説明

紙塗工用樹脂組成物及び塗工組成物

【課題】 さらに優れたインキ受理性と耐水性を紙に付与する塗工組成物に含有される紙塗工用樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 アミン化合物(I)及び(II)を含有する紙塗工用樹脂組成物。
(I):脂肪族アミン(a)と、分子内にグリシジルエーテル基を少なくとも2個有するグリシジル化合物(b)との反応生成物であって、(a)のアミノ基に含まれる活性水素原子の合計数100に対して、(b)のグリシジルエーテル基の数100未満の割合で反応させて得られるアミン化合物。
(II):(c)、(d)及び(e)の反応生成物であって、(c)のアミノ基に含まれる活性水素原子の合計数100に対して、(d)と(e)の官能基数合計が100未満の割合で反応させて得られるアミン化合物。
(c):アルキレンジアミン及び/又はポリアルキレンポリアミン
(d):尿素類
(e):エピハロヒドリン類、多価カルボン酸系化合物等

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙塗工用樹脂組成物に関するものである。さらに詳しくは、脂肪族アミンとグリシジル化合物からなるアミン化合物(I)、および、エピハロヒドリン及び/又は多価カルボン酸と脂肪族アミンと尿素との反応生成物であるアミン化合物(II)を含有する紙塗工用樹脂組成物、ならびに、紙に対して優れたインキ受理性及び耐水性を付与することができる、該紙塗工用樹脂組成物を含有した塗工組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
顔料、水性バインダーおよび紙塗工用樹脂組成物を含有する塗工組成物を紙に塗布し、乾燥、カレンダー処理などを施して得られる塗工紙は、雑誌、書籍などの印刷物に用いられている。
そして、優れたインキ受理性と耐水性を付与する塗工組成物に含有される紙塗工用樹脂組成物として、種々の紙塗工用樹脂組成物が提案されており、例えば、脂肪族アミン、グリシジル化合物及びα,β−不飽和化合物からなる反応生成物と尿素等との混合物である紙塗工用樹脂組成物(特許文献1)、脂肪族アミンとグリシジル化合物とからなる反応生成物、および、脂肪族アミンとエピハロヒドリンとからなる反応生成物と尿素等との混合物である紙塗工用樹脂組成物(特許文献2)が既に提案されている。
【0003】
【特許文献1】特開2001−181996号公報 [請求項1]
【特許文献2】特開2002−235296号公報 [請求項1]
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、最近、塗工紙の品質要求の高度化、印刷の高速化などに伴って、さらに優れたインキ受理性と耐水性を有する塗工紙が求められている。
本発明の目的は、さらに優れたインキ受理性と耐水性を紙に付与する塗工組成物に含有される紙塗工用樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、下記アミン化合物(I)及びアミン化合物(II)を含有する紙塗工用樹脂組成物である。
アミン化合物(I):脂肪族アミン(a)と、分子内にグリシジルエーテル基を少なくとも2個有するグリシジル化合物(b)との反応生成物であって、(a)の1級アミノ基及び2級アミノ基に含まれる活性水素原子の合計数100に対して、(b)のグリシジルエーテル基の数100未満が割合で反応させて得られるアミン化合物。
アミン化合物(II):下記(c)、(d)及び(e)の反応生成物であって、(c)の1級アミノ基及び2級アミノ基に含まれる活性水素原子の合計数100に対して、(d)と(e)の官能基数合計が100未満の割合で反応させて得られるアミン化合物。ここで官能基数とは、(c)のアミノ基に含まれる活性水素原子と反応し得る官能基の数を表す。
(c):アルキレンジアミン及び/又はポリアルキレンポリアミン
(d):尿素類
(e):エピハロヒドリン類、α,γ−ジハロ−β−ヒドリン類、及び多価カ
ルボン酸系化合物からなる群から選ばれる1種以上の化合物
【発明の効果】
【0006】
本発明の紙塗工用樹脂組成物を含有する塗工組成物は、従来の塗工組成物よりも、さらに優れたインキ受理性および耐水性を紙に付与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のアミン化合物(I)に使用される(a)成分とは、分子中に1級アミノ基(−NH)及び/又は2級アミノ基(=NH)を含有する脂肪族アミンである。
ここで、1級アミノ基及び2級アミノ基に含まれる水素原子は、後述するように(b)、(c)、(d)、(e)、(f)及び(g)の各成分と反応することから、本発明においては活性水素原子という。また、1級アミノ基1つは活性水素原子2つを有し、2級アミノ基1つは、活性水素原子1つを有することになる。
【0008】
具体的な脂肪族アミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミンなどのような炭素数1〜10程度のアルキル基と1級アミノ基とからなるモノアルキルアミン;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、メチルエチルアミンなどのような炭素数1〜10程度のアルキル基を2級アミノ基で結合してなるジアルキルアミン;エチレンジアミン、プロピレンジアミンなどのアルキレンジアミン;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどのポリアルキレンポリアミン;イソホロンジアミン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素基を含有する脂肪族アミン;芳香族アミンですので脂肪族アミンには含まれません;複素環アミンなどが例示される。
【0009】
ここで複素環アミンとは、通常、窒素原子、酸素原子、硫黄原子などのヘテロ原子を少なくとも1個含有する脂環式炭化水素基である複素環を含むアミンである。具体的には、ピロリジン、ピペリジン、2−ピペコリン、3−ピペコリン、4−ピペコリン、2,4−ピペコリン、2,6−ピペコリン、3,5−ルペチジン、ピペラジン、ホモピペラジン、N−メチルピペラジン、N−エチルピペラジン、N−プロピルピペラジン、N−メチルホモピペラジン、N−アセチルピペラジン、N−アセチルホモピペラジン、1−(クロロフェニル)ピペラジンなどの複素環内に窒素原子を少なくとも1個含有する複素環アミン;N−アミノエチルピペリジン、N−アミノプロピルピペリジン、N−アミノエチルピペラジン、N−アミノプロピルピペラジン、N−アミノエチルモルホリン、N−アミノプロピルモルホリン、N−アミノプロピル−2−ピペコリン、N−アミノプロピル−4−ピペコリン、1,4−ビス(アミノプロピル)ピペラジンなどのアミノアルキル基と窒素原子を少なくとも1個含有する複素環とを含有する複素環アミンなどが挙げられる。
