説明

紙の製造方法及び製紙用助剤

【課題】 再生パルプやピッチ、填料等の微細成分を多量に含む製紙原料スラリーを用いた場合でも、製造マシンにピッチが付着することなく、しかも地合いの低下が抑制された高品質の紙を高い歩留りで得ることができ、特に古紙の再利用に適した紙の製造方法、及び該方法に用いる製紙用助剤を提供する。
【解決手段】 パルプ含有水性スラリーに、粘度平均分子量が1500万以上のカチオン性ポリマー又はアニオン性ポリマーの中から選択される少なくとも1種のポリマーを含有する製紙用助剤を配合し、得られた製紙原料スラリーを脱水してシート形成後、該シートを乾燥することを特徴とする紙の製造方法。
また、粘度平均分子量が1500万以上のカチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーの中から選択される少なくとも1種のポリマーを含有することを特徴とする、上記紙の製造方法において用いる1剤型の製紙用助剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カチオン性ポリマー使用後、アニオン性ポリマーを使用するというような煩雑な操作が必要なく、製紙原料スラリーの状態によりカチオン性ポリマー又はアニオン性ポリマーを含有する製紙用助剤のいずれか1剤のみを使用すればよく、操作手段も簡単で生産効率もよい紙の製造方法及びこれに用いる製紙用助剤で、特に紙を製造する際に用いられるパルプ成分、特に脱墨古紙パルプやシュレッダーダストを再生したパルプなどのような微細パルプや填料の歩留り性に優れ、しかも得られる紙の地合いに悪影響を及ぼさない紙の製造方法及びこれに用いる製紙用助剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
(1)近時、環境問題や紙の経年劣化を防ぐため、従来から行なわれている酸性域から中性〜アルカリ性域で抄紙するようになってきている。酸性域から中性〜アルカリ性域への製造条件の移行は、使用する材料を全て検討しなおさなければならず、時間、労力が必要であった。
検討する材料としては、凝結剤として用いられる硫酸バンドが挙げられる。この硫酸バンドは、酸性域では、優れた効果を発揮するが、中性〜アルカリ性域では、硫酸バンドのもつ、カチオン電荷が低下してしまうため、効果を発揮するのが困難になる。しかも、この硫酸バンドは中性〜アルカリ性域で填料として用いられる炭酸カルシウムを溶解してしまうという問題もある。
硫酸バンドの効果が低下することで紙力増強剤や歩留り剤、サイズ剤の効果も低下するため、結果的には全ての材料を見直すことになる。
【0003】
(2)また、近時、地球の温暖化、資源の有効利用等の環境問題から古紙を再生したパルプを多く使うようになってきている。再生される紙としては、例えば、新聞紙、雑誌、コピー紙、段ボール等のほか、最近ではオフィス等から出されるシュレッダーダストと呼ばれる紙を細かく裁断したものが増えてきている。
一般に再生パルプは、その製造過程で得られるパルプ繊維長はバージンパルプに比べ短いため、再生パルプを使用して紙を製造する場合は、繊維歩留りを向上させるため、通常は歩留り剤が用いられている。
さらに、歩留り剤だけでは、再生パルプや填料といった微細成分全てを歩留まらせることが難しいため、カチオン性の歩留り剤でフロックを形成させた後、少なくとも1回のせん断後に、アニオン性材料からなる歩留り助剤をパルプスラリーに添加した後、抄紙することが提案されている。
このようなアニオン性材料としては、従来からベントナイト、コロイダルシリカ等が用いられている。
しかしながら、歩留り剤と歩留り助剤とを用いて紙を製造する場合、見かけの歩留り率は向上するものの、フロックにせん断を加えた際にフロックから脱落した再生パルプ等の微細繊維や填料などは、歩留り助剤を用いても、長繊維に付着させることが出来ないという問題があった。
【0004】
(3)さらにパルプやタルク、クレー、炭酸カルシウム等の各種填料を含有する製紙原料スラリーを用いて紙を製造する際、パルプ成分由来のピッチ成分が製紙工程において、その操業性を低下させている。例えば、ピッチが製造マシンのプレスパートのフェルトに付着すると、水切れ性が低下する。水切れ性の低下は次のドライヤーパートでの乾燥性の低下を招き、その結果、乾燥時間を長くしたり、乾燥温度を高くしなければならず、結果、エネルギー使用率の増加及び生産性が低下する原因となる。また、ピッチがワイヤーパートやドライヤーパートに付着すると、乾燥工程でピッチが紙の表面に付着することにより、紙上の欠点発生の原因となる。このため、各パートにピッチが付着した場合、ピッチを洗浄又はフェルトやワイヤーの交換が必要となり、製造マシンを停止しなければならいことから生産効率が低くなるのを免れないものであった。
【0005】
このピッチ成分は天然ピッチと合成ピッチに分けられ、天然ピッチは木材パルプ由来のものであり、合成ピッチは例えば塗工紙に含まれるラテックス、サイズ剤等の内添薬剤、インク、感圧接着剤やホットメルト系接着剤等のスティッキー等古紙由来のものである。特に、最近は環境の改善維持から脱墨古紙パルプ(DIP)やブロークパルプ等の古紙を利用したパルプの利用率が高くなってきている。
【0006】
この合成ピッチの増加は、前記製造マシンへの付着に加え、製紙用助剤の効果の低下を引き起こす。このため、製紙用助剤がさらに増量されるため、前記と同様、生産性がさらに低下するという問題があった。
【0007】
このように、紙の製造において、再生パルプの使用は増加傾向にあり、その結果、微細パルプや合成ピッチの発生、及び抄紙条件の変更による填料の変更などにより、歩留り性の低下とピッチ由来のトラブルも増加している。
