説明

紙密度調整剤組成物

【課題】抄紙工程において古紙パルプ使用量が増加したり、抄紙工程のクローズド化によってアニオントラッシュが増加した場合でも、紙力やサイズ度の低下を抑制し、嵩高で低密度の紙類を得ることのできる紙密度調整剤組成物を提供する。
【解決手段】紙密度調整剤組成物は、(A)一級ないし二級アルキロールアミンの窒素に、総炭素数10〜22のアルキレンオキシドが付加したヒドロキシアミン誘導体に、総炭素数2〜4のアルキレンオキシドが2〜100モル付加した、特定の構造式(a)、(b)で示される化合物の1種以上と、(B)アルキロールアミド系化合物とを、重量比で、(A):(B)=99.9:0.1〜80.0:20.0の割合で含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙類の嵩を向上させてボリューム感を付与することのできる紙密度調整剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、紙類にはコスト低減化、印刷適正向上、高級なボリューム感の付与、ならびに森林資源保護の観点から原料パルプや薬剤の使用量低減化、古紙利用率の上昇等が求められている。しかし古紙利用率の上昇は、古紙パルプ繊維がヴァージンパルプ繊維に比べ短繊維化している為、嵩高性が低下する等の問題が生じ、結果としてパルプ使用量の増大を引き起こしていた。また古紙再生に使用される水酸化ナトリウムや珪酸ナトリウム等のアルカリ剤や過酸化水素、次亜塩素酸塩などの漂白剤等の薬剤が抄紙工程へ流入するようになり、紙密度調整剤やサイズ剤といった機能性を付与する薬剤の効果が弱まり、使用量増加をもたらす結果となっている。紙類の嵩を高める方法として、架橋剤と反応させた架橋パルプや熱融着性繊維をパルプに混合して抄紙する方法、芯鞘型やサイドバイサイド型のポリエステル繊維をパルプに混合する方法や界面活性剤を用いる方法が知られている。界面活性剤としては脂肪酸多価アルコールエステルやそのアルキレンオキシド付加物(特許文献1)、油脂系非イオン界面活性剤、糖アルコール系非イオン界面活性剤、糖系非イオン界面活性剤の少なくとも1種を含むもの(特許文献2)、カチオン性化合物、アミン、アミンの酸塩、両性化合物の少なくとも1種からなるもの(特許文献3)、ヒドロキシル基を有するアミン類を主成分とするもの(特許文献4)等が知られている。
【0003】
【特許文献1】特開平11−350380号公報
【特許文献2】特開平11−200283号公報
【特許文献3】特開平11−269799号公報
【特許文献4】特開2005−325492号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、架橋剤と反応させた架橋パルプや熱融着性繊維をパルプに混合して抄紙する方法、芯鞘型やサイドバイサイド型のポリエステル繊維をパルプに混合する方法は、パルプとは異なる素材を用いるため紙本来の特性が損なわれる虞があるとともに、嵩を高める効果も十分ではなかった。また特許文献1、2に記載の非イオン系界面活性剤類は、十分な嵩高効果が得られる量を添加すると、紙力低下、サイズ度低下という問題を生じ易い。特許文献3に記載の界面活性剤は嵩高性と紙力強度を両立させる観点の薬剤であり、(1)カチオン性薬剤では、古紙再生に使用されるアルカリ剤や漂白剤等の薬剤が抄紙工程へ流入する事により、カチオン性薬剤の性能が不十分となる。(2)アミン薬剤類では、腐食性や安全性に問題があり、更にサイズ性が低下するとともに、アルカリ抄紙傾向となる為、印刷インク特性に影響を生じる。(3)アミンの酸塩として実施例記載薬剤では、対イオンとなるCl、Brや酢酸での欠点として、対イオンを形成させる原料の安全性(腐食性、臭気の問題)、少量でのpH変動が大きく薬剤調製、安定性や、抄紙マシンやポンプを腐食させ操業に支障をきたす虞があり、更に紙製品を焼却した際に、薬剤に起因したダイオキシン類等の汚染物質による大気汚染の虞がある。(4)両性薬剤類では、嵩高効果が元々不十分であるのに加え、サイズ性の低下などが生じる。特許文献3に記載の界面活性剤では、上記(1)〜(4)に挙げたようなサイズ性の問題や、古紙使用率の上昇、クローズド化、薬剤の増加及び安全性、トラッシュ増加、紙質の安定性、操業性、ダイオキシン類生成の問題等、使用環境特性(抄紙工程の諸問題)・環境保全への配慮が成されていない等の点で不十分なものであった。
【0005】
また、抄紙工程では微細繊維、填料、添加薬品、樹脂ピッチ、溶出リグニン等のアニオントラッシュが含まれるが、特に古紙パルプの使用量の増加や抄紙工程のクローズド化によりこれらアニオントラッシュが増加している。アニオントラッシュは、抄紙工程で各種機械に付着してピッチトラブルの原因になり、フェルト寿命の低下、断紙や生産性の低下や、オイルスポットが発生するなどの問題が更に大きくなってきている。これらアニオントラッシュは負に帯電しているため、カチオン性の強い薬剤ではアニオントラッシュとコンプレックスを形成して十分な嵩高効果が得られないとともに、コンプレックスがピッチとして存在してオイルスポットなどの汚染原因となり工程トラブルを発生するという問題点があった。また、抄紙系内での分散粒子が大きい場合には均一付着性に欠け嵩の効果が出にくく、分散粒子も凝集しやすいためピッチとして存在した場合には汚染源となりやすいという問題もあった。
