説明

糸のクランプカッター装置

【課題】繊維機械における糸の取扱い過程において、当該糸の切断を要する際、糸を把持しつつ切断するためのクランプカッター装置であり、特には、延伸状態で走行する糸を切断する際に、クランプカットの成功率が高く、クランプ能力が悪化することのない糸のクランプカッター装置を提供すること。
【解決手段】糸の通過を許容する貫通した糸走行路RPを形成する複数の積層ブロックを糸走行方向に重ね合わせ組み合わせることにより構成され、複数の積層ブロックは、第1および第2のスライドブロックを含むものからなり、前記第1のスライドブロックの移動によって前記糸走行路内の糸を把持する糸把持手段と、前記糸把持手段により糸を把持した後、前記第2のスライドブロックの移動によって糸を切断する糸切断手段とを構成するものからなり、第1および第2のスライドブロックが相互に異なる材質であることを特徴とする糸のクランプカッター装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、繊維機械における糸の取扱い過程において、当該糸の切断を要する際、糸を把持しつつ切断するためのクランプカッター装置に関するものであり、特には、延伸状態で走行する糸を切断する際のクランプカットの成功率が高く、経時使用によるクランプ能力の悪化がない、糸のクランプカッター装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のように、延撚機、合撚糸機、紡績機あるいはワインダーなどの繊維機械において、その糸条を糸供給源にて切断する必要が生じた場合、例えば、合繊延撚機によれば、ドラフトローラに糸条が巻き付いた際に、未延伸糸供給源にて糸を切断しようとする場合などにおいて、走行糸条を切断すると共に、切断した糸条の糸供給側糸端を把持する方法が知られている。
【0003】
従来、繊維機械において、糸を把持しつつ切断するための装置としては、特許文献1に示すようなクランプカッター装置が利用されている。この特許文献1に示すクランプカッター装置は、図4および図11において参照符号33で示すような構造のものであって、一つの駆動源であるアクチュエータ54により作動する一つのスライドブロックを備えたものからなっている。その詳細については、本願明細書に添付の図面(図3C1 、図3C3 )に基づいて説明する。図3C1 および図3C3 に示すように、従来のクランプカッター装置は、上側の固定ブロック41と、下側のカッター42との間に、一つの駆動源により一方向にスライドするスライドブロック43を、固定ブロック、スライドブロック、カッターの順に積層状に組み合わせた構造のものであり、前記上側の固定ブロック41、スライドブロック43、下側のカッター42には、それぞれ貫通孔44、45、46が設けてあり、積層状態において、糸Yの走行を許容する貫通した糸走行路RPを形成するものからなっている。
【0004】
この従来のクランプカッター装置は、上側の固定ブロック41と下側のカッター42との間に、一つの駆動源によって一方向にスライドする一つのスライドブロック43を具備するものにすぎず、弾性糸等を切断する場合、スライドブロック43がスライドした際に、糸Yを把持するとほぼ同時に糸Yを切断してしまうことになってしまうため、糸Yがはねてしまい、クランプカットの成功率が低く、切断された糸端が往々にして逃げてしまうという問題点を有していた。
【0005】
また、従来のクランプカッター装置は、カッター42とスライドブロック43が同材質のため、使用しているうちに、カッター42とスライドブロック43の接触面に磨耗による鏡面化で面接触が生じる結果、スライド抵抗が増大しクランプ能力が悪化するという問題点を有していた。
【0006】
【特許文献1】特開2002−363834号公報(要約、図4、図11)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、この発明は、上記する従来技術の問題点を解消すべくなしたものであって、特に重要な要素は、繊維機械における糸の取扱い過程において、当該糸の切断を要する際、糸を把持しつつ切断するためのクランプカッター装置であり、特には、延伸状態で走行する糸を切断する際に、クランプカットの成功率が高く、クランプ能力の悪化のない糸のクランプカッター装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この請求項1に記載の発明は、上記の目的を達成するための、具体的には、糸の通過を許容する貫通した糸走行路を形成する複数の積層ブロックを糸走行方向に重ね合わせ組み合わせることにより構成され、前記複数の積層ブロックは、第1および第2のスライドブロックを含むものからなり、前記第1のスライドブロックの移動によって前記糸走行路内の糸を把持する糸把持手段と、前記糸把持手段により糸を把持した後、前記第2のスライドブロックの移動によって前記糸を切断する糸切断手段とを構成するものからなり、第1のスライドブロックと第2のスライドブロックが相互に異なる材質であることを特徴とする糸のクランプカッター装置に関するものである。