【0008】
このような問題、特に歩留り性の低下を抑制するために、カチオン性の歩留り剤と、アニオン性の歩留り助剤とを組合せた紙の製造方法が提案されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3)が、いずれも、歩留り剤だけでは歩留り性の低下を抑制できないため、歩留り助剤と併用する必要があるので、使用する薬剤の量が増え、経済的に有利でなく、また、歩留り剤を用いた後、次に歩留り助剤を用いる等操作も煩雑であり、さらに、歩留り助剤を用いても、歩留り剤により形成したフロックにシェアをかけた際に脱落した微細パルプやピッチ、填料は歩留り助剤を用いても長繊維パルプに付着させることができないため、微細成分の歩留り性の低下を抑制することができないものであった。
【0009】
【特許文献1】特開2001−254290号公報
【特許文献2】特開2001−295196号公報
【特許文献3】特表2002−523644号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、カチオン性ポリマー使用後、アニオン性ポリマーを使用するというような煩雑な操作が必要なく、製紙原料スラリーの状態によりカチオン性ポリマー又はアニオン性ポリマーを含有する製紙用助剤のいずれか1剤のみを使用すればよく、操作手段も簡単で生産効率もよい紙の製造方法であり、中性抄紙下、バージンパルプ等においては勿論のこと、脱墨古紙パルプ等の微細繊維を多量に含む製紙原料スラリーを用いた場合においても、製造マシン、特にワイヤーパート、プレスパートのフェルトやドライヤーパートにピッチが付着することがなく、しかも白色度に優れ、紙上の欠点発生がない高品質の紙を高い歩留りで得ることができ、特に古紙の再利用に適した紙の製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、上記の高品質の紙を製造するための製紙用助剤、特に1剤型の製紙用助剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、バージンパルプ等においては勿論のこと、微細パルプ繊維を多量に含む製紙原料スラリーに特定の製紙用助剤を含有させて紙を製造すると、微細パルプ繊維に定着されたピッチを、紙中に抄き込むことにより製紙工程から排出でき、ピッチを微細パルプ繊維に定着させることにより製造マシンへのピッチ付着抑制と、紙の白色度低下及び欠点発生を抑制でき、しかもカチオン性ポリマー使用後、アニオン性ポリマーを使用するというような煩雑な操作が必要なく、製紙原料スラリーの状態によりカチオン性ポリマー又はアニオン性ポリマーを含有する製紙用助剤のいずれか1剤のみを使用すればよく、操作手段も簡単で生産効率がよくなることを見出し本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明は以下の紙の製造方法及びこれに用いる製紙用助剤を提供するものである。
【0013】
〔1〕パルプ含有水性スラリーに、粘度平均分子量が1500万以上のカチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーの中から選択される少なくとも1種のポリマーを含有する製紙用助剤を配合し、得られた製紙原料スラリーを脱水してシート形成後、該シートを乾燥することを特徴とする紙の製造方法。
〔2〕前記ポリマーの粘度平均分子量が5000万以下であることを特徴とする前記〔1〕に記載の紙の製造方法。
〔3〕前記パルプがシュレッダーダストを再生したパルプであることを特徴とする前記〔1〕又は〔2〕に記載の紙の製造方法。
〔4〕前記パルプ含有水性スラリーの電荷に応じて、前記粘度平均分子量が1500万以上のカチオン性ポリマーを含有する製紙用助剤又は前記粘度平均分子量が1500万以上のアニオン性ポリマーを含有する製紙用助剤を用いることを特徴とする前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の紙の製造方法。
〔5〕パルプ含有水性スラリーに配合する製紙用助剤であって、粘度平均分子量が1500万以上のアニオン性ポリマー及びカチオン性ポリマーの中から選択される少なくとも1種のポリマーを含有することを特徴とする1剤型の製紙用助剤。
〔6〕前記ポリマーの粘度平均分子量が5000万以下であることを特徴とする前記〔5〕に記載の製紙用助剤。
なお、本発明の製紙用助剤に用いられるポリマーの粘度平均分子量とは、極限粘度法により測定したポリビニルアルコール換算の粘度平均分子量である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の紙の製造方法により紙を製造すると、
(1)酸性条件から中性条件への移行が容易である。
(2)バージンパルプ等においては勿論のこと、再生パルプや填料、ピッチ成分等の微細成分の歩留り率を向上できる。
(特にシュレッダーダスト由来の繊維の使用も可能となる)
(3)歩留り率向上に伴う地合いの低下を抑制できる。
(4)ピッチ成分を抄き込めるので、マシン汚染及びそれに伴うトラブルを回避できる。
(5)紙の内部にピッチ成分を抄き込むため、得られる紙の白色度に悪影響を与えない。
(6)カチオン性ポリマー使用後、アニオン性ポリマーを使用するというような煩雑な操作が必要がない。
(7)製紙原料スラリーの状態によりカチオン性ポリマー又はアニオン性ポリマーを含有する製紙用助剤のいずれか1剤のみを使用すればよく、操作手段も簡単で生産効率もよい。
