説明

紙器用加工紙、ブランクス、カートンおよび紙器用加工紙の製造方法

【課題】耐油加工を施した紙器は表面の耐油性によりサック貼りののりの載りやホットメルト貼りの接着性が十分で、加工適性に優れ、焼き立てのピザやフライドチキン、フライドポテトなどの油分の多い食品や油の付着した工業用品などを販売、収納するための紙器用加工紙、ブランクス、カートンで、単に紙器用加工紙の表面に耐油層を設けただけではチルドや冷凍保管を行った場合に結露が生じず、チルド用途などの場合に耐油層を設けることができる紙器用加工紙、ブランクス、カートンおよび紙器用加工紙の製造方法を提供することが望まれていた。
【解決手段】ステキヒトサイズ度500秒以上の基材表面に耐油層を施されている事であることを特徴とする紙器用加工紙、ブランクス、カートンおよび紙器用加工紙を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バター、チーズなどの乳製品の他、身欠きニシンなどの油分の多い食品や油の付着した工業用品などを販売、収納するための外箱、内箱として利用できる。
【背景技術】
【0002】
従来より、耐油加工を施した紙器として、特許文献1の様な技術が公開されている。
【0003】
この技術では、焼き立てのピザやフライドチキン、フライドポテトなどの油分の多い食品や油の付着した工業用品などを販売、収納するためのダンボール製の包装箱が知られている。
【0004】
しかし、この様な耐油加工を施した紙器は表面の耐油性によりサック貼りののりの載りやホットメルト貼りの接着性が十分ではなく、加工適性に劣るものであった。したがって、この様な焼き立てのピザやフライドチキン、フライドポテトなどの油分の多い食品や油の付着した工業用品などを販売、収納するための包装箱は、接着が不用な一枚の紙(ブランク)に折り加工を施したものを用い、填め合わせなどの手段により立体形状を維持しているものであった。
【0005】
しかし、単に紙器用加工紙の表面に耐油層を設けただけではチルドや冷凍保管を行った場合に結露が生じ、カートンにしわが入るため、チルド用途などの場合に耐油層を設けることができなかった。
【0006】
特許文献は以下の通り。
【特許文献1】特開平9−290867号公報
【特許文献2】特開平7−70983号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の要望を満たすべくなされたものであって、耐油性があるにも係わらず、チルド用途などの場合に使用することが可能な紙器用加工紙、ブランクス、カートンおよび紙器用加工紙の製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
また、この場合、通常の紙器用加工紙に結露が生じない程度に耐油層を設けただけでは耐油度が不足する場合が多く、特に内容物がバター等の高度な耐油性が求められている内容物の場合、製函のときに必要となる折曲げ部分での耐油性劣化の問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明は、ステキヒトサイズ度500秒以上の基材表面に耐油層を施されている事であることを特徴とする紙器用加工紙を提供するものある。
【0010】
これにより、チルドや冷凍用途でありながら、基材に耐油層を設けただけでは不十分な紙器用加工紙を用いることが可能であり、ひいては安価な紙器用加工紙を提供することが可能になったものである。
【0011】
また請求項2に係る発明は、請求項1記載の耐油層が非フッ素系耐油剤からなることを特徴とする紙器用加工紙を提供するものである。
【0012】
これにより、環境・衛生面においても好ましい紙器用加工紙を提供することが可能になったものである。
【0013】
また請求項3に係る発明は、耐油層がパターン状に施されている事を特徴とする請求項1または2記載の紙器用加工紙を提供するものである。
【0014】
これにより、耐油性があるにも係わらず、サック貼りやホットメルト貼りにおいても接着剤やホットメルト樹脂の紙器用加工紙基材への密着性が低下することなく、容易に製函することができ、しかもその接着を維持することが可能な紙器用加工紙を提供することが可能になったものである。
【0015】
また請求項4に係る発明は、パターンが、接着剤塗布領域が除かれるパターンであることを特徴とする請求項3記載の紙器用加工紙を提供するものである。
【0016】
これにより、耐油剤が接着剤やホットメルト樹脂の紙器用加工紙基材への密着性が低い場合にも、サック貼りやホットメルト貼りにおいても接着剤やホットメルト樹脂の紙器用加工紙基材への密着性が低下することなく、容易に製函することができ、しかもその接着を維持することが可能な紙器用加工紙を提供することが可能になったものである。
【0017】
