説明

系統的に不活性な、非抗体性のTNFリガンド融合タンパク質を用いた、TNFリガンドファミリーのメンバーの選択的で局所的な活性化

本発明は、ペプチドリンカーにより接続された、エフェクタードメインおよび細胞表面分子結合ドメインを有するポリペプチドに関する。上記エフェクタードメイン、特に細胞外ドメインは、TNF(腫瘍壊死因子)リガンドファミリー(モジュール1)のメンバーの断片であり、それ自体は、生物学的に不活性、またはその活性レベルが制限されている。上記細胞表面分子結合ドメイン(モジュール2)は、原形質膜の表面構造、好適には膜タンパク質に選択的に結合するアミノ酸部分である。しかし、上記細胞表面分子結合ドメインは、免疫グロブリン由来ではない。また、本発明は、上記ポリペプチドをコードする核酸構成物、上記核酸構成物を有するベクター、上記ベクターが形質移入された宿主細胞、本発明の対象物を含む薬学組成物、本発明に基づくポリペプチドを調製する方法、および本発明の対象物を治療のために用いる方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、エフェクター結合ドメインおよび細胞表面分子結合ドメインを有するポリペプチドに関する。これらの結合ドメインは、ペプチドリンカーによって結合されている。上記のエフェクタードメインは、TNF(腫瘍壊死因子)リガンドファミリー(モジュール1)のメンバーの断片、特に細胞外ドメインであり、それ自身は、生物学的に不活性、またはその活性が制限されている。
【0002】
上記細胞表面分子結合ドメイン(モジュール2)は、原形質膜の表面構造、好適には膜タンパク質、と選択的に結合するアミノ酸部分である。しかし、上記細胞表面分子結合ドメインは、免疫グロブリン由来ではない。また、本発明は、上記ポリペプチドをコードする核酸構成物、上記核酸構成物を有するベクター、上記ベクターが形質移入された宿主細胞、本発明の対象物を含む薬学組成物、本発明に基づくポリペプチドを調製する方法、および、本発明の対象物を治療のために用いる方法を提供する。
【0003】
試験管内実験において、TNFリガンドファミリーのメンバー、例えばTRAIL(TNF関連アポトーシス誘発リガンド)およびFasLのようなサイトカインは、動物およびヒト由来の多くの腫瘍細胞に対して、強力なアポトーシス(プログラム細胞死)作用を有することが示された。なお、TRAILは、Apo2Lとも呼ばれている(Wiley et al., (1995) Immunity 6, 673-682; Pitti et al., (1996) J. Biol. Chem. 271, 12687-12689))。
【0004】
また、TRAILは、悪性でない細胞を損傷しないことが明らかにされている。さらに、前臨床動物実験(マウス、猿)において、TRAILには、急性毒性、または、治療への使用を禁止すべきであると見なされる、その他の全身性副作用のいかなる徴候も見出されなかった(Walczak et al., (1999) Nat. Med. 5, 157-163; Ashkenazi et al., (1999) . Clin. Invest. 104, 155-162)。しかしながら、本来のヒト肝細胞に関する、より最近の試験管内実験において、例えば、組換え技術により調製されたTRAIL産物、または、天然型(natuirlich vorkommenden Form)のサイトカインTRAILである膜局在型(membranstaendigem)TRAILが、強力な細胞毒性作用をもつことが示された(Jo et al., (2000) Nat. Med. 6, 564-567; Ichikawa et al., (2001) Nat. ed. 7, 954-960)。
【0005】
このように、副作用が発生することから、生理活性を有し、それゆえ、膜局在型TRAILと実質的に同じ作用を有しているTNFリガンドファミリーの特定の可溶性変異体(特に、TNF、FasL、TRAIL、CD40L)を、臨床的に全身に対して用いることは認められていない。また、これらのリガンドに対応する受容体を活性化するアゴニストの抗体(agonistische Antikoerper)にも同様のことが当てはまる。このように、その受容体(Fas)に対するアゴニストの抗体は、生体内で強力な肝細胞毒性を有するために、例えば、アポトーシスサイトカインの原型であるFasL(Fas受容体(Fas,CD95)のリガンド)は、安全性への憂慮から、臨床用途に用いられなかった(Ogasawara et al., (1993) Nature 364, 806-809)。
【0006】
さらに、可溶性のFasLは、事実上、膜局在型FasLとは対照的に、生理活性を有さないことも示された(Schneider et al., (1998) J. Exp. Med. 187, 1205-1213)。
【0007】
したがって、従来技術に基づき現在利用可能とされるTNFリガンドファミリーの変種は、「生理活性が欠如している」、または「副作用が強い」のいずれかの理由から、腫瘍の治療などの治療用途に用いることができない、またはその使途が非常に限定されたもの(例えば、単離された肢の灌流培養条件下におけるTNFに用いる場合など)となっている。
【0008】
WO02/22680には、例えば、それ自身は生物学的に不活性、または活性が制限されているTNFサイトカインなどの断片が、ペプチドリンカーを介して、抗原結合性抗体または抗原結合性抗体の断片と結合している融合タンパク質が開示されている。しかしながら、特定の細胞表面分子に利用できる、適切な抗体(または抗体の断片)が存在しないことや、例えば、適切な特異性をもって結合しないなどの、抗原結合反応が期待通りに行われないことが珍しくないために、これに代わるシステムが必要とされている。
【0009】