このように本発明は、生産効率が高く、かつ高品質な紙を得ることができる紙の製造方法、及びこれに用いる製紙用助剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の紙の製造方法及びこれに用いる製紙用助剤を実施するための最良の形態について具体的に説明するが、本発明は以下の形態に限定されるものではない。
【0016】
[1]パルプ
本発明おいてパルプとしては、バージンパルプ等においては勿論のこと、古紙再生パルプを用いることができる。パルプの種類としては、例えば、新聞古紙、雑誌古紙、チラシ古紙、段ボール古紙やシュレッダーダスト等脱墨古紙パルプや砕木パルプ、リファイナグランドパルプ、サーモメカニカルパルプ、ケミサーモメカニカルパルプ等の機械パルプ、亜硫酸パルプ、ソーダパルプ、クラフトパルプ、塩素法パルプ等の化学的パルプ、ケミカルパルプ、ケミグランドパルプ等の機械的、化学的パルプなどが挙げられる。また、パルプの原木としては、エゾマツ、トドマツ、アカマツのような針葉樹や、ブナ、ポプラ、カバのような広葉樹などが挙げられる。これらのパルプは2種以上組合わせて用いることができる。
【0017】
[2]製紙用助剤
本発明の製紙用助剤は、粘度平均分子量が1500万以上のカチオン性ポリマー及び/又はアニオン性ポリマーを含有するものである。ここでいう粘度平均分子量とは、極限粘度法により測定したポリビニルアルコール換算の粘度平均分子量である。この粘度平均分子量が1500万未満のものを用いると、凝結・凝集性、特にフロック形成後のせん断下で微細パルプ繊維や填料、ピッチ成分が脱落するため、歩留り率が低下し、しかも脱落したピッチ成分により製造マシンが汚れるので好ましくない。以上の面及び製造上の面から本発明の製紙用助剤を構成するカチオン性ポリマー又はアニオン性ポリマーの好ましい粘度平均分子量は5000万以下であり、好ましくは4000万以下、より好ましくは3500万以下である。
【0018】
本発明の製紙用助剤としては、カチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーのいずれも用いられるが、通常、適用するパルプ含有スラリーの状態、特にカチオン(アニオン)要求量に応じ、適宜選択するものである。
【0019】
カチオン性ポリマーは、前記粘度平均分子量を有するものであれば、線状、分枝状、架橋型のいずれのものも用いることができ、これらのものは単独で用いてもよいし、2種以上を組合わせて用いてもよい。カチオン性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンイミン、ジメチルジアリルアミン−二酸化硫黄共重合体、ポリアクリルアミドカチオン変性物、ポリアミノアクリル酸の他、第四級アンモニウム塩残基を有するカチオン性モノマーを構成単位として含む単独重合体又は共重合体、エピハロヒドリン−アルキルアミン付加重合物及びアリルアミン重合体の塩あるいは4級アンモニウム塩、ならびにジシアンジアミド−ホルムアルデヒド−塩化アンモニウム縮合ポリマー等が挙げられ、特に第四級アンモニウム塩残基を有するカチオン性モノマーを構成単位として含む単独重合体又は共重合体が好ましい。
【0020】
このようなカチオン性ポリマーを構成する第四級アンモニウム塩残基を有するカチオン性モノマーとしては、例えば2‐(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、2‐(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、2‐(メタ)アクリロイルオキシエチルトリエチルアンモニウムクロリド、2‐(メタ)アクリロイルオキシエチルジエチルベンジルアンモニウムクロリド、3‐(メタ)アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、3‐(メタ)アクリルアミドプロピルトリエチルアンモニウムクロリド、3‐(メタ)アクリルアミドプロピルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、ジアリルジエチルアンモニウムクロリド、2‐(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムサルフェート、2‐(メタ)アクリルアミドエチルトリメチルアンモニウムクロリド、2‐(メタ)アクリロイルオキシエチルトリエチルアンモニウムブロミド、3‐(メタ)アクリロイルオキシプロピルジメチルエチルアンモニウムクロリド、3‐メタクリロイルオキシ‐2‐ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、3‐メタクリロイルオキシ‐2‐ヒドロキシプロピルメチルジエチルアンモニウムクロリド、3‐メタクリロイルオキシ‐2‐ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、2‐(メタ)アクリロイルアミノエチルトリメチルアンモニウムクロリド、3‐(メタ)アクリロイルアミノ‐2‐ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、2‐(メタ)アクリロイルアミノエチルトリメチルアンモニウムクロリドなどが挙げられる。これらの中でも、2‐(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリドを用いた単独重合体又は共重合体がカチオン量と分子量とを所望の値に調節しやすいので好ましい。
