説明

純粋または富化形態のメントールの連続的方法

本発明は、メントールおよびそのジアステレオマーを主に含む物質混合物からメントールを蒸留により取り出すことにより、ラセミまたは光学活性メントールを純粋または富化形態で製造するための連続的方法に関する。この蒸留分離は、5〜500mbarの絶対運転圧力で、50〜300理論段と1以上の側方抜出し点とを有する分割壁カラムにおいて行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メントールを主に含む物質混合物からメントールを蒸留により分離することにより、ラセミまたは光学活性メントール、特にL-メントールを、純粋または富化形態で製造するための連続的方法に関する。この蒸留分離は分割壁カラムにおいて行われる。
【背景技術】
【0002】
メントール、特にL-メントールは、世界的に最も重要な芳香化学物質の1つであり、その冷却特性および新鮮なペパーミント芳香のため、多数の製品において使用されている。
【0003】
メントールの種々の精製方法が文献に記載されている。例えば、例えばDE 568 085またはDE 1 189 073およびUS 1,930,411、JP 27003884またはJP 32009869に記載されているとおり、蒸気を伴う及び伴わない分別蒸留に加えて、抽出方法および結晶化方法が、当業者に公知である。
【0004】
これらの方法は、例えば、結晶化と分別蒸留との組合せとして併用されたり、あるいは化学反応または誘導体化と組合せて使用されることもある。
【0005】
GB 285,394は、チモールの水素化、それから得られた混合物の分別蒸留およびそれに続く、メントール画分からのネオメントールの凍結による、ラセミ体メントールの製造方法に関する。
【0006】
GB 285,833は、アセトンとクレゾールとの縮合から得られた、チモールだけでなく異性体メチルイソプロピルフェノールをも含む混合物の分別蒸留によるチモールの製造方法を記載している。
【0007】
US 2,827,497は、分別蒸留および分別結晶により得られたメントールのジアステレオマー混合物を酸化に付し、ついで別の分別蒸留により更に精製する方法を開示している。
【0008】
EP 0 242 778は、抽出蒸留により、すなわち、より特異的な補助手段、例えばスクシンアミドの添加を伴う蒸留により、メントール、イソメントール、ネオメントールおよびネオイソメントールの混合物を含むジアステレオマー混合物を分離するための方法を記載している。
【0009】
記載されている方法は、通常、補助手段(蒸気または抽出蒸留)が用いられるか又は固体が得られるという欠点を有する。分別バッチ式蒸留は、通常、その重要な生成物の収率の点で不利である。なぜなら、該生成物は、より長時間にわたり、熱的ストレスにさらされるからである。
【0010】
EP 1 514 955は、トリメチルオルトホルメートを液体電解質中で得るための、メタノールでの1,1,2,2-テトラメトキシエタンの電気化学的酸化の電気分解産物の蒸留的後処理のための方法に関するものであり、この場合、30〜150理論段を有する分割壁カラムが使用される。
【0011】
DE 103 30 934は、これらの化合物の少なくとも1つを含む粗混合物からシトロネラールまたはシトロネロールを精留により連続的に単離するための方法を開示している。シトラールまたはシトロネラールの部分的水素化により得られる出発混合物を使用することが好ましい。
【0012】
DE 102 23974は、2つの立体異性イソプレノイドアルコール、特にネロールおよびゲラニオールを、粗製混合物から精留により連続的に単離するための方法に関するものであり、この場合、該粗製混合物は供給カラム内に横から導入され、該供給カラムに連結された少なくとも1つの抜出しカラムが設けられており、第1および第2イソプレノイドアルコールが該抜出しカラムから抜出される。該供給カラムおよび抜出しカラムは、少なくとも該イソプレノイドアルコールの抜出し点の領域において蒸気および凝縮物の交差混合が生じないように連結される。
【0013】
メントール、特にL-メントールの蒸留精製により、それからそのネオイソ-およびイソメントールジアステレオマーを除去することは、特に、外界圧力において約2℃という非常に小さな沸点差のため、典型的には非常に複雑である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】DE 568 085
【特許文献2】DE 1 189 073
【特許文献3】US 1,930,411
【特許文献4】JP 27003884
【特許文献5】JP 32009869
【特許文献6】GB 285,394
【特許文献7】GB 285,833
【特許文献8】US 2,827,497
【特許文献9】EP 0 242 778
【特許文献10】EP 1 514 955
【特許文献11】DE 103 30 934
【特許文献12】DE 102 23974
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
この先行技術から更に進んで、メントールだけでなく、メントールの望ましくないジアステレオマー、そして可能性としてイソプレゴールまたはその異性体、そして可能性としてメントンをも含む混合物から、非常に純粋な又は富化されたメントールを製造するための方法を提供することが、本発明の目的であった。該方法は、記載されている望ましくない成分を非常に僅かな度合で又は不純物として含む、優勢な主成分としてメントールが既に存在する混合物から、純粋または富化メントールを製造するのに特に適している。これは、公知方法によれば、困難を伴って、そして高い収量損失を伴ってはじめて可能であるに過ぎない。該方法は、特に、分解生成物または副生成物の生成を低い度合でしかもたらさない、すなわち、所望の生成物を高い純度および最大収率で与える一方で、それほど複雑でない装置で、経済的に実施可能な様態で、そして工業的規模で実施可能である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の目的は、ラセミまたは光学活性メントールおよびメントールのジアステレオマーを含む物質混合物からラセミまたは光学活性メントールを蒸留により分離することにより、式(I)
【化1】

【0017】
のラセミまたは光学活性メントールを純粋または富化形態で製造するための連続的方法の提供により、本発明により達成された。前記方法においては、該蒸留分離は、5〜500mbarの絶対運転圧力で、50〜300理論段および1以上の側方抜出し点を有する分割壁カラムにおいて行われる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、低メントール上部画分(j)、メントールに富む側方画分(f)および下部画分(g)への、メントール含有物質混合物の本発明の分離の、好ましい実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の方法を行うために使用される出発物質は、ラセミまたは光学活性メントール、好ましくは光学活性メントール、より好ましくはL-メントールおよびメントールのジアステレオマーを含む物質混合物である。
【0020】