これら問題点を顧みて、本発明の目的は、従来技術に代替的なシステム、特に抗体に非依存性のシステムを提供することである。抗体に非依存性の上記システムにおいては、TNFファミリーのリガンド(または、その断片)の活性を、制御することができ、かつ組織特異的または細胞特異的な様式で、誘導できる。したがって、臨床用途において、標的組織に属さない細胞または組織で発生する可能性のある、好ましくない全身性副作用を回避する、または、少なくとも、大幅に減ずることが可能となる。
【0010】
上記目的は、請求項において特徴付けられる本発明の実施形態によって達成される。
【0011】
具体的には、本発明は、細胞表面分子結合ドメイン(モジュール2とも呼ばれる)を含む断片(1)と、ペプチドリンカーである断片(2)と、断片(3)とを含んでいる。上記断片(3)は、生物学的に不活性、または活性が制限されている、TNFリガンドファミリー(以下、「TNFサイトカイン」または「TNF受容体リガンドファミリー」と称する場合もある)のメンバーの断片、または、その機能的な変種の断片(これら断片はモジュール1とも呼ばれる)を含んでいる。また、上記細胞表面分子結合ドメインは、免疫グロブリン由来のものではない。さらに、上記細胞表面分子結合ドメインは、TNFリガンドファミリーのメンバーの断片、または、断片(1)が細胞表面分子に結合する時のみ、生物学的に完全に活性化される、機能的な変種の断片である。
【0012】
ある好適な実施形態においては、本発明のポリペプチド(=本発明の融合タンパク質=本発明のタンパク質構成物)の断片(1)〜(3)は、N末端からC末端に順番に配置される。
【0013】
本発明は、天然の膜局在型TNFリガンドファミリーのリガンドが、当該生物によるタンパク質分解処理を受けて、細胞外ドメインに対応する可溶性型となると、上記リガンドは、生物学的に完全に不活性になる、または、その活性が制限されるという観察に基づくものである。例えば、上記リガンドが、特定のサブタイプの膜受容体上でしか活性をもたないといった観察に基づくものである。また、上記リガンドの細胞外ドメインに該当する、組換えにより調製された派生物(deribatives)にも、このことが当てはまる。
【0014】
興味深いことに、このような生物学的に不活性な可溶性のリガンドは、確実に、それらに相補的な膜受容体に結合することができる。しかし、情報伝達や細胞反応(zellulaeren Reaktion)の開始といったような受容体の活性化を行うことできない。不活性である、または活性が制限されている、上記タイプのリガンド(モジュール1)は、以下のような別のペプチド成分(モジュール2)と融合され、上記ペプチド成分が細胞膜への結合を促進する時に、その生物学的な活性を完全に回復させることが、本発明の観察により明らかにされている。なお、上記ペプチド成分(モジュール2)は、抗体または抗体断片を含んでおらず、また、TNFリガンド部分とは独立して、細胞の膜局在型構造に特異的に結合することができるペプチド成分である。
【0015】
このようにして達成される、モジュール1の生理的機能の再構築は、モジュール2によって認識される標的細胞自身が、融合タンパク質に含まれるTNFリガンド断片(モジュール1)に対応する適切な受容体を発現する場合、上記細胞自身と、隣接した細胞とに対して有効となる。
【0016】
本発明の融合タンパク質の細胞表面分子結合ドメイン(断片(1)またはモジュール(2))は、適切な表面構造をもつ細胞への、融合タンパク質の結合を媒介する。本発明の特徴は、特定のモジュールに基づいて2つの特性を有しており、これらの特性によって、タンパク質全体が、用いられたモジュールのいずれもが有さない特性、および、予測できない特性を得るようになる、ということにある。
【0017】
これら特性の1つ目は、融合タンパク質の細胞表面分子結合ドメインは、抗体または抗体に由来する断片(scFVなど)が用いられる従来技術に相当する原理原則によって達成されるものではないということである。しかし、我々の予測に反して、従来から用いられている抗体の抗原結合ドメインよりも、むしろ、その他の細胞表面分子結合ドメインのほうが、特定の細胞表面構造(特に膜タンパク質)に結合することによって、それ自身は不活性または活性が制限されているTNFサイトカインの断片に、標的細胞に対して特異的に向けられる、完全で、それゆえ非常に効果的なエフェクター作用を、予想外に付与することができる。
【0018】
細胞表面構造に結合するための好適な非免疫グロブリンドメインの例としては、ペプチドホルモンもしくはサイトカイン、短鎖ペプチド、並びに膜局在型リガンドの受容体(好ましくは、特異的な結合能を有する、該受容体の断片)が挙げられる。
【0019】
2つ目の特性は、エフェクタードメイン自身が、融合タンパク質においてそうであるように、上記細胞表面分子結合ドメインによって認識される表面構造を有さない細胞上では、生物学的に不活性、または活性が低い、例えば、エフェクタードメインに対応する受容体が活性化されないという事実にある。完全長の融合タンパク質にのみ特有の、驚くべき特性は、融合タンパク質のエフェクタードメイン(それ自身は不活性または活性が制限されている、TNFサイトカインの断片)は、細胞表面分子結合ドメインにより認識される表面構造を発現する細胞に結合した後においてのみ、生物学的に活性化状態になるということである。
【0020】
このように、本発明のポリペプチドのエフェクタードメインは、細胞表面分子結合モジュールに対応する表面構造を有する細胞上、または、そのような表面構造を有する細胞と隣接する細胞上に存在する、当該エフェクタードメインに対応する受容体のみを活性化する。本発明の融合タンパク質は、このように、個々の構成要素(モジュール1またはモジュール2)でもなく、活性型のエフェクタードメインでもなく、細胞表面分子結合ドメインにより認識される表面構造を発現する細胞(またはその細胞に隣接する細胞)上の、当該エフェクタードメインに対応する受容体を、選択的に活性化する。
【0021】
