説明

糖尿病及びスティフマン症候群の診断及び治療用改良試薬及び方法

【課題】GAD65自己抗体の少なくとも1種と特異的に反応するGAD65断片を提供する。
【解決手段】GAD65自己抗体と特異的に反応するGAD65タンパク質の可溶性断片。
ものである。たいていの断片は、溶解性を制限するN末端アミノ酸を実質的に含まない。種々の断片は、GAD65自己抗体の種々の種類に対するエピトープを含んでいる。その断片は、インスリン依存性糖尿病及びスティフマン症候群を診断及び治療する方法において用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本件出願は、1992年12月3日出願の米国特許出願第7/984,935号の一部継続出願であり、これを参考としてすべて引用する。本発明は、1991年9月6日出願の米国特許出願第07/756,207号に関連するものであり、これも参考としてすべて引用する。
政府関係の供述
本発明は、国立衛生研究所(#1PO1 DK41822-01)及び小児麻痺救済募金運動(6-FY93-0695)からの補助金によって助成されたものである。政府は本発明のある一定の権利を所有することができる。
本発明は、一般的には、インスリン依存性糖尿病又はスティフマン症候群に罹っているか又は罹りやすい患者の診断及び治療用改良試薬及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インスリン依存性糖尿病(IDDM)(1型糖尿病としても知られる)は、主として若年が発症する。インスリンは治療に有効であるが、この疾患に関する罹患率及び死亡率の数倍の増加には早期診断と予防方法の開発が必要である。IDDMの臨床上の発症の前の膵臓β細胞(ランゲルハンス島のインスリン分泌細胞である)の破壊は、自己免疫機序が仲介する。この疾病に関して最も十分に研究された自己免疫異常の中でも、診断時にβ細胞特異的自己抗体を循環する頻度が高い。家系の研究により、明白なIDDMの前に数年だけ自己抗体が生じることが示され、臨床症状が現れる前に体液性自己免疫の前徴期間を示した。更に、家系の研究により、診断の数年前に静脈内グルコースに対してインスリン応答の緩徐な進行性喪失が示された。糖尿病前症期間におけるβ細胞特異的自己抗体の存在は進行中の自己免疫過程、最後には重要なβ細胞の欠乏及びインスリンの欠乏に至る過程を反映すると考えられる。臨床上の発症時には全β細胞量の10%しか残っていないことが推定された。
【0003】
IDDMにおける膵臓β細胞内の自己抗体の標的は、初めはヒト膵島の界面活性剤溶解物を用いる免疫沈降実験により64kDa自己抗原として同定された(Baekkeskovら(1982),Nature298:167-169)。64kDa自己抗原に対する抗体は、IDDMの臨床上の発症前に生じ、臨床上の発症時及び糖尿病前症期間中約80%の出現率を有することが示された(Baekkeskovら(1987),J.Clin.Invest.79:926-934; Atkinsonら(1990),Lancet 335:597-602)(各々を参考としてすべて引用する)。ラット及びヒト64kDaタンパク質は、自己抗原エピトープに関して極めて相同である(Christieら(1990),J.Biol.Chem.265: 376-381)(参考としてすべて引用する)。ランゲルハンス島における64kDa自己抗原は、疎水性及び画分化に関して3つの異なった形態:65kDa及び約7.1のPiの可溶性の親水性形態;可溶性であるか又は膜結合活性が小さいかつ約6.7のPiを有する64kDa疎水性形態;及び電気泳動移動度及びPiが同一のしっかりと膜に固定された疎水性形態として検出される。膜結合及び可溶性の疎水性64kDa形態は、共に2つのイソ型、α及びβとして存在し、Pi及び疎水性は同じであるが約1kDaだけ異なる(Baekkeskovら(1989),Diabetes38:1133-1141)(参考としてすべて引用する)。64kDa自己抗原は、脳を含まない多くの組織の分析においてβ細胞特異的であることが判明した(上記Christieら)。
【0004】
最近、膵臓β細胞の64kDa自己抗原がグルタミン酸脱炭酸酵素(GAD、L−グルタメート1−カルボキシ−リアーゼ、EC 4.1.1.15)であることが示された。GAD酵素はグルタミン酸からGABAを合成し、中枢神経系(CNS)においてGABA分泌ニューロンの豊富なタンパク質である。同時係属出願第07/756,207号; Baekkeskovら(1990),Nature 347:151-157参照(参考としてすベて引用する)。
GADは中枢神経系(CNS)においてGABA分泌ニューロンの豊富なかつ部分的に確認されたタンパク質である。GAD酵素は、2つの異なる非対立遺伝子でコードされた2つの形態、GAD67及びGAD65(GAD−1及びGAD−2としても知られる)を有し、脊椎動物の系統発生で共通の祖先遺伝子から発達したものである。GAD67及びGAD65は最初の95個のアミノ酸では非常に多様性であるが分子の残りでは顕著な(約75%)相同性を共有する。共にN末端から80−90個のアミノ酸にタンパク質分解ホットスポットがあり(Christgauら(1991),J.Biol.Chem. 266:21257-21264;Christgauら(1992),J.Cell.Biol.118:309-320)(参考としてすべて引用する)、これはドメイン境界を表すものである。N末端ドメインは翻訳後修飾をかくまっており、シナプス小胞の膜にGAD65を固定することになりかつこのタンパク質の異なる細胞下局在化を制御する。
【0005】
脳組織においては、GAD65及びGAD67双方が産生される(Buら(1992),Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:2115-2119; Kaufmanら(1986),Science 232:1138-1140; Chang & Gottlieb(1988), J.Neurosci. 8:2123-2130)(各々を参考としてすべて引用する)。ある種は、その膵島において両GADタンパク質を発現する。しかしながら、ヒト膵島においては、GAD65のみが発現される(Karlsenら(1991),Proc.Natl.Acad.Sci. (USA)88:8337-8341; Karlsenら(1991),Diabetes 41:1355-1359)(参考としてすべて引用する)。異種脊椎動物からの分離物GAD65とGAD67間の免疫原の交差反応性は、齧歯類からヒトへ抗原決定基の高程度の保存を示している(Legayら(1986),J.Neurochem.46:1478-1486)。この所見と一致して、ヒトGAD65及びGAD67ポリペプチドは、他の哺乳動物における同族ポリペプチドと90%を超えるアミノ酸配列の同一性を共有している。上記Buら。
【0006】
ヒトCNSGAD67及びGAD65のcDNAはクローン化及び配列決定された(上記Buら)。上記Karlsenら(1991)は、ヒト膵臓β細胞GAD65の配列データを報告した。ラットCNSGAD65及びGAD67(Erlanderら(1991),Neuron7:91-100;Julienら(1990),J.Neurochem.54:703-705)及びラットβ細胞GAD65(Michelsonら(1991),Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)88:8754-8758)のDNA配列情報も入手できる(各々を参考としてすべて引用する)。
【0007】
64kDaIDDM自己抗原とGADが等価であることの証明は、IDDMとスティフマン症候群と呼ばれる稀であるが重篤な神経性疾患と関連する初期の所見を説明するものであり、GADは優先的自己抗原として認識された(Solimenaら(1988),N.Engl.J.Med.318:1012-1020;Sollmenaら(1990),N.Engl.J.Med.322:1555-1560)(参考としてすべて引用する)。GABA分泌性ニューロン自己抗体陽性患者は、ほとんどすべて膵島細胞の細胞質抗体にも陽性であり、1/3はIDDMであった。更に、GABA分泌性ニューロンに対する自己抗体は、SMSのない74人のIDDM患者の3人に検出された(上記Solimenaら(1988)及び上記Solimenaら(1990))。更に、他の研究により、SMS患者において高頻度のIDDMが報告された(Lorishら(1989),Mayo Clin.Proc.64:629-636)。
【0008】
64kDa抗原とGADが等価であることの証明は、また、IDDMの診断方法の改善をもたらした。以前には、64kDa自己抗原は膵臓β細胞においてのみ同定され、効率のよい検出又は治療に必要な大量の試薬を調製することができるクローン化、配列決定又は他の確認をするのに十分な量で精製することができなかった。対照的に、脳におけるGADの存在量は、診断用試薬として多量のGADタンパク質(GAD65あるいはGAD67)をクローン化することによりあるいはせずに容易に生産することができる。同時係属出願第07/756,207号参照。
【0009】
従来の方法について改良されたが、全長の精製GADタンパク質を用いる診断はまだ完全に満足なものではない。GAD分子はN末端領域に脂質修飾を有するので、界面活性剤の存在するとき以外は不溶性である。全長GAD分子の不溶性は精製及び免疫沈降、ELISA又はラジオイムノアッセイのような簡便な分析におけるGADの使用を妨害する。更に、診断試薬として全長GADの使用は、自己免疫疾患及び/又は別の疾患の種々の一時的段階を診断するGAD自己抗体の種々の種類を区別しない。更に、不溶性GADタンパク質は、治療薬として生体内投与に適当でない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述のことに基づき、IDDM及びスティフマン症候群に罹っている又は罹りやすい患者を診断及び治療するための改良試薬及び方法が求められていることは明らかである。本発明は、この及び他の要求を満たすものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の1実施態様によれば、GAD65タンパク質の可溶性断片が提供される。該断片は、GAD65自己抗体の少なくとも1種と特異的に反応する。該断片は、通常、溶解性を制限するN末端アミノ酸を実質的に含まない。ある断片においては、GAD65タンパク質のN末端アミノ酸24−31及び好ましくは45が欠失又は突然変異している。他の断片は、アミノ酸1−244を含むことができるN末端配列の大きな欠失を含む。更に、ある断片は、GAD65自己抗体と特異的に反応するエピトープを有するセグメントを実質的に含まない。これらの断片は、判別診断方法(例えば、IDDMとスティフマン症候群を区別するか又はIDDMの種々の一時的段階を区別する)に有効である。例えば、ある断片では、アミノ酸545−585を含むセグメント、他の断片では、アミノ酸245−295のセグメントが除去される。
【0012】
ある可溶性断片は、GAD65タンパク質のアミノ酸245−585位からの相接する配列を含んでいる。これらの断片は、GAD65タンパク質に対する自己抗体の異なった3種類と特異的に反応し、IDDMを診断する。
【0013】
他の可溶性断片は、アミノ酸1−20又は70−101から少なくとも8個のアミノ酸の相接する配列を含んでいる。これらの断片は、GAD65タンパク質に対する自己抗体の2種類と特異的に反応し、スティフマン症候群を診断する。これらの断片は、アミノ酸245−585を実質的に含まないものもあり、そのことにより、IDDMを診断する自己抗体の3種類に特異的に結合することができない。
【0014】
本発明のもう1つの態様においては、血清中GAD65自己抗体を検出する方法が提供される。ある方法においては、GAD65の可溶性断片が診断試薬として用いられる。これらの方法においては、血清試料が可溶性GAD65断片に露出され、GAD65断片とGAD65自己抗体間の特異的相互作用が検出される。
【0015】
他の方法においては、2成分を有する融合ポリペプチドが診断試薬として提供される。その2成分は、GAD65自己抗体と特異的に反応するGAD65タンパク質又はその断片及びそのタンパク質又は断片のN末端に融合したエクステンションペプチドである。融合ポリペプチドは、エクステンションペプチドを介して固体支持体に固定化され、血清試料に露出される。エクステンションペプチドによる付着は、GAD65タンパク質又はその断片中のGAD65自己抗体結合エピトープが自己抗体を結合するのに利用できることを確実にする。GAD65タンパク質又は断片と血清中のGAD65自己抗体間の特異的相互作用が検出される。
【0016】
