説明

紙厚検出装置及び紙厚検出方法

【課題】直前のデータを有効に利用することにより、紙葉類が搬送路につかえて搬送されなくなる事態を迅速かつ的確に検出するための紙厚検出装置及びその検出方法を提供する。
【解決手段】紙葉6類の搬送路7に配設して紙厚を検出出力する紙厚検出部8と、前記紙厚検出部8の検出出力に基づいてしきい値を演算するしきい値演算部12と、前記検出出力と前記しきい値とを比較する紙厚比較部13と、前記紙厚比較部13の比較結果に基づいて前記紙葉6の搬送の続行又は停止の制御を行なう紙葉搬送制御部14とを有し、前記紙厚検出部8の紙葉6の検出出力を、直前に前記紙厚検出部8を通過した紙葉6のしきい値と比較する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙葉類を搬送する紙葉類搬送システムにおいて、紙葉類が搬送路につかえて搬送されなくなる事態を早期に検出するための紙厚検出装置及び紙厚検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スキャナー、プリンター、複写機等の紙葉類の紙厚検出方法において、記録
媒体である紙葉類が、その紙厚や重送によって搬送路中でつかえてしまう
障害が発生することがある。例えば、同一の規格(A4やB4等)の用紙を用いて印刷するような場合、通常その用紙の紙厚は一定であるから、印刷過程において搬送路中につかえてしまう障害が発生することは稀である。しかし、種々の紙葉類を次々搬送して印刷するような場合には、用紙のサイズはともかく、紙厚には、バラツキが必然的に生じ得る。
そのような異なる紙厚の紙葉類が搬送装置に与える障害を速やかに検知し
て、円滑な搬送手段を確保する技術が種々提案されてきた。
【0003】
すなわち、紙厚検知に対しては、近年、透過光式や接触式の方法があり、
さらに重送が紙厚と密接な関係を有することに着目し、重送検知に超音波セ
ンサを用いることによって、超音波センサで重送検知と紙厚検知を兼用し得
る技術が開発されている。
【0004】
具体的には、例えば、下記特許文献1によれば、紙厚の検知と重送検知に共
通の超音波センサからの受信信号を用いる画像読取装置により、複数の原稿
用紙が収納可能な収容部から原稿読取部に搬送中の原稿用紙が重送であるか
否かと、原稿用紙の紙厚を同時に検知しようとするものである。すなわち、一つの超音波センサによって原稿用紙の重送と紙厚とを検知しようとする点に着目する。
また、下記特許文献2によれば、紙葉類の重送検知に重点を置き、前の結
果を利用して重送や紙厚を監視しようとする。
【0005】
そして、下記特許文献1では、紙葉類の搬送前における超音波センサの受信
レベル曲線を基準として、重送ないし紙厚の異常を検知する。超音波センサの使用環境等を考慮してこのような基準を設けたものである。
また、下記特許文献2では、複数の紙葉類の繰り返し搬送単位を一つの「ジ
ョブ」と称し、今回のジョブを前回のジョブと比較して紙葉類の重送を検出
する。つまり、「ジョブ」に基づいて基準値を設定し、主として重送検知を
行う。
【0006】
ところが、このような技術においては、次のような問題がある。
まず、紙葉類の種類、センサ自体の性能のバラツキ、センサの使用環境等に
よって検出結果に誤差や検出ミスが生じ易い。また、例えば、紙厚に対する超音波センサの減衰量の関係性のデータが不可欠であるため、信頼すべき情
報(データ等)の収集が必要である。さらに、重送の有無や紙厚の異常検知
には、収集データに基づいて、予め設定した固定のレベル、すなわち絶対基準を設定することも必要である。このため、データの信頼性が重送検知等に直接影響を及ぼす。このように、従来技術における紙厚検出装置やその紙厚検出方法にあっては、絶対値、基準値、標準値などの固定した基準を設定し、その範囲で紙厚を検出して問題の発生を制御するものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−161291号公報