したがって、この本発明のポリペプチドのこの画期的な特徴(選択的かつ局所的な受容体の活性化)によって、活性型のTNFサイトカイン(本発明に用いられるエフェクタードメインが得られるサイトカイン)、または、それに対応する受容体を活性化する、従来技術において知られているアゴニストの抗体によって引き起こされる全身性副作用を避けることが可能になる。したがって、本発明のポリペプチドは、生物体の全身の中で、標的部位に局所的な作用を発生させることを可能にするものである。
【0022】
細胞表面分子結合ドメインにより認識される表面構造が、エフェクタードメインが活性状態であるべき細胞、部位、または器官に、選択的に存在する、または、少なくとも密集するように、当該細胞表面分子結合ドメインは、好都合に選択される。さらに、凝縮などによって融合タンパク質が自己活性化しないように、上記細胞表面分子結合ドメインは選択される。
【0023】
TNF(腫瘍壊死因子;GenBank アクセッションNo.NM_000594)、TRAIL(腫瘍壊死因子関連アポトーシス誘導リガンド;GenBank アクセッションNo.U37518、Apo2Lとも呼ばれる)、CD40L(GenBank アクセッションNo.NM_011616)、FasL(GenBank アクセッションNo.U11821)などのTNFリガンドファミリーのメンバーは、アポトーシスおよび/または免疫系制御作用を有している。少数の例外は別として、TNFリガンドファミリーのメンバーは、タイプIIの膜タンパク質である。しかし、多くの場合、特異的なタンパク質分解あるいは選択的スプライシングにより、膜局在型から、可溶性型が得られる。特に、可溶性型は、遺伝子工学的手法によっても調製することができる。
【0024】
可溶性型および膜局在型のTNFリガンドファミリーは、対応する受容体のファミリー、すなわち、TNF受容体ファミリーのメンバーと相互作用することによって、その生物学的活性を発現する。ある場合によっては、可溶性型および膜局在型のTNFリガンドファミリーのメンバーは、その生理活性が大きく異なる。例えば、可溶性TNFは、TNF−R1の非常に強力な活性化因子であるが、TNF−R2には作用を及ぼさない、または、作用が極めて制限されている。一方で、上記と同じTNFリガンドの膜局在型は、両方のTNF受容体を同じように活性化することができる。可溶性型および膜局在型のTNFリガンドファミリーのメンバーが異なる性質を示す上記以外の例は、とりわけ、FasL、CD40L、およびTRAILにおいて顕著に見られる。
【0025】
したがって、ある好適な実施例においては、本発明のポリペプチドは、断片(3)に、TNF受容体リガンドファミリーのメンバーの可溶性型のアミノ酸配列、そのようなアミノ酸配列の変種、または断片を含んでいる。
【0026】
本発明における、「変種」とは、本来の配列の少なくとも一部分、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも80%以上を含み、本来の配列とは異なる配列を意味するものであると、一般的には理解される。例えば、1つ以上の欠失、1つ以上の挿入、および/または少なくとも1つの変異により、本来の配列とは異なる配列を意味するものである。
【0027】
適切な本来の配列との配列相同性は、少なくとも90%であることが好ましく、少なくとも95%であることがより好ましく、少なくとも97%であることがさらに好ましい。機能的断片は、可溶性型のTNF受容体リガンドファミリーのメンバーの、N末端部、C末端部、またはその中間部が削られた配列である。また、本発明において、これら断片のうち、生物学的に活性をもつ変種が開示されている。本発明の観点から、上記の派生された変種は、選択的に受容体に結合する特性を有していることが好ましい。ここで、上記変種は、例えばそれらの特定の生理活性または他の特性(安定性)に関して最適化させることが可能である。
【0028】
本発明に基づいた構成物の作用様式は、特定の受容体に対して、膜分子として、独占的に活性をもつ、または、特に有効に作用する、TNF受容体リガンドファミリーの全てのメンバーに対して用いることができる。FasLおよびCD40Lとは別に、これらメンバーには、TNF、TRAIL、41BB、CD30L、およびOx40Lが含まれる。したがって、本発明のポリペプチドのモジュール1(断片(3))において、特に好適なTNF受容体リガンドファミリーのメンバーは、本来、膜分子としてのみ、それらの相補的な受容体を活性化するTNF受容体リガンドである。
【0029】
特に好適な断片(3)としては、TRAIL、FasL、CD40、41BBL、CD30L、Ox40L、もしくはTNFの、可溶性細胞外ドメイン、可溶性細胞外ドメインの機能的な変種、または、可溶性細胞外ドメインの機能的な断片が挙げられる。
【0030】
断片(1)(細胞表面分子結合ドメイン、モジュール2)と断片(3)(TNF受容体リガンド断片、モジュール1)との間にあるリンカーである断片(2)は、本発明のポリペプチド構成物において、例えばフレキシブルな化合物(flexible Verbindung)の形態をとっている。しかし、断片(2)の形態は、以下の典型的な構成物(A)および(B)において示すように、関連した(betreffenden)TNF受容体リガンド断片(モジュール1)が、本来有している三量体形成特性に不利な影響を与えないことが好ましい。
【0031】
あらゆる天然型の、または合成によって調製されたペプチド配列を、断片(2)として用いることができる。原理的には、上記リンカーは、あらゆる生物、好ましくは脊椎動物、より好ましくは哺乳類、特にヒトが本来もつ配列、または変化した(部分的な)配列であってもよい。その他の適したリンカーの例としては、超二次構造を形成することによって三量体を生じるタンパク質の、あらゆる配列断片が挙げられる。いかなる場合においても、本発明のポリペプチドの断片(2)のリンカーとして用いられるこれら天然型のポリペプチドの配列、またはそれらの断片は、本発明の意義において、また、上記の定義にしたがって、生物学的に活性を有する、それらの変種の形態で生じてもよい。
【0032】