【0010】
(a)成分として2種類以上の脂肪族アミンを混合して使用してもよい。
(a)成分としては、中でも、モノアルキルアミン、ジアルキルアミン、アルキレンジアミン、ポリアルキレンポリアミン、複素環アミンが好ましく、とりわけ、複素環内に窒素原子を少なくとも1個含有する複素環アミンが好ましく、さらに好ましくは、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、N−アミノエチルピペラジン、N−アミノプロピルピペラジン、1,4−ビス(アミノエチル)ピペラジン、1,4−ビス(アミノプロピル)ピペラジンである。
【0011】
アミン化合物(I)に使用される(b)成分とは、分子内にグリシジルエーテル基を少なくとも2個有するグリシジル化合物であり、例えば、多価アルコール類および/または多価フェノール類のアリルエーテル化物のアリル基をエポキシ酸化したもの、多価アルコール類および/または多価フェノール類とエピクロロヒドリンなどのエピハロヒドリンとの縮合生成物などが挙げられる。
【0012】
具体例として多価フェノールであるビスフェノールAのエピハロヒドリンとの縮合生成物について詳細に説明すると、下記式(1)

(式中、nは0〜20程度の整数を表す。)
で表すことができるジグリシジルエーテル体およびそのオリゴマーなどが挙げられる。
【0013】
(b)成分における繰り返し単位は、通常、0(例えば、式(1)ではn=0)である最小単位のグリシジルエーテル体、または、最小単位のグリシジルエーテル体を主成分とするオリゴマー(例えば、式(1)ではn=0〜20程度で表されるグリシジルエーテル体の混合物)である。
【0014】
(b)成分の具体例として、最小単位のグリシジルエーテル体を代表名として例示すると、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテルなどのアルキレングリコールジグリシジルエーテル類;ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルなどのポリオキシアルキレングリコールジグリシジルエーテル類;レゾルシンジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテルなどの芳香族多価グリシジルエーテル類;トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルなどのトリメチロールプロパン多価グリシジルエーテル類;ソルビトールジグリシジルエーテル、ソルビトールトリグリシジルエーテル、ソルビトールテトラグリシジルエーテル、ソルビトールペンタグリシジルエーテル、ソルビトールヘキサグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールジグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテルなどの脂肪族多価グリシジルエーテル類等が挙げられる。
また、(b)として、上記に例示されたグリシジルエーテル体のオリゴマーを用いてもよいし、2種類以上の(b)を混合して使用してもよい。
グリシジル化合物の中でも、芳香族多価グリシジルエーテル類およびそのオリゴマーが好適である。
【0015】
本発明のアミン化合物(I)は、(b)成分のグリシジルエーテル基が全て(a)成分のアミノ基と反応している化合物であり、(I)中の(b)成分に由来するグリシジルエーテル基は全て反応しても、(I)中には活性水素原子を有するアミノ基が存在する。具体的には、(a)成分の1級アミノ基及び2級アミノ基に含まれる活性水素原子(以下、アミノ基の活性水素原子という場合がある)の合計数100に対して、(b)成分のグリシジルエーテル基の数が100未満、好ましくは5〜50の割合で(b)成分を反応させて得られるアミン化合物である。
(b)成分のグリシジルエーテル基が100未満であると、(b)は後述するアミン化合物(II)と反応することがなく、結果として、得られる塗工紙のインキ受理性及び耐水性が向上する傾向がある。
【0016】
ここで、(a)成分のアミノ基と(b)成分のグリシジルエーテル基との反応を例示すると、エポキシ化合物とアミン系架橋剤との反応と同様の反応が挙げられ、式(2)で表すことができる。

(式中、Rは水素原子、炭素数1〜4程度のアルキル基等を表す。Rが、炭素数1〜4程度のアルキレン基を介して他のアミノ基と結合していてもよい。)
【0017】
アミノ化合物(I)には、さらに、α,β−不飽和カルボニル化合物、α,β−不飽和ニトリル化合物、及びα−ハロカルボン酸類からなる群(以下、(f)成分という場合がある)から選ばれる少なくとも1種類の化合物を反応させてもよい。
ここで、α,β−不飽和カルボニル化合物について例示すると、アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、メタクリル酸、ソルビン酸、ケイ皮酸などの分子内に1つのカルボキシル基を有するα,β−不飽和カルボン酸;メチル基、エチル基、ブチル基などと該α,β−不飽和カルボン酸とのエステル;アクロレインキロトンアルデヒド、シンナムアルデヒドなどのα,β−不飽和アルデヒド;メチルビニルケトン、メシチルオキシド、ベンザルアセトン、ジベンザルアセトン、ベンザルアセトフェノン、ジプノン等のα,β−不飽和ケトンなどが挙げられる。
【0018】
α,β−不飽和ニトリル化合物としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられる。
α−ハロカルボン酸類とは、α−ハロカルボン酸、そのエステル及びその塩である。ここで、α−ハロカルボン酸とは、分子内に1つのカルボキシル基と、そのα位にハロゲン原子を有する、α−ハロカルボン酸であり、具体的には、クロロ酢酸、ブロモ酢酸、ジクロロ酢酸、ジブロモ酢酸、トリクロロ酢酸、α−クロロプロピオン酸、α−クロロ酪酸、α−ブロモイソ吉草酸などが例示される。α−ハロカルボン酸エステルとは、メチル基、エチル基、ブチル基などと該α−ハロカルボン酸とのエステルであり、α−ハロカルボン酸の塩とは、カリウム、ナトリウム、カルシウムなどのアルカリ(土類)金属の該α−ハロカルボン酸の塩などが挙げられる。
