説明

紙、板紙及び厚紙の製造方法

(i)唯一のカチオン性ポリマーとしての、遊離塩基の形、塩の形及び/又は四級化された形の、ビニルアミン単位を含有する少なくとも1つのポリマー、(ii)少なくとも100万のモル質量Mwを有する少なくとも1つの線状のアニオン性ポリマー及び/又は少なくとも1つの分枝鎖状のアニオン性の水溶性ポリマー及び/又はベントナイト及び/又はシリカゲル、及び(iii)少なくとも1μmの平均粒子直径及び3dl/g未満の固有粘度を有する少なくとも1つの粒状で架橋されたアニオン性有機ポリマーからなる歩留まり向上剤系の存在でシート形成下に紙料を脱水することによって紙、板紙及び厚紙を製造する方法並びに紙、板紙及び厚紙の製造の際の添加剤としての成分(i)、(ii)及び(iii)からなる歩留まり向上剤系の使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビニルアミン単位を含有する少なくとも1つのポリマー及び少なくとも1つの粒状で架橋されたアニオン性有機ポリマーの存在で紙料を脱水することによって紙、板紙及び厚紙を製造する方法に関する。
【0002】
欧州特許出願公開(EP-A)第0 462 365号明細書からは、紙の製造方法が知られており、その際に、歩留まり向上剤として、粒状で架橋又は未架橋のアニオン性有機ポリマーと共に高分子量カチオン性ポリマー及び場合によりさらに加えてベントナイト又は微粒状シリカが使用される。架橋された有機ポリマーは、750nm未満の粒度を有する。
【0003】
米国特許出願公開(US-A)第2003/0192664号明細書からは、同様に、紙の製造方法が知られており、その際に、水性繊維懸濁液に、(i)500nm未満の粒子直径を有する、粒状で架橋されたイオン性有機ポリマー及び(ii)ビニルアミン単位を含有するポリマーが計量供給される。
【0004】
国際公開(WO-A)第98/29604号パンフレットから知られた紙の製造方法の場合に、まず最初に、水溶性のカチオン性ポリマー凝集剤が紙料に計量供給されるので、セルロースフロックが形成され、これらはついで機械的に粉砕され、かつ3dl/gを上回る固有粘度及び少なくとも0.5の0.005Hzでのtan δ値を有する水溶性のアニオン性の分枝鎖状ポリマー歩留まり向上剤で処理される。引き続き、紙料は、ワイヤ上でシート形成下に脱水される。
【0005】
類似した紙の製造方法は、国際公開(WO-A)第01/34908号パンフレット及び国際公開(WO-A)第01/34909号パンフレットから知られている。しかしながら、紙料の脱水は、その際に、水溶性のカチオン性ポリマー凝集剤の不在でも行われることができる。アニオン性の分枝鎖状ポリマー歩留まり向上剤は、1.5dl/gを上回る固有粘度を有する。しかしながら、これは凝集剤系として粘土もしくはシリカ(ケイ質材料)との組合せで常に使用される。
【0006】
国際公開(WO-A)第02/33171号パンフレットからは、紙の製造方法が知られており、その際に紙料は、シリカゲル(ケイ質材料)及び750nm未満の粒子直径を有し、非膨潤状態の有機微粒子からなる凝集剤系で処理される。前記微粒子は架橋されている。これらは、少なくとも1.1mPasの溶液粘度及びモノマー単位を基準として、4mol ppmを上回る重合導入された架橋剤含量を有する。
【0007】
紙及び紙製品を製造するためには、先の仏国出願第04/04582号の教示によれば、(i)少なくとも1つのカチオン性ポリマー、(ii)少なくとも1つのケイ酸塩、例えばシリカゲル又はベントナイト及び/又はアニオン性又は両性の有機ポリマー及び(iii)少なくとも1μmの粒度及び3dl/g未満の固有粘度(intrinsic viscosity)を有する少なくとも1つの粒状で架橋されたアニオン性ポリマーからなる歩留まり向上剤系が使用される。好ましい一実施態様において、カチオン性ポリマーの添加前に、固定剤、例えばポリ塩化アルミニウム、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド、ビニルアミン単位を含有するポリマー又はジシアンジアミド樹脂が計量供給される。