本発明のポリペプチドの細胞表面分子結合ドメイン(断片(1))は、例えば、細胞表面分子との特異的な相互作用に必要とされる、膜局在型リガンドの受容体の断片を含んでいてもよい。本発明の枠組みに含まれる、好適なポリペプチドとしては、受容体、特にTNF受容体ファミリーのメンバーの可溶性リガンド結合ドメインを含むものが挙げられる。このような場合、受容体部分は、断片(3)に存在するTNF受容体リガンド断片に相補的であってはならない。
【0033】
別の好適なポリペプチドの実施形態においては、断片(1)は、少なくとも、細胞表面分子との特異的な相互作用に必要とされる、膜局在型受容体のリガンドの断片を含んでいる。したがって、細胞型の受容体を認識する可溶性リガンドまたはポリペプチドは、本発明において、適している。また、断片(3)(モジュール1)とは異なるTNF受容体リガンド断片もまた、適している。断片(1)が、哺乳類、特にヒト由来の可溶性リガンド/受容体断片であり、さらに、哺乳類、特にヒトの細胞および組織上の、明らかに相補的な標的構造と特異的に相互作用する場合が、本発明のポリペプチドに特に好適である。
【0034】
本発明のポリペプチドの断片(1)は、腫瘍細胞内、もしくは免疫系が活性化された細胞(例えば、T細胞、B細胞、マクロファージ、樹状細胞状)上において、選択的に、または支配的に発現している細胞表面タンパク質に対して、特異性を有することが好ましい。このような、本発明のポリペプチドの断片(1)が結合できる、選択的または支配的に発現される細胞表面タンパク質の例としては、以下のものが挙げられる。すなわち、腫瘍組織においては、例えば、VEGFRもしくはVEGFR/VEGF複合体、あらゆる変異型および野生型のEGF受容体ファミリー、またはCD30が挙げられる。活性化T細胞においては、例えば、CD40LまたはIL2受容体が挙げられる。また、B細胞においては、例えば、Baff−RまたはCD40が挙げられる。さらに、マクロファージにおいては、例えば、膜局在型TNFまたはB7リガンドが挙げられる。加えて、樹状細胞においては、例えば、B7リガンドが挙げられる。
【0035】
したがって、本発明のポリペプチドの断片(1)として好適なものとしては、以下のものが挙げられる。すなわち、EGFなどの成長因子、および、VEGFなどの血管形成因子といったタンパク質またはペプチドホルモンが挙げられる。さらに、あらゆるTNF受容体のスーパーファミリーのメンバー、特に、TNF−R2、CD30、および、CD40のような受容体、並びに、CD28のような他の受容体の、可溶性細胞外ドメインが挙げられる。
【0036】
本発明の好適なポリペプチドは、このように、組換え融合タンパク質の形態をとる。この組換え融合タンパク質は、基本的に、規定された順番で、以下の構造構成因子(モノマー)を含んでいる。すなわち、例えば、N末端に位置し、リガンドもしくは受容体の断片、またはペプチドを含む断片(1)と、リンカー配列を含む断片(2)と、例えば、C末端に位置し、ヒトのFasL、TNF、またはCD40Lの細胞外ドメインを含む断片(3)とを含んでいる。これと同様に、例えば、CD30L、Ox40L、またはその他のTNFファミリーのメンバーを、本発明の適切なポリペプチドにおける断片(3)として用いることができる。
【0037】
また、本発明は、上述のような本発明の融合タンパク質をコードするドメイン、または、本発明のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列(特に、DNA配列)、または、本発明のポリペプチドをコードする領域を含むヌクレオチド配列(特に、DNA配列)を有する核酸(核酸構成物)を提供する。上記のような核酸構成物は、発現ベクター内で発現できることが好ましい。
【0038】
したがって、本発明は、本発明の融合タンパク質をコードするDNA配列を含む、適切なベクターも提供する。本発明のベクターは、真核細胞および/または原核細胞において、発現および/または増幅できることが好ましい。より具体的には、本発明は、さらに、アデノウイルスベクターシステムなどを含む、遺伝子治療に用いられるあらゆるベクターシステムに加えて、レトロウイルスベクターに関する。したがって、本発明の枠組みにおいて、本発明の核酸構成物またはベクターを用いた遺伝子治療方法は、本発明に基づく医療に適用するための治療方法として、開示される。
【0039】
また、本発明は、本発明の融合タンパク質をコードする核酸が形質移入された宿主細胞を提供する。本発明において好適な宿主細胞とは、本発明の発現ベクター、または、本発明の核酸構成物が形質移入された宿主細胞である。上記発現ベクターは、本発明の融合タンパク質をコードするDNA配列を同様に含んでいる。
【0040】
また、本発明は、本発明のポリペプチドを調製(発現および単離)する方法を提供する。本発明に基づいた単離方法は、主として、(a)本発明のベクターまたは核酸構成物を準備する工程と、(b)工程aにより得られたベクターまたは核酸構成物を、細胞へと形質移入する工程と、(c)工程bで形質移入された細胞を培養する工程と、(d)適切な環境下で発現させた、本発明のポリペプチドを、宿主細胞および/または培養液の上清から単離する工程とにより特徴づけられる。
【0041】
融合タンパク質の発現は、通常、従来技術に基づき、適切な発現システム、好ましくはCHO細胞のように安定した形質移入体が産物を分泌するシステム、または、Cos7やSF9(昆虫細胞)などのその他の動物細胞、または、その他の真核細胞システム、特にPichia pastorisなどの酵母を用いたシステムを用いて行われる。本発明の、発現されたポリペプチドは、細胞システムでの分泌に適したリーダー配列を含んでいることが好ましい。したがって、発現に用いられる、本発明のベクターもまた、機能的なリーダー配列をコードする断片を含んでいる。
【0042】
