説明

紙容器の開封装置

【課題】紙容器を容易に開封し液体食品を滑らかに注出し、且つ再栓できるコストの安い紙容器の開封装置の技術に関する。
【解決手段】
開封装置6は内容液注出用の開口予定部5を囲って頂面2に固着される本体部7と、ヒンジ部8を介して本体部7を覆うキャップ9と、開口予定部5を開封する開封アーム10で構成される。開封アーム10は開封部11とアーム12から成り、開封部11は円筒状の上端部に蓋部11aと下端部に開封刃11bを備える。蓋部11aに幅Q1、長さH1で形成された矩形凹部の底辺の中央部に幅Q2でアーム12の一端部12aが連結し、アーム12の他端部12bはヒンジ部8の中央部8aに回転自在に連結する。折畳みリンク部13は蓋部11aに備える矩形凹部Sとキャップ9に回転可能に固着され、折畳みリンク部13は幅Q3の矩形凹部Sに収納される。折畳みリンク部13は180度に開いてロック部Pで固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体食品を充填した紙容器の開封装置に関し、詳しくは紙容器を容易に開封して液体食品を滑らかに注出し、且つ再栓できるコストの安い開封装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紙容器を開封して内容液を注出するための開封装置に関する技術として特許文献1に掲載の内容が知られている。
【0003】
上記文献に示すように、開封装置21は、封止用フィルム24で閉塞された紙容器の頂面22の開口予定部22Aの周縁部に沿ってベース部25が接着され、このベース部25にリテーナ26が内螺合され、リテーナ26の上部にスクリューキャップ27が外螺合される。リテーナ26の下端には封止用フィルム24を突き破るための尖端部26Cが形成され、リテーナ26とスクリューキャップ27は溶着部28にてスポット溶接される。スクリューキャップ27を取り外す方向Fに回転すると、キャップ27とリテーナ26が一体となりベース部25内を下降して封止用フィルム24を破り、さらに溶着部28を破断してキャップ27が外れる。紙容器はキャップ27で再栓できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−349024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記文献に示すように、尖端部26Cが頂面22から紙容器の内部に突出するので、紙容器を傾けて内容液を注出する際に尖端部26Cで内容液の流れが止められて確実に注出するのが困難であるという問題があった。また、螺合構造なのでコストが高いという問題があった。そこで、本発明はかかる従来技術の問題に鑑みなされたものであって、簡単な構造でコストが安くて内容液を滑らかに注出し、且つ再栓できるコストの安い紙容器の開封装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、紙基材を折り曲げて頂面と底面と複数の側面を形成して成る紙容器本体に備える紙容器の開封装置であって、前記開封装置は内容液注出用の開封予定部を囲って前記頂面に固着される本体部と、前記本体部にヒンジ部を介して開閉自在に覆うキャップと、前記開口予定部を開封する開封アームとから成り、前記開封アームは円筒状の開封部とアームが一体形成され、前記開封部の下端部に開封刃を備え、前記アームの一端部が前記開封部から突出して前記ヒンジ部に回転自在に連結する一方、前記アームの他端部が一対の折畳みリンク部を介して前記開封部に連結することを特徴としている。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の紙容器の開封装置であって、前記開封部に凹状部を備え、この凹状部に前記アームの他端部が連結し、前記キャップが閉じた状態で前記一対の折畳みリンク部が前記アームの両側に沿って前記凹状部に収納されることを特徴としている。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の紙容器の開封装置であって、前記折畳みリンク部は180度に開いた状態で位置固定するロック部を備えることを特徴としている。
【0009】
請求項4の発明は、請求項3に記載の紙容器の開封装置であって、前記ロック部は凹部と凸部から成ることを特徴としている。
【0010】