【0008】
紙を製造する別の方法を提供するという課題が本発明の基礎となっている。
【0009】
前記課題は、本発明によれば、ビニルアミン単位を含有する少なくとも1つのポリマー及び少なくとも1つの粒状で架橋されたアニオン性有機ポリマーからなる歩留まり向上剤系の存在でシート形成下に紙料を脱水することによって紙、板紙及び厚紙を製造する方法を用いて、歩留まり向上剤系として、
(i)唯一のカチオン性ポリマーとして、遊離塩基の形、塩の形及び/又は四級化された形の、ビニルアミン単位を含有する少なくとも1つのポリマー、
(ii)少なくとも100万のモル質量Mwを有する少なくとも1つの線状のアニオン性ポリマー及び/又は少なくとも1つの分枝鎖状のアニオン性の水溶性ポリマー及び/又はベントナイト及び/又はシリカゲル、及び
(iii)少なくとも1μmの平均粒子直径及び3dl/g未満の固有粘度を有する少なくとも1つの粒状で架橋されたアニオン性有機ポリマー
が使用される場合に、解決される。
【0010】
歩留まり向上剤系の成分(ii)は、線状のアニオン性ポリマー又はベントナイト及び/又はシリカゲルのいずれかのみを、並びにしかしながら別個に又は混合物で紙料に計量供給される双方の成分も、含有していてよい。しかしながら、成分(ii)として、少なくとも1つの分枝鎖状のアニオン性の水溶性ポリマー及び/又はベントナイト及び/又はシリカゲル又は線状のアニオン性ポリマー及び分枝鎖状のアニオン性の水溶性ポリマーが使用されることもできる。歩留まり向上剤系の成分(ii)及び(iii)は、同様にその都度別個に又は混合物として、紙料に供給されることができる。
【0011】
本発明の好ましい一実施態様において、歩留まり向上剤系は、
(i)ビニルホルムアミド単位を含有するポリマーの加水分解によって得ることができる、遊離塩基又は塩の形の、ビニルアミン単位を含有する少なくとも1つのポリマー、その際に加水分解度は0.5〜100mol%であり、
(ii)(a)アクリルアミド及び/又はメタクリルアミド及び(b)アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸及び/又は前記の酸の塩からなる、少なくとも200万のモル質量を有する少なくとも1つの線状のアニオン性ポリマー、及び/又はベントナイト及び/又はシリカゲル及び
(iii)少なくとも1つのエチレン系不飽和C3〜C5−カルボン酸、エチレン系不飽和スルホン酸又は前記の酸の塩並びにその都度少なくとも1つの架橋剤を重合導入されて含有し、かつ逆相乳化重合により製造可能である少なくとも1つの粒状で架橋されたアニオン性有機ポリマー
を含有する。
【0012】
ビニルアミン単位を含有するポリマー(i)は知られている。これらは、通常、N−ビニルホルムアミドのホモポリマー又はコポリマーから、それぞれのポリマー中に含まれるビニルホルムアミド単位からのホルミル基の加水分解によってビニルアミン単位の形成下に製造される。ホルミル基の加水分解は、酸又は塩基で並びに酵素により実施されることができる。ビニルアミン単位を含有するポリマーは、例えば、米国特許(US-A)第4,421,602号明細書、米国特許(US-A)第5,334,287号明細書、欧州特許出願公開(EP-A)第0 216 387号明細書、米国特許(US-A)第5,981,689号明細書、国際公開(WO-A)第00/63295号パンフレット、米国特許(US-A)第6,121,409号明細書及び技術水準に挙げられた米国特許出願公開(US-A)第2003/0192664号明細書に記載されている。ホモポリマー又はコポリマー中に含まれるビニルホルムアミド単位は例えば、5〜100mol%、好ましくは15〜98mol%及び特に20〜95mol%が加水分解される。
【0013】
特に技術的に興味深いのは、ポリ−N−ビニルホルムアミドの加水分解によって得ることができるポリビニルアミンである。ビニルアミン単位を含有するポリマーのモル質量Mwは、例えば10 000〜1500万、たいてい30 000〜500万及び特に100万〜500万である。
【0014】
本発明の一実施態様において、歩留まり向上剤系の成分(i)として、(a)10 000〜500 000、好ましくは45 000〜350 000のモル質量を有するビニルアミン単位を含有するポリマー、及び(b)少なくとも100万のモル質量を有するビニルアミン単位を含有するポリマーからなる混合物が使用される。(a):(b)の質量比は、幅広い範囲内で、例えば90:10〜10:90で変えることができる。たいてい、これは60:40〜40:60の範囲内である。
【0015】
ビニルアミン単位を含有するポリマーは、各々任意の形で、例えば遊離塩基の形で使用されることができる。ポリビニルアミンは、ポリ−N−ビニルホルムアミドの加水分解が塩基、例えばカセイソーダ液又はカセイカリ液を用いて実施された場合に、この形で存在する。N−ビニルホルムアミド単位を含有するポリマーの加水分解の際に、酸、例えば塩酸、硫酸又はリン酸が使用される場合に、酸の相応する塩が生じる。しかしながら、ビニルアミン単位を含有するポリマーは、四級化された形で使用されることもでき、例えば、ビニルアミン単位を含有するポリマーは、塩化メチル、硫酸ジメチル、塩化エチル又は塩化ベンジルで四級化されることができる。
【0016】
ビニルアミン単位を含有するポリマーは、例えば、乾燥紙料を基準として、0.003〜0.3質量%の量で使用される。これらのポリマーは、唯一のカチオン性歩留まり向上剤として使用される。
【0017】
歩留まり向上剤系の成分(ii)は、少なくとも100万のモル質量を有する少なくとも1つの線状のアニオン性ポリマー及び/又は少なくとも1つの分枝鎖状のアニオン性の水溶性ポリマー及び/又はベントナイト及び/又はシリカゲルを含有する。好ましくは、使用される線状ポリマーは、少なくとも200万、たいてい250万〜2000万のモル質量Mwを有する。これらは、例えば、(a)アクリルアミド及び/又はメタクリルアミド及び(b)アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸及び/又は前記の酸の塩の重合によって製造される。成分(ii)の好ましくは使用されるアニオン性ポリマーは、アクリルアミド及びアクリル酸もしくはアクリル酸Naからなるコポリマー、アクリルアミド及びメタクリル酸からなるコポリマー、アクリルアミド及びビニルスルホン酸Naからなるコポリマー並びにアクリルアミド及び2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸からなるコポリマーである。コポリマー中のアニオン性モノマーの割合は、例えば5〜95mol%であってよい。
【0018】
分枝鎖状のアニオン性の水溶性ポリマーは知られている、国際公開(WO-A)第98/29604号パンフレット、欧州特許(EP-B)第1 167 392号明細書及び欧州特許出願公開(EP-A)第0 374 458号明細書参照。これらは3dl/gを上回る固有粘度を有する。これらは、例えば、調節剤の不在で重合される場合に、使用されるモノマーを基準として6mol ppm未満の量の少なくとも1つの架橋剤の存在でのアニオン性モノマー、例えばアクリル酸、メタクリル酸、ビニルスルホン酸及び/又はそれらの塩の逆相懸濁重合によって得ることができる。アニオン性モノマーの重合が少なくとも1つの調節剤の存在で実施される場合には、− 前記の文献箇所から明らかになっているように − アニオン性モノマーの重合は少なくとも1つの架橋剤6〜25mol ppmの存在で行われることができる。架橋剤は、周知のように、分子中に少なくとも2つのエチレン系不飽和二重結合を含有する化合物、例えばメチレンビスアクリルアミド、ペンタエリトリトールトリアクリラート又はグリコールジアクリラートである。
【0019】
成分(ii)の線状のアニオン性ポリマー及び/又は分枝鎖状のアニオン性の水溶性ポリマーは、例えば、乾燥紙料を基準として、0.003〜0.3質量%の量で使用される。
【0020】