【0006】
一方、特許文献4の紙密度調整剤は紙類の嵩を高める効果があり、且つ紙力低下が少ないという特徴を有するものの、抄紙系内への分散性に乏しく、使用に際しては充分に攪拌するなどして均一分散させる必要があった。紙密度調整剤の分散状態が不充分であると、紙密度調整剤の粗大粒子が更に凝集し設備等へ付着して汚染の原因となったり、パルプへの均一付着性が低下して紙の嵩を高める効果を発現しにくい上に、付着の偏りが原因で紙力低下や印刷適性の低下が生じるため、更なる改良が求められていた。
【0007】
本発明は上記従来技術の問題を解決するためになされたもので、抄紙工程において古紙パルプ使用量が増加したり、抄紙工程のクローズド化によってアニオントラッシュが増加した場合でも、薬剤の分散性不良やコンプレックス形成による凝集物発生などによる工程トラブルを防ぎ、嵩高で紙力低下並びに印刷適正低下を抑制した低密度の紙類を得ることのできる紙密度調整剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち本発明は、
(1)(A)一級ないし二級アルキロールアミンの窒素に、総炭素数10〜22のアルキレンオキシドが付加したヒドロキシアミン誘導体に、総炭素数2〜4のアルキレンオキシドが2〜100モル付加した、下記一般式(a)、(b)で示される化合物の1種以上と、(B)アルキロールアミド系化合物とを、重量比で、(A):(B)=99.9:0.1〜80.0:20.0の割合で含有することを特徴とする紙密度調整剤組成物、
【0009】
【化1】

【0010】
(2)上記一般式(a)、(b)で示される化合物が、一級ないし二級アルキロールアミンの窒素に、総炭素数10〜22のアルキレンオキシドが付加したヒドロキシアミン誘導体に、プロピレンオキシド2〜50モル付加した化合物である上記(1)の紙密度調整剤組成物、
【0011】
(3)上記一般式(a)、(b)で示される化合物が、一級ないし二級アルキロールアミンの窒素に、総炭素数10〜22のアルキレンオキシドが付加したヒドロキシアミン誘導体に、エチレンオキシド2〜10モル、プロピレンオキシド15〜40モルがランダムまたはブロック付加した化合物である上記(1)の紙密度調整剤組成物、
【0012】
(4)アルキロールアミド系化合物が下記一般式(c)で示される化合物である上記(1)〜(3)のいずれかの紙密度調整剤組成物、
【0013】
【化2】

【0014】
(5)更に脂肪酸及び/又はその塩を、組成物中に0.1〜15.0重量%含有する上記(1)〜(4)のいずれかの紙密度調整剤組成物、
【0015】
(6)1重量%水分散液の分散粒子の粒径(メジアン径)が、製紙系内スラリー温度と同温において、0.5μm〜200μmの範囲である上記(1)〜(5)のいずれかの紙密度調整剤組成物、
を要旨とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の紙密度調整剤組成物は、抄紙マシンやポンプ等の装置の腐食性および汚染を低減し、しかも本発明の紙密度調整剤組成物で処理した紙類は焼却した際に有害な物質を排出する虞がないため、環境汚染問題を生じることもない等の効果を有する。更に、本発明の紙密度調整剤組成物は抄紙系内への分散性が優れるためパルプへの均一な付着性があり、また、古紙パルプの使用量が増加してアニオントラッシュが増加した場合でも、分散性の不良やコンプレックス形成などの凝集物発生による工程トラブルを防ぎ、紙力低下の少ない低密度の紙類を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明において(A)化合物における一般式(a)で示される化合物を構成する一級アルキロールアミン及び一般式(b)中のaが0である場合の化合物を構成する一級アルキロールアミンとしては、例えばモノメタノールアミン、モノエタノールアミン、3−アミノ−1−プロパノール、1−アミノ−2−プロパノール、4−アミノ−1−ブタノール、4−アミノ−2−ブタノール、5−アミノ−1−ペンタノール、6−アミノ−1−ヘキサノール等のモノアルキロールアミン等が挙げられる。また一般式(b)中のaが1である場合の化合物を構成する二級アルキロールアミンとしては、例えばジメタノールアミン、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン等のジアルキロールアミンが挙げられる。上記一級アルキロールアミン、二級アルキロールアミンのなかでも、モノメタノールアミン、モノエタノールアミン、ジメタノールアミン、ジエタノールアミンを用いた一般式(a)、(b)で示される(A)化合物を含む紙密度調整剤組成物が嵩高効果に優れるため好ましいが、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンが原料コスト、効果の点でより好ましい。
【0018】