他の方法においては、GAD65タンパク質又はその断片は、GAD65タンパク質又はその断片のアミノ酸1−244内に存在する第1エピトープと特異的に反応する抗体を介して固体支持体に固定化される。抗体による固定化は、GAD65タンパク質又は断片の残部を残し、自己抗体に結合するのに利用できるGAD65自己抗体と特異的に反応する第2エピトープを含む。GAD65タンパク質又は断片と血清中のGAD65自己抗体間の特異的相互作用が検出される。
【0017】
本発明のもう1つの態様においては、判別診断方法が提供される。これらの方法は、IDDMの種々の一時的段階を区別する及び/又はIDDMとスティフマン症候群を区別する。SMSとIDDMを区別するために、血清は、スティフマン症候群を診断するGAD65自己抗体と特異的に反応するエピトープを有しかつIDDMを診断する自己抗体と特異的に反応するセグメントを含まないGAD65断片に露出される。例えば、実質的にアミノ酸1−20、70−101及び1−101からなる断片が適切である。他の方法においては、血清試料は、GAD65自己抗体の別の種類と反応するエピトープを有する別のGAD65断片に露出される。たいてい、自己抗体の別の種類は、IDDMの別の一時的段階を診断するものである。
【0018】
本発明のもう1つの態様においては、IDDM又はスティフマン症候群の治療方法が提供される。ある方法においては、GAD65自己抗原に対する免疫耐性を誘導するためにGAD65自己抗体又はT細胞と特異的に反応する可溶性GAD65断片の治療的に有効な用量が患者に投与される。もう1つの方法においては、患者から得られた末梢血液細胞からGAD65断片に特異的なTヘルパー細胞を生じるように可溶性GAD65断片が用いられる。そのように生じたTヘルパー細胞又はその一部は、Tヘルパー細胞に対して生体内免疫応答を含むことができ、患者に投与される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
定義
GAD65断片がアミノ酸セグメントを“実質的に含まない”と記載される場合、指定されたセグメント内のアミノ酸の少なくとも約50%、更に一般的には少なくとも約75%、最も一般的には少なくとも約90%のアミノ酸が存在しないか又は置換されている。これらのアミノ酸を除去すると、自己抗体の種類と反応する能力の喪失又は水性溶媒における溶解性の獲得といった残留断片の生物学的又は化学的性質か変化する。
【0020】
“特異的相互作用”及び“特異的に反応する”なる語は、リガンドと抗体の結合に対する解離定数が一般的には約1μM未満、更に一般的には約10nM未満、最も一般的には約1nM未満であることを意味する。
“同族”なる語は、種間で進化的に及び機能的に関係のある遺伝子配列を意味する。例えば、ヒトゲノムにおいてはヒトCD4遺伝子はマウスCD4遺伝子に対して同族遺伝子であり、これはこれら2つの遺伝子の配列及び構造が極めて相同でありかつ両遺伝子がMHCクラス11制限抗原認識によってT細胞活性化をシグナルするのに機能するタンパク質をコードすることを示すからである。好ましい同族遺伝子は、ヒト、ラット、ウサギ、イヌ、非ヒト霊長類、ブタ、ネズミ及びハムスターである。
【0021】
GAD65類縁体なる語は、GAD65自己抗体に結合する場合、Buら(1992),Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)89:2115-2119のラットGAD65タンパク質と競合するタンパク質を含むものである。類縁体としては、自然及び誘発突然変異ポリペプチドが含まれる。類縁タンパク質としては、20個の慣用のアミノ酸の立体異性体(即ち、D−アミノ酸)、非自然アミノ酸、例えば、α,α−ジ置換アミノ酸、N−アルキルアミノ酸、乳酸、4−ヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタメート、ε−N,N,N−トリメチルリシン、ε−N−アセチルリシン、O−ホスホセリン、N−アセチルセリン、N−ホルミルメチオニン、3−メチルヒスチジン、5−ヒドロキシリジン、ω−N−メチルアルギニン及び他の類似アミノ酸及びイミノ酸(例えば、4−ヒドロキシプロリン)が含まれる。更に、類縁タンパク質としては、リン酸化、グリコシル化、パルミトイル化等で修飾された骨格を有するタンパク質が含まれる。
【0022】
緊縮条件は、配列依存性であり、種々の環境中で異なる。一般に、緊縮条件は、特定のイオン強度及びpHにおいて特定配列の熱融点(Tm)より約5℃低いように選定される。Tmは、標的配列の50%が完全に適合したプローブに対してハイブリッド形成する温度(特定のイオン強度及びpH下)である。典型的には、緊縮条件は、塩濃度がpH7において少なくとも約0.02モルでありかつ温度が少なくとも約60℃であるものである。相補鎖の塩基組成及びサイズ、有機溶媒の存在及び塩基誤対合の程度をも含む他の因子も緊縮ハイブリッド形成に著しく影響するので、パラメーターの組合わせはいずれか1つの絶対尺度より重要である。
【0023】
“実質的に可溶性の”なる語は、断片が、典型的には、水性溶媒中に少なくとも50μg/ml、通常は少なくとも100μg/mlの溶解度を示すことを意味する。
“ポリペプチド”なる語は、アミノ酸のポリマーを意味し、全長タンパク質及びその断片を含める。
【0024】
個々の実施態様の説明I.IDDM及びスティフマン症候群の診断用試薬
本発明の1実施態様によれば、IDDM及び/又はスティフマン症候群に罹っている又は罹りやすい患者の診断用試薬が提供される。ポリペプチドは、通常、これらの疾患の1つを診断する1種以上のGAD65自己抗体を結合する可溶性GAD65断片である。
【0025】
A.GAD65に対する自己抗体
上記で述べたように、GAD65はGAD酵素の2つの亜型をコードする2つの遺伝子の一方である(他方はGAD67である)。各非対立遺伝子亜型の中に、数種の対立遺伝子変異体が存在する(背景の項参照)。即ち、GAD65自己抗体なる語は、GAD65酵素の対立遺伝子変異体又はそのエピトープと反応する自己抗体が含まれる。例えば、GAD65自己抗体なる語は、64kDaの膵臓β細胞自己抗原に対する自己抗体を包含する。ヒト血清中のGAD65に対する自己抗体の検出は、IDDM及び/又はスティフマン症候群を診断する。更に、GAD67に対する自己抗体の検出は、実行可能な診断方法である。しかしながら、実施例3の結果は、GAD65酵素に対する自己抗体はGAD67に対するものより非常に広く行われていることが示されている。即ち、GAD65に対する自己抗体の検出が好ましい。
【0026】
B.GAD65ポリペプチドの生産
しばしば、GAD65ポリペプチドの断片を用いてGAD65酵素に対する自己抗体が検出される。これらの断片は、種々の方法によって生産される。本発明の断片は、天然の、即ち、ヒト又は非ヒトCNS及び膵細胞のような適切な起原から単離されたCNS又は膵臓GAD65断片である。その単離方法は、Oertelら(1980),Brain Res.Bull.Vol.5,Suppl.2,pp 713-719;Oertelら(1981),Neurosci.6:2689-2700;及びChang & Gottlieb(1988),J.Neurosci.8:2123-2130に記載されている(各々を参考としてすべて引用する)。通常、天然ポリペプチドは、膵細胞よりGAD65が豊富なCNS細胞から単離される。膵臓GAD65形態から精製された組成物は、基準としてCNSGAD65を用いて完全に単離及び確認することができる。GAD65遺伝子及びタンパク質は種の中で高度に保存されることから、本発明に利用されるGAD65タンパク質及びその断片はヒト又は非ヒトとすることができる。
【0027】
天然ポリペプチドは、アフィニティークロマトグラフィーのような慣用の手法によって単離される。例えば、ポリクローナル又はモノクローナル抗体は、予め精製されたGAD65に対して生じ、周知の手法によって適切なアフィニティーカラムに結合する。例えば、Hudson & Hay,Practical Immunology(Blackwell Scientific Publications,Oxford,United Kingdom,1980),Chap.8参照(参考としてすべて引用する)。通常、無傷GAD65形態はそのような単離法によって得られる。ペプチド断片は、無傷分子の化学又は酵素切断により無傷GAD65から作成される。
【0028】
天然起原から無傷GAD65タンパク質及びその断片を単離する変法として、これらのポリペプチドはGAD65遺伝子のクレオチド配列又はGADタンパク質のアミノ酸配列に基づいて調製される。種々の種からの広範囲のGAD65核酸及びアミノ酸配列データは既に得られている。(背景の項参照)。更に必要があれば、常法によりデータが容易に作成される。例えば、1つの種由来の既知のヌクレオチド配列を、他の種由来のGAD65遺伝子をクローン化するためにプローブとして用いることができる。また、既知のGAD65タンパク質に対する抗体は、GAD65発現産物を検出するために用いることができる。クローン化されると、GAD65遺伝子は常法により容易に配列が決定される。
【0029】
合成タンパク質及びポリペプチドは、少なくとも3種類の一般法で生産することができる。まず、約150個までのアミノ酸、一般的には約100個より少ないアミノ酸、更に一般的には約75個より少ないアミノ酸を有するポリペプチドは、アミノ酸が連続して成長鎖に加えられる周知のメリフィールド固相合成法により合成される。Merrifield(1963),J.Am.Chem.Soc.85:2149-2156参照。
【0030】
自動ペプチドシンセサイザーは、多くの会社、例えば、カリフォルニア州、フォスターシティー、Applied Biosystemsから市販されている。
【0031】
本発明のタンパク質及びポリペプチドを合成する第2の方法は、所望のGAD65遺伝子又はその一部をコードする組換えDNA分子の哺乳動物培養細胞中での発現を含んでいる。チャイニーズハムスター卵巣(DHO)のような哺乳動物発現系は、タンパク質及びポリペプチドの翻訳後修飾を行い、そのことにより未変性GAD65形態を有する合成産物の免疫学的類似性が高められる。更に、バキュロウイルス及び酵母発現系は、必要な翻訳後修飾をしばしば行う。GAD65遺伝子はそれ自体天然でも合成でもよく、既知のアミノ酸配列に基づく縮重プローブを用いてcDNA又はゲノムライブラリーから入手できる天然遺伝子は上記Julienらに示されている。また、ポリヌクレオチドは、周知の方法により報告されたDNA配列に基づいて合成することができる。例えば、一本鎖DNAフラグメントは、Beaucage & Carruthers(1981),Tett.Letters 22:1859-1862によって記載されているホスホルアミダイト法により調製することができる。次いで、2本鎖フラグメントは、相補鎖を合成し、適切な条件下でその鎖を一緒にアニーリングするか又は相補鎖を適切なプライマー配列と共にDNAポリメラーゼを用いて付加することにより得ることができる。
【0032】
次いで、所望のGAD65タンパク質又は断片をコードする天然又は合成DNAフラグメントはDNA構築物に組込まれる。通常、DNA構築物は、最初の操作及び構築物の操作を促進するために原核宿主中で複製することができる。構築物の十分量が得られた後、培養された哺乳動物、昆虫(例えば、SF9)、酵母又は他の原核細胞系に導入される。
【0033】
細菌又は酵母に導入するのに適したDNA構築物は、通常、宿主によって認識された複製系、所望のタンパク質又はポリペプチド産物をコードするGAD65DNAフラグメント、DNA構造配列の5′端に結合した転写及び翻訳開始及び調節配列及び構造配列の3′端に結合した転写及び翻訳終結調節配列が含まれる。
転写調節配列としては、宿主によって認識される異種プロモーターか含まれる。
【0034】
便宜上、複製系及びGAD65DNA配列の挿入部位と共に転写及び翻訳調節配列を含む入手できるクロ−ニングベクターを用いることができる。哺乳動物及び他の真核細胞系の形質転換の場合、DHFR遺伝子のような適切なマーカーの存在下細胞系の共移入を用いることかできる。移入は、化学又は電気さく孔法を用いて行うことができる。
【0035】
GAD65ポリペプチドは、場合によっては、種々の方法により組換え遺伝子を発現する細胞培養物から精製される。例えば、ポリペプチドは、サイズの差(ゲルろ過)、電荷(イオン交換クロマトグラフィー)、疎水性(フェニル−セファロースクロマトグラフィー)又は他の物理的パラメーターに基づく常法の組合わせにより精製することができる。GAD65に特異的な抗体を生じる免疫吸着アフィニティークロマトグラフィーを用いることもできる。アフィニティークロマトグラフィーは、まず抗体を固相支持体に結合し、次にその結合抗体を精製されるべきポリペプチドの起原、例えば、CNSもしくは膵細胞又はGAD65を生産するように組換え修飾された細胞又は培養した際にGAD65を分泌するように組換え修飾された細胞の上清の溶解物と接触させることにより行われる。