メントールのジアステレオマーには、式(V)のネオメントール、式(VI)のネオイソメントールおよび式(VII)のイソメントールの化合物
【化2】

【0021】
が含まれ、これらは、出発物質として使用する混合物のタイプに応じて、ラセミ形態、または非ラセミ形態、すなわち光学活性形態でありうる。記載されているジアステレオマーは、本発明において使用する物質混合物中に、個々に、または混合物の形態で存在しうる。本発明の方法において出発物質として使用する物質混合物は、ラセミまたは光学活性形態の式(I)のメントールだけでなく、式(V)、(VI)または(VII)のジアステレオマーの少なくとも1つをも含むが、典型的には、記載されているジアステレオマーのうちの2つ又は3つ全ての混合物である。
【0022】
本発明の方法においては、好ましくは、メントールの前記ジアステレオマーだけでなく、
式(II)
【化3】

【0023】
のイソプレゴールおよび/またはそのジアステレオマーをも、式(III)のメントンおよび/または(IV)のイソメントン
【化4】

【0024】
の存在下または非存在下に含む物質混合物を使用することも可能である。記載されている化合物は、各場合に使用する物質混合物のタイプ、起源または製造方法に応じて、ラセミまたは光学活性形態で存在しうる。
【0025】
式(II)のイソプレゴールのジアステレオマー、特にL-イソプレゴールには、同様に、出発物質として使用する混合物のタイプに応じてラセミまたは非ラセミ形態で存在しうる式(VIII)のネオイソプレゴール、式(IX)のネオイソイソプレゴールおよび式(X)のイソイソプレゴールが含まれる。
【化5】

【0026】
本発明の方法の好ましい実施形態は、式(II)のイソプレゴールおよび/または式(VIII)、(IX)および/または(X)のそのジアステレオマーの存在下または非存在下、そして式(III)のメントンまたは式(IV)のイソメントンの存在下または非存在下、L-メントール、および式(V)、(VI)および/または(VII)のメントールのジアステレオマーを含む物質混合物からL-メントールを蒸留により分離することによる、純粋または富化形態のL-メントールの製造に関する。
【0027】
本発明の方法を行うための好適な供給ストックは、ラセミまたは光学活性メントール、好ましくは光学活性形態のL-メントールを含む物質混合物、好ましくは、ラセミまたは光学活性メントール、好ましくはL-メントールを含む物質混合物である。これらのうち、少なくとも80重量%、より良好には85重量%、より一層良好には90重量%〜99.9重量%、より好ましくは95〜99.8重量%、最も好ましくは少なくとも96重量%、97重量%、最も好ましくは少なくとも98重量%〜99.7重量%、99.6重量%、最も好ましくは99.5重量%のラセミまたは光学活性メントール、好ましくはL-メントール、および更に、小さい比率、すなわち、20重量%以下、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.2〜5重量%、特に好ましくは0.3またはより良好には0.4重量%〜2.5重量、より一層好ましくは1.5重量%以下、より良好には1重量%以下、最も好ましくは0.5重量%以下の比率の他の成分、例えばメントールのジアステレオマー、副生成物、例えばイソプレゴールもしくはそのジアステレオマー、またはメントンまたはイソメントンまたは他の不純物、例えば溶媒残渣または水を含む物質混合物が好ましい。
【0028】
光学活性形態のメントール、好ましくはL-メントールを含む物質混合物を使用する場合、それは、典型的には、90%ee以上、好ましくは95%ee、より好ましくは97%ee、またはより一層好ましくは98%ee以上、すなわち、100%eeまで、または好ましくは99.9%eeまでのエナンチオマー過剰率で存在する。相応して、純粋または富化形態の光学的に活性なメントール、好ましくはL-メントールが本発明の方法におけるこれらの物質混合物から得られ、得られる生成物のエナンチオマー過剰率は、一般に、使用される物質混合物のメントールのエナンチオマー過剰率に少なくとも非常に実質的に対応したものである。ラセミ体メントールを含む物質混合物を使用する場合、純粋または富化形態の式(I)のラセミ体メントールが本発明において得られる。
【0029】
本発明の方法の好ましい実施形態においては、使用される出発物質は、99.4%eeのエナンチオマー過剰率を有する物質混合物である。本発明の方法のもう1つの好ましい実施形態においては、使用される出発物質は、少なくとも98重量%の程度のメントール(L-またはD-メントール、好ましくはL-メントール)および総量で2重量%(各場合において該混合物に対するもの)までのメントールのジアステレオマーおよび/またはイソプレゴールおよびそのジアステレオマー(それぞれ、dまたはl体)および/またはイソメントンまたはメントンおよび/または他の成分、例えばアルコール、ケトン、アルデヒド、炭化水素または水よりなる物質混合物であり、メントンおよび/またはイソメントンの混合物ならびに他の成分の含量はそれぞれ1重量%未満(該混合物に対するもの)である。
【0030】
好ましい供給ストックは合成メントール、好ましくは、光学活性形態のL-メントール、特に、イソプレゴールまたはL-イソプレゴールを水素化することにより製造されたものである。そしてイソプレゴール、特にL-イソプレゴールは、結晶化、特に、例えばDE 10 2005 040 655に記載されている溶融結晶化により、合成イソプレゴールを精製することにより得られうる。
【0031】
また、他の合成経路により製造された、例えばチモールの水素化により得られる、メンントールのジアステレオマーとメントールとの混合物を使用することも可能である。
【0032】
また、天然植物由来の、例えばMentha arvensisから得られる市販のL-メントールも適している。
【0033】
本発明の蒸留除去は、典型的には、使用したメントール、好ましくはL-メントールを含む物質混合物を、各場合において1以上の低ボイラー、中ボイラーおよび高ボイラー画分内に分離し、使用される分割壁カラムの側方抜出し点において、中ボイラー画分として、液体または気体形態として、メントール、好ましくはL-メントールを純粋または富化形態で連続的に抜出すことにより行われる。
【0034】
したがって、本発明の方法は、メントールまたはそのジアステレオマー(前記のもの)を含む物質混合物からメントールを蒸留により分離することによりメントール、好ましくはL-メントールを単離するための連続的方法、好ましくは、メントールを純粋または富化形態で単離するための連続的方法でもあり、ここで、該蒸留分離は、5〜500mbarの絶対運転圧力において、80〜200理論段と1以上の側方抜出し点とを有する分割壁カラムにおいて行われる。
【0035】
本発明において使用する分割壁カラムは、50〜300、好ましくは100〜200、最も好ましくは120〜180理論段の段総数、および1以上の側方抜出し点、好ましくは1〜3、特に1〜2、最も好ましくは1個の側方抜出し点を有する。
【0036】
