説明

紙の欠陥発生抑制方法

【課題】
白水循環系における欠陥発生抑制剤あるいはその方法に求められることは、集塊化したピッチ分を、粗大粘着物になる前に繊維へ定着させ抄紙工程内から紙として排出し、白水循環系中の集塊化したマイクロピッチや濁度成分の濃度を低下させることであると考えられる。従って本発明の目的は、白水循環系において微細な状態からある程度成長し集塊化したピッチ分を、粗大粘着物になる前に繊維へ定着させ抄紙工程内から紙として排出し、白水循環系中の集塊化したマイクロピッチや濁度成分の濃度を低下させる方法を提供する。
【解決手段】
白水による希釈前の製紙原料中に重量平均分子量1000〜10万の縮合系高分子あるいは重合系水溶性高分子(A)を添加し、白水によって前記製紙原料中を希釈した後、重量平均分子量50万〜600万の重合系水溶性高分子(B)を添加し、適宜歩留向上剤を添加し抄紙することによって達成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製紙における障害作用物質による紙の欠陥発生抑制方法に関し、詳しくは白水による希釈前の製紙原料中に下記A群から選択される一種以上の水溶性高分子(重量平均分子量1000〜10万の縮合系高分子および重合系高分子)を添加し、微細な障害作用発生物質の表面電荷を調節し、白水によって前記製紙原料中を希釈した後、下記B群から選択される一種以上の水溶性高分子(重量平均分子量50万〜600万の重合系高分子)を添加し、適宜歩留向上剤を添加し抄紙することを特徴とする障害作用物質による紙の欠陥発生抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製紙用水中には種々の溶存物質あるいは微細な粒子状物質が存在している。これらの物質は、パルプ製造時に由来するものと、古紙製造時に由来するものとがある。すなわちパルプ製造時に由来するものとしては、リグニンスルホネート、リグニン分解生成物、木材抽出物、セルロース誘導体(例えば、ヘミセルロース)などである。また古紙製造時に由来するものとしては、
サイジング剤、分散剤、染料、蛍光漂白剤、コーティングバインダー、湿潤剤、珪酸ナトリウムなどである。さらに導入する工業用水などにもフミン酸やカルシウム成分なども混入する。
【0003】
このうちアニオントラッシュと呼ばれる溶存性あるいは親水性のアニオン性成分、すなわちホワイト顔料、分散剤、改質でんぷん、カルボキシメチルセルロース、リグニンスルホネート、リグニン分解生成物、ヘミセルロースなどは、一般的な低分子量カチオン性水溶性高分子物質により処理することによって歩留率や濾水性はかなりの程度改善される。しかし水に溶解しない疎水的な成分、すなわちは木材抽出物、サイジング剤、あるいはコーティングバインダーなどは、微細なコロイド粒子として製紙原料中に分散している場合は、悪影響は少ない。しかしこれらのコロイドは表面電荷が低く、アニオン性に弱く解離している場合、あるいは解離もしていない場合もあり、基本的に不安定な物質である。したがって温度、シェア、pH、あるいはピッチ障害を抑制するために添加される有機や無機のカチオン性物質などによってコロイドが破壊され粗大化する。その結果、表面が粘着性を帯びているため電荷を調節しただけでは、それらが紙中に抄きこまれた場合、またワイヤー、フェルト、ローラーあるいはドライヤーの各表面に再付着し、一定以上の大きさに成長すると製造中の成紙に付着し、欠点などの障害を引き起こす。またこれら疎水的な成分は、カチオン性水溶性高分子物質により処理し、粒子系を粗大化させてしまうこともある。そうすると上記の障害はより顕著に発生し、カチオン性水溶性高分子物質などの処理剤が逆効果になる場合もあるので注意を要する。
【0004】
上記の疎水的な成分による障害を防止するための薬剤も種々提案はされている。例えば特許文献1は、天然ピッチトラブル抑制のためジメチルジアリルアンモニウム塩化物/アクリル酸/(場合によっては、アクリル酸アルキルエステル類)共重合物を抄紙系のウェットエンドに添加する方法が開示されている。また、パルプ製造の漂白工程アルカリ抽出において、原料木材に由来するパルプ中のピッチを除去する方法として、水溶性の不飽和カルボン酸と疎水性単量体との共重合体を、漂白後のパルプスラリ−が次ぎのアルカリ抽出塔に入る前に添加することを開示している(特許文献2)。さらに木材あるいは古紙由来の種々のピッチに起因するトラブル防止方法として、ポリスチレンスルホン酸(塩)やポリイソプレンスルホン酸(塩)を、ピッチが付着し易い個所へのシャワ−水中に溶解し、専用のシャワ−や噴射ノズル、あるいは水ドクタ−などで供給することが記載されている(特許文献3)。またジアルキルアミノアルキレンアミンとエピハロヒドリン縮合物(特許文献4)などもピッチに起因するトラブル防止剤として開示されている。さらにアミジン構造単位を有する水溶性高分子としては、Nービニルホルムアミドとアクリロニトリル共重合物より合成される製造方法が特許文献5に開示されている。しかしこれらの薬剤は、粘着性を有する疎水的な成分による障害を防止するためには、十分ではなく、特にワイヤー、フェルト、ローラーあるいはドライヤーの各表面に再付着に関し検討を要する問題を残している。
【0005】