【0036】
GAD65ポリペプチドを合成する第3の方法は、試験管内転写/翻訳系を使用するものである。GAD65ポリペプチドをコードするDNAは、上記のように発現ベクターでクローン化される。次いで、この発現ベクターは、例えばウサギ網状赤血球溶解系中で試験管内転写及び翻訳される。翻訳産物は、直接用いることもできるしまず精製することもできる。試験管内翻訳から得られたポリペプチドは、典型的には、生体内で合成されたポリペプチド上に存在する翻訳後修飾を含まない。例えば、試験管内翻訳GAD65ポリペプチドは、典型的には、アミノ酸31及び45でパルミトイル化されず、これらのアミノ酸は必ずしも突然変異又は欠失されず水性溶媒における溶解性が付与される。
【0037】
精製して使用する場合、GAD65に対する抗体は、そのGAD65断片を慣用の方法に従って種々の脊椎動物に注入するこにより得ることができる。適切な脊椎動物としては、マウス、ラット、ヒツジ及びヤギが含まれる。通常、これらの動物は周期的に採血され、連続した採血が力価及び特異性を改良する。抗原は、筋肉内、腹腔内、皮下等に、通常完全又は不完全フロイントアジュバント中で注入される。モノクローナル抗体は、周知の方法により調製することができる。モノクローナルFabフラグメントも生産することができる。例えば、Huseら(1989),Science 246:1275-1281参照。
本発明のGAD65断片は、粗溶解物の成分としてあるいは実質的に純粋な形として用いることができる。“実質的に純粋な”は、ポリペプチドが典型的には少なくとも純度約50%w/w(重量/重量)でありかつ妨害タンパク質及び汚染物を実質的に含まない。断片は、しばしば、少なくとも約80%w/w、好ましくは少なくとも約95%w/wの純度で単離又は合成される。しかしながら、慣用の単離精製法を用いて、少なくとも99%w/wの均一なぺプチドを得ることができる。
【0038】
C.エピトープマッピング
本発明のポリペプチド断片は、GAD65タンパク質に対する抗体の少なくとも1種と反応する少なくとも1種のエピトープを含む。GAD65タンパク質内のエピトープの局在化は、IDDM又はスティフマン症候群に罹っている又は罹りやすい患者から誘導されたGAD65と反応するモノクローナル抗体の利用可能性によって促進される。ヒトモノクローナル抗体の単離及びスクリーニング方法はRichterら(1992),Proc.Natl.Acad.Sci.(USA),89:8467-71に記載されている(このことにより参考としてすべて引用する)。手短にいうと、多数のEBV不死化β細胞系を新たに診断されたIDDM患者の末梢血液から誘導した。IgG産生モノクローナルB細胞系の64kDa膵臓β細胞自己抗原に対する結合を、ヒト膵臓の凍結切片を関節蛍光染色によりスクリーンした。この細胞系を単細胞クローニングの反復により安定化した。この方法によって単離された6種の安定細胞系は、MICA1−6と称するモノクローナル抗体を産生した。
【0039】
GAD65に対するヒトモノクローナル抗体又はIDDM又はスティフマン症候群に罹っている又は罹りやすい患者からのポリクローナル血清は、GAD65自己抗体の存在を検出するのに有効なGAD65エピトープの位置を決定するのに用いられる。GAD65エピトープは、モノクローナル抗体又はポリクローナル血清に結合するGAD65ペプチド(I.B項のように調製した)の収集物を試験することにより位置が決定される。結合は、通常、慣用の免疫沈降分析により検出される。結合は、また、ウェスタンブロット法により検出することもできる。しかしながら、ウェスタンブロット法が変性条件下で行われることから、線状エピトープへの結合のみを検出する。免疫沈降とウェスタンブロッティングからの結果を比較すると、エピトープが線状であり、立体配座であることが示される。
【0040】
他の方法においては、エピトープは、タンパク質フットプリント法により位置が決定される。この方法においては、GAD65タンパク質又はペプチドは抗体に結合され、次にプロテアーゼに露出される。モノクローナル抗体に結合するGAD65の残基は、タンパク質分解から保護され、アミノ酸配列決定により同定される。
【0041】
D.診断試薬としてのGAD65断片
自己抗体と反応するGAD65エピトープの配列座標が同定されると、診断試薬としてそのエピトープを1種以上含むGAD65断片を生産することができる。
GAD65断片を定義するために用いられる配列座標は、Buら(1992),Proc.NatlAcad.Sci.(USA)89:2115-2119に開示され図1に示されている585アミノ酸ラットGAD65配列からのアミノ酸、Buら(図1に示されている)によって開示された585アミノ酸ヒトGAD65配列からの対応するアミノ酸又は他の同族又は類縁GAD65ポリペプチドからの、そのポリペプチドがBuらのラットGAD65配列と最大限に配列される場合の対応するアミノ酸を意味する。タンパク質は、次の参考文献のいずれか1つの基準に従ってラットGAD65配列と“最大限に配列された”と考えられる:Smith & Waterman(1981),Adv.Appl.Math.2:482;Needleman & Wunsch(1970),J.Mol.Bio.48:443;Pearson & Lipman(1988),Proc.Matl.Acad.Sci.(U.S.A.)85:GAP,BESTFIT,FASTA & TFASTA,Wisconsin Genetics Software Pckage,Genetics Computer Group,575 ScienceDr.,Madison,WI(各々を参考としてすべて引用する)。通常、類縁タンパク質は、緊縮条件下ラットGAD65タンパク質をコードするDNAに対してハイブリッド形成する能力を有する核酸によってコードされる。
【0042】
通常、GAD65断片は、水性溶媒における溶解性を制限するN末端アミノ酸を含まない。そのようなアミノ酸は、欠失及び/又は置換により除去することができる。除去又は突然変異されるN末端アミノ酸は、GAD65タンパク質のN末端から200個以上のアミノ酸を含むことができる。しかしながら、本発明のGAD65断片は、N末端領域から例えば約8、25、50、75、100及び150個のアミノ酸を含む短いN末端セグメントを含むものがある。最低限、位置24−31位からのアミノ酸が除去又は置換されなければならない。好ましくは、アミノ酸45も除去又は置換されなければならない。即ち、例えば、アミノ酸1−31を欠失しかつ好ましくはアミノ酸45のシステイン残基をアラニン残基に置換した断片が可溶性である。アミノ酸1−45を欠失している断片も可溶性である。
【0043】
また、可溶性GAD65ポリペプチドは、翻訳後修飾が起こらないような条件下でポリペプチドを合成することにより生産することができる。例えば、ポリペプチドは、試験管内翻訳系又はペプチドシンセサイザーで合成することができる。
上記IB項参照。ポリペプチドは、また、セルレインのような脂質結合開始剤の存在下生体内で合成することもできる。
【0044】
GAD65ペプチドの溶解性を付与するために除去されるアミノ酸はたいてい相接するが、これは必須ではない。要求されることのすべては、十分なN末端アミノ酸配列がタンパク質精製又は免疫分析に典型的に用いられる媒体のような水性媒体に可溶な又は実質的に可溶な残存するタンパク質断片のために欠失されることである。
驚くべきことに、実施例5に示された結果は、GAD65のN末端から少なくとも最初の244個アミノ酸が欠失しても、IDDM自己抗体に対する主要なGAD65エピトープの反応性を損なわないことを示している。即ち、244個のN末端アミノ酸が存在しないが残りのGAD65アミノ酸(即ち、アミノ酸245−585(C末端アミノ酸)の相接する配列)を含む可溶性断片は、MICA1/MICA3、MICA4/MICA6及びMICA2によって定義されるIDDM自己抗体の3種類すべてと反応する。実施例5参照。タンパク質分解又は別のスプライシングパターンから得られる天然に存在する可溶性断片も適切である。これらの断片は、脳、β細胞及び組換え発現系の抽出液中で検出された。これらの断片は、通常、約55−57の分子量を有し、N末端から約65−80個のアミノ酸が存在しない。例えば、Christgauら(1992),J.Cell Biol.118:309-320参照。これらのN末端アミノ酸が存在しないと、断片を水性溶媒に実質的に可溶にする。天然に存在する断片は、アミノ酸60−120位に含まれるエピトープに特異的な抗体を用いてイムノアフィニティークロマトグラフィーによって精製されることが便利である。免疫分析用断片を固定化するために、この同じ抗体を用いることができる。
【0045】
更に、本発明は、N末端(断片を可溶性にする)と他の所の両方で修飾している可溶性断片を提供するものである。そのような1断片は、C末端から少なくとも約41個のアミノ酸(即ち、アミノ酸545−585)を実質的に含まない。
41個のC末端アミノ酸を実質的に含まない断片は、MICA4/MICA6の特異性を有するIDDM自己抗体を認識することができるが、MICA1/MICA3又はMICA2の特異性で認識することはできない。
【0046】
本発明により提供された他の断片は、N末端アミノ酸の欠失又は置換により可溶性にし、アミノ酸245−295位のセグメントも実質的に含まない。この断片は、MICA2の特異性でIDDM自己抗体を認識することができるが、MICA1/MICA3又はMICA2/MICA4の特異性を有する自己抗体はできない。
アミノ酸70−101及び/又は1−20を実質的に含まない断片もあり、そのことによりスティフマン症候群を診断する自己抗体と反応する2つの非立体配座エピトープを含まない。しかしながら、その断片は、立体配座エピトープを認識するスティフマン症候群自己抗体と反応する。IDDMを診断する1種以上の自己抗体と反応するがSMSを診断する自己抗体のいずれの種類とも反応しない断片は、IDDMエピトープを最小又は最小に近い長さのペプチド断片に更に局在化することにより生産される。これらの断片は、Ladnerらの米国特許第5,223,409号(1993)(参考としてすべて引用する)に記載されているようにGAD65アミノ酸配列又は類縁ミニタンパク質を構成するものである。次に、断片又はミニタンパク質は、SMS患者からの血清と反応性がないことがスクリーンされる。
【0047】
更に、本発明は、SMS自己抗体と反応する少なくとも1種の線状(又は非立体配座)エピトープを含む断片を提供するものである。上述したように、これらのエピトープは、アミノ酸1−20(アミノ酸1−10が結合に特に重要である)及び70−101の中に含まれる。機能エピトープの場合、一般的には少なくとも約6、8又は10個の同族アミノ酸、より一般的には指定セグメントの全部又は実質的に全部(即ち、70、80、90又は95%)が存在する。SMSエピトープは共に線状であるので、残りの分子の立体配座に無関係にSMS自己抗体と反応する。即ち、実質的に約70−101のアミノ酸又は約1−20のアミノ酸からなり、フランキングアミノ酸のない断片でさえ、SMS自己抗体と反応する。そのような断片は、IDDM自己抗体の主要な種類に結合するのに要するエピトープがないことは当然のことである。しかしながら、IDDMを診断する1種以上の他のエピトープが存在する長い断片が提供される。即ち、例えば、アミノ酸1−20、70−101及び245−585を含む断片は、IDDM自己抗体の主要な3種類すべて並びにSMS自己抗体の立体配座及び非立体配座の種類に対するエピトープを含む。
【0048】
自己抗体結合エピトープを有するGAD65断片の提供は、無傷GAD65と比べて多くの利点を与える。本発明の断片は、通常、可溶化に界面活性剤を要しかつ界面活性剤の存在下でさえ凝集体及び沈降物を形成する傾向のある無傷GAD65と対照的に水性溶媒の溶解性が高い。凝集体が形成されると、エピトープが隠され、そのことにより、自己抗体検出の感受性及び精度が減じる。更に、界面活性剤を存在させると、ELISAプレートへの結合にたいてい有害である。GAD65はイオン性界面活性剤及び変性溶媒を用いて可溶化することができるが、その条件は立体配座エピトープの維持と適合しない。標準配座はMICA1/MICA3又はMICA4/MICA6特異性を有するIDDMに対する自己抗体を検出するのに特に重要である。実施例4参照。
