説明

糸を清浄化する方法及び装置

長手方向に沿って動かされる糸から欠陥を除去する方法において、糸の長手方向に沿う糸の特性の測定値が検出される。測定値から糸パラメータ(M)の値が求められる。糸パラメータ(M)及び長手方向における糸パラメータ値の範囲により形成される事象領域(6)が準備され、この事象領域が2つより多い範囲(71〜75)に分割され、これらの範囲のうち少なくとも1つの範囲(71,73〜75)が許容される事象を規定し、少なくとも1つの他の範囲(72)が許容されない事象を規定する。糸パラメータ(M)の値が長手方向におけるその範囲(L)と共に事象領域(6)において分類される。本発明は特に飾り糸の清浄化に用いられ、許容される別の範囲(73〜75)が所望の飾りの除去を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項の上位概念に記載の、繊維機械において長手方向に沿って動かされる糸から欠陥を除去する方法及び装置に関する。その好ましい使用は紡糸機又は巻取り機で行われる。本発明はあらゆる種類の糸の清浄化に適しているが、特に飾り糸から質量又は太さの不均一な部分を除去するのに適している。
【背景技術】
【0002】
ヤーンクリヤラは、紡糸機又は巻取り機のような繊維機械において、走行する糸の品質監視のために使用される。ヤーンクリヤラは、糸の特性を検出する糸センサを持つ測定セルと、検出される糸特性が特定の品質基準を満たしているか否かを判断する評価装置とを含んでいる。ヤーンクリヤラは、性質の不十分な糸部分を除去する切断装置も含むことができる。品質基準は通常清浄化限界によって規定される。これは二次元カーテシアン座標系の象限における線であり、この座標系に検出される糸欠陥の長さに対して振幅が記入される。清浄化限界は象限を互いに相補的な2つの範囲に分割する。清浄化限界内の糸欠陥は許容され、清浄化限界外の糸欠陥は欠陥として記録される。清浄化限界は不連続な段状推移又は連続する推移を持っている。例えば米国特許第6374152号明細書は清浄化限界に関する。
【0003】
前記のカーテシアン座標系には、平行な直線により互いに区画される多数の長方形クラスから成る分類マトリクスが重畳されている。米国特許出願公開第4,169,399号明細書により、段状清浄化限界は分類アトリクスの分類限界に従う。
【0004】
国際公開第97/36032号は、光学的に検出される糸中の異物を、その反射及び長さ伸びに従って分類マトリクスにおいて分類し、その分類所属に応じて分離することを教示している。異物クラスは従って常に長方形であり、その位置は任意でなく、平行な直線のラスタにより規定されている。国際公開第97/36032号は、米国特許第6374152号明細書が開示しているような固有の清浄化限界を扱っていない。
【0005】
飾り糸は特別な糸であり、その構造又は繊維組成は通常の平滑糸とは相違している。それは織物又は編物において豊かにする要素として使用される。通常飾り糸は通の太い個所と細い個所いわゆる飾りを持ち、これらの個所の直径は2つの飾りの間にある糸部分いわゆる基幹部分の直径より著しく大きいか又は小さい。飾り糸を製造しかつ飾り糸を特徴づける方法及び装置は、例えば刊行物として国際公開第2005/037699号、第2005/038105号、第2005/042815号、第20007/056883号、第2007/056884号及び第2007/056885号から公知である。これらの刊行物のどれも飾り糸の清浄化に関するものではない。
【0006】
特別な手段なしでは飾りが有害な欠陥と思われて除去されるので、飾り糸の清浄化は困難である。飾り糸を清浄化する方法及び装置は国際公開第2005/047155号から公知である。ここでは基幹部分の直径又は質量の値が測定されて清浄化上限及び下限と比較される。他方飾りの直径又は質量の値も同様に清浄化上限及び下限と比較される。両方の清浄化限界対は、許される測定値が存在すべき基幹部分及び飾りの値の範囲を区画する。これら両方の範囲外にある測定値は、糸にある欠陥を示す。清浄化限界外にある最後にあげた欠陥について、十分短い欠陥が清浄化限界外にあっても、これらの欠陥も除去できないことによって、更にその長さを関係させることができる。