「ピッチ」という用語は、低分子量及び中分子量の様々な天然の疎水性有機樹脂類を指し、またこれらの樹脂類が原因となるパルプ製造と製紙処理工程の際の析出物を指す。ピッチは、脂肪酸、樹脂酸、それらの不溶性の塩類、及び脂肪酸とグリセロール(トリグリセリド類の如きもの)やステロール類とのエステルなどをさす。また古紙製造時に由来するサイジング剤、ワックス類やコーティングバインダーなどの疎水的微細粒子は、「ステイッキー」と呼ばれているが、「ピッチ」と区別しないで使用される場合もある。これらの化合物は特徴を示す程度の、温度に依存する粘度、粘着性、及び凝集強さを示す。それらは単独で、あるいは不溶性の無機塩類、充填材、繊維、脱泡剤成分、被覆用結合剤、その他同様のものと一緒に析出することがある。
【0006】
これらアニオントラッシュ、マイクロピッチ、濁度成分が微細な状態で製紙原料中に存在している限り製紙へ欠陥として発生することは少ないが、攪拌やエアレーション、pH変化、薬剤添加により集塊化され紙の欠陥発生原因となる。
抄紙系内でピッチ分がどのような要因で成長・粗大化し原因物質になっていくかについて様々な報告がされているが、第一には原料チェストや、混合チェスト、マシンチェスト、種箱までのおよそ3〜4%の原料系であり、もう一つは種原料が循環白水で希釈され、インレットとなり、その白水がさらに循環する白水循環系である。すなわち原料チェストや、混合チェスト、マシンチェスト、種箱までの間で集塊化され、ある程度の大きさの粒子となり、これらやや粗大化した粒子が、白水循環系においてパルプ繊維に定着せず集塊化が進んだピッチ分は、微細繊維や填料を巻き込んで粗大粘着物になり、抄紙機において湿紙にとまり欠陥となると推定される。
【0007】
【特許文献1】特開平4−241184号公報
【特許文献2】特開平11−256490号公報
【特許文献3】特開平11−189987号公報
【特許文献4】特開平11−43895号公報
【特許文献5】特開平5―192513号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
白水循環系における欠陥発生抑制剤あるいはその方法に求められることは、集塊化したピッチ分を、粗大粘着物になる前に繊維へ定着させ抄紙工程内から紙として排出し、白水循環系中の集塊化したマイクロピッチや濁度成分の濃度を低下させることであると考えられる。従って本発明の目的は、白水循環系において微細な状態からある程度成長し集塊化したピッチ分を、粗大粘着物になる前に繊維へ定着させ抄紙工程内から紙として排出し、白水循環系中の集塊化したマイクロピッチや濁度成分の濃度を低下させる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するため検討を重ねた結果、以下に述べるような製造方法を発見した。すなわち本発明の請求項1の発明は、白水による希釈前の製紙原料中に下記A群から選択される一種以上の水溶性高分子(A)を添加し、微細な障害作用発生物質の表面電荷を調節し、白水によって前記製紙原料中を希釈した後、下記B群から選択される一種以上の水溶性高分子(B)を添加し、適宜歩留向上剤を添加し抄紙することを特徴とする障害作用物質による紙の欠陥発生抑制方法である。
A群(重量平均分子量1000〜10万の縮合系高分子および重合系高分子)
B群(重量平均分子量50万〜600万の重合系高分子)
【0010】
請求項2の発明は、前記水溶性高分子(A)が、
(a)ポリビニルアミンおよびポリビニルアミン繰り返し単位を有する水溶性共重合物
(b)四級アンモニウム塩基を含有するポリアミン/エピハロヒドリン縮合物
(c)2−アミノアルキレン(メタ)アクリレート重合物および2−アミノアルキレン(メタ)アクリレート繰り返し単位を有する水溶性共重合物
(d)ポリエチレンイミンおよび四級アンモニウム塩基を含有するポリエチレンイミン変性物
であることを特徴とする請求項1に記載の障害作用物質による紙の欠陥発生抑制方法である。
【0011】
請求項3の発明は、前記水溶性高分子(B)が、
(e)ポリビニルアミンおよびポリビニルアミン繰り返し単位を有する水溶性共重合物
(f)2−アミノアルキレン(メタ)アクリレート重合物および2−アミノアルキレン(メタ)アクリレート繰り返し単位を有する水溶性共重合物
(g)ジアルキルアミノアルキレン(メタ)アクリレートとその四級化物の重合物および共重合物、および(メタ)ジアリルアミンあるいはその四級化物の重合物および共重合物であることを特徴とする請求項1に記載の障害作用物質による紙の欠陥発生抑制方法である。
【0012】
請求項4の発明は、水溶性高分子(A)およびB水溶性高分子(B)のpH3におけるイオン当量値が、それぞれ5.0〜23meq/g、2.0〜23meq/gであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の障害作用物質による紙の欠陥発生抑制方法。
【0013】
請求項5の発明は、前記水溶性高分子(A)及び水溶性高分子(B)の水溶液粘度が、抄紙前の製紙原料中に添加する時点で100〜5,000mPa・s(B型粘度計により25℃で測定時)であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の障害作用物質による紙の欠陥発生抑制方法である。
【0014】
請求項6の発明は、前記水溶性高分子(A)から選択される一種以上を、抄紙前の製紙工程中において、製紙原料が白水によって希釈される前の複数の場所において分割して添加することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の障害作用物質による紙の欠陥発生抑制方法である。
【0015】
請求項7の発明は、前記複数の場所が、原料チェスト出口、原料混合チェスト、マシンチェスト、種箱出口から選択される二箇所以上であることを特徴とする請求項6に記載の障害作用物質による紙の欠陥発生抑制方法である。