【0019】
(f)成分は、通常、1級アミノ基および/または2級アミノ基と反応する。1級アミノ基と(f)成分の1種であるアクリル酸との反応を例示すると、式(3)で表すことができる。

尚、(f)成分がα,β−不飽和カルボン酸、α,β−不飽和カルボン酸エステルであると、未反応のカルボキシル基およびエステル基は、後述する(e)成分の多価カルボン酸系化合物と同様に、(b)成分のグリシジルエーテル基と同様な反応する場合がある。
【0020】
アミン化合物(I)に用いられる(f)成分の分子数としては、通常、(a)成分に含有されるアミノ基の活性水素原子の合計数から(b)成分のグリシジルエーテル基の数を差し引いた数よりも少ない数である。具体的には、(a)成分に含有されるアミノ基の活性水素原子の合計数100に対し、(f)成分の分子数2〜80程度の割合で用いられ、好ましくは、5〜50、とりわけ好ましくは5〜30の割合で用いられる。
(f)成分としては、中でも、α,β−不飽和カルボン酸、α,β−不飽和カルボン酸エステル、及びα−クロロカルボン酸類が好ましく、とりわけ、アクリル酸が好適である。
【0021】
アミン化合物(I)の製造方法としては、例えば、溶媒中、30〜100℃程度の反応温度、好ましくは、溶媒が水と有機溶媒との混合物である場合には40〜90℃程度、溶媒が水を含まない有機溶媒の場合には40〜70℃程度にて、1〜20時間程度、(a)成分と(b)成分を反応させ、続いて、水で希釈する方法などが挙げられる。その際,有機溶媒を含んでいる場合には、水で希釈する前、あるいは沸点が水より低い溶媒の場合には水で希釈後、減圧下にて留去してもよい。
また、(a)成分のアミノ基と(b)成分のグリシジルエーテル基との反応は、通常、無触媒で実施されるが、アンモニアや苛性ソーダなどの塩基性触媒、塩化アルミニウムなどのルイス酸触媒を使用してもよい。
【0022】
ここで、アミノ化合物(I)の製造において使用される溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、1−又は2−プロパノール、1−又は2−ブタノール、1−ペンタノール、3−メチル−1−ブタノール、1−ヘキサノール、4−メチル−2−ペンタノール、2,4−ジメチル−3−ペンタノール、2,6−ジメチル−4−ヘプタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、1−又は2−オクタノール、ラウリルアルコール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコールなどのアルコール類;フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、β,β′−ジクロロジエチルエーテル、1,4−ジオキサン、ジエチルセルソルブ、ジブチルカルビトールなどのエーテル類;ブチルアルデヒドなどのアルデヒド類;シクロヘキサン、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、o−、m−又はp−キシレンなどの炭化水素類;1,1,1−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、1−又は2−ブロモプロパン、1−ブロモブタン、臭化ラウリル、1−ブロモ−3−クロロプロパン、1,3−ジブロモプロパン、1,4−ジブロモブタン、1,5−ジブロモペンタン、2,3−ジブロモ−1−プロパノールなどの有機ハロゲン化合物;アセトン、2,4−ペンタンジオン、メチルエチルケトン、2−又は3−ペンタノン、3−メチル−2−ブタノン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン、2,6−ジメチル−4−ヘプタノン、2,4−ジメチル−3−ペンタノン、シクロヘキサノン、メシチルオキシド、イソホロン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノンなどのケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸 sec−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、酢酸ベンジル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸アミル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、マロン酸ジエチル、シュウ酸ジエチル、リン酸ブチル、アセト酢酸エチルなどのエステル類等が挙げられる。
【0023】
アミノ化合物(I)の製造において使用される溶媒として、2種類以上の溶媒の混合物を使用してもよい。
また、アミノ化合物(I)の製造において使用される溶液が、水と有機溶媒との混合物を溶媒として使用する場合には、水の含有量は、該溶液において、通常、約20重量%以下であり、とりわけ、10重量%以下が好適である。
アミノ化合物(I)を得る反応方法の中でも、(a)成分をアルコール類に溶解した溶液に、(b)成分をケトン類に溶解あるいは分散した溶液を添加する方法が好ましい。
【0024】
アミノ化合物(I)が、さらに、(f)成分を反応させる場合のアミノ化合物(I)の製造方法としては、上記の如く、アミノ化合物(I)を製造したのち、未反応の1級アミノ基及び/又は2級アミノ基と(f)成分とを反応させてもよいし、(a)成分と(f)成分とを反応させたのち、(b)成分を反応させてもよい。1級アミノ基及び/又は2級アミノ基と(f)成分との反応条件としては、例えば、30〜100℃程度の反応温度で1〜20時間程度攪拌する。溶媒が水と有機溶媒との混合物である場合には40〜90℃程度、溶媒が水を含まない有機溶媒の場合には40〜70℃程度にて、攪拌することが好ましい。この反応は無触媒でも進行するし、アンモニアや苛性ソーダのような塩基性触媒、または塩化アルミニウムのようなルイス酸触媒の存在下で反応させてもよい。
【0025】
本発明におけるアミン化合物(II)とは、アルキレンジアミン及び/又はポリアルキレンポリアミン(以下、(c)成分という場合がある)、尿素類(以下、(d)成分という場合がある)、並びに、エピハロヒドリン類、α,γ−ジハロ−β−ヒドリン類、及び多価カルボン酸系化合物からなる群から選ばれる1種以上の化合物(以下、(e)成分という場合がある)を反応させて得られるアミン化合物である。