国際公開第2005/047155号による方法及び装置の欠点は、有効性及び飾り糸の清浄化を行う可能性が非常に限られていることである。この方法及び装置は、正確に規定された飾り直径を持つ飾り糸にのみ適し、異なる直径を持つ飾りを殆ど処理できない。飾り長は全く考慮されないので、短かすぎる飾り及び長すぎる飾りや飾り直径に偶然一致する直径を持つ基幹部分の範囲の糸欠陥は検出されない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、糸特に飾り糸からの欠陥の精密化された除去を可能にすることである。例えば飾り糸における飾りの特性のような糸の特別な特徴が、従来技術より大幅に考慮されるようにする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題及び別の課題は、独立請求項に規定されているような本発明による方法及び本発明による装置によって解決される。有利な実施形態は従属請求項に示されている。
【0009】
“事象領域”は、二次元カーテシアン座標系の象限又はこのような象限の一部を意味し、この座標系の横軸は長手方向における糸パラメータ値の範囲を示し、その縦軸は目標値からの糸パラメータの偏差を示す。糸パラメータは例えば単位長さ又は糸直径当たりの糸質量であることができ、従って目標値は例えば単位長さ当たりの目標糸質量又は目標糸直径である。この事象領域にある点は“糸事象”又は単に“事象”と称される。
【0010】
本発明は、事象領域において、清浄化限界により互いに区画される2つの範囲に加えて、許容されるか又は許容されない事象を規定する別の範囲を規定する、という考えに基いている。このような別の第3の範囲の例は、清浄化限界外の許容されない範囲にある飾り糸の許容すべき飾りの範囲を規定する“清浄化窓”である。
【0011】
本発明により繊維機械例えば紡糸機又は巻取り機において長手方向に沿って動かされる糸から欠陥を除去する方法において、糸の長手方向に沿う糸の特性の測定値が検出される。測定値から糸パラメータの値が求められる。長手方向における糸パラメータ値の範囲を示す横軸及び目標値からの糸パラメータの偏差を示す縦軸を持つ二次元カーテシアン座標系の象限又は象限の一部である事象領域が準備される。事象領域が2つの範囲に分割され、これらの範囲のうち横軸及び縦軸に隣接し更に清浄化限界により区画されている第1の範囲が許容できる事象を規定し、第1の範囲に対して相補的な第2の範囲が許容できない範囲を規定する。糸パラメータの値が長手方向におけるその範囲と共に事象領域において分類される。事象領域に、第1の範囲において許容されない事象又は第2の範囲において許容される事象を規定する少なくとも1つの別の範囲が規定される。
【0012】
第1の範囲が“横軸及び縦軸に隣接している”という表現は、第1の範囲が関係する軸により直接区画されているか否か、又は関係する軸と第1の範囲との間隔が存在するグラフ表示が選ばれるか否か、未解決のままにしておく。重要なことは、関係する軸と第1の範囲との間に、許容される事象又は許容されない事象を規定する別の範囲がないことである。
【0013】
別の範囲は第1の範囲又は第2の範囲により実質的に包囲されていることができる。このような実施形態では、互いに隣接するそれぞれ2つの範囲のうち、第1の範囲が許容される事象を規定し、第2の範囲が許容されない事象を規定する。換言すれば、事象が異なる評価を受けるような範囲のみが互いに隣接する。その代りに別の範囲が第1の範囲及び第2の範囲と交差するか又は重なるか又は両方の範囲の1つに隣接していることができる。
【0014】
少なくとも1つの別の範囲がなるべく長方形、正方形、楕円形又は円形である。少なくとも1つの別の範囲の形状及び/又は位置が実質的に自由に規定可能である。即ち操作者は、入力装置により事象領域にある別の範囲の形状及び/又は位置を希望に従って選ぶことができ、その際別の範囲をいずれにせよ示す入力装置又は出力装置の万一の不連続な分解が限定されているだけである。
【0015】
特に糸が飾り糸であり、第1の範囲が飾り糸の基幹部分の許容される事象を規定し、少なくとも1つの第3の範囲が飾り糸の飾りの許容される事象を規定する時、本発明の長所が有効になる。例えば飾りに現れる飾り直径及び飾り長さを求めることによって、飾り糸が予め特徴づけられ、先行する特徴づけにより欠陥を除去するための範囲が規定される。こうして望ましくない欠陥が飾り糸から除去されるが、飾り糸に残らねばならない飾りは除去されない。