更に、本断片の利点は、IDDMとスティフマン症候群とを区別することができることである。例えば、実質的にアミノ酸1−20及び/又は70−101からなる断片はSMS自己抗体のみと反応し、アミノ酸245−585の断片はIDDM自己抗体及びSMS立体配座自己抗体と反応し、アミノ酸1−20及び/又は70−101及び245−585を含む断片は自己抗体のこれらの種類すべてと反応する。
【0049】
更に、本断片の利点は、IDDMの進行における種々の一時的段階を区別する能力である。実施例7に述べられるように、MICA1/MICA3の結合特異性を有する自己抗体がまず生じ、次にMICA4/MICA6の特異性を有する自己抗体を生じ、次にMICA2の特異性を有する自己抗体を生じると考えられる。即ち、患者の血清におけるこれらの種々の自己抗体の相対割合は、臨床上の罹患までの一次相により疾患を検査することができる。診断試薬として種々の断片を用いて、種々の自己抗体が容易に区別される。アミノ酸245−585位からのGADセグメントを含む断片は、自己抗体の3種類すべてを結合し、アミノ酸245−545位からの断片はMICA4/6種類のみを結合し、アミノ酸445−585位からの断片はMICA2種類のみを結合する。
【0050】
E.他の診断試薬
本発明のGAD65断片は、実験用動物を免疫するために用いることができ、そのことにより該断片に対するモノクローナル抗体を生じる。次に、そのモノクローナル抗体は、更に動物を免疫するとともに抗イディオタイプ抗体を生じるように用いられる。一次抗体への結合がGAD65断片によって阻害される抗イディオタイプが選ばれる。抗イディオタイプ抗体及びGAD65断片の両方が一次免疫グロブリンを結合することから、抗イディオタイプ免疫グロブリンはエピトープの“内部イメージ”を表すので、GAD65断片を置き換えてもよい。抗イディオタイプ抗体は、GAD65断片と実質的に同じ方法で診断方法において用いられる。
【0051】
II.使用方法 A.診断及び予想分析
本発明の診断方法には、リガンド(例えば、GAD65断片)と自己抗体間の特異的相互作用を検出する方法を必要とする。選ばれる具体的な分析プロトコールは重要でなく、その分析が陽性であるとみなされる自己抗原の閾値レベルを検出するのに十分感受性のあることのみが必要である。適切な分析としては、固相(不均一)及び非固相(均一)プロトコールが含まれる。これらの分析は、競合的又は非競合的方式及び種々の標識、例えば放射性同位元素、酵素、蛍光体、化学蛍光体、スピン標識等を用いて行うことができる。
【0052】
GAD65自己抗体は、たいてい、GAD65ポリペプチドが同位元素又はリガンドで標識される免疫沈降法によって検出される。ポリペプチドは、合成中(例えば、35S−メチオニンを試験管内翻訳系又は細胞発現系に加えることによる)又は合成後標識される。標識されたポリペプチドは、血清試料とインキュベートされて免疫複合体を形成する。免疫複合体は、ポリエチレングリコール又はビーズ上に固定化されたスタフィロコッカスアウレウスもしくはプロテインAと沈降する。数回洗浄した後、放射性抗原がどのくらい沈降したかを評価するために免疫沈降物が計数される。場合によっては、自己抗体に結合する標識ポリペプチドと競合するように非標識GAD65ポリペプチドが加えられる。
【0053】
ある分析は、自己抗体が血清中に存在すると形成するリガンド−自己抗体複合体を分離するために用いられる固相にリガンドを結合する不均一プロトコールによるものである。リガンドは、種々の固相、例えば、ディップスティック、微粒子、微小球、磁気粒子、試験管、マイクロタイターウェル及びニトロセルロース又はナイロン等に固定化されることが便利である。固相は、血清試料に露出されるので、自己抗体がもしあればリガンドによって捕捉される。次に血清試料から固相を除去することにより、捕捉された自己抗体は血清中の結合されない自己抗体及び他の汚染物から除去される。次に、捕捉された自己抗体は、自己抗体用標識リガンドが洗浄固相に露出される非競合的“サンドイッチ”法を用いて検出される。また、競合方式は、標識GAD65抗体を血清試料に予め導入することによるので、標識及び非標識形態は固相に結合するのに競合する。そのような分析法は、周知であり特許及び科学文献の双方に十分記載されている。例えば、米国特許第3,791,932号、同第3,817,837号、同第3,839,153号、同第4,850,752号、同第3,850,578号、同第3,853,987号、同第3,867,517号、同第3,879,262号、同第3,901,654号、同第3,935,074号、同第3,984,533号、同第3,996,345号、同第4,034,074号及び同第4,098,876号参照(各々を参考としてすべて引用する)。酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)は、米国特許第3,791,932号、同第3,839,153号、同第3,850,752号、同第3,879,262号及び同第4,034,074号に詳細に記載されている(各々を参考としてすべて引用する)。ELISA分析は、きわめて低いタイターの自己抗体を検出する。
【0054】
更に、自己抗体は、固相ラジオイムノアッセイ(RIA)によって検出することができる。固相は、固定化リガンドに結合するのに競合する放射能標識抗体の存在下に血清試料に露出される。この分析においては、固相に結合した放射能標識の量は、最初に血清試料に存在した自己抗体の量と逆の関係にある。固相を分離した後、非特異的結合放射能標識は洗浄によって除去され、固相に結合した放射能標識の量が求められる。また、結合放射能標識の量は、最初に試料に存在した自己抗体の量に関係する。
別の態様においては、リガンドがL−グルタメート1−カルボキシラーゼ活性を保持するのに十分なアミノ酸配列を含むGAD65断片である場合、自己抗体は自己抗体の結合についての酵素活性のクエンチングにより検出される。
【0055】
GAD65自己抗体を検出する少なくとも3種類の改良方法は、GAD65N末端配列の実質量がGAD65自己抗体に結合するのに必要としないという発見に一部起因している。ある方法においては、GAD65自己抗体は、GAD65の可溶性断片を用いて検出される。N末端アミノ酸の欠失又は置換により断片を可溶性にする。上記で述べたように、少なくともアミノ酸24−31位及び好ましくはアミノ酸45は除去及び/又は置換されなければならない。上記で述べた可溶性断片はすべて用いることができる。可溶性断片を用いる診断方法の利点、即ち、断片の精製の容易さ及び未変性条件下分析を行う能力は上記で述べた(I.D項参照)。
【0056】
GAD65分子の中間及びC末端部分における自己反応性エピトープの発見は、可溶性断片を生じるアミノ酸1−244のいくつか又は全部を欠失することができるばかりでなく、他の有効な修飾のためのN末端領域をほとんど含まない。例えば、主要自己抗体結合エピトープに影響を及ぼさずに、放射性及び/又は固定化部分を酵素のN末端部分に結合させることができる。即ち、本発明のある方法は診断試薬として融合タンパク質を利用し、その融合タンパク質は可溶性であってもなくてもよい。融合タンパク質は、2つのペプチド成分を有する。1つの成分は、GAD65自己抗体と反応する少なくとも1種のエピトープを有するGAD65タンパク質又はそのペプチドである。第2のペプチドは、通常、GAD65に関係がなく、融合タンパク質の精製及び/又は診断試薬として融合タンパク質の使用に適切な1種以上の性質を有するように処理される。例えば、モノクローナル抗体及びタンパク質キナーゼに特異的な部位の認識部位を有するアミノ末端エクステンションは、Blanar & Rutter (1992),Science 256:1014-1018(参考としてすべて引用する)に記載されている。そのようなN末端エクステンション産物のGAD65タンパク質又は断片への融合は、N末端エクステンションに対するモノクローナル抗体を用いる免疫アフィニティークロマトグラフィーにより単一工程でその融合タンパク質を精製することができる。断片は、糖尿病の立体配座エピトープを損傷するpHの極端さより対応するペプチドの量を競合することにより避けられる。次に、その分子を、N末端エクステンシヨンペプチドを認識するモノクローナル抗体を介してELISAプレートに固定化することができる。この配向で固定化されると、IDDMを診断する主要な自己抗体を結合するエピトープはプレートの末端であるので、結合に利用できる。このことにより、プレートを抗原で直接被覆することから生じる立体障害の問題が排除される。更に、モノクローナル抗体を用いるイムノアフィニティークロマトグラフィーによる精製後、キナーゼ部位は極めて感受性がありかつ迅速なラジオイムノアッセイのために分子を32Pで標識することができる。例えば、心筋キナーゼ部位は32P−ATPと心筋キナーゼで標識される。
本発明の他の方法においては、GAD65タンパク質又はそのペプチド断片は、N末端アミノ酸1−244の中に存在するエピトープと特異的に反応するモノクローナル抗体を用いて固体支持体に固定化される。これらのアミノ酸は、主要なIDDM自己抗体をGAD65に結合することを必要としないので、N末端配列による結合はこれらの自己抗体に対する結合を損なわない。N末端配列を固定するのに適切な抗体は、アミノ酸1−244(又はそのサブフラグメント)から形成されたペプチドをウサギ又はマウスのような実験用動物に注入し、常法によってモノクローナル抗体を単離することにより生じる。この方法は、アミノ末端エクステンションを上記GAD65分子に付加することを必要としない。
【0057】
抗体によるGAD65断片の固定化は、少なくとも2つの利点を有する。まず、GAD65断片は、イムノアフィニティークロマトグラフィーによって精製することができる(自己免疫エピトープの立体配座を保存する緩和な手順)。次に、精製したGAD65断片は、例えば免疫沈降分析における使用に利用できる。また、GAD65の粗調製物は、ELISAプレートに対する抗体により固定化される。
GAD65は、エピトープをIDDM自己抗体に利用できる配向でプレートに結合する。不純物は洗い流されるが、GAD65は結合したままである。次に、自己抗体はELISAによって検出される。
【0058】
記載した改良診断方法の3つの種類のすべてを、実施例5及び7に記載されるようにIDDMを診断する自己抗体の主要な3種類の1種以上を検出するために用いることができる。これらの自己抗体を検出すると、患者がIDDMに罹っているか又は罹りやすい(即ち、患者は糖尿病前症である)ことが示される。糖尿病前症患者は、GAD65に対する循環自己抗体を有するが、IDDMに罹っているとして臨床上確認されるべきインスリン産生β細胞に対する十分な損傷をまだ受けていない。更に、該分析は、β細胞に対する自己免疫反応を遮断又は防止する免疫療法の効果を検査しかつ糖尿病前症から臨床上の糖尿病までの疾患の進行を検査するのに有効である。更に、該分析は、膵島細胞移植片を受けた糖尿病患者の移植膵臓β細胞の状態を検査するのに有効であり、GAD65自己抗体が存在すると、移植細胞に対して不利な免疫応答が示される。
【0059】
N末端融合タンパク質を用いる診断方法は、同様に、アミノ酸1−20又は70−101に形成された線状エピトープに結合するスティフマン症候群を診断する自己抗体を検出するのに適用できる。これらのエピトープは非立体配座であることから、N末端ペプチドを付加してもSMS自己抗体に対する結合能に影響しないと考えられる。しかしながら、N末端配列の実質量の検出又はN末端配列によるGAD65タンパク質又は断片の固定を含む他の改良法は、スティフマン症候群の検出の場合修飾されなければならない。例えば、N末端配列の実質的な長さは可溶性ペプチドを生産するために欠失することができるが、欠失した配列は通常アミノ酸1−20又は70−101を包含しない。同様に、GAD65ペプチドがモノクローナル抗体を介して支持体に固定される方法においては、モノクローナル抗体は、1−20及び70−101エピトープを重複せずこれらのエピトープに遠い一般的には少なくとも10個のアミノ酸、更に一般的には少なくとも50個のアミノ酸であるエピトープに結合しなければならない。
【0060】
更に、本発明は、不溶性GAD65断片を用いてある種のGAD65自己抗体を検出する改良方法を提供するものである。実施例は、IDDM自己抗体の1種類(MICA2によって例示される)及びSMS自己抗体の2種類が非立体配座エピトープを認識することを開示している。従って、これらのエピトープを含む断片は、立体配座の喪失が非立体配座エピトープを結合する自己抗体に対する結合能力を損なうことを考えずにイオン性界面活性剤に可溶化することにより精製することができる。即ち、これらの方法においては、非立体配座エピトープを含む(即ち、アミノ酸1−20、70−101又は545−585から少なくとも1つのセグメントを含む)無傷GAD65又はその不溶性断片は、変性条件下で精製され、次に、復元せずにGAD65自己抗体を検出するために用いられる。
【0061】
