説明

糖鎖誘導体の製造方法、構造解析方法、及び糖鎖誘導体

【課題】糖鎖混合物から糖鎖誘導体を製造する方法の提供。
【解決手段】(a)糖鎖混合物中の糖鎖に脂溶性基を導入して糖鎖誘導体の混合物を得る工程、(b)該糖鎖誘導体の混合物をセロトニンアフィニティーカラムクロマトグラフィーで処理する工程、(c)(b)工程の後にアミノカラム又はアミドカラムを用いる順相クロマトグラフィーで処理する工程、および(d)(c)工程の前に糖加水分解酵素で処理する工程を備えた糖鎖誘導体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖鎖の混合物からの糖鎖誘導体の製造方法、及び糖鎖の構造解析方法に関する。更に本発明の糖鎖誘導体の製造方法によって製造された新規糖鎖誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
糖タンパク質中の糖鎖はタンパク質の立体構造の保持、プロテアーゼからの分解を防ぐ抵抗性の獲得などの働きを担っていると考えられてきた。最近になり、糖タンパク質中の糖鎖が受精や分化、シグナル伝達、癌化、タンパク質の細胞内輸送や生理活性の調節などの生命現象に関与することが明らかにされつつある。また、細胞表面の接着分子や糖タンパク質性ホルモンなどの糖鎖とその機能との関係が明らかにされ、糖質科学コンソーシアム構想がまとめられている。現在、糖鎖機能研究の中心はその生合成を司る糖転移酵素(糖鎖遺伝子)に関する研究が中心となっているが、糖転移酵素もまたゲノム情報により保存され、他のタンパク質との協調作業により生命機能に関与することを考えれば、細胞、組織中に発現する糖鎖の全体像を捉え解析する構造グライコミクス手法により糖鎖の機能解析を進める必要がある。
糖鎖科学における構造グライコミクスの役割は、多くの生命現象で重要な役割を担っている糖鎖認識機構を網羅的に解析することであり、機能グライコミクスに不可欠な要素である。構造グライコミクスに要求される技術的要素としては高い網羅性、高スループット、高感度および高精度である。
現在、糖タンパク質糖鎖の構造解析法としては、タンパク質から切り出した糖鎖を蛍光標識後、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)や質量分析法(MS)を用いて解析する方法が質量分析の劇的な技術進歩により有力な手段となっており(非特許文献1〜4)、シアロ糖鎖の分離には陰イオン交換カラムクロマトグラフィーがもっぱら用いられてきた(非特許文献5)。
【非特許文献1】Biomed Chromatogr. 16:103−115(2002)
【非特許文献2】Anal Biochem. 206:278−287(1992)
【非特許文献3】Biochem Soc Trans. 21:121−125(1993)
【非特許文献4】Chem Rev. 102:321−369(2002)
【非特許文献5】Biochim Biophys Acta. 705:167−173(1982)
【0003】
しかしながら、細胞や組織中の糖鎖を網羅的に解析する場合、シアル酸やフコースなどの非還元末端修飾の多様性と糖鎖の分枝という問題が存在するために、混在する糖鎖を十分に分離することができず、満足のいく結果を得ることができなかった。特にイオン交換カラム等を用いると、特異的な分離能を有していないために十分な分離が得られないばかりか、分離操作後に脱塩処理を施さなければならず、実用的な方法とはいえない。
よって、これらの糖鎖不均一性情報に配慮しながら、細胞、組織に特徴的な糖鎖構造を詳細に解析できる実用的な手法が熱望されていた。
本発明は、細胞や組織中の糖鎖のように種々の糖鎖が混在している状態から、各糖鎖を分離し、取得する手段を提供することを課題とする。
また、本発明は、分離した各糖鎖化合物の構造を解析する手段を提供することを課題とする。
更に、本発明は、新規な糖鎖誘導体を提供することを課題とする。
【発明の開示】
【0004】
本発明は以下の発明に係る。
1.糖鎖混合物から糖鎖誘導体を製造する方法であって、(a)糖鎖混合物中の糖鎖に脂溶性基を導入して糖鎖誘導体の混合物を得る工程、及び(b)該糖鎖誘導体の混合物をセロトニンアフィニティーカラムクロマトグラフィーで処理する工程を備えたことを特徴とする糖鎖誘導体の製造方法。
2.(b)工程の後に(c)アミノカラム又はアミドカラムを用いる順相クロマトグラフィーで処理する工程を備えた上記記載の糖鎖誘導体の製造方法。
3.(c)工程の前に(d)糖加水分解酵素で処理する工程を備えた上記記載の糖鎖誘導体の製造方法。
4.糖鎖混合物中の糖鎖の構造を解析する方法であって、(a)糖鎖混合物中の糖鎖に脂溶性基を導入して糖鎖誘導体の混合物を得る工程、(b)該糖鎖誘導体の混合物をセロトニンアフィニティーカラムクロマトグラフィーで処理する工程、及び(e)質量分析法に処理する工程を備えたことを特徴とする糖鎖の構造解析方法。
5.(b)工程の後に(c)アミノカラム又はアミドカラムを用いる順相クロマトグラフィーで処理する工程を備えた上記記載の糖鎖の構造解析方法。