【0009】
さらに、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の弾性糸のクランプカッター装置であって、前記糸把持手段が、前記第1のスライドブロックと、当該第1のスライドブロック上流側に面接触する積層ブロックと、前記第1のスライドブロックの下流側に面接触する第2のスライドブロックとを含むものからなり、前記糸切断手段が、前記第2のスライドブロックと、当該第2のスライドブロック下流側に面接触するカッター刃部材とを含むものからなることを特徴とするものである。
【0010】
さらにまた、請求項3に記載の発明は、請求項1あるいは請求項2に記載の弾性糸のクランプカッター装置であって、前記第2のスライドブロックにおける糸走行路の上流側通路幅を下流側通路幅より狭くしたことを特徴とするものでもある。
【0011】
さらにまた、請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の糸のクランプカッター装置であって、前記第1のスライドブロックを第1の方向に向けて往復移動させるための第1の駆動手段と、前記第2のスライドブロックを前記第1の方向に対して背反する第2の方向に向けて前記第1のスライドブロックの移動の後、前記第2のスライドブロックを移動させる順序で往復移動可能とさせるための第2の駆動手段とを有することを特徴とするものでもある。
【発明の効果】
【0012】
この発明になる請求項1に記載の糸のクランプカッター装置は、糸把持手段を構成する第1のスライドブロックを先に動かして、糸を確実に把持した後、糸切断手段を構成する第2のスライドブロックを時間差をもって動作するように構成したことにより、まず、糸の把持を確実に行った後に糸を切断することができ、ある程度の延伸状態にある糸を用いる場合、糸の伸縮による逃げを確実に防止することができる点において極めて有用である。
【0013】
また、請求項1に記載の糸のクランプカッター装置は、第1のスライドブロックと第2のスライドブロックが異なる材質なので、前記スライドブロック間の接触面における磨耗度が異なり、面接触が生じにくい結果、スライド抵抗の増加に伴うクランプ能力の悪化がない点においてもきわめて有用である。
【0014】
さらに、第1のスライドブロックを加工可能な材質とした場合、第1のスライドブロックにおける糸走行路の面取りによるR化が可能となる。R化を施すと、第一のスライドブロックで糸を把持したときに、糸が切れる可能性が低くなる。
【0015】
また、この発明になる請求項2に記載の糸のクランプカッター装置は、第1のスライドブロックと第2のスライドブロックとにより糸を把持するための糸把持手段を構成しているので、糸を把持する部位が、第1のスライドブロックと、この第1のスライドブロックの上流側に面接触する積層ブロックとの間(一箇所目)、並びに第1のスライドブロックと、この第1のスライドブロックの下流側に面接触する第2のスライドブロックとの間(二箇所目)の2箇所に形成され、且つ糸を把持する距離が長くなるなど、糸把持の確実性の向上、並びにクランプカットの成功率が可及的に向上する点において極めて有用である。
【0016】
また、この発明になる請求項3に記載の糸のクランプカッター装置は、第2のスライドブロックにおける糸走行路の上流側通路幅を下流側通路幅より狭くしたことにより、糸がカッター刃に寄せられるのを防ぐことができ、糸のクランプ前に、または同時に、糸が切断されてしまうという問題点を解消するものであり、更なるクランプカットの成功率の向上が図れ、その点においても極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、この発明になる糸のクランプカッター装置について、図面に示す具体的な実施例に基づいて詳細に説明する。図1は、この発明になる糸のクランプカッター装置の基本構成を、その作動態様と併せて示す説明図であって、図1Aは、当該装置における糸走行路中に糸が存在する状態を示す概略的な側断面図であり、図1Bは、当該糸を把持するべく糸把持手段を構成する第1のスライドブロックがスライド移動した状態を示す概略的な側断面図であり、図1Cは、当該糸を切断するべく糸切断手段を構成する第2のスライドブロックがスライド移動した状態を示す概略的な側断面図である。
