが示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖尿病を治療するための方法であって、該方法は、処置を必要とする哺乳動物に、ガストリン/CCKレセプターリガンド、および膵島新生治療のためにガストリンを補完する因子(FACGINT)がEGFレセプターではないという条件で、該FACGINTを含む組成物の治療有効量を投与する工程を包含する、方法。
【請求項2】
前記FACGINTが、グルカゴン様ペプチド1レセプターリガンド、グルカゴン様ペプチド2レセプターリガンド、胃抑制ポリペプチド(GIP)レセプターリガンド、ケラチノサイト成長因子(KGF)レセプターリガンド、ジペプチジルペプチダーゼIVインヒビター、REGタンパク質レセプターリガンド、成長ホルモンレセプターリガンド、プロラクチン(PRL)レセプターリガンド、インシュリン様成長因子(IGF)レセプターリガンド、PTH関連タンパク質(PTHrP)レセプターリガンド、肝細胞成長因子(HGF)レセプターリガンド、骨形成タンパク質(BMP)レセプターリガンド、トランスフォーミング成長因子−β(TGF−β)レセプターリガンド、ラミニンレセプターリガンド、血管作動性腸管ペプチド(VIP)レセプターリガンド、線維芽細胞成長因子(FGF)レセプターリガンド、ケラチノサイト成長因子レセプターリガンド、神経発育因子(NGF)レセプターリガンド、膵島新生関連タンパク質(INGAP)レセプターリガンド、アクチビン−Aレセプターリガンド、血管上皮細胞成長因子(VEGF)レセプターリガンド、エリスロポエチン(EPO)レセプターリガンド、下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド(PACAP)レセプターリガンド、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)レセプターリガンド、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、血小板由来増殖因子(PDGF)レセプターリガンド、およびセクレチンレセプターリガンドからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記FACGINTが、GLP−1またはエキセンジン−4であるグルカゴン1様ペプチドレセプターリガンドを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記FACGINTが、成長ホルモンを含む成長ホルモンレセプターリガンドを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
糖尿病を処置する方法であって、該方法は、以下:
複数の細胞を、FACGINTがEGFレセプターリガンドではないという条件で、少なくとも1つの該FACGINTおよびガストリン/CCKレセプターリガンドを含む組成物に、エキソビボで接触させる工程、および、
該細胞を、それらを必要とする哺乳動物に投与し、それによって、該糖尿病を処置する工程
を包含する、方法。
【請求項6】
前記細胞が自己由来である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記投与する工程または接触させる工程が、哺乳動物においてインシュリン分泌細胞の量を増加させるのに有効な量で組成物を提供することである、請求項1または5のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記組成物が全身投与される、請求項1または5のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記組成物中のFACGINTの量が、実質的に、ガストリン/CCKレセプターリガンドの非存在下で糖尿病の糖尿病の哺乳動物における血糖値を減少させるために必要とされるFACGINTの最小有効量未満である、請求項1または5のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
請求項1または5のいずれかに記載の方法であって、血中グルコース、血清グルコース、血中グリコシル化ヘモグロビン、膵臓β細胞塊、血清インシュリン、膵臓インシュリン含量、および形態計測により決定されたβ細胞塊からなる群から選択されるパラメーターを測定する工程をさらに包含する、方法。
【請求項11】
前記細胞が膵管細胞である、請求項5に記載の方法。
【請求項12】
インシュリン分泌細胞の量、インシュリン分泌細胞のグルコース応答性、膵島前駆細胞の増殖量、および成熟インシュリン分泌細胞の量からなる群から選択されるパラメーターを測定する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