上記一級ないし二級アルキロールアミンの窒素に付加する総炭素数10〜22のアルキレンオキシドとしては、例えば1,2−エポキシデカン、1,2−エポキシドデカン、1,2−エポキシテトラデカン、1,2−エポキシヘキサデカン、1,2−エポキシオクタデカン、1,2−エポキシエイコサン、1,2−エポキシドコサン等が挙げられる。なかでも1,2−エポキシドデカン、1,2−エポキシテトラデカン、1,2−エポキシヘキサデカン、1,2−エポキシオクタデカンが好ましく、特に嵩高効果が高く、且つ紙力保持率が高いという点では1,2−エポキシヘキサデカン、1,2−エポキシオクタデカンがより好ましい。これら総炭素数10〜22のアルキレンオキシドは、単独で用いても2種類以上混合して用いても良い。総炭素数10〜22のアルキレンオキシドは、窒素に結合した活性水素2個を有する一級アルキロールアミンの場合、該活性水素1個又は2個と置換して窒素に付加し、活性水素1個を有する二級アルキロールアミンの場合、該活性水素1個と置換して窒素に結合する。
【0019】
上記一級ないし二級アルキロールアミンの窒素に、総炭素数10〜22のアルキレンオキシドが付加したヒドロキシアミン誘導体に付加する総炭素数2〜4のアルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド(PO)、ブチレンオキシド(BO)等が挙げられ、2種以上のアルキレンオキシドが付加したものでも良い。異なる2種以上のアルキレンオキシドが付加している場合、ランダムに付加したものでも、ブロック状に付加したものでも良い。
【0020】
一般式(a)、(b)で示される(A)化合物における総炭素数2〜4のアルキレンオキシドの総付加モル数は、上記ヒドロキシアミン誘導体1モル当たり、2モル〜100モルの範囲である。総炭素数2〜4のアルキレンオキシドの総付加モル数が2モル未満では、カチオン性が強くなりすぎアニオントラッシュとコンプレックスを形成して十分な嵩の効果が得られなく、一方100モルを超えて使用しても更なる嵩の向上が認められず、製造に要する時間、コスト等の点で好ましくなく、この中では、総付加モル数が2モル〜50モルの範囲が好ましい。
【0021】
炭素数2〜4のアルキレンオキシドは、一種類のアルキレンオキシドが付加したものの場合、プロピレンオキシド2〜50モル付加したものが抄紙工程における紙力低減を抑制し、分散粒子径の制御が容易である点で好ましい。また異なる2種以上のアルキレンオキシドがブロック状に付加したものが薬剤分散時の粒子径安定化、並びに抄紙系内への分散性向上の効果の点でより好ましい。2種以上の異なるアルキレンオキシドが付加したものとしては、エチレンオキシド2〜10モル、プロピレンオキシド15〜40モルがランダム又はブロック状に付加したものが好ましい。エチレンオキシドとプロピレンオキシドとがブロック状に付加したものの場合、エチレンオキシドをブロック付加した後、プロピレンオキシドをブロック付加したもの、プロピレンオキシドをブロック付加した後、エチレンオキシドをブロック付加したもの、エチレンオキシドをブロック付加した後、プロピレンオキシドをブロック付加し、更にエチレンオキシドをブロック付加したもの等が挙げられるが、これらの形態に限定されるものではない。
【0022】
アルキレンオキシドのブロック付加体の中で、親水性ブロックを形成するエチレンオキシドをブロック付加したのち、疎水性ブロックを形成するプロピレンオキシドをブロック付加したものと、疎水性ブロックを形成するプロピレンオキシドをブロック付加したのち、親水性ブロックを形成するエチレンオキシドをブロック付加したものとを比較すると、親水性ブロックを形成するエチレンオキシドブロックが末端に位置する後者のものは、抄紙系内への分散性に優れるためオイル状の粗大粒子が発生しにくく好ましい。一方、疎水性ブロックのプロピレンオキシドブロックが末端に位置する前者のものは、親水性ブロックのオキシエチレン基を含むため系内で適度な分散状態を保つとともに、更にパルプへの付着性に優れるため歩留まりが向上して効果を充分発揮するため、特に好ましい。エチレンオキシドとプロピレンオキシドからなる場合のアルキレンオキシドの総付加モル数は、エチレンオキシドの付加モル数は2モル〜5モル、プロピレンオキシドの付加モル数は20モル〜30モルの範囲が特に好ましい。
【0023】
一般式(a)、(b)で示される(A)化合物を得る反応方法としては、総炭素数10〜22のアルキレンオキシドを上記一級ないし二級アルキロールアミンの窒素に付加したヒドロキシアミン誘導体は、例えばアルキレンオキシドをアルキロールアミンに滴下しながら100℃〜180℃で混合攪拌することにより、アルキレンオキシドとアルキロールアミンの活性水素との置換反応が起こり容易に得ることができる。一級ないし二級アルキロールアミンの窒素に、総炭素数10〜22のアルキレンオキシドが付加した上記ヒドロキシアミン誘導体に、更に総炭素数2〜4のアルキレンオキシドが付加した一般式(a)、(b)で示される(A)化合物は、例えば上記ヒドロキシアミン誘導体に触媒を加えたのち、窒素置換し100℃〜120℃で1時間程度の減圧脱水を行い、次に、反応温度100℃〜190℃において、1〜4気圧程度の加圧条件下で炭素数2〜4のアルキレンオキシドをヒドロキシアミン誘導体1モル当たり、規定量(アルキレンオキシド2モル〜100モル)付加反応させる等の方法により得ることができる。