【0018】
この発明になる糸のクランプカッター装置1は、基本的には、板厚重ね合わせ方向を糸走行方向に合わせ、糸SYの通過を許容する貫通した糸走行路RPを形成する複数の積層ブロック2の組み合わせにより構成されるものであり、これらの積層ブロック2が、上側の固定ブロック3、第1のスライドブロック4、第2のスライドブロック5およびカッター刃としての下側の固定ブロック6とからなっている。前記上側の固定ブロック3には、径寸法1でなる比較的小さな貫通孔7が設けてあり、前記第1のスライドブロック4には、径寸法1でなる比較的小さな貫通孔8が設けてあり、前記第2のスライドブロック5には、上流側において比較的小さな径寸法1の部分9aと、下流側において比較的大きな径寸法2の部分9bとからなる貫通孔9が設けてあり、前記下側の固定ブロック6には、カッター刃10を構成する貫通孔11が設けてある。これらの各ブロックに設けてある各貫通孔によって前記糸走行路RPが形成される。好ましい実施例において、前記第2のスライドブロック5は、上側部材5Aと下側部材5Bとの組み合わせによって構成されている。
【0019】
第1のスライドブロック4と第2のスライドブロック5を異なる材質にする方法として、第2のスライドブロックの材料としてステンレス等を用いる場合、第1のスライドブロック4の表面に硬質クロムメッキを施したり、第1のスライドブロック4をセラミックにより形成することが考えられる。
【0020】
また、面接触を防ぐため、第2のスライドブロック5の下側部材5Bを固定ブロック6と異なる材質としてもよい。
【0021】
本発明に係るクランプカッター装置が用いられる糸としては、弾性糸等が考えられる。
【0022】
この発明において、前記第1のスライドブロック4と前記第2のスライドブロック5とは、互いに背反する方向にスライド移動するように構成されており、前記上側の固定ブロック3と、第1のスライドブロック4と、前記第2のスライドブロック5における上側部材5Aとによって糸把持手段12を構成し、前記第2のスライドブロック5における下側部材5Bと下側の固定ブロック6とによって糸切断手段13を構成する。
【0023】
図1に示す実施例によれば、前記第1のスライドブロック4は、例えば、アクチュエータからなる第1の駆動手段14によって第1の方向D1に向けて距離L1にわたってスライド移動するように構成されており、前記第2のスライドブロック5は、第2の駆動手段15によって第2の方向D2に向けて距離L2にわたってスライド移動するように構成されている。
【0024】
このような構成になる糸のクランプカッター装置1において、糸SYを把持して切断する動作手順を、図1A、図1B、図1Cに示してある。まず、図1Aに示すように糸走行路RP内に糸SYが挿通している状態から、図1Bに示すように第1の駆動手段14を作動させることによって、第1のスライドブロック4が、第1の方向D1に向けて距離L1だけスライド移動する。この第1のスライドブロック4のスライド移動によって、糸SYが、上側の固定ブロック3の下流側面と第1のスライドブロック4の上流側面との間の第1の把持部16、並びに第1のスライドブロック4の下流側面と前記第2のスライドブロック5における上側部材5Aの上流側面との間の第2の把持部17で把持される。
【0025】
この第1の駆動手段14を作動させて、糸SYを把持した後、図1Cに示すように第2の駆動手段15を作動させることによって、第2のスライドブロック5が、第2の方向D2に向けて距離L2だけスライド移動する。この第2のスライドブロック5のスライド移動によって、糸SYが、第1のスライドブロック4の下流側面と前記第2のスライドブロック5における上側部材5Aの上流側面との間で、さらに長い距離にわたって確実に把持されるとともに、前記糸SYは、第2のスライドブロック5における下側部材5Bの下流側面と下側の固定ブロック6の上流側面とのスライドによって前記カッター刃10の作用により切断される。
【0026】
図3B各図は、この発明になる糸のクランプカッター装置1の他の実施例について、その作動態様と併せて示す概略的な側断面図である。この実施例になるクランプカッター装置1は、基本的には、板厚重ね合わせ方向を糸走行方向に合わせ、糸SYの通過を許容する貫通した糸走行路RPを形成する複数の積層ブロック2の組み合わせにより構成されるものであり、これらの積層ブロック2が、上側の固定ブロック3、第1のスライドブロック4、第2のスライドブロック5およびカッター刃としての下側の固定ブロック6とからなっている。前記上側の固定ブロック3には、径寸法1でなる比較的小さな貫通孔7が設けてあり、前記第1のスライドブロック4には、上流側において比較的小さな径寸法1の部分8aと、下流側において比較的大きな径寸法2の部分8bとからなる貫通孔8が設けてあり、前記第2のスライドブロック5には、貫通孔9が設けてあり、前記下側の固定ブロック6には、カッター刃10を構成する貫通孔11が設けてある。これらの各ブロックに設けてある各貫通孔によって前記糸走行路RPが形成される。