【特許文献2】特開2002−362783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような絶対値、基準値、標準値などの固定した基準に依拠するまでもなく、前記の従来技術に内在する課題を解決するとともに、直前の常に変動するデータを有効に利用することにより、紙葉類を搬送する紙葉搬送方法において、紙葉が搬送路につかえて搬送されなくなるような事態を迅速かつ的確に検出するための紙厚検出装置及び紙厚検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、上記目的を達成するために、本発明に係る紙厚検出装置は、紙葉類の搬送路に配設して紙厚を検出出力する紙厚検出部と、前記紙厚検出部の検出出力に基づいてしきい値を演算するしきい値演算部と、前記検出出力と前記しきい値とを比較する紙厚比較部と、前記紙厚比較部の比較結果に基づいて前記紙葉の搬送の続行又は停止の制御を行なう紙葉搬送制御部とを有し、前記紙厚検出部の紙葉の検出出力を、直前に前記紙厚検出部を通過した紙葉のしきい値との比較結果に基づいて、前記紙葉搬送制御部において、前記紙厚検出部の紙葉の搬送制御を行なうことを特徴とする。
【0010】
この構成により、紙葉類の搬送路を次々搬送する紙葉は、直前、直後という連続する紙葉間において、直前の紙葉の紙厚を検出して得た検出出力を変換した出力信号レベルを基準として設定したしきい値との相対比較によって直後の紙葉の搬送が制御できるため、予め搬送されるすべての紙葉に一律に適用するための厳密な絶対基準や、標準値を設定する必要がない。また、出力信号レベルを検出するためのセンサ自体の性能のバラツキ、センサの使用環境等も考慮する必要もない。
【0011】
また、本発明に係る紙厚検出装置は、前記しきい値を、上限のしきい値と下限のしきい値とからなり、前記上限のしきい値若しくは前記下限のしきい値又はその両方のしきい値を適宜変更可能とすることを特徴とする。
【0012】
この構成により、紙厚検出部で出力検出中の紙葉の搬送継続又は停止の制御を一段と柔軟に行うことができる。
【0013】
また、本発明に係る紙厚検出装置は、前記検出出力が、前記比較結果で前記しきい値内であるときは、前記紙葉搬送制御部が前記紙葉類の搬送を続行する制御指令を発することを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る紙厚検出装置は、前記検出出力が、前記比較結果で前記上限のしきい値を越えているときは、前記紙葉搬送制御部において前記紙葉は薄紙であると判定し、前記紙葉の搬送を停止するよう制御指令を発することを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る紙厚検出装置は、前記検出出力が、前記比較結果で前記下限のしきい値に達していないときは、前記紙葉搬送制御部において前記紙葉は厚紙であると判定し、前記紙葉の搬送を停止するよう制御指令を発することを特徴とする。
【0016】
前記紙厚検出部は、センサ発生部とセンサ受信部を備えるセンサで構成することを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係る紙厚検出装置は、前記紙厚検出部は、超音波発生部と超音波受信部を備える超音波センサで構成することを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る紙厚検出装置は、紙葉類の搬送路に配設して紙厚を検出出力する紙厚検出部と、前記紙厚検出部の検出出力に基づいてしきい値を演算するしきい値演算部と、前記検出出力と前記しきい値とを比較する紙厚比較部と、前記紙厚比較部の比較結果に基づいて前記紙葉の搬送の続行又は停止の制御を行なう紙葉搬送制御部とを有し、前記紙厚検出部の紙葉の検出出力を、前記紙厚検出部を既に通過した複数枚の紙葉の組み合わせにより演算したしきい値との比較結果に基づいて、前記紙葉搬送制御部において、前記紙厚検出部の紙葉の搬送制御を行なうことを特徴とする。
【0019】