上記ヒドロキシアミン誘導体に更に総炭素数2〜4のアルキレンオキシドを付加させる際の触媒としては、従来公知の塩基性触媒、ルイス酸触媒、配位触媒等の触媒を用いることができる。中でも、コスト面から塩基性触媒が好ましく、塩基性触媒のなかでも水酸化カリウムがより好ましい。尚、付加反応後に残存する触媒は除去若しくは不活性化することが好ましく、例えば蒸留工程や、酸性白土や合成ケイ酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウムに代表されるシリケート系吸着剤による吸着処理、イオン交換膜等を有した脱塩装置を用いて触媒を除去したり、有機若しくは無機の酸性剤、アルカリ性剤を用いて触媒を中和して不活性化することができる。中でも塩基性触媒を使用する場合には、コスト面、作業性から、シリケート系吸着剤による吸着処理及び/又は蟻酸、酢酸、乳酸などの有機酸を用いて中和することがより好ましい。
【0024】
本発明の紙密度調整剤組成物は、抄紙系内への分散性向上、分散粒子の凝集抑制、更に設備等への付着汚染による工程トラブルを防止する目的で、上記一般式(a)、(b)で示される化合物とともに、アルキロールアミド系化合物を配合しており、このアルキロールアミド系化合物としては、N−ヒドロキシアルキルアルカン(又はアルケン)アミド、N,N−ジ(ヒドロキシアルキル)アルカン(又はアルケン)アミド、N−ヒドロキシアルキルアルカン(又はアルケン)イミド、N−ポリオキシアルキレンアルカン(又はアルケン)アミド、N,N−ジ(ポリオキシアルキレン)アルカン(又はアルケン)アミド、N−ポリオキシアルキレンアルカン(又はアルケン)イミドなどが挙げられ、下記一般式(c)で表される化合物が好ましく用いられる。
【0025】
【化3】

【0026】
上記一般式(c)中、Rは炭素数7〜21のアルキル基又はアルケニル基、nは0または1の整数、AOは総炭素数2〜3のオキシアルキレン基、lは1または2の整数を示す。また上記式中、mはオキシアルキレン基の平均付加モル数で0〜20の整数を示す。一般式(c)で示されるアルキロールアミド系化合物としては、ヤシ油、パーム油等を原料とした植物系脂肪酸、牛脂等を原料とした動物系脂肪酸、或いはそのメチルエステル等を原料に、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンとの反応後、必要に応じてオキシアルキレン基を付加するなどの公知の方法により製造することができる。総炭素数2〜3のアルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド(PO)が挙げられ、単独でも2種が付加したものでも良い。2種のアルキレンオキシドが付加している場合、ランダムに付加したものでも、ブロック状に付加したものでも良く、アルキレンオキシドとしてはエチレンオキシドがより好ましい。
【0027】
上記一般式(c)で表されるアルキロールアミド系化合物の例を挙げれば、ポリオキシエチレン(5モル)ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド、ポリオキシエチレン(20モル)ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド、ポリオキシエチレン(15モル)牛脂脂肪酸モノエタノールアミド、ポリオキシエチレン(5モル)ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ポリオキシエチレン(20モル)牛脂脂肪酸ジエタノールアミド、ポリオキシエチレン(5モル)ポリオキシプロピレン(3モル)ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド、ポリオキシエチレン(10モル)ポリオキシプロピレン(5モル)牛脂脂肪酸モノエタノールアミドなどを挙げることができるが、これに限定されるものではない。これらアルキロールアミド系化合物の中では、ポリオキシエチレン基の平均付加モル数として2モル〜10モルの範囲のポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸モノエタノールアミドが抄紙系内への分散性の向上、泡立ちなどを誘発せず、操業への悪影響を及ぼさない点で特に好ましい。
【0028】
本発明の紙密度調整剤組成物は、前記一般式(a)及び/又は(b)で示される(A)化合物と、(B)アルキロールアミド系化合物とを、重量比で(A):(B)=99.9:0.1〜80.0:20.0で含有する。(B)の割合が0.1未満だと抄紙系内への分散性が不十分となり、粗大粒子が更に凝集し設備等へ付着し汚染することを抑制する効果も不十分であり、20.0を超えると抄紙系内への分散性の付与、分散粒子の凝集及び設備等への付着を抑制する効果という点では好ましいが、分散粒子が細かくなりすぎ、パルプへの付着性が低く、歩留まりが低下し、紙の嵩を高める効果を発現しにくい点で好ましくない。(A)と(B)の比率は、(A):(B)=99:1〜85:15がより好ましい。
【0029】