請求項5の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の紙容器の開封装置であって、前記開封装置は射出成型樹脂製であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明は、前記開封装置は内容液注出用の開封予定部を囲って前記頂面に固着される本体部と、前記本体部にヒンジ部を介して開閉自在に覆うキャップと、前記開口予定部を開封する開封アームとから成り、前記開封アームは円筒状の開封部とアームが一体形成され、前記開封部の下端部に開封刃を備える。このため、本体部とキャップによって開封アームが覆われるので紙容器の搬送途中で開封アームを損傷することなく衛生的に保護できて、前記開口予定部を確実且つ容易に開口して内容液をスムーズに注出できる。
【0012】
さらに、前記アームの一端部が前記開封部から突出して前記ヒンジ部に回転自在に連結する一方、前記アームの他端部が一対の折畳みリンク部を介して前記開封部に連結する。このように、前記開封装置は簡単な構造であるため製作コストが安価で紙容器の価値が高まる。そして、キャップを開放する動作で自動的に折畳みリンク部が広がり、この状態でキャップを押込むことで開封部が前記開口予定部を容易確実に開封することができるので操作性に優れる。
【0013】
請求項2の発明によれば、前記開封部に凹状部を備え、この凹状部に前記アームの他端部が連結し、前記キャップが閉じた状態で前記一対の折畳みリンク部が前記アームの両側に沿って前記凹状部に折畳んだ状態で収納されるため、前記開封装置が嵩張らないので紙容器の外観性が向上すると同時に搬送時のダメージ発生を防止できる。
【0014】
請求項3の発明によれば、前記折畳みリンク部は180度に開いた状態で位置固定するロック部を備えるので、キャップを開放する動作で自動的に折畳みリンク部を広げた状態に固定できる。このため、キャップを押込む動作に連動して折畳みリンク部によって開封部を前記開口予定部に安定して押込んで確実に開封することができる。
【0015】
請求項4の発明によれば、前記ロック部は凹部と凸部から成るので製作容易で製作コストが掛からず安価である。
【0016】
請求項5の発明によれば、前記開封装置は射出成型樹脂製なので、機械加工が不要なので容易且つ安価に製造できてコスト低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第一の実施形態における、外観が直方体形状の紙容器本体1aの頂面2の開口予定部5を覆って開封装置6を取付けた状態を示す紙容器1の斜視図である。
【図2】本発明の第一の実施形態における、図1のA−A透視図で、開封装置6の水平視形状を示す図である。
【図3】本発明の第一の実施形態における、開封装置6のキャップ9を開く過程における斜視図である。
【図4】本発明の第一の実施形態における、紙容器本体1aを形成する帯状包材15の展開平面図である。
【図5】本発明の第一の実施形態における、図4のB−B断面図で、開口予定部5の状態を示す図である。
【図6】本発明の第一の実施形態における、紙容器1を開封するため開封装置6のキャップ9を開いて、折畳みリンク部13の凹部P1と凸部P2から成るロック部Pが嵌合した状態を示す斜視図である。
【図7】本発明の第一の実施形態における、キャップ9を押し込んで開口予定部5を開口した状態を示す斜視図である。
【図8】本発明の第一の実施形態における、キャップ9を開いて開封部11を開口部5aから離した状態を示す斜視図である。
【図9】本発明の第二の実施形態における、開封装置6のキャップ9を開く過程における斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
<本発明の第一の実施形態>
以下に、本発明の第一の実施形態を図1〜図8に基づいて説明する。
<紙容器の開封装置の構成>
【0019】
図1に示すように、紙容器1は紙基材を折り曲げて矩形の頂面2と底面3と四側面4(正面4a、裏面4b、側面4c、側面4d)で外観が直方体の紙容器本体1aか形成される。頂面2にジュース等の内容液を注出するための円形の開口予定部5が形成され、この開口予定部5を覆って射出成型樹脂製の開封装置6を取付ける。
【0020】
図2、図3に示すように、開封装置6は内容液注出用の開口予定部5を囲って頂面2に熱圧着で固着される本体部7と、ヒンジ部8を介して開閉自在に本体部7を覆うキャップ9と、開口予定部5を開封する開封アーム10とで構成される。開封装置6の平面視外縁形状はキャップ9を本体部7に閉じた状態でU字形の開放端を直線で連結して成る形状である。