【0016】
請求項8の発明は、前記微細な障害作用発生物質が、アニオントラッシュ、マイクロピッチ、濁度成分から選択される一種以上であることを特徴とする請求項1に記載の障害作用物質による紙の欠陥発生抑制方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の障害作用物質による紙の欠陥発生抑制方法は、白水による希釈前の製紙原料中にA群から選択される一種以上の水溶性高分子(重量平均分子量1000〜10万の縮合系高分子および重合系高分子)を添加し、微細な障害作用発生物質の表面電荷を調節し、白水によって前記製紙原料中を希釈した後、B群から選択される一種以上の水溶性高分子(重量平均分子量50万〜600万の重合系高分子)を添加し、適宜歩留向上剤を添加し抄紙することを特徴とする。
【0018】
すなわち原料チェストや、混合チェスト、マシンチェスト、種箱までのおよそ3〜4%の原料系においてある程度の大きさの粒子となり、これらやや粗大化した粒子をA群から選択される一種以上の水溶性高分子(重量平均分子量1000〜10万の縮合系高分子および重合系高分子)を添加することにより、粗大化することを防ぐ。さらに白水添加後、B群から選択される一種以上の水溶性高分子(重量平均分子量50万〜600万の重合系高分子)を添加することにより、前記やや粗大化した粒子が、白水循環系においてパルプ繊維に定着せず集塊化が進んだピッチ分は、微細繊維や填料を巻き込んで粗大粘着物になることを防ぎ、粗大粘着物になる前に繊維へ定着させ、抄紙工程内から紙として排出し、白水循環系中の集塊化したマイクロピッチや濁度成分の濃度を低下させる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の障害作用物質による紙の欠陥発生抑制方法は、欠陥発生の原因物質と考えられるアニオントラッシュ、マイクロピッチおよび濁度成分お製紙原料系と白水系における挙動に関して考察し、その結論としてどのようなピッチ抑制剤を、製紙工程におけるどのような場所で添加すればよいかを検討した結果、考案された紙の欠陥発生抑制方法である。すなわち抄紙系内においてピッチ分が成長するメカニズムは大きく二つに分けられると考えている。一つは、原料チェストや、混合チェスト、マシンチェスト、種箱までのおよそ3〜4%の原料系においてであり、もう一つは、種原料が循環白水で希釈され、インレットとなり、その白水がさらに循環する白水循環系である。原料チェストや、混合チェスト、マシンチェスト、種箱までの約3〜4%の原料濃度の部分においては、アニオントラッシュやマイクロピッチ、濁度成分は、攪拌やエアレーション、pH変化、薬剤添加により集塊化される。
【0020】
一方白水系における種原料繊維と原因物質との関係は、種原料が微細繊維を多く含む白水で希釈されることにより、種原料の状態よりも長繊維以外の、微細繊維やピッチ分等が多くなり、それらが循環系のためお互いが接触、衝突する時間がより長くなることである。実際の抄紙工程の白水循環系では、原料系でマイクロピッチや濁度成分の繊維への定着や、集塊化が進んでいるため、アニオントラッシュ、マイクロピッチ、濁度成分は少ない場合が多い。そのためインレット・白水等のカチオン要求量やマイクロピッチ、濁度の測定値が多くのケースで低いことである。そしてパルプ繊維に定着せず集塊化が進んだピッチ分は、微細繊維や填料を巻き込んで粗大粘着物になり、欠陥の要因になると想定される。白水循環系での凝結剤に求められることは、集塊化したピッチ分を、粗大粘着物になる前に繊維へ定着させ抄紙工程内から紙として排出し、白水循環系中の集塊化したマイクロピッチや濁度成分の濃度を低下させることである。
【0021】
上記のような検討結果から本発明においては、製紙工程中の原料チェストや、混合チェスト、マシンチェスト、種箱までのおよそ3〜4%の原料系において、
白水による希釈前の製紙原料中にA群から選択される一種以上の水溶性高分子(重量平均分子量1000〜10万の縮合系高分子および重合系高分子)を添加し、白水によって前記製紙原料を希釈した後、B群から選択される一種以上の水溶性高分子(重量平均分子量50万〜600万の重合系高分子)を添加し、適宜歩留向上剤を添加し抄紙することを特徴とする。
【0022】
前記A群から選択される一種以上の水溶性高分子(重量平均分子量1000〜10万の縮合系高分子および重合系高分子)としては、以下のようなものが例示される。
(a)ポリビニルアミンおよびポリビニルアミン繰り返し単位を有する水溶性共重合物
(b)四級アンモニウム塩基を含有するポリアミン/エピハロヒドリン縮合物
(c)2−アミノアルキレン(メタ)アクリレート重合物および2−アミノアルキレン(メタ)アクリレート繰り返し単位を有する水溶性共重合物
(d)ポリエチレンイミンおよび四級アンモニウム塩基を含有するポリエチレンイミン変性物
【0023】
また前記B群から選択される一種以上の水溶性高分子(重量平均分子量50万〜600万の重合系高分子)としては、以下のようなものが例示される。
(e)ポリビニルアミンおよびポリビニルアミン繰り返し単位を有する水溶性共重合物。
(f)2−アミノアルキレン(メタ)アクリレート重合物および2−アミノアルキレン(メタ)アクリレート繰り返し単位を有する水溶性共重合物
(g)ジアルキルアミノアルキレン(メタ)アクリレートとその四級化物の重合物および共重合物、および(メタ)ジアリルアミンあるいはその四級化物の重合物および共重合物。
【0024】