また請求項5に係る発明は、請求項1乃至4何れか記載の紙器用加工紙を用いて所定形状に打ち抜かれたブランクスを提供するものである。
【0018】
これにより、耐油性があるにも係わらず、サック貼りやホットメルト貼りにおいても接着剤やホットメルト樹脂の紙器用加工紙基材への密着性が低下することなく、容易に製函することができ、しかもその接着を維持することが可能なブランクスを提供することが可能になったものである。
【0019】
また請求項6に係る発明は、請求項5記載のブランクスが組み立てられたカートンを提供するものである。
【0020】
これにより、耐油性があるにも係わらず、しっかり製函されているカートンを提供することが可能になったものである。
【0021】
また請求項7に係る発明は、ステキヒトサイズ度500秒以上の基材表面に耐油剤を塗布することを特徴とする紙器用加工紙の製造方法を提供するものである。
【0022】
これにより、耐油剤の資源的無駄を無くす他に、塗布の均一性、安定性に寄与し、これにより従来からある耐油性基材や、基材に耐油層を設けただけでは不十分な紙器用加工紙を用いることが可能であり、ひいては安価な紙器用加工紙を提供することが可能になったものである。
【0023】
また請求項8に係る発明は、請求項7記載の耐油剤が非フッ素系耐油剤からなることを特徴とする紙器用加工紙の製造方法を提供するものである。
【0024】
これにより、環境・衛生面においても好ましい紙器用加工紙の製造方法を提供することが可能になったものである。
【発明の効果】
【0025】
本発明により、チルドや冷凍用途でありながら、基材に耐油層を設けただけでは不十分な紙器用加工紙を用いることが可能であり、ひいては安価な紙器用加工紙、ブランクス、カートンおよび紙器用加工紙の製造方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の一実施例としての紙器用加工紙およびその製造方法の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、提案する耐油性があるにも係わらず、サック貼りやホットメルト貼りにおいても接着剤やホットメルト樹脂の紙器用加工紙基材への密着性が低下することなく、容易に製函することができ、しかもその接着を維持することが可能な紙器用加工紙を示す。
【0027】
まず、耐油性紙器用加工紙基材1の一方の面上に耐油層3を設ける。また、他方の面には印刷層4を設けることにより、紙器用加工紙が製造される。
【0028】
この場合の紙器用加工紙基材は、耐水性もある紙器用加工紙基材を用いるのが好ましい。一般的に耐油性が求められるときは同時に耐水性も求められる場合が多いからである。また、耐水性紙器用加工紙基材は一般的に平滑性も良いからである。しかし、耐水性が全く不用な場合などの様な場合はこれらに限られないことも当然であり、他の機能、例えば安全性、衛生性、剛度、白度が求められる様な場合であれば、それ相応の特殊用紙を用いることも可能である。
【0029】
この場合のステキヒトサイズ度は、JIS P 8122に規定してあるステキヒトサイズ度である。ステキヒトサイズ度が500秒以上であれば、チルド保管の場合でも結露が起きる条件でもしわが生じなくなり、そのまま用いることができる。
【0030】
また、耐油層は、ポリエチレンテレフタレート、アクリル系樹脂などが好ましいが、その他の耐油性のある材料でも構わないことは当然である。この塗布量としては、上記紙器用加工紙基材の場合は1〜3g/m2が適当である。1g/m2以下であれば十分な耐油性が発揮できなくなり、3g/m2以上であれば耐磨性が劣るからである。なお、他の条件、例えば上記材料以外を用いた場合であれば、適当な塗布量が変動することもあるし、上記欠点が支障のない場合であれば上記範囲外でも構わないことは当然である。
【0031】
耐油剤が設けられない領域は、耐油性があると支障が生じる領域、例えば接着剤塗布領域の様な、別の部材との接着や塗布、別機能の付与などの各種耐油性と相反する機能が求められる領域であり、接着剤塗布領域などが代表的なものである。従って、耐油性が求められず、接着剤塗布などにも用いられない領域は、耐油性を付与しても付与しなくても構わないが、費用的には耐油性を付与しないままの方が好ましい。
【0032】
さらに、印刷層は、通常の印刷で十分であるが、製函に用いる部分がある場合は、接着性能が低下しないインキが求められる。
【0033】
この様な紙器用加工紙は、サック貼りなどの製函工程に回される。つまり、ブランク形状への抜き工程を行った後、接着剤塗布領域に接着剤を設け、更に製函することができる。完成した耐油性紙箱は、接着が完全な紙箱となっており、内容物にバターやチーズなどの油性の内容物を入れた場合も耐油性が発揮できた。
【実施例】