【0021】
開封アーム10は円筒状の開封部11とアーム12で上面が同一面と成るように一体形成され、開封部11は円筒状で上端部に蓋部11aを備え下端部に鋸刃状の開封刃11bを備える。より詳しくは、開封部11は水平視対称形で蓋部11aに矩形凹部が幅Q1、長さH1で形成され、この矩形凹部の底辺の中央部に幅Q2のアーム12の一端部12aが連結し、アーム12の他端部12bは開封部11より突出してヒンジ部8の中央部8aに回転自在に連結する。
【0022】
そして、蓋部11aはアーム12の両側に幅Q3で矩形凹部Sを備え、各矩形凹部Sに折畳みリンク部13が折畳んだ状態で収納される。折畳みリンク部13は一対の断面矩形の長尺棒の一端部がピンヒンジされて成り、この折畳みリンク部13の両先端部13a、13bが開封部11の矩形凹部Sの奥部とキャップ9の裏面にそれぞれ回転可能に固着される。この折畳みリンク部13は180度に開いた状態で凹部P1と凸部P2から成るロック部Pが嵌合して確実に固定できる。
【0023】
なお、開封部11の外径と開口予定部5の直径は同じ大きさで、開封部11の中心を開口予定部5の中心に合わせた状態で開封装置6のベース部7が頂面2に固着される。
【0024】
図4に示すように、紙容器本体1aを成型する帯状の包材15には成型容易とするための複数の折り目が形成される。より詳しくは、紙容器一個分に該当する領域Kにおいて、縦方向の折り目16a、16b、16c、16d、横方向の折り目17a、17b、17c、17d、斜め方向の8本の折り目18が形成される。上記、紙容器本体1aの頂面2に内容液を注ぐための円形の開口予定部5が形成される。
【0025】
図5に示すように、包材15の構成は、外側から内側にかけて順に、外側層15a、紙基材15b、接着層15c、バリヤー層15d、二層の内側層15eから成り、紙基材15bの外側面にデザイン等15fが予め印刷される。外側層15a、内側層15eは低密度ポリエチレン樹脂、接着層15cはポリエチレン或いはエチレン共重合体等の樹脂、バリヤー層15dはアルミ箔等で形成される。開口予定部5は開口容易とするために紙基材15bが直径Dの円形状に切り抜かれる。
【0026】
「開封装置付き紙容器の製造工程の説明」
図示しない充填機において、帯状包材15を下方に搬送しながら両端部を重ねて筒状に縦線シールして内容液を充填した後に、横線シールして紙容器一個分に該当する領域Kを切離して原型容器を形成する。
【0027】
そして、縦方向の折り目16a、16b、16c、16d、横方向の折り目17a、17b、17c、17d、及び斜め方向の複数の折り目18を折り曲げて、矩形の頂面2と底面3と四側面4から成る外観直方体形状の紙容器本体1aが連続形成される。開封装置6を紙容器本体1aの頂面2に取付ける方法は、図示しない装置でベース部7の底面をマイクロフレーム等で溶融して固着する。
【0028】
<紙容器の開封装置の作用>
図6に示すように、キャップ9の先端に備える引上げ部9aを指で持上げてキャップ9をヒンジ部8の回りに回転して開く。このキャップ9を開放する動作に連動して折畳みリンク部13が自動的に広がり180度に開いた状態で凹部P1と凸部P2から成るロック部Pが嵌合して確実に固定できる。ここで、開封部11はアーム12を介してヒンジ部8に回転自在に連結するが、図示しない突起やスポット溶着等で開封部11が本体部7に簡易固着するので開封部11は持ち上がらない。
【0029】
図7に示すように、引上げ部9a又はキャップ9を押込むと、上記図示しない突起やスポット溶着等が破断するので180度に固定された折畳みリンク部13に連動して、開封部11が本体部7から離脱して下降し開口予定部5に押込まれる。ここで、開封部11は円筒状の下端部に鋸刃状の開封刃11bが形成されるので開口予定部5は容易に破断して注出口が形成される。このように、開封装置6は螺合部のない簡単な構造であるため製作コストが安価となり紙容器の価値が高まる。
【0030】
図8に示すように、開口予定部5を破断した後に、キャップ9を引上げて開封部11が注出口5aから十分離れる状態の位置で、キャップ9が図示しない突起等で本体部7に固定するので、紙容器を傾けて注出口5aから内容液を滑らかに注出することができる。ここで、鋸刃状の開封刃11bは全周ではなくアーム12近傍には形成されないので、開口予定部5は円周の一部分が破断せず頂面2に連結した状態で残るので紙容器の内部に開口片が落下せず開口片の誤飲を防止することができる。所望の内容液を注出した後に、キャップ9を押込んで開封部11を開口部5aに挿入して再栓すると内容液の注出を中断することができるので利便性に優れ衛生性が向上する。