成分(ii)は、線状及び/又は分枝鎖状のアニオン性ポリマーに加えて、場合によりベントナイト及び/又はシリカゲルを含有していてよい。ベントナイトは、本発明の範囲内で、微粒状の、水中で膨潤可能な鉱物、例えばベントナイト自体、ヘクトライト、アタパルジャイト、モンモリロナイト、ノントロナイト、サポナイト、ソーコナイト、ホルマイト及び海泡石であると理解されるべきである。シリカゲルとして、例えば変性及び未変性のシリカが適している。ベントナイト及び/又はシリカゲルは、通常、水性スラリーの形で使用される。本発明による方法の場合にベントナイト及び/又はシリカゲルが使用される場合には、その量は、乾燥紙料を基準として、0.01〜1.0質量%、好ましくは0.1〜0.5質量%である。
【0021】
歩留まり向上剤系は、成分(iii)として、少なくとも1μmの平均粒子直径及び3dl/g未満の固有粘度を有する粒状で架橋されたアニオン性有機ポリマーを含有する。これは、例えば、知られた水性ポリマー分散液、油中水型ポリマー分散液又は高い中性塩濃度を有するか又は保護コロイドで安定化されているいわゆる水中水型ポリマー分散液である。架橋されたアニオン性ポリマー粒子の平均粒子直径は、例えば、1〜20μm、好ましくは1〜10μmの範囲内である。
【0022】
本発明により歩留まり向上剤系の成分(iii)として使用される、粒状で架橋されたアニオン性有機ポリマーは、例えば、
(a)少なくとも1つのアニオン性モノマー 10〜100mol%及び
(b)少なくとも1つの非イオン性モノマー 0〜90mol%
を、
(c)(a)及び(b)の総和を基準として、好ましくは少なくとも7ppm、特に少なくとも15ppmの量の少なくとも1つの架橋剤
の存在で重合させる
ことによって製造可能である。ppmの記載はmol ppmである。
【0023】
モノマー(a)の例は、エチレン系不飽和C3〜C5−カルボン酸、エチレン系不飽和スルホン酸及び/又は前記の酸の塩である。そのようなモノマーの個々の例は、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、スルホプロピルアクリラート、スルホプロピルメタクリラート、ビニルスルホン酸並びに前記のモノマーのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩及びアンモニウム塩である。好ましくは、アクリル酸又はメタクリル酸のナトリウム塩、カリウム塩及び/又はアンモニウム塩が使用される。
【0024】
モノマー(b)として、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、N−ビニルホルムアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、酢酸ビニル、炭素原子1〜6個を有する一価アルコールのアクリル酸エステル、炭素原子1〜6個を有する一価アルコールのメタクリル酸エステル及びスチレンが適している。水に不溶もしくは難溶のモノマーは、重合の際に、これらが水溶性モノマーとも共重合するそのような量でのみ、例えば20mol%未満、好ましくは10mol%未満の量で使用される。
【0025】
成分(c)として、粒状のアニオン性ポリマーの製造の際に少なくとも1つの架橋剤が使用される。架橋剤は、分子中に少なくとも2つのエチレン系不飽和二重結合を有する化合物、例えば、メチレンビスアクリルアミド、グリコールジアクリラート、グリコールジメタクリラート、トリメチロールプロパントリアクリラート、トリメチロールプロパントリメタクリラート、ペンタエリトリトールトリアクリラート、ペンタエリトリトールテトラアクリラート、アリルアクリラート、アリルメタクリラート、トリアリルアミン及びブタンジオールジアクリラートであると理解されるべきである。
重合の際に使用される架橋剤の量は、使用されるモノマーを基準として、例えば7〜500ppm、好ましくは15〜200ppm(その都度モルで計算)である。
【0026】