【0034】
以下、本発明の一実施例としての紙器用加工紙およびその製造方法の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、提案する耐油性があるにも係わらず、サック貼りやホ
ットメルト貼りにおいても接着剤やホットメルト樹脂の紙器用加工紙基材への密着性が低下することなく、容易に製函することができ、しかもその接着を維持することが可能な紙器用加工紙を示す。
【0035】
まず、耐油性もある紙器用加工紙基材1である白板紙260g/m2(ステキヒトサイズ度700秒)の一方の面にUVインキによる印刷、UVランプによる紫外線照射と熱風送付による乾燥により印刷層4を設け、他方の面上に耐油剤による印刷、熱風送付による乾燥により耐油層3を設けることにより、紙器用加工紙(表の白色度82±3%、表の平滑度8.0±4.0kPa(sec)、剛度9.3mNm(縦方向)、剛度3.8mNm(横方向)、折曲強度3.98N(非罫線部、縦方向)、折曲強度2.49N(非罫線部、横方向)、折曲強度1.74N(罫線部、縦方向)、折曲強度1.56N(罫線部、横方向)、表の滑り角度16度)が製造される。
【0036】
この様な紙器用加工紙は、製函工程に回される。つまり、ブランク形状への抜き工程を行った後、接着剤塗布領域に接着剤を設け、更に製函することができる。完成した耐油性のカートンは、接着が完全なカートンとなった。
【0037】
さらに、耐水性も、表面に水滴を1cc滴下して外観検査しても変化はなく、さらに試験紙全体を浸漬した場合も、その断面を観察しても外観検査しても変化はなかった。
【0038】
この様なカートンにバターやチーズなどの油性の内容物を入れ、5度で72時間チルド保存した場合も耐油性が発揮でき、結露によるしわなどは認められなかった。
【0039】
なお、この紙器用加工紙の上からトルエンとn−ヘプタンの混合液(混合比1:1)を滴下し、染み込み具合を目視観察したところ、耐油加工を施した部分では染み込みが認められなかった。他方、耐油加工を施していない部分では若干の染み込みが認められた。
【0040】
同様に、この紙器用加工紙の上から市販のバターを10gカットし、35℃で30分間載せた状態で染み込み具合を目視観察したところ、耐油加工を施した部分では染み込みが認められなかった。他方、耐油加工を施していない部分では若干の染み込みが認められた。
【0041】
また、フッ素成分は全く認められず、臭気も官能検査の結果、全く認められなかった。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、バター、チーズなどの乳製品の他、身欠きニシンなどの油分の多い食品や油の付着した工業用品などを販売、収納するための紙器用加工紙、ブランクス、カートンおよび紙器用加工紙の製造方法に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明における紙器用加工紙の部分拡大断面図である。
【図2】本発明における紙器用加工紙を用いたブランクの平面図である。
【図3】本発明における紙器用加工紙を用いたカートンの斜視図である。
【符号の説明】
【0044】
1・・・耐油性紙器用加工紙基材
3・・・耐油層
4・・・印刷層
5・・・耐油加工領域
6・・・接着剤塗布領域
7・・・折曲げ部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステキヒトサイズ度500秒以上の基材表面に耐油層を施されている事であることを特徴とする紙器用加工紙。
【請求項2】
請求項1記載の耐油層が非フッ素系耐油剤からなることを特徴とする紙器用加工紙。
【請求項3】
耐油層がパターン状に施されている事を特徴とする請求項1または2記載の紙器用加工紙。
【請求項4】
パターンが、接着剤塗布領域が除かれるパターンであることを特徴とする請求項3記載の紙器用加工紙。
【請求項5】
請求項1乃至4何れか記載の紙器用加工紙を用いて所定形状に打ち抜かれたブランクス。
【請求項6】
請求項5記載のブランクスが組み立てられたカートン。
【請求項7】
ステキヒトサイズ度500秒以上の基材表面に耐油剤を塗布することを特徴とする紙器用加工紙の製造方法。
【請求項8】
請求項7記載の耐油剤が非フッ素系耐油剤からなることを特徴とする紙器用加工紙の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2006−182376(P2006−182376A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−375878(P2004−375878)
【出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】