本発明の方法は、5〜500mbar、好ましくは10〜200mbar、より好ましくは20〜120mbar、最も好ましくは20〜100mbarの、分割壁カラムにおける絶対運転圧力、特に好ましくは40〜100mbarの絶対運転圧力において行われる。絶対上部圧力が10〜100mbar、特に好ましくは10〜80mbar、非常に特に好ましくは10〜60mbar、より一層好ましくは20〜60mbar、特に好ましくは40〜60mbarとなるよう、分割壁カラムを運転することが好ましい。同様に、好ましくは、絶対下部圧力が20〜500mbar、より好ましくは30〜200mbarまたはより良好には100mbar、より一層好ましくは40〜200mbarまたはより良好には100mbar、最も好ましくは50〜100mbarとなるよう、分割壁カラムを運転する。
【0037】
本発明の方法を行う際の還流比は広い範囲内の様々な値となることが可能であり、典型的には、約5:1〜約2000:1、好ましくは約20:1〜1000:1、より好ましくは約50:1〜約500:1である。また、デフレグメーター法、すなわち、戻ってきた蒸気のみが該カラムの上部冷却器において凝縮され、該カラムへと再供給されるのが有利である。部分的凝縮のそのようなエネルギー的に有利な場合には、流出する上部生成物は専ら、より低い温度で運転されうるアフタークーラーにおいて得られる。この場合、該アフタークーラーにおける冷却媒体の温度が5℃〜約50℃の範囲内に制御されて、適当な場合には、時々、脱昇華(desublimation)により形成された固体が再溶融されうるよう、熱担体循環系を設けることが有利である。
【0038】
この理由により、0〜60℃、好ましくは20〜60℃に温度が制御されうる熱担体媒体(冷却媒体)を該カラムの主冷却器および/または後冷却器に供給するための手段を設けることも有利である。この目的のために、例えば、遠心ポンプの助けにより、水を、熱交換器を経由して循環して送り出す(ポンプする)ことが可能であり、必要に応じて、このポンプ循環系内に冷水または熱水を供給するために、温度制御系を使用することが可能である。回路内に組み込まれたフローヒーターでのこの回路の電気的加熱、または蒸気による通常の加熱も可能であると理解されるであろう。
【0039】
本発明の方法により、純粋または富化形態の式(I)のメントール、好ましくはL-メントールを得ることができる。「富化形態のメントール」なる語は、メントールまたは好ましくはL-メントールを含み各場合において本発明に従い使用される物質混合物より高いメントールまたはL-メントール含量を有する、メントール、好ましくはL-メントールを含有する物質混合物を意味すると理解される。「富化形態のメントール」なる語は、好ましくは、80〜99.5重量%、好ましくは85〜99.5重量%、より好ましくは90、またはより一層好ましくは95重量%〜99.5重量%の純度(すなわち、含量)を有するメントール、好ましくはL-メントールを意味すると理解される。本発明の方法は、純粋形態のメントール、好ましくはL-メントールの製造をも可能にする。「純粋形態のメントール」なる語は、99重量%以上、好ましくは99.1重量%以上、好ましくは少なくとも99.2重量%、更に好ましくは少なくとも99.3重量%、より一層好ましくは少なくとも99.4重量%、特に好ましくは少なくとも99.5重量%、更に好ましくは99.6重量%、更に好ましくは少なくとも99.7重量%、最も好ましくは99.8重量%から99.99重量%まで、好ましくは99.98重量%まで、より好ましくは99.97重量%まで、より一層好ましくは99.96重量%まで、最も好ましくは99.95重量%までの含量を有するメントール、好ましくはL-メントールを意味すると理解される。重量%単位の数字は、本発明の文脈における重量%単位の全ての数字同様、個々の混合物の総量に対するものである。
【0040】
供給、すなわち、使用される物質混合物の供給は、液体または気体形態で分割壁カラム内に行われることが可能であり、そこにおいて、上部および下部画分ならびに1以上の側方排出物、好ましくは1つの側方排出物へと分離されうる。1つの側方排出物においては、重要なメントール生成物、好ましくはL-メントールが、所望の純度で、すなわち、富化または純粋形態で得られる。本発明の方法の特定の実施形態においては、後冷却器が該カラムの上部冷却器の下流に接続され、前記のとおり、0〜60℃、好ましくは20〜60℃の温度範囲内で温度が制御されうる冷却液(例えば、グリコール含有水)で冷却され、そこにおいては低メントール低ボイラー画分が得られる。
【0041】
多物質混合物の連続的蒸留分画のためには、先行技術に従い、種々の変法が用いられる。最も単純な場合、供給混合物を、低沸点上部画分と高沸点下部画分との2つの画分に分画する。3以上の画分への供給混合物の分離の場合、この変法によれば、2以上の蒸留カラムを使用する必要がある。装置の複雑性を緩和するために、多物質混合物の分離において、可能な場合には、液体または蒸気側方抜出し口を有するカラムを使用する。しかし、側方抜出し口を有する蒸留カラムの可能な使用は、先行技術によれば、側方抜出し点において抜出される生成物が完全には純粋ではないということにより、著しく制限される。典型的には液体形態である精留部における側方抜出しの場合、副生成物が尚も、該上部から除去されるべき低沸点成分のある割合を含む。通常は蒸気形態であるストリッピング部における側方抜出しにも同じことが当てはまり、この場合も、副生成物が高沸点成分を含む。したがって、通常の側方抜出しカラムの使用は、混入副生成物が許容される場合に限定される。
【0042】
1つの対策手段が分割壁カラムによりもたらされる。このカラム型は、例えばUS 2,471,134、US 4,230,533、EP 0 122 367、EP 0 126 288、EP 0 133 510、Chem. Eng. Technol. 10 (1987) 92-98、Chem.-Ing.-Tech. 61 (1989) No.1, 16-25、Gas Separation and Purification 4 (1990) 109-114、Process Engineering 2 (1993) 33-34、Trans IChemE 72 (1994) Part A 639-644、およびChemical Engineering 7 (1997) 72-76に記載されている。
【0043】
この設計の場合、副生成物を同様に純粋形態で抜出すことが可能である。供給部を抜出し部から密閉し、このカラム部における液体および気体蒸気の交差混合を防ぐ分割壁が、中央部領域、供給点および側方抜出し口の上および下に設置される。その結果、多物質混合物の分離に必要な蒸留カラムの総数が減少する。このカラム型は、熱的に連結された蒸留カラムの装置の単純化をもたらすため、それは更に、特に低いエネルギー消費をもたらす。同様に、種々の装置構成で設計されうる熱的に連結された蒸留カラムの記載が技術文献における前記参考文献に見出されうる。分割壁カラムおよび熱的に連結されたカラムは、エネルギー需要および資本費の両方において、通常の蒸留カラムの配置に対する利点をもたらし、したがって、産業界において益々頻繁に使用されつつある。
【0044】
図1は、低メントール上部画分(j)、メントールに富む側方画分(f)および下部画分(g)への、メントール含有物質混合物の本発明の分離の、好ましい実施形態を示す。分割壁カラムへのメントール含有供給物は液体形態(b)、気体形態(c)、または気体および液体形態でありうる。
