説明

紐状体固定用クリップ

【課題】取り付けに係る作業が簡便で、支柱の上下方向において任意の位置に紐状体を容易に固定できる紐状体固定用クリップを提供する。
【解決手段】断面Ω状で開口部12を有する支柱把持部1と、上方に開口され紐状体20が嵌挿可能な溝状部3が形成された紐状体受け部2とを備え、支柱把持部1が開口部12から支柱30に嵌着可能となされると共に、支柱把持部1に備えられた内方への付勢力Fにより嵌着された支柱30を把持するようになされていることにより、支柱30の上下方向で任意の位置に取り付けることが容易となり、紐状体20を上下方向の任意の位置に容易に固定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立設された農業用途等の支柱に、横方向に紐状体を張り巡らせて固定する紐状体固定用クリップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
立設された農業用途等の支柱に、横方向に紐状体を張り巡らせて固定する紐状体固定用クリップとしては、例えば、軸棒の適宜個所に、弾性を有するワイヤの両端部をループ状に折り曲げ、その一端を例えば溶接によって軸棒に固着した結束用紐を挾持するクリップを設けた植物の添木が開示されている(例えば特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開平08−9789号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、引用文献1に記載のような従来の紐状体固定用クリップでは、クリップを支柱に固定する際に溶接等が必要となり、取り付けの作業が煩瑣なものとなると共に、支柱の上下方向において任意の箇所に紐状体を固定することが困難なものであった。
【0005】
本発明は上記の如き課題に鑑みてなされたものであり、取り付けに係る作業が簡便で、支柱の上下方向において任意の位置に紐状体を容易に固定できる紐状体固定用クリップを提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は以下のような構成としている。すなわち、本発明に係る紐状体固定用クリップは、断面Ω状で開口部を有する支柱把持部と、上方に開口され紐状体が嵌挿可能な溝状部が形成された紐状体受け部とを備え、前記支柱把持部が開口部から支柱に嵌着可能となされると共に、支柱把持部に備えられた内方への付勢力により嵌着された支柱を把持するようになされていることを特徴とするものである。
【0007】
本発明に係る紐状体固定用クリップによれば、開口部から支柱に嵌着することで簡便に支柱に対して取り付けができるが、更に支柱把持部に備えられた内方への付勢力により嵌着された支柱を把持できることで、支柱の上下方向で任意の位置に取り付けることが容易となり、紐状体を上下方向の任意の位置に容易に固定することができる。
【0008】
また前記紐状体受け部は、前側側壁部、背後側壁部及び底面部により上方に開口した溝状部が形成され、該前側側壁部の少なくとも一方の側端に、下方に向けて折れ曲った返り止め部が形成されていれば、紐状体受け部に挿入された紐状体を容易に上方に脱離しないようにでき好ましい。
【0009】
また前記溝状部は、内側壁に下方に行くにつれてせり出し幅が大きくなされた突条部が上下方向に設けられていれば、径の異なる紐状体を溝状部内に挟み付けて位置ずれを防止するようにでき好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る紐状体固定用クリップによれば、開口部から支柱に嵌着することで簡便に支柱に対して取り付けができるが、更に支柱把持部に備えられた内方への付勢力により嵌着された支柱を把持できることで、支柱の上下方向で任意の位置に取り付けることが容易となり、紐状体を上下方向の任意の位置に容易に固定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明に係わる最良の実施の形態について、図面に基づき以下に具体的に説明する。
【0012】
図1は、本発明に係る紐状体固定用クリップの、実施の一形態を示す斜視図である。紐状体固定用クリップ10は、熱可塑性合成樹脂を射出成形することで形成されており、支柱把持部1と紐状体受け部2とが一体に形成されたものである。支柱把持部1はΩ状の横断面が上下方向に延びる形状となされ、側壁の一部が開口されて開口部12となされた円筒状の本体11を備え、開口部12の幅は本体11の内径より小さくなされている。紐状体受け部2は、支柱把持部1の前方側αに設けられた前側側壁部21と、本体11によって兼ねられる背後側壁部22と、底面部(本図においては図示せず)とにより、上方に開口した上向きコ字状の溝状部3が形成され、前側側壁部21の上側端の両方に、下方に向けて鈎状に折れ曲った返り止め部24が背後側βに張り出されて形成されている。前側側壁部21には、前面下端付近に前方側αに突出して板状の舌状体211が下方に曲率を付けて設けられている。前側側壁部21の前側両側縁には、上下方向の略全体に亘って縦リブ212が設けられると共に、舌状体211と前側側壁部21の前面との間にも三角リブ213が設けられて、前側側壁部21の上下方向における強度及び舌状体211の取り付け強度が高められるようになされている。
【0013】