(a)のポリビニルアミンおよびポリビニルアミン繰り返し単位を有する水溶性共重合物に関して説明する。ポリビニルアミン系水溶性高分子の製造法に関しては、特開平6−65329号公報に開示されている。本発明で使用するポリビニルアミンおよびポリビニルアミン繰り返し単位を有する水溶性共重合物は、N−ビニルホルムアミド重合物あるいは共重合体を重合体中のホルミル基を変性することにより容易に得ることができる。すなわちN−ビニルホルムアミドと他の共重合可能な単量体とのモル比が、通常20:80〜95:5の混合物、好ましくは、40:60〜95:5の混合物、特に好ましくは、40:60〜90:10の混合物をラジカル重合開始剤の存在下、重合せしめることにより製造される。
【0025】
酸あるいはアルカリによりホルミル基を加水分解するため、共重合する単量体の一部も加水分解され、カルボキシル基が生成する場合が多い。そのためアクリロニトリルなどが共重合する場合便利である。その他アクリルアミド、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸nプロピル、クリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸nプロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸nブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−secブチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチルなどが挙げられる。これら単量体は、アニオン性基が生成するので、共重合体中のモル比は、20モル%未満であることが好ましい。
【0026】
重合あるいは共重合したN−ビニルホルムアミド共重合体は、そのままの溶液状もしくは分散状で、あるいは希釈、もしくは、公知の方法で脱水または乾燥して粉末状としたのち変性することにより、新規なるビニルアミン共重合体とすることが出来る。この際に用いられる変性方法としては、N−ビニルホルムアミド共重合体を塩基性および酸性条件下変性するいずれの方法も用いることが出来る。N−ビニルホルムアミド共重合体の好ましい変性方法としては、水中で酸性加水分解する方法、水を含有するアルコールなどの親水性溶媒中で酸性加水分解する方法、酸性条件下、加アルコール分解し、ホルミル基をギ酸エステルとして分離しつつ変性する方法などが例示されるが、特に好ましいのは、酸性条件下の加アルコール分解である。この方法により、カルボキシル基を実質的に含有しないビニルアミン共重合体を得ることができる。
【0027】
また、酸性変性に使用される変性剤としては、強酸性に作用する化合物ならばいずれも使用することが可能であり、例えば、塩酸、臭素酸、フッ化水素酸、硫酸、硝酸、燐酸、スルファミン酸、アルカンスルホン酸等が挙げられる。変性剤の使用量は、重合体中のホルミル基に対して、通常0.1〜2倍モルの範囲から目的の変性率に応じて適宜選択される。また、変性反応は通常40〜100℃の条件で実施される。これらポリビニルアミンおよびポリビニルアミン繰り返し単位を有する水溶性共重合物の重量平均分子量は、1000〜10万である。
【0028】
本発明で使用する(b)ポリアミン/エピハロヒドリン縮合物は、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサメチレンジアミン、ジメチルアミノエチルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,3−ジアミノブタン、ヘキサメチレンジアミンなどである。またこれらポリアミン類に脂肪族モノアミン、すなわちアンモニア、モノメチルアミン、モノエチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノ、ジあるいはトリ各々エタノ−ルアミンなどを併用しても良い。しかしこれらのアミン類を併用すると一級あるいは二級アミノ基が生成しにくい。すなわち本発明においては、一級あるいは二級アミノ基が疎水性物質への吸着作用に効果があると推定される。その結果、本発明の趣旨である粘着障害性物質の防止効果が低下するため、併用する割合は30質量%以下であることが好ましい。ポリアミン/エピハロヒドリン縮合物は、上記ポリアミンあるいはアンモニア、脂肪族一価アミンを併用しエピハロヒドリンと反応させたせた生成物でも良いし、または反応第一段階でまず脂肪族一価アミンとエピハロヒドリンとを反応し四級アンモニウム塩基を有し、両末端あるいは片末端反応性のある縮合物を生成させ、反応第ニ段階でポリアミンと反応させ、分子量を増大した生成物でも良い。ポリアミン/エピハロヒドリン縮合物の分子量としては、重量平均分子量で約1,000〜約10万である。
【0029】
前記ポリアミン/エピハロヒドリン縮合物は、下記一般式(1)のポリアミン分子中アミノ基1モルに対し、エピハロヒドリン0.5モル〜3.0モルを反応し生成した縮合物であることが好ましい。このような比率で反応させることにより、一級、二級、三級あるいは四級アンモニウム塩基盤のうち複数の種類のアミノ基を有する縮合物を生成させることができる。また一級あるいは二級アミノ基による疎水性物質への吸着作用に効果があると推定される。従って縮合物中に活性水素が存在することが好ましい。従ってエピハロヒドリンの比率を調節することによって原料アミンの水素原子を残しておくことが好ましい。従ってポリアミン分子中アミノ基1モルに対し、エピハロヒドリン0.5モル〜3.0モル、好ましくはポリアミン分子中アミノ基1モルに対し、エピハロヒドリン0.5モル〜1.5モルを反応し生成した縮合物であることが好ましい。
