説明

紙の製造方法及びそれを用いた紙

【課題】サイズ剤としてASAサイズ剤を用いる場合に発生している抄紙マシンの汚れ防止とサイズ性を両立させ、しかもASAサイズ剤に用いられる乳化剤の使用量を低くすることができるため環境への影響を抑制可能な製紙方法及びこの方法から得られる紙の提供。
【解決手段】パルプ成分が1.5〜0.1質量%濃度の水性スラリーに対し、特定分子量のカチオン性ポリマーとASAサイズ剤エマルションとを別々に用意し、各々を同時に水性スラリー中に配合するか、または、特定分子量のカチオン性ポリマーとASAサイズ剤エマルションとを予め混合し、その混合物を水性スラリーに配合後、少なくとも1度のせん断工程後に水性スラリーを脱水することを特徴とする製紙方法、及びこの製紙方法により得られる紙。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙の製造時に従来から用いられているASAサイズ剤を用いることにより発生する抄紙マシンの汚れと、それに起因する紙質低下、さらにASAサイズ剤を使用する際に用いられる乳化剤や紙を製造する際に添加される歩留り剤の使用量を抑制可能な紙の製造方法及びそれを用いた紙に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、紙の保存安定性の改善、紙パルプ製造装置の腐食問題の改善、安価な炭酸カルシウム填料の使用、高い白色度・不透明度の紙が得られること等の利点から、従来の硫酸バンドを大量に配合した酸性抄紙に代わって、硫酸バンドを使用しないか、あるいは硫酸バンドの使用量を少なくして中性付近で抄紙する中性紙の生産が増加してきている。
【0003】
紙にインキや水に対する浸透抵抗性を付与するために加えられるサイズ剤は、酸性抄紙ではロジン系が主に使用されており、このものは硫酸バンドによってパルプに定着しサイズ効果を発揮する。一方、硫酸バンドを全く使用しないか、あるいは少量しか使用しない中性抄紙では、ロジン系サイズ剤はサイズ効果を発揮することができず、アルケニル無水コハク酸系サイズ剤やアルキルケテンダイマー系サイズ剤が主に使用されている。
【0004】
アルケニル無水コハク酸系サイズ剤は、アルキルケテンダイマー系サイズ剤に比して安価で、反応性が高く、サイズ効果の立ち上がりが速く、かつ適用pH範囲が広い、サイズ度の管理が容易である等の大きな特徴がある反面、装置に汚れが発生し易いという欠点がある。
【0005】
このような問題に対してカルシウム、マグネシウム、アルミニウムに対してキレート力を有するアミノカルボン酸類および/あるいはオキシカルボン酸類を有効成分として含むアルカリ性水溶液を洗浄液として用いることを特徴とする製紙工程装置に付着したアルケニル無水コハク酸系サイズ剤に由来する汚れの洗浄方法(特許文献1参照)が提案されているが、このような提案は抄紙マシンの汚れが発生するという根本的な問題について解決しているものではなく、洗浄作業を行うという点で作業効率、生産性の面で好ましいものではなかった。
【0006】
しかしながら、前記したようにコスト面、サイズ性、作業性の面からASAサイズ剤の使用が多く行われている。例えば、嵩高剤(A)、カチオン性ウレタン(B)、及びアルキルケテンダイマー又はアルケニル無水コハク酸(C)を、水を含むパルプスラリー中に添加する工程と、該工程後のパルプスラリーから水を分離する工程と、得られた湿潤パルプを乾燥させる工程とを有する、パルプシートの製造方法(特許文献2参照)、1.25〜99重量パーセントの水、0.003〜60重量パーセントのASA、0.003〜50重量パーセントのカチオンポリマー混合物、ここで、該混合物は75〜99重量パーセントの低分子量ヨネンポリマーおよび1〜25重量パーセントの高分子量ポリエチレンイミンポリマーを含む、ならびに0ないし2重量パーセントの界面活性剤を含むASAサイジングエマルション及びこれを用いた紙の製造方法(特許文献3参照)、溶解パラメーターが20.5(Mpa)1/2以下で非イオン性のモノマーの一種以上に由来する構成単位と、アニオン性とカチオン性モノマーの一種以上に由来する構成単位とを有する共重合体(A)と界面活性剤(B)とを(A)/(B)=99/1〜1/99(質量比)の範囲で含有し、かつ下記の(a)、(b)、(c)のいずれか一つ以上の紙質向上効果をもたらす抄紙用紙質向上剤と、内添サイズ剤、及び5〜40重量%の量の填料を、含有する上質書籍用紙。(a)標準嵩向上度が0.02g/cm3以上、(b)標準不透明度向上度が1.0ポイント以上、(c)標準白色度が0.5ポイント以上(特許文献4参照)などが提案されている。
【0007】