6.(c)工程の前に(d)糖加水分解酵素で処理する工程を備えた上記記載の糖鎖の構造解析方法。
7.質量分析法が、MALDI−TOF MSによる質量分析法である上記4記載の糖鎖の構造解析方法。
8.後述の式(1)〜(6)で表される糖鎖誘導体[式中Rは2−カルボキシフェニル基、3−カルボキシフェニル基、4−カルボキシフェニル基、p−エトキシカルボニルフェニル基、又は2−ピリジル基を表す。Rは水酸基、基−Asn又は基−Asn−Rを表す。ここでAsnはアスパラギン基を表し、Rはカーバメート系又はアミド系保護基を表す。Acはアセチル基を表す。]。
9.式(1)〜(6)で表される糖鎖誘導体から誘導される癌マーカー。
本発明者等は、鋭意検討を重ねた結果、糖鎖に脂溶性基を導入して糖鎖誘導体とした後、シアル酸と親和性を有するセロトニンをリガンドとするアフィニティーカラムクロマトグラフィーに処理することにより、アシアロ糖鎖とシアロ糖鎖との分離、加えてシアロ糖鎖中のモノシアロ、ジシアロ、トリシアロ及びテトラシアロ糖鎖等をシアル酸残基の数によって分離できることを見出した。
更に該アフィニティーカラムクロマトグラフィーによって分離した画分を、それぞれアミノカラム又はアミドカラムを使用したクロマトグラフィーに供することで分枝構造の異なる糖鎖誘導体を詳細に分離できることを見出し、単一構造の糖鎖を大量に製造することを可能とした。
また、分離した各糖鎖誘導体に適当な糖加水分解酵素を作用させ、アミノカラム又はアミドカラムを使用したクロマトグラフィーに供して単離し、得られた糖鎖誘導体を質量分析法に処することで高精度かつ網羅的に糖鎖構造を解析できることを見出し、本発明を完成した。
本発明の製造方法において使用する糖鎖混合物の糖鎖は、特に制限されずアスパラギン結合型糖鎖(N−グリコシド結合型糖鎖)、ムチン型糖鎖(O−グリコシド結合型糖鎖)、遊離型糖鎖、更には糖鎖結合アスパラギンのようにアミノ酸が結合している糖鎖を包含する。
これら糖鎖は化学的手法によって調製された糖鎖であってもよいが、例えば天然の糖タンパク質に由来する糖鎖は非還元末端の糖残基がランダムに欠失した糖鎖の混合物となっており、これら糖鎖の混合物を使用するのが好ましい。また、糖鎖残基にシアル酸残基を有する糖鎖を含有する糖鎖混合物を使用するのが好ましい。
天然糖鎖の混合物としては、天然原料、例えば乳汁、ウシ由来フチュイン、卵又は生体の組織や細胞に由来する糖鎖混合物が挙げられる。特に癌組織又は癌細胞に由来する糖鎖混合物を使用することは、大変興味深い結果が期待できるので好ましい。
本発明で使用できる天然糖鎖の混合物としては、次に示す糖鎖混合物を好ましく例示できるが、シアロ糖鎖が含まれる糖鎖混合物が特に好ましい。
該天然原料から公知の方法によって糖タンパク質及び/又は糖ペプチドの混合物を得、当該混合物にタンパク質分解酵素等を作用させてペプチド部分を切断し、ゲルろ過カラムやイオン交換カラム等を用いたクロマトグラフィーで精製して得られた糖鎖結合アスパラギンの混合物を使用することができる。
また、例えば生体の組織や細胞、特に培養組織や培養細胞を用いて、培養液中の組織又は細胞をホモジネートし、次いで遠心分離して得られた細胞膜画分を2−メルカプトエタノールで処理した後、N−グリカナーゼを作用させて得られた糖鎖の混合物を使用することができる。
また、培養組織や培養細胞をホモジネートし、遠心分離した上清を採取することで得られた遊離糖鎖の混合物を使用することができる。これらの糖鎖の中には中性糖鎖として高マンノース型糖鎖や多様なシアロ糖鎖を含むので、各種の糖鎖の製造に適している。
得られた糖鎖の混合物中の糖鎖に脂溶性基を導入して糖鎖誘導体の混合物とする。
脂溶性基は、糖鎖の還元末端の開環アルデヒド、糖鎖結合アスパラギンのアスパラギンアミノ基又はカルボキシル基に反応して形成する脂溶性を有する置換基であり、例えば2−、3−または4−カルボキシフェニルアミノ基、p−エトキシカルボニルフェニルアミノ基、2−ピリジルアミノ基等の通常蛍光標識として使用される置換基や9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)基、tert−ブトキシカルボニル(BOC)基、ベンジル基、アリル基、アリルオキシカルボニル基、アセチル基等のカーバメート系又はアミド系保護基として使用される置換基を挙げることができる。
これら脂溶性基の導入は公知の方法によって行うことができ、操作の簡便さ、得られる糖鎖誘導体の安定性、励起光が水銀光源やレーザー光源に対応していることなどから2−カルボキシフェニルアミノ基、Fmoc基又はBOC基を好ましく使用できる。
例えば、2−アミノ安息香酸を用いて、シアノホウ素化水素ナトリウムやジメチルアミノ化ホウ素等の還元剤の存在下で糖鎖と反応させることで、アミノアルジトール誘導体とすることができる。
また、例えば9−フルオレニルメチル−N−スクシニミヂルカーボネートを用いて、炭酸水素ナトリウム存在下、糖鎖結合アスパラギンと反応させることで、アスパラギンのアミノ基にカーバメート様に結合したFmoc基を導入することができる。
以上のような操作によって、脂溶性基が導入された糖鎖誘導体の混合物を得ることができる。