粒状で架橋されたアニオン性ポリマーは、好ましくは、重合調節剤の不在で製造される。しかしながら、重合は、調節剤の存在でも実施されることができるが、しかし、適した粒状のアニオン性ポリマーを得るためにたいていより多量の架橋剤が必要とされる。架橋されたアニオン性ポリマー粒子は好ましくは、逆相乳化重合の方法によって製造される。この方法の場合に、水性モノマー溶液は炭化水素油中で少なくとも1つの油中水型乳化剤を用いて乳化され、引き続いて重合される。生じるポリマー粒子は、W/O乳濁液から単離され、かつ例えば粉末の形で取得されることができる。同じように、ポリマー粒子を水性分散液又は水中水型分散液から単離することが可能である。好ましくは、例えば15〜50質量%のポリマー濃度を有する粒状で架橋されたアニオン性ポリマーの水性分散液が使用される。実地において、好ましくはN,N′−メチレンビスアクリルアミドが架橋剤として、例えば5〜10 000、特に15〜1000質量ppmの量で、架橋されたアニオン性ポリマー粒子の製造に使用される。
【0027】
架橋されたアニオン性ポリマー粒子は例えば、ISO 1628/1, 1988年10月, "Guidelines for the standardization of methods for the determination of viscosity number and limiting viscosity number of polymers in dilute solution"によって決定される、3dl/g未満、例えば2〜2.95dl/gの範囲内の固有粘度(intrinsic viscosity)を有する。
【0028】
粒状で架橋されたアニオン性有機ポリマー(iii)は、例えば30〜1000g/t、好ましくは30〜600g/t乾燥紙料の量で使用される。
【0029】
成分(i)、(ii)及び(iii)からなる歩留まり向上剤系は、例えば、まず最初に、成分(i)の少なくとも1つの化合物が、濃厚紙料(Dickstoff)中へ計量供給され、かつ混合物がその後、水で希釈されるようにして使用されることができる。しかしながら、成分(i)は希釈紙料(Duennstoff)(例えば0.7〜1.5質量%の固体含量)中へも計量供給され、その希釈紙料はその後、場合によりせん断にかけられ、ついで成分(ii)の有機ポリマー並びに成分(iii)が添加されることができる。成分(ii)及び(iii)の有機ポリマーは有利に、混合物の形で 希釈紙料に添加されることもできる。ベントナイト及び/又はシリカゲルが成分(ii)として使用される場合には、この成分の無機成分は、成分(ii)の有機ポリマーの添加の前又は後に計量供給されるか、又はこれらは同時に、しかし別個に添加される。しかしながら、これらは、歩留まり向上剤系の成分(ii)として単独でも使用されることができる。
【0030】
2つの異なるポリビニルアミンが成分(i)として使用される場合に、例えば、45 000〜350 000のモル質量を有する、ビニルアミン単位を含有する成分は、既に濃厚紙料(固体含量>1.5質量%)中へ計量供給され、パルプは水の添加により希釈され、成分(i)のビニルアミン単位を含有するその他のポリマーが添加され、混合物はついでせん断段階にかけられ、歩留まり向上剤系の成分(ii)及び成分(iii)が添加され、その後紙料は脱水される。しかしながら、まず最初に成分(iii)が、かつその後に成分(ii)が、希釈紙料に計量供給されることもできる。しかしながら、まず最初に成分(i)が前記のように紙料に添加され、ついで成分(ii)が計量供給され、混合物がせん断段階にかけられ、その後成分(iii)が添加されてから、紙料が脱水されるようにして行うこともできる。しかしながら、最後のせん断段階の後でヘッドボックスの前に、連続して、まず最初に成分(i)及びついで成分(ii)の有機アニオン性ポリマー並びに成分(iii)及び引き続き成分(ii)の無機化合物が計量供給されるようにして行うこともできる。
【0031】