これらのものは、いずれも配合量に見合うサイズ性を得られておらず、そのためASAサイズ剤を使用に起因する抄紙マシンの汚れ発生を防止することができず、その結果、作業効率が低下したり、得られる紙にサイズ剤起因の汚れが付着し紙の品質を低下するという問題があった。また、ASAサイズ剤は乳化剤によりエマルションに調製した場合、保存安定性の面から調製後直ぐに使用する必要があるが、使用後残ったエマルションは廃棄しなければならず、環境保全性の面でも課題が残されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−265192号公報
【特許文献2】特開2006−183188号公報
【特許文献3】特表2000−514143号公報
【特許文献4】特開2005−200808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、紙のサイズ性を向上させ、かつASAサイズ剤エマルションを用いるにもかかわらず、抄紙マシンの汚れ発生を防止可能な紙の製造方法及びこれを用いた紙を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明によれば、下記に示す紙の製造方法及びこれを用いた紙が提供される。
【0011】
(1)パルプ成分が1.5〜0.1質量%濃度の水性スラリーに対し、(A)粘度平均分子量が500万以上の第四級アンモニウム塩残基含有カチオン性モノマー単位を5モル%以上80モル%未満含むカチオン性ポリマーの配合と同時に(B)ASAサイズ剤エマルションを配合し、少なくとも1度のせん断工程後に水性スラリーを脱水することを特徴とする製紙方法。
【0012】
(2)前記(B)成分は前記(A)成分と予め混合した後、水性スラリーに配合させることを特徴とする前記(1)に記載の製紙方法。
【0013】
(3)前記(1)または(2)に記載の製紙方法により得られる紙。
【発明の効果】
【0014】
本発明の紙の製造方法は、(A)成分のカチオン性ポリマーと(B)成分のASAサイズ剤とを同時に(B)成分を配合し、その後少なくとも1度のせん断工程を経て水性スラリーを脱水することにより、得られる紙のサイズ度を向上させることができる。また、このような製造方法においては、従来ASAサイズ剤に起因する抄紙マシンの汚れを防止することができるため、汚れによる紙質低下や抄紙マシン清掃回数や抄紙斑点の削減など質の高い紙を効率よく得られるというすぐれた効果を奏する。さらに、本発明の紙の製造方法では、(B)成分のASAサイズ剤で使用されている乳化剤や(A)成分のカチオン性ポリマーの使用量を低減させることができるので、抄紙マシン汚れ防止性のほか、使用材料の低減などによる環境負荷低減などの効果を奏する。
この方法により得られる紙は、サイズ度が高く、またASAサイズ剤に起因する汚れの付着等がない高品質な紙である。
また、本発明の紙の製造方法により得られる紙は、上質紙、中質紙、新聞紙などの他、各種機能性を付与したコート紙や板紙・段ボール紙などの各種紙に好適に用いられる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の紙の製造方法は、(A)粘度平均分子量が500万以上の第四級アンモニウム塩残基含有カチオン性モノマー単位を5モル%以上80モル%未満含むカチオン性ポリマーの配合と同時に(B)ASAサイズ剤をパルプ成分が1.0〜0.1質量%濃度の水性スラリーに中に配合し、配合後少なくとも1度のせん断工程を経てからその水性スラリーを脱水することにより紙を製造するものである。
【0016】
[水性スラリー]
前記水性スラリーとは、従来紙を製造する際に用いられているパルプ成分、各種填料、各種製紙用助剤などを配合しスラリー状に調製したものである。この水性スラリーに用いられるパルプ成分としては、バージンパルプ等においては勿論のこと、古紙再生パルプを用いることができる。パルプの種類としては、例えば、新聞古紙、雑誌古紙、チラシ古紙、段ボール古紙やシュレッダーダスト等脱墨古紙パルプや砕木パルプ、リファイナグランドパルプ、サーモメカニカルパルプ、ケミサーモメカニカルパルプ等の機械パルプ、亜硫酸パルプ、ソーダパルプ、クラフトパルプ、塩素法パルプ等の化学的パルプ、ケミカルパルプ、ケミグランドパルプ等の機械的、化学的パルプなどが挙げられる。これらのものは、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、パルプの原木としては、エゾマツ、トドマツ、アカマツのような針葉樹や、ブナ、ポプラ、カバのような広葉樹などが挙げられる。これらのパルプは2種以上を組み合わせて用いることができる。パルプ成分の配合割合は、水性スラリー中1.5〜0.1質量%の範囲である。この範囲よりパルプ成分が少なくてもこの範囲を超える量としても質の高い紙を得ることができない。
【0017】
