説明

紙容器

【課題】生産性や品質が良好であって、開封性に優れた引裂ジッパーを有する紙容器を提供すること。
【解決手段】表面側の2本の半切線aと裏面側の2本の半切線bのそれぞれが周回して重なる状態で一方の端縁部の裏側と他方の端縁部の表側とを貼着することで筒状とされ、表面側の2本の半切線aの幅に相当する開封用の摘み部分14が端縁部から突出して設けられた紙容器であって、一方の端縁部と貼着される他方の端縁部における摘み部分14の下側に位置する表側部分に、少なくとも裏面側の2本の半切線よりも外側に延びる長さで幅方向の補助半切線cを設ける。摘み部分の下側にある他方の端縁部は補助半切線のところから摘み部分と一体となって紙の層間剥離を起こし、この他方の端縁部における層間剥離に連れて、表面側の半切線と裏面側の半切線とで挟まれた2条の部分が層間剥離を開始する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開封機構の付いた筒状の紙容器の技術分野に属し、詳しくは、帯状の引裂ジッパー部を備えた紙容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、菓子類等を収納する筒状の紙容器として、ミシン目状の切目線からなるジッパーを始めとして様々な開封機構を備えたものが知られているが、密封性を考慮したものとして、表面側に2本の平行な半切線(ハーフカット)を形成し、その2本の半切線の幅よりも狭幅の2本の平行な半切線(ハーフカット)を裏面側に形成した帯状の引裂ジッパーを有したものが知られている。そして、開封の便宜を考慮して、表面側の2本の半切線の幅に相当する摘み部分を端縁部に設けたものも使用されている。この引裂ジッパーを有する紙容器は、摘み部分を引っ張ると、表面側の半切線と裏面側の半切線とで挟まれた2条の部分で紙が層間剥離を起こすことによって開封することができる。
【0003】
【特許文献1】実開昭57−13473号公報
【特許文献2】特開平8−258833号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の引裂ジッパーを備えた紙容器は、表裏両面にそれぞれ半切線を2本ずつ入れたブランクシートを組み立てて製造されるが、これらの半切線は打抜機でブランクシートを打ち抜くのと同時に両面から短い切刃により入れられている。したがって、半切線の深さ管理が難しく、紙の厚みによっては貫通したり切れが甘くなったりする。特に、裏面側の半切線についてはその管理が難しく、生産性と品質に影響を与えている。
【0005】
また、摘み部分は表面側の2本の半切線の幅で端縁部に設けられるが、摘み部分の外形を打ち抜く切刃と表面側及び裏面側の半切線を形成する切刃は、近づけることができるだけで交差させることがないため、ブランクシートを打ち抜いた時に摘み部分の根元はいずれの半切線にもつながらず、両者の間に切れていない部分が残ることから、摘み部分を注意深く引っ張らないとうまく開封できない場合が生じていた。
【0006】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、生産性や品質が良好であり、開封性に優れた引裂ジッパーを有する紙容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明の紙容器は、表面側に2本の平行な半切線を形成し、その2本の半切線の幅よりも狭幅の2本の平行な半切線を裏面側に形成した帯状の引裂ジッパーを有する板紙製のブランクシートからなり、表面側の2本の半切線と裏面側の2本の半切線のそれぞれが周回して重なる状態で一方の端縁部の裏側と他方の端縁部の表側とを貼着することで筒状とされ、表面側の2本の半切線の幅に相当する開封用の摘み部分が端縁部から突出して設けられた紙容器であって、一方の端縁部と貼着される他方の端縁部における摘み部分の下側に位置する表側部分に、少なくとも裏面側の2本の半切線よりも外側に延びる長さで幅方向の補助半切線を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の紙容器は、摘み部分を引っ張ると、摘み部分の下側にある他方の端縁部は補助半切線のところから摘み部分と一体となって紙の層間剥離を起こし、この他方の端縁部における層間剥離に連れて、表面側の半切線と裏面側の半切線とで挟まれた2条の部分が層間剥離を開始することとなり、開始位置がずれて裂けるような事態が防止され、摘み部分をそのまま引っ張ることで綺麗に開封される。また、補助半切線はブランクシートを打ち抜くのと同時に形成するが、表裏両面それぞれに2本ずつある開封用の半切線は、カットロールで形成することが可能であるため、少ない斤量の用紙でも一定した深さで正確に形成することができ、密封性や開封性に優れた品質の良好なものを効率良く生産することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
図1は本発明に係る紙容器の一例を示す斜視図、図2は図1に示す紙容器を組み立てるブランクの展開図である。
【0011】
ブランクシートは、表面に熱融着性樹脂を有する板紙を打ち抜いたもので、図2に示すように、折線を介してそれぞれが縦長の前面パネル1、側面パネル2、背面パネル3、側面パネル4及び糊代片5が順次横に並んで連設されており、前面パネル1の上下にはそれぞれ折線を介して内側上面パネル6、内側底面パネル7が連設され、側面パネル2の上下にはそれぞれ折線を介して上側折込みパネル8、下側折込みパネル9が連設され、背面パネル3の上下にはそれぞれ折線を介して外側上面パネル10、外側底面パネル11が連設され、側面パネル4の上下にはそれぞれ折線を介して上側折込みパネル12、下側折込みパネル13が連設されている。
【0012】
このブランクシートには、図示の如く、前面パネル1、側面パネル2、背面パネル3、側面パネル4及び糊代片5を横断する状態で帯状の引裂ジッパーGが上下に平行に2本設けられている。この引裂ジッパーGは、表面側に2本の平行な半切線aを形成し、その2本の半切線aの幅よりも狭幅の2本の平行な半切線bを裏面側に形成したものであり、表面側の2本の半切線aの幅に相当する摘み部分14が前面パネル1の端縁部に突出して設けられている。そして、糊代片5におけるジッパーGのところには、その表側部分に幅方向の補助半切線cが3本設けられている。これらの半切線cは、裏面側の2本の半切線bの間で端縁と平行に延び、その裏面側の半切線bから斜め方向に表面側の半切線aに至るまで設けられている。