哺乳動物において膵島新生を誘導するための方法であって、該方法は、該哺乳動物に、FACGINTがEGFレセプターリガンドではないという条件で、該FACGINTとガストリン/CCKレセプターリガンドとの組み合わせを含む組成物を、膵組織における膵島前駆細胞の増殖を増加させるのに十分な量で投与し、それによって、膵島新生を誘導する工程を包含する、方法。
【請求項14】
哺乳動物において膵島新生を誘導するための方法であって、該方法は、FACGINTがEGFレセプターリガンドではないという条件で、該FACGINTとガストリン/CCKレセプターリガンドとの組み合わせを含む組成物を、該哺乳動物における膵臓のインシュリン分泌β細胞の数を増加させるのに十分な量で投与する工程を包含する、方法。
【請求項15】
前記接触させる工程の前に、エキソビボで前記細胞を培養する工程をさらに包含する、請求項5に記載の方法。
【請求項16】
ガストリン/CCKレセプターリガンド、およびFACGINTがEGFレセプターリガンドではないという条件で、該FACGINTを含む、組成物。
【請求項17】
膵島前駆細胞の成熟インシュリン分泌細胞への分化を誘導するのに有効な投薬量にある、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
薬学的に受容可能なキャリアにある、請求項16に記載の組成物。
【請求項19】
糖尿病を処置または予防するためのキットであって、FACGINTがEGFレセプターリガンドではないという条件で、ガストリン/CCKレセプターリガンドおよびFACGINT、容器、ならびに使用のための指示書を備える、キット。
【請求項20】
前記組成物が、薬学的に受容可能なキャリアをさらに含む、請求項19に記載のキット。
【請求項21】
移植細胞の糖尿病レシピエントにおいて、幹細胞をインシュリン分泌細胞に拡張および分化させるための方法であって、該レシピエントに、FACGINTがEGFレセプターリガンドではないという条件で、ガストリン/CCKレセプターリガンドおよび1つ以上のFACGINTの各々の有効量を含む組成物を投与する工程を包含する、方法。
【請求項22】
前記細胞が、ヒトまたはブタから得られる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記移植細胞が、膵島、臍帯、胚または幹細胞株から得られる、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記ガストリン/CCKレセプターリガンドが、ガストリンである、請求項1、5、13、14および21のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
前記ガストリンが、ガストリン−17である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記ガストリン/CCKレセプターリガンドが、ヒトガストリン1−17Leu15である、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記細胞を前記レシピエントに移植する工程が、器官への直接注射、および静脈投与から選択される経路を使用することである、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
前記細胞を投与する工程が、膵臓、腎臓および肝臓から選択される器官に局所送達することである、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
前記細胞を局所送達する工程が、内視鏡的逆行性胆道膵管造影法(ERCP)、超音波内視鏡誘導細針送達(EUS−FNAD)、膵臓動脈への注射、門脈への注射、膵臓内注射、および肝動脈への注射からなる群から選択される工程である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記細胞を注射する工程が、門脈に経皮送達することかまたは経肝送達することである、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記移植する工程の前に、前記細胞をエキソビボで組成物を用いて処理する工程をさらに包含する、請求項23に記載の方法。
【請求項32】
ヒトの糖尿病を処置するための移植に必要とされる幹細胞の量を減少させるための方法であって、該方法は、レシピエントに、FACGINTがEGFレセプターリガンドではないという条件で、ガストリン/CCKレセプターリガンドおよびFACGINTの各々の有効量を投与する工程を包含し、ここで、該必要とされる細胞の量が、該有効量を投与する工程は存在しないが他の点は同一であるレシピエントに対して必要とされる細胞の量と比較して減少される、方法。
【請求項33】
前記被験者に、免疫応答を抑制するための薬剤を投与する工程をさらに包含する、請求項1および2のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