各種填料としては、例えば、二酸化チタン、タルク、クレー、各種カオリン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、酸化亜鉛、酸化珪素、合成シリカ、非晶質シリカ等の無機填料や、アクリル樹脂、尿素−ホリマリン樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂、ポリエチレン樹脂、微小中空粒子等が挙げられる。これらのものは、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。填料の配合割合は、製造する紙の種類により適宜選択すればよく、特に限定するものではないが、例えば上質紙の場合、水性スラリーの固形分中3〜50質量%、好ましくは5〜40質量%の範囲、新聞用紙であれば、1〜30質量%、好ましくは3〜20質量%の範囲である。
【0018】
各種製紙用助剤とは、例えば、凝結剤や紙力剤、各種澱粉、硫酸バンド、塩化アルミニウム、アルミン酸ソーダや、塩基性塩化アルミニウム、塩基性ポリ水酸化アルミニウム等の塩基性アルミニウム化合物や、水に易分解性のアルミナゾル等の水溶性アルミニウム化合物、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄等の多価金属化合物、シリカゾルなど、従来から紙の製造時に用いられているものを適宜選択して用いることができる。各種製紙用助剤は製造する紙の種類によりその種類と配合割合を適宜選択すればよく、特に限定するものではないが、上質紙の場合、パルプ成分に対し、凝結剤は0.01〜0.1質量%、紙力剤は0.05〜2.0質量%、硫酸バンドは0.1〜5質量%などの範囲である。新聞用紙の場合、パルプ成分に対し、凝結剤は0.01〜0.1質量%、紙力剤は0.01〜1.0質量%、硫酸バンドは0.1〜5質量%などの範囲である。
本発明の水性スラリーは、パルプ成分を3〜5質量%程度の濃厚パルプスラリーを調整後、希釈液により1.0〜0.1質量%濃度に調製したものや前記濃厚パルプスラリーを調製することなく、パルプ成分を1.0〜0.1%に調製したものであってもよい。なお、前記各種填料、各種製紙用助剤の配合は、従来紙を製造する際に配合する方法で調製することができ、例えば、前記濃厚パルプスラリーに凝結剤や澱粉、硫酸バンドなどを配合し、パルプ濃度が1.0〜0.1%となった後に填料や紙力剤などを配合することができる。
【0019】
[(A)カチオン性ポリマー]
本発明の紙の製造方法においては、水性スラリーに(A)粘度平均分子量が500万以上のカチオン性ポリマーを含有するものである。ここでいう粘度平均分子量とは、極限粘度法により測定したポリビニルアルコール換算の粘度平均分子量である。この粘度平均分子量が500万未満のものを用いると、凝結・凝集性、特にフロック形成後のせん断下で微細パルプ繊維や填料、ピッチ成分が脱落するため、歩留り率が低下し、しかも脱落したピッチ成分により製造マシンが汚れるので好ましくない。以上の面及び製造上の面から本発明のカチオン性ポリマーの好ましい粘度平均分子量は500万以下であり、好ましくは5000万以下、より好ましくは3500万以下である。
【0020】
カチオン性ポリマーのカチオン価度は通常、適用するパルプ含有スラリーの状態、特にカチオン要求量に応じ、適宜選択するものである。
【0021】
カチオン性ポリマーは、前記粘度平均分子量を有するものであれば、線状、分枝状、架橋型のいずれのものも用いることができ、これらのものは単独で用いてもよいし、2種以上を組合わせて用いてもよい。カチオン性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンイミン、ジメチルジアリルアミン−二酸化硫黄共重合体、ポリアクリルアミドカチオン変性物、ポリアミノアクリル酸の他、第四級アンモニウム塩残基を有するカチオン性モノマーを構成単位として含む単独重合体又は共重合体、エピハロヒドリン−アルキルアミン付加重合物及びアリルアミン重合体の塩あるいは4級アンモニウム塩、ならびにジシアンジアミド−ホルムアルデヒド−塩化アンモニウム縮合ポリマー等が挙げられ、特に第四級アンモニウム塩残基を有するカチオン性モノマーを構成単位として含む単独重合体又は共重合体が好ましい。
【0022】
このようなカチオン性ポリマーを構成する第四級アンモニウム塩残基を有するカチオン性モノマーとしては、例えば2‐(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、2‐(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、2‐(メタ)アクリロイルオキシエチルトリエチルアンモニウムクロリド、2‐(メタ)アクリロイルオキシエチルジエチルベンジルアンモニウムクロリド、3‐(メタ)アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、3‐(メタ)アクリルアミドプロピルトリエチルアンモニウムクロリド、3‐(メタ)アクリルアミドプロピルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、ジアリルジエチルアンモニウムクロリド、2‐(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムサルフェート、2‐(メタ)アクリルアミドエチルトリメチルアンモニウムクロリド、2‐(メタ)アクリロイルオキシエチルトリエチルアンモニウムブロミド、3‐(メタ)アクリロイルオキシプロピルジメチルエチルアンモニウムクロリド、3‐メタクリロイルオキシ‐2‐ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、3‐メタクリロイルオキシ‐2‐ヒドロキシプロピルメチルジエチルアンモニウムクロリド、3‐メタクリロイルオキシ‐2‐ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、2‐(メタ)アクリロイルアミノエチルトリメチルアンモニウムクロリド、3‐(メタ)アクリロイルアミノ‐2‐ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、2‐(メタ)アクリロイルアミノエチルトリメチルアンモニウムクロリドなどが挙げられる。これらの中でも、2‐(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリドを用いた単独重合体又は共重合体がカチオン量と分子量とを所望の値に調節しやすいので好ましい。
【0023】
このカチオン性ポリマーは前記カチオン性モノマーとこれと共重合可能な単量体、例えばエチレン性不飽和化合物との共重合体であってもよい。この共重合体を構成するエチレン性不飽和化合物としては、例えばエチレン性不飽和モノカルボン酸類やジカルボン酸類、(メタ)アクリル酸アルキルエステル類、芳香族ビニル化合物、不飽和アミド化合物及び不飽和ニトリル化合物などが挙げられる。このようなものの例としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸2‐メチルブチル、(メタ)アクリル酸tert‐ブチル、(メタ)アクリル酸2‐エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2‐ヒドロキシヘキシル、スチレン、α‐メチルスチレン、(メタ)アクリルアミド、N,N‐ジメチルアクリルアミド、N‐メチロールアクリルアミド、(メタ)アクリロニトリルなどを挙げることができる。中でも入手が容易で、重合が容易に行われるという点で、(メタ)アクリルアミド、特にアクリルアミドが好ましい。なお、(メタ)アクリルという用語は、アクリル又はメタクリルを意味する。
【0024】
カチオン性ポリマーが共重合体の場合、カチオン性ポリマー中の第四級アンモニウム塩残基を有するカチオン性モノマー単位の含有量は、5モル%以上80モル%未満の範囲が好ましい。このカチオン性モノマー単位の含有量が5モル%未満では、所望のカチオン要求量が得られにくいし、80モル%以上ではパルプや填料の歩留りを向上させにくい上、使用する慣用の製紙用助剤の使用量も削減しにくい。
【0025】
また、アリルアミン重合体の塩は、下記一般式[I]
【0026】
【化1】

(式中、R1は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基、X1は塩素原子、臭素原子、硫酸残基、硝酸残基、有機カルボン酸残基又は有機スルホン酸残基、nは重合度を示す。)
で表されるものである。
【0027】
前記一般式〔I〕で表されるアリルアミン重合体の塩は、R1が水素原子または炭素数1〜5のアルキル基であり、好ましくは水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基であり、X1が塩素原子、臭素原子、硫酸残基、硝酸残基、有機カルボン酸残基、有機スルホン酸残基である。アリルアミン重合体の塩の例としては、ポリアリルアミンの塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩である。さらにポリN−アルキルアリルアミンの塩である、ポリメチルアリルアミン塩酸塩、ポリエチルアリルアミン塩酸塩、ポリプロピルアリルアミン塩酸塩、ポリイソプロピルアリルアミン臭化水素酸塩などを挙げることができる。
【0028】
さらに、このカチオン性ポリマーは、カチオン量が1〜12meq/gの範囲にあることが望ましい。ここでいうカチオン量とは、カチオン性ポリマー1g中に含まれるカチオン性モノマーの当量を意味し、2.5mol/m2のポリビニル硫酸カリウムを用いたコロイド滴定法により求められる。カチオン量が1meq/gよりも小さいと、製紙原料スラリーの負電荷、特にパルプの表面電荷を十分に中和することができないため、ろ水性、歩留り性などの抄紙物性が低下する原因となる。また、12meq/gより大きいと歩留り性が低くなるおそれがある。ろ水性、歩留り性及びサイズ度などを考慮すると、好ましいカチオン量は1.5〜8meq/gの範囲である。