【0021】
このカチオン性ポリマーは前記カチオン性モノマーとこれと共重合可能な単量体、例えばエチレン性不飽和化合物との共重合体であってもよい。この共重合体を構成するエチレン性不飽和化合物としては、例えばエチレン性不飽和モノカルボン酸類やジカルボン酸類、(メタ)アクリル酸アルキルエステル類、芳香族ビニル化合物、不飽和アミド化合物及び不飽和ニトリル化合物などが挙げられる。このようなものの例としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸2‐メチルブチル、(メタ)アクリル酸tert‐ブチル、(メタ)アクリル酸2‐エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2‐ヒドロキシヘキシル、スチレン、α‐メチルスチレン、(メタ)アクリルアミド、N,N‐ジメチルアクリルアミド、N‐メチロールアクリルアミド、(メタ)アクリロニトリルなどを挙げることができる。中でも入手が容易で、重合が容易に行われるという点で、(メタ)アクリルアミド、特にアクリルアミドが好ましい。なお、(メタ)アクリルという用語は、アクリル又はメタクリルを意味する。
【0022】
カチオン性ポリマーが共重合体の場合、カチオン性ポリマー中の第四級アンモニウム塩残基を有するカチオン性モノマー単位の含有量は、5モル%以上60モル%未満の範囲が好ましい。このカチオン性モノマー単位の含有量が5モル%未満では、所望のカチオン量が得られにくいし、60モル%以上ではパルプや填料の歩留りを向上させにくい上、使用する慣用の製紙用助剤の使用量も削減しにくい。
【0023】
また、アリルアミン重合体の塩は、下記一般式[I]
【0024】
【化1】

(式中、Rは水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基、Xは塩素原子、臭素原子、硫酸残基、硝酸残基、有機カルボン酸残基又は有機スルホン酸残基、nは重合度を示す。)
で表されるものである。
【0025】
前記一般式〔I〕で表されるアリルアミン重合体の塩は、Rが水素原子または炭素数1〜5のアルキル基であり、好ましくは水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基であり、Xが塩素原子、臭素原子、硫酸残基、硝酸残基、有機カルボン酸残基、有機スルホン酸残基である。アリルアミン重合体の塩の例としては、ポリアリルアミンの塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩である。さらにポリN−アルキルアリルアミンの塩である、ポリメチルアリルアミン塩酸塩、ポリエチルアリルアミン塩酸塩、ポリプロピルアリルアミン塩酸塩、ポリイソプロピルアリルアミン臭化水素酸塩などを挙げることができる。
【0026】
さらに、このカチオン性ポリマーは、カチオン量が1〜12meq/gの範囲にあることが望ましい。ここでいうカチオン量とは、カチオン性ポリマー1g中に含まれるカチオン性モノマーの当量を意味し、2.5mol/mのポリビニル硫酸カリウムを用いたコロイド滴定法により求められる。カチオン量が1meq/gよりも小さいと、製紙原料スラリーの負電荷、特にパルプの表面電荷を十分に中和することができないため、ろ水性、歩留り性などの抄紙物性が低下する原因となる。また、12meq/gより大きいと歩留り性が低くなるおそれがある。ろ水性、歩留り性及びサイズ度などを考慮すると、好ましいカチオン量は1.5〜8meq/gの範囲である。
【0027】
このカチオン性ポリマーの重合方法としては、特に制限はなく、溶液重合法、乳化重合法、固体重合法など任意の方法を用いることができる。この際用いる重合開始剤としては、水溶性のアゾ化合物や過酸化物、例えば過酸化水素、2,2´‐アゾビス(2‐アミジノプロパン)二塩酸塩、水溶性無機過酸化物、または水溶性還元剤と水溶性無機過酸化物や有機過酸化物との組合せなどがある。
上記水溶性無機過酸化物の例としては、過硫酸カリウムや過硫酸アンモニウムなどが挙げられる。
また、水溶性還元剤の例としては、水に可溶な通常のラジカル酸化還元重合触媒成分として用いられる還元剤、例えばエチレンジアミン四酢酸又はそのナトリウム塩やカリウム塩、あるいはこれらと鉄、銅、クロムなどの重金属との錯化合物、スルフィン酸又はそのナトリウム塩やカリウム塩、L‐アスコルビン酸又はそのナトリウム塩やカリウム塩やカルシウム塩、ピロリン酸第一鉄、硫酸第一鉄、硫酸第一鉄アンモニウム、亜硫酸ナトリウム、酸性亜硫酸ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0028】
一方、水溶性有機過酸化物としては、例えばクメンヒドロペルオキシド、p‐サイメンヒドロペルオキシド、tert‐ブチルイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、p‐メンタンヒドロペルオキシド、デカリンヒドロペルオキシド、tert‐アミルヒドロペルオキシド、tert‐ブチルヒドロペルオキシド、イソプロピルヒドロペルオキシドなどのヒドロペルオキシド類などが挙げられる。
【0029】