前記免疫応答を抑制するための薬剤が、薬物である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記免疫応答を抑制するための薬剤が、ラパマイシン、コルチコステロイド、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル、シクロスポリン、シクロホスファミド、メトトレキサート、6−メルカプトプリン、FK506、15−デオキシスペルグアリン、FTY720、ミトキサントロン、2−アミノ−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2[2−(4−オクチルフェニル)エチル]プロパン−1,3−ジオールヒドロクロリド、6−(3−ジメチル−アミノプロピオニル)フォルスコリン、およびデメチムノマイシンからなる群の少なくとも1つから選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
前記免疫応答を抑制するための薬剤が、タンパク質である、請求項32に記載の方法。
【請求項37】
前記タンパク質が、抗体のアミノ酸配列を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記免疫応答を抑制するための薬剤が、hul 124、BTI−322、アロトラップ−HLA−B270、OKT4A、エンリモマブ(Enlimomab)、ABX−CBL、OKT3、ATGAM、バシリキシマブ、ダクリズマブ、チモグロブリン、ISAtx247、Medi−500、Medi−507、アレファセプト、エファリズマブ、インフリキシマブおよびインターフェロンのうちの少なくとも1つからなる群から選択される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記膵島新生治療組成物および前記免疫応答を抑制するための薬剤が、連続投与される、請求項32に記載の方法。
【請求項40】
前記膵島新生治療組成物および前記免疫応答を抑制するための薬剤のうちの少なくとも1つが全身投与される、請求項32に記載の方法。
【請求項41】
前記膵島新生治療組成物がボーラスとして投与される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記膵島新生治療組成物および前記免疫応答を抑制するための薬剤のうちの少なくとも1つが、静脈内、皮下、腹腔内または筋肉内からなる群から選択される経路によって投与される、請求項32に記載の方法。
【請求項43】
前記免疫応答を抑制するための薬剤が、経口投与される、請求項32に記載の方法。
【請求項44】
前記免疫応答を抑制するための薬剤が、FK506、ラパマイシン、およびダクリズマブからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項32に記載の方法。
【請求項45】
前記被験者がヒトである、請求項1または32のいずれかに記載の方法。
【請求項46】
糖尿病の被験体の処置のためのキットであって、免疫抑制剤、FACGINTがEGFレセプターリガンドではないという条件で該FACGINTを含むINT組成物、ならびに容器を備える、キット。
【請求項47】
FACGINTがEGFレセプターリガンドではないという条件で該FACGINTと、免疫抑制のための薬剤を含む、薬学的組成物。
【請求項48】
I.N.T.TM治療組成物の徐放のための薬学的組成物であって、該組成物は、ガストリンレセプターリガンド、およびEGFレセプターもしくはFACGINTを含み、ここで、ガストリンレセプターリガンド、またはEGFレセプターリガンドもしくはFACGINTのうちの少なくとも1つが、徐放性処方物である組成物。
【請求項49】
免疫抑制のための薬剤をさらに含む、請求項16および48のいずれかに記載の組成物。
【請求項50】
前記徐放性処方物が、PEG化、および多小胞脂質ベースのリポソームからなる群から選択される、請求項48に記載の組成物。
【請求項51】
前記EGFレセプターリガンドが、EGFおよびTGFAからなる群から選択される、請求項48に記載の組成物。
【請求項52】