【0045】
本発明の方法は連続的に行われる。したがって、出発物質として使用される、メントール、好ましくはL-メントールを含む物質混合物は、分割壁カラムに連続的に供給され、本発明に従い得られた生成物(画分)および副生成物は連続的に排出される。
【0046】
もう1つの冷却器が、典型的には、該カラムの下流に接続され、その運転温度は、分割壁カラムの上部冷却器の運転温度より10〜40K、好ましくは20〜30K低い。この補助により、上部流(k)内に尚も存在する低ボイラーの大部分が凝結されうる。
【0047】
また、分割壁カラムの場合、供給流を予備蒸発に付し、ついでそれを二相形態または2つの流動形態で該カラム内に供給することも有利でありうる。この予備蒸発は、特に、供給流が相対的に大量の低ボイラーを含む場合の選択肢である。該予備蒸発は該カラムのストリッピング部の負担を有意に軽減しうる。
【0048】
本発明において使用される分割壁カラムは、ランダム充填物または構造化充填物を有する充填カラムとして、あるいはトレーカラムとして設計されうる。純粋または富化形態のメントールを製造するための本発明の方法においては、充填カラムを使用することが望ましい。この場合、約100〜750m2/m3、好ましくは約350〜500m2/m3の比表面積を有する構造化薄板金(structured sheet metal)または織物充填(fabric packings)が特に適している。
【0049】
本発明の場合のように、生成物の純度が特に強く要望される場合には、分割壁に断熱材を設けることが好ましい。分割壁の断熱の種々の手段の記載がEP-A 0 640 367に見出されうる。中間気体空間を有する二重壁構造が特に好ましい。
【0050】
分割壁カラムおよび熱的に連結されたカラムの制御のための種々の制御方法が記載されている。US 4,230,533、DE 35 22 234、EP 0 780 147、Process Engineering 2 (1993) 33-34およびInd. Eng. Chem. Res. 34 (1995), 2094-2103に記載が見出されうる。
【0051】
低ボイラー画分、中ボイラー画分および高ボイラー画分への多物質混合物の分離の場合、典型的には、中ボイラー画分中の低ボイラーおよび高ボイラーの最大許容比率に関する規格が存在する。この場合、鍵成分として公知の、分離上の問題に決定的に重要である個々の成分、または複数の鍵成分の総和が定められる。本発明の場合のこれらの鍵成分は、高沸点二次成分としてのイソメントール、ならびに低沸点二次成分としてのネオメントール、またはネオ-およびネオイソメントールの混合物である。
【0052】
中ボイラー画分中の高ボイラーに関する規格の遵守は、例えば、分割壁の上部末端における液体の分割比により制御されうる。分割壁の上部末端における液体の分割比は、好ましくは、分割壁の上部末端における液体中の高ボイラー画分に関する鍵成分の濃度が、側方抜出し生成物において達成されるべき値の10〜80%、好ましくは30〜50%となるよう調節される。好ましくは、高ボイラー画分における鍵成分の、より高い含量の場合には、より多量の液体が供給部に進み、高ボイラー画分における鍵成分の、より低い含量の場合には、より少量の液体が供給部に進むよう、該液体分割が調節される。
【0053】
中ボイラー画分中の低ボイラーに関する規格は、加熱出力により、相応して、制御されうる。この場合、例えば、蒸発装置内の加熱出力は、分割壁の下部末端における液体中の低ボイラー画分中の鍵成分の濃度が、側方抜出し生成物において達成されるべき値の10〜80%、好ましくは30〜50%となるよう調節され、好ましくは、加熱出力が、低ボイラー画分における鍵成分の、より高い含量において増加され、加熱出力が、低ボイラー画分における鍵成分の、より低い含量において減少されるよう、該加熱出力が調節される。
【0054】
供給速度または供給濃度における変動を相殺するために、更に、プロセス制御系における対応制御機構により、例えば、適当な制御仕様により、カラム部(2)、すなわち、供給部の精留部、および(5)、すなわち、抜出し部のストリッピング部への液体の流速がそれらの正常値の30%を下回らないことが有利であることが判明した。
【0055】
分割壁の上部末端における及び側方抜出し点における液体の抜出し及び分割のためには、内部採集空間およびカラム外部に配置された空間が共に該液体に適しており、これらは、ポンプレザバーの機能を担っており、あるいは十分に高い静的液体上部を確保しており、これらは、制御ユニット、例えば弁による、制御された更なる液体伝導(conduction of liquid)を可能にする。充填カラムを使用する場合、該液体は、まず、採集器において捕捉され、そこから内部または外部採集空間内に送られる。
【0056】
特に好ましい実施形態においては、本発明の方法は、図1に図式的に示されているプラントにおいて行われる。好ましい実施形態は、上部組合せカラム領域(1)、下部組合せカラム領域(6)、精留部(2)とストリッピング部(4)とを含有する供給部(2、4)、およびストリッピング部(3)と精留部(5)とを含有する抜出し部(3、5)を形成するよう該カラムの縦方向に分割壁(T)を有する分割壁カラム(TK)が使用されている点において注目に値する。
【0057】
本発明においては、供給ストックとして使用されるメントール含有物質混合物(a)が、好ましくは、供給部(2、4)の中央領域内に供給され、純粋または富化形態のメントール、好ましくはL-メントールが抜出し部(3、5)の中央領域から液体または気体側方抜出し物として得られ、1以上の低ボイラー画分が上部組合せカラム領域(1)から取り出され、1以上の高ボイラー画分が下部組合せカラム領域(6)から取り出される。
【0058】
供給流(a)は、液体(b)、気体(b)または部分的に液体および部分的に気体である流動物として、予熱器(VH)を介してカラム(TK)内に導入されうる。カラムの上部流は冷却器(K)において完全または部分的に凝縮される。部分的凝縮の場合(デフレグメーター運転)、上部冷却器(K)の排ガス流(k)は、典型的には、顕著な量の凝縮可能な低ボイラーを尚も含み、ついでこれは、低温で運転される後冷却器において凝結しうる。
【0059】
上部冷却器(K)および/または後冷却器は、例えば、段装置として設計されることが可能であり、カラムジャケット内、好ましくは、カラムの上部内に組み込まれうる。固体形成を妨げるために、該カラムの冷却器の温度を例えば約30〜約50℃の温度に制御することが有利でありうる。
【0060】
冷却器(K)において凝結した上部生成物は留出物容器(DB)において緩衝され、戻りポンプ(RP)によりカラム戻り流(i)としてカラムに戻される。必要に応じて、それから留出物画分(j)も得られうる。カラムの上部内への冷却器の組込みの場合、留出物容器(DB)および戻りポンプ(RP)なしで済ますことが可能である。
【0061】
下部流は、有利には、循環ポンプ(UP)を介して下部蒸発器(SV)に供給され、これは好ましくは流下フィルム蒸発器として設計される。このポンプ循環流からはカラム(TK)の下部排出物(g)も抜出されうる。有利には、カラムの下部流(高ボイラー画分)は、場合によっては小さなポンプ(SP)の助けにより、下部蒸発器の下流の液体流(h)として抜出されうる。