図2は、図1に示した紐状体固定用クリップ10の詳細を示すもので、(a)は平面図、(b)は(a)におけるA−A断面を示す縦断面図である。まず(a)において、前側側壁部21、背後側壁部22及び底面部23により形成された溝状部3は、前側側壁部21と背後側壁部22とが略平行に配置されていることで、略同幅の溝状部3が本体11外面のR形状に沿って連続して形成されるものとなされている。溝状部3には、前側側壁部21から内方に横断面V字状の突条部4が上下方向に設けられている(便宜上、図中突条部4には薄墨を施している)。支柱把持部1の開口部12は、両側の開口側縁121が背後側βに向けて広がるようになされている。また本体11内面には、四体の突起部111が内方に向けて等間隔で突設されている。本体11の内径Lは把持の対象となる支柱の外径よりやや小さくなされ、且つ本体11に開口部12が設けられていることで、支柱への取付時には開口部12が広がって開口部12内に支柱を嵌着することができ、嵌着された支柱は本体11の元の内径Lより大きい外径となされていることで、支柱が嵌着されることで本体11により内方への付勢力Fが生じ、支柱把持部1による支柱の把持が確実に行われるようになされている。また本体11内面に突起部111が形成されていることで、支柱の外径がある程度ばらついていたり、支柱表面に凹凸が存在したりするような場合でも支柱の把持が円滑に行われるようになされている。
【0014】
次に(b)において、溝状部3には上方から紐状体20を挿入するものであり、溝状部3内に前側側壁部21から突設された突条部4は、横断面がV字状となされると共に、縦断面は下方に行くにつれてせり出し幅が大きくなされる直角三角形状となされている。突条部4の上辺は微細な凹凸が形成されて滑り止めとなされている。突条部4が設けられた部位において、溝状部3の幅が下方に向けて漸進的に狭められていることで、紐状体20の幅や断面形状が種々なものであっても突条部4と背後側壁部22に挟むことができる範囲を拡大して、紐状体20の固定に対応することが容易なものとなり得る。尚、突条部4は前側側壁部21の内面に限定されず、背後側壁部22の内面に設けてもよく、更には両方の内面に設けるようにしてもよい。
【0015】
図3は、支柱に対する紐状体固定用クリップの取り付け、及び紐状体固定用クリップに対する紐状体の取り付けの一例を示す斜視図である。支柱30は、丸パイプの表面に間隔をおいて突起301が形成された農業用途の鋼管樹脂被覆支柱であり、まず支柱30に対して紐状体固定用クリップ10を、支柱把持部1の開口部12を押し付けて支柱把持部1内に支柱30が嵌着されるまで押し込む。支柱把持部1により、支柱30の上下方向において任意の箇所に紐状体固定用クリップ10を取り付けることができ、また取付位置を変更する場合でも、舌状体211を斜め上方に押し上げることで、開口部12から容易に紐状体固定用クリップ10を外すことができる。次に紐状体受け部2の溝状部3に上方から紐状体20を挿入する。紐状体20は縦長の帯状体であり、溝状部3の上下方向に亘って嵌入される。
【0016】
図4は、溝状部3に紐状体20が挿入された状態を示す平面図である。溝状部3が支柱把持部1の本体11に沿ったR形状となされていることで、挿入された紐状体20は溝状部3の中央付近では背後側壁部22に沿うようになると共に、両端付近では前側側壁部21の両側端においては前方側αに引っ張られるようになり、紐状体20が上方にずれようとした場合に、前側側壁部21の両上側端から背後側βに張り出された返り止め部24の鈎状部分に引っ掛かって上方から押さえつけられ、一旦溝状部3に挿入された紐状体20が上方に脱離するのが防止されている。また前述の通り、支柱30に嵌着された支柱把持部1は内側に向けて付勢力Fが生じて支柱30を把持するようになされている。
【0017】
図6は、紐状体固定用クリップ10の第二の実施形態を示すものであり、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)はB−B断面を示す縦断面図である。本形態に係る紐状体固定用クリップ10は、図2に示された紐状体固定用クリップ10と比べて、主に前側側壁部21に設けられた舌状体211の形態と、本体11内面の形態が異なるものであり、その他の点は図2に示された紐状体固定用クリップ10と同様な形態である。
【0018】
すなわち、図6に示された紐状体固定用クリップ10は、(b)に示すように前側側壁部21に設けられた舌状体211の先端から下方に向けて曲折された引っ掛け部214が設けられたものである。これにより、支柱30から紐状体固定用クリップ10を外すために舌状体211を斜め上方に押し上げる際に、作業者の指が引っ掛かりやすくなり、開口部12からより容易に紐状体固定用クリップ10を外すことができる。尚、引っ掛け部214は、本形態では平板状に形成されているが、作業者の指が引っ掛かりやすい形態であれば、前側側壁部21に向けて折り返された形態でもよく、引っ掛け部214に指が沿い易いやすくなるように、凹み部を設けてたものでもよい。
【0019】
又、本体11内面には、図6の(a)、(c)に示すように開口部12側の両突起部111から本体11内面に沿ってガイド部112が対向して設けられ、ガイド部112は突起部111側から本体11内面側に向けて傾斜している。支柱30から紐状体固定用クリップ10を外す際に、支柱30の表面に突起301が設けられていると、突起部111と本体11内面との段部に引っ掛かり紐状体固定用クリップ10が外しにくくなる場合があるが、本形態の場合は、突起301はガイド部112の傾斜に沿って開口部12側に向けて移動し易くなり、紐状体固定用クリップ10を外し易くなる。