この構成により、前記紙厚検出部で出力検出中の紙葉の搬送制御を一層自由度の高い制御を行なうようにすることができる。
【0020】
また、本発明に係る紙厚検出方法は、紙葉類の搬送路に配設して紙厚を検出出力する紙厚検出部と、前記紙厚検出部の検出出力に基づいてしきい値を演算するしきい値演算部と、前記検出出力と前記しきい値とを比較する紙厚比較部と、前記紙厚比較部の比較結果に基づいて前記紙葉の搬送の続行又は停止の制御を行なう紙葉搬送制御部とを有し、前記紙厚検出部の紙葉の検出出力を、直前に前記紙厚検出部を通過した紙葉のしきい値との比較結果に基づいて、前記紙葉搬送制御部において、前記紙厚検出部の紙葉の搬送制御を行なうことを特徴とする。
【0021】
また、本発明に係る紙厚検出方法は、前記しきい値が、上限のしきい値と下限のしきい値とからなり、前記上限のしきい値若しくは前記下限のしきい値又はその両方のしきい値を適宜変更可能とすることを特徴とする。
【0022】
また、本発明に係る紙厚検出方法は、前記検出出力が、比較結果で前記しきい値内であるときは、紙葉搬送制御部が前記紙葉の搬送を続行する制御指令を発することを特徴とする。
【0023】
また、本発明に係る紙厚検出方法は、前記検出出力が、比較結果で前記上限のしきい値を越えているときは、紙葉搬送制御部において前記紙葉は薄紙であると判定し、前記紙葉の搬送を停止するよう制御指令を発することを特徴とする。
【0024】
また、本発明に係る紙厚検出方法は、前記検出出力が、比較結果で前記下限のしきい値に達していないときは、紙葉搬送制御部において前記紙葉は厚紙で
あると判定し、前記紙葉の搬送を停止するよう制御指令を発することを特徴とする。
【0025】
また、本発明に係る紙厚検出方法は、前記紙厚検出部は、センサ発生部とセンサ受信部を備えるセンサで構成することを特徴とする。
【0026】
また、本発明に係る紙厚検出方法は、前記紙厚検出部は、超音波発生部と超音波検出部を備える超音波センサで構成することを特徴とする。
【0027】
また、本発明に係る紙厚検出方法は、紙葉類の搬送路に配設して紙厚を検出出力する紙厚検出部と、前記紙厚検出部の検出出力に基づいてしきい値を演算するしきい値演算部と、前記検出出力と前記しきい値とを比較する紙厚比較部と、前記紙厚比較部の比較結果に基づいて前記紙葉の搬送の続行又は停止の制御を行なう紙葉搬送制御部とを有し、前記紙厚検出部の紙葉の検出出力を、前記紙厚検出部を既に通過した複数枚の紙葉の組み合わせにより演算したしきい値との比較結果に基づいて、前記紙葉搬送制御部において、前記紙厚検出部の紙葉の搬送制御を行なうことを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
以上の如く、本発明によれば、厚さの異なる帳票の混在を迅速かつ的確に検出することができる。また、従来技術のようなセンサ自体の性能のバラツキ、センサの使用環境等による影響も可及的に解消できる。また、予め厳密な紙厚検出のための数値を決定する必要もない。さらに、本発明そのものを用いて直後の紙葉類の重送検出にも利用できる。従って、紙厚検出、重送検出及び紙厚と重送の検出を同時に行うこともできる。
また、本発明で使用するセンサは、超音波センサのみならず、接触式や透過式などの各種検知方式のセンサにも利用することができる。さらに、紙葉類の搬送方向に対して直交するように複数の紙厚検出部を設けることによって、例えば、原稿に貼られたシール等を容易に検出することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態に係る紙厚検出装置の概略図である。
【図2】薄紙混入検出パターンの概念図である。
【図3】厚紙混入検出パターンの概念図である。
【図4】紙葉がないときの超音波受信信号の波形図である。
【図5】薄紙を検出したときの超音波受信信号の波形図である。
【図6】厚紙を検出したときの超音波受信信号の波形図である。
【図7】重送を検出したときの超音波受信信号の波形図である。
【図8】紙厚と受信信号レベルの関係を示す図である。