ここで、(c)成分は、前記脂肪族アミン(I)として例示されたアルキレンジアミン及びポリアルキレンポリアミンと同じ化合物である。(c)成分として異なる(c)成分を併用してもよく、中でも、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンは入手が容易であることから好ましい。
【0026】
(d)成分とは、式(4)で表される尿素類である。

(式中、Qは、酸素原子または硫黄原子等を表し、X1、X2、X3及びXは互いに独立に、水素原子、炭素数1〜6程度の直鎖アルキル基、炭素数3〜6程度の分枝アルキル基、または、X1あるいはX2と、X3あるいはXとが結合した炭素数1〜6程度のアルキレン基等を表す。但し、アルキル基およびアルキレン基の水素原子は水酸基で置換されていてもよい。)
【0027】
(d)成分の具体例としては、尿素、メチル尿素、ジメチル尿素、チオ尿素、4,5−ジヒドロキシ−2−イミダゾリジノン、1−(2−アミノエチル)−2−イミダゾリジノン、ジエチレントリアミンと尿素との脱アンモニア反応によって得られる1−(2−アミノエチル)−2−イミダゾリジノンを主成分とする混合物などが挙げられる。
(d)成分として異なる(d)成分を併用してもよい。
(d)成分は、中でも、尿素が入手容易であることから好ましい。
【0028】
(c)及び(d)成分の反応は、(c)成分の1級アミノ基及び/又は2級アミノ基と(d)成分の1級アミノ基及び/又は2級アミノ基が脱アンモニア反応する反応であり、(c)成分を1級アミノ基、(d)成分を尿素とする場合、式(5)で表すことができる。

【0029】
(e)成分のエピハロヒドリンとしては、例えば、エピクロルヒドリンやエピブロムヒドリンなどが挙げられるが、中でもエピクロルヒドリンは入手が容易であることから好ましい。
エピハロヒドリンは、(c)成分に含まれる1級アミノ基及び/又は2級アミノ基、並びに後述する(e)成分の多価カルボン酸系化合物と反応し得る。
これらの反応をエピクロロヒドリン、1級アミノ基、カルボキシル基で表すと、次の反応式表すことができる。

【0030】
上記反応式に例示したように、エピハロヒドリン1モルは、カルボキシル基、1級アミノ基、2級アミノ基の活性水素原子などの2モル分と反応することになる。そこで、実施例においては、エピハロヒドリン1モルは官能基数が2モルであるという。
【0031】
(e)成分のα,γ−ジハロ−β−ヒドリン類とは、式(8)で表される化合物であり、具体的には、1,3−ジクロロ−2−プロパノールなどが挙げられる。

(式中、Y及びYは塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子を表す。Y及びYは同一のハロゲン原子でも異なるハロゲン原子であってもよい。)
α,γ−ジハロ−β−ヒドリン類は、通常、脱ハロゲン化水素反応によってエピハロヒドリンとなったのち、前記式(6−1)〜(6−4)や(7−1)〜(7−4)等の反応を行う。
【0032】
(e)成分の多価カルボン酸系化合物とは、前記の(f)成分とは異なる化合物であって、分子中に複数のカルボキシル基を有する多価カルボン酸、該カルボキシル基に炭素数1〜4のアルコールでエステル化された化合物(半エステルを含む)、あるいは該カルボン酸の無水物である。多価カルボン酸系化合物は、分子中に二重結合、脂環式構造、芳香環構造を有していてもよい。
【0033】
多価カルボン酸系化合物の遊離多価カルボン酸としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマール酸、1,2,3−プロパントリカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸のような脂肪族多価カルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、フェナントレンジカルボン酸、トリメリット酸、ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸のような芳香族多価カルボン酸、及び、テトラハイドロフタル酸、ヘキサハイドロフタル酸、シクロヘキサン−1,3−又は−1,4−ジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、3−又は4−メチルテトラハイドロフタル酸、3−又は4−メチルヘキサハイドロフタル酸のような脂環式多価カルボン酸が挙げられる。なお、脂環式基が不飽和結合を有し、その不飽和結合の位置が明示されていない場合、その不飽和結合の位置は任意であると理解されるべきであり、以下の説明においても同様である。
【0034】
多価カルボン酸系化合物は、これら遊離酸のほか、そのエステル類、酸無水物などであってもよい。エステル類の例としては、上記遊離酸と低級アルコールとのモノ−又はジ−エステル類、上記遊離酸とグリコール類とのポリエステル類などが挙げられる。また酸無水物の具体例としては、無水コハク酸、無水フタル酸、テトラハイドロ無水フタル酸、ヘキサハイドロ無水フタル酸、3−又は4−メチルテトラハイドロ無水フタル酸、3−又は4−メチルヘキサハイドロ無水フタル酸などが挙げられる。
【0035】
多価カルボン酸系化合物は、前記式(6−4)や(7−1)〜(7−4)のようにエピハロヒドリンやα,γ−ジハロ−β−ヒドリン類と反応し得る。また、1級アミノ基や2級アミノ基と反応して、アミド結合を生成する場合がある。
【0036】
多価カルボン酸系化合物として、2種類以上の多価カルボン酸系化合物を併用してもよい。多価カルボン酸系化合物としては、中でもアジピン酸が入手容易であることから好ましい。
【0037】
アミン化合物(II)は、さらにラクタム類(g)を反応させた化合物であってもよい。
ラクタム類(g)としては、例えば、γ−ラクタム、δ−ラクタム、ε−カプロラクタム、ラウリルラクタム、グリコシアミジン、オキシドール、イサチン等が挙げられるが、工業的にはε−カプロラクタムが有利である。
アミン化合物(II)の製造において、ラクタム類(g)は、通常、(c)成分に含有されるアミノ基の活性水素原子の合計数100に対し、分子数1〜50程度、好ましくは2〜30程度の割合で用いられる。