別の変法の場合に、成分(ii)として、有機ポリマー及びベントナイト及び/又はシリカゲルが使用される。この場合に、例えば、まず最初に成分(ii)の無機化合物が希釈紙料中へせん断の前又は後に計量供給され、ついで、任意の順序で成分(i)及び(iii)並びに場合により成分(ii)の有機線状ポリマーが添加されるようにして行うことができる。歩留まり向上剤系の成分の添加のためのさらなる変法が可能である。成分(i)、(ii)及び(iii)の最も有利な計量供給順序は、局所的な状況にその都度依存する。
【0032】
さらに、本発明の対象は、紙、板紙及び厚紙の製造の際の添加剤としての、
(i)唯一のカチオン性ポリマーとしての、遊離塩基の形、塩の形及び/又は四級化された形の、ビニルアミン単位を含有する少なくとも1つのポリマー、
(ii)少なくとも100万のモル質量Mwを有する少なくとも1つの線状のアニオン性ポリマー及び/又は少なくとも1つの分枝鎖状のアニオン性の水溶性ポリマー及び/又はベントナイト及び/又はシリカゲル、及び
(iii)少なくとも1μmの平均粒子直径及び3dl/g未満の固有粘度を有する少なくとも1つの粒状で架橋されたアニオン性有機ポリマー
からなる歩留まり向上剤系の使用である。個々の成分は、紙料に、任意の順序で供給されることができ、その際に成分(ii)の成分は、個々に又は混合物で計量供給されることができ、かつ成分(ii)及び(iii)は、別個に又はまた混合物としても紙料に添加されることができる。
【0033】
本発明による方法によれば、意外なことに、アニオン性ポリマー及び1μm未満の粒度を有する粒状で架橋されたアニオン性ポリマーとの組合せでのカチオン性ポリアクリルアミドの使用に比較して、顕著に改善された歩留まりが得られる。歩留まり向上剤系の成分としてのビニルアミン単位を含有するポリマーの唯一の使用は、歩留まり向上剤系において通常使用されるカチオン性ポリアクリルアミドと比較して、脱水特性の改善をもたらす。
【0034】
本発明による方法によって、全ての紙料が加工されることができる。例えば、全ての種類のセルロース繊維、天然繊維だけでなく回収された繊維、特に古紙からの繊維から出発していてよい。パルプを製造するための繊維状物質として、このために一般に使われている全ての品質、例えば木材パルプ、さらしパルプ及び未ざらしパルプ並びに全ての一年生植物からの紙料が考慮に値する。木材パルプには、例えば、砕木パルプ、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、加圧式砕木パルプ、セミケミカルパルプ、高収率ケミカルパルプ及びリファイナーメカニカルパルプ(RMP)が含まれる。ケミカルパルプとして、例えば硫酸塩パルプ、亜硫酸塩パルプ及びソーダパルプが考慮に値する。好ましくは、未ざらしクラフトパルプとも呼ばれる、未ざらしパルプが使用される。紙料を製造するために適した一年生植物は、例えばコメ、コムギ、サトウキビ及びケナフである。パルプを製造するためには、有利に古紙が使用されることもでき、これは単独で又は他の繊維状物質との混合物で使用されるか、又は一次紙料及びリサイクルされるコートブロークからなる繊維混合物、例えば、リサイクルされるコートブロークとの混合物での漂白されたマツ硫酸塩から出発される。
【0035】
歩留まり向上剤系(i)、(ii)及び(iii)は、紙及び紙製品の製造の際の常用のプロセスケミカルと共に使用されることができる。常用のプロセスケミカルは、例えば、添加剤、例えばデンプン、顔料、蛍光増白剤、染料、殺生物剤、紙力増強剤、サイズ剤、固定剤及び消泡剤が使用されることができる。前記の添加剤は、その際に、それ以外は常用の量で使用される。デンプンとして、例えば全てのデンプン種、例えば天然デンプン又は加工デンプン、特にカチオン加工デンプンが使用されることができる。固定剤として、例えば、ポリジメチルジアリルアンモニウムクロリド、ジシアンジアミド樹脂、ジカルボン酸及びポリアミンからなりエピクロロヒドリンで架橋された縮合生成物、ポリ塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム及びポリアルミニウムクロロスルファートが適している。サイズ剤として、例えば、ロジンサイズ、アルキルジケテン又はアルケニルコハク酸無水物が考慮に値する。