【図9】紙葉類の搬送工程における紙厚検出のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0031】
図1は、本発明の実施の形態に係る紙厚検出装置1の概略図である。本発明
の紙厚検出装置1は、紙葉6を積層し、1枚ずつ送り出す給紙部2と、1対の搬送ローラ3、4と、排出部5と、給紙部2と排出部5とをつなぐ紙葉6を搬送する搬送路7と、1対の搬送ローラ3、4の近傍に搬送路7を挟んで配置された超音波発生部9及び超音波受信部10を有する紙厚検出部8と、紙厚検出部8とを接続して制御する中央処理装置(CPU)11とメモリ部15と、紙厚検出装置1の各部を駆動するための駆動系(図示せず)を備える。
【0032】
紙厚検出部8は、1対の搬送ローラ3、4の近傍に搬送路7を挟んで配置された超音波発生部9及び超音波受信部10の間に搬送される紙葉6の紙厚を計測し、その結果である検出出力を信号としてCPU11に出力する。
CPU11には、しきい値演算部12、紙厚比較部13、紙葉搬送制御部14が格納されている。しきい値演算部12は、紙厚検出部8で検出した出力によってしきい値を演算する。紙厚比較部13は、前記紙厚検出部8で検出した出力としきい値演算部12で演算した前記しきい値とを比較する。
紙葉搬送制御部14は、前記紙厚比較部13で比較された比較結果に基づいて、前記紙厚検出部で出力検出中の紙葉の搬送の続行又は停止の制御を行なう。
メモリ部15は、紙厚検出装置1全体システムを駆動させるためのプログラムとプログラムで処理されるデータを格納記憶する。
また、CPU11で処理された演算結果等も記憶する。
さらに、CPU11からの指令によって必要なメモリを出力する。
【0033】
このような構成の本発明の実施形態に係る紙厚検出装置1における紙厚検出について、図1〜図8を参照して、以下に説明する。
【0034】
図1に示すように、給紙部2には、多数の紙葉6(6a、6b・・)が積層
されている。紙葉6は、一番上に載置の1枚目の紙葉6aから順次1対の搬送ローラ3、4間に誘導され、補助ローラ3a、4a、3b、4bの矢印方向に
誘導されながら排出部5方向に搬送路7上を搬送される。1対の搬送ローラ3、4の近傍に搬送路7を挟んで配置された超音波発生部9及び超音波受信部10とからなる紙厚検出部8によって、1枚目の紙葉6aの紙厚が検出される。このときの紙厚検出信号は、メモリ部15に記憶される。
【0035】
図2は、前記紙厚検出信号を入力したCPU11において解析した結果、薄紙混入を検出したパターンの概念図である。このパターンでは、紙厚検出部8から出力された1枚目の紙葉6aの受信信号をレベル変換し、メモリ部15に記憶する。すなわち、レベル変換された受信信号の数値は、1枚目の紙葉6aの
実測値Y6aでなる。
しかし、かかる実測値Y6aは、種々の外部因子(例えば、周囲環境が超音波発生部9や超音波検出部10に与えるコントロール困難な検出発生誤差など)の影響を大なり小なり受ける。そのため、かかる実測値Y6aの測定誤差を加味した範囲を設定する。
【0036】
本発明に係る紙厚検出装置1及びその紙厚検出方法は、このような測定誤差のうち、必然的に発生する許容誤差をしきい値を適用することにより、許容誤差の最も有効な利用方法とするものである。
その具体例として、前記実測値Y6aから、測定誤差を基準として上下にレンジを設けるようにしたのが、図2における1枚目に設定した上限と下限のしきい値であって、基本式とともに次式で与えられる。
【0037】
基本式:上限閾値(上限のしきい値)=(N−1)枚目の超音波レベル+α
【0038】
ここにNは、2以上の整数値、しきい値の単位はV(ボルト)である。
また、αは、標準偏差(例えば、中央値に対する+3σ)に相当するような測定結果(本発明では、紙厚検出部8によって検出した出力信号レベル)に対する%値である。
【0039】
従って、この基本式によれば、1枚目に設定した上限閾値(上限のしきい値)=実測値Y6a+αとなる。
【0040】
基本式:下限閾値(下限のしきい値)=(N−1)枚目の超音波レベル−β