得られた糖鎖誘導体の混合物をセロトニンアフィニティーカラムクロマトグラフィーにより分離する。
本発明におけるセロトニンアフィニティーカラムクロマトグラフィーはシアル酸と親和性を有するセロトニンをリガンドとするアフィニティーカラムを使用する。
セロトニンアフィニティーカラムとしては、セロトニンを充填剤に固定化して作成してもよく、市販されているカラムを使用してもよい。市販のカラムとしては、LA−セロトニンカラム(株式会社J−オイルミルズ製)等が挙げられる。
クロマトグラフィーの分離条件は適宜設定されるものであるが、その一例を挙げると、蛍光検出器を用いて、励起波長350nm、蛍光波長425nmとし、流速0.5ml/min、移動相を超純水と酢酸アンモニウム水溶液とを使用して直線グラジエント溶出とすることで分離を達成することができる。
セロトニンアフィニティーカラムクロマトグラフィーにより、糖鎖誘導体の混合物を糖鎖誘導体のシアル酸残基の数によって分離することができ、シアル酸残基を有さないアシアロ糖鎖誘導体が最も早く溶出し、次いでモノシアロ糖鎖誘導体、ジシアロ糖鎖誘導体という具合にシアル酸残基の数の増加に比例して分離溶出することができる。
以上のようにセロトニンアフィニティーカラムによって分離した糖鎖誘導体を、ポリマーベースのアミノカラム又はシリカベースのアミドカラムを使用した順相HPLCに処理することで、極めて優れた糖鎖誘導体間の分離を可能とすることができる。順相クロマトグラフィーとは、アミノ基、アミノプロピル基、アクリルアミド基など極性固定相を充填剤として用いるクロマトグラフィーであって、試料成分の固定相−移動相に対する試料成分の分配度の差に基づいて分離が達成されることを特徴する。基本的に糖鎖の親水性に基づいて分離されるモードであり、シアル酸が結合した糖鎖の異性体の分離にも好ましく用いることができる。また、希酸やノイラミニダーゼにより処理されたアシアロ型の糖鎖の分離にも好ましく用いることができる。
使用するポリマーベースのアミノカラムとしては、アミノ基をポリビニルアルコール系基材ゲル等のポリマーに結合させた固定相を充填剤として用いたカラムであって、自ら作成してもよいが、市販されているカラムを使用してもよい。
市販のアミノカラムとしては、Asahi Shodex NH2P−504E(昭和電工株式会社製)を挙げることができる。
シリカベースのアミドカラムとしては、アクリルアミド等のアミド基をシリカを固定相とする充填剤に化学結合させて導入したカラムであって、自ら作成してもよいが、市販されているカラムを使用してもよい。
市販のアミドカラムとしては、TSK−GEL Amide−80(TOSOH Corp製)を挙げることができる。
クロマトグラフィーの分離条件は適宜設定されるものであるが、その一例を挙げると、蛍光検出器を用いて、励起波長350nm、蛍光波長425nmとし、流速1ml/min、移動相を酢酸含有アセトニトリルと酢酸及びトリエチルアミン含有水溶液とを使用して直線グラジエント溶出とすることで分離することができる。
以上のようにして単離して得られる糖鎖誘導体は、糖加水分解酵素の適用、質量分析法による分析により、その糖鎖構造を解析することができる。
糖加水分解酵素としては、公知の酵素を使用することができ、例えばシアリダーゼ、ガラクトシダーゼ、マンノシダーゼ、N−アセチルグルコサミダーゼ、フコシダーゼ等を挙げることができる。
質量分析方法としては、従来公知の質量分析法を採用した質量分析装置によってなされるが、近年特に糖鎖分析に用いられているMALDI−TOF MSにより測定するのが好ましい。
糖鎖構造を解析するには、特定の糖加水分解酵素を作用させた後、ポリマーベースのアミノカラム又はシリカベースのアミドカラムを使用した順相HPLCで処理し、得られた画分を質量分析して消失した質量分と加水分解酵素の特性とを考慮し、更にこの操作を繰り返すことで糖鎖構造を解析することができる。
得られる糖鎖誘導体は、その脂溶性基を除去することで種々の糖鎖を、人工的に容易にかつ大量に得ることができる。
脂溶性基の除去は従来公知の方法を適用することができる。
例えば、2−カルボキシフェニルアミノ基の除去は、酢酸中で過酸化水素と室温で反応させることで達せられ、容易に遊離型糖鎖として回収することができる。また、Fmoc基の除去は、N,N−ジメチルホルムアミド中、糖鎖誘導体にモルホリンを加えて反応させることで達せられ、BOC基の除去には弱酸を反応させることで達せられる。
糖鎖が糖鎖結合アスパラギンである場合、無水ヒドラジンと反応させた後、アセチル化する方法、塩基性水溶液中加熱還流後、アセチル化する方法等により、アスパラギン残基を除去することができる。
かかる糖鎖類は、医薬品開発等の分野において非常に有用であり、例えば癌のワクチン合成が挙げられ、得られた糖鎖類を化学的な反応や糖転移酵素による反応等を組み合わせて新たな糖残基を結合させて誘導体化し、新規ワクチンの開発を可能とする。
本発明者等は、本発明の構造解析方法及び製造方法により、各種癌細胞中にこれまで認められなかった下記式(1)〜(6)で示される糖鎖を単離することに成功した。