【0062】
分割壁カラムに使用される下部蒸発器は、有利には、薄膜装置、例えば流下フィルム蒸発器でありうる。
【0063】
重要な生成物は、分割壁カラム(TK)の抜出し部から、液体側方抜出し物、すなわち、流動(f)として抜出されうる。必要に応じて、重要な生成物である流動(f)を気体抜出し流動物として抜出すことも可能であるが、この場合、典型的には、もう1つの冷却器が必要となる。純粋または富化形態のL-メントールの融点は41〜44℃であるため、全ての生成物伝導装置(product-conducting apparatuses)(カラムだけではなく、全ての容器およびポンプも)およびライン、好ましくは、真空系の全ての装置およびラインを断熱すること、すなわち、好適な材料でそれらを断熱すること、およびそれらに微量加熱をもたらすことが有利である。例えば、好適な装置で70℃まで、好ましくは45〜70℃、一層好ましくは60℃まで、特に好ましくは45〜60℃の温度に制御されたパイプ内に封入された電気的加熱ラインがこの場合に有利である。あるいは、通常の微量加熱系、例えば、湯がジャケットを流れるジャケット型チューブを使用することも可能である。
【0064】
カラムの上部組合せ小領域(1)は、典型的には、カラムの理論段の総数の5〜50%、カラムの供給部の精留部(2)は5〜50%、カラムの供給部のストリッピング部(4)は2〜50%、カラムの抜出し部のストリッピング部(2)は5〜50%、抜出し部の精留部(5)は2〜50%、そしてカラムの組合せ下部(6)は5〜50%を有し、ここで、選ばれる百分率は足し合わせて100%にならなければならない。
【0065】
好ましくは、カラムの上部組合せ小領域(1)は、カラムの理論段の総数の10〜25%、カラムの供給部の精留部(2)は15〜30%、カラムの供給部のストリッピング部(4)は15〜30%、カラムの抜出し部のストリッピング部(2)は15〜30%、抜出し部の精留部(5)は15〜30%、そしてカラムの組合せ下部(6)は10〜25%を有し、ここで、選ばれる百分率は足し合わせて100%にならなければならない。
【0066】
供給部における小領域(2)および(4)の理論段の数の和は、好ましくは、抜出し部における小領域(3)および(5)の段の数の和の80〜110%、より好ましくは95〜105%である。
【0067】
本発明の方法の好ましい実施形態においては、理論段の位置に関して、供給点および側方抜出し点はカラム内の異なる高さにおいて配置され、供給点は、側方抜出し点より1〜40、好ましくは5〜20理論段高く又は低く配置される。
【0068】
また、小領域(2)、(3)、(4)および(5)またはその部分よりなる、分割壁により分割されたカラム小領域は、構造化充填物またはランダム充填物(例えば、織物充填物、例えば、Montz A3-500、Sulzer BXもしくはCYまたは薄板金充填物、例えば、Montz B1-500(Montzから)またはMellapak(Sulzerから))を備えていることが有利であることが判明している。
【0069】
供給部内蒸気流の、抜出し部の蒸気流に対する比が0.8〜1.2、好ましくは0.9〜1.1となるよう、分離挿入体の選択および/もしくは寸法ならびに/または圧力低下をもたらす装置、例えばレストリクターの組込みにより、分割壁の下部末端における蒸気流が調節されうる。
【0070】
カラムの上部組合せ部(1)からの液体流出は、有利には、カラム内またはカラム外に配置された採集空間内に集められ、分割壁の上部末端における固定装置または制御系により、制御された様態で分割されて、供給部への液体流の抜出し部への液体流に対する比が、主に液体供給の場合には0.1〜2.0、そして気体供給の場合には1.0〜2となるようにされる。本発明においては、液体供給が好ましい。
【0071】
上部組合せ小領域(1)から供給部への液体流出はポンプにより運搬され、あるいは少なくとも1mの静的供給頭部を介して定量的制御下で、好ましくは、採集空間の液体レベル制御系と組合された閉鎖ループ制御系により導入されうる。該制御系は、好ましくは、供給部に導入される液体の量が所望の正常値の30%を下回らないよう調節される。また、カラムの抜出し部における小領域(3)からカラムの抜出し部における小領域(5)および側方抜出し口への液体流出の分割は、有利には、小領域(5)に導入される液体の量が所望の正常値の30%のレベルを下回らないよう、制御系により調節される。該正常値は、有利には、供給速度に基づいて、該量の2倍〜4倍と推定される。
【0072】
分割壁カラムは、好ましくは、分割壁の上部および下部末端において、サンプリング手段を有し、サンプルが液体または気体形態でカラムから連続的に又はある時間間隔で採取されることが可能であり、それらの組成に関して、好ましくはガスクロマトグラフィーにより検査されうる。
【0073】
好ましくは、分割壁の上部末端における液体中の側方抜出し口において特定の濃度限界が達成されるべき高ボイラー画分の成分(特にイソメントール)の濃度が、側方抜出し生成物において達成されるべき値の10〜80%となるよう、分割壁の上部末端における液体の分割比が調節される。好ましくは、より多量の液体が、高ボイラー画分の成分の、より高い含量で供給部へ送られ、より少量の液体が、高ボイラー画分の成分の、より低い含量で供給部へ送られるよう、該液体分割が調節されるべきである。
【0074】
好ましくは、分割壁の下部末端における液体中の側方抜出し口において特定の濃度限界が達成されるべき低ボイラー画分の成分(特にネオイソメントール)の濃度が、側方抜出し生成物において達成されるべき値の10〜80%となるよう、蒸発器(SV)の加熱出力が調節される。有利には、低ボイラー画分の成分の、より高い含量において加熱出力が増加され、低ボイラー画分の成分の、より低い含量において加熱出力が減少されるよう、加熱出力が調節される。
【0075】
留出物の抜出し、すなわち、低沸点副生成物の抜出しは、好ましくは、供給混合物中に存在し取り出されるべき低沸点二次成分の量に応じて、温度制御下または定量的制御下で行われる。用いられる制御温度は、有利には、カラムの上部末端より3〜10、好ましくは4〜6理論段低く配置された該カラムの小領域(1)内の測定部位におけるものである。
【0076】
該下部生成物は、好ましくは、供給速度に応じて、温度制御下または定量的制御下で抜出される。
【0077】
純粋または富化形態の副生成物として得られたプロセス生成物であるメントール、好ましくはL-メントールの抜出しは、好ましくは、レベル制御下で行われ、用いられる制御パラメータは、カラム下部(カラム底)における液体レベルである。
【0078】
本発明において使用するメントール含有物質混合物の供給流は、好ましくは、部分的または完全に予備蒸発され、二相形態で、または気体流および液体流の形態でカラムに供給される。
【0079】
本発明の方法における好ましい実施形態においては、使用される分割壁カラムの分割壁は該カラムに溶接されず、緩く挿入され適度に密封される小区画の形態として設計される。
【0080】
カラムの個々の小領域における液体分割は、好ましくは、制御された様態で不均一に調節されることが可能であり、該液体は、特に小領域(2)および(5)における壁領域においては増加した度合で導入され、小領域(3)および(4)における壁領域においては減少した度合で導入されうる。