また、この乳化重合における乳化剤としては、通常アニオン性界面活性剤又はそれとノニオン性界面活性剤との組合せが用いられる。このアニオン性界面活性剤やノニオン性界面活性剤としては、通常の乳化重合に用いられるものの中から任意に選んで用いることができる。このようなアニオン性界面活性剤の例としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、脂肪酸金属塩、ポリオキシアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンカルボン酸エステル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、コハク酸ジアルキルエステルスルホン酸塩などを挙げることができる。
【0030】
また、ノニオン性界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルグリセリンホウ酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルなど、ポリオキシエチレン鎖を分子内に有し、界面活性能を有する化合物及び前記化合物のポリオキシエチレン鎖がオキシエチレン、オキシプロピレンの共重合体で代替されている化合物、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステルなどを挙げることができる。
【0031】
前記乳化重合法によれば、例えば重合開始剤及び乳化剤を含有する水性媒体中において、エチレン性不飽和化合物及びカチオン性モノマーを所定の割合で混合し、通常30〜80℃の範囲の温度において重合させることにより、所望の共重合体微粒子が均質に分散したエマルションを得ることができる。この方法で得られるエマルションは、製紙用助剤としてそのままパルプ含有水性スラリーに配合することもできるし、所望ならば塩析又は噴霧乾燥などにより共重合体を固形物として取り出し、これを用いてセルロース含有懸濁液に配合してもよい。分枝型及び架橋型のカチオン性ポリマーの製造方法としては、前記した各重合方法において、二重結合、アルデヒド結合あいはエポキシ結合からなる群から選ばれる2種以上の試薬群を有する多官能化合物によって構成される分枝剤又は二重結合、アルデヒド結合あいはエポキシ結合からなる群から選ばれる2種以上の試薬群を有する多官能化合物によって構成される架橋剤(この架橋剤には、多価金属塩、ホルムアルデヒド、グリオキザールのようなイオン系架橋剤、モノマーと共重合する共有結合架橋剤を含む)を用いて重合するものである。
【0032】
一方、アニオン性ポリマーとしては、前記粘度平均分子量を有するものであれば、線状、分枝状、架橋型のいずれのものも用いることができ、これらのものは単独で用いてもよいし、2種以上を組合わせて用いてもよい。アニオン性ポリマーとしては、例えば、アクリル酸又はメタクリル酸を含有する水溶性単量体を構成単位とする重合体、例えばポリアクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸ナトリウムや前記水溶性単量体とこれと共重合可能な構成単位、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸ビニル、アクリロニトリル等の構成単位との共重合体、例えばアクリルアミド−アクリル酸ナトリウム共重合体、メタクリルアミド−アクリル酸ナトリウム共重合体等が挙げられ、特にアニオン性モノマーとしてアクリル酸ナトリウムを構成単位として含む単独重合体又は共重合体が好ましい。
【0033】
アニオン性ポリマーが共重合体の場合、アニオン性ポリマー中の前記水溶性単量体の配合割合は、3モル%以上、60モル%未満の範囲が好ましい。この範囲より水溶性単量体の配合割合が少ないと有効なアニオン性ポリマーを得ることができないし、この範囲を超えると共重合体とする必要がなくなるので好ましくない。より好ましい配合割合は10〜40モル%の範囲である。
【0034】
本発明のアニオン性ポリマーの重合方法としては、特に制限はなく、前記カチオン性ポリマーの重合方法と同様、溶液重合法、乳化重合法、固体重合法など任意の方法を用いることができる。
【0035】
本発明の製紙用助剤は、粘度平均分子量1500万以上のカチオン性ポリマー、アニオン性ポリマーを含有していればよく、その形態はどのようなものでもよく、特に限定されないが、例えば油中水型エマルジョン、粉体、溶液等が挙げられる。
【0036】
[3]紙の製造方法
本発明においては、例えば、パルプ成分を5質量%以上含有する濃厚パルプ含有水性スラリーをパルプ成分濃度が2質量%以下となるように希釈する。この希釈パルプスラリーに本発明の製紙用助剤を添加した後、脱水してシートを形成し、乾燥させることにより紙を製造する。
【0037】
また、希釈パルプスラリーへの前記製紙用助剤の配合割合は、パルプ成分に対し、50〜1000ppmとなるように配合することが好ましい。製紙用助剤がこの範囲より少ないと歩留り性の効果の低下に加え、製造マシンの汚れ抑制効果が低くなるし、この範囲より多くなると白色度及び地合いの低下を抑制することが困難となる。歩留り性、製造マシンの汚れ及び紙の白色度・地合い低下抑制の面から、より好ましい配合割合は70ppm〜400ppmの範囲である。
【0038】
本発明の紙の製造方法は、例えば、パルプ成分を少なくとも2.5質量%含有する水性スラリーを剪断後、0.5〜2.0質量%程度となるように白水で希釈し、この希釈したスラリーに本発明の製紙用助剤添加後にワイヤー上で脱水しシートを形成し、このシートをプレスパートで搾水後、ドライパートで乾燥するものである。
【0039】
そして本発明の紙の製造方法はバージンパルプ等を用いる場合は勿論のこと、微細成分、特に微細パルプ繊維、填料及びピッチ成分が含有された原料パルプ成分を用いる場合にも拘わらず、本発明の製紙用助剤を用いることによって、フロック形成後にせん断しても微細成分の脱落がみられないので、通常の製紙用装置を使用して、歩留り良くしかも高品質の紙を製造することができる。