【0041】
ここにNは、2以上の整数値、しきい値の単位はV(ボルト)である。
また、βは、標準偏差(例えば、中央値に対する-3σ)に相当するような測定結果(本発明では、紙厚検出部8によって検出した出力信号レベル)に対する%値である。
【0042】
従って、この基本式によれば、1枚目に設定した下限閾値(下限のしきい値)=実測値Y6a−βとなる。
【0043】
この上下限のしきい値Y6a+αとしきい値Y6a−βの範囲は、紙厚検出装置1における1枚目の紙葉6aとして、正常に搬送されたという事実を示すばかりでなく、受信信号レベルの実測値Y6a±誤差(しきい値Y6a+αと
Y6a−βの範囲)内ならば2枚目の紙葉6bの通過を「正常範囲」として搬送許容することも意味し、2枚目の紙葉6bにとっては、紙厚検出装置1が紙葉6bの搬送を障害なく許容できるか否かを判断するための相対的な判定手段にもなり得る。すなわち、2枚目の紙葉6bの紙厚検出結果が、前記両しきい値Y6a+αとY6a−βの範囲内にあれば、高確率で支障なく搬送されることを意味する。
【0044】
本発明では、実測値、すなわち(N−1)枚目の超音波レベルに対して上限としての加算(+α)と、下限としての減算(−β)とによって「正常範囲」としている。この演算の意味は、例えば、1枚目の上限のしきい値では、実測値Y6aは生の測定値であり、加算したα値は、実測値Y6aの検出誤差によって実質α値を加算しても誤差の範囲であるとするものである。1枚目の下限のしきい値についても同様である。
外部の温湿度などのきわめて繊細な環境条件に影響を受けやすい厚さを計測するような、本発明の紙厚の場合には、必然的に生じる計測誤差を考慮する必要がある。そのため、この加算(+α)や減算(−β)は、計測誤差を数値化したものでもある。
【0045】
かかる計測誤差にしきい値を用いるとしても、しきい値の範囲を任意に設定するものではない。すなわち、測定値には、経験則としての標準偏差(σ)が働くからである。つまり、実測値Y6aに対し、加算(+α)や減算(−β)によって設定した上限のしきい値と下限のしきい値は、その根底に統計上の確率によって、論理されるものである。この論理を用いれば、上限のしきい値と下限のしきい値によって常に変動しつつある直前の紙葉の紙厚のレンジ(常に変動する変動範囲)は、その変動によりつつも、直後の紙葉にとって、紙厚検出部8を通過し得るか否かの判定基準になる。
そのために、本発明では、予め厳密な許容紙厚の絶対値や標準値などのいわば固定的な数値や範囲を設け、その値を絶対基準として搬送条件を決定する必要がない。
【0046】
次に、図2における2枚目の紙葉6b以降の搬送許容についても、1枚目の紙葉6aと2枚目の紙葉6bの相対関係がそのまま適用される。例えば、2枚目の紙葉6bの受信信号レベルの実測値Y6b±誤差(しきい値Y6b+αとY6b-βの範囲)内ならば3枚目の紙葉6cの搬送にとって正常範囲となる。つまり、3枚目の紙葉6cの搬送許容条件は、1枚目の紙葉6aの紙厚検出結果に依拠するのではなく、2枚目の紙葉6bの紙厚検出結果に基づくレンジ(上下の
しきい値というレンジ)に依存するのである。
【0047】
しかし、同図において、例として、6枚目の紙葉6fの紙厚検出結果(実測値Y6f)は、5枚目の紙葉6eの実測値Y6e±誤差(しきい値Y6e+αと6Ye−βの範囲)の上限のしきい値Y6e+αを越えている。この場合は、紙葉6fの紙厚検出結果(実測値Y6f)は搬送許容範囲外であって薄紙検出であると紙厚比較部13で比較判定される。
かかる判定があると、その判定信号は紙葉搬送制御部14に出力され、駆動系は遮断され、搬送路7等の駆動は停止する。紙葉6fは排出しなければならない。
【0048】
図3は、厚紙を混入検出したパターンの概念例図である。概念そのものは、前記した図2の、薄紙混入検出パターンの概念と同様である。従って重複説明は省略する。
【0049】
図3における厚紙混入検出パターン例では、6枚目の紙葉6fの紙厚検出結果(実測値Y6f)が、5枚目の紙葉6eの実測値Y6e±誤差(しきい値Y6e+αとY6e−βの範囲)の下限のしきい値Y6e−βに達していない。