【0081】
分割壁の抜出し側と供給側との間の戻り液の分割比は、好ましくは、約1:1〜約3:1、好ましくは、約1:1〜約2:1である。
【0082】
カラムの個々の小領域における分割壁の位置は、有利には、供給部および抜出し部の横断面が、異なる面積を有するよう、調節されうる。
【0083】
本発明により得られうる純粋または富化形態のL-メントールは、側方抜出し口を介して連続的に得られることが可能であり、あるいは他の側方抜出し口が設けられている場合には、中央抜出し口(f)を介して連続的に得られることが可能であり、好ましい実施形態においては、99.5重量%、好ましくは99.5〜99.95重量%を超えるメントール含量、および0.3重量%(各場合において、得られた生成物に基づくもの)以下の前記のその他のメントールジアステレオマーの含量を有し、そして恐らくは非常に少量の他の不純物を含有する。
【0084】
もう1つの好ましい実施形態においては、本発明により得られる純粋または富化形態、好ましくは純粋形態のメントール、好ましくはL-メントールは、合計で0.5重量%以下、好ましくは、0.3重量%以下、より好ましくは0.1重量%(得られた生成物に基づくもの)以下の、イソプレゴールおよびそのジアステレオマー(前記のもの)の含量を有する。もう1つの実施形態においては、本発明により得られる純粋または富化形態、好ましくは純粋形態のメントール、好ましくはL-メントールは、0.5重量%以下、好ましくは、0.3重量%以下、より好ましくは0.1重量%(得られた生成物に基づくもの)以下の、メントンおよびイソメントンの含量を有する。
【0085】
もう1つの態様においては、本発明は、ラセミまたは光学活性メントールを純粋または富化形態で製造するために前記の連続的プロセスを行うための系に関する。
【0086】
本発明の系は図1に示されており、50〜300理論段と1以上の側方抜出し点とを有する分割壁カラム(TK)を含み、これは、該カラムの縦方向の分割壁(T)を有していて、上部組合せカラム領域(1)、下部組合せカラム領域(6)、精留部(2)とストリッピング部(4)とを含有する供給部(2、4)、およびストリッピング(3)と精留部(5)とを含有する抜出し部(3、5)を形成しており、この場合、該系の全ての生成物伝導成分(product-conducting constituents)(該カラムだけでなく、容器、ポンプおよびラインも)ならびに好ましくは該真空系の全ての装置およびラインは好適な材料で断熱されており、微量加熱に付される。
【0087】
前記で既に説明したとおり、例えば、適当な装置で70℃まで、好ましくは45〜70℃、より一層好ましくは60℃まで、特に好ましくは45〜60℃の温度に制御されたチューブ内に封入された電気的加熱ラインが有利である。あるいは、通常の微量加熱系、例えば、湯がジャケットを流れるジャケット型チューブを使用することも可能である。
【実施例】
【0088】
以下の実施例は本発明を例示するためのものであり、本発明を何ら限定するものではない。
【0089】
実施例1:
研究室用分割壁カラムを、それぞれ長さ1.2mおよび内径64mmの5つのガラス部分から構築した。薄板金から構成される分割壁を3つの中央部に挿入した。分割壁領域の上および下に研究室用充填物(Sulzer CY)を配置し、分割壁領域内に、直径5mmのステンレス鋼から構成される金属織物輪を配置した。60mbarの上部温度においてキシレン異性体混合物で行った別個の性能測定において、カラム全体で100理論段および分割壁領域において約55理論段の全体的分離性能を測定した。したがって、存在する理論段の総数は約155であった。該カラムは、油加熱薄膜蒸発器(0.1m2)、および冷却水で冷却される冷却器を備えていた。
【0090】
該カラム内の異なる高さ(レベル)における温度および上部圧力および該カラムにわたる圧力低下を測定記録系により測定した。該カラムは入口および出口における流量計ならびに戻り流量計を有し、その測定値は油サーモスタットの入口温度に関する制御パラメータとして用いられる。この制御系は一定の戻り速度を確保し、これは一定の圧力差をも確定した。分割壁の供給部と抜出し部との間の分割壁の上の液体の量の分割は時間周期的なスイベル漏斗により達成された。
【0091】
分割壁の供給部から331cmの高さにおけるカラムの中央においては、99.58 GC面積%のメントール、0.22 GC面積%のイソプレゴール、0.11 GC面積%のネオメントールおよび0.33 GC面積%のイソメントール、そしてまた、0.02 GC面積%のネオイソメントールを含む予め90℃に加熱された1000g/時の植物由来の液体メントールを該カラムに供給した。上部圧力50mbarおよび戻り速度3.0kg/時で該カラムを運転した。約34mbar(±1mbar)の圧力低下が確定された。該カラムの最上部においては121℃の温度が測定され、最下部においては135℃(±0.5K)の温度が測定された。平衡制御系により、下部抜出しを2g/時(±1g/時)に固定し、留出物抜出しを4g/時(±1g/時)に固定した。したがって、還流比は約750:1であった。固体形成を防ぐため、該カラムの冷却器は25℃の温度であった。
【0092】
分割壁の上で液体は1:1(供給:抜出し部)の比で分割された。分割壁の抜出し部における300cmの高さ(レベル)においては、気体側方抜出し物(f)が抜出され、ガラス冷却器において凝縮され、それから、下部充填レベルに応じて、約992〜995g/時の純粋な生成物がポンプにより抜出された。
【0093】
得られた画分を、標準的なGCの補助によるガスクロマトグラフィーにより分析した。サンプル調製:(凝固)サンプルを約50℃に加熱して溶融し、トルエンに溶解した。該トルエン溶液をガスクロマトグラフ内に注入し、積分においてはトルエンピークを相応的に除外した。
【0094】
ガスクロマトグラフィー分析は以下の方法により行った:50m CP-Wax 52 CB、ID.: 0.32 mm、FD.: 1.2μm; 注入器: 200℃、検出器: 250℃; 80℃ - 3℃/分から200℃、-10℃/分から230℃/15分; tR(イソプレゴール): 30.07分; tR(ネオメントール): 31.08分; tR(ネオイソメントール): 32.5分; tR(メントール): 32.8分; tR(イソメントール): 33.8分。
【0095】
側方抜出し口において得られた純粋な生成物は、99.94 GC面積%のL-メントールだけでなく、0.02 GC面積%のイソメントールおよび微量の他のメントールジアステレオマーをも含んでいた。下部抜出し物においては、96.12 GC面積%のL-メントールがGC分析により決定され、留出物は44.7 GC面積%のL-メントール、33.9 GC面積%のイソプレゴール、12.9 GC面積%のネオメントールおよび2.02 GC面積%のネオイソメントールを含んでいた。したがって、側方抜出し口における蒸留収率は99%を超えた。
【0096】
実施例2:
331cmの高さにおけるカラムの中央においては、99.39 GC面積%のL-メントール、0.29 GC面積%のイソプレゴール、0.25 GC面積%のネオメントールおよび0.011 GC面積%のイソメントール、そしてまた、0.044 GC面積%のネオイソメントールを含む、ニッケル触媒上のL-イソプレゴールの接触水素化により得られた900g/時の合成由来の液体メントールを該分割壁の供給部における分割壁カラムに供給した。上部圧力50mbarおよび戻り速度3.0kg/時で該カラムを運転した。約35mbar(±1mbar)の圧力低下が確定された。該カラムの最上部においては121℃の温度が測定され、最下部においては135℃(±0.5K)の温度が測定された。下部抜出しを行うことなく該カラムを運転し、平衡制御系により留出物抜出しを15g/時(±1g/時)に調節した。したがって、還流比は約200:1であった。固体形成を防ぐため、該カラムの冷却器は40℃の温度であった。
【0097】
分割壁の上で液体は1:1(供給:抜出し部)の比で分割された。分割壁の抜出し部における300cmの高さ(レベル)においては、気体側方抜出し物(f)が抜出され、ガラス冷却器において凝縮され、それから、下部充填レベルに応じて、約885〜890g/時の純粋な生成物がポンプにより抜出された。
【0098】
側方抜出し口において得られた純粋な生成物は、99.93 GC面積%のL-メントールだけでなく、0.027 GC面積%のネオメントールおよび微量の他のメントールジアステレオマーをも含んでいた。同様に室温で液体であった留出物は73.1 GC面積%のL-メントール、13.5 GC面積%のイソプレゴール、10.9 GC面積%のネオメントールおよび1.79 GC面積%のネオイソメントールを含んでいた。該連続運転カラムには24.5時間以内に22.05kgの供給物が供給され、21.6kgの純粋な生成物が側方抜出し口において抜出された。したがって、側方抜出し口における蒸留収率は98.5%を超えた。
【0099】
実施例3:
もう1つの研究室用分割壁カラムを、内径43mmの3つのガラス部分から構築した。融合固定された厚さ約1mmのガラス分割壁を、105cmの全長を有する中央カラム部に設けた。該分割壁の領域において、供給側に1mのSulzer DX充填物を、抜出し側に0.9mのDX充填物を該カラムに配置した。該分割壁の上および下に、長さ50mmのガラス部を使用し、そのそれぞれはSulzer DX充填物を備えていた。
【0100】
60mbarの上部圧力においてキシレン異性体混合物で行った別個の性能測定において、カラム全体で約32理論段および分割壁領域において約18理論段の全体的分離性能を測定した。したがって、存在する理論段の総数は約50であった。該カラムは、油加熱薄膜蒸発器(0.1m2)、および25℃の冷却水で冷却される冷却器を備えていた。該分割壁の中央に入口および出口がそれぞれ存在し、それぞれ、加熱されるよう設計された。同様に戻りラインおよび下部排出ラインには電気的微量加熱装置が設けられた。
【0101】
該カラム内の異なる高さ(レベル)における温度および上部圧力および該カラムにわたる圧力低下を測定記録系により測定した。該カラムは入口および出口における流量計、ならびに戻り速度の制御を行う流量計を有していた。この制御系は一定の戻り速度を確保し、これは一定の圧力差をも確定した。分割壁の供給部と抜出し部との間の分割壁の上の液体の量の分割は時間周期的なスイベル漏斗により達成された。
【0102】
該カラムの中央においては、85.1重量%のメントール、0.2重量%のイソプレゴール、3.4重量%のネオメントールおよび0.98重量%のイソメントール、そして、1.25 GC面積%のネオイソメントールを含む、ニッケル触媒上のイソプレゴールの接触水素化により得られた予め80℃に加熱された120g/時の合成由来の実質的にラセミ体の液体メントールを、該分割壁の供給部における分割壁カラムに連続的に供給した。また、1.5 GC重量%の炭化水素フェニルシクロヘキサンが存在していた。
【0103】
得られた画分を、標準的なGCの補助によるガスクロマトグラフィーにより分析した。サンプル調製:(場合によっては凝固した)サンプルを約50℃に加熱して溶融し、トルエンに溶解した。該トルエン溶液をガスクロマトグラフ内に注入し、積分においてはトルエンピークを相応的に除外した。重量%の決定のために使用した内部標準はジエチレングリコールエーテル(重量はサンプルの総量の約10%)であった。
【0104】
ガスクロマトグラフィー分析は以下の方法により行った:50m CP-Wax 52 CB、ID.: 0.32 mm、FD.: 1.2μm; 注入器: 200℃、検出器: 250℃; 80℃ - 3℃/分から200℃、-10℃/分から230℃/15分; tR(ジエチレングリコールジエチルエーテル): 23.0分; tR(イソプレゴール): 30.07分; tR(ネオメントール): 31.08分; tR(ネオイソメントール): 32.5分; tR(メントール): 32.8分; tR(イソメントール): 33.8分; tR(フェニルシクロヘキサン): 35.2分。
【0105】
上部圧力18mbarおよび戻り速度850kg/時で該カラムを運転した。約3mbarの圧力低下が確定された。該カラムの最上部においては101℃の温度が測定され、最下部においては105℃(±0.5K)の温度が測定された。下部抜取り速度15g/時(±2g/時)で該カラムを運転し、留出物抜出しを平衡制御系により50g/時(±5g/時)に調節した。したがって、還流比は約17:1であった。固体形成を防ぐため、該カラムの冷却器は25℃の温度であった。
【0106】
分割壁の上で液体は3:4(供給:抜出し部)の比で分割された。分割壁の抜出し部の中央において、約55g/時(±5g/時)の液体側方抜出し物(f)が膜ポンプの補助により抜出された。
【0107】
側方抜出し口において得られた純粋な生成物は、98.2重量%のメントールだけでなく、0.14重量%のネオメントールおよび0.92 GC重量%のイソメントールおよび0.25 GC面積%のネオイソメントールおよび約0.45重量%のフェニルシクロヘキサンをも含んでいた。該純粋生成物は - 0.9grd(ml*g)の比旋光度を有していた(USP30/NF25「メントール」に対して決定)。同様に室温で液体であった留出物は79.6重量%のメントール、0.67 GC重量%のイソプレゴール、6.9 GC重量%のネオメントールおよび2.5 GC面積%のネオイソメントール、そしてまた、3.0重量のフェニルシクロヘキサンを含んでいた。下部においては、85.7重量%のメントールだけでなく、2.9重量%のイソメントールも測定された。
【0108】
比較例1
ポンプ循環系内にボイラーおよび薄膜蒸発器(0.05m2)を備えた、50mmの内径を有する1mのSulzer DX充填物(約20理論段)を備えた研究室用ガラスカラムにおいて、98.0 GC面積%のL-メントール、1.69 GC面積%のイソプレゴールおよび0.33 GC面積%のネオメントールを含有する合成的に製造されたL-メントール614gを、50mbarの上部圧力でバッチ形態で蒸留した。該カラムの冷却器を40℃の温度の水で運転した。
【0109】