【0027】
この発明において、前記第1のスライドブロック4と前記第2のスライドブロック5とは、互いに背反する方向にスライド移動するように構成されており、前記上側の固定ブロック3と、第1のスライドブロック4と、前記第2のスライドブロック5とによって糸把持手段12を構成し、前記第2のスライドブロック5と下側の固定ブロック6とによって糸切断手段13を構成する。
【0028】
この実施例によれば、前記第1のスライドブロック4は、例えば、アクチュエータからなる第1の駆動手段によって第1の方向に向けてスライド移動するように構成されており、前記第2のスライドブロック5は、第2の駆動手段によって第2の方向に向けてスライド移動するように構成されている。
【0029】
このような構成になる糸のクランプカッター装置1において、糸SYを把持して切断する動作手順によれば、まず、図3B1 に示すように糸走行路RP内に糸SYが挿通している状態から、図3B2 に示すように第1の駆動手段を作動させることによって、第1のスライドブロック4が、第1の方向に向けてスライド移動する。この第1のスライドブロック4のスライド移動によって、糸SYが、上側の固定ブロック3の下流側面と第1のスライドブロック4の上流側面との間16、並びに第1のスライドブロック5の下流側面と前記第2のスライドブロック5の上流側面との間17で把持される。
【0030】
この第1の駆動手段を作動させて、糸SYを把持した後、図3B3に示すように第2の駆動手段を作動させることによって、第2のスライドブロック5が、第2の方向に向けてスライド移動する。この第2のスライドブロック5のスライド移動によって、糸SYが、第1のスライドブロック4の下流側面と前記第2のスライドブロック5の上流側面との間で、確実に把持されるとともに、前記糸SYは、第2のスライドブロック5の下流側面と下側の固定ブロック6の上流側面とのスライドによって前記カッター刃10の作用により切断される。
【0031】
ここで、図3Bの実施例において、第2のスライドブロック5がスライド移動した際、糸が切断されて、糸端が第1のスライドブロック4と第2のスライドブロック5との間で把持されなくても、従来のものに比べればクランプカットの成功率は向上する。但し、上記実施例の如く、第1の把持部16と第2の把持部17との複数で把持されることにより、更にクランプカット成功率を向上させることができる。
【0032】
また、図1、図3Aにて示す実施例において、第2のスライドブロック5に、上流側で比較的小さな径寸法1の部分9aと、下流側において比較的大きな径寸法2の部分9bとを形成していることにより、第1のスライドブロック4をスライド移動させた際、図3Aに示すように、小さな径寸法1の部分9aにより、糸SYのふらつきが規制される。これにより、第1のスライドブロック4をスライド移動させた際、第1の把持部16と第2の把持部17とにより、糸が把持されると同時に、糸SYがカッター刃10、下流側固定ブロックの貫通孔11に寄せられて、把持と同時またはその前に意図せずに糸SYが切断され、収縮により糸が逃げてしまうのを防ぐことができる。このような構成は、例えば、糸SYとして、約20デニール程度の細デニール糸を延伸状態で走行させて使用した場合、糸SYがカッター刃10、下流側固定ブロックの貫通孔11に寄せられ、触れただけで容易に切断されてしまう恐れがあるため、このような場合には本発明に係る構成を適用することが特に好ましい。
【0033】
また、上記のような小さな径寸法1の部分9aを形成したことにより、スライドした後の第1のスライドブロック4の貫通孔8と径寸法1の部分9aとの距離が長くなり、その分糸SYを把持する距離を稼ぐことができる。
【0034】
次いで、この発明になる糸のクランプカッター装置1の具体的な適用例について、図2、図4および図5に基づいて説明する。図2は、その外観図であって、制御系統の詳細を併せて示す斜視図、図4は、紡績機における紡績部とサクションノズルと糸継台車の構成を示す側面図、図5は、紡績機および糸継台車を示す正面図である。
【0035】