本発明のポリペプチド、および、上記ポリペプチドに任意に、核酸構成物、ベクター、または宿主細胞(これらを組み合わせたものを、「本発明の物質」または「本発明の対象物」と分類する)を組み合わせて、薬剤または薬剤の材料とすることができる。それらは、特に、モジュール2(断片(1))を介して、上記融合タンパク質が、特定の(細胞の)膜局在型標的分子に結合した後、本発明の物質が、モジュール1(断片(3))のTNF受容体リガンド断片の対応する受容体を介して、生物学的な活性を発現する場合に、使用される。モジュール2を適切に選択することにより、本発明の物質のTNF受容体リガンド活性は、処置が行われる組織または細胞種に向けられる。さらに、適切な用途に、特異的に適応/最適化された治療薬を調製することが可能である。
【0043】
本発明のポリペプチドを、例えば、腫瘍の治療薬、特にリンパ腺腫瘍(良性または悪性)に加えて、固形腫瘍の治療のための治療薬として用いると、本発明のポリペプチドは、生体内への薬剤投与後、まず、細胞表面分子結合ドメイン(モジュール2)を介して、腫瘍部分自体に、または腫瘍の反応性ストロマ/血管系に、特異的に結合し、活性化される。そして、TNF受容体リガンド断片(モジュール1)に対応する受容体が活性化され、例えば、アポトーシス(モジュール1=FasLまたはTRAILの可溶性断片)を誘導したり、湿潤性T細胞(モジュール1=CD40Lの可溶性断片)を活性化したりする。
【0044】
本発明のポリペプチドを、例えば、自己免疫性疾病の治療薬として用いると、本発明のポリペプチドは、生体内に投与後、まず、細胞表面分子結合ドメイン(モジュール2)を介して、活性化されたT細胞(CD40Lなど)、または活性化されたマクロファージ(膜局在型TNFなど)の表面マーカーに結合し、その後、生物学的に完全に活性状態となる。そして、TNF受容体リガンド断片(モジュール1)に対応する受容体が活性化され、例えばアポトーシス(モジュール1=FasLまたはTRAILの可溶性断片など)を誘導する。
【0045】
しかし、原理的には、TNF受容体ファミリーによって誘導されるシグナルカスケード、例えばアポトーシスのシグナルカスケードのような一連の情報伝達の活性化が開始されるような治療法の分野においては、常に本発明の物質を好ましく用いることができる。したがって、本発明の物質は、あらゆる過剰増殖系疾患の治療法、または当該治療法に用いられる薬剤の調製に用いることができると考えることができる。上記治療法には、例えば、多発性硬化症、リウマチ性関節炎、真性糖尿病およびTEN(中毒性表皮壊死症)などの自己免疫性疾患における過剰免疫反応の場合、または、感染症(微生物性(例えば放線菌などによって引き起こされる)、ウイルス性、原生動物性)などにおいて起こる免疫反応のような、外来抗原に対する間違った免疫反応の場合に、免疫系の細胞を狙って除去する治療法が含まれる。
【0046】
さらに、代謝病、または、一般的な炎症状態(hyperinflammatorischen Zustaenden)、特に、慢性炎症の治療方法も考えられる。当該治療方法には、例えば、外来性移植組織に対する、患者の免疫系による拒絶反応の治療に加えて、アレルギーの治療も含まれる。
【0047】
上記の場合において、本発明のポリペプチドの細胞表面分子結合ドメイン(モジュール2)、例えば、断片(1)は、標的細胞の表面にある特徴的なマーカーを常に認識しなければならない。なお、上記標的細胞内では、細胞死を目的とするアポトーシスのシグナルカスケードが始動される。したがって、例えば、外来性組織の移植後に治療を行うような場合には、拒絶反応に応答する、移植された患者の免疫系の内因性の細胞が、標的細胞として用いられる。同様に、例えば、リウマチ性関節炎の治療を行う場合、疾病に実質的に寄与している、活性化された内因性マクロファージが、標的細胞として用いられる。
【0048】
以上説明したように、核酸構成物、発現ベクター、または宿主細胞といった本発明の対象物は、例えば、上述の疾病の治療に用いられる治療薬と見なすことができる。このような場合、形質移入される細胞は、治療を受ける患者より取り出された細胞であることが好ましい。この細胞に、試験管内で本発明の発現ベクターを形質移入し、培養後、自己移植片として患者へと導入(再移植)する。制御可能なプロモーターに連結した、本発明の核酸構成物または発現ベクターを用いて、上記形質移入が行われることが好ましい。形質移入された自己移植片は、特定の疾病や標的細胞に応じて、例えば注射などにより、局所的に投与することができる。例えば、腫瘍の治療を行う場合、局所投与を行うことが好ましい。この場合、腫瘍細胞を患者より取り出し、試験管内で形質移入し、その後、腫瘍に直接注入することが好ましい。このような手法は、例えば、皮膚腫瘍(黒色腫など)、神経系腫瘍(神経膠芽腫など)などの治療に適している。
【0049】
また、本発明は、本発明のポリペプチド、核酸構成物、ベクターおよび/または宿主細胞、並びに、製薬上、許容できる、補助物質、添加物、および/または賦形剤(可溶化剤などを含む)を含む、薬学組成物を提供する。したがって、本発明の物質と、製薬上許容できる、補助物質、添加物、および/または賦形剤との組み合わせは、本発明に基づいて開示される。適切な調製方法は、「Remington's pharmaceutical Science」(Mark Pub. Co., Easton, PA, 1980)に記載されており、その内容が、本発明の開示の一部に含まれる。非経口投与に用いることができる賦形剤の例としては、滅菌水、滅菌食塩水、ポリアルキレン・グリコール、水素化ナフタレン、および、特に生体適合性のあるラクチド重合体、ラクチド/グリコリド共重合体またはポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレン共重合体が挙げられる。上記のような本発明の組成物は、上述の全ての医療用途に用いることができると考えられる。
【0050】
原理的に、本発明の枠組み内において、本発明の組成物または本発明の物質に用いることができる、従来公知の全ての投与様式が公開されている。上述の疾病または疾患を処置する薬剤は、皮下注射、筋肉注射、静脈注射などの非経口経路、または経口もしくは鼻腔経路から投与されることが好ましい。通常、本発明の薬学組成物は、固体、液体、またはエアロゾル(例えば、スプレーとして成形されている)の形態である。しかし、本発明の組成物の形態は、製剤形態に応じて変化させることができる。