【実施例】
【0036】
例及び比較例において、次の出発物質を使用した:
PVAm 1: 45 000Dのモル質量Mwを有するポリビニルアミン(ポリ−N−ビニルホルムアミドの加水分解により製造、加水分解度95mol%、すなわちポリマーは、ビニルアミン単位に加えてさらにビニルホルムアミド単位を含有する)
PVAm 2: ビニルアミン単位20mol%及びN−ビニルホルムアミド単位80mol%からなり、150万Dのモル質量Mwを有するポリマー(ポリ−N−ビニルホルムアミドの加水分解により製造、加水分解度20mol%)
Lin.PAM/PAS: (a)アクリルアミド70mol%及びナトリウムアクリラート30mol%からなる線状ポリマー、Mw 500万(歩留まり向上剤成分(ii)の有機ポリマー) 90質量%及び
(b)アクリルアミド30mol%及びアンモニウムアクリラート70mol%からなる粒状で架橋されたアニオン性コポリマー、平均粒度1.2μm、固有粘度2.5dl/g(歩留まり向上剤成分(iii))、逆相乳化重合により製造 10質量%
からなる混合物。
【0037】
Mikrofloc(登録商標) XFB: ベントナイト
PAM: アクリルアミド及びジメチルアミノエチルアクリラートからなるコポリマー、塩化メチルで四級化、カチオン性15mol%、モル質量Mw 500万。
【0038】
固有粘度(intrinsic viscosity)を、ISO 1628/1, 1988年10月, "Guidelines for the standardization of methods for the determination of viscosity number and limiting viscosity number of polymers in dilute solution"によって決定した。
ポリマーのモル質量を、光散乱によって決定した。
【0039】
例1〜5及び比較例1〜8
歩留まり作用(全歩留まりFPR及び灰分歩留まりFPAR)を、Britt Jarによって決定した。全ての例について、TMP(サーモメカニカルパルプ) 70質量%、漂白したマツ硫酸塩30質量%及び粉砕炭酸カルシウム30質量%からなる紙料を使用した。紙料を0.77質量%の固体含量に希釈し、第1表に記載された歩留まり向上剤系の成分とその都度混合し、その際に次の順序を守った:場合によりPVAm 1、PVAm2又はPAM(比較例)、Lin.PAM/PAS及び場合によりベントナイト。ベントナイトが使用された場合に、ベントナイト及びLin.PAM/PASを同時に計量供給した。歩留まりの値は、第1表に記載されている。
【0040】
脱水時間を、ショッパー−リーグラー試験装置中で、試験すべき繊維懸濁液その都度1lをその中で脱水し、ろ液600mlの通過に必要であった時間を決定することによって決定した。結果は、第1表に記載されている。
【0041】
さらに、標準の実験室用シートフォーマー中で、前記の紙料から80g/m3の坪量を有するシートを形成し、かつシートの形成を、Techpap社の2D実験室用Formation Sensorを用いて決定した。測定される値が低ければ低いほど、シートの形成はより良好になる。
【0042】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニルアミン単位を含有する少なくとも1つのポリマー及び少なくとも1つの粒状で架橋されたアニオン性有機ポリマーからなる歩留まり向上剤系の存在でシート形成下に紙料を脱水することによって紙、板紙及び厚紙を製造する方法において、歩留まり向上剤系として、
(i)唯一のカチオン性ポリマーとして、遊離塩基の形、塩の形及び/又は四級化された形の、ビニルアミン単位を含有する少なくとも1つのポリマー、
(ii)少なくとも100万のモル質量Mwを有する少なくとも1つの線状のアニオン性ポリマー及び/又は少なくとも1つの分枝鎖状のアニオン性の水溶性ポリマー及び/又はベントナイト及び/又はシリカゲル、及び