【0031】
この開封装置6であれば、簡単な構造で紙容器の開封・再栓が可能になる。開封部11が注出口5aの外部に出るので内容液を滑らかに注出できる。折畳みリンク部13が一対の凹部Sに格納されるので、開封装置6が嵩張らないので紙容器の外観性が向上すると同時に紙容器が搬送途中で損傷することがない。
<本発明の第二の実施形態>
【0032】
本発明の第二の実施形態を図9に基づいて説明するが、図2、図3と同様の構成に関しては同符号を用いて重複する説明を省く。
【0033】
図9に示すように、開封装置6の開封部11は蓋部11aに矩形凹部が形成されず、アーム12の一端部12aが開封部11の外縁部11cに固着する。そして、一対の折畳みリンク部13の一方の先端部13aは蓋部11aの上面に連結する。
【0034】
このため、蓋部11aは本発明の第一の実施形態に比べると若干嵩高くなるが、蓋部11aに矩形凹部を備えないので射出成型性が向上する。
【0035】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて説明したが、具体的な構成はこの実施例に限られるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。
【0036】
たとえば、開封装置6は一体射出成型でなく部分的に組付成型することもできる。開封部11の鋸刃状の開封刃11bは全周360度で形成してもよい。開封装置6は、底面と複数の側面で形成される各原型容器に順次内容液を充填した後で頂面を屋根状に密封形成する方法の屋根型紙容器等に対しても適用することができる。
【符号の説明】
【0037】
2 頂面
5 開口予定部
6 開封装置
7 本体部
8 ヒンジ部
8a 中央部
10 開封アーム
11 開封部
11a 蓋部
11b 開封刃
12 アーム
12a 一端部
12b 他端部
13 折畳みリンク部
H1 長さ
P ロック部
Q1 幅
Q2 幅
Q3 幅
S 矩形凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材を折り曲げて頂面と底面と複数の側面を形成して成る紙容器本体に備える紙容器の開封装置であって、前記開封装置は内容液注出用の開封予定部を囲って前記頂面に固着される本体部と、前記本体部にヒンジ部を介して開閉自在に覆うキャップと、前記開口予定部を開封する開封アームとから成り、前記開封アームは円筒状の開封部とアームが一体形成され、前記開封部の下端部に開封刃を備え、前記アームの一端部が前記開封部から突出して前記ヒンジ部に回転自在に連結する一方、前記アームの他端部が一対の折畳みリンク部を介して前記開封部に連結することを特徴とする紙容器の開封装置。
【請求項2】
請求項1に記載の紙容器の開封装置であって、前記開封部に凹状部を備え、この凹状部に前記アームの他端部が連結し、前記キャップが閉じた状態で前記一対の折畳みリンク部が前記アームの両側に沿って前記凹状部に収納されることを特徴とする紙容器の開封装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の紙容器の開封装置であって、前記折畳みリンク部は180度に開いた状態で位置固定するロック部を備えることを特徴とする紙容器の開封装置。
【請求項4】
請求項3に記載の紙容器の開封装置であって、前記ロック部は凹部と凸部から成ることを特徴とする紙容器の開封装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の紙容器の開封装置であって、前記開封装置は射出成型樹脂製であることを特徴とする紙容器の開封装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−188156(P2012−188156A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−54909(P2011−54909)
【出願日】平成23年3月13日(2011.3.13)
【出願人】(000229232)日本テトラパック株式会社 (259)
【Fターム(参考)】