【0051】
要約すると、本発明によれば、アポトーシス促進(proapoptotischen)特性、および免疫調節特性という、2つの特異性をもつ融合タンパク質を提供することができることが述べられている。上記融合タンパク質は、本来は膜局在型であるTNF受容体リガンドの可溶性断片を含んでいる。上記可溶性断片は、不活性または活性が制限されているが、TNFリガンド断片と相互作用しない細胞表面構造に結合することによって、局所的に活性化される。細胞表面分子結合ドメインは、それ自身が、第2サイトカイン、膜局在型リガンドの受容体、または、細胞膜構造に特異的に結合することができる、別の非抗体性のペプチド(またはその断片)である。この細胞表面分子結合ドメインを介して、TNF受容体リガンド活性は、処置が行われる組織や細胞に向けられ、そして、適切な用途に、特異的に適応/最適化された治療薬を調製することができる。
【0052】
全体的に見て、本発明にかかる現在のポリペプチドのTNF受容体リガンド活性の選択性は、以下の2つのメカニズムによって達せられる。すなわち、細胞表面分子結合ドメインによって媒介される、非結合状態において不活性で活性が制限されている融合タンパク質の濃度と、さらに重要なことに、細胞表面分子への結合(固定化)に応じた融合タンパク質の活性化とを介して達せられる。
【0053】
本発明について、以下の図を用いて、より詳細に説明する。
【0054】
図1は、一例として、CD40L陽性細胞を用いた、本発明の融合タンパク質によるアポトーシスの優先的な誘導に関する実験結果を示している。CD40Lの発現を簡単に確認できるように、黄色蛍光発光タンパク質YEPを、CD40Lの細胞内ドメインに融合させた。
【0055】
図1Aは、KBおよびHT1080の親細胞、並びに、それら細胞から得られる、CD40L−YEPを定常的に発現する形質移入細胞において、FACS分析を行い、CD40L−YEP融合タンパク質の発現を調べた結果を示している。なお、対応する写真もまた、CD40Lの細胞外ドメインを認識する抗体を用いた、FACS分析によって得られたものである(データは示されていない)。
【0056】
図1B〜図1Dは、図中に示された各濃度の融合タンパク質存在下における、細胞の生命力(%)を示した図である。図中に示された曲線は、CD40L陽性細胞(HT1080−CD40L、KB−CD40L)、または、CD40L陰性のHT1080およびKB細胞を、CD40ex−Flag−FasLex構成物およびCD40ex−Flag−TRAILex構成物で処理した結果を示している。
【0057】
図1Bの実験において、HT1080細胞およびHT1080−CD40−YEP細胞(図の左側)、並びに、KB細胞およびKB−CD40L−YEP細胞(図の右側)を、96穴培養皿の中で一晩培養した。翌日、図中に示された濃度のCD40ex−Flag−FasLexを用いて、これら細胞を刺激した。同時に、アポトーシスの誘導に敏感にするために、CHX(2.5μg/ml)を用いて、これら細胞を処理した。その翌日、クリスタル・バイオレット染色を行い、細胞の生命力を測定した。
【0058】
図1Cの実験において、HT1080細胞およびHT1080−CD40L−YEP細胞を、96穴培養皿の中で一晩培養した。翌日、図中に示された濃度のCD40ex−Flag−TRAILexを用いて、これら細胞を刺激した。それ以外の実験手順は、図1Bの記載に示された通りである。
【0059】
図1Dは、CD40ex−Flag−FasLexにより引き起こされる、CD40L発現細胞HT1080細胞の細胞死が、Fasによって媒介されることを、一例として示している。この場合も、HT1080−CD40L−YEP細胞を、96穴培養皿の中で一晩培養した。翌日、100ng/mlのCD40ex−Flag−FasLexを用いて、これら細胞を刺激した。図中のFas−Fc、およびFas−Compの場合には、まず、CD40ex−Flag−FasLex試薬を、2μg/mlのFas−FcまたはFas−Compとプレインキュベートした。それ以外の実験手順は、図1Bまたは図1Cの記載に示された通りである。可溶性FasL結合性試薬であるFas−FcおよびFas−Compを用いて、CD40ex−Flag−FasLexのFasL部分を隠すことによって、CD40L陽性細胞におけるアポトーシスの発生を、完全に、または、部分的に阻害することができた。
【0060】
本発明について、以下の実施例を用いて、より詳細に説明する。
【0061】
〔実施例1:本発明に基づくポリペプチド、CD40ex−Flag−FasLexおよびCD40ex−Flag−TRAILexの構築〕
構築(A):CD40ex−Flag−FasLex
NH−[CD40(1−192)]−[Flag−tagを有するリンカー]−[FasL(139−281)]−COOH
CD40(1−192):リーダー配列を含む、ヒトCD40受容体の細胞外ドメイン(AA 1−192)
リンカー1:Flagエピトープを有するリンカー(励起済み(Fettdruck))、GSDYKDDDDKEFGRGDSPGRGDSP
FasL(139−281):ヒトFasLの細胞外ドメイン(AA 139−281)
構築(B):CD40ex−Flag−TRAILex
NH−[CD40(1−192)]−[リンカー=Flag−tag]−[TRAIL(95−281)]−COOH
CD40(1−192):リーダー配列を含む、ヒトCD40受容体の細胞外ドメイン(AA 1−192)
リンカー1:Flagエピトープを有するリンカー(励起済み(Fettdruck))、GSDYKDDDDKEF
TRAIL(95−281):ヒトTRAILの細胞外ドメイン(AA 95−281)
融合タンパク質を、以下のように、調製した。
【0062】
〔CD40ex−Flag−FasLex〕