3.判別診断方法 本発明の他の態様においては、IDDMとスティフマン症候群及び/又はIDDMの進行における種々の一時的段階を区別する診断方法が提供される。ある方法は、IDDMを診断する自己抗体を検出せずにスティフマン症候群を診断する自己抗体を検出する。これらの方法においては、診断試薬は、スティフマン症候群と反応するエピトープを有しかつIDDM自己抗体と反応するエピトープを含まないGAD65断片である。例えば、アミノ酸1−20及び/又はアミノ酸70−101を含み、3種の主要なIDDM自己抗体結合エピトープすべてが存在しないようにアミノ酸245−585を実質的に含まない断片が適切である。
アミノ酸1−101を実質的に含む断片も適切である。
【0062】
IDDMの一時的進行を検査する他の方法が提供される。これらの方法は、初期及び後期エピトープ認識を区別することにより、免疫応答期間を推定する。この方法は、疾患の進行の種々の一時的段階を診断する異なった自己抗体の種類を結合する3種のエピトープを同定することに一部起因している。これらの方法においては、患者の血清試料が第1GAD65自己抗体と反応するエピトープを有する第1GAD65断片に露出される。血清中に存在する又は存在しないGAD65自己抗体との特異的相互作用の存在又は不在が検出される。次に、これらの工程が第2GAD65自己抗体と反応するエピトープを有する第2GAD65断片を用いて反復される。
【0063】
IDDMの一時的判別診断に適切なGAD65断片は、上記I.D.項で述べた。簡単に述べると、アミノ酸245−585の相接する配列を含む断片は、IDDM自己抗体の主要な3種類すべてと反応するエピトープを含有する。これらの種類は、MICA1/MICA3の結合特異性を有する自己抗体(最も初期に産生される)、MICA4/6と同じ結合特異性を有する自己抗体(2番目に産生される)及びMICA2と同じ結合特異性を有する自己抗体(3番目に産生される)である。ほぼC末端の41個のアミノ酸(即ち、545−585)の存在しない断片は、MICA4/MICA6種類の自己抗体とのみ反応する。アミノ酸545−585を含みかつアミノ酸245−295を実質的に含まない断片は、MICA2種類の自己抗体とのみ反応する。即ち、例えば、245−585アミノ酸断片と特異的に相互作用するが、他の2種類の断片とはしないと、β細胞エピトープに対する自己免疫応答の初期相における患者を示す。245−585断片及び41末端アミノ酸の存在しない断片と特異的に相互作用すると、自己免疫応答の中間相の患者を示す。3種すべての断片と反応すると、免疫応答の後期相を示す。
【0064】
4.IDDMを診断するGAD65自己抗体の予想値
IDDMの臨床上の症状の罹患後、患者の約70%がGAD65自己抗体の少なくとも1種類を産生する。対照的に、普通の患者の約1−2%のみこれらの自己抗体を産生する。例えば、Karlsenら,Diabetes 41,1355-1359(1992);Hagopianら,Diabetes 42,631-636(1993)(各々を参考としてすべて引用する)。
即ち、GAD65自己抗体の検出は、IDDMの確立を強く診断する。
【0065】
正常な患者においてGAD65自己抗体が検出されると、IDDMを発症する危険のある患者を確認することが高く予想される。1つの研究において、最初は健康な子供たちからの血清試料を11年間かけて分析した。研究の最初に採取した試料の7つは、GAD65自己抗体の少なくとも1種類を含むことが見られた。これらの試料が由来する7人の子供たちの5人は、研究の過程でIDDMの発症に進行した。対照的に、最初の試料がGAD65自己抗体を含まない100人の子供たちのうち1人だけがIDDMを発症した。
【0066】
B.治療方法 1.免疫耐性
上記の可溶性GAD65断片は、可溶性断片の抗原決定基に対する免疫原性耐性誘発させるために生体内で患者に投与される。GAD65断片の投与が免疫応答を永続させないことを注意しなければならない。応答の種類(即ち、免疫原性又は寛容原性)は、抗原の用量、物理的形態及び投与経路に左右される。抗原の高又は低用量はたいてい免疫耐性を生じるが、中間用量は免疫原性である。抗原の単量体形態は通常寛容原性であるが、高分子量集合体は免疫原性であると考えられる。抗原の経口、経鼻、胃内又は静脈内注入はしはしは耐性を生じるが、皮内又は筋肉内抗原投与は特にアジュバントの存在下免疫原性応答を容易にする。自己免疫抗原の経口投与は、動物モデルにおいて実験用アレルギー性脳脊髄炎の発症を防御しかつ動物モデル及び臨床試験においてリウマチ様関節炎を抑制することが示された。Marx,Science 252,27-28 (1991);Trenthamら,Science 261,1727-1730(1993)(各々を参考としてすべて引用する)。更に、自己抗原の経鼻投与は、実験用アレルギー性脳脊髄炎を防御することが報告されており、小さな断片の好ましい投与経路である。Metzler & Wraith,International Immunology 5,1159-1165(1993)(参考としてすべて引用する)参照。ある方法においては、免疫耐性は、免疫抑制治療に隠れて誘導される。Cobboldら,国際出願第90/15152号(1990)(参考としてすべて引用する)参照。
【0067】
耐性は、自己免疫T又はB細胞の排除又はその非応答性の誘導により付与される。断片に対する細胞性及び体液性応答を抑制する可溶性断片によるサプレッサー機序の活性化によって部分的に誘導される。細胞応答の抑制は、IDDMにおいて膵臓β細胞の破壊を防止する点で特に重要である。即ち、GAD65自己反応性T細胞(GAD65T細胞)に特異的に結合するGAD65断片は、免疫耐性を誘導するのに特に適切である。例えば、Kaufmanら,(1993),Nature 366:69-71;Tischら,(1993),Nature 366:71-75(参考としてすべて引用する)参照。
体液性応答の抑制は、スティフマン症候群におけるニューロンの損傷を防止するのに特に重要であると考えられる。
ある実施態様においては、非応答性及びその結果として自己免疫応答の損傷の発生は、本発明の可溶性GAD65断片を免疫グロブリン、例えば、IgG又は治療される患者のリンパ系細胞に結合することにより促進される。Bradley-Mullen(1982),Annals N.Y.Acad.Sci.392:156-166(参考としてすべて引用する)参照。
【0068】
2.GAD65阻止ペプチドによるT細胞活性化阻害
可溶性GAD65断片は、また、例えは、Wraithら(1989),Cell 59:247-255(参考としてすべて引用する)に記載されている方法を用いて、自己抗原のMHCレセプターへの結合を遮断することによりT細胞の活性化を阻害するために用いられる。これらの方法に有用なGAD65断片は、まず天然に存在する配列の修飾に供される。修飾は、例えば、GAD65DNA断片の試験管内突然変異誘発又はペプチドシンセサイザーによる類縁体の合成によって行われる。可溶性GAD65断片に導入された修飾は、断片のMHC分子への結合能を維持又は好ましくは高めつつ、可溶性GAD65断片のT細胞レセプターに対する結合親和性を低減又は排除するように働く。所望の結合特異性を有する分子は、ファージディスプレイテクノロジーによってスクリーンすることができる。例えば、Devlin,国際出願第91/18980号(参考としてすべて引用する)参照。この方法で修飾された可溶性GAD65断片は、MHC分子に結合するGAD65自己抗原と競合するが、結合した場合T細胞を活性化することはできない。即ち、MHCレセプターに結合した標準GAD65自己抗原の量及びその結合によって生じたT細胞仲介免疫応答の程度が低減される。
【0069】
3.GAD65自己抗原に特異的なT細胞の排除
自己免疫疾患を治療するもう1つの方法は、自己免疫疾患の仲介に関与するT細胞に対向するB細胞免疫応答の誘導に基づくものである。一般に、Sinhaら(1990),Science 248:1380-1388参照。これらの方法においては、可溶性GAD65断片は、GAD65自己抗原に特異的なヘルパー又は細胞障害性T細胞のクローン単離物の増殖及び単離に用いられる。次に、これらのT細胞又はその成分は、B細胞免疫応答を誘発するワクチンとして用いられる。
【0070】
末梢血液リンパ球は、IDDM又はスティフマン症候群に罹っている又は罹りやすい患者から採取される。末梢血液リンパ球内のヘルパー又は細胞障害性T細胞は、当該技術において周知の方法を用いて可溶性GAD65ペプチドに露出することにより刺激される(例えば、Leukocyte Typing II,Vol.1(Reinherzらeds.,Springer Verlag,NY,1986参照)(参考としてすべて引用する)。通常、他のマイトジェン及び増殖エンハンサー、例えば、フィトヘマグルチニン、インターロイキン2等を存在させる。Tヘルパー細胞又は細胞障害性T細胞のクローンは、これらの培養物から単離される。次に、T細胞のクローンは、生体内投与の医薬組成物に組込まれる前に弱毒化される(例えば、放射線に露出することによる)。弱毒化の代わりに、免疫原として作用することができるがそれ自体無傷細胞のTヘルパー又はT細胞障害活性のないT細胞の一部は、例えば、生化学分別により単離される。T細胞のクローン単離物に特異的な免疫応答できるT細胞レセプター又はその免疫原性断片が特に適切である。T細胞レセプターの断片は、慣用の組換えDNA技術によって調製される。
【0071】
C.医薬組成物
GAD65可溶性断片又はT細胞成分は、インスリン依存性糖尿病の罹患に関係する膵臓β細胞の破壊又はスティフマン症候群に関係するニューロンの損傷を弱毒化、阻害又は予防するのに有効な医薬組成物に組込むことができる。この組成物は、薬学的に許容しうる担体中GAD65及び/又はT細胞成分(例えは、T細胞レセプター断片)の少なくとも1種の可溶性断片の治療又は予防量を含まねばならない。医薬担体は、ポリペプチドを患者に送達するのに適切な適合しうる非毒性物質とすることができる。滅菌水、アルコール、脂肪、ろう及び不活性固形物が担体として用いられる。薬学的に許容しうるアジュバント、緩衝剤、分散剤ら医薬組成物中に組込まれる。医薬組成物中GAD65ペプチド又は他の活性剤の濃度は、広範囲に、即ち、約0.1重量%から変動させることができ、通常、少なくとも約1重量%から20重量%以上までである。
経口投与の場合、有効成分は、カプセル剤、錠剤及び散剤のような固形剤形又はエリキシル剤、シロップ剤及び懸濁液剤のような液状剤形で投与される。活性成分は、グルコース、ラクトース、スクロース、マンニトール、スターチ、セルロース又はセルロース誘導体、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、サッカリンナトリウム、タルク、炭酸マグネシウム等の不活性成分及び粉末担体と共にゼラチンカプセルに封入することもできる。所望の色、味、安定性、緩衝能、分散又は他の既知の所望の特徴を得るために添加される追加の不活性成分の例は、赤色酸化鉄、シリカゲル、ラウリル硫酸ナトリウム、二酸化チタン、食用白色インク等である。圧縮錠剤を製造するために同様の希釈剤を用いることができる。錠剤及びカプセル剤は、共に長時間にわたって投薬の連続的放出を与えるために徐放性製剤として製造される。圧縮錠剤は、不快な味をかくしかつ錠剤を雰囲気から保護するために糖剤皮又はフィルムコーティングが施されたり胃腸管での選択崩壊のために腸溶剤皮が施される。経口投与用液状剤形は、患者の受容を高めるために着色剤及び香味剤を含むことができる。
【0072】
経鼻投与の場合、ポリペプチドはエーロゾルとして処方される。“エーロゾル”なる語は、細気管支又は鼻道に吸入されることが可能な本発明の化合物のガス支持浮遊相が含まれる。詳細には、エーロゾルは、定量吸入器もしくはネブライザー又は噴霧器で生じるように本発明の化合物の小滴をガス支持浮遊させたものが含まれる。更に、エーロゾルには、空気又は他のキャリヤガス中に浮遊した本発明の化合物の乾燥粉末組成物が含まれ、例えば、吸入装置からインサフレーションにより送達される。Ganderton & Jones,Drug Delivery to the Respiratory Tract,Ellis Horwood(1987);Gonda(1990)Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems 6:273-313;及びRaeburnら(1992)J.Pharmacol.Toxicol.Methods 27:143-159参照。
【0073】