【0029】
このカチオン性ポリマーの重合方法としては、特に制限はなく、溶液重合法、乳化重合法、固体重合法など任意の方法を用いることができる。この際用いる重合開始剤としては、水溶性のアゾ化合物や過酸化物、例えば過酸化水素、2,2´‐アゾビス(2‐アミジノプロパン)二塩酸塩、水溶性無機過酸化物、または水溶性還元剤と水溶性無機過酸化物や有機過酸化物との組合せなどがある。上記水溶性無機過酸化物の例としては、過硫酸カリウムや過硫酸アンモニウムなどが挙げられる。
また、水溶性還元剤の例としては、水に可溶な通常のラジカル酸化還元重合触媒成分として用いられる還元剤、例えばエチレンジアミン四酢酸又はそのナトリウム塩やカリウム塩、あるいはこれらと鉄、銅、クロムなどの重金属との錯化合物、スルフィン酸又はそのナトリウム塩やカリウム塩、L‐アスコルビン酸又はそのナトリウム塩やカリウム塩やカルシウム塩、ピロリン酸第一鉄、硫酸第一鉄、硫酸第一鉄アンモニウム、亜硫酸ナトリウム、酸性亜硫酸ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0030】
一方、水溶性有機過酸化物としては、例えばクメンヒドロペルオキシド、p‐サイメンヒドロペルオキシド、tert‐ブチルイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、p‐メンタンヒドロペルオキシド、デカリンヒドロペルオキシド、tert‐アミルヒドロペルオキシド、tert‐ブチルヒドロペルオキシド、イソプロピルヒドロペルオキシドなどのヒドロペルオキシド類などが挙げられる。
【0031】
また、この乳化重合における乳化剤としては、通常アニオン性界面活性剤又はそれとノニオン性界面活性剤との組合せが用いられる。このアニオン性界面活性剤やノニオン性界面活性剤としては、通常の乳化重合に用いられるものの中から任意に選んで用いることができる。このようなアニオン性界面活性剤の例としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、脂肪酸金属塩、ポリオキシアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンカルボン酸エステル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、コハク酸ジアルキルエステルスルホン酸塩などを挙げることができる。
【0032】
また、ノニオン性界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルグリセリンホウ酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルなど、ポリオキシエチレン鎖を分子内に有し、界面活性能を有する化合物及び前記化合物のポリオキシエチレン鎖がオキシエチレン、オキシプロピレンの共重合体で代替されている化合物、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステルなどを挙げることができる。
【0033】
前記乳化重合法によれば、例えば重合開始剤及び乳化剤を含有する水性媒体中において、エチレン性不飽和化合物及びカチオン性モノマーを所定の割合で混合し、通常30〜80℃の範囲の温度において重合させることにより、所望の共重合体微粒子が均質に分散したエマルションを得ることができる。この方法で得られるエマルションは、カチオン性ポリマーとしてそのままパルプ含有水性スラリーに配合することもできるし、所望ならば塩析又は噴霧乾燥などにより共重合体を固形物として取り出し、これを用いてセルロース含有懸濁液に配合してもよい。分枝型及び架橋型のカチオン性ポリマーの製造方法としては、前記した各重合方法において、二重結合、アルデヒド結合あいはエポキシ結合からなる群から選ばれる2種以上の試薬群を有する多官能化合物によって構成される分枝剤又は二重結合、アルデヒド結合あいはエポキシ結合からなる群から選ばれる2種以上の試薬群を有する多官能化合物によって構成される架橋剤(この架橋剤には、多価金属塩、ホルムアルデヒド、グリオキザールのようなイオン系架橋剤、モノマーと共重合する共有結合架橋剤を含む)を用いて重合するものである。
【0034】
[(B)ASAサイズ剤エマルション]