【0013】
補助半切線cは、図2の形態に限るものではなく、少なくとも裏面側の2本の半切線bよりも外側に延びる長さであればよい。また、複数本設けてもよいが、少なくとも1本あればよい。また、形状についても後述する剥がれやすさを考慮して適宜設計すればよいものである。
【0014】
開封用としての表裏両面の半切線a,bはいずれもブランク打抜き時より前に予めカットロールで形成されており、糊代片5にある補助半切線cはブランク打抜き時に形成されている。
【0015】
開封用の半切線a,bを形成する際に使用するカットロールは、円板の外周に刃を突出形成した形状をした公知のもので、連続状態の用紙を送りながらこのカットロールを押し当てることで用紙に対して一定の深さの半切線(ハーフカット)を形成するようになっている。例えば、シート断ち機にカットロールを取り付け、このシート断ち機で用紙を所定幅に切断すると同時に、表面側の半切線aと裏面側の半切線bの両方を一度に形成する。また、切目線cは、切断刃を追加した打抜き機を使用することよりブランクシートを打ち抜く時に同時に形成する。
【0016】
このように、表裏両面それぞれに2本ずつある半切線は、カットロールで形成するので、少ない斤量の用紙でも一定した深さで正確に形成することができる。また、開封箇所を増やす場合、打抜きと同時に入れる従来の方法では半切箇所が多くなって品質が安定しなかったが、カットロールを用いることにより、数を容易に増やすことができる。
【0017】
図2のブランクシートから図1の紙容器を組み立てるには、前面パネル1を糊代片5に貼着することによって全体をサック貼りし、このサック貼り状態で充填工程に供給した後、角筒状に起こし、底部を閉じてから内容物を入れて上部を閉じる。すなわち、下側折込みパネル9,13を折り込んでから内側底面パネル7、外側底面パネル11を折り畳んで貼着することによって底部を閉じ、内容物を入れてから、上側折込みパネル8,12を折り込んでから内側上面パネル6、外側上面パネル10を折り畳んで貼着することによって上部を閉じる。
【0018】
このようにして製造された紙容器は、図1に示すように、前面パネル1の端縁部から摘み部分14が僅かに突き出た状態となる。そして、この摘み部分14を持って引っ張ることにより、図3に示す如く、まず最初は摘み部分14の下側にある糊代片5が補助半切線cのところから摘み部分14と一体となって紙の層間剥離を起こし、次いで、この層間剥離に連れて、表面側の半切線aと裏面側の半切線bとで挟まれた2条の部分で紙が層間剥離を起こすことによって開封される。すなわち、摘み部分14の貼着部分が層間剥離を起こし、それに連れて一定した深さの半切線a,bに沿って帯状の部分で紙の層間剥離が行われる。したがって、開始位置がずれて裂けるような事態が防止され、綺麗に層間剥離を起こして開封することができる。
【0019】
なお、図1の紙容器のように引裂ジッパーGが上下に2本設けられている場合、開け方としては、例えば、最初に上方の引裂ジッパーGを開け、それより上の部分を除去して中身を消費した後、下方の引裂ジッパーGを開け、それより上の部分を除去して中身を消費する。もちろん、内容物に応じて2本の引裂ジッパーを適宜開ければよい。
【0020】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明してきたが、本発明による紙容器は、上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることは当然のことである。
【0021】
例えば、上記の例では、筒状の紙容器の形状を断面が矩形状で上下に細長い形状としたが、このような形状に限るものではない。例えば、円筒形状や円錐形状でもよいし、或いは円筒形状の下方を偏平にしたような形状でもよい。
【0022】
また、上記の例では、引裂ジッパーを上下に2本並んで設けたが、この数は用途に応じて適宜決めればよいものであり、1本でも構わないし3本以上でも構わない。
【0023】
また、上記の例では、表裏両面それぞれに2本ずつ設ける半切線をブランク打抜き時より前に予めカットロールで形成したが、打抜き後のブランクシートにカットロールを押し当てて形成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る紙容器の一例を示す斜視図である。
【図2】図1に示す紙容器を組み立てるブランクシートの展開図である。
【図3】図1に示す紙容器を開封する様子を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0025】
1 前面パネル
2 側面パネル
3 背面パネル
4 側面パネル
5 糊代片
6 内側上面パネル
7 内側底面パネル
8 上側折込みパネル
9 下側折込みパネル
10 外側上面パネル
11 外側底面パネル
12 上側折込みパネル
13 下側折込みパネル
14 摘み部分
G 引裂ジッパー
a 半切線(表面側)
b 半切線(裏面側)
c 補助半切線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面側に2本の平行な半切線を形成し、その2本の半切線の幅よりも狭幅の2本の平行な半切線を裏面側に形成した帯状の引裂ジッパーを有する板紙製のブランクシートからなり、表面側の2本の半切線と裏面側の2本の半切線のそれぞれが周回して重なる状態で一方の端縁部の裏側と他方の端縁部の表側とを貼着することで筒状とされ、表面側の2本の半切線の幅に相当する開封用の摘み部分が端縁部から突出して設けられた紙容器であって、一方の端縁部と貼着される他方の端縁部における摘み部分の下側に位置する表側部分に、少なくとも裏面側の2本の半切線よりも外側に延びる長さで幅方向の補助半切線を設けたことを特徴とする紙容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−12820(P2009−12820A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−177359(P2007−177359)
【出願日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】