前記FACGINTが、グルカゴン様ペプチド1レセプターリガンド、グルカゴン様ペプチド2レセプターリガンド、胃抑制ポリペプチド(GIP)レセプターリガンド、ケラチノサイト成長因子(KGF)レセプターリガンド、ジペプチジルペプチダーゼIVインヒビター、REGタンパク質レセプターリガンド、成長ホルモンレセプターリガンド、プロラクチン(PRL)レセプターリガンド、インシュリン様成長因子(IGF)レセプターリガンド、PTH関連タンパク質(PTHrP)レセプターリガンド、肝細胞成長因子(HGF)レセプターリガンド、骨形成タンパク質(BMP)レセプターリガンド、トランスフォーミング成長因子−β(TGF−β)レセプターリガンド、ラミニンレセプターリガンド、血管作動性腸管ペプチド(VIP)レセプターリガンド、線維芽細胞成長因子(FGF)レセプターリガンド、ケラチノサイト成長因子レセプターリガンド、神経発育因子(NGF)レセプターリガンド、膵島新生関連タンパク質(INGAP)レセプターリガンド、アクチビン−Aレセプターリガンド、血管上皮細胞成長因子(VEGF)レセプターリガンド、エリスロポエチン(EPO)レセプターリガンド、下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド(PACAP)レセプターリガンド、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)レセプターリガンド、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、血小板由来増殖因子(PDGF)レセプターリガンド、およびセクレチンレセプターリガンドからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項48に記載の組成物。
【請求項53】
前記EGFレセプターリガンドが低分子量薬物である、請求項51に記載の組成物。
【請求項54】
非経口投与のために処方される、請求項48に記載の組成物。
【請求項55】
経口投与のために処方される、請求項48に記載の組成物。
【請求項56】
皮下注射、腹腔内注射、静脈内注射、および筋肉内注射からなる群から選択される投与経路のために処方される、請求項50に記載の組成物。
【請求項57】
前記ガストリンレセプターリガンド、または前記EGFレセプターリガンドもしくは前記FACGINTのうちの少なくとも1つが、全身投与のために処方される、請求項48に記載の組成物。
【請求項58】
局所送達のために処方される、請求項16および48のいずれかに記載の組成物。
【請求項59】
局所送達が、前記膵臓を標的とする、請求項58に記載の組成物。
【請求項60】
局所送達が、内視鏡的逆行性胆道膵管造影法(ERCP)、超音波内視鏡誘導細針送達(EUS−FNAD)、膵臓動脈への注射、門脈への注射、膵臓内注射、および肝動脈への注射からなる群から選択される、請求項58に記載の組成物。
【請求項61】
経皮送達および粘膜送達からなる群から選択される投与経路のために処方される、請求項16および48のいずれかに記載の組成物。
【請求項62】
機械装置による送達のために処方される、請求項48に記載の薬学的組成物。
【請求項63】
分解性インプラント、経皮パッチ、カテーテル、埋め込み式ポンプ、経皮ポンプ、輸液ポンプ、およびイオン導入装置からなる群から選択される装置による投与のために処方される、請求項16および48のいずれかに記載の組成物。
【請求項64】
皮下、腹腔内、静脈内、および膵臓内からなる群から選択される投与経路のために処方される、請求項48に記載の薬学的組成物。
【請求項65】
前記静脈内経路が門脈への経路である、請求項64に記載の薬学的組成物。
【請求項66】
前記装置がポンプである、請求項62に記載の薬学的組成物。
【請求項67】
前記投与が局所的である、請求項62に記載の薬学的組成物。
【請求項68】
前記投与が局所的であり、かつ内視鏡的逆行性胆道膵管造影法(ERCP)、超音波内視鏡誘導細針送達(EUS−FNAD)、膵臓動脈への注射、門脈への注射、膵臓内注射、および肝動脈への注射からなる群から選択される経路によって送達される、請求項48に記載の組成物。
【請求項69】
前記投与が全身的である、請求項62に記載の薬学的組成物。
【請求項70】
有効量にある、請求項48に記載の薬学的組成物。
【請求項71】
請求項48に記載の組成物の少なくとも1回用量を備える、キット。
【請求項72】
糖尿病の被験者をI.N.T.TM組成物で治療する頻度を減少させる方法であって、該方法は、以下:
該組成物の少なくとも1つの成分を徐放性処方物として調製する工程、および
該組成物をプロトコールに従って該被験体に投与する工程であって、該手順は、このように処方されないが他の点では同一である該組成物に対してよりも処置間の間隔が長い、工程
を包含する、方法。
【請求項73】
前記投与する工程が、内視鏡的逆行性胆道膵管造影法(ERCP)、超音波内視鏡誘導細針送達(EUS−FNAD)、膵臓動脈への注射、門脈への注射、膵臓内注射、および肝動脈への注射からなる群から選択される経路によって送達することである、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
糖尿病の被験者においてI.N.T.TM組成物の効力を増強する方法であって、該方法は、以下:
徐放を生じるよう処方された該組成物の少なくとも1つの成分を含むI.N.T.TM組成物を、該被験者に投与する工程、および、