本発明の紙密度調整剤組成物には、更に脂肪酸及び/又はその塩を組成物中に0.1〜15.0重量%含有せしめて使用することができる。脂肪酸やその塩は飽和、不飽和、直鎖、分岐鎖の脂肪酸の何れでも良い。脂肪酸やその塩としては、総炭素数8〜22のものが好ましく、炭素数8〜22の脂肪酸としては、例えばカプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸等の天然系直鎖飽和脂肪酸、ミリストレイン酸、オレイン酸、エルカ酸、リノール酸、リノレイン酸等の不飽和脂肪酸、イソパルミチン酸、イソステアリン酸等の合成脂肪酸が挙げられる。中でも、常温で液状を呈する脂肪酸が溶解性、保存安定性の点で好ましく、好ましい脂肪酸の例を挙げればオレイン酸、リノール酸、リノレイン酸等の不飽和脂肪酸が、また飽和脂肪酸含有量が少なく不飽和脂肪酸を主成分とした混合脂肪酸類が挙げられる。
【0030】
脂肪酸の塩としては、上記脂肪酸のアルカリ金属塩、アミン類の塩が挙げられる。アルカリ金属塩としては、カリウム塩、ナトリウム塩等が挙げられ、アミン類の塩としては、モノアミン類の塩、ポリアミン類の塩、アルキロールアミン類の塩が挙げられる。中でも溶解性、保存安定性の点でカリウム塩、ナトリウム塩等のアルカリ金属塩、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩等のアルキロールアミン類の塩が好ましい。紙密度調整剤組成物中に更に脂肪酸及び/又はその塩を0.1〜15重量%含有させると、紙密度調整剤組成物に抄紙系内へ適度な分散性を付与し、ピッチ形成を抑制するとともに、パルプへの歩留まりをコントロールできる。脂肪酸及び/又はその塩の紙密度調整剤組成物中への配合割合が0.1重量%未満だと抄紙系内への分散性付与、ピッチ形成抑制の面で不十分となる虞があり、15.0重量%を超えると抄紙系内への分散性の向上、ピッチ形成抑制の効果はあるが、分散粒子が細かくなりすぎ、パルプへの付着性が低く、歩留まりの点で好ましくなく、更に泡立ちなどを誘発し、操業への悪影響を及ぼす虞もある。そのため脂肪酸及び/又はその塩を配合する場合、紙密度調整剤組成物中の割合が1.0〜10.0重量%となるように配合することが、より良い効果を得る上で好ましい。この脂肪酸及び/又はその塩の添加による効果は、特に古紙パルプや機械パルプを含む原料、炭酸カルシウムなどの安い填料を使用して中性からアルカリ性で抄紙する場合に問題となる、微細繊維、填料、添加薬品、樹脂ピッチ、溶出リグニンなどの負に帯電しているアニオントラッシュが多く発生する系において発揮される。脂肪酸及び/又はその塩は、(A)化合物とアニオントラッシュとのコンプレックス形成を抑制し、粗大粒子の発生による系内の汚染を防ぎ、更に抄紙系内への適度な分散性を付与しているものと考えられる。
【0031】
本発明の紙密度調整剤組成物は、通常使用されている各種工程薬剤や操業設備状況を勘案すると、適切なpHとしては1重量%水分散液のpHが4.5〜11.0であることが好ましく、さらに系内に於けるパルプスラリーpHと近似であることが好ましい。pHを調整するためにpH調整剤を配合することができ、pH調整剤としては、溶解性、保存安定性から、酸性剤であれば蟻酸、酢酸、乳酸などの有機酸が好ましく、アルカリ性剤であれば苛性カリ、苛性ソーダ、アルキロールアミン類が好ましい。
【0032】
本発明の紙密度調整剤組成物における紙類の嵩を向上する効果は、主として一般式(a)、(b)で示される(A)化合物によるものと考えられるが、紙類の嵩を向上する効果はこれらの化合物がパルプに付着し、疎水性効果でパルプ間の水素結合を阻害し、パルプ間の凝集を防ぐことによるものであると考えられる。この性能を効果的に発現するためには、紙密度調整剤のパルプ表面への均一付着性が必要となる。アルキロールアミド系化合物、更に脂肪酸及び/又はその塩を配合することによって相互的に働き、適度な分散性が付与され、抄紙系内への均一分散効果及びパルプへの均一付着性が向上した結果、紙類に対してより高い嵩を与える効果が発揮されるものと推測される。
【0033】
本発明の紙密度調整剤組成物を用いて低密度の紙類を得るには、系内に於ける紙密度調整剤組成物の分散性を制御する必要がある。ここで言う分散性の指標を挙げるとすれば、紙密度調整剤組成物の分散粒子の粒径が最適である。抄紙工程の多くはパルプスラリー温度15〜40℃、pH4.5〜11.0で操業を行っており、該条件下で効果的に紙密度調整剤組成物が機能するには、紙密度調整剤組成物の1重量%水分散液における分散粒子の粒径(メジアン径)が0.5μm〜200μmの範囲にあることが、抄紙系内への分散性が良く、分散粒子の凝集及び設備等への付着を抑制する点で好ましい。0.5μmを下回ると、系内への分散性に優れ、分散粒子の凝集及び設備等への付着による汚染を防ぐという面では望ましいが、粒径が細かすぎるためパルプへの歩留まりが低下する。換言すれば、パルプへの付着性が低下して効果に乏しくなるため、紙密度調整剤組成物の抄紙系への添加量が多く必要となり、コスト高になるという問題がある。また、200μmを超える場合には、系内の分散粒子が粗大粒子化しやすくなり、パルプへの均一付着性が低く、且つ粒子が凝集して設備等へ付着した場合、汚染が発生しやすく操業上問題となる。