【0020】
ガイド部112は、紐状体固定用クリップ10を外す際に支柱10から最初に外れる前側側壁部21の舌状体211に近い本体11内面の下方に設けられているとより効果的であるが、必要に応じて本体11内面の上下方向に延設された形態でもよく、本体11内面の上下方向にガイド部112を複数設けた形態でもよい。
【0021】
紐状体固定用クリップ10は、支柱把持部1や溝状部3等のある程度複雑な形状を形成する必要があることから、上記実施形態に示す如く熱可塑性合成樹脂を用いて射出成形を行うことで形成するのが好適であるが、特に形成に用いる材料や形成方法を限定するものではなく適宜の材料を用いて形成してよい。射出成形により形成する場合、用いる熱可塑性合成樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ABS樹脂、AAS樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂等を用いることができるが、衝撃に対し強靱なABS樹脂及びAAS樹脂を好適に用いることができる。又、ポリアセタールは、熱膨張率が比較的低く、温度変化に対する寸法安定性に優れているので、紐状体固定用クリップを支柱に固定した際、紐状体固定用クリップが緩みにくくなり、より好ましい。
【0022】
また固定される紐状体20についても縦長の帯状体に限定されるものではなく、溝状部3に挿入可能なものであれば、断面円形や断面多角形等の適宜の紐状体20に適用してよい。更にまた、支柱30についても農業用途の支柱に限定されるものではなく、適宜の支柱に適用することができる。
【0023】
図5は、本発明に係る紐状体固定用クリップを適用した植栽構造の一例を示す説明図である。まず本例に示す植栽構造はアスパラガスの植栽に関わるものであり、地盤E上にアスパラガスである植物Pが植栽されており、植物Pを跨ぐように門型の農業用途の支柱30が間隔をおいて立設されている。この支柱30の、上下方向に間隔をおいて紐状体固定用クリップ10が三体取り付けられ、紐状体固定用クリップ10に取り付けられた紐状体20が上下三段に亘って横方向に張り巡らされて設けられている。紐状体20は、縦長の帯状体として梱包用のPPバンドが用いられている。かかる構成により、アスパラガスは成長するに従い葉体が繁茂し、風圧等により比較的容易に倒伏する恐れが高くなるが、門型の支柱30により囲むと共に、支柱30間の隙間に紐状体20を張り巡らすことで、植物Pを高い密度で側面から支えて風圧等による倒伏を防止できる。更に、紐状体20が縦長となされていることで、植物Pを支える面積を大きくできると共に、植物Pが紐状体20に接触した場合でも植物Pが傷むことを防止するようにもなされている。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る紐状体固定用クリップの、実施の一形態を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る紐状体固定用クリップの、実施の一形態を示す説明図である。
【図3】本発明に係る紐状体固定用クリップを用いた紐状体の固定方法の一例を示す斜視図である。
【図4】本発明に係る紐状体固定用クリップを用いて紐状体を固定した状態を示す平面図である。
【図5】本発明に係る紐状体固定用クリップを適用した植栽構造の一例を示す説明図である。
【図6】本発明に係る紐状体固定用クリップの、第二の実施形態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0025】
1 支柱把持部
11 本体
12 開口部
2 紐状体受け部
21 前側側壁部
22 背後側壁部
23 底面部
24 返り止め部
3 溝状部
4 突条部
10 紐状体固定用クリップ
20 紐状体
30 支柱
F 付勢力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面Ω状で開口部を有する支柱把持部と、上方に開口され紐状体が嵌挿可能な溝状部が形成された紐状体受け部とを備え、前記支柱把持部が開口部から支柱に嵌着可能となされると共に、支柱把持部に備えられた内方への付勢力により嵌着された支柱を把持するようになされていることを特徴とする紐状体固定用クリップ。
【請求項2】
前記紐状体受け部は、前側側壁部、背後側壁部及び底面部により上方に開口した溝状部が形成され、該前側側壁部の少なくとも一方の側端に、下方に向けて折れ曲った返り止め部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の紐状体固定用クリップ。
【請求項3】
前記溝状部は、内側壁に下方に行くにつれてせり出し幅が大きくなされた突条部が上下方向に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の紐状体固定用クリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−224023(P2008−224023A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−131895(P2007−131895)
【出願日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【出願人】(000002462)積水樹脂株式会社 (781)
【Fターム(参考)】