本発明の紙の製造方法においては、水性スラリーに(B)ASAサイズ剤エマルションを前記(A)成分と同時に配合する必要がある。ASAサイズ剤エマルションとは、アルケニル無水コハク酸をカチオン化澱粉やアニオン性ポリマー、カチオン性ポリマー等の各種乳化剤でエマルション化したものである。アルケニル無水コハク酸は、無水コハク酸とヒドロカルビルまたは複数のヒドロカルビル、例えばオレフィンまたは13個以上の炭素原子を含むオレフィン組成物との混合物の反応生成物からなるサイズ剤で、無水コハク酸と13〜25個の炭素原子を含む直鎖もしくは分岐オレフィンとの混合物の反応生成物が多く用いられている。前記オレフィン部分としては、直鎖もしくは分岐のC13〜C25アルケンからなるものも用いることができる。
【0035】
また、前記アルケニル無水コハク酸をエマルション化するために用いる乳化剤としては、前記したカチオン化澱粉やアニオン性ポリマー、カチオン性ポリマーなど従来ASAサイズ剤を水性スラリーに配合する際に慣用されているものから適宜選択すればよいが、例えば予め前記(B)成分と前記(A)成分と混合し、その混合物を水性スラリーに配合する場合はカチオン性ポリマー、特に粘度平均分子量が100万以下の直鎖状のアクリルアミド−アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド共重合体などの乳化剤を用いたASAサイズ剤エマルションを用いることによりASAサイズ剤エマルションの安定性が向上するため、ASAサイズ剤の使用可能時間を長くすることができ、その結果、ASAサイズ剤の調製回数とASAサイズ剤の安定性が低いために発生するマシン汚れを減少し作業効率、生産性及び紙品質を向上させることが可能となる。
ASAサイズ剤エマルションを調製する方法としてはこれまで紙の製造方法で慣用されている方法を用いて調製することができる。ASAサイズ剤エマルションは前記アルケニル無水コハク酸と各種乳化剤とを混合しこれを乳化させることによって調製することができる。ASAサイズ剤エマルションは調製後の時間の経過と共にサイズ効果が低下する傾向があるため、一般的にはエマルションを調製後、できるだけ早い段階で使用するのが好ましい。乳化方法としては、例えばホモミキサー、高圧ホモジナイザー、超音波照射機などを用いてASAサイズ剤と乳化剤を混合して乳化後のASAサイズ剤エマルションの粒径を0.3〜3μmに調整する方法などが挙げられる。このときASAサイズ剤と乳化剤との配合割合は質量比で1:0.01〜1:10の範囲である。この範囲より乳化剤の配合割合が少ないと、乳化剤量が不足してASAサイズ剤エマルションの粒径が大きくなり十分なサイズ効果が得られない、またはASAサイズ剤が乳化不良を起こして凝集物を生じることとなるし、この範囲を超えるとASAサイズ剤に対する乳化剤の割合が高すぎるため乳化剤のもつ親水基の影響により十分なサイズ効果が得られないこととなる。好ましい配合割合は1:0.02〜1:5、特に好ましくは1:0.2〜1:0.5の範囲である。
ASAサイズ剤と乳化剤とを用いてエマルション化する場合は、なるべく機械的なせん断力を加えずに、またエマルションの粒度分布幅が狭くなるように調製することで安定性を向上させることができる。
【0036】
[紙の製造方法]
本発明の紙の製造方法について説明する。前記(A)カチオン性ポリマーと(B)ASAサイズ剤エマルションとをパルプ含有水性スラリーのパルプ含有量が1.5〜0.1質量%に調製後、抄紙マシンのヘッドボックス直前まで同時に配合する。同時に配合する方法としては、前記(A)成分と(B)成分とは、別々に用意し、それらを水系スラリーに同時に配合する方法、予め前記(A)成分と(B)成分とを混合し、その混合物を水性スラリーに配合する方法のいずれの方法を用いてもよい。この場合、前記(B)ASAサイズ剤エマルションを調製後、直ぐに使用するのであれば、いずれの配合方法も問題なく行うことができるが、(B)成分を調製しある程度造り置きしたりし、直ぐに使用しない場合は、(B)成分と(A)成分とを予め混合させておく方法を採用するのが好ましい。前記(A)成分と(B)成分の配合割合は質量比で1:0.01〜1:1000の範囲である。(A)成分がこの範囲を超えるとASAサイズ剤エマルション比が過剰となりカチオン性ポリマーの凝結・凝集性が低下する。より好ましくは1:0.1〜1:100の範囲である。また、この(A)成分と(B)成分との合計量は水性スラリーのパルプ成分に対し0.001〜5質量%の範囲である。
【0037】
前記のように、パルプ含有量が1.0〜0.1質量%に調製後、抄紙マシンのヘッドボックス直前までの間に前記(A)カチオン性ポリマーと(B)ASAサイズ剤エマルション同時に配合し、その後、この水性スラリーを少なくとも1回せん断処理を行う。このせん断方法としては、水性スラリーに(A)成分と(B)成分とを配合後、せん断処理のみを行なってもよいが、製造工程の一部にある例えば、ファンポンプやスクリーンなどの高せん断力のかかる場所で処理をおこなってもよい。このせん断処理を行うことにより添加した(A)成分、(B)成分と水性スラリー中のパルプ成分を含む各種成分とを均一に混合することができる。せん断処理後、水性スラリーを脱水してシートを形成し、乾燥させることにより紙を製造する。