この場合は、紙葉6fの紙厚検出結果(実測値Y6f)は正常範囲外であって厚紙検出であると紙厚比較部13で判定される。このような判定がされると、駆動系は遮断され、搬送路7等の駆動は停止する。紙葉6fは排出しなければならない。
【0050】
ここで、図3における各枚目の実測値としきい値は、記号を図2の各枚目の実測値としきい値に同一にしているが、これはあくまでも便宜上の表示に過ぎない。また、実測値と設定に係る上限又は下限のしきい値の関係も、各枚目と
も実測値に対し、一律な上下限の数値で設定されるものでもない。つまり、しきい値は任意に設定し得るものである。従って、例えば実測値Y6aと実測値Y6bとでは、上下限間のレンジが異なることもある。また、αとβの絶対値を同一にする必然性もない。このため、実測値に対して上限又は下限のしきい値の一方が大きくなることもある。また、αとβを、標準偏差(σ)を用いてプログラミングする必然性もない。
【0051】
以上の説明において、紙厚検出部の紙葉の検出出力を、直前に紙厚検出部を通過した紙葉のしきい値との比較結果に基づいて、前記紙厚検出部の紙葉の搬送制御を行なうようにしたものであるが、本発明は、紙厚検出部の紙葉の検出
出力の比較対象が「直前に紙厚検出部を通過した紙葉のしきい値」に限定されないことである。すなわち、比較対象を「前記紙厚検出部を既に通過した複数枚の紙葉の組み合わせにより演算したしきい値」にしてもよい。従って、例えば、直前に紙厚検出部を通過した紙葉(前1紙葉という。)とそのさらに前紙厚検出部を通過した紙葉(前2紙葉)の2枚の検出出力に基づいて比較対象のしきい値を演算するようにしてもよい。また、前5紙葉のように、すでに5枚前に紙厚検出部を通過した紙葉を比較対象のしきい値とすることもできる。すなわち、前N枚の紙葉の組み合わせやそのうちの1枚を適宜用いることによって、本発明の利用は大幅に拡大する。
【0052】
図4から図7までは、受信信号の波形図を示す。図4は、紙葉がないときの超音波受信信号の波形W1の図である。図5は、薄紙を検出したときの超音波受信信号の波形W2の図である。また、図6は、厚紙を検出したときの超音波受信信号の波形W3の図である。さらに図7は、重送を検出したときの超音波受信信号の波形W4の図である。これらの図は、すべて、縦軸(Y軸)方向に受信信号電圧を、横軸(X軸)方向に時間をとっている。受信信号電圧は単位がボルトで、時間は秒単位である。これらの波形を比較すると、紙葉がないときの超音波受信信号の波形W1の中央での振幅が最も大きく、薄紙検出波形W2、厚紙検出波形W3、重送検出波形W4の順で中央振幅が小さくなっていく。これは超音波発生部8からの超音波が障害の程度(紙葉の有無、厚み等の特性)によって超音波検出部9の受信信号が影響を受けるからである。重送検出が一般的に最も振幅が小さいのは、紙葉の重なり厚のほかに、重送時に重なり間に空気層が介在するからである。
【0053】
これらの波形特性は、前記の上限と下限のしきい値を決めるための参考データになる。
【0054】
図8は、紙厚と受信信号レベルの強弱の関係を示す図である。この図の曲線Pから、図4ないし図7の受信信号レベルの強弱と紙厚とが密接な相関関係にあることが分かる。
【0055】
次に、図9に示すフローチャートを参照しながら、本実施形態の紙厚検出装置1における紙厚検出の流れをまとめる。
【0056】
まず、紙厚検出装置1に設けられた所定の起動スイッチを操作し、駆動部等を通電状態にする。
給紙部2に積層された紙葉類(以下、単に「紙葉」という。)は、搬送開始モードに移行する(S101)。搬送用スタートボタンを押すと、紙葉6のうち、最上層の紙葉6である1枚目の紙葉6aが1対の搬送ローラ3、4の間隙を通過して搬送路7上を紙送り方向(図1の矢印方向)に搬送される(S102)。
【0057】
1対の搬送ローラ3、4の近傍にあって搬送路7を挟んで配置された送信センサ9及び受信センサ10によって、1枚目の紙葉6aの超音波信号レベルを採取する(S103)。