[式中Rは2−カルボキシフェニル基、3−カルボキシフェニル基、4−カルボキシフェニル基、p−エトキシカルボニルフェニル基、又は2−ピリジル基を表す。Rは水酸基、基−Asn又は基−Asn−Rを表す。ここでAsnはアスパラギン基を表し、Rはカーバメート系又はアミド系保護基を表す。Acはアセチル基を表す。]
これら新規な糖鎖は、癌細胞中に特異的に発現するものと考えられ、これら糖鎖を癌マーカーとして利用することができる。
例えばこれら癌細胞中の特異的な糖鎖と特異的に認識するポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体を作製し、免疫学的手法により該糖鎖の検出を行うことで成される。
ポリクローナル抗体は、該糖鎖又は該糖鎖のハプテンとタンパク質等の高分子化合物(担体)と結合させた結合体を抗原としてマウス、ハムスター、モルモット、ニワトリ、ラット、ウサギ、イヌ、ヤギ、ヒツジ、ウシ等の哺乳動物を免疫感作し、該哺乳動物から血液を採取し、ポリクローナル抗体を含む抗血清を調製することができる。
モノクローナル抗体は、例えば、抗体産生細胞とミエローマ細胞株との細胞融合により得られるハイブリドーマを調製して得ることができる。このようにして得られたハイブリドーマを培養し、産生されるモノクローナル抗体を精製すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1】図1は実施例1で得られた糖鎖誘導体のアフィニティーカラムクロマトグラムである。
【図2】図2は実施例2で得られた糖鎖誘導体のアフィニティーカラムクロマトグラムである。
【図3】図3は実施例3で得られた糖鎖誘導体のHPLCでのクロマトグラムである。
【図4】図4は実施例3で得られた糖鎖誘導体のHPLCでのクロマトグラムである。
【図5】図5は実施例3で得られた糖鎖誘導体のHPLCでのクロマトグラムである。
【図6】図6は実施例3で得られた糖鎖誘導体のHPLCでのクロマトグラムである。
【図7】図7は実施例3で得られた糖鎖誘導体のHPLCでのクロマトグラムである。
【図8】図8は実施例4で得られた糖鎖誘導体のアフィニティーカラムクロマトグラムである。
【図9】図9は実施例5で得られた糖鎖誘導体のHPLCでのクロマトグラムである。
【図10】図10は実施例6で得られた糖鎖誘導体のアフィニティーカラムクロマトグラムである。
【図11】図11は実施例7で得られた糖鎖誘導体のアフィニティーカラムクロマトグラムである。
【図12】図12は実施例7で得られた糖鎖誘導体のHPLCでのクロマトグラムである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下に参考例及び実施例を示すが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0007】
セロトニンアフィニティークロマトグラフィーによるヒト血清由来
[1−酸性糖タンパク質(AGP)]糖鎖の分離
ヒト血清由来AGP(シグマアルドリッチジャパン製)1mgを20mMリン酸緩衝溶液(pH7.5)50μlに溶解し、N−glycanase F(2Unit,4μl)を加え、37℃で12時間反応させた。反応後100℃で3分間煮沸し遠心分離後の上清を回収した。
回収した上清に2−アミノ安息香酸(2−AA)およびシアノ水素化ホウ素ナトリウムをそれぞれ3%となるように2%ホウ酸、4%酢酸ナトリウム混液(500μl)に溶解して100μl加え、80℃で1時間反応させた。反応混合物を50%メタノール水溶液で平衡化したSephadexLH−20カラム(0.7cm i.d.,30cm)を用いて分画し、分光光度計(日立製、F−4010型)を用いて、励起波長335nm、蛍光波長410nmで各分画を測定して、最初に溶出される蛍光性分画を回収し、糖鎖誘導体の混合物とした。
得られた混合物をセロトニンアフィニティーカラムクロマトグラフィーに供し、分離した糖鎖誘導体を得た。アフィニティーカラムクロマトグラフィーでの分離結果を図1に示す。
セロトニンアフィニティーカラムクロマトグラフィーの条件
カラム:LA−Serotoninカラム(4.6×150mm,Japan Oil mills製)
ポンプ:JASCO PU−980型
流速:0.5ml/min
検出器:JASCO FP−920型蛍光検出器
励起波長:350nm
蛍光波長:425nm
移動相:溶液Aとして超純水、溶液Bとして40mM酢酸アンモニウム水溶液を用いた。グラジエント条件:試料注入後2分間を溶液B5%とし、37分後に酢酸アンモニウム濃度が30mMとなるように、直線グラジエント溶出を行い、その後10分間で40mMになるように行った。
なお、セロトニンアフィニティークロマトグラフィーの分離条件は以下の実施例においても同様とした。