特に、分散粒子の粒径が10μm〜150μmの範囲となる場合、系内への適度な分散性、系内への付着物発生の抑制、パルプへの均一付着性に優れ、歩留まりも向上して、結果として紙の嵩を高める効果という点でより好ましい。ここで、紙密度調整剤組成物の分散性の制御及び指標を行うには、紙密度調整剤組成物は物性上、実際の操業におけるパルプスラリーpH、物理的剪断力や特にパルプスラリー温度の影響を受けるため、以下の内容を加味することが好ましい。pHはpH7を中心として酸性若しくはアルカリ性が強くなるほど粒径は若干小さくなる傾向がある。本発明の紙密度調整剤組成物は、通常操業のpH4.5〜11.0の範囲であれば特に問題はなく、必要に応じてpH調整剤により範囲内に調整し、さらに好ましくは該パルプスラリーpHと近似にする。あるいは紙密度調整剤組成物中の(B)アルキロールアミド系化合物、更には必要に応じて添加する脂肪酸、脂肪酸塩の配合比を減少させることも1つの方法である。物理的剪断力は撹拌、移送、循環などに係る工程設備に起因し、一般に剪断力が高い場合はより小さい粒径に、剪断力が低い場合はより大きい粒径になる傾向がある。本発明の紙密度調整剤組成物は、系内への分散性向上、分散粒子の凝集抑制が図られているので、剪断力が低い場合や通常操業されている工程設備では影響はなく、むしろ特に高い剪断力を有する設備にのみ注意が必要となる。この場合、紙密度調整剤組成物中の(B)アルキロールアミド系化合物や、脂肪酸、脂肪酸塩の配合比を減少させたり、工程設備の仕様を基に撹拌、循環などの速度を制御し、剪断力を適宣調整する。あるいは工程設備の仕様を基に紙密度調整剤組成物の添加箇所を適宣選定することも1つの方法である。このようにしてpH及び物理的剪断力による分散性への影響を回避することにより、紙密度調整剤組成物の均一分散効果及びパルプへの均一付着性が得られ、結果として嵩高で紙力低下並びに印刷適正低下を抑制した低密度の紙類を得ることができる。一方パルプスラリー温度は通常15〜40℃の範囲であり、紙密度調整剤組成物の温度特性は、25℃での分散粒子の粒径に比較し、高温側ではより大きい粒径に、低温側ではより小さい粒径になる特性を有するため、該温度での分散粒子の粒径を0.5μm〜200μmの範囲とすることが好ましい。この場合、例えば紙密度調整剤組成物を高温側ではより親水性化し、低温側ではより疎水性化とする親水性あるいは疎水性のバランス化を図るべく、上記一般式(a)、(b)で示される(A)化合物、(B)アルキロールアミド系化合物、脂肪酸、脂肪酸の塩やこれらの配合比を適宜調整して、パルプスラリー温度での分散粒子の粒径を0.5μm〜200μmの範囲に保つことにより、上記一般式(a)、(b)で示される(A)化合物が本来有している、紙に対して高い嵩を与える効果を損なうことなく、抄紙系内において安定に効果を発現し続けることができる。尚、上記分散粒子の粒径(メジアン径)は、以下の条件で測定した値である。
【0034】
分散粒子の粒径(メジアン径)測定条件:
本発明の紙密度調整剤組成物が1重量%となるように、必要に応じてはpH調整剤によりpH4.5〜11.0の範囲に調整し、系内パルプスラリーと同温度の水道水中でプロペラ型3枚羽根を有する撹拌機(スリーワンモータtype1200G:新東科学(株)製)により、回転数250rpmで3分間撹拌分散させた。この紙密度調整剤組成物の1重量%水分散液における分散粒子の粒径を、株式会社堀場製作所製レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA−910で測定した値(メジアン径、相対屈折率:1.30、粒子径基準:体積)である。
【0035】
本発明の紙密度調整剤組成物は、例えば抄紙前のパルプスラリーが攪拌されている高濃度チェスト、ミキシングチェスト、マシンチェストあるいはアプローチパート系の種箱、ファンポンプやクローズド化された抄紙工程における白水循環用のワイヤーピットなどに原液又は水分散液として直接添加することにより、パルプに均一に添加することができ、紙類の嵩を高めることができる。本発明の紙密度調整剤組成物をパルプスラリー中に添加する場合は、パルプ原料乾燥重量の0.01〜2重量%の添加量が好ましい。パルプ原料としては、針葉樹系パルプ、広葉樹系パルプ、化学パルプ化法パルプ、セミケミカルパルプ、機械パルプ、古紙パルプ等のいずれも使用することができる。本発明の紙密度調整剤組成物はヴァージンパルプ、古紙パルプのいずれに対しても優れた嵩高効果を発揮し、またクローズド化された抄紙工程において用いても、オープンな抄紙工程において用いても、優れた嵩高効果が発揮されるが、従来の紙密度調整剤により嵩高性が付与され難い古紙パルプを含むクローズド化された抄紙工程においても、優れた嵩高性付与効果が発揮される。本発明の紙密度調整剤組成物中には、その効果を阻害しない範囲で柔軟性、嵩高性などを付与する目的で必要に応じて非イオン系界面活性剤、陰イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、両性系界面活性剤、高分子系界面活性剤など他の界面活性剤を添加することができる。また、アルキルケテンダイマー、ロジン、澱粉などのサイズ剤、紙力増強剤、濾水性向上剤、歩留まり向上剤、填料、スケール防止剤、消泡剤等、一般的に使用される抄紙工程用薬剤を併用することもできる。更に、本発明の紙密度調整剤組成物は、使用環境特性や紙類の用途において要求される嵩高性以外の印刷特性等の他の特性に応じて適宜選択し、もしくは2種以上を配合して用いることもできる。