この採取した超音波レベルはCPU11へ出力され、しきい値演算部12で演算処理され、上下限のしきい値が設定される。この上下のしきい値は正常範囲R2として、メモリ部15に記憶される。
正常範囲R2は、2枚目の紙葉6bの搬送を制御する基準となる。
【0058】
1枚目の紙葉6aが送信センサ9及び受信センサ10間に達するころ、2枚目(N=2にあたる)の紙葉6bが給紙部2から繰り出される(S104)。1対の搬送ローラ3、4の間隙を通過した1枚目の紙葉6aは、すでに紙送り方向(図1の矢印方向)に排出部5に向う。
一方、2枚目の紙葉6bが送信センサ8及び受信センサ9間に達し、紙厚検出部で出力検出中の紙葉として、受信信号が採取される(S105)。採取信号は、CPU11に出力される。紙厚比較部13では、2枚目の紙葉6bの生の出力とメモリ部15からの1枚目の紙葉6aに係るしきい値(正常範囲R2)との比較処理がされる(S106)。
【0059】
比較処理は、まず、2枚目(N=2にあたる)の紙葉6bの紙厚検出結果である超音波レベルが、前記正常範囲R2の上限のしきい値、{(N−1)枚目超音波レベル+α}を越えているか否かが判定される(S106)。越えていない
と判定されたときは、次のステップ(S107)に進む。
一方、越えていると判定されたときは、2枚目の紙葉6bは、薄紙検出として(S106)正常範囲R2外と判定され、紙葉類の搬送関係の駆動系は遮断され、搬送路7等の駆動部は停止する。紙葉6bを搬送路7から排出する(S110)。
【0060】
次に、2枚目の紙葉6bは、正常範囲R2の下限のしきい値、{(N−1)枚
目超音波レベル−β}に達しているか否かが判定される(S107)。達していると判定されたときは、次のステップ(S108)に進む。
一方、達していないと判定されたときは、2枚目の紙葉6bは、厚紙検出と
して(S107)正常範囲R2外と判定され、紙葉類の搬送関係の駆動系は遮断され、搬送路7等の駆動部は停止する。紙葉6bを搬送路7から排出する(S111)。
【0061】
2枚目の紙葉6bの処理が完了する間に、次の紙葉6c(3枚目)の有無を確認し(S108)、有ると判断すると、紙葉6c待ちのステップ(S105) に戻る。無と判断すると、搬送処理は終了する(S109)。
【符号の説明】
【0062】
1:紙厚検出装置、2: 給紙部
、 5: 排出部、6: 紙葉、7、搬送路
8:紙厚検出部、9:超音波発生部、10:超音波受信部
11:中央処理装置(CPU)、12:しきい値演算部、
13:紙厚比較部、14:紙葉搬送制御部、15:メモリ部














【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙葉類の搬送路に配設して紙厚を検出出力する紙厚検出部と、前記紙厚検出部の検出出力に基づいてしきい値を演算するしきい値演算部と、前記検出出力と前記しきい値とを比較する紙厚比較部と、前記紙厚比較部の比較結果に基づいて前記紙葉の搬送の続行又は停止の制御を行なう紙葉搬送制御部とを有し、前記紙厚検出部の紙葉の検出出力を、直前に前記紙厚検出部を通過した紙葉のしきい値との比較結果に基づいて、前記紙葉搬送制御部において、前記紙厚検出部の紙葉の搬送制御を行なうことを特徴とする紙厚検出装置。
【請求項2】
前記しきい値は、上限のしきい値と下限のしきい値とからなり、前記上限のしきい値若しくは前記下限のしきい値又はその両方のしきい値を適宜変更可能とすることを特徴とする請求項1に記載の紙厚検出装置。
【請求項3】
前記検出出力が、前記比較結果で前記しきい値内であるときは、前記紙葉搬送制御部が前記紙葉類の搬送を続行する制御指令を発することを特徴とする請求項1に記載の紙厚検出装置。
【請求項4】
前記検出出力が、前記比較結果で前記上限のしきい値を越えているときは、前記紙葉搬送制御部において前記紙葉は薄紙であると判定し、前記紙葉の搬送を停止するよう制御指令を発することを特徴とする請求項1に記載の紙厚検出装置。
【請求項5】