【実施例2】
【0008】
(ヒト癌細胞由来糖鎖のセロトニンアフィニティークロマトグラフィーによる分離)
細胞培養
ヒト腎腺癌細胞ACHN、ヒト肺癌細胞A549、ヒト胃癌細胞MKN45及びヒト組織球性リンパ腫U937を用いた。ACHN及びA549は予め50℃で30分間加熱することにより非動化したウシ血清[NEWBORN
CALF SERUM(NCS)、シグマアルドリッチジャパン製]を10%含むDMEM(Dulbecco’s Modified Eagle Medium、シグマアルドリッチジャパン製)を用い、U937及びMKN45では10%NCSを含むRPMI−1640(シグマアルドリッチジャパン製)を用い、5%CO存在下37℃で組織培養シャーレ中で培養した。U937を除く細胞は80%コンフルエント状態において、培養中の細胞を等張化リン酸緩衝液(PBS)で洗浄後、トリプシン溶液を加え、37℃で5分間処理した後、剥離した細胞を回収し、PBSで洗浄後継代培養した。
細胞膜画分の調製
細胞膜分画の調製には80%コンフルエント状態の細胞を用い、セルスクレーパーを用い、培養器より回収した。回収した細胞はPBSで洗浄後、1×10cell/5mlの濃度となるように1%のプロテアーゼインヒビターを含む10mM
NaHPO(pH7.5)中、グラスホモジナイザーを用いてホモジナイズ後、0.5MのSucroseを含む20mMのTris−HCl
buffer(pH7.5)を10ml加え、4℃、3000rpmで15分間遠心分離後上清を回収後、4℃、19000rpmで遠心分離し、得られた沈殿を細胞膜画分とした。
細胞膜画分からの糖鎖の遊離
細胞膜画分(1×10cell)に1%SDS溶液40μlを加え、2−メルカプトエタノールを1%になるように加えた後、100℃の沸騰水浴上で5分間加熱することにより可溶化を行った。膜画分を含む溶液を室温まで冷却し、NP−40を1%になるように加え、終濃度が20mMになるようにリン酸緩衝液(pH7.5)を加えた。さらに、N−glycanase
F 4μl(2Unit、Roche diagnostics製)を加え、37℃で一晩インキュベートし、100℃の沸騰水浴上で5分間煮沸し、95%エタノールを終濃度が75%になるように加えた後、4℃、15000rpmで遠心分離し上清を減圧乾固し、細胞膜由来糖鎖とした。
調製した各細胞膜由来糖鎖に、上記実施例1と同様に2−AAを導入後、セロトニンアフィニティーカラムクロマトグラフィーで処理し、各糖鎖誘導体画分を得た。カラムクロマトグラフィーでの分離結果を図2に示す。
【実施例3】
【0009】
(順相型アミドカラムによる癌細胞由来糖鎖の分離及び構造解析)
実施例2で得られた各画分の癌細胞由来糖鎖誘導体(1×10cell相当)を20mM酢酸緩衝液(pH5.0)20μlに溶解し、シアリダーゼ4μl(2mU,マルキンバイオ製)を加えて37℃で24時間反応させた。反応後100℃で3分間煮沸し、遠心分離後の上清を回収した。
得られた上清をアミドカラムを用いた順相HPLCに供し、糖鎖誘導体を分取した。HPLCでの分離結果を図3〜7に示す。
HPLC条件
カラム:TSK−GEL Amide−80(TOSOH CORPORATION,Japan;4.6×250mm)
カラム温度:40℃
ポンプ:JASCO PU−980型
流速:1ml/min
検出器:JASCO FP−920型蛍光検出器
励起波長:350nm
蛍光波長:425nm
移動相:溶液Aとして0.2%酢酸を含むアセトニトリル溶液、溶液Bとして0.1%酢酸及び0.1%トリエチルアミンを含む水溶液を用いた。
グラジエント条件:試料注入後2分間を溶液B30%とし、60分後に溶液Bが65%となるように直線グラジエント溶出を行った。
糖加水分解酵素と質量分析法による構造解析
U937由来のピーク31の糖鎖誘導体を20mMクエン酸緩衝液(pH3.5)20μlに溶解し、β−ガラクトシダーゼ1μl(25mU、生化学工業社製)を加えて37℃で24時間反応させた。反応後100℃で3分間煮沸し遠心分離後の上清を回収した。得られた上清をアミドカラムを用いた順相HPLCに供して得た画分の一部をMALDI−TOF
MSにより分析した。結果、分子量2718の糖鎖誘導体(a)が得られた。
その糖鎖誘導体(a)を20mMクエン酸緩衝液(pH5.0)20μlに溶解し、β−N−アセチルヘキサミニダーゼ1μl(10mU,生化学工業社製)を加えて37℃で24時間反応させた。反応後100℃で3分間煮沸し遠心分離後の上清を回収し、得られた上清を上記と同様に分析した結果、分子量1906の糖鎖誘導体(b)が得られた。
更に糖鎖誘導体(b)をβ−ガラクトシダーゼで処理した結果、分子量1582の糖鎖誘導体(c)が得られた。
以上の結果より、ピーク31は下記式で表される糖鎖誘導体であることが判明した。