【化1】

一般式(1)
、Rは水素あるいは炭素数1〜3のアルキル基、Zは炭素数2〜6のアルキレン基、nは1〜6の整数を表わす。
【0030】
本発明で使用する(c)2−アミノアルキレン(メタ)アクリレート重合物および2−アミノアルキレン(メタ)アクリレート繰り返し単位を有する水溶性共重合物は、分子内に一級アミノ基を持ったアクリル型カチオン性(共)重合体である。この重合体は、一級アミノ基を持ったアクリル型単量体の単独重合あるいは共重合反応によって製造することができる。単量体の製造法方としては、特公昭38−8310号公報、米国特許公報3、037、969(1962年)のようにアクリロキシアルキルケチミンあるいはアクリロキシアルキルアルジミンの酸加水分解、あるいは米国特許公報3、336、358(1967年)のようにエチレンイミンと(メタ)アクリル酸との反応物を酸加水分解することによって該当する酸の塩の形で取り出すことが可能である。単量体の例としては、2−アミノエチルアクリレ−ト、2−アミノエチルメタアクリレ−ト、3−アミノプロピルアクリレ−ト、2−アミノプロピルメタアクリレ−トなどの有機酸や無機酸の塩を上げることができる。
【0031】
アクリル型の単量体であるため種々の単量体と良好な共重合反応が可能である。例えば、非イオン性単量体の(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、酢酸ビニル、アクリロニトリル、アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、ジアセトンアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミドなどがあげられ、非イオン性の単量体のうちから一種または二種以上と組み合わせ共重合することも可能である。最も好ましい非イオン性単量体の例としては、アクリルアミドである。また、アニオン性単量体を共重合することも可能であり、この場合は両性となる。アニオン性単量体の例として、ビビニルスルフォン酸、スチレンスルフォン酸、アクリルアミド2−メチルプロパンスルフォン酸、アクリル酸、メタアクリル酸、イタコン酸あるいはマレイン酸などがあげられる。さらに三級アミノ基や四級アンモニウム基含有単量体とも共重合可能である。三級アミノ基含有単量体の例としては、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルやジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどが上げられる。四級アンモニウム基含有単量体の例としては、前記三級アミノ基含有単量体の塩化メチルや塩化ベンジルによる四級化物である(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシ2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシ2−ヒドロキシプロピルジメチルベンジルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルアミノプロピルジメチルベンジルアンモニウム塩化物などがあげられる。これら四級アンモニウム基含有単量体と非イオン性単量体と本発明で使用するカチオン性重合体中で必須成分となる一級アミノ基含有アクリル型単量体からなる共重合体も本発明の製紙方法において使用可能である。
【0032】
これら2−アミノアルキレン(メタ)アクリレート重合物および2−アミノアルキレン(メタ)アクリレート繰り返し単位を有する水溶性共重合物の重量平均分子量は、1000〜10万である。また、本発明で使用するカチオン性水溶性重合体の製品形態としては、特に制限はなく、油中水型エマルジョン重合法、油中型分散重合法、塩水溶液中分散重合法、水溶液重合法など任意の重合法により合成した製品を得た後、使用方法に合わせたカチオン性水溶性共重合物を得る。
【0033】
本発明で使用する水溶性高分子(d)ポリエチレンイミンおよびポリエチレンイミン変性物は、ポリエチレンイミンあるいはポリプロピレンイミンなどであるが、実用的にはポリエチレンイミンである。分子量は、1,000以上あれば本発明の目的に使用できる。すなわち好ましくは1,000以上、10万以下であり、更に好ましくは10,000以上、10万以下である。また、ポリアルキレンイミン変性物の場合も同様に、変性後の分子量が好ましくは1,000以上、10万以下であり、好ましくは10,000以上、10万以下である。
【0034】
変性方法として例えばエピクロロヒドリン、エチレングリコールジグリシジルエーテルなどで架橋により変性したポリアルキレンイミンも使用することができる。またジメチルアミンとエピクロロヒドリン縮合物において、エピクロロヒドリンの反応比を1.05〜1.2程度まで余分に仕込めば、末端反応性の縮合物が生成し、これをポリアルキレンイミンの変性剤として使用すれば四級アンモニウム塩基の含有するポリアルキレンイミン変性物を製造することができる。
【0035】
本発明の水溶性高分子は、先に述べたパルプ製造工程の際発生する粘着性析出物、すなわちピッチ、あるいは脱墨古紙製造時に由来するサイジング剤、ワックス類やコーティングバインダーなどの疎水的微細粒子であるステイッキーなど粘着性物質のドライヤーへの紙の付着、あるいは乾燥後成紙表面上の欠点(粘着性物質の凝集物による汚点)を減少させる作用に優れている。粘着性物質はもともと疎水性物質であるため、本発明による水溶性高分子中、すなわち(a)ポリビニルアミンあるいは(c)の2−アミノアルキレン(メタ)アクリレート重合物中の一級アミノ基、(b)ポリアミン/エピハロヒドリン縮合物中の一級あるいは二級アミノ基、(d)ポチエチレンイミン中の一級あるいは二級アミノ基の作用により疎水性物質へ吸着しやすく、障害作用の防止に効果があると考えられる。