この発明になる糸のクランプカッター装置1は、図5に示すような紡績機50に対して有効に適用される。図5に示す紡績機50は、紡績ユニット51を機台長手方向に多数並設して構成されている。各ユニット51の上部にはドラフト装置56が設けられている。該ドラフト装置56は、後部のケンスからガイドを介して供給され、例えば、コアヤーンにおけるカバーリングとなるスライバ54をドラフト(延伸)して、所定の繊維束55に引き揃える。
【0036】
前記ドラフト装置56は、図4に示すように、バックローラ57、エプロンに巻き掛けされたミドルローラ58およびフロントローラ59とから主に構成されている。このドラフト装置56の下流には、前記フロントローラ59に近接して、空気紡績部63が配置されている。各紡績ユニット51は、ドラフト装置56内の繊維束55(スライバ54)に対して、糸SYを供給する糸供給装置20を備えている。空気紡績部63は、糸供給装置20から供給される糸SYと、ドラフト装置56によりドラフトされた繊維束55とに対して、空気紡績ノズルからの圧縮空気の旋回気流を作用させて紡績するものであり、糸SYをコア繊維として、その外側を繊維束55の繊維でカバーリングしたコアヤーン62を製造するためのものである。
【0037】
上記装置において、空気紡績部63の下流には、製造されたコアヤーン62に送り力を付与して、下流側に給送する糸送り装置としての糸送りローラ64が設けられている。この糸送りローラ64は、下側の常時回転しているデリベリローラと、該デリベリローラに接触して従動回転する上側のニップローラとの一対のローラにより構成されていて、回転中の両ローラ間に糸が把持されることにより、糸に送り力が付与される。紡績ユニット51の前面下部には、糸送りローラ64から給送されるコアヤーン62をパッケージ65に巻き取る巻取装置66が設けられている。
【0038】
前記紡績ユニット51の枠体は、前面が開放された断面C計上に形成され、長手方向に連続した内部空間にレール67、68が敷設されており、該レール67、68に沿って、糸継台車69が走行自在に配置されている。この糸継台車69には、上下方向に回動自在な吸引管であるサクションノズル71と、回動自在なサクションマウス72が設けられている。図中、参照符号70は、糸継部を示すものである。
【0039】
上記するような構成でなる一例の装置に対して、この発明になるクランプカッター装置1が効果的に適用される。このクランプカッター装置1は、上記紡績機50におけるドラフト装置56の上流側に設置される。前記クランプカッター装置1は、図2に示すように、電磁制御弁18の切り換わりにより、糸SYの端部を把持して、該糸の先端を切断した状態で停止される。このクランプカッター装置1における第1のスライドブロック4を操作するのがアクチュエータによって構成される第1の駆動手段14であり、第2のスライドブロック5を操作するのがアクチュエータによって構成される第2の駆動手段15である。前記第1の駆動手段14および第2の駆動手段15は、制御装置19により制御される電磁制御弁18に接続されていて、前記電磁制御弁18により制御された高圧エアによって作動するようになっている。
【0040】
図2に示す具体的な一実施例において、糸供給装置20は、給糸モータ21の回転駆動軸22に取り付けてある回転ローラ(糸繰出ローラ)23の回転制御によって、糸パッケージ24の糸SYを繰り出すようにした構成のものである。この図において、糸SYのパッケージ24は、水平の軸25に俯仰自在に取り付けられたクレドールアーム26に回転自在に支持されている。この糸パッケージ24は、回転ローラ23の上に接触して、その回転を受けるように構成されている。
【0041】
糸供給装置20の部分構成において、回転ローラ23の下流側に、エアサッカー装置28が固定されている。さらに、前記クランプカッター装置1は、このエアサッカー装置28の下流側に配置されている。
【0042】
エアサッカー装置28は、例えば、大きさ(径)の異なる糸通し孔を備えた複数の糸通し部材を備え、該複数の糸通し部材は、同軸上にある糸通しの孔の大きさが下流側、即ち、糸供給ガイド筒29側に向かって小さくなるように配置された構成とすることができる。これにより、糸通し部材の間隔からエアを効果的に逃がしつつ、糸通し孔の中心軸上を流れるエアにより糸SYの糸通しが行われるため、高圧のエアを噴射して高い送り力を得ることができ、糸SYを緩めせることなく、確実にドラフト装置56に供給することが可能になる。
【0043】