同様にピーク35の糖鎖誘導体も、β−ガラクトシダーゼ、β−N−アセチルヘキサミニダーゼ、次いでβ−ガラクトシダーゼで処理し、下記式で表される糖鎖誘導体であることが判明した。



他のピークの誘導体についても加水分解酵素を適宜使用し、MALDI−TOF MS分析等を行い、図3〜7に示すピークに相当する糖鎖構造を表1〜5に示した。なお、表1〜14中の分子量は糖鎖還元末端に2−アミノ安息香酸が結合した状態での分子量(MW)を示し、記号は次のものを示す。
Gal:D−ガラクトース、GlcNAc:N−アセチルグルコサミン、
Man:D−マンノース、Fuc:フコース、2−AA:2−アミノ安息香酸、NeuAc:シアル酸。
ここで糖鎖還元末端に2−アミノ安息香酸が結合した糖鎖、例えば、次式で表される糖鎖部分構造は、−4GlcNAcβ1−4GlcNAc−2−AAと表すこととする。



MALDI−TOF MS分析
装置にはVoyager DE−PRO(PE Biosystems,Framingham,MA)を用い、リニアー/ネガティブイオンモードにより、加速電圧20kV、グリッド電圧96.3%、Delaytime 1000nsec、Lens Off set 1.25、レーザー強度(窒素レーザー)2700で測定した。水に溶解したサンプル0.5μLと2,5−Dihydroxybenzoicacid(DHB)の20mg/mLメタノール溶液0.5μL を混和し、乾燥後、測定用試料として用いた。
【表1】


【表2】


【表3】


【表4】


【表5】


【実施例4】
【0010】
(細胞内に存在する遊離糖鎖1)
ヒト胃癌細胞MKN45をPBSで洗浄後、1×10cell/5mlの濃度となるようにグラスホモジナイザーを用いて1%のプロテアーゼインヒビターを含む10mM
NaHPO(pH7.5)中でホモジナイズ後、0.5MのSucroseを含む20mMのTris−HCl buffer(pH7.5)を10ml加え、4℃、3000rpmで15分間遠心分離後、上清を集め、さらに、4℃、19000rpmで遠心分離し、その上清を減圧乾固し遊離型糖鎖混合物を得た。
得られた遊離型糖鎖混合物に実施例1に記載の方法と同様に、2−AAを導入して遊離型糖鎖誘導体の混合物を得、セロトニンアフィニティーカラムクロマトグラフィーで分画して遊離型糖鎖誘導体を得た。
アフィニティーカラムクロマトグラフィーによる分離結果を図8に示す。
得られた各画分をアミノカラムを用いた順相HPLCで分離し、遊離型糖鎖誘導体を得た。
HPLC条件
カラム: Asahi Shodex NH2P−50 4E(Showa Denko,Tokyo,Japan;4.6×250mm)
カラム温度:50℃
ポンプ:JASCO PU−980型
流速:1ml/min
検出器:JASCO FP−920型蛍光検出器
励起波長:350nm
蛍光波長:425nm
移動相:溶液Aとして2%酢酸を含むアセトニトリル溶液、溶液Bとして5%酢酸及び3%トリエチルアミンを含む水溶液を用いた。
グラジエント条件:試料注入後2分間を溶液B30%とし、80分後に溶液Bが95%となるように直線グラジエント溶出を行い、100分まで溶液Bを95%となるように保った。
得られた遊離型糖鎖誘導体を、糖加水分解酵素(シアリダーゼ、α−マンノシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、β−N−アセチルヘキサミニダーゼ等)を適宜作用させ、上記アミノカラムを用いた順相HPLCで分離後、得られた画分を凍結乾燥後、MALDI−TOF MSで分析することにより、遊離型糖鎖誘導体の構造を解析した。
なお、α−マンノシダーゼでの処理は、糖鎖誘導体を20mMクエン酸緩衝液(pH4.5)20μlに溶解し、α−マンノシダーゼ2μl(10mU,生化学工業社製)を加えて37℃で24時間反応させ、反応後100℃で3分間煮沸して遠心分離後の上清を回収することでなされる。その他の糖加水分解酵素での処理は前記実施例での記載と同様とした。得られた糖鎖誘導体を表6及び7に示す。
表6及び7の遊離型糖鎖は新規化合物であり、例えばNo.1の分子量1321である糖鎖誘導体は下記式で表される。