静脈内注入用の典型的な組成物は、滅菌リンゲル液100〜500ml及びGAD65ペプチド又はT細胞レセプターペプチド100〜500mgを含有するように調製される。筋肉内注射用に典型的な医薬組成物は、例えば、滅菌緩衝水1ml及び本発明の精製リガンド1〜100μgを含有するように調製される。非経口的に投与できる組成物を調製する方法は、当該技術において周知であり、例えば、Remington's Pharmaceutical Science(15th ed.,Mack Publishing,Easton,PA,1980)(参考としてすべて引用する)を含む種々の情報に更に詳細に記載されている。
【0074】
D.投与方法
本発明の医薬組成物は、通常、静脈内又は経口投与される。事情によっては、皮内又は筋肉内投与も可能である。本組成物は、本発明の診断方法によって確認されたIDDM又はスティフマン症候群に罹っている又は罹りやすい患者の予防治療に投与することができる。治療用の場合、本医薬組成物は、β細胞破壊を更に阻害又は防止するのに十分な量で確立された糖尿病に罹っている患者に投与される。IDDM又はスティフマン症候群に罹りやすい患者の場合、本医薬組成物は、β細胞の免疫破壊を防止あるいは阻害するのに十分な量で予防的に投与される。これを行うのに適切な量は、“治療的に有効な用量”として定義される。その有効な用量は、自己免疫応答の程度及び患者の健康の全身状態に左右されるが、一般的には体重1キログラム当たり精製リガンド約1〜500mgであり、1キログラム当たり約5〜25mgの用量が通常用いられる。
【0075】
III.GAD65断片に特異的なT細胞
更に、可溶性GAD65断片に露出することにより刺激されたT細胞が提供される。このT細胞は、通常、ヘルパーT細胞又は細胞障害性T細胞である。このT細胞は、MHC分子に複合した断片を生じる細胞に対して特異的結合を示す点でGAD65断片に特異的である。更に、GAD65特異的T細胞に対して免疫応答を誘発させることができるT細胞の成分が提供される。その成分は、通常、T細胞レセプター又はその断片である。レセプター断片は、断片由来のT細胞のクローン単離物に対して免疫応答を誘発させることができなければならない。
【0076】
下記実施例は、具体的に説明するためであり、限定するものではない。
実施例
実施例1:GAD65及びGAD67タンパク質の発現
ヒトGAD65cDNAクローンの1.8kbBamHI断片をバキュロウイルスベクターpVL941(Dr.D.Morgan,UCSFから入手)に及びヒトGAD67の2.7kbEcoRI断片又はラットGAD65cDNAクローンの2.4kbEcoRI断片をバキュロウイルスベクターpVL1392(Invitrogen、カリフォルニア州、サンジエゴ)に結合することにより、ヒト及びラットGAD65及びヒトGAD67を発現する組換えバキュロウイルスベクターを構築した。ヒトGAD65及びGAD67cDNAは、Dr.A.Tobln,UCLAから入手した。確立されている方法(Summers & Smith(1987),Tex.Agric.Exp.Stn.Bull.1555:1-56)を用いて記載されているように(Christgauら(1992),J.CellBiol.118:309-320参照)、組換えウイルスを誘導及び単離した。全長ラットGAD65を固定する組換えバキュロウイルスは前に記載した(上記Christgauら(1992)参照)。
【0077】
実施例2:GAD65の欠失変異体の発現
最初の101個のアミノ酸の存在しないN末端欠失変異体を、pVL1392ベクターに挿入した全長GAD65構築物のオリゴヌクレオチド特定突然変異(Kunkel(1985),Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)82:488-492参照)(参考としてすべて引用する)により作成し、昆虫細胞中で発現した。
COS−7細胞(アメリカン・タイプ・カルチュア・コレクション、メリーランド州、ベテスダ)中で発現させる他の欠失変異体を、次の通り調製した。ラットGAD65をpSV−SPORTベクター(BRL,メリーランド州、ゲイテルスブルグ)のKpnI及びNotI部位にサブクローン化した。N末端及びC末端欠失変異体の収集を、固定プライマーを用いて所定部位のポリメラーゼ連鎖反応(saikiら(1988),Science 239:487-494参照)(参考としてすべて引用する)によって作成した。アミノ酸363−422の存在しない内部欠失変異体を、GAD65のNsiI制限部位を用いて作成した。同様に、BgIII制限部位を用いて、ラットGAD67のアミノ酸1−95及びラットGAD65のアミノ酸353−585を含むハイブリッド分子を作成した。
【0078】
タンパク質断片の発現を、プローブとしてGAD65特異的又はGAD67特異的抗体を用いるウェスタンブロット法により分析した。これらの抗体は次の所から入手した:GAD65及びGAD67の未変性形態を認識するマウスモノクローナルGAD1(Gottliebら(1986),Neurobiol.83:8808-8812参照)は、アメリカン・タイプ・ティッシュ・コレクションから入手した。GAD65に特異的なマウスモノクローナルGAD6(Chang & Gottlieb(1988),J.Neurosci.7:2123-2130参照)は、Dr.D.Gottlieb(ワシントン大学、セントルイス州)によって寄与された。GAD65及びGAD67の双方を認識するラットGAD67のC末端ペプチドに対して生じたポリクローナルウサギ抗体は、Dr.J.S.Petersen,Hagedorn Research Laboratory,コペンハーゲンから贈られた。GAD67を主に認識するK2抗原は、Dr.A.Tobin,UCLAから贈られた。SMS患者の血清は、Dr.Vanda Lennon(Mayo Clinic、ニューヨーク州、ロチェスター)から入手した。
タンパク質断片は、Christgauら(1991),J.Biol.Chem,266:21257-21264;Christgauら(1992),J.Cell Biol.118:309-320)に記載されている分析用細胞から精製した。
【0079】
実施例3:IDDM患者由来のGAD67に対するモノクローナル抗体
Sf9昆虫細胞又はCOS−7細胞中で発現された未変性ヒトGAD65及び/又はGAD67タンパク質を認識する1型糖尿病患者由来の1組のモノクローナル抗体(MICA1−6、上記Richterら参照)の能力を試験した。GAD65に対する抗体の結合は、上記Christgauら(1992);Baekkeskovら(1990),Nature 347:151-157)に記載されているように免疫沈降により分析した。
MICA1、2、3、4及び6は、すべて未変性条件下でGAD65を認識したが、GAD67を認識しなかった。(図2参照)。
【0080】
実施例4:インスリン依存性糖尿病自己抗体によって認識されたエピトープの立体配座依存性の決定
立体配座依存性は、ウェスタンブロット法で決定されるように、変性条件下GAD65タンパク質に対して結合するMICAI−4及び6の能力を試験することにより求めた(上記Christgauら(1992),上記Baekkeskovら(1990)参照)。
MICA2のみ変性GAD65をウェスタンブロットにより認識した。更に、MICA1−6由来の1型糖尿病患者の血清は、ウェスタンブロットにより変性GAD65を弱く染色したが、GAD67をしなかった。結果は、MICA1、3、4及び6のみ非線状又は立体配座エピトープを認識するが、MICA2はGAD65分子に特異的な線状エピトープを認識することを示す。即ち、GAD65タンパク質は、GAD67分子に存在しない線状及び非線状又は立体配座自己免疫エピトープをかくまっている。
【0081】
実施例5:欠失変異体の分析によるインスリン依存性糖尿病自己抗体のエピトープマッピング
免疫沈降実験においては、MICAがすべて最初の101個のアミノ酸の存在しない欠失変異体を認識した(図4)。MICAによって認識されたドメインを更に局在化するために、COS−7細胞中で発現されたラットGAD65の多数のN末端及びC末端欠失変異体のMICAに対する結合を試験した。発現GAD65断片のサイズ、アミノ酸配列におけるその位置及び種々のMICAとの反応性は、図6Aに纏められている。最初の194個のアミノ酸の存在しないN末端欠失変異体GAD65N44及び更に50個のアミノ酸(Δ1−244)を消失しているN末端欠失変異体GAD65N39は、免疫沈降実験においてモノクローナルすベてによって認識された(図6A及び6B)。しかしながら、更に51個のアミノ酸がN末端から欠失されたN末端欠失変異体GAD65N33は、MICA1、4及び6によって認識されず、免疫沈降実験においてMICA3と極めて弱い陽性あるいは陰性でありMICA2と弱い陽性であった(図6A及び6B)。MICA2は、全長分子とのようにウェスタンブロットによりこの形態と同様に十分に反応した。しかしながら、MICAは、免疫沈降実験において弱い陽性でしかなく、このモノクローナル抗体によって認識された線状エピトープは端を切り取った折りたたみタンパク質中に隔離されていることを示した。
【0082】
C末端欠失変異体の分析により、C末端の41個のアミノ酸を除去すると、MICA1、MICA2及びMICA3(図6A及び6C)の結合が消滅することが示された。しかしながら、MICA4及びMICA6は、この変異体(GAD65C61、Δ545−585)及び更にC末端に69個のアミノ酸が存在しないC末端欠失変異体GAD65C53(Δ476−585)の両方を認識した(図6A及び6C)。MICA4は、MICA6より両変異体に対して強い結合を示した。モノクローナルは、いずれもC末端に100個のアミノ酸を更に消失しているC末端欠失変異体GAD65C41(Δ376−585)に対して反応性を示さなかった(図6A)。
【0083】
分子の内部における欠失の影響を分析するために、酵素のピリドキサルホスフェート欠失部位をかくまっているアミノ酸363−422の存在しない欠失変異体、GAD65I59に対するMICAの結合を分析した。MICA2を除くMICAは、いずれも免疫沈降実験においてこの変異体を認識しなかった。しかしながら、MICA2はこの変異体及び全長分子とウェスタンブロットにより同様に十分に反応したが、免疫沈降実験においては弱く結合するだけであり(図6A)、線状MICA2エピトープは免疫沈降の未変性条件下部分的にしか露出されないことを示した。同様の反応パターンが、GAD65の最後の233個のアミノ酸に結合したGAD67のアミノ酸を含むハイブリッド分子で観察された(図6A)。GAD65分子の最後の41アミノ酸の中のアミノ酸はMICA2の線状エピトープの一部であることが結論される。その41個のアミノ酸の中の最後の16は、GAD67と同一であり(Erlanderら(1991),Neuron.7:91-100参照)かつこの配列を含むペプチドの過度の量がMICAのGAD65への結合に影響しなかったことにより役割を果たさないと考えられる。残りの25個のアミノ酸中GAD65とGAD67間で異なる5個のアミノ酸の中で、1個が保存変化である。従って、残りの4個のアミノ酸の1個以上はMICA2のエピトープにおいて主な役割を果たすと考えられる。
【0084】
欠失変異体の分析により、MICAの3種の主要な認識パターンが示される。
MICA4及び6によって特定される第1のパターンは、分子中最後の41個のアミノ酸に左右される。MICA4及び6によって特定される第2のパターンは、これらの残基と無関係であり、分子の中央の方のアミノ酸に限定される。
MICA2によって特定される第3のパターンは、分子中最後の41個のアミノ酸に左右されるが、他のアミノ酸と無関係である。
GAD67及びGAD65は、最初の95個のアミノ酸では非常に多様性であるが、分子の残りでは顕著な(約75%)相同性を共有している。上記Erlanderら(1991)参照。しかしながら、驚くべきことに、MICAによって認識されたGAD65特異的エピトープのいずれもN末端の最初の244個のアミノ酸に局在化されなかった。即ち、MICAのエピトープは、N末端膜固定ドメインから著しく離れた分子の領域に集中する。C末端の最後の110個のアミノ酸は、分子の中央の残基にかかっているMICA4及び6エピトープに関与しない。対照的に、C末端の41個のアミノ酸を欠失すると、MICA1及び3エピトープが消滅する。更に、アミノ酸245−295を欠失すると、MICA2のこの変異体に対する弱い欠失によって示されるように、C末端領域の立体配座変化がすべて消滅するが、C末端のアミノ酸1−41及び42−110を欠失すると、MICA4及び6エピトープが無傷のままであるGAD65分子の中央領域に影響しないと考えられる。最後に、MICA3はGAD65N33変異体に弱く結合したが、C末端欠失変異体への欠失は検出されなかった。即ち、アミノ酸244−295を欠失すると、C末端領域の立体配座に影響すると考えられるか、C末端アミノ酸を欠失すると、直接MICA1及び3に影響すると考えられる。線状MICAエピトープの重要な部分は、アミノ酸545と569間に局在化され、即ち、C末端に近接する。