ラクタム類(g)は、(c)成分の1級アミノ基と開環付加反応する。後述するアミン化合物(II)の製造方法において、1級アミノ基が存在する状態で、反応温度140〜250℃程度で約1〜15時間反応させればよい。
【0038】
アミン化合物(II)の製造において、(d)及び(e)の各成分は、(c)成分に含有されるアミノ基の活性水素原子の合計数100に対して、(d)と(e)の官能基数合計が100未満、好ましくは20〜90程度の割合で用いられる。このことにより、得られるアミン化合物(II)はアミノ基を有し、インキ受理性及び耐水性が向上する傾向にあることから好ましい。
ここで(d)と(e)の官能基数とは、(c)の1級アミノ基及び/又は2級アミノ基に含まれる活性水素原子と反応し得る、(d)と(e)の官能基の数を表す。
【0039】
アミン化合物(II)の製造方法としては、例えば、(c)成分のアミノ基と尿素類(d)の混合物を反応温度80〜180℃程度、好ましくは90〜160℃程度で、発生するアンモニアを除外しながら約4〜30時間、好ましくは5〜20時間攪拌したのち水で希釈し、(e)成分のエピクロロヒドリンやα,γ−ジハロ−β−ヒドリン類を反応温度30〜120℃程度で約1〜20時間、好ましくは50〜100℃で2〜10時間、反応させる方法等が挙げられる。
(e)成分に多価カルボン酸系化合物を用いる場合、(c)成分のアミノ基と多価カルボン酸系化合物のカルボキシル基とは、アミド化反応であることから、(c)成分と(d)成分との反応生成物を50〜200℃程度で、発生する水等を留去しながら、約2〜10時間反応させる方法等が例示される。
また、(c)、(e)及び(d)成分を混合して、80〜180℃程度、好ましくは90〜160℃程度で、発生するアンモニア及び水等を除外しながら約4〜30時間、好ましくは5〜20時間反応させる方法等も例示される。
【0040】
アミン化合物(II)の製造方法で用いられる溶媒としては、通常、前記アミン化合物(I)の製造方法で例示された溶媒が用いられ、中でも、水を用いる方法が簡便で好ましい。
【0041】
本発明のアミン化合物(I)及び(II)は、通常、いずれもアミノ基に活性水素原子を有するアミン化合物である。本発明の紙塗工用樹脂組成物は、アミン化合物(I)及び(II)が脱アンモニア反応させて重合してもよいが、好ましくは、アミン化合物(I)及び(II)を混合したものである。このことにより、本発明の紙塗工用樹脂組成物を有効成分とする塗工組成物は、インキ受理性及び耐水性が向上する傾向がある。
本発明の紙用塗工樹脂組成物におけるアミン化合物(I)及び(II)の重量比率(固形分)としては、(I)/(II)=1/99〜90/10の範囲、好ましくは(I)/(II)=5/95〜50/50の範囲である。
【0042】
本発明の紙塗工用樹脂組成物は、通常、溶媒に分散又は溶解されている。ここで溶媒とはアミン化合物(I)の製造に用いられる溶媒として例示された溶媒などが挙げられる。ここで、分散又は溶解とは、5℃にて48時間静置しても沈殿物が生じない、保存安定性に優れた状態をいう。
【0043】
紙塗工用樹脂組成物の粘度は、アミン化合物(I)及び(II)を構成するモノマーのモル比や種類、使用量などによって異なるが、通常、紙塗工用樹脂組成物の固形分を60重量%に調整した水溶液の25℃における粘度が、50〜800mPa・s程度である。特にこの粘度が、80〜600mPa・s、さらには100〜500mPa・sである紙塗工用樹脂組成物は取り扱いが容易な傾向があることから好ましい。
【0044】
紙塗工用樹脂組成物の製造方法としては、通常、アミン化合物(I)及び(II)を0〜40℃程度にて、固形分が10〜75%程度、好ましくは40〜65%程度となるように混合する。
また、紙塗工用樹脂組成物のpHは通常、7〜11であり、必要に応じてリン酸、硫酸、塩酸、硝酸などの無機酸や、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、アジピン酸などの有機酸を用いて、pHを中性程度に調整することも可能である。
【0045】
本発明の塗工組成物とは、このようにして得られる紙塗工用樹脂組成物、顔料および水性バインダーからなるものである。
塗工組成物を調製するにあたり、顔料と水性バインダーの組成割合は、用途や目的に応じて決定され、当業界で一般に採用されている組成と特に異なるところはない。両者の好ましい組成割合は、顔料100重量部に対して、水性バインダーが1〜200重量部程度、より好ましくは5〜50重量部程度である。紙塗工用樹脂組成物の固形分は、顔料100重量部に対し、0.05〜5重量部程度配合するのが好ましく、さらには、0.1重量部以上、また2重量部以下程度にするのが有利である。
【0046】
塗工組成物の成分となる顔料は、紙の塗工に従来から一般に用いられているものでよく、白色無機顔料及び白色有機顔料が使用できる。白色無機顔料としては、例えば、カオリン、タルク、炭酸カルシウム(重質又は軽質)、水酸化アルミニウム、サチンホワイト、酸化チタンなどが挙げられる。また白色有機顔料としては、例えば、ポリスチレン、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂などが挙げられる。これらの顔料は、それぞれ単独で、又は2種以上混合して用いることができる。
【0047】
水性バインダーも、紙の塗工に従来から一般に用いられているものでよく、水溶性のバインダーや水乳化系のバインダーが使用できる。水溶性バインダーとしては、例えば、酸化でんぷんやリン酸エステル化でんぷんをはじめとする無変性の、又は変性されたでんぷん類、ポリビニルアルコール、カゼインやゼラチンをはじめとする水溶性プロテイン、カルボキシメチルセルロースをはじめとする変性セルロース類などが挙げられる。また水乳化系バインダーとしては、例えば、カルボキシル基含有スチレン−ブタジエン系樹脂、スチレン−酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、メチルメタクリレート樹脂などが挙げられる。これらの水性バインダーは、それぞれ単独で、又は2種以上混合して用いることができる。
【0048】
本発明の塗工組成物は、紙塗工用樹脂組成物に加えて、他の耐水化剤や印刷適性向上剤などの樹脂成分を必要に応じて含有させることもできる。さらには、その他の成分として、例えば、分散剤、粘度・流動性調整剤、消泡剤、防腐剤、潤滑剤、保水剤、また染料や有色顔料のような着色剤などを、必要に応じて配合させることができる。
【0049】