上記適用例においては、回転ローラ23とドラフト装置56との間で、所定の延伸比をもって糸SYを供給することにより、延伸状態で走行する糸SYを切断する際に、本発明に係るクランプカッター装置1は、特に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】図1は、この発明になる糸のクランプカッター装置の基本構成を、その作動態様と併せて示す説明図であって、図1Aは、当該装置における糸走行路中に糸が存在する状態を示す概略的な側断面図であり、図1Bは、当該糸を把持するべく糸把持手段を構成する第1のスライドブロックがスライド移動した状態を示す概略的な側断面図であり、図1Cは、当該糸を切断するべく糸切断手段を構成する第2のスライドブロックがスライド移動した状態を示す概略的な側断面図である。
【図2】図2は、この発明になるクランプカッター装置の適用例を示す外観図であって、制御系統の詳細を併せて示す斜視図である。
【図3】図3は、この発明になる糸のクランプカッター装置の具体的な構成を従来のものと比較して示す説明図であり、図3A各図は、この発明の最も好ましい具体的な実施例を、その作動態様と併せて示す概略的な側断面図であり、図3B各図は、この発明の他の実施例を、その作動態様と併せて示す概略的な側断面図であり、図3C各図は、従来の例になるクランプカッター装置を、その作動態様と併せて示す概略的な側断面図である。
【図4】図4は、紡績装置における紡績部とサクションノズルと糸継台車の構成を示す側面図である。
【図5】図5は、紡績装置および糸継台車を示す正面図である。
【符号の説明】
【0045】
1 クランプカッター装置
SY 糸
RP 糸走行路
2 複数の積層ブロック
3 上側の固定ブロック
4 第1のスライドブロック
5 第2のスライドブロック
5A 第2のスライドブロックの上側部材
5B 第2のスライドブロックの下側部材
6 下側の固定ブロック
7 上側固定ブロックの貫通孔
8 第1のスライドブロックの貫通孔
9 第2のスライドブロックの貫通孔
9a 第2スライドブロックの径寸法1の部分
9b 第2スライドブロックの径寸法2の部分
10 カッター刃
11 下側固定ブロックの貫通孔
12 糸把持手段
13 糸切断手段
14 第1の駆動手段
15 第2の駆動手段
16 第1の糸把持部
17 第2の糸把持部
18 電磁制御弁
19 制御装置
20 糸供給装置
21 給糸モータ
24 糸パッケージ
28 エアサッカー装置
29 糸供給ガイド筒


【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸の通過を許容する貫通した糸走行路を形成する複数の積層ブロックを糸走行方向に重ね合わせ組み合わせることにより構成され、前記複数の積層ブロックは、第1および第2のスライドブロックを含むものからなり、前記第1のスライドブロックの移動によって前記糸走行路内の糸を把持する糸把持手段と、前記糸把持手段により糸を把持した後、前記第2のスライドブロックの移動によって前記糸を切断する糸切断手段とを構成するものからなり、第1のスライドブロックと第2のスライドブロックが相互に異なる材質であることを特徴とする糸のクランプカッター装置。
【請求項2】
前記糸把持手段が、前記第1のスライドブロックと、当該第1のスライドブロック上流側に面接触する積層ブロックと、前記第1のスライドブロックの下流側に面接触する第2のスライドブロックとを含むものからなり、前記糸切断手段が、前記第2のスライドブロックと、当該第2のスライドブロック下流側に面接触するカッター刃部材とを含むものからなることを特徴とする請求項1に記載の糸のクランプカッター装置。
【請求項3】
前記第2のスライドブロックにおける糸走行路の上流側通路幅を下流側通路幅より狭くしたことを特徴とする請求項1あるいは請求項2に記載の糸のクランプカッター装置。
【請求項4】
前記第1のスライドブロックを第1の方向に向けて往復移動させるための第1の駆動手段と、前記第2のスライドブロックを前記第1の方向に対して背反する第2の方向に向けて前記第1のスライドブロックの移動の後、前記第2のスライドブロックを移動させる順序で往復移動可能とさせるための第2の駆動手段とを有することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の糸のクランプカッター装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−291403(P2006−291403A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−115207(P2005−115207)
【出願日】平成17年4月13日(2005.4.13)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】