【0016】
許容されない事象が糸から除去され、例えば切断装置により切断される。その代りに、許容されない事象を糸から除去することなく、記録することができる。両方の手段の組合わせ、即ち許容されない事象の除去と記録も可能である。
【0017】
繊維機械例えば紡糸機又は巻取り機において長手方向に沿って動かされる糸から欠陥を除去するための本発明による装置は、事象領域を規定する制御装置を含んでいる。制御装置は、長手方向における糸パラメータ値の範囲を示す横軸及び目標値からの糸パラメータの偏差を示す縦軸を持つ二次元カーテシアン座標系の象限又は象限の一部である。事象領域が複数の範囲に分割され、これらの範囲のうち横軸及び縦軸に隣接し更に清浄化限界により区画されている第1の範囲が許容できる事象を規定し、第1の範囲に対して相補的な第2の範囲が許容できない範囲を規定する。装置が更に糸の長手方向に沿って糸の特性の測定値を検出する走査装置を含む。制御装置及び走査装置に接続される評価装置は、事象領域を記憶しかつ測定値から糸パラメータの値を求めかつ糸パラメータの値を長手方向におけるその範囲と共に事象領域において分類するのに役立つ。制御装置が事象領域を規定するように構成され、この事象領域に少なくとも1つの別の範囲が規定可能であり、この別の範囲が第1の範囲において許容されない値を規定するか又は第2の範囲において許容される事象を規定する。
【0018】
本発明による装置は、なるべく飾り糸から欠陥を除去するために使用される。
【0019】
本発明による繊維機械例えば紡糸機又は巻取り機は、繊維機械において長手方向に沿って動かされる糸の欠陥を除去するための本発明による装置を含んでいる。
【0020】
本発明によれば、事象領域を出力装置に表示することができる。しかしこのような表示は必要でない。なぜならば、本発明は表示なしてもすむからである。事象領域の本発明による準備、種々の範囲への事象領域の分割、及び事象領域における事象の分類は、仮想で行うことができる。
【0021】
本発明は、糸清浄化における大きい融通性という利点を与える。許容される事象及び許容されない事象の範囲は、任意に設定して清浄化すべき糸に合わせることができる。飾り糸、異なる構成の飾り例えば異なる飾り直径及び/又は異なる飾り長を持つ飾り糸の清浄化が可能である。短すぎる飾り及び長すぎる飾りが検出され、必要な場合除去される。しかしそれにもかかわらず正しい飾りは憶測の欠陥としては扱われない。
【0022】
図面により本発明が以下に詳細に説明される。その際主として飾り糸の清浄化の好ましい実施例が参照される。しかしこの例は本発明の一般性を制限するものではない。本発明は飾り糸とは異なる種類の糸にも使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】 本発明による装置を持つ本発明による巻取り機を概略的に示す。
【図2】 本発明による事象領域の第1実施例を示す。
【図3】 本発明による事象領域の第2実施例を示す。
【図4】 本発明による事象領域の第3実施例を示す。
【図5】 本発明による事象領域の第4実施例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
複数の巻取り個所51.1,51.2・・・,51.nを持つ本発明により巻取り機5が、図1に非常に概略的に示されている。本発明による装置1は巻取り機5に組込まれている。各巻取り個所51.1,51.2・・・,51.nにおいて、巻取り過程中に糸9が本発明による装置1の測定ヘッド2により監視される。
【0025】
測定ヘッド2は、長手方向xに動かされかつ基幹部分91及び飾り92,92′を持つ飾り糸9を走査する走査装置21を含んでいる。ここで“走査”いう概念は、飾り糸9のかるべく等間隔の個所における多数の測定値を順次記録することを意味する。このような走査装置21は公知であり、従ってここではこれ以上説明する必要はない。走査装置21は容量センサ、光センサ又は他のセンサを備えることができる。走査装置21内に複数の同じ又は異なるセンサを設けることもできる。走査装置21は、測定データを予め評価する評価手段を備えていてもよい。それはデータ導線上でなるべく電気出力信号を出力し、この出力信号は飾り糸9の質量、太さ又は他の特性の尺度である。データ導線は、測定値から糸パラメータ例えば単位長さ当たりの糸質量を求めるように構成されている評価装置22へ通じている。この目的のため評価装置22は適当なアナロク及び/又はディジタル評価手段例えばマイクロプロセッサ又はディジタル信号プロセッサ(DSP)を含んでいる。それはデータを記憶する記憶手段のような別の手段も含むことができる。評価装置22は独立のモジュールとして実現するか、又は走査装置21を持つ共通な測定ヘッドハウジング中でなるべくただ1つの印刷回路板上に集積することができる。
【0026】
角巻取り個所51.1,51.2・・・,51.nになるべく切断装置23も設けられている。これにより許容されない欠陥を持つ糸部分が飾り糸9から切断される。切断装置23は評価装置22から適当な切断指令を受ける。切断装置23は独立したモジュールとして実現するか、又は走査装置21及び/又は評価装置22を持つ共通な測定ヘッドハウジングに収容することができる。
【0027】
測定ヘッド2は、インタフェース変換器24を介して、本発明による装置1の中央制御装置4に接続されている。この接続を介して、測定ヘッド2が制御装置4により設定されかつ制御され、測定ヘッド2は求められた糸パラメータのようなデータを制御装置4へ伝送する。すべてのインタフェース変換器24と制御装置4との間の接続導線3は、例えばRS−485のような直列バスとして構成可能である。インタフェース変換器24は、更に巻取り個所51.1,51.2・・・,51.nの巻取り個所計算機52にも接続可能である。制御装置4は中央計算機41を備え、この中央計算機が、一方では測定ヘッド2から出力測定データを集めて更に処理し、他方では測定ヘッド2を設定するために用いられる。更に制御装置4は出力装置42及び操作者用入力装置43を持っている。出力装置42は、測定データ及び評価結果の出力及び/又は入力されるデータの図示に用いられる。入力装置43は、操作者によるデータの入力、特に糸9における許容されるか又は許容されない事象を規定する事象領域6の(後述する)範囲の入力及び/又は処理に用いられる。入力装置43は例えばキーボード又はコンピュータマウスを含むことができる。出力装置42及び入力装置43は一緒にセンサスクリーン(タッチスクリーン)として構成することができる。出力装置42及び入力装置43はデータ導線により中央計算機41に接続されている。従って評価装置22は、同様に出力装置42及び入力装置43に少なくとも間接に接続されているということができる。
【0028】
制御装置4は巻取り機5の制御計算機53に接続されている。制御装置4へ組込む代わりに、中央計算機41、出力装置42及び入力装置43を巻取り機5例えば制御計算機53に組込むことができる。データ導線はケーブルとして又は無線で実現することができる。
【0029】
図2は公知の分類マトリクス又は事象領域6を示し、縦軸62に沿って目標値からの糸パラメータの正の偏差の値が百分率で記入され、横軸61に沿って糸パラメータ偏差の長手方向又は長さの範囲が記入されている。糸パラメータは例えば単位長さ当たりの全質量M又は糸直径であってもより。この例では糸パラメータ偏差は百分率で示され、目標値は値100%を持っているが、他の値例えば絶対単位も可能である。横軸61は、特定の糸パラメータ偏差ΔMがどんな長さにわたって延びているかを示す。この例において両方の軸61,62は少なくともほぼ対数であるが、このことは必要でない。垂直線及び水平線により、事象領域6に長方形の領域が形成され、これらの領域は一般にクラスと称される。この事象領域において、糸事象例えば測定された糸パラメータ偏差ΔM及びその長さLを点として記入することができる。多くの事象の場合点雲(分散プロット)が生じる。
【0030】
更に図2の事象領域6に清浄化限界8が記入されている。清浄化限界8は、事象領域を2つの範囲71,72に、即ち偏差が許容される第1の範囲71と、第1の範囲71に対して相補的で偏差が切り除かれるか又は少なくとも許容されない欠陥として記録される第2の範囲72とに分割する。こうして清浄化限界8は、まだ許容されるために、存在する長さの事象が、目標値からどの程度離れていてもよいか、存在する偏差を持つ事象がどの程度長くてもよいかを示す。
【0031】
さて許容されない第2の範囲72に、別の第3の範囲73が記入されている。第3の範囲73は再び許容される事象を規定する。第3の範囲では欠陥の除去が取消されている、ということができる。この実施例では、第3の範囲73は長方形であり、第2の範囲72により完全に包囲されている。同じことが別の第4の範囲74についても当てはまる。同様に許容される事象を規定する別の第5の範囲75は、これに反し第1の範囲71と重なっている。第3の範囲73、第4の範囲74及び第5の範囲75は、例えば飾り糸9(図1参照)の所望の飾り糸92,92′が勘違いされた糸欠陥として切り取られるのを、紡糸することができる。
【0032】
図3に他の事象領域6が示されている。図2の事象領域と同じように、ただしここでは長さLに対して、糸パラメータMの負の偏差ΔMのみが記入され、従って例えば単位長さ又は糸直径当たり目標値0より小さい糸質量Mが記入されている。この事象領域6にも、負のパラメータ偏差ΔMがどの程度まで許容されるかを示す清浄化限界8が記入されている。第1の範囲71にある事象は許容され、これに反し第2の範囲72にある事象は許容されない。第3の例えば長方形の範囲73は、第2の範囲72内で許容される事象を規定する。
【0033】
図2及び3の事象領域6の長さに関する横軸61が重なり、縦軸62が負の値から正の値へ延びる偏差ΔMの目盛りを持つように、これらの図の事象領域6が組合わされているグラフ表示は、しばしば見出される。このような表示が図4に示されている。それにもかかわらずこのような組合わされる表示は、この明細書において使用される定義による2つの事象領域6,6′は座標系の異なる象限であり、これらの象限に目標値0からの異なる方向の偏差ΔM(正及び負の偏差)が記入されている。両方の事象領域6,6′の各々は、清浄化限界8により、許容される事象及び許容されない事象に対する2つの互いに相補的な範囲71,71′及び72,72′に分割されている。更に第2の範囲72,72′に許容される事象を規定する別の範囲73,73′,74,74′,75が規定されている。別の範囲73,74′はそれぞれ第2の範囲72又は72′により完全に包囲されている。別の範囲75,73′は、それぞれ第1の範囲71又は71′及びそれぞれ第2の範囲72,72′と交差している。別の範囲74は第1の範囲71に隣接している。
【0034】
図5は事象領域6にある範囲の形状の若干の別の例を示している。第1の範囲71は、2つの方向に、事象領域6を区画する軸61,62と連続及び/又は段状の曲線8により規定可能であり、許容される事象を規定する。第2の範囲72は実質的に第1の範囲71に対して相補的であり、許容されない事象を規定する。第2の範囲72により完全に包囲される第3の範囲73は、楕円又は円であってもよい。第1の範囲71と重なる第4の範囲74は、凹な1つ又は複数の隅を持つ多角形であってもよい。第2の範囲72により完全に包囲される第5の範囲75は凸な多角形であってもよい。第1の範囲71により完全に包囲される第6の範囲76は、任意の形状の直線又は曲線により区画されることができる。第3の範囲73、第4の範囲74及び第5の範囲75は、許容されない範囲72内で許容される事象を規定し、第6の範囲76は許容される範囲71内の許容されない事象を規定する。
【0035】
本発明による方法及び本発明による装置1の作用が、図1及び2により説明される。例えば繊維の飾り糸9(図1参照)を清浄化するため、即ちその中に含まれる欠陥個所を切取るために、この飾り糸が公知のように走査装置2を通って方向xへ動かされる。その際データ導線33を介して、少なくとも1つのパラメータ例えば飾り糸9の単位長さ当たりの質量又は直径の値が、評価装置22へ連続的に与えられる。評価装置には、求められる糸パラメータを場合によっては記憶しかつ事象領域6′におけるその位置を連続的に求めるプログラムが記憶され、かつ実行可能である。それにより、飾り糸92,92′に属する事象が清浄化限界8外即ち第2の範囲72(図2参照)にあることが予想される。ここで第3の範囲73、第4の範囲74又は第5の範囲75にある事象が飾り糸9の許容される飾り92,92′としてそのままにされることによって、それ以外の区別が行われる。これに反しこれらの許容される範囲73〜75外の範囲72にある事象は、許容されない欠陥として認識され、飾り糸9から切り取られる。許容される飾り92,92′が目標値0から限られた質量偏差ΔM又は直径偏差及び長手方向xにおける限られた長さLを持っているので、このことが可能である。従って各飾り92,92′は許容されない欠陥ではないが、太い個所は許容される飾りではない。
【0036】
別の許容される範囲73〜75は前もって決定することができる。そのため国際公開第2007/056883号、国際公開第2007/056884号又は国際公開第2007/056885号に開示されているように、飾り糸を特徴づける公知の方法を使用することができる。こうして除去すべき飾り糸9は、例えば実験室機器又は本発明による装置1自体で前記の方法により前もって特徴づけることができる。後者の場合、特徴づけのため、欠陥個所を除去する切断装置23の切断機能が停止される。この特徴づけは、飾り糸9に現れる飾り92,92′の事象領域6における位置を求める。飾り92,92′の位置は、入力装置43及び中央計算機41又は適当なインタフェースを介して評価装置22へ与えられる。飾り92,92′の位置に基いて、別の許容される範囲73〜75が規定され、これらの範囲では、飾り92,92′が除去されないようにする。許容される範囲73〜75の規定は自動的に又は手動で行うことができる。別の許容される範囲73〜75は任意の形状を持つことができ、そのうち最も簡単なものは長方形、正方形、楕円及び円である。これらの範囲は事象領域6において飾り92,92′の平均位置と一致するか、又はその代りに少し大きいか又は小さい。事象領域6における飾り92,92′の位置を出力装置42に表示し、別の許容される範囲73〜75を操作者によって入力装置43例えばコンピュータマウスを用いて自由に規定又は処理すると有利であり、その際これも同様に出力装置42に表示される。こうして操作者の経験も、別の許容される範囲73〜75の規定に利用することができる。
【0037】
本発明が上述した実施例に限定されないことは自明である。本発明を知れば、当業者は、本発明の対象に属する別の変形例も引き出すことができる。このような変形例は例えば上述した実施例の組合わせであってもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 装置
2 測定ヘッド
21 走査装置
22 評価装置
23 切断装置
3 データ導線
4 制御装置
41 中央計算機
42 出力装置
43 入力装置
51.1,51.2,・・・,51.n 巻取り個所
52 巻取り個所計算機
53 制御計算機
6,6′ 事象領域
61 横軸
62,62′ 縦軸
71,71′ 許容される第1の範囲
72,72′ 許容されない第2の範囲
73,73′,74,74′,75 許容される別の範囲
76 許容されない別の範囲
8,8′ 清浄化限界
9 飾り糸
91 基幹部分
92,92′ 飾り
x 飾り糸の長手及び運動方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維機械例えば紡糸機又は巻取り機(5)において長手方向(x)に沿って動かされる糸(9)から欠陥を除去する方法であって、
糸(9)の長手方向(x)に沿う糸(9)の特性の測定値が検出され、
測定値から糸パラメータ(M)の値が求められ、
長手方向(x)における糸パラメータ値の範囲(L)を示す横軸(61)及び目標値からの糸パラメータ(M)の偏差(ΔM)を示す縦軸(62)を持つ二次元カーテシアン座標系の象限又は象限の一部である事象領域(6)が準備され、
事象領域が2つの範囲(71,72)に分割され、これらの範囲のうち横軸(61)及び縦軸(62)に隣接し更に清浄化限界(8)により区画されている第1の範囲(71)が許容される事象を規定し、第1の範囲(71)に対して相補的な第2の範囲(72)が許容されない事象を規定し、
糸パラメータ(M)の値が長手方向(x)におけるその範囲(L)と共に事象領域(6)において分類されるものにおいて、
事象領域(6)に、第1の範囲(71)において許容されない事象又は第2の範囲(72)において許容される事象を規定する少なくとも1つの別の範囲(73〜76)が規定されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
別の範囲(73〜76)が第1の範囲(71)又は第2の範囲(72)により実質的に包囲されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
別の範囲(75)が第1の範囲(71)及び第2の範囲(72)と交差するか又は両方の範囲(71,72)の1つに隣接している、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つの別の範囲(73〜75)が長方形、正方形、楕円形又は円形である、先行する請求項の1つに記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つの別の範囲(73〜75)の形状及び/又は位置が実質的に自由に規定される、先行する請求項の1つに記載の方法。
【請求項6】
糸(9)が飾り糸であり、第1の範囲(71)が飾り糸(9)の基幹部分(91)の許容される事象を規定し、少なくとも1つの第3の範囲(73〜75)が飾り糸(9)の飾り(92,92′)の許容される事象を規定する、先行する請求項の1つに記載の方法。
【請求項7】
飾り糸(9)が予め特徴づけられ、先行する特徴づけにより欠陥を除去するための範囲(73〜76)が規定される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
許容されない事象が糸(9)から除去される、先行する請求項の1つに記載の方法。
【請求項9】
繊維機械例えば紡糸機又は巻取り機(5)において長手方向(x)に沿って動かされる糸(9)から欠陥を除去する装置であって、
長手方向(x)における糸パラメータ値の範囲(L)を示す横軸(61)及び目標値からの糸パラメータ(M)の偏差(ΔM)を示す縦軸(62)を持つ二次元カーテシアン座標系の象限又は象限の一部である事象領域(6)を規定する制御装置(4)を含み、
この事象領域が2つの範囲(71,72)に分割され、これらの範囲のうち横軸(61)及び縦軸(62)に隣接し更に清浄化限界(8)により区画されている第1の範囲(71)が許容される事象を規定し、第1の範囲(71)に対して相補的な第2の範囲(72)が許容されない範囲を規定し、
糸(9)の長手方向に沿って糸(9)の特性の測定値を検出する走査装置(2)を含み、
更に制御装置(4)及び走査装置(2)に接続されて、事象領域(6)を記憶しかつ測定値から糸パラメータ(M)の値を求めかつ糸パラメータ(M)の値を長手方向(x)におけるその範囲(L)と共に事象領域(6)において分類する評価装置(22)を含んでいるものにおいて、
制御装置(4)が事象領域(6)を規定するように構成され、この事象領域に少なくとも1つの別の範囲(73〜76)が規定可能であり、この別の範囲が第1の範囲(71)において許容されない値を規定するか又は第2の範囲(72)において許容される事象を規定する、
ことを特徴とする、装置。
【請求項10】
制御装置が事象領域(6)を表示する表示装置(42)を含んでいる、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
制御装置(4)が範囲(71〜76)の入力及び/又は処理用入力装置(5)を含んでいる、請求項9又は10に記載の装置。
【請求項12】
装置(1)が糸(9)から許容されない事象を除去する切断装置(23)を含んでいる、請求項9〜11の1つに記載の装置。
【請求項13】
飾り糸(9)から欠陥を除去するための請求項9〜12の1つに記載の装置(1)の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−529016(P2011−529016A)
【公表日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−521420(P2011−521420)
【出願日】平成21年7月14日(2009.7.14)
【国際出願番号】PCT/CH2009/000254
【国際公開番号】WO2010/009565
【国際公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(503169552)ウステル・テヒノロジーズ・アクチエンゲゼルシヤフト (37)
【Fターム(参考)】