該被験者を処置することにおいて、一定量の該投与された組成物の効力を、そのように処方される成分を含まないが他の点は同一である組成物の効力と比較する工程であって、その結果、該被験体における糖尿病の症状を軽減するかまたは解消するために必要とされる徐放性処方薬剤の量における減少によって測定されるように、徐放性処方組成物を含む該I.N.T.TM組成物の効力が増強される、工程
を包含する、方法。
【請求項75】
請求項74に記載の方法であって、前記効力を比較する工程が、前記組成物の毒性を分析する工程をさらに包含し、その結果、該組成物を投与する工程の後に望ましくない症状がより少なくなるかまたはより穏やかになることが、徐放を生じるように処方された少なくとも1つの成分を含む該組成物における毒性が、そのように処方される成分を含まないが他の点は同一である前記I.N.T.TM組成物の毒性と比較して、減少されたことを示す、方法。
【請求項76】
前記成分の徐放性処方物が、PEG化および多小胞脂質ベースのリポソームからなる群から選択される、請求項73〜75のいずれかに記載の方法。
【請求項77】
前記徐放性処方物を含む前記成分が、EGFおよびTGFαからなる群から選択されるEGFレセプターリガンドである、請求項73〜76のいずれかに記載の方法。
【請求項78】
前記FACGINTが、グルカゴン様ペプチド1レセプターリガンド、グルカゴン様ペプチド2レセプターリガンド、胃抑制ポリペプチド(GIP)レセプターリガンド、ケラチノサイト成長因子(KGF)レセプターリガンド、ジペプチジルペプチダーゼIVインヒビター、REGタンパク質レセプターリガンド、成長ホルモンレセプターリガンド、プロラクチン(PRL)レセプターリガンド、インシュリン様成長因子(IGF)レセプターリガンド、PTH関連タンパク質(PTHrP)レセプターリガンド、肝細胞成長因子(HGF)レセプターリガンド、骨形成タンパク質(BMP)レセプターリガンド、トランスフォーミング成長因子−β(TGF−β)レセプターリガンド、ラミニンレセプターリガンド、血管作動性腸管ペプチド(VIP)レセプターリガンド、線維芽細胞成長因子(FGF)レセプターリガンド、ケラチノサイト成長因子レセプターリガンド、神経発育因子(NGF)レセプターリガンド、膵島新生関連タンパク質(INGAP)レセプターリガンド、アクチビン−Aレセプターリガンド、血管上皮細胞成長因子(VEGF)レセプターリガンド、エリスロポエチン(EPO)レセプターリガンド、下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド(PACAP)レセプターリガンド、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)レセプターリガンド、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、血小板由来増殖因子(PDGF)レセプターリガンド、およびセクレチンレセプターリガンドからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項73〜76のいずれかに記載の方法。
【請求項79】
前記成分が低分子量薬物である、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
前記投与する工程が、非経口、経口、経皮、皮下、粘膜、腹腔内、静脈内、膵臓内および筋肉内からなる群から選択される経路によって送達することである、請求項73〜76のいずれかに記載の方法。
【請求項81】
前記投与する工程が、局所分布を生じる、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記組成物を有効用量で投与する工程をさらに包含する、請求項82に記載の方法。
【請求項83】
前記投与する工程の前に、前記組成物が徐放装置を使用するために処方される、請求項80に記載の方法。
【請求項84】
前記装置が、分解性インプラント、経皮パッチ、カテーテル、埋め込み式ポンプ、経皮ポンプ、輸液ポンプ、およびイオン導入装置からなる群から選択される、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記装置がポンプである、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
前記静脈内経路によって投与する工程が、門脈に注射することである、請求項80に記載の方法。
【請求項87】
糖尿病の被験体を処置する頻度を減少させる方法であって、該方法は、以下:
長期間の連続放出によって該被験体にI.N.T.TM組成物を投与するための装置を用意する工程;
該装置を該被験体に提供する工程;および
該装置を再配置するかまたは再充填することによって該被験体の処置を繰り返す工程
を包含する、方法。
【請求項88】