(iii)少なくとも1μmの平均粒子直径及び3dl/g未満の固有粘度を有する少なくとも1つの粒状で架橋されたアニオン性有機ポリマー
を使用することを特徴とする、
紙、板紙及び厚紙を製造する方法。
【請求項2】
歩留まり向上剤系の成分(ii)及び(iii)を、別個に又は混合物として紙料に計量供給する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
歩留まり向上剤系が、
(i)ビニルホルムアミド単位を含有するポリマーの加水分解によって得ることができる、遊離塩基又は塩の形の、ビニルアミン単位を含有する少なくとも1つのポリマー、その際に加水分解度は0.5〜100mol%であり、
(ii)(a)アクリルアミド及び/又はメタクリルアミド及び(b)アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸及び/又は前記の酸の塩からなる、少なくとも200万のモル質量を有する少なくとも1つの線状のアニオン性ポリマー、及び/又はベントナイト及び/又はシリカゲル及び
(iii)少なくとも1つのエチレン系不飽和C3〜C5−カルボン酸、エチレン系不飽和スルホン酸又は前記の酸の塩並びにその都度少なくとも1つの架橋剤を重合導入されて含有し、かつ逆相乳化重合により製造可能である少なくとも1つの粒状で架橋されたアニオン性有機ポリマー
を含有する、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
歩留まり向上剤が、成分(i)として、10 000〜500 000のモル質量Mwを有するビニルアミン単位を含有するポリマー及び少なくとも100万のモル質量を有するビニルアミン単位を含有するポリマーを含有する、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
ビニルアミン単位を含有するポリマー(i)を、乾燥紙料を基準として、0.003〜0.3質量%の量で使用する、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
成分(ii)の線状のアニオン性ポリマー及び/又は分枝鎖状のアニオン性の水溶性ポリマーを、乾燥紙料を基準として、0.003〜0.3質量%の量で使用する、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
粒状で架橋されたアニオン性有機ポリマー(iii)を30〜1000g/t乾燥紙料の量で使用する、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
成分(ii)のベントナイト及び/又はシリカゲルを、乾燥紙料を基準として、0.01〜1.0質量%の量で使用する、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
紙、板紙及び厚紙の製造の際の添加剤としての、
(i)唯一のカチオン性ポリマーとしての、遊離塩基の形、塩の形及び/又は四級化された形の、ビニルアミン単位を含有する少なくとも1つのポリマー、
(ii)少なくとも100万のモル質量Mwを有する少なくとも1つの線状のアニオン性ポリマー及び/又は少なくとも1つの分枝鎖状のアニオン性の水溶性ポリマー及び/又はベントナイト及び/又はシリカゲル、及び
(iii)少なくとも1μmの平均粒子直径及び3dl/g未満の固有粘度を有する少なくとも1つの粒状で架橋されたアニオン性有機ポリマー
からなる歩留まり向上剤系の使用。

【公表番号】特表2009−508017(P2009−508017A)
【公表日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−530479(P2008−530479)
【出願日】平成18年9月5日(2006.9.5)
【国際出願番号】PCT/EP2006/066019
【国際公開番号】WO2007/031442
【国際公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】