【0040】
本発明の紙の製造方法においては、従来から用いられている慣用の助剤を用いてもよく、このような助剤としては、サイズ剤、紙力剤、硫酸バンド等が挙げられる。
【実施例】
【0041】
以下、本発明の紙の製造方法及びこれに用いられる製紙用助剤につき実施例を用いて具体的に説明するが、本発明の紙の製造方法及びこれを用いた製紙用助剤はこれらの実施例によって限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例の製紙原料スラリー及び得られた紙については、製紙原料スラリーの電荷密度、濁度、カチオン要求量、ピッチ量、濾水性、歩留り性、及び紙の地合いの7項目について評価した。これらの項目については、以下の方法により評価した。
【0042】
[濁度・カチオン要求量]
3〜4質量%パルプ試料を白水で希釈し、スラリー濃度1.0質量%のパルプ含有スラリーを調製した。このスラリーをブリッドジャー((a)40メッシュ又は(b)60メッシュ)に入れタービン羽根を備えた撹拌機を用いて撹拌しながら(1200rpm)各種薬剤をpH調整剤(250mol/m硫酸)、硫酸バンド、サイズ剤、紙力剤、填料、製紙用助剤の順で添加し(添加間隔10秒)、を添加し、規定の時間となったら撹拌したまま下穴から50mlを採取し、ワットマンNo.4濾紙にて吸引濾過し、その濾液について濁度、カチオン要求量を測定した。
濁度は、JIS K0101により濾水のホルマジン濁度を測定した。
この濁度は、歩留り、薬剤、ピッチの定着性を評価するためのものであり、この値が小さいほど歩留りが高く、薬剤、ピッチの定着率が高いものであることを意味する。
カチオン要求量は、Particle Charge Detector PCD03により測定した。
このカチオン要求量は、系内の電荷状態を評価するためのものであり、この値が低い程、系内のアニオン性成分が中和され少なくなっていることを意味する。このアニオン性成分の中和は、パルプ繊維のもつアニオン基についても同様になされるため、紙力増強剤、サイズ剤等のアニオン性を有する薬剤がパルプ繊維表面に定着しやすくなることを意味する。
【0043】
[ピッチ量(mg)]
パルプスラリー(パルプ含有量1.0質量%)250mlと予め質量を測定した発泡プラスチック(A)(12cm×3cm×1cm)とをガラスビンに入れ、40℃恒温で2時間振とう後、前記プラスチックを取り出し、100mlのイオン交換水で洗浄後、乾燥し、プラスチック(B)の質量を測定し、次の計算式により付着量(mg)を求めた。
付着量=(B)の質量−(A)の質量
【0044】
[濾水性]
パルプスラリー(パルプ含有量1.0質量%)500mlを角型容器に入れ、タービン羽根を備えた撹拌機を用いて撹拌しながら(1200rpm)、各種薬剤をpH調整剤(250mol/m硫酸)、硫酸バンド、サイズ剤、紙力剤、填料、製紙用助剤の順で添加し(添加間隔10秒)、薬剤添加終了後、さらに1200rpmで15秒間撹拌し、製紙原料スラリーを調製する。次にこの製紙原料スラリーを100メッシュを張った内径50mmのアクリル樹脂製円筒型の容器に移し、メスシリンダーを用いて濾水量200mlとなるまでの時間を測定した。
【0045】
[歩留り性]
パルプスラリー(パルプ含有量1.0質量%)500mlをブリッドジャー((a)40メッシュ又は(b)60メッシュ)に入れタービン羽根を備えた撹拌機を用いて撹拌しながら(1200rpm)前記[濾水性]と同じ順序で各種薬剤を添加し、規定の時間となったら撹拌したまま下穴から濾水100mlを採取し、濾紙に吸引濾過後、110℃で60分間乾燥し、乾燥後の質量を測定することにより、全歩留り(OPR)求めた。また、予め測定した微細繊維濃度((a)40メッシュ通過微細繊維又は(b)60メッシュ通過微細繊維)から微細繊維歩留り(OPFR)を、乾燥後の濾紙を550℃で2時間加熱したときの灰分より、灰分歩留り(OPAR)を測定した。
【0046】
[地合い]
前記〔濾水性〕の評価において用いたのと同じ製紙原料スラリーを坪量が50g/mとなるように角型容器に入れ、撹拌しながら、角型抄紙機[東西精機(株)社製]に前記スラリーを入れ、撹拌棒で一定の力で2回上下に撹拌し、最後に穏やかに撹拌した。そして、前記抄紙機の排水弁を開き、メッシュ((a)40メッシュ又は(b)60メッシュ)上に形成されたマット(250mm×250mm)の上に濾紙とステンレス鋼板1枚を載せ、ローラーで脱水した。マットをメッシュから剥がし、濾紙とステンレス鋼板で挟み、2枚ずつプレス機を用いて荷重5.25Kg/cm、5分の条件で1回プレスし、さらに前記荷重で2分の条件で1回プレスした。その後、ドラム式ドライヤー(ドラムの表面温度95℃)で3分間乾燥させ、一昼夜調湿(20℃、湿度55%)し、評価用の紙を得た。
この紙をエムケイシステムズ(M/K SYSTEMS)社製、3−Dシートアナライザーを用いて地合いインデックスを測定した。得られたインデックス値は大きい値の方が地合いが良好であることを示す。
【0047】
(実施例1)