【0085】
実施例6:タンパク質フットプリント法によるGAD65自己抗体のエピトープマッピング
MICAによるエピトープ認識における類似性及び差異を、500μlのMICA上清又は10μlのGAD6又はGAD1各腹水を用いてタンパク質フットプリント法により分析した(Sheshberadaran & Payne(1988),Proc.Natl.Acad.Sci.85:1-5)(参考としてすべて引用する)。免疫複合体を、プロテインA−セファロースに結合することにより単離し、洗浄した。免疫複合体を安定化するために、抗ヒトIgG抗体(H+L特異的、F(ab)2フラグメント、Jackson)を抗原抗体PAS複合体と4℃で45分間インキュベートした後、プロテアーゼとインキュベートした。プロテアーゼとのインキュベーションは、氷上で30分間(キモトリプシン及びトリプシン)又は37℃で1時間(キモトリプシン)とした。プロテアーゼ処理は、IMPバッファー中でPAS結合複合体を洗浄することにより停止し、次に、SDS−PAGE分析及びフルオログラフィーを行った。個々のMICAに結合しかつ二次抗体に結合することにより安定化したGAD65の免疫複合体をトリプシン及びキモトリプシンで消化した。次に、MICAによる分解から保護された断片をSDS−PAGEによって分析した。
【0086】
図5は、MICA1、2及び3をMICA4及び6と区別する2つの異なった主要なフットプリントパターンを示すものである。第1グループの中でMICA1と3は、同様であるがMICA2とは異なる同一パターンを示した。更に、第2グループではMICA4とMICA6はわずかな差異しか示さなかった(図5)。
MICA4及びMICA6は、共に全長GAD65分子及びN末端の存在しない55kDa断片(上記Christgauら(1992)参照)をMICA1、2及び3より効果的に保護した。即ち、MICA4及び6と対照的に、長時間キモトリプシンインキュベーション後、全長GAD65分子又は55kDa断片はMICA1、2及び3との複合体に検出されなかった。(図5、レーン10及び11とレーン7と9を比較する)。これらの結果は、MICA6がN末端に近い方の分子の領域を結合するので、分子のこの部分をMICA1、2及び3より保護することを示している。
MICA1、3、4及び6は、キモトリプシンとの長時間インキュベーシヨン後、なお複合体フットプリントパターンを示したが(図5、レーン7−12)、約14kDaの1バンドだけその条件下MICA2によって保護された(図5、レーン8)。
要するに、MICA1、3、4及び6の複合体フットプリントパターンは非線状エピトープ認識と一致するが、MICA2によって保護された14kDa単一断片はこのモノクローナル抗体による線状エピトープ認識と一致する。更に、フットプリント結果は、MICA4及び6がMICA1、2及び3よりN末端の方の領域を認識することを示している。
【0087】
実施例7:1型糖尿病患者の血清を診断するためのGAD65断片の使用
新たに診断された9人の年齢4−1/2〜26才(6F、3M)の若い1型糖尿病患者(D1−9、図7)及び罹患の臨床上の発症32ヵ月前に採取した1人の糖尿病前症患者(P1、女、11才)からの血清のN末端及びC末端欠失変異体に対する結合を分析した。1型糖尿病患者の血清は、Dr.H.J.Aanstoot(ロッテルダム大学、オランダ)から入手したものか又は前に記載されたものである(Baekkeskovら(1987),J.Clin.Invest.79:926-934参照)(参考としてすべて引用する)。
更に、MICAが由来する患者(D10)及び膵島細胞の細胞質自己抗体に陽性であるが1型糖尿病の臨床症状のないもう1人の患者(P2)の血清を平行して分析した(図7)。11個の新しい血清は、すべて全長分子と同様に十分にN末端欠失変異体GAD65N44(Δ1−194)(図7)を認識した。244個のN末端アミノ酸を欠失すると(GAD65N39)血清との反応性をわずかに低下するものもあったが(図7)、更に51個のアミノ酸を欠失すると(GAD65N33)血清のすべてによる認識が消滅した。血清は、C末端の41個のアミノ酸が存在しない変異体(GAD65C61)の分析において区別できた。罹患の臨床上の発症32ヵ月前に採取した糖尿病前症患者(PI)の血清及び全員がGAD65抗体に強い陽性であった新たに診断された3人の患者(D3、女11才、D4、男4.5才及びD5、男26才)の血清を含む4つの血清は、GAD65C61変異体との反応性が極めて弱いかあるいは全く示さなかった(図7)。血清の残りは、この端を切り取ったタンパク質にも強い陽性であった(図7)。要するに、N末端からGAD65分子の1/3を欠失すると糖尿病血清との免疫反応性が検出できる低下を生じなかったが、C末端から41個のアミノ酸を欠失すると患者の血清によって認識されたエピトープがほとんど消滅した。11個の患者血清はいずれもウェスタンブロットによりGAD65を認識しなかったので、MICA2のような線状エピトープを認識する自己抗体を含まなかった。
【0088】
3種類の異なった糖尿病自己抗体が種々の血清試料中に生じる相対頻度は、産生される時間に関係する。自己免疫疾患においては、体液性及び細胞性両自己免疫は初期相においてはたいてい主な単一エピトープに対するものであるが、自己免疫応答の期間の長い自己抗原においては他の領域に広がる(McNeilageら(1990),J.Immunol.145:3829-3835;St.Clarら(1990),J.Clin.Invest.85:515;Lehmannら(1992),Nature 358:155-157参照)(各々を参考としてすべて引用する)。GAD65自己抗体は、たいていβ細胞の大多数が消える数年前であり臨床症状が進行する膵臓β細胞破壊の初期相で検出された(上記Baekkeskovら(1987)、Atkinsonら(1990),Lancet 335:1357-1360参照)(参考としてすべて引用する)。これらの所見は、一次自己免疫応答が単一エピトープに対する自己抗体に限定され、より多様な自己抗体は引き続いて一次自己免疫応答で生じることを示している。従って、MICAによって特定されるGAD65エピトープは初期及び後期両体液性応答を表すと考えられる。試験したすべての血清によって確認されたMICA1及び3によって特定されたエピトープは、初期体液性応答を表すと考えられる。試験した血清であるがすべてでない血清によって認識されたMICA4及び6によって特定されたエピトープは、中間体液性応答を表すと考えられる。MICAが由来する患者の血清によってのみ認識されたMICA2によって特定されたエピトープは、後期体液性応答を表すと考えられる。エピトープの異なった種類に対して示された進行性の一時的応答は、糖尿病前症患者の血清試料を時間が経つにつれて検査することにより確認することができる。
【0089】
実施例8:スティフマン症候群自己抗体のエピトープマッピング
GAD65分子についてSMS患者の血清によって認識されたエピトープを局在化するために実験を行った。最初の69−70個又は最初の101個のアミノ酸を欠失したN末端GAD65欠失変異体を構築した。変性条件下SMS患者の血清中の自己抗体に対するこれらの断片の結合を試験した。図8は、無傷GAD67、無傷GAD65、最初の69−70個のアミノ酸が存在しないGAD65の57kDaのトリプシン断片及び最初の101個のアミノ酸が存在しないGAD65の55kDa欠失変異体のi)GAD65を認識するがGAD67を認識しない、全長タンパク質より57kDaで弱い染色を示し55kDa欠失変異体と反応性を示さない典型的なSMS血清、ii)すべての断片を染色する対照ウサギポリクローナルウサギ血清によるウェスタンブロット染色を示すものである。
【0090】
図8は、SMS血清とGAD65タンパク質との反応性が最初の69−70個のアミノ酸が存在しないGAD65断片中で顕著に低下することを示すものであり、線状エピトープがこれらの残基の中に局在化されることを示している。Δ101GAD65断片での反応性の完全な喪失は、第2エピトープがアミノ酸69又は70とアミノ酸101との間に位置することを示している。分析したSMS血清の26試料のうち22試料が上記の結果を示した。
ウェスタンブロット法によって同定された2つの線状エピトープは、人工GAD65ペプチドを用いる競合的結合実験によって更に局在化された。GAD65アミノ酸1−20又は70−101を含むペプチドは、GAD65に対する結合の場合SMS血清と効果的に競合することが判明した。結果は、アミノ酸1−20に一方のエピトープを、アミノ酸70−101にもう一方のエピトープを局在化する。
IDDMとスティフマン症候群患者の自己抗体間のエピトープ認識の明瞭な差異は、GAD65に対する体液性自己免疫がおそらくスティフマン症候群又はIDDMが生じる異なった病因機序に関係があることを示している。
【0091】
実施例9:無傷タンパク質に不溶性を付与するGAD65N末端ドメインの局在化
前述のように、GAD65のN末端ドメインは無傷タンパク質を水性溶媒に不溶にする脂質修飾を含んでいる。本実施例は、修飾が生じ、可溶性GAD65断片を作成するために除去しなければならないアミノ酸部位を局在するものである。位置30及び45のシステイン残基がパルミトイル化部位であるかを試験するために、これらの残基の一方又は双方をアラニン残基に置き換える部位特定変異誘発によりGAD65変異体ポリペプチドを構築した。単一変異体を30A及び45Aと称し、二重変異体を30/45Aと称した。これらの3種のGAD変異体を含むベクター、野生型GAD65又はGAD65Δ101変異体は、[3H]-パルミチン酸又は[35S]-メチオニンを含む媒体中のCOS細胞中で一時的に発現した。GAD65ポリペプチドを免疫沈降し、SDSPAGEで分析した。図9は、野生型;30A変異体、45a変異体、Δ1−101変異体及び30/45A変異体における標識の取込みを比較するものである。該図は、30/45A二重変異体がパルミトイル化される能力を消失したが、30A又は45A単一変異体は消失しないことを示している。Δ101変異体もパルミトイル化される能力を消失した。
【0092】
上記分析はパルミトイル化部位としてアミノ酸30及び45を同定するが、他のN末端アミノ酸は他の脂質修飾の主体である。N末端配列の増加量が欠失しているGAD6530/45A断片の一連の欠失変異体を構築することにより、この可能性を試験した。その断片を発現べクターに挿入し、COS細胞に形質転換した。GAD65又はN末端欠失変異体を発現するCOS細胞の全細胞性タンパク質をヘペスバッファーと1%TX−114で抽出し、TX−114分配分析において水相(A)及び界面活性剤相(D)に分配した。画分をSDSpageによって分析し、GAD65ポリペプチドをプローブとしてGAD65C末端ペプチドに対する血清を用いてウェスタンブロット法により検出した。図10は、野生型GAD65及び30/45AΔ1−8、30/45AΔ1−15及び30/45AΔ1−23欠失変異体の場合、GAD65断片は水相及び界面活性剤相の両方に出現することを示している。しかしながら、30/45AΔ1−31及び30/45AΔ1−38変異体の場合、GAD65断片は水相にのみ出現する。疎水性と親水性ポリペプチド内に存在するアミノ酸を比較すると、酸24−31はGAD65ポリペプチドの疎水性を付与することを示している。
これらの結果は、野生型GAD65又はその30/45AΔ1−38欠失変異体を発現する無傷細胞の免疫蛍光分析により確認した。野生型GAD65タンパク質は膜固定と一致して周辺膜構造に集中して見られるが、N末端欠失変異体の位置は細胞質ゾルである。
【0093】
可溶性GAD65断片は、アミノ酸24−31の欠失、好ましくはアミノ酸45の突然変異によって作製されることが結論される。これらの変化を包含するより実質的なN末端欠失、例えば、アミノ酸1−45の欠失も有効であることは当然のことである。更に、可溶性GAD65断片は、翻訳後修飾が起こらない条件、例えば、試験管内翻訳によって断片を合成することにより作製される。
理解を明らかにするために前述の発明を詳細に記載してきたが、ある種の変更が添付の請求の範囲内で実施されることは明らかである。このことにより、上記で引用したすべての文献及び特許は、各々が別個に示されたのと同じ範囲まで参考としてすべて引用する。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】ヒト(上段)及びラット(下段)GAD65タンパク質のアミノ酸配列を示すものである。ラット配列の場合、ヒト配列と異なるアミノ酸のみが示される。