【表6】


【表7】


【実施例5】
【0011】
(細胞内に存在する遊離糖鎖2)
ヒト胃癌細胞MKN45に替えて、ヒトT細胞リンパ腫Jurkat27(糖鎖導入細胞株)を用いた以外は、実施例4と同様に操作して、遊離型糖鎖混合物を得た。
得られた遊離型糖鎖混合物に実施例1に記載の方法と同様に、2−AAを導入して遊離型糖鎖誘導体の混合物を得、セロトニンアフィニティーカラムクロマトグラフィーで分画して遊離型糖鎖誘導体を得た。
得られた各画分をアミドカラムを用いた順相HPLCで分離し、遊離型糖鎖誘導体を得た。
HPLC条件
カラム:TSK−GEL Amide−80(TOSOH CORPORATION,Japan;4.6×250mm)
カラム温度:40℃
ポンプ:JASCO PU−980型
流速:1ml/min
検出器:JASCO FP−920型蛍光検出器
励起波長:350nm
蛍光波長:425nm
移動相:溶液Aとして0.1%酢酸を含むアセトニトリル溶液、溶液Bとして0.2%酢酸及び0.2%トリエチルアミンを含む水溶液を用いた。
グラジエント条件:試料注入後2分間を溶液B30%とし、60分後に溶液Bが65%となるように直線グラジエント溶出を行った。
HPLCでの分離結果を図9に示す。
得られた遊離型糖鎖誘導体を、実施例4と同様に操作して、遊離型糖鎖誘導体の構造を解析した。得られた糖鎖誘導体を表8に示す。
【表8】


【実施例6】
【0012】
(ヒト子宮頸部癌細胞の糖鎖)
ヒト子宮頸部癌細胞HeLaをあらかじめ50℃で30分間加熱することにより非動化したNCSを10%含むDMEMを用いて培養した。80%コンフルエント状態において、培養中の細胞をPBSで洗浄後、トリプシン溶液を加え、37℃で5分間処理した後、剥離した細胞を回収し、PBSで洗浄後継代培養し、実施例2に記載の細胞膜画分の調製、細胞膜画分からの糖鎖の遊離と同様に処理して細胞膜由来の糖鎖混合物を得、上記実施例1と同様に2−AAを導入後、セロトニンアフィニティーカラムクロマトグラフィーに処理し、各糖鎖誘導体画分を得た。
カラムクロマトグラフィーでの分離結果を図10に示す。
得られたアシアロ糖鎖誘導体画分、モノシアロ糖鎖誘導体画分及びジシアロ糖鎖誘導体画分をシアリダーゼ処理した後、アミノカラムを用いた順相HPLCで分離して糖鎖誘導体を得た。HPLC条件は実施例4と同様にした。
得られた糖鎖誘導体を、糖加水分解酵素(シアリダーゼ、α−マンノシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、β−N−アセチルヘキサミニダーゼ等)を適宜作用させ、上記アミノカラムを用いた順相HPLCで分離後、得られた画分を凍結乾燥後、MALDI−TOF
MSで分析することにより、糖鎖誘導体の構造を解析した。
得られた糖鎖誘導体を表9〜12に示す。
【表9】