本発明の塗工組成物は、従来より公知の方法、例えばブレードコーター、エアーナイフコーター、バーコーター、サイズプレスコーター、ゲートロールコーター、キャストコーターなど、公知の各種コーターを用いる方法により、紙に塗布される。その後必要な乾燥を行い、さらに必要に応じてスーパーカレンダーなどで平滑化処理を施すことにより、本発明の塗工紙を製造することができる。
【実施例】
【0050】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。例中、含有量又は使用量を表す%及び部は、特に断らないかぎり重量基準である。
pHは、ガラス電極式水素イオン濃度計〔東亜電波工業(株)製〕を用い、調製直後の試料のpHを25℃にて測定した値である。
粘度は、B型粘度計〔(株)東京計器製、BL型〕を用い、60rpm 、25℃で、調製直後の塗工組成物の粘度を測定した値である。
固形分とは、全体におけるアミン化合物(I)及び/又はアミン化合物(II)の重量分を意味する。ここで、アミン化合物(I)及びアミン化合物(II)の重量分とは、アミン化合物(I)及びアミン化合物(II)の製造に用いた(a)〜(g)の単量体の合計重量から、(a)〜(g)の単量体が全て反応したとして、反応によって生じる水、アンモニア等の重量を差し引いた値である。
【0051】
(合成例 I-1)
予めエポキシ当量183.3g/eq.のビスフェノールAジグリシジルエーテル232.1g(グリシジルエーテル基として1.27モル)とアセトン218.6gを混合して溶液とした。別途、温度計、還流冷却器及び攪拌棒を備えた容器に、N−(2−アミノエチル)ピペラジン150.0g(アミノ基の活性水素原子の合計モル数として3.48モル)及びメタノール160.1gを仕込み、内温を45〜55℃に保って、そこへ、先に調製したビスフェノールAジグリシジルエーテルのアセトン溶液450.7gのうちの330.6g5時間かけて滴下した。滴下終了後、内温45〜55℃でさらに4時間反応させた。次に還流冷却器をリービッヒ冷却器に取り替えた後、アセトン及びメタノールを系外に抜きながら内温を120℃まで上げた。その後、水355.8gを徐々に加えながら冷却して、中間体の水溶液703.1gを得た。さらに上で用いたのと同様の反応容器にこの中間体の水溶液400gを仕込み、内温を65〜75℃に保って、そこへ60%アクリル酸水溶液23.8g(0.20モル)をゆっくりと滴下した。滴下終了後、内温65〜75℃でさらに4時間反応させて、固形分44.4%、pH10.0、粘度920mPa・sのアミン化合物水溶液(I-1)を得た。
【0052】
(合成例 I−2)
容器に、合成例 I-1で得られたアミン化合物水溶液(I-1)を747.3g仕込み、71%硫酸81.8gをゆっくりと滴下して、固形分46.8%、pH7.5のアミン化合物水溶液(I-2)を得た。
【0053】
(合成例 II-1)
合成例 I-1と同様の容器に、トリエチレンテトラミン98.7g(アミノ基の活性水素原子の合計モル数として4.08モル)及びイオン交換水7.1gを仕込み、そこへ、アジピン酸65.8g(カルボキシル基のモル数として0.90モル)を加え、さらに71%硫酸2.0gをゆっくりと滴下した。内温145〜155℃で1時間加熱したあと、内温を100℃まで冷却し、尿素81.1g(1.35モル)を加え、次に還流冷却器をリービッヒ冷却器に取り替えた後、水を系外に抜きながら内温を155〜165℃まで上げ、5時間反応させた。その後、水79.2gを徐々に加えながら冷却して、固形分72.6%、pH7.8、粘度7,390mPa・sのアミン化合物水溶液(II-1)を得た。
【0054】
(合成例 II-2)
合成例 I-1と同様の容器に、トリエチレンテトラミン142.6g(アミノ基の活性水素原子の合計モル数として5.88モル)及びイオン交換水10.2gを仕込み、そこへ、アジピン酸95.0g(カルボキシル基のモル数として1.30モル)を加え、さらに71%硫酸3.0gをゆっくりと滴下した。内温145〜155℃で1時間加熱したあと、内温を100℃まで冷却し、尿素78.1g(1.30モル)を加え、次に還流冷却器をリービッヒ冷却器に取り替えた後、水を系外に抜きながら内温を155〜165℃まで上げ、5時間反応させた。その後、水83.1gを徐々に加えながら冷却して、固形分75.6%、pH8.3、粘度39,400mPa・sのアミン化合物水溶液(II-2)を得た。
【0055】
(合成例 II-3)
合成例 I-1と同様の容器に、トリエチレンテトラミン120.6g(アミノ基の活性水素原子の合計モル数として4.98モル)及びイオン交換水8.7gを仕込み、そこへ、アジピン酸80.4g(カルボキシル基のモル数として1.10モル)を加え、さらに71%硫酸2.5gをゆっくりと滴下した。内温145〜155℃で1時間加熱したあと、内温を100℃まで冷却し、尿素33.0g(0.55モル)を加え、次に還流冷却器をリービッヒ冷却器に取り替えた後、水を系外に抜きながら内温を155〜165℃まで上げ、5時間反応させた。その後、水84.5gを徐々に加えながら冷却して、固形分68.8%、pH10.3、粘度2,200mPa・sのアミン化合物水溶液(II-3)を得た。
【0056】
(合成例 II-4)
合成例 I-1と同様の容器に、トリエチレンテトラミン114.1g(アミノ基の活性水素原子の合計モル数として4.68モル)及びイオン交換水8.2gを仕込み、そこへ、アジピン酸57.0g(カルボキシル基のモル数として0.78モル)を加え、さらに71%硫酸2.4gをゆっくりと滴下した。内温145〜155℃で1時間加熱したあと、内温を100℃まで冷却し、尿素70.3g(1.17モル)を加え、次に還流冷却器をリービッヒ冷却器に取り替えた後、水を系外に抜きながら内温を155〜165℃まで上げ、5時間反応させた。その後、水81.0gを徐々に加えながら冷却して、固形分70.8%、pH8.3、粘度7,740mPa・sのアミン化合物水溶液(II-4)を得た。
【0057】
(合成例 II-5)
合成例 I-1と同様の容器に、トリエチレンテトラミン122.8g(アミノ基の活性水素原子の合計モル数として5.04モル)及びイオン交換水8.8gを仕込み、そこへ、アジピン酸61.4g(カルボキシル基のモル数として0.84モル)を加え、さらに71%硫酸2.6gをゆっくりと滴下した。内温145〜155℃で1時間加熱したあと、内温を100℃まで冷却し、尿素50.5g(0.84モル)を加え、次に還流冷却器をリービッヒ冷却器に取り替えた後、水を系外に抜きながら内温を155〜165℃まで上げ、5時間反応させた。その後、水82.6gを徐々に加えながら冷却して、固形分69.3%、pH10.1、粘度1,834mPa・sのアミン化合物水溶液(II-5)を得た。