【0036】
(e)のポリビニルアミンおよびポリビニルアミン繰り返し単位を有する水溶性共重合物、あるいは(f)2−アミノアルキレン(メタ)アクリレート重合物および2−アミノアルキレン(メタ)アクリレート繰り返し単位を有する水溶性共重合物は、重量平均分子量を調節することにより50万〜600万の重合系高分子を製造することができる。
【0037】
(g)のジアルキルアミノアルキレン(メタ)アクリレートとその四級化物の重合物および共重合物は、三級アミノ基や四級アンモニウム基含有単量体の重合体、あるいは非イオン性単量体との共重合体である。三級アミノ基含有単量体の例としては、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルやジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどが上げられる。四級アンモニウム基含有単量体の例としては、前記三級アミノ基含有単量体の塩化メチルや塩化ベンジルによる四級化物である(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシ2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシ2−ヒドロキシプロピルジメチルベンジルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルアミノプロピルジメチルベンジルアンモニウム塩化物などがあげられる。これら水溶性高分子は、重量平均分子量を調節することにより50万〜600万の重合系高分子を製造することができる。
【0038】
これら水溶性高分子(A)の(a)〜(d)のpH3におけるイオン当量値は、それぞれ5.0〜23meq/gである。水溶性高分子(A)のイオン当量値が高いのは、おもに紙の欠陥発生の原因となる物質の表面電荷を中和することを目的としているためである。従って好ましくは6.0〜23meq/gであり、更に好ましくは7.0〜23meq/gである。一方、水溶性高分子(B)の(e)〜(g)のpH3におけるイオン当量値は、それぞれ2.0〜23meq/gである。この理由として紙の欠陥発生の原因となる物質がある程度集塊化が進み粘着性粒子となったものの表面電荷を調節するとともに、紙料繊維に定着させることを目的としているため、歩留剤ほど分子量は高くはないが、イオン当量値はある程度高い必要がある。従って好ましくは3.0〜23meq/gであり、更に好ましくは4.0〜20meq/gである。
【0039】
本発明の紙の欠陥発生抑制方法に関して、薬剤の添加方法を説明すると以下のようになる。すなわち製紙工程中の原料系の領域に設置されている原料チェスト、混合チェスト、マシンチェスト、種箱までのおよそ3〜4%の原料系において、重量平均分子量1000〜10万の縮合系高分子および重合系高分子を添加するためには、すなわち添加場所として図1における原料パルプチェスト(イ)の配管出口、前記原料パルプを混合した配合原料が混合された混合チェスト(ロ)の配管出口、各種薬剤の添加されるマシンチェスト(ハ)の配管出口、種薬剤添加後の種箱(ニ)の出口が適当である。また(チ)の一次ファンポンプの入り口あるいは出口で白水が添加され、水溶性高分子(B)は、(リ)
の場所から、一次ファンポンプの入り口あるいは出口の一箇所あるいは二箇所で添加される。
【0040】
さらに本発明においては、これら添加場所のうちから選択される二箇所以上において、ピッチ障害作用抑制剤を添加することにより、チェスト内の攪拌や、ポンプのシュアによって未処理の粘着面が出てきても処理することが可能であり、結果として単独添加よりも効率的に粘着物を処理することが可能であると考えられる。
【0041】
次に白水によって前記製紙原料を希釈した後、B群から選択される一種以上の水溶性高分子(B)(重量平均分子量50万〜600万の重合系高分子)を添加し、濁度成分や成紙の欠陥にはならないが、ある程度集塊化が進んだ粘着性粒子をワイヤー上で留めることによりこれ以上集塊化を防ぐ。添加場所としては、スクリーンの前後などが想定される。
【0042】
また本発明においては、薬剤添加時点において、見かけ上低粘性溶液の状態にして使用することが好ましい。すなわちライン中で水と混合しながら複数の添加場所に添加することが可能となるためである。低粘性であるために溶解装置も必要ないという利便さがある。そのため水溶性高分子の水溶液粘度が、抄紙前の製紙原料中に添加する時点で100〜10,000mPa・s(B型粘度計により25℃で測定時)、好ましくは100〜5,000mPa・sである。この粘性により配管中で水と混合しながら容易に抄紙前の製紙原料に添加することができる。製紙原料への添加量としては、水溶性高分子(A)は、乾燥製紙原料当たり0.005〜0.2質量%であり、好ましくは0.01〜0.1質量%である。また水溶性高分子(B)は、乾燥製紙原料当たり0.005〜0.1質量%であり、好ましくは0.01〜0.05質量%である。
【0043】
ここで本発明における紙の欠陥発生原因物質と考えられるアニオントラッシュやマイクロピッチ、濁度成分に関しての測定方法を述べる。本発明で使用する