(1)プルーフリーディングPCRを行い、活性化B細胞のcDNAプールから、CD40受容体(アミノ酸1−192、リーダー配列を含む)の細胞外ドメインに対応するcDNAを増幅した。使用したプライマー(No.1160およびNo.1161)の助けを借りて、単位複製配列の5’末端に、Hind3切断部位(制限酵素切断部位)を、3’末端にBamH1切断部位(制限酵素切断部位)を挿入した。Hind3およびBamH1を用いて消化した単位複製配列を、その後、同様にHind3およびBamH1で消化した真核発現ベクターpCR3(Invitrogen)へと導入した。
【0063】
(2)プルーフリーディングPCRを行い、活性化T細胞のcDNAプールから、FasLの細胞外ドメイン(アミノ酸139−281)に対応するcDNAを増幅した。使用したプライマー(No.1106およびNo.1107)の助けを借りて、単位複製配列の5’末端に、EcoR1切断部位(制限酵素切断部位)を、3’末端にXho1切断部位(制限酵素切断部位)を挿入した。また、順鎖プライマーを用いて、リンカーとして6アミノ酸を組み込んだ。EcoR1およびXho1を用いて消化した単位複製配列を、その後、同様にEcoR1およびXho1で消化した、上記(1)の中間産物へと導入した。
【0064】
(3)最後に、分析目的として、上記(2)の中間産物のBamH1およびEcoR1(制限酵素)切断部位の間に位置する、オリゴヌクレオチドリンカーを用いて、Flag−tagを挿入した。結果として生じる構成物(pCR3−CD40ex−Flag−FasLex)は、CD40分子の細胞外ドメインおよびFasリガンドの細胞外ドメインを有する融合タンパク質をコードしている。また、上記CD40分子およびFasリガンドの細胞外ドメインは、Flag−tag、および、その他いくつかのアミノ酸によって結合されている。
【0065】
〔CD40ex−Flag−TRAILex〕
(1)プルーフリーディングPCRを行い、活性化T細胞のcDNAプールから、TRAILの細胞外ドメイン(アミノ酸95−281)に対応するcDNAを増幅した。使用したプライマー(No.1302およびNo.1334)の助けを借りて、単位複製配列の5’末端に、EcoR1切断部位(制限酵素切断部位)を、3’末端にXba1切断部位(制限酵素切断部位)を挿入した。EcoR1およびXba1を用いて消化した単位複製配列を、その後、同様にEcoR1およびXba1で消化した発現ベクターpCR3−CD40ex−Flag−FasL−exへと導入した。ライゲーションの前に、消化によって放出されたFasL断片を除去した。結果として生じる構成物(pCR3−CD40ex−Flag−TRAILex)は、CD40分子の細胞外ドメインおよびTRAIL分子の細胞外ドメインを備える融合タンパク質をコードしている。また、上記CD40分子およびTRAIL分子の細胞外ドメインは、Flag−tag、および、その他いくつかのアミノ酸によって結合されている。
【0066】
CD40ex−Flag−FasLexおよびCD40ex−Flag−TRAILexを得るために、上述の構成物を含むHEK293細胞またはCos7細胞は、添付の手順書に従い、リポフェクタミン(Gibco−BRL)を用いて形質移入された。形質移入から48〜96時間後、融合タンパク質の上清を滅菌濾過し、使用時まで4℃で保管した。
【0067】
全てのクローニング工程およびPCR増幅工程は、以下のプライマーを用いて、従来公知の通常の方法により行われた。cDNAの配列を確認するために、全ての構成物の配列が解析された。
〔プライマー1106〕
5' ccg gaa ttc ggc cgg ggc gac tca ccc ggc cgg ggc gac tca ccc gaa aaa aag gag ctg agg aaa gtg gcc 3'
〔プライマー1107〕
5' ccg ctc gag gtg ctt ctc tta gag ctt ata taa gcc g 3'
〔プライマー1160〕
5' ccc aag ctt ctc gcc atg gtt cgt ctg cct ctg cag 3'
〔プライマー1161〕
5' cgc gga tcc cag ccg atc ctg ggg acc aca gac 3'
〔プライマー1302〕
5' ccg gaa ttc tac gca tat tac acc tct gag gaa acc att tct aca g 3'
〔プライマー1334〕
5' tgc tct aga cca ggt cag tta gcc aac taa aaa ggc 3'
〔実施例2:CD40L発現細胞を用いた、CD40ex−Flag−FasLexおよびCD40ex−Flag−TRAILexの、CD40Lに依存した活性化の検出の例(図1A参照)〕
実施例1で述べたように、CD40ex−Flag−FasLexおよびCD40ex−Flag−TRAILexを用意した。CD40L発現細胞(HT1080−CD40L、KB−CD40−YEP)およびCD40L陰性細胞(HT1080、KB)を、96穴培養皿の中で一晩培養した。翌日、CHX(2.5μg/ml)存在下で、図中に示された濃度のCD40ex−Flag−FasLexおよびCD40ex−Flag−TRAILexと共に、これら細胞を8時間培養した。クリスタル・バイオレット染色を行い、生存細胞の定量を行った。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】図1は、一例として、CD40L陽性細胞を用いた、本発明の融合タンパク質によるアポトーシスの優先的な誘導に関する実験結果を示している。図1Aは、KBおよびHT1080の親細胞、並びに、それら細胞から得られる、CD40L−YEPを定常的に発現する形質移入細胞において、FACS分析を行い、CD40L−YEP融合タンパク質の発現を調べた結果を示している。図1B〜図1Dは、図中に示された各濃度の融合タンパク質存在下における、細胞の生命力(%)を示した図である。図中に示された曲線は、CD40L陽性細胞(HT1080−CD40L、KB−CD40L)、または、CD40L陰性のHT1080およびKB細胞を、CD40ex−Flag−FasLex構成物およびCD40ex−Flag−TRAILex構成物で処理した結果を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞表面分子結合ドメインを含む断片(1)と、ペプチドリンカーである断片(2)と、それ自身では、生物学的に不活性であるか、活性が制限されているTNFリガンドファミリーのメンバーの断片を含む断片(3)とを含有し、