【0058】
(合成例 IIの中間体1)
合成例 I-1と同様の容器に、トリエチレンテトラミン704.9g(アミノ基の活性水素原子の合計モル数として28.92モル)を仕込み、そこへ、85%ε−カプロラクタム水溶液54.4g(0.41モル)を滴下し、さらに42.5%リン酸17.9gをゆっくりと滴下した。次に還流冷却器をリービッヒ冷却器に取り替えた後、水を系外に抜きながら内温を155〜165℃まで上げ、5時間反応させた。その後、水124.4gを徐々に加えながら冷却して、中間体水溶液1を得た。
【0059】
(合成例 IIの中間体2)
合成例 I-1と同様の容器に、(合成例 IIの中間体1)で得られた中間体1のうち416.2g及びイオン交換水133.3gを仕込み、内温を65〜75℃に保って、エピクロロヒドリン103.0g(官能基数として2.22モル)を3時間掛けて滴下し、続けて4時間反応させて、中間体水溶液2を得た。
【0060】
(合成例 IIの中間体3)
合成例 I-1と同様の容器に、(合成例 IIの中間体1)で得られた中間体1のうち463.8g及びイオン交換水128.9gを仕込み、内温を65〜75℃に保って、エピクロロヒドリン68.9g(官能基数として1.48モル)を3時間掛けて滴下し、続けて4時間反応させて、中間体水溶液3を得た。
【0061】
(合成例 II-6)
合成例 I-1と同様の容器に、(合成例 IIの中間体2)で得られた中間体2のうち150.3g、イオン交換水4.3g、及び尿素92.5g(1.54モル)を仕込み、内温を108〜112℃に上げ、8時間脱アンモニア反応させた。その後、水42.9gを徐々に加えながら冷却して、固形分65.4%、pH8.4、粘度157mPa・sのアミン化合物水溶液(II-6)を得た。
【0062】
(合成例 II-7)
合成例 I-1と同様の容器に、(合成例 IIの中間体2)で得られた中間体2のうち275.3g、イオン交換水15.0g、及び尿素197.8g(3.29モル)を仕込み、内温を108〜112℃に上げ、8時間脱アンモニア反応させた。その後、水82.4gを徐々に加えながら冷却して、固形分66.1%、pH8.0、粘度125mPa・sのアミン化合物水溶液(II-7)を得た。
【0063】
(合成例 II-8)
合成例 I-1と同様の容器に、(合成例 IIの中間体2)で得られた中間体2のうち135.2g、イオン交換水10.8g、及び尿素111.0g(1.85モル)を仕込み、内温を108〜112℃に上げ、8時間脱アンモニア反応させた。その後、水42.4gを徐々に加えながら冷却して、固形分65.5%、pH8.2、粘度94mPa・sのアミン化合物水溶液(II-8)を得た。
【0064】
(合成例 II-9)
合成例 I-1と同様の容器に、(合成例 IIの中間体3)で得られた中間体3のうち145.6g、イオン交換水6.4g、及び尿素98.4g(1.64モル)を仕込み、内温を108〜112℃に上げ、8時間脱アンモニア反応させた。その後、水42.8gを徐々に加えながら冷却して、固形分66.4%、pH8.7、粘度152mPa・sのアミン化合物水溶液(II-9)を得た。
【0065】
(合成例 II-10)
合成例 I-1と同様の容器に、(合成例 IIの中間体3)で得られた中間体3のうち266.3g、イオン交換水19.2g、及び尿素210.0g(3.50モル)を仕込み、内温を108〜112℃に上げ、8時間脱アンモニア反応させた。その後、水82.3gを徐々に加えながら冷却して、固形分66.4%、pH8.2、粘度105mPa・sのアミン化合物水溶液(II-10)を得た。
【0066】
(合成例 II-11)
合成例 I-1と同様の容器に、(合成例 IIの中間体3)で得られた中間体3のうち130.7g、イオン交換水13.1g、及び尿素117.8g(1.96モル)を仕込み、内温を108〜112℃に上げ、8時間脱アンモニア反応させた。その後、水42.4gを徐々に加えながら冷却して、不揮発分65.4%、pH8.4、粘度81mPa・sのアミン化合物水溶液(II-11)を得た。
【0067】
(実施例1)
<紙塗工用樹脂組成物の製造例>
合成例I-2で得られるアミン化合物水溶液(I-2)73.0g、合成例II-1で得られたアミン化合物水溶液(II-1) 174.9g、水20.9g、及び71%硫酸2.0gを混合した後、十分に攪拌して、固形分60.1%、pH7.4、粘度656mPa・sの紙塗工用樹脂組成物を得た。
紙塗工用樹脂組成物におけるアミン化合物水溶液(I-2)とアミン化合物水溶液(II-1)の固形分の重量比率は、(I-2):(II-1)=21.2:78.8であった。
【0068】
<塗工組成物の製造例>
ウルトラホワイト90(顔料、米国エンゲルハードミネラルズ社製のクレー)60重量部、カービタル90(顔料、富士カオリン(株)製の炭酸カルシウム)40重量部、ポリアクリル酸系顔料分散剤0.2重量部、スチレン−ブタジエン系ラテックス(水性バインダー)9重量部及び市販の酸化でんぷん3重量部を混合し、水を加えて、固形分64.5%となるようにマスターカラーを調製した。続いて、マスターカラーの顔料100重量部に<紙塗工用樹脂組成物の製造例>で得られた紙塗工用樹脂組成物の固形分が0.6重量部となる割合で添加し、固形分を64%に調整した。
得られた塗工組成物のpHは9.0、粘度は1630mPa・sであった。
【0069】
<塗工紙の製造例>
塗工組成物を、米坪量80g/m2の上質紙の片面に、ワイヤーロッドを用いて塗工量が15g/m2となるように塗布した。塗布後ただちに、120℃にて10秒間熱風乾燥し、次いで温度20℃、相対湿度65%にて16時間調湿し、さらに温度60℃、線圧60kN/mの条件で2回スーパーカレンダー処理を施して、塗工紙を得た。こうして得た塗工紙を耐水性及びインキ受理性の試験に供し、試験結果を表1に示した。なお、試験方法は以下のとおりである。
【0070】
<耐水性:ウェットピック法(WP法)>
RI試験機(明製作所製)を使用し、塗工面を給水ロールで湿潤させた後に印刷し、紙むけ状態を肉眼で観察して判定した。判定基準は次のように行った。
耐水性 (劣)1〜5(優)
【0071】
<インキ受理性>
A法:RI試験機を使用して、塗工面を給水ロールで湿潤させた後に印刷し、インキの受理性を肉眼で観察して判定した。判定基準は次のように行った。