脱墨古紙パルプ3.2質量%濃度のパルプ含有水性スラリーを白水で希釈し、スラリー濃度1.0質量%のパルプ含有スラリーを調整した。このパルプ含有スラリーに硫酸バンドをパルプに対し0.7質量%、中性ロジンサイズ剤を前記パルプに対し0.2質量%、カチオン性PAMからなる紙力剤を前記パルプに対し0.2質量%添加し、次いで炭酸カルシウムを前記パルプに対し10質量%、製紙用助剤(直鎖状アクリルアミド−アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド共重合体:粘度平均分子量1500万、カチオン量2.7meq/g)を前記パルプに対し250ppmをこの順序で撹拌しながら添加し、その後、pH7.5の範囲になるように調製し、製紙原料スラリーを調製した。この製紙原料スラリーの物性及びこの製紙原料スラリーを用いて抄紙して得られた紙の物性を表1に示す。
【0048】
(実施例2)
実施例1において、製紙用助剤を分岐状のアクリルアミド−アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド共重合体(粘度平均分子量1500万、カチオン量2.7meq/g)に換えた以外はすべて実施例1と同様にして製紙原料スラリーを調製した。この製紙原料スラリーの物性及びこの製紙原料スラリーを用いて抄紙して得られた紙の物性を表1に示す。
【0049】
(実施例3)
脱墨故紙パルプとサーモメカニカルパルプとの混合物(質量比7:3)3.5質量%濃度のパルプ含有水性スラリーを白水で希釈し、スラリー濃度1.0質量%のパルプ含有スラリーを調整した。このパルプ含有スラリーに硫酸バンドをパルプに対し4質量%、中性ロジンサイズ剤を前記パルプに対し0.2質量%、カチオン性PAMからなる紙力剤を前記パルプに対し0.2質量%添加し、次いでホワイトカーボンを前記パルプに対し3質量%、製紙用助剤(直鎖状アクリルアミド−アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド共重合体:粘度平均分子量2000万、カチオン量1.1meq/g)を前記パルプに対し100ppmをこの順序で撹拌しながら添加し、その後、pH5.0の範囲になるように調製し、製紙原料スラリーを調製した。この製紙原料スラリーの物性及びこの製紙原料スラリーを用いて抄紙して得られた紙の物性を表1に示す。
【0050】
(実施例4)
実施例3において、製紙用助剤の配合割合を70ppmにした以外はすべて実施例3と同様にして製紙原料スラリーを調製した。この製紙原料スラリーの物性及びこの製紙原料スラリーを用いて抄紙して得られた紙の物性を表1に示す。
【0051】
(実施例5)
脱墨故紙パルプとサーモメカニカルパルプとの混合物(質量比8:2)3.5質量%濃度のパルプ含有水性スラリーを白水で希釈し、スラリー濃度1.0質量%のパルプ含有スラリーを調整した。このパルプ含有スラリーに硫酸バンドをパルプに対し4質量%、中性ロジンサイズ剤を前記パルプに対し0.2質量%、カチオン性PAMからなる紙力剤を前記パルプに対し0.2質量%添加し、次いで炭酸カルシウムを前記パルプに対し10質量%、製紙用助剤(直鎖状アクリルアミド−アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド共重合体:粘度平均分子量2500万、カチオン量3.3meq/g)を前記パルプに対し280ppmをこの順序で撹拌しながら添加し、その後、pH7.5の範囲になるように調製し、製紙原料スラリーを調製した。この製紙原料スラリーの物性及びこの製紙原料スラリーを用いて抄紙して得られた紙の物性を表1に示す。
【0052】
(実施例6)
実施例5において、製紙用助剤の配合割合を200ppmにした以外はすべて実施例5と同様にして製紙原料スラリーを調製した。この製紙原料スラリーの物性及びこの製紙原料スラリーを用いて抄紙して得られた紙の物性を表1に示す。
【0053】
(実施例7)
脱墨古紙パルプ3.2質量%濃度のパルプ含有水性スラリーを白水で希釈し、スラリー濃度1.0質量%のパルプ含有スラリーを調整した。このパルプ含有スラリーに硫酸バンドをパルプに対し4質量%、中性ロジンサイズ剤を前記パルプに対し0.2質量%、カチオン性PAMからなる紙力剤を前記パルプに対し0.2質量%添加し、次いでホワイトカーボンを前記パルプに対し3質量%、製紙用助剤(直鎖状アクリルアミド−アクリル酸ナトリウム共重合体:粘度平均分子量2000万、ポリマー電荷密度1.2meq/g)を前記パルプに対し150ppmをこの順序で撹拌しながら添加し、その後、pH4.5の範囲になるように調製し、製紙原料スラリーを調製した。この製紙原料スラリーの物性及びこの製紙原料スラリーを用いて抄紙して得られた紙の物性を表1に示す。
【0054】
(実施例8)
実施例7において、製紙用助剤の配合割合を100ppmにした以外はすべて実施例7と同様にして製紙原料スラリーを調製した。この製紙原料スラリーの物性及びこの製紙原料スラリーを用いて抄紙して得られた紙の物性を表1に示す。
【0055】
(実施例9)
段ボール古紙パルプ3.5質量%濃度のパルプ含有水性スラリーを白水で希釈し、スラリー濃度1.0質量%のパルプ含有スラリーを調整した。このパルプ含有スラリーに硫酸バンドをパルプに対し0.8質量%、中性ロジンサイズ剤を前記パルプに対し0.2質量%、カチオン性PAMからなる紙力剤を前記パルプに対し0.2質量%添加し、次いで製紙用助剤(直鎖状アクリルアミド−アクリル酸ナトリウム共重合体:粘度平均分子量2500万、ポリマー電荷密度2.0meq/g)を前記パルプに対し200ppmをこの順序で撹拌しながら添加し、その後、pH7.2の範囲になるように調製し、製紙原料スラリーを調製した。この製紙原料スラリーの物性及びこの製紙原料スラリーを用いて抄紙して得られた紙の物性を表1に示す。
【0056】
(実施例10)
実施例9において、製紙用助剤の配合割合を300ppmにした以外はすべて実施例9と同様にして製紙原料スラリーを調製した。この製紙原料スラリーの物性及びこの製紙原料スラリーを用いて抄紙して得られた紙の物性を表1に示す。