【実施例】
【0036】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。実施例、比較例で用いた(A)化合物は表1の通りである。表1においてオキシアルキレン基(炭素数2〜4のアルキレンオキシドの種類)はオキシプロピレン基をPO、オキシエチレン基をEOで示す。又、オキシアルキレン基のブロック付加物の付加順序は記載順通りである。
【0037】
【表1】

【0038】
実施例、比較例で用いた(B)アルキロールアミド系化合物は以下の通りである。
アミドA:ポリオキシエチレン(10モル)ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド
アミドB:ポリオキシプロピレン(2モル)ポリオキシエチレン(12モル)牛脂脂肪酸モノエタノールアミド
アミドC:ポリオキシエチレン(2モル)ヤシ脂肪酸モノエタノールアミド
【0039】
実施例、比較例で用いた脂肪酸は以下の通りである。
脂肪酸A:オレイン酸73%、リノール酸16%、リノレイン酸1%、炭素数12から18の飽和脂肪酸10%の常温液体の混合脂肪酸
脂肪酸B:オレイン酸68%、リノール酸23%、リノレイン酸4%、炭素数16から18の飽和脂肪酸5%の常温液体の混合脂肪酸
【0040】
実施例1〜11、比較例1〜10
試験1(古紙脱墨パルプ:DIP・中性及び酸性抄紙系対応)
パルプ原料として、クローズド化抄紙工程採用の製紙メーカーより提供された工程薬剤の含まれる約3%の古紙パルプスラリー(スラリーpH:5.3)を用いて、坪量60g/mの紙シートが得られるように調整した。このパルプスラリーを25℃でプロペラ型3枚羽根を有する撹拌機(スリーワンモータtype1200G:新東科学(株)製)により回転数250rpmで攪拌しながら、パルプスラリー中のパルプ原料乾燥重量に対して、紙密度調整剤組成物が0.6重量%に相当する表2に示す1重量%水分散液、サイズ剤(アルキルケテンダイマー系)を1.0重量%添加し3分間撹拌後、120メッシュワイヤーを備えた角型タッピ抄紙機で試験紙を作成し圧搾後、100メッシュの濾布で挟み、鏡面ドライヤーを用い、105℃で3分間乾燥した。乾燥した紙シートを25℃、湿度40%の条件下で24時間調湿した後、紙密度(嵩高性)、紙力残存率(紙力強度)、アニオントラッシュ分散性、表面紙力強度の測定、試験紙の状態の確認を以下の方法で行った。嵩高性、紙力残存率の測定値は10回の測定、アニオントラッシュ分散性、表面紙力強度の確認は5回の測定の平均値評価である。結果を表3に示す。尚、表2には紙密度調整剤組成物の1重量%水分散液のpH、メジアン径及び分散状態を以下のようにして評価した結果をあわせて示す。
【0041】
1重量%水分散液の分散状態:
抄紙系内への薬剤分散性が低いとパルプへの付着に偏向が生じ、嵩高性能発現の低下やオイルスポットの発生に繋がる。又、分散性が高すぎても歩留まり及び性能発現の低下を生じる。このため実施例及び比較例に用いた紙密度調整剤組成物の1重量%水分散液の分散状態を目視確認し、結果を以下の通りに区分した。
◎:メジアン径10μm〜150μmで静置しても安定な粒子を保つもの。
○:メジアン径10μm〜150μmで静置すると若干の油浮きを生じるもの。
△:メジアン径10μm未満又は150〜200μmで静置後10分以上分散状態を保てるのもの。
×:可溶化、又はメジアン径200μmを超えるもの、若しくは静置すると10分以内に分離を生じるもの。
【0042】
【表2】

【0043】
紙密度(嵩高性)(g/cm):
JIS P8118−1998「紙及び板紙の厚さと密度の試験方法」に基づき、調湿後の紙シートの坪量(g/m)と自動昇降式紙厚計TM−600(熊谷理機工業(株))により厚み(mm)を測定し、下記式(1)により密度(g/cm)を求めた。尚、厚みは紙シート毎に24点計測し、平均値を用いた。密度が小さい程、嵩高である。
(数1)
紙密度=坪量÷厚み×0.001 (1)
【0044】
嵩高率(%)
求められた紙密度から下記式(2)より嵩高率を算出した。ブランク(薬剤未使用で抄紙したもの)の嵩高率を100とする。
(数2)
嵩高率=試験紙の紙密度÷ブランクの紙密度×100 (2)
【0045】
紙力残存率(%):
調湿後の紙シートから2.5cm×10cmの大きさの試験片10枚を切り出し、ユニトロン引張り試験機((株)上島製作所)により、紙力強度(引張強さ)を測定した。10枚の試料について平均した値を平均紙力強度として求め、ブランク(薬剤未使用で抄紙したもの)の紙力強度を100とし、下記式(3)より紙力残存率を算出した。
(数3)
紙力残存率=試験片の平均紙力強度÷ブランクの平均紙力強度×100 (3)
【0046】
アニオントラッシュ分散性:
アニオントラッシュ分散性が悪いと、紙シートの色差が低下するため、調湿後の紙シートから20cm×20cmの大きさの試験片を切り出し、5cm×5cmの大きさまで4回折りたたみ、色差計(日本電色工業株式会社製)にて明度、白度、黄色度を測定し、各5枚の平均値から以下のように総合的に評価した。
◎:明度74以上、白度45以上、黄色度28未満。
○:明度72以上74未満、白度43以上45未満、黄色度28以上30未満。
△:明度70以上72未満、白度41以上43未満、黄色度30以上32未満。
×:明度70未満、白度41未満、黄色度32以上
【0047】
表面紙力強度:
薬剤の均一付着性能が低いと抄紙時に薬剤付着量の濃淡を生じ、オイルスポットや局部的な紙力低下に繋がり、更に印刷時にはこの部分から膨れや破れ、紙剥けが起こり印刷適正を阻害する。そこでJAPAN TAPPI紙パルプ試験方法No.1:2000「紙及び板紙−ワックスによる表面強さ試験方法」に基づいて、ワックスピックテストを行った。調湿後の紙シートを平らなテーブルの上に紙を10枚重ねた上に載せ、アルコールランプで溶かしたワックス棒を紙シート表面に立てて、15分間徐冷した後、ワックス周辺の紙を押え板で押さえ、ワックスを垂直に引き剥がした。引き剥がしたワックス先端と紙シートを調べ、紙シート表面に膨れ、破れ、紙剥けが起こらない最も高いワックス番号を記録し、以下のように総合して評価した。尚、各薬剤を添加した紙シートについて5枚ずつ試験を行い、ブランクについてはワックス番号を表記した。
◎:ブランクと同じワックス番号において変化の無いもの
○:ブランクと同じワックス番号だが若干の毛羽立ちを生じるもの
△:ブランクよりも1つ低いワックス番号のもの
×:ブランクよりも1つ低いワックス番号で若干の毛羽立ちを生じるもの、又はそれ以下のもの
【0048】
試験紙の状態:
調湿後の紙シートの性状を、紙厚測定と目視判定から以下の通りに評価を行った。
◎:紙厚測定時に全体が均一なもの(紙厚の測定幅が平均値の±5%以内)
○:紙厚測定時に全体がほぼ均一なもの(紙厚の測定幅が平均値の±10%以内)
△:局所的な紙厚の偏向が見られるもの(紙厚の測定幅が平均値の±11%以上)
×:オイルスポットを生じているもの。
【0049】
【表3】

【0050】
試験2(古紙脱墨パルプ:DIP・アルカリ性抄紙系対応)
パルプ原料として、クローズド化抄紙工程採用の製紙メーカーより提供された工程薬剤の含まれる約3%の古紙パルプスラリー(スラリーpH:10.0)を用いて、試験1と同様にして抄紙し、乾燥、調湿後、測定及び評価を行った。結果を表4に示す。
【0051】
【表4】

【0052】
試験3(広葉樹漂白クラフトパルプ:LBKP)
パルプ原料として、製紙メーカーより提供された工程薬剤の含まれる約3%のLBKPパルプスラリー(スラリーpH:5.5)を用いて、試験1と同様にして抄紙し、乾燥、調湿後、紙密度(嵩高性)、紙力残存率(紙力強度)、表面紙力強度測定、試験紙の状態の確認を試験1と同様にして行った。結果を表5に示す。
【0053】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)一級ないし二級アルキロールアミンの窒素に、総炭素数10〜22のアルキレンオキシドが付加したヒドロキシアミン誘導体に、総炭素数2〜4のアルキレンオキシドが2〜100モル付加した、下記一般式(a)、(b)で示される化合物の1種以上と、(B)アルキロールアミド系化合物とを、重量比で、(A):(B)=99.9:0.1〜80.0:20.0の割合で含有することを特徴とする紙密度調整剤組成物。
【化1】

【請求項2】
上記一般式(a)、(b)で示される化合物が、一級ないし二級アルキロールアミンの窒素に、総炭素数10〜22のアルキレンオキシドが付加したヒドロキシアミン誘導体に、プロピレンオキシド2〜50モル付加した化合物である請求項1記載の紙密度調整剤組成物。
【請求項3】
上記一般式(a)、(b)で示される化合物が、一級ないし二級アルキロールアミンの窒素に、総炭素数10〜22のアルキレンオキシドが付加したヒドロキシアミン誘導体に、エチレンオキシド2〜10モル、プロピレンオキシド15〜40モルがランダムまたはブロック付加した化合物である請求項1記載の紙密度調整剤組成物。
【請求項4】
アルキロールアミド系化合物が下記一般式(c)で示される化合物である請求項1〜3のいずれかに記載の紙密度調整剤組成物。
【化2】

【請求項5】
更に脂肪酸及び/又はその塩を、組成物中に0.1〜15.0重量%含有する請求項1〜4のいずれかに記載の紙密度調整剤組成物。
【請求項6】
1重量%水分散液の分散粒子の粒径(メジアン径)が、製紙系内スラリー温度と同温において、0.5μm〜200μmの範囲である請求項1〜5のいずれかに記載の紙密度調整剤組成物。

【公開番号】特開2009−102762(P2009−102762A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−274569(P2007−274569)
【出願日】平成19年10月23日(2007.10.23)
【出願人】(000114318)ミヨシ油脂株式会社 (120)
【Fターム(参考)】