インキ受理性 (劣)1〜5(優)
B法:RI試験機を使用して、金属ロールとゴムロールの間にわずかな間隙をあけ、その間隙に水を注いだ後速やかに印刷し、インキの受理性を肉眼で観察して判定した。判定基準は次のように行った。
インキ受理性 (劣)1〜5(優)
【0072】
(実施例2〜11)
表1に記載のアミン化合物(I)及び(II)を表1に記載の重量比率で用いる以外は実施例1と同様にして、紙塗工用樹脂組成物、塗工組成物及び塗工紙を製造し、紙塗工用樹脂組成物の物性及び塗工紙の物性を測定した。実施例1の結果とともに、結果を表1に示した。
尚、アミン化合物(I)の「数量比」とは、アミン化合物(I)の合成に用いた(a)成分に含まれるアミノ基の活性水素原子の合計数100に対し、アミン化合物(I)の合成用いた(b)成分のグリシジルエーテル基の合計数及び(f)成分の合計分子数を示し、アミン化合物(II)の「数量比」とは、アミン化合物(II)の合成に用いた(c)成分に含まれるアミノ基の活性水素原子の合計数100に対し、(d)、(g)のそれぞれの各成分をアミン化合物(II)の合成に用いた分子数、及び(e)成分のアミン化合物(II)の合成に用いた官能基の数を示した。
【0073】
【表1】

【0074】
(比較例1)
アミン化合物(I)及び(II)を全く用いない、マスターカラーのみからなる塗工組成物を調製し、該組成物を用いて、実施例1と同様に塗工紙を得た。結果を表2に示した。
【0075】
(比較例2:特許文献1の実施例に準拠)
アミン化合物(I-1)150.0g、尿素155.3g(2.59モル)、及び水177.1gを混合した後、十分に攪拌して、固形分46%、pH10.1、粘度7mPa・sの紙塗工用樹脂組成物を得た。
該紙塗工用樹脂組成物を用いる以外、塗工組成物及び塗工紙を実施例1と同様に調製し、結果を表2に示した。
【0076】
(比較例3:特許文献2の実施例に準拠)
合成例 I-1と同様の容器に、トリエチレンテトラミン50.0g(アミノ基の活性水素原子の合計モル数として2.05モル)及びイオン交換水200.4gを仕込み、そこへ、エピクロロヒドリン190.0g(2.05モル)をゆっくりと滴下したあと、内温65〜75℃で4時間反応させて、固形分54.5%の樹脂水溶液(II-12)を得た。
樹脂水溶液(II-12)180.4gに、アミン化合物水溶液(I-2)46.6g及び71%硫酸0.5gを混合した後、十分に攪拌して、不揮発分46.4%、pH7.5、粘度54mPa・sの紙塗工用樹脂組成物を得た。
該紙塗工用樹脂組成物を用いる以外、塗工組成物及び塗工紙を実施例1と同様に調製し、結果を表2に示した。
【0077】
(比較例4:特許文献2の実施例に準拠)
アミン化合物水溶液(I-1)204.4g及び樹脂水溶液(II-12) 15.5gを混合し、内温65〜75℃にて4時間撹拌することにより、不揮発分43.6%、pH9.7、粘度3,760mPa・sの樹脂組成物を得た。
該樹脂水溶液82.9g、尿素84.3g(1.40モル)、及び水94.6gを混合した後、十分に撹拌して、濃度46.0%、pH9.7、粘度9mPa・sの紙塗工用樹脂組成物を得た。
該紙塗工用樹脂組成物を用いる以外、塗工組成物及び塗工紙を実施例1と同様に調製し、結果を表2に示した。
【0078】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の紙塗工用樹脂組成物を使用した塗工紙は、インキ受理性、耐水性に優れ、高速印刷用印刷物や、非常にきれいで鮮明な印刷物等に好適であることから、例えば、商品カタログ、カレンダー、パンフレット、広告、ポスター、写真雑誌、図鑑、パッケージ等に使用し得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記アミン化合物(I)及びアミン化合物(II)を含有する紙塗工用樹脂組成物。
アミン化合物(I):脂肪族アミン(a)と、分子内にグリシジルエーテル基を少なくとも2個有するグリシジル化合物(b)との反応生成物であって、(a)の1級アミノ基及び2級アミノ基に含まれる活性水素原子の合計数100に対して、(b)のグリシジルエーテル基の数100未満が割合で反応させて得られるアミン化合物。
アミン化合物(II):下記(c)、(d)及び(e)の反応生成物であって、(c)の1級アミノ基及び2級アミノ基に含まれる活性水素原子の合計数100に対して、(d)と(e)の官能基数合計が100未満の割合で反応させて得られるアミン化合物。ここで官能基数とは、(c)のアミノ基に含まれる活性水素原子と反応し得る官能基の数を表す。
(c):アルキレンジアミン及び/又はポリアルキレンポリアミン
(d):尿素類
(e):エピハロヒドリン類、α,γ−ジハロ−β−ヒドリン類、及び多価カ
ルボン酸系化合物からなる群から選ばれる1種以上の化合物
【請求項2】
紙塗工用樹脂組成物がアミン化合物(I)及びアミン化合物(II)を混合した樹脂組成物である請求項1に記載の紙塗工用樹脂組成物。
【請求項3】
(a)が複素環アミンである請求項1または2記載の紙塗工用樹脂組成物。
【請求項4】
(b)が芳香族多価グリシジルエーテル類およびそのオリゴマーである請求項1〜3いずれかに記載の紙塗工用樹脂組成物。
【請求項5】
アミン化合物(I)が、α,β−不飽和カルボニル化合物、α,β−不飽和ニトリル化合物、及びα―ハロカルボン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種類の化合物(f)をさらに反応せしめてなるアミン化合物である請求項1〜4のいずれかに記載の紙塗工用樹脂組成物。
【請求項6】
(e)成分が、アジピン酸である請求項1〜5のいずれかに記載の紙塗工用樹脂組成物。
【請求項7】
紙塗工用樹脂組成物が溶媒に分散又は溶解された組成物である請求項1〜6のいずれかに記載の紙塗工用樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の紙塗工用樹脂組成物と、顔料と、水性バインダーとを含む塗工組成物。
【請求項9】
紙に請求項8に記載の塗工組成物を塗工してなる塗工紙。

【公開番号】特開2006−160896(P2006−160896A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−355065(P2004−355065)
【出願日】平成16年12月8日(2004.12.8)
【出願人】(000216243)田岡化学工業株式会社 (115)
【Fターム(参考)】