前記検出出力が、前記比較結果で前記下限のしきい値に達していないときは、前記紙葉搬送制御部において前記紙葉は厚紙であると判定し、前記紙葉の搬送を停止するよう制御指令を発することを特徴とする請求項1に記載の紙厚検出装置。
【請求項6】
前記紙厚検出部は、センサ発生部とセンサ受信部を備えるセンサで構成することを特徴とする請求項1に記載の紙厚検出装置。
【請求項7】
前記紙厚検出部は、超音波発生部と超音波受信部を備える超音波センサで構成することを特徴とする請求項1に記載の紙厚検出装置。
【請求項8】
紙葉類の搬送路に配設して紙厚を検出出力する紙厚検出部と、前記紙厚検出部の検出出力に基づいてしきい値を演算するしきい値演算部と、前記検出出力
と前記しきい値とを比較する紙厚比較部と、前記紙厚比較部の比較結果に基づいて前記紙葉の搬送の続行又は停止の制御を行なう紙葉搬送制御部とを有し、前記紙厚検出部の紙葉の検出出力を、前記紙厚検出部を既に通過した複数枚の紙葉の組み合わせにより演算したしきい値との比較結果に基づいて、前記紙葉搬送制御部において、前記紙厚検出部の紙葉の搬送制御を行なうことを特徴とする紙厚検出装置。
【請求項9】
紙葉類の搬送路に配設して紙厚を検出出力する紙厚検出部と、前記紙厚検出部の検出出力に基づいてしきい値を演算するしきい値演算部と、前記検出出力と前記しきい値とを比較する紙厚比較部と、前記紙厚比較部の比較結果に基づいて前記紙葉の搬送の続行又は停止の制御を行なう紙葉搬送制御部とを有し、
前記紙厚検出部の紙葉の検出出力を、直前に前記紙厚検出部を通過した紙葉のしきい値との比較結果に基づいて、前記紙葉搬送制御部において、前記紙厚検出部の紙葉の搬送制御を行なうことを特徴とする紙厚検出方法。
【請求項10】
前記しきい値は、上限のしきい値と下限のしきい値とからなり、前記上限のしきい値若しくは前記下限のしきい値又はその両方のしきい値を適宜変更可能とすることを特徴とする請求項8に記載の紙厚検出方法。
【請求項11】
前記検出出力が、比較結果で前記しきい値内であるときは、紙葉搬送制御部が前記紙葉の搬送を続行する制御指令を発することを特徴とする請求項8に記載の紙厚検出方法。
【請求項12】
前記検出出力が、比較結果で前記上限のしきい値を越えているときは、紙葉搬送制御部において前記紙葉は薄紙であると判定し、前記紙葉の搬送を停止するよう制御指令を発することを特徴とする請求項8に記載の紙厚検出方法。
【請求項13】
前記検出出力が、比較結果で前記下限のしきい値に達していないときは、紙葉搬送制御部において前記紙葉は厚紙であると判定し、前記紙葉の搬送を停止するよう制御指令を発することを特徴とする請求項8に記載の紙厚検出方法。
【請求項14】
前記紙厚検出部は、センサ発生部とセンサ受信部を備えるセンサで構成することを特徴とする請求項1に記載の紙厚検出方法。
【請求項15】
前記紙厚検出部は、超音波発生部と超音波検出部を備える超音波センサで構成することを特徴とする請求項8に記載の紙厚検出方法。
【請求項16】
紙葉類の搬送路に配設して紙厚を検出出力する紙厚検出部と、前記紙厚検出部の検出出力に基づいてしきい値を演算するしきい値演算部と、前記検出出力と前記しきい値とを比較する紙厚比較部と、前記紙厚比較部の比較結果に基づいて前記紙葉の搬送の続行又は停止の制御を行なう紙葉搬送制御部とを有し、前記紙厚検出部の紙葉の検出出力を、前記紙厚検出部を既に通過した複数枚の紙葉の組み合わせにより演算したしきい値との比較結果に基づいて、前記紙葉搬送制御部において、前記紙厚検出部の紙葉の搬送制御を行なうことを特徴とする紙厚検出方法。




























【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−1530(P2013−1530A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−135822(P2011−135822)
【出願日】平成23年6月18日(2011.6.18)
【出願人】(000233033)日立コンピュータ機器株式会社 (253)
【Fターム(参考)】