【0057】
(実施例11)
クラフトパルプ3.8質量%濃度のパルプ含有水性スラリーを白水で希釈し、スラリー濃度1.0質量%のパルプ含有スラリーを調整した。このパルプ含有スラリーに硫酸バンドをパルプに対し0.8質量%、中性ロジンサイズ剤を前記パルプに対し0.2質量%、カチオン性PAMからなる紙力剤を前記パルプに対し0.2質量%添加し、次いでタルクを前記パルプに対し15質量%、製紙用助剤(直鎖状アクリルアミド−アクリル酸ナトリウム共重合体:粘度平均分子量3500万、ポリマー電荷密度1.0meq/g)を前記パルプに対し100ppmをこの順序で撹拌しながら添加し、その後、pH5.3の範囲になるように調製し、製紙原料スラリーを調製した。この製紙原料スラリーの物性及びこの製紙原料スラリーを用いて抄紙して得られた紙の物性を表1に示す。
【0058】
(実施例12)
実施例11において、製紙用助剤の配合割合を180ppmにした以外はすべて実施例11と同様にして製紙原料スラリーを調製した。この製紙原料スラリーの物性及びこの製紙原料スラリーを用いて抄紙して得られた紙の物性を表1に示す。
【0059】
(比較例1〜3)
実施例1、実施例3及び実施例5において、製紙用助剤を粘度平均分子量800万のものにかえた以外は全て実施例1、実施例3及び実施例5と同様にして製紙原料スラリーを調製した。この製紙原料スラリーの物性及びこの製紙原料スラリーを用いて抄紙して得られた紙の物性を表1に示す。
【0060】
(比較例4〜6)
実施例7、実施例9及び実施例11において、製紙用助剤を粘度平均分子量800万のものにかえた以外は全て実施例7、実施例9及び実施例11と同様にして製紙原料スラリーを調製した。この製紙原料スラリーの物性及びこの製紙原料スラリーを用いて抄紙して得られた紙の物性を表1に示す。
【0061】
(比較例7〜12)
実施例1、実施例3、実施例5、実施例7、実施例9及び実施例11において、製紙用助剤を添加しなかった以外は全て実施例1、実施例3、実施例5、実施例7、実施例9及び実施例11と同様にして製紙原料スラリーを調製した。この製紙原料スラリーの物性及びこの製紙原料スラリーを用いて抄紙して得られた紙の物性を表1に示す。
【0062】
【表1】

【0063】
表1の結果から、実施例1〜12ものは、比較例1〜6に比べ、歩留り性、濾水性が向上し、また地合いの低下が抑制されていることが分かる。さらに、ピッチ量が少ないことから、ピッチがパルプ繊維に定着し、製紙原料スラリー中から外へ排出されていることがわかり、その結果として抄紙機にピッチが付着するのを防止できることが分かる。また、実施例1〜12のものは、比較例7〜12と同様の地合いでありながら、濾水性、歩留り性及びピッチ付着量抑制性が向上していることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の紙の製造方法及びこれに用いる製紙用助剤は、バージンパルプ等においては勿論のこと、再生パルプ等の微細繊維パルプやピッチ成分及び填料等の微細成分を多量に含むパルプ含有水性スラリーを用いた場合でも微細成分を長繊維パルプに定着させ、このパルプを用いて紙を製造するため、微細繊維パルプや填料等の微細成分を効率よく使用できるため製造マシンにピッチを付着させずに製紙工程外へ排出でき、しかも歩留り性を向上させているにもかかわらず、地合いの低下を抑制できるので、高い品質の紙を得ることができる。そのため本発明の紙の製造方法及びこれに用いる製紙用助剤は、古紙の再利用に極めて有効なものである。





【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプ含有水性スラリーに、粘度平均分子量が1500万以上のカチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーの中から選択される少なくとも1種のポリマーを含有する製紙用助剤を配合し、得られた製紙原料スラリーを脱水してシート形成後、該シートを乾燥することを特徴とする紙の製造方法。
【請求項2】
前記ポリマーの粘度平均分子量が5000万以下であることを特徴とする請求項1に記載の紙の製造方法。
【請求項3】
前記パルプがシュレッダーダストを再生したパルプであることを特徴とする請求項1又は2に記載の紙の製造方法。
【請求項4】
前記パルプ含有水性スラリーの電荷に応じて、前記粘度平均分子量が1500万以上のカチオン性ポリマーを含有する製紙用助剤又は前記粘度平均分子量1500万以上のアニオン性ポリマーを含有する製紙用助剤を用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の紙の製造方法。
【請求項5】
パルプ含有水性スラリーに配合する製紙用助剤であって、粘度平均分子量が1500万以上のアニオン性ポリマー及びカチオン性ポリマーの中から選択される少なくとも1種のポリマーを含有することを特徴とする1剤型の製紙用助剤。
【請求項6】
前記ポリマーの粘度平均分子量が5000万以下であることを特徴とする請求項5に記載の製紙用助剤。





【公開番号】特開2007−100254(P2007−100254A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−292912(P2005−292912)
【出願日】平成17年10月5日(2005.10.5)
【出願人】(000108454)ソマール株式会社 (81)
【Fターム(参考)】