前記装置がポンプである、請求項87に記載の方法。
【請求項89】
前記ポンプが、経皮ポンプ、フルオロカーボン噴霧ポンプ、浸透圧ポンプ、ミニ浸透圧ポンプ、埋め込み式ポンプ、および輸液ポンプからなる群から選択される、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
前記装置が、分解性インプラント、非分解性インプラント、粘膜付着性インプラント、経皮パッチ、カテーテル、およびイオン導入装置からなる群から選択される、請求項87に記載の方法。
【請求項91】
幹細胞を、該幹細胞の糖尿病レシピエントにおいてインシュリン分泌細胞に拡張および分化させるための方法であって、以下:
該細胞を該レシピエントに移植する工程;および
ガストリン/CCKレセプターリガンド、およびFACGINTもしくはEGFレセプターリガンドの各々の有効量を含む徐放性組成物を投与する工程であって、ここで、該幹細胞が、該レシピエントにおいてインシュリン分泌細胞に拡張および分化される、工程
を包含する、方法。
【請求項92】
グルカゴン様ペプチド1(GLP−1)レセプターリガンドおよびガストリン/CCKレセプターリガンドを含む、糖尿病を処置するための組成物。
【請求項93】
前記GLP−1レセプターリガンドが、GLP−1である、請求項92に記載の組成物。
【請求項94】
成長ホルモン(GH)レセプターリガンドおよびガストリン/CCKレセプターリガンドを含む、糖尿病を処置するための組成物。
【請求項95】
前記GHが、ヒト成長ホルモン(HGH)である、請求項94に記載の組成物。
【請求項96】
プロラクチン(PL)レセプターリガンドおよびガストリン/CCKレセプターリガンドを含む、糖尿病を処置するための組成物。
【請求項97】
前記PLが、ヒトPLである、請求項96に記載の組成物。
【請求項98】
前記ガストリンが、アミノ酸位置15にてLeu残基を含む17個のアミノ酸を有するガストリンIである、請求項92〜97のいずれかに記載の組成物。
【請求項99】
免疫抑制のための薬剤をさらに含む、請求項92〜98のいずれかに記載の組成物。
【請求項100】
さらに徐放のために処方される、請求項92〜99のいずれかに記載の組成物。
【請求項101】
糖尿病の被験体を処置する方法であって、ガストリン/CCKレセプターリガンドおよびグルカゴン様ペプチド1(GLP−1)レセプターリガンドを含む組成物を、該被験体に投与する工程を包含する、方法。
【請求項102】
糖尿病の被験体を処置する方法であって、ガストリン/CCKレセプターリガンドおよび成長ホルモン(GH)レセプターリガンドを含む組成物を、該被験体に投与する工程を包含する、方法。
【請求項103】
糖尿病の被験体を処置する方法であって、ガストリン/CCKレセプターリガンドおよびプロラクチン(PL)レセプターリガンドを含む組成物を、該被験体に投与する工程を包含する、方法。
【請求項104】
免疫抑制のための薬剤を投与する工程をさらに包含する、請求項101〜103のいずれかに記載の方法。
【請求項105】
徐放用装置を使用して、レセプターリガンドまたは薬剤のうちの少なくとも1つを投与する工程をさらに包含する、請求項101〜104のいずれかに記載の方法。
【請求項106】
レセプターリガンドまたは徐放性薬剤のうちの少なくとも1つを処方する工程をさらに包含する、請求項101〜104のいずれかに記載の方法。
【請求項107】
前記糖尿病の被験体が、I型糖尿病またはII型糖尿病である、請求項101〜104のいずれかに記載の方法。
【請求項108】
膵島移植物の機能性β細胞塊を、精製された膵島移植物を受容する糖尿病の患者において拡張するための方法であって、該方法は、該哺乳動物にガストリンCCKレセプターリガンドおよびFACGINTの有効量を投与する工程を包含する、方法。
【請求項109】
ヒト糖尿病を処置する方法であって、該方法は、以下:
糖尿病の患者に膵島調製物を移植する工程;および
ガストリン/CCKレセプターリガンドおよびFACGINTの有効量を投与する工程
を包含する、方法。
【請求項110】
前記FACGINTが、プロラクチンであるプロラクチンレセプターリガンドを含む、請求項1に記載の方法。

【公表番号】特表2006−506386(P2006−506386A)
【公表日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−547077(P2004−547077)
【出願日】平成15年10月22日(2003.10.22)
【国際出願番号】PCT/US2003/033595
【国際公開番号】WO2004/037195
【国際公開日】平成16年5月6日(2004.5.6)
【出願人】(504430972)ワラタ ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (15)
【Fターム(参考)】