【表10】


【表11】


【表12】


【実施例7】
【0013】
(癌細胞特異的抗原CD98の糖鎖)
免疫沈降法によるCD98−HCの調製
Protein A−Agarose 50μl(シグマアルドリッチジャパン製)をPBS200μlにより洗浄後、PBS50μlおよび抗CD98抗体を10μg/10μl加え、室温にて60分間反応させた。反応後、PBS1mlにより非吸着成分の除去し、抗CD98抗体固定化Agaroseを得た。抗CD98抗体固定化Agaroseに、1%NP−40(400μl)により可溶化したHeLa細胞の膜分画(2×10cell)を加え、ロータリーシェイカーを用いて4℃で一晩インキュベートした。その後、PBSを1mlにより洗浄し、非吸着成分を除去し、遠心分離後、抗CD98抗体固定化Agaroseに解離溶液(250mM Tris−HCl buffer pH6.8/4.6% SDS,20%Glycerin)と2−メルカプトエタノールとの9:1混液を20μl加え、5分間煮沸し15000rpmで遠心した上清をCD98−HCとし、SDS−PAGEに供した。
SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動
ゲル電気泳動装置および電源は共にBio Rad製を用いた。泳動ゲルは7.5%ゲルを用いた。泳動緩衝液として25mM Tris,198mM Glycine,1%(w/v)SDSを用いて行った。最初の1時間はゲル1枚あたり5mAで、続いて10mAでゲル下辺部まで泳動を行った。
Coomassie Brilliant Blue染色
SDS−Page終了後、40%(v/v)Methanol,10%(v/v)Acetic acid /0.2%Coomassie Brilliant Blue R250中にてタンパク質の染色を行った。1時間後、Methanol:Acetic acid:Water(=4:1:5)を用いて脱色した。
Western Blot
SDS−PAGE後のゲルをBIO−RAD製セミドライ式ブロッティング装置(トランスブロットSDセル)を用いて、ゲル中のタンパク試料をPVDF膜に転写した。PVDF膜は予めメタノールに60秒浸し、その後48mMTris,39mM Glycine,20%Methanol(pH9.0)に1時間浸したものを使用し、100mA定電流にて1時間電圧を印加し転写を行った。転写後、PVDF膜を5%スキムミルクおよび0.05%Tween 20を含むPBSにてブロッキング操作を行った後、抗CD98抗体5μgを含む0.05%Tween 20/PBS(5ml)を加え一晩反応させた。反応後、PVDF膜を0.05%Tween
20を含むPBS(20ml)で4回洗浄後、HRP標識Protein A 5μlを含む0.05%Tween 20/PBS(5ml)を加え、1時間反応させた。反応後、PVDF膜を0.05%Tween 20を含むPBS(20ml)で4回洗浄し、0.05%DAB(3,3’−Diaminobenzidrine,tetrahydrochloride)を含む100mMTris−HCl buffer pH7.5,0.0031%過酸化水素溶液 20mlを加え発色させた。
N−glycanase Fによるゲル内消化
CBB染色によりバンドを確認した後、脱色液を水に置換し、目的のバンドを切り取り、エッペンドルフチューブへ入れた。その後アセトニトリル100μlを加え30分間放置することでゲルを脱水し、アセトニトリルを除去後2unitsのN−glycanase Fを含むTris−HCl buffer pH7.5を100μl加え37℃で一晩インキュベートし糖鎖を切り出した。その後、抽出液を回収しさらに水200μlを加え30分間攪拌しゲルより糖鎖混合物を得た。
以上のようにして得られた糖鎖混合物に上記実施例1と同様に2−AAを導入後、セロトニンアフィニティーカラムクロマトグラフィーに処理し、各糖鎖誘導体画分を得た。
カラムクロマトグラフィーでの分離結果を図11に示す。
得られたモノシアロ糖鎖誘導体画分及びジシアロ糖鎖誘導体画分をシアリダーゼ処理した後、アミノカラムを用いた順相HPLCで分離して糖鎖誘導体を得た。HPLC条件は実施例4と同様にした。HPLCでの分離結果を図12に示す。
得られた糖鎖誘導体を、糖鎖加水分解酵素(シアリダーゼ、α−マンノシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、β−N−アセチルヘキサミニダーゼ等)を適宜作用させ、上記アミノカラムを用いた順相HPLCで分離後、得られた画分を凍結乾燥後、MALDI−TOF
MSで分析することにより、糖鎖誘導体の構造を解析した。
得られた糖鎖誘導体を表13〜14に示す。
【表13】


【表14】


【産業上の利用可能性】
【0014】
本発明の方法によれば、特に細胞又は組織中の糖鎖混合物を詳細に分離することができ、網羅的にその糖鎖構造を解析することを可能としたことで、従来知られていなかった糖鎖及びその機能を探求することができ、今後の糖鎖研究における多大なる貢献が期待できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式で表される糖鎖誘導体からなる群より選択されるいずれか一つの糖鎖誘導体。

【化1】


【化2】


【化3】


【化4】




【化5】


【化6】


【化7】

【化8】


【化9】


【化10】


[式中Rは2−カルボキシフェニル基、3−カルボキシフェニル基、4−カルボキシフェニル基、p−エトキシカルボニルフェニル基、2−ピリジル基、水酸基、又は、基−Asn−Rを表わす。ここでAsnはアスパラギン基を表し、Rはカーバメート系又はアミド系保護基を表す。Acはアセチル基を表す。]

【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−162542(P2012−162542A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−77958(P2012−77958)
【出願日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【分割の表示】特願2007−525520(P2007−525520)の分割
【原出願日】平成18年7月19日(2006.7.19)
【出願人】(000206901)大塚化学株式会社 (55)
【Fターム(参考)】