説明

紙幣処理装置

【課題】1つの収納庫が満杯となった時の紙幣の回収作業で一時的に動作が停止する頻度を低下させる手段を提供する。
【解決手段】表示操作部15によって収納庫8a〜8dの内の収納庫8dを入金取引処理で投入された全金種の紙幣を収納する全金種貨幣収納庫とする入力がなされた場合、入金取引処理で紙幣受入部2に投入された紙幣を収納するとき、その紙幣の金種が収納庫8aに収納する紙幣であるが、その収納先である収納庫8aが既に満杯となっている場合に、紙幣を収納庫8dに収納することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金融機関等に設置される紙幣処理装置に関するものであり、特に紙幣を収納する各収納庫の運用を装置の用途に応じて変更する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の紙幣処理装置は、入金取引時に入出金口に投入された紙幣を一枚ずつ分離し、メイン紙幣搬送路によって紙幣判別部に搬送し、紙幣判別部で真偽や金種を判定して正券であった紙幣を一時保管庫に一時保管し、入金取引が成立したときに、一時保管している紙幣を再度判定してから、リサイクル庫や、リジェクト庫、あるいは紙幣を金種ごとに分けて収納する構造の入金庫の何れかに搬送して収納している(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−11237号公報(段落「0033」、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の技術においては、入金庫、リサイクル庫、リジェクト庫を設けているが、各庫についての使用用途を変更することができない。その一方で自動取引装置はその設置地域によって顧客との各種取引の頻度が異なっており、入金取引が多い地域では例えば1万円札のような入金される頻度が高い紙幣を収納する入金庫の1箇所だけが満杯となり、他の箇所が満杯の状態で無いにも関わらず、その1箇所からの紙幣の回収作業が必要となって自動取引装置を停止させなくてはならなくなり、業務効率が低下してしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、上記の問題点を解決するための手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために、入金取引で顧客が投入した貨幣を受け入れると共に出金取引で顧客に払出す貨幣を集積する貨幣受入部と、該貨幣受入部に投入され出金取引で使用しない金種の貨幣を収納する出金不可紙幣収納庫と、出金取引に使用する金種の貨幣を金種ごとに収納する複数の収納庫と、係員が入力操作を行う操作部とを有する自動取引装置であって、前記操作部によって、前記複数の収納庫の内の特定の収納庫に対し、収納する貨幣の金種を変更する入力がなされたとき、その入力内容を記憶する記憶手段を有し、該記憶手段に記憶した内容に従って、貨幣を指定された収納先に収納することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
これにより、本発明は、複数ある収納庫の一部に全ての金種の紙幣を収納させることができるようになるので、紙幣の金種に応じた収納先の収納庫が既に満杯であっても、全ての金種の紙幣を収納する収納庫に収納することができるので、収納庫が満杯になったことによる紙幣の回収作業の頻度を減らすことができ、業務効率が向上するという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1の自動取引装置の構成を示す説明図
【図2】実施例1の自動取引装置を示すブロック図
【図3】紙幣の収納を段階的に示す説明図
【図4】実施例3の出金取引処理でリジェクト紙幣を収納する場合の紙幣の流れを示す説明図
【図5】実施例4における顧客が取り忘れた紙幣を収納するまでの動作を示す説明図
【図6】実施例5の出金取引処理で搬送ジャムによる障害復旧後の紙幣の収納動作を示す説明図
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、図面を参照して本発明による自動取引装置の実施例について説明する。
【実施例1】
【0010】
図1は実施例1の自動取引装置の構成を示す説明図である。
【0011】
図1において、1は自動取引装置である。
【0012】
2は紙幣受入部であり、紙幣を集積して収納するための収納空間を有して、その収納空間内に図1における左右方向に移動可能なビルプレス2aと、収納空間内に一部が突出している繰出ローラ2bとを設ける。
【0013】
上記ビルプレス2aと繰出ローラ2b間の空間、つまり図1のビルプレス2aの左側の空間は、自動取引装置1の紙幣投入口から投入された紙幣を収納し、また出金取引処理で顧客へ払い出す紙幣を収納するための収納空間となる。
【0014】
また、図1に示すビルプレス2aの右側の空間は、顧客によって投入された紙幣の内、紙幣鑑別部5で偽券や金種不明と鑑別されたリジェクト紙幣を集積する紙幣返却部6として機能する。
【0015】
紙幣受入部2は、ビルプレス2aと繰出ローラ2bとからなる分離機構を備えており、自動取引装置1の紙幣投入口から投入された紙幣をビルプレス2aによって繰出ローラ2bに押圧し、繰出ローラ2bを回転させることで、紙幣を搬送路3に繰出す機能を有する。
【0016】
3は搬送路であり、紙幣受入部2から繰出された紙幣が自動取引装置1の各部へと至るように延びており、その途中にブレードを複数設けてこのブレードを動かすことで紙幣の搬送方向が切り替わるようになっている。
【0017】
また搬送路3の各所には光学式等の検知センサ4が複数設けられており、この検知センサ4によって搬送されている紙幣を検知する他、重送や搬送ジャム等の搬送エラーを検知する。
【0018】
5は紙幣鑑別部であり、搬送される紙幣の真偽や正損、金種等を鑑別すると共に鑑別した紙幣の枚数を計数する機能を有する。
【0019】
7は一時保留部であり、紙幣鑑別部5で正券と鑑別され、計数された紙幣を集積して一時保留する。また一時保留している紙幣を搬送路3へと繰出す繰出手段を備えている。
【0020】
8は自動取引装置1の筐体から着脱可能な複数の収納庫8a、8b、8c、8dからなる紙幣収納部であり、各収納庫8a、8b、8c、8dには出金取引処理で顧客に払いだす金種の紙幣を一定枚数収納するように構成され、例えば収納庫8a、8bには千円札、収納庫8c、8dには1万円札等