【実施例】
【0038】
次に、本発明を実施するための最良の形態を説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0039】
(1)エマルション組成物の安定性(静置安定性試験)
サイズ剤エマルション単独あるいはASAサイズ剤含有量が2.0質量%濃度のASAサイズ剤エマルションと0.1質量%濃度のカチオン性ポリマー(直鎖状アクリルアミド−アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド共重合体:粘度平均分子量1800万、カチオン量2.9meq/g)とを質量比10:1で混合したものを12時間静置して乳化状態を観察した。○:乳化状態を維持、×:水相と油相に分離または粘着性物質が発生
【0040】
(2)サイズ度
パルプ含有水性スラリーを角型容器に入れ、撹拌しながら、角型抄紙機[東西精機(株)社製]に前記スラリーを入れ、撹拌棒で一定の力で2回上下に撹拌し、最後に穏やかに撹拌した。そして、前記抄紙機の排水弁を開き、メッシュ(40メッシュ)上に形成されたマット(250mm×250mm)の上に濾紙とステンレス鋼板1枚を載せ、ローラーで脱水した。マットをメッシュから剥がし、濾紙とステンレス鋼板で挟み、2枚ずつプレス機を用いて荷重5.25Kg/cm2、5分の条件で1回プレスし、さらに前記荷重で2分の条件で1回プレスした。その後、ドラム式ドライヤー(ドラムの表面温度95℃)で3分間乾燥させ、一昼夜調湿(20℃、湿度55%)し、評価用の紙を得た。この紙のサイズ度をステキヒト法(JIS P8122:2004)に準拠し、サイズ度を測定した。その結果を表1に示す。
【0041】
[サイズ剤]
(1)ASAサイズ剤エマルションの調製
カチオン性ポリマー乳化剤(直鎖状アクリルアミド−アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド共重合体:粘度平均分子量100万以下)を水で希釈して2.0質量%濃度に調製した。次にASAサイズ剤を2.0質量%濃度となるように配合し、ホモミキサーを用いて乳化混合し、ASAサイズ剤エマルションを調製した。このASAサイズ剤エマルションのレーザー回折/散乱法における平均分子量は1.8μmである。
実施例1
【0042】
脱墨古紙パルプ3.2質量%濃度のパルプ含有水性スラリーを白水で希釈し、スラリー濃度0.8質量%のパルプ含有スラリーを調整した。このパルプ含有スラリーに攪拌しながら硫酸バンドをパルプに対し0.6質量%、炭酸カルシウムを前記パルプに対し17質量%、カチオン化澱粉をパルプ成分に対し1.2質量%を配合し、次いで別々に用意したASAサイズ剤含有量2.0質量%のASAサイズ剤エマルションを前記パルプに対し0.18質量%と0.1質量%のカチオン性ポリマー(直鎖状アクリルアミド−アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド共重合体:粘度平均分子量1500万、カチオン量2.7meq/g)を前記パルプに対し200ppmを同時にパルプ含有スラリーに撹拌しながら添加し、その後、pH7.5の範囲になるように調製し、水性スラリーを調製した。なお、攪拌スピードは1200rpmとし、また各成分は添加後10秒攪拌後に次の成分を配合するようにした。この水性スラリーの物性及びこの水性スラリーを用いて抄紙して得られた紙の物性を表1に示す。
実施例2
【0043】
実施例1において、カチオン性ポリマーとASAサイズ剤エマルションを質量比で1:9となるように予め混合し、この混合物をパルプに対し0.2質量%となるように配合した以外はすべて実施例1と同様にして水性スラリー及び紙を製造した。このものの物性を表1に示す。
【0044】
実施例1および2において、カチオン性ポリマーを直鎖状アクリルアミド−アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド共重合体(粘度平均分子量1800万、カチオン量2.9meq/g)に代えた以外はすべて実施例1及び2と同様にして水性スラリー及び紙を製造した。このものの物性を表1に示す。
実施例5,6
【0045】
実施例1および2において、カチオン性ポリマーを直鎖状アクリルアミド−アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド共重合体(粘度平均分子量600万、カチオン量2.9meq/g)に代えた以外はすべて実施例1及び2と同様にして水性スラリー及び紙を製造した。このものの物性を表1に示す。
比較例1
【0046】