水溶性高分子を添加することによりアニオントラッシュの電荷を中和し、マイクロピッチおよび濁度成分をパルプ繊維に定着させ、その結果未定着のマイクロピッチおよび濁度成分が集塊化するのを防ぐことができる。この効果を確認するため以下の測定法を実施する。すなわち製紙原料中のマイクロピッチや濁度成分と、アニオントラッシュの量を確認するためには、原料ろ過液のマイクロピッチをヘマサイトメーターにより、濁度濁度計により、アオントラッシュはカチオン要求量をPCD計によりそれぞれ測定する。また粘着物は、転写板を使用した粘着物測定法によって実施する。
【0044】
製紙原料に白水を混合し、本発明における水溶性高分子を添加した後、一定時間攪拌し、その後希釈した製紙原料の粘着物は、転写板を使用した粘着物測定法、マイクロピッチはヘマサイトメーターにより、濁度は濁度計により、アニオントラッシュはカチオン要求量をPCD計によりそれぞれ測定する。
【0045】
(実施例)以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を越えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0046】
ライナー原紙用製紙原料(pH6.52、ワットマン濾紙No.41による濾過後の乾燥固形分3.66質量%)を用い、本発明の紙の欠陥発生抑制方法の試験を行った。すなわち下記表1に示す水溶性高分子試料―3〜試料―5を乾燥製紙原料当たり0.03質量%添加し60秒攪拌した後、製紙現場より採取した白水(pH5.30、乾燥固形分0.21質量%)により希釈し(希釈後の濃度1.0質量%)、水溶性高分子試料―7を添加し、60秒間攪拌した。その後ワットマン濾紙No.41により濾過し、濾液の濁度をHACH社製2100P型により、アニオントラッシュのカチオン要求量をBTG社製PCD−03型により測定した。
【0047】
またマイクロピッチの測定は、白水を混合し水溶性高分子で処理した製紙原料を、ワットマン濾紙No.41で濾過した濾液を、厚さ0.2mmのカウンティングチェンバー(ヘマサイトメーター)上に採取し、光学顕微鏡1200倍で観察した。ピントを垂直方向にずらしていきながら静止画を複数枚撮影した。カウンティングチェンバー上の異なる5箇所以上で同様の操作を繰り返した。画像処理ソフト(Media Cybernetics,inc. IMAGE−PRO PLUS Ver.5.0 を用い、顕微鏡画像の静止画を取込み、RGB値のレンジ設定をR値(0−190)G値(0−130)B値(0−156)に調整することにより、目的とする粒子を抽出した。その抽出した粒子について、個数を測定した。
【0048】
さらに集塊化し成紙の欠陥となり得る粘着物の測定は、以下のように行った。すなわち白水を混合し水溶性高分子で処理した製紙原料を、直径90mmの円形濾紙(ワットマンNo.41、20〜25μm以上の粒子保持する)で5分間濾過し、濾過後の原料から濾紙を剥がし、剥がしたウェットシートを使用する。測定面は、剥がしたウェットシートの濾紙に面していない側の面とする。濾過量は、直径90mmの大きさで坪量150g/mになるように、対象原料の濃度を計算して採取する。このウェットシートを濾紙に面していない側を測定面とし、SUS板に張り合わせ、上の粘着物を媒体に転写する。この際、ウェットシートのSUS板(厚さ0.1mm)に張り付けた面と反対面に厚手の濾紙を合わせ、プレス機にセットし、410KPa、5分間加圧する。
【0049】
次にウェットシートを張り付けたSUS板をロータリードライヤーにセットし、105℃で6分間加熱する。この際、ロータリードライヤーのシリンダー側にSUS板を、フェルト側は転写されたウェットシート側をセットする。
【0050】
加熱後、SUS板上のウェットシートからの付着面(直径90mm)中の任意の箇所20箇所を選択し、実体顕微鏡を用いてデジタルカメラで撮影し、画像としてコンピュータに保存する。その後、マイクロピッチを測定した場合と同様の画像処理ソフトを用い、RGB値のレンジ設定を調整することにより、目的とする粒子を抽出した。抽出した付着物の中から、大きさ、長短半径比、穴数、穴面積の最適条件下で再度抽出し、繊維分や他の付着物と、粘着性ピッチを判別する。その抽出した粒子について、粘着性ピッチ総面積、総個数を測定し、1mあたりに換算した。以上の結果を表2に示す。
【0051】
(比較例1)
実施例1と同様に水溶性高分子試料―5を添加後、白水を添加し希釈したが、水溶性高分子試料―7を添加せず、60秒間攪拌のみ行った。その後実施例1と同様に濾液の濁度、カチオン要求量、マイクロピッチの個数、および集塊化し成紙の欠陥となり得る粘着物の測定を行った。結果を表2に示す。
【0052】
(比較例2)
実施例1と同様に水溶性高分子試料―5を添加後、白水を添加し希釈し、その後比較―1(ジメチルアミン/ポリアミン/エピクロロヒドリン重縮合物、重量平均分子量12,000)を添加し、60秒間攪拌を行った。その後実施例1と同様に濾液の濁度、カチオン要求量、マイクロピッチの個数、および集塊化し成紙の欠陥となり得る粘着物の測定を行った。結果を表2に示す。
【0053】
(表1)試験に供した水溶性高分子の試料

DETA;ジエチレントリアミン、ECH;エピクロロヒドリン、
PEHA;ペンタエチレンヘキサミン、カチオン当量値;meq/g











【0054】
(表2)

【実施例2】
【0055】