【図2】MICA)ヒトIgG(対照)、GAD65特異的マウスモノクローナルGAD6及びGAD67特異的ウサギ抗血清K2によるSf9細胞中バキュロウイルスベクターから発現された35Sメチオニン標識ヒトGAD65及びGAD67の免疫沈降結果を示すものである。野生型バキュロウイルスに感染したSf9細胞の免疫沈降が平行して示される(レーン15−21)。
【図3】GAD65及びGAD67の両方を認識する1266抗血清(レーン1−3):GAD65(レーン4−6)、MICAI(レーン7−9);及びMICA2(レーン10−12)を特異的に認識するGAD抗血清を用いるSf9細胞及び野生型バキュロウイルスに感染したSf9細胞(対照)中のバキュロウイルスベクターから発現されたヒトGAD65及びGAD67のウェスタンブロットを示すものである。
【図4】MICA、GAD6(マウス抗GAD65モノクローナル抗体)又はヒトIgG(対照)によるSf9細胞中のバキュロウイルス構築物から発現された35Sメチオニン標識野生型ラットGAD65及び端を切り取ったタンパク質の免疫沈降結果を示すものである。野生型バキュロウイルスを感染したSf9細胞の免疫沈降が平行して示される。
【図5】MICA又はヒトIgG(対照)とSf9細胞由来の35Sメチオニン標識ヒトGAD65間の免疫複合体のタンパク質フットプリントを示すものである。
【図6】MICAとGAD65欠失変異体との反応性を示すものである。A.COS細胞中で発現されたラットGAD65変異体に結合する抗体のまとめ。GADI及びGAD6はマウス抗GADモノクローナル抗体である(Gottllebら,1986,Chang & Gottlieb 1988)。GADIは、無傷GAD65のみを認識する点で他のモノクローナルと異なる。GAD6は、未変性及び変性状態で同様に十分に反応する以外はMICA2と同様の認識パターンを有する。B.MICA、GAD6及びヒトIgG(対照)によるCOS−7細胞中で発現されたラットGAD65のN末端欠失変異体の免疫沈降。C.MICA、GAD6及びヒトIgG(対照)によるCOS−7細胞中で発現されたラットGAD65のC末端欠失変異体の免疫沈降。
【図7】新たに診断された9人の無関係な糖尿病患者からの血清(D1−9)によるCOS−7細胞中で発現されたラットGAD65のN末端及びC末端欠失変異体の免疫沈降を示すものである。糖尿病前症患者(PI)、膵島細胞細胞質抗体(P2)及び2人の健康な対照患者(C1及びC2)からの血清も分析された。D10血清は、MICA1−6が誘導された患者からのものである。
【図8】典型的なSMS血清及び陽性対照血清で染色されたGAD67、GAD65、GAD65Δ1−69/70及びGAD65Δ1−101のウェスタンブロットを示すものである。
【図9】[3H]-パルミチン酸及び[35S]-メチオニンで標識されたGAD65及び変異体タンパク質のSDSゲル分析を示すものである。
【図10】GAD65C末端ペプチドと反応する血清で染色されたCOS細胞発現GAD65及びN末端欠失変異体由来の全細胞性タンパク質の水性(A)及び界面活性剤(D)画分のウェスタンブロットを示すものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
GAD65自己抗体と特異的に反応するGAD65タンパク質の可溶性断片。
【請求項2】
該断片が、溶解性を制限するN末端アミノ酸を実質的に含まない請求項1記載の可溶性断片。
【請求項3】
該N末端アミノ酸がアミノ酸24〜31である請求項2記載の可溶断片。
【請求項4】
該N末端アミノ酸がアミノ酸24−31及び45である請求項3記載の可溶性断片。
【請求項5】
天然に存在するシステイン残基の代わりに位置45にアラニン残基を有する請求項4記載の可溶性断片。
【請求項6】
該N末端アミノ酸がアミノ酸1〜31及びアミノ酸45である請求項5記載の可溶性断片。
【請求項7】
該N末端アミノ酸がアミノ酸1〜45である請求項6記載の可溶性断片。
【請求項8】
該N末端アミノ酸がアミノ酸1〜244である請求項7記載の可溶性断片。
【請求項9】
該断片が、第2GAD65自己抗体と特異的に反応するエピトープを有するセグメントを実質的に含まない請求項1記載の可溶性断片。
【請求項10】
該セグメントがアミノ酸545〜585である請求項9記載の可溶性断片。
【請求項11】
該セグメントがアミノ酸245〜295である請求項10記載の可溶性断片。
【請求項12】
実質的にアミノ酸545〜585位からの少なくとも8個の相接するアミノ酸からなる請求項11記載の可溶性断片。
【請求項13】
該断片が3種類の異なる自己抗体と特異的に反応する3種類の異なるエピトープを含む、アミノ酸245〜585位からの相接する配列を含む請求項1記載の可溶性断片。
【請求項14】
前記断片がアミノ酸1〜101を実質的に含まない請求項13記載の可溶性断片。
【請求項15】
該断片がアミノ酸70〜101から少なくとも8個のアミノ酸の相接する配列を含む請求項4記載の可溶性断片。
【請求項16】
該断片がアミノ酸1〜20から少なくとも8個のアミノ酸の相接する配列を含む請求項4記載の可溶性断片。
【請求項17】
実質的にアミノ酸70〜101からなる請求項15記載の可溶性断片。
【請求項18】
実質的にアミノ酸1〜20からなる請求項16記載の可溶性断片。
【請求項19】
固体支持体に固定化されたGAD65融合ポリペプチドであって、GAD65自己抗体と特異的に反応するGAD65ポリペプチド及び該GAD65ペプチドのN末端に融合したエクステンションポリペプチドを含み、該エクステンションペプチドを介して支持体に固定化されるGAD65融合ポリペプチド。
【請求項20】
固体支持体に固定化されたGAD65ポリペプチドであって、GAD65自己抗体と特異的に反応し、GAD65ポリペプチドのアミノ酸1−244中のエピトープと特異的に反応する抗GAD65抗体を介して支持体に固定化されるGAD65ポリペプチド。
【請求項21】
血清中のGAD65自己抗体を検出する方法であって、以下の工程: 血清試料をGAD65自己抗体と特異的に反応するGAD65の可溶性断片に露出する工程;及び 該GAD65断片と自己抗体間の特異的相互作用を検出する工程: を含む方法。
【請求項22】
該可溶性断片が溶解性を制限するN末端を実質的に含まない請求項21記載の方法。
【請求項23】
該N末端アミノ酸がアミノ酸24〜31及びアミノ酸45である請求項22記載の方法。
【請求項24】
該N末端アミノ酸がアミノ酸1〜244である請求項23記載の方法。
【請求項25】
該断片が天然に存在する請求項22記載の方法。
【請求項26】
GAD65自己抗体がヒト64kDaβ膵細胞自己抗体である請求項24記載の方法。
【請求項27】
該可溶性GAD65断片が標識される請求項26記載の方法。
【請求項28】
検出工程の前に、該可溶性GAD65断片と該GAD65自己抗体間で形成された複合体を沈降させる工程を更に含む請求項27記載の方法。
【請求項29】
該GAD65自己抗体に特異的に結合する該標識GAD65断片と競合する非標識GAD65ポリペプチドを加える工程を更に含む請求項28記載の方法。
【請求項30】
該GAD65断片と複合体を形成する該自己抗体と競合する標識抗体と該血清試料を混合する工程を更に含む請求項26記載の方法。
【請求項31】
該GAD65断片を固相に結合し、該固相を該血清試料から取り出して非結合標識抗体の複合体を分離する工程を含む請求項30記載の方法。
【請求項32】
血清中のGAD65自己抗体を検出する方法であって、以下の工程: GAD65自己抗体と特異的に反応するGAD65タンパク質又はその断片及び該タンパク質又は断片のN末端に融合した伸長ポリペプチドを含む融合ポリペプチドを供給する工程;
該融合ポリペプチドを伸長ポリペプチドを介して固体支持体に固定化する工程;
血清試料を該融合ポリペプチドに露出する工程;及び 該断片と該自己工程間の特異的相互作用を検出する工程;
を含む方法。
【請求項33】
血清中のGAD65自己抗体を検出する方法であって、以下の工程: GAD65ポリペプチドのアミノ酸1〜244の中に存在する第1エピトープと特異的に反応する第1抗体を供給する工程;
該第1抗体を固体支持体に固定化する工程;
該GAD65ポリペプチドを該第1抗体に露出して該第1抗体を介して前記支持体に該タンパク質を固定化する工程であって、該GAD65ポリペプチドがGAD65自己抗体と反応する第1エピトープを含む工程;
血清試料を該GAD65断片に露出する工程;及び 該GAD65断片と該自己抗体間の特異的相互作用を検出する工程;
を含む方法。
【請求項34】
該GAD65ポリペプチドが天然に存在し、該第1抗体が該GAD65ポリペプチドのアミノ酸60〜120の第1エピトープと特異的に反応する請求項33記載の方法。
【請求項35】
血清中のGAD65自己抗体を検出する方法であって、以下の工程: 非立体配座エピトープを含むそのGAD65ポリペプチドを変性する工程;及び 前記変性GAD65ポリペプチドとGAD65自己抗体間の結合を検出する工程;
を含む方法。
【請求項36】
前記結合がスティフマン症候群を診断する請求項35記載の方法。
【請求項37】
患者においてインスリン依存性糖尿病を診断又は検査する方法であって、以下の工程:
該患者の血清試料をインスリン依存性糖尿病を診断するGAD65自己抗体と特異的に反応するエピトープを有する可溶性GAD65断片に露出する工程;及び 該断片とインスリン依存性糖尿病を診断する該自己抗体間の相互作用を検出する工程;
を含む方法。
【請求項38】
患者においてスティフマン症候群を診断又は検査する方法であって、以下の工程:
その血清試料を、スティフマン症候群を診断するGAD65自己抗体と特異的に反応するエピトープを有しかつインスリン依存性糖尿病を診断するGAD65自己抗体と特異的に反応するセグメントを含まないGAD65断片に露出する工程;
及び 該断片とスティフマン症候群を診断する該自己抗体間の相互作用を検出する工程;
を含む方法。
【請求項39】
該断片が可溶性である請求項38記載の方法。
【請求項40】
該断片が不溶性である請求項39記載の方法。
【請求項41】
該断片がGAD65タンパク質のアミノ酸1〜101からの相接する配列を含み、GAD65タンパク質のアミノ酸245〜585を実質的に含まない実施例40記載の方法。
【請求項42】
患者においてインスリン依存性糖尿病の進行を検査する方法であって、以下の工程:
該患者の血清試料を第1GAD65自己抗体と特異的に反応する第1エピトープを含む第1GAD65断片に露出する工程;
該第1断片と該第1自己抗体間の特異的相互作用を検出する工程;
該血清試料を第2GAD65自己抗体と特異的に反応する第2エピトープを含む第2GAD65断片に露出する工程;及び 該第2断片と該第2自己抗体間の特異的相互作用を検出する工程;
を含む方法。
【請求項43】
該第1自己抗体がインスリン依存性糖尿病の一時的な第1段階を診断し、該第2自己抗体がインスリン依存性糖尿病の一時的な第2段階を診断する請求項42記載の方法。
【請求項44】
該断片が可溶性である請求項43記載の方法。
【請求項45】
インスリン依存性糖尿病又はスティフマン症候群に罹っている又は罹りやすい患者の治療方法であって、GAD65自己抗体又はGAD65自己反応性T細胞に特異的に結合する可溶性GAD65断片の治療的に有効な用量を患者に投与することを含む方法。
【請求項46】
該GAD65断片が、治療される該患者の免疫グロブリン又はリンパ系細胞に結合する請求項43記載の方法。
【請求項47】
インスリン依存性糖尿病又はスティフマン症候群に罹っている又は罹りやすい患者の治療方法であって、以下の工程: 該患者の末梢血液細胞を可溶性GAD65断片に露出する工程;
該末梢血液細胞の該GAD65断片に特異的なTヘルパー細胞を得る工程;及び
該Tヘルパー細胞に対して生体内免疫応答を誘発することができるTヘルパー細胞又はその一部を該患者に投与する工程;
を含む方法。
【請求項48】
該Tヘルパー細胞が弱毒化される請求項47記載の方法。
【請求項49】
該一部がT細胞レセプター又はその断片である請求項48記載の方法。
【請求項50】
薬学的に許容しうる担体中GAD65自己抗体と特異的に反応する可溶性GAD65断片を含む医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−100744(P2009−100744A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−286808(P2008−286808)
【出願日】平成20年11月7日(2008.11.7)
【分割の表示】特願平6−513497の分割
【原出願日】平成5年12月2日(1993.12.2)
【出願人】(592130699)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
【Fターム(参考)】