脱墨古紙パルプ3.2質量%濃度のパルプ含有水性スラリーを白水で希釈し、スラリー濃度1.0質量%のパルプ含有スラリーを調整した。このパルプ含有スラリーに攪拌しながら硫酸バンドをパルプに対し0.6質量%、炭酸カルシウムを前記パルプに対し17質量%、カチオン化澱粉をパルプ成分に対し1.2質量%、ASAサイズ剤エマルションを前記パルプに対し0.18質量%、カチオン性ポリマー(直鎖状アクリルアミド−アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド共重合体:粘度平均分子量1500万、カチオン量2.7meq/g)を前記パルプに対し200ppmとをこの順でパルプ含有スラリーに撹拌しながら添加し、その後、pH7.5の範囲になるように調製し、水性スラリーを調製した。なお、攪拌スピードは1200rpmとし、また各成分は添加後10秒間攪拌後に次の成分を配合するようにした。この水性スラリーの物性及びこの水性スラリーを用いて抄紙して得られた紙の物性を表2に示す。
比較例2〜3
【0047】
比較例1において、カチオン性ポリマーを比較例2は直鎖状アクリルアミド−アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド共重合体(粘度平均分子量600万、カチオン量2.9meq/g)に、比較例3は直鎖状アクリルアミド−アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド共重合体(粘度平均分子量600万、カチオン量2.9meq/gにした以外はすべて比較例1と同様にして水性スラリー及び紙を製造した。このものの物性を表2に示す。
比較例4
【0048】
比較例1において、サイズ剤をアルキルケテンダイマーに代えた以外はすべて実施例1と同様にして水性スラリー及び紙を製造した。このものの物性を表2に示す。
比較例5
【0049】
実施例1において、サイズ剤をアルキルケテンダイマーに代えた以外はすべて実施例1と同様にして水性スラリー及び紙を製造した。このものの物性を表2に示す。
比較例6
【0050】
実施例2において、サイズ剤をアルキルケテンダイマーに代えた以外はすべて実施例2と同様にして水性スラリー及び紙を製造した。このものの物性を表2に示す。
【0051】
【表1】

【0052】
【表2】

【0053】
表1、表2の結果から、同時配合している実施例1〜6のものに比べ、サイズ剤を先に添加した比較例1〜3のものはサイズ度が低いものであった。また、同時添加においては、別々に準備し、同時に添加した実施例1、3、5のものは、予め混合し、その混合物を配合した実施例2、4、6に比べ、サイズ度が若干高くなっていることが分かる。また、ASAサイズ剤エマルションの安定性の面では、予め混合した実施例2、4、6のほうが高くなっていることが分かる。さらに、比較例4〜6のものは、添加方法の違いがサイズ度に与える影響が小さいものであることがわかる。
これらのことから、本発明の紙の製造方法を用いることにより、通常の製造方法に比べサイズ度を高くすることができるため、使用するサイズ剤の量を少なくすることができるため、ASAサイズ剤に起因する抄紙マシンの汚れを低下することができ、また使用資源の削減によるコスト削減性、地球環境保全の面で優れていることが分かる。このような紙の製造方法により得られる紙はサイズ度が高く又汚れ等の付着のない質の高い紙が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、ASAサイズ剤を用いることに起因し発生する抄紙マシン汚れの低下とサイズ度を向上させるための紙の製造方法及びそれを用いた紙に関するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプ成分が1.5〜0.1質量%濃度の水性スラリーに対し、(A)粘度平均分子量が500万以上の第四級アンモニウム塩残基含有カチオン性モノマー単位を5モル%以上80モル%未満含むカチオン性ポリマーの配合と同時に(B)ASAサイズ剤エマルションを配合し、少なくとも1度のせん断工程後に水性スラリーを脱水することを特徴とする製紙方法。
【請求項2】
前記(B)成分は前記(A)成分と予め混合した後、水性スラリーに配合させることを特徴とする請求項1に記載の製紙方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の製紙方法により得られる紙。

【公開番号】特開2010−236125(P2010−236125A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−85042(P2009−85042)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000108454)ソマール株式会社 (81)
【Fターム(参考)】