該カラムの上部の温度は122〜123℃であり、下部温度は開始時には124℃、そして蒸留終了近くには125℃であった。画分の凝固を防ぐために、留出物容器を約60℃に電気的に加熱した。15:1の還流比において、3つの画分(31、45および138g)が得られ、10:1の還流比において、116gのもう1つの留出物画分が得られた。得られた第1画分は75.5 GC面積%のL-メントール、19.6 GC面積%のイソプレゴールおよび3.01 GC面積%のネオメントールを含み、室温でも液体のままであった。第2画分は90.6 GC面積%のメントール、7.03 GC面積%のイソプレゴールおよび1.49 GC面積%のネオメントールを含み、第3画分は、相応的に、98.09 GC面積%のL-メントール、0.98 GC面積%のイソプレゴールおよび0.3 GC面積%のネオメントールを含んでいた。第4画分においては、99.52 GC面積%のメントール純度が最終的に得られた。197gの残渣が該ボイラーから単離された(98.5 GC面積%のL-メントール)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラセミまたは光学活性メントールおよびメントールのジアステレオマーを含む物質混合物からラセミまたは光学活性メントールを蒸留により分離することにより、式(I)
【化1】

のラセミまたは光学活性メントールを純粋または富化形態で製造するための連続的方法であって、該蒸留分離を、5〜500mbarの絶対運転圧力で、50〜300理論段と1以上の側方抜出し点とを有する分割壁カラムにおいて行う、上記方法。
【請求項2】
ラセミまたは光学活性メントールおよびメントールのジアステレオマー、そしてまた、式(II)
【化2】

のイソプレゴールおよび/またはそのジアステレオマーを式(III)および/または(IV)
【化3】

のメントンの存在下または非存在下に含む物質混合物からラセミまたは光学活性メントールを蒸留により分離することにより、ラセミまたは光学活性メントールを純粋または富化形態で製造するための、請求項1記載の方法。
【請求項3】
L-メントールおよびメントールのジアステレオマーを含む物質混合物からL-メントールを蒸留により分離することにより、L-メントールを純粋または富化形態で製造するための、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
全混合物に対して85〜99.9重量%のメントール含量を有する物質混合物を使用する、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
メントールが99.5〜99.95重量%の含量で得られる、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
純粋または富化形態で得られたメントールが合計0.5重量%以下のイソプレゴールおよびそのジアステレオマーの含量を有する、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
純粋または富化形態で得られたメントールが合計0.5重量%以下のメントンおよび/またはイソメントン含量を有する、請求項1〜6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
分割壁カラムにおける蒸留分離を20〜100mbarの絶対運転圧力で行う、請求項1〜7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
100〜180理論段を有する分割壁カラムにおいて蒸留分離を行う、請求項1〜8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
10〜60mbarの絶対上部圧力および30〜100mbarの絶対下部圧力で分割壁カラムを運転する、請求項1〜9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
使用する分割壁カラムが、約100〜750m2/m3の比表面積を有する構造化薄板金または織物充填物を含有する充填カラムである、請求項1〜10のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
上部組合せカラム領域(1)、下部組合せカラム領域(6)、精留部(2)とストリッピング部(4)とを含有する供給部(2、4)、およびストリッピング部(3)と精留部(5)とを含有する抜出し部(3、5)を形成するよう該カラムの縦方向に分割壁(T)を有する分割壁カラム(TK)を使用する、請求項1〜11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
供給ストックとして使用するメントール含有物質混合物(a)を供給部(2、4)の中央領域内に供給し、純粋または富化形態のメントールを抜出し部(3、5)の中央領域から液体または気体側方抜出し物として得、1以上の低ボイラー画分を上部組合せカラム領域(1)から取り出し、1以上の高ボイラー画分を下部組合せカラム領域(6)から取り出す、請求項1〜12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
分割壁カラムが流下フィルム蒸発器を備えており、液体形態の高ボイラー画分を該流下フィルム蒸発器の下流に排出させる、請求項1〜13のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
分割壁カラムの冷却器および/または後冷却器を冷却するために使用する熱担体媒体が0〜60℃の温度範囲内で制御可能な温度を有する、請求項1〜14のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
分割壁カラムに接続された全ての生成物伝導ライン、容器および装置ならびに真空系の全ての装置およびラインが断熱されており、温度制御可能な微量加熱系を備えている、請求項1〜15のいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
上部組合せカラム領域(1)、下部組合せカラム領域(6)、精留部(2)とストリッピング部(4)とを含有する供給部(2、4)、およびストリッピング部(3)と精留部(5)とを含有する抜出し部(3、5)を形成するよう該カラムの縦方向に分割壁(T)を有し、50〜300理論段と1以上の側方抜出し点とを有する分割壁カラム(TK)を含んでなる、請求項1〜16のいずれか1項に従いラセミまたは光学活性メントールを純粋または富化形態で連続的に製造するための系であって、該系の全ての生成物伝導成分ならびに好ましくは真空系の全ての装置およびラインが好適な材料で断熱されており、微量加熱に付される、上記系。

【図1】
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【公表番号】特表2010−539072(P2010−539072A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−523454(P2010−523454)
【出願日】平成20年7月23日(2008.7.23)
【国際出願番号】PCT/EP2008/059657
【国際公開番号】WO2009/033870
【国際公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】