実施例1と同様のライナー原紙用製紙原料(pH6.52、ワットマン濾紙No.41による濾過後の乾燥固形分3.66質量%)を用い、本発明の紙の欠陥発生抑制方法の試験を行った。表1に示す水溶性高分子試料―1、試料―2、及び試料―5を、製紙現場において複数の場所において分割して添加することを想定し、3回に分割して添加した。すなわち一回目に対製紙原料乾燥分0.01質量%添加し、30秒攪拌後、2回目に0.01質量%添加し、30秒攪拌、3回目に0.01質量%添加し、30秒攪拌した。その後製紙現場より採取した白水(pH5.30、乾燥固形分0.21質量%)により希釈し(希釈後の濃度1.0質量%)、水溶性高分子試料―6を添加し、60秒間攪拌した。
その後実施例1と同様な操作により実施した。すなわち濾液の濁度をHACH社製2100P型、アニオントラッシュのカチオン要求量をBTG社製PCD−03型、マイクロピッチの測定はヘマサイトメーター/画像処理、集塊化し成紙の欠陥となり得る粘着物の測定は、転写板を使用した粘着物測定法によってそれぞれ測定した。結果を表3に示す。
【0056】
(比較例3)
水溶性高分子試料―5を3回に分割し添加し、それぞれ30秒間攪拌し、その後白水で希釈し、比較―1(ジメチルアミン/ポリアミン/エピクロロヒドリン重縮合物、重量平均分子量12,000)を添加し60秒間攪拌を行った。その後実施例2と同様に濾液の濁度、カチオン要求量、マイクロピッチの個数、および集塊化し成紙の欠陥となり得る粘着物の測定を行った。結果を表3に示す。
【0057】
(表3)

【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】粘着性物質による障害作用を抑制するため本発明で使用する水溶性高分子を、製紙工程において添加する場所を図示したフロー図である。
【符号の説明】
【0059】
(イ)原料チェスト
(ロ)混合チェスト
(ハ)マシンチェスト
(ニ)水溶性高分子(A)
(ホ)種箱
(ヘ)一次ファンポンプ
(ト)二次ファンポンプ
(チ)白水
(リ)水溶性高分子(B)
(ヌ)インレット



【特許請求の範囲】
【請求項1】
白水による希釈前の製紙原料中に下記A群から選択される一種以上の水溶性高分子(A)を添加した後、白水によって前記製紙原料中を希釈し、その後下記B群から選択される一種以上の水溶性高分子(B)を添加し、適宜歩留向上剤を添加し抄紙することを特徴とする障害作用物質による紙の欠陥発生抑制方法。
A群(重量平均分子量1000〜10万の縮合系高分子および重合系高分子)
B群(重量平均分子量50万〜600万の重合系高分子)
【請求項2】
前記水溶性高分子(A)が、
(a)ポリビニルアミンおよびポリビニルアミン繰り返し単位を有する水溶性共重合物
(b)四級アンモニウム塩基を含有するポリアミン/エピハロヒドリン縮合物
(c)2−アミノアルキレン(メタ)アクリレート重合物および2−アミノアルキレン(メタ)アクリレート繰り返し単位を有する水溶性共重合物
(d)ポリエチレンイミンおよび四級アンモニウム塩基を含有するポリエチレンイミン変性物
であることを特徴とする請求項1に記載の障害作用物質による紙の欠陥発生抑制方法。
【請求項3】
前記水溶性高分子(B)が、
(e)ポリビニルアミンおよびポリビニルアミン繰り返し単位を有する水溶性共重合物
(f)2−アミノアルキレン(メタ)アクリレート重合物および2−アミノアルキレン(メタ)アクリレート繰り返し単位を有する水溶性共重合物
(g)ジアルキルアミノアルキレン(メタ)アクリレートとその四級化物の重合物および共重合物、および(メタ)ジアリルアミンあるいはその四級化物の重合物および共重合物
であることを特徴とする請求項1に記載の障害作用物質による紙の欠陥発生抑制方法。
【請求項4】
前記水溶性高分子(A)および前記水溶性高分子(B)のpH3におけるイオン当量値が、それぞれ5.0〜23meq/g、2.0〜23meq/gであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の障害作用物質による紙の欠陥発生抑制方法。
【請求項5】
前記水溶性高分子(A)及び前記水溶性高分子(B)の水溶液粘度が、抄紙前の製紙原料中に添加する時点で100〜10,000mPa・s(B型粘度計により25℃で測定時)であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の障害作用物質による紙の欠陥発生抑制方法。
【請求項6】
前記水溶性高分子(A)から選択される一種以上を、抄紙前の製紙工程中において、製紙原料が白水によって希釈される前の複数の場所において分割して添加することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の障害作用物質による紙の欠陥発生抑制方法。
【請求項7】
前記複数の場所が、原料チェスト出口、原料混合チェスト、マシンチェスト、種箱出口から選択される二箇所以上であることを特徴とする請求項6に記載の障害作用物質による紙の欠陥発生抑制方法。
【請求項8】
前記微細な障害作用発生物質が、アニオントラッシュ、マイクロピッチ、濁度成分から選択される一種以上であることを特徴とする請求項1に記載の障害作用物質による紙の欠陥発生抑制方法。



























【図1】
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【公開番号】特開2009−249756(P2009−249756A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−97736(P2008−97736)
【出願日】平成20年4月4日(2008.4.4)
【出願人】(000142148)ハイモ株式会社 (151)
【Fターム(参考)】