上記細胞表面結合ドメインが、免疫グロブリンに由来するものではなく、かつ、
上記のTNFリガンドファミリーのメンバーが、上記断片(1)が、上記の細胞表面分子に結合した時のみ、生物学的に、完全に活性化される、ポリペプチド。
【請求項2】
上記断片(1)〜断片(3)が、N末端からC末端に、順番に配列されている、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
上記断片(3)が、上記TNFリガンドファミリーのメンバーの、細胞外ドメイン、機能的な変種の細胞外ドメイン、または、細胞外ドメインの機能的な断片を含む、請求項1または2に記載のポリペプチド。
【請求項4】
上記断片(3)が、TRAIL、FasL、TNF、41BBL、CD40L、CD30L、もしくはOx40Lの細胞外ドメイン、または該細胞外ドメインの機能的な断片を含む、請求項3に記載のポリペプチド。
【請求項5】
上記細胞表面結合ドメインが、膜タンパク質に結合する、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項6】
上記細胞表面結合ドメインが、少なくとも、上記の細胞表面分子と特異的に相互作用するために必要な膜に局在する受容体のリガンドの断片を含む、請求項5に記載のポリペプチド。
【請求項7】
上記リガンドが、受容体結合ペプチド、タンパク質ホルモン、またはサイトカインの受容体結合断片である、請求項6に記載のポリペプチド。
【請求項8】
上記のサイトカイン断片が、上記のTNFリガンドファミリーのメンバーの断片であり、上記断片(1)〜断片(3)が由来するTNFリガンドファミリーのメンバーが異なるという条件をもつ、請求項7に記載のポリペプチド。
【請求項9】
上記のホルモンが、成長因子、特に、EGF、および血管新生因子、特にVEGFからなる群より選択される、請求項7に記載のポリペプチド。
【請求項10】
上記細胞表面結合ドメインが、少なくとも、上記の細胞表面分子と特異的に相互作用するために必要な膜に局在する受容体の断片を含み、上記の受容体の断片が、上記断片(3)に存在するTNFリガンドファミリーのメンバーの細胞外ドメインに結合しない、請求項5に記載のポリペプチド。
【請求項11】
上記受容体が、TNF受容体スーパーファミリーより選択される、請求項10に記載のポリペプチド。
【請求項12】
上記受容体が、TNF−R2、CD30、CD40、およびCD28からなる群より選択される、請求項10または11に記載のポリペプチド。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、核酸構成物。
【請求項14】
請求項13に記載の核酸構成物を含む、ベクター。
【請求項15】
請求項13に記載の核酸構成物、および/または、請求項14に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項16】
(a)請求項14に記載のベクター、または、請求項13に記載の核酸構成物を調製する工程と、
(b)上記工程(a)により得られる、ベクターまたは核酸構成物を、細胞に形質移入する工程と、
(c)上記工程(b)に従って形質移入された細胞を培養する工程と、
(d)上記宿主細胞、および/または、上記の培養液の上清から、適切な条件で発現させたポリペプチドを単離する工程と、
を含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載のポリペプチドを単離する方法。
【請求項17】
請求項1〜12のいずれか1項に記載のポリペプチド、請求項13に記載の核酸構成物、請求項14に記載のベクター、または請求項15に記載の宿主細胞の利用であって、
薬剤を調製することを目的とする利用。
【請求項18】
請求項1〜12のいずれか1項に記載のポリペプチド、請求項13に記載の核酸構成物、請求項14に記載のベクター、または請求項15に記載の宿主細胞の利用であって、
癌疾患、特に、固形腫瘍もしくはリンパ腺腫瘍、感染症、代謝病、炎症状態、並びに自己免疫疾患、特に関節リウマチ疾患を治療することを目的とする利用。
【請求項19】
少なくとも、請求項1〜12のいずれか1項に記載のポリペプチド、および/または、請求項13に記載の核酸構成物、および/または請求項14に記載のベクター、および/または請求項15に記載の宿主細胞を、製薬上、許容できる補助物質、添加剤、および/または賦形剤と共に、含有する薬学組成物。
【請求項20】
癌疾患、特に、固形腫瘍もしくはリンパ腺腫瘍、感染症、代謝病、炎症状態、並びに自己免疫疾患、特に関節リウマチ疾患を治療することを目的とする、請求項19に記載の薬学組成物。

【図1】
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【公表番号】特表2006−502720(P2006−502720A)
【公表日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−544215(P2004−544215)
【出願日】平成15年10月14日(2003.10.14)
【国際出願番号】PCT/EP2003/011357
【国際公開番号】WO2004/035794
【国際公開日】平成16年4月29日(2004.4.29)
【出願人】(503100186)
【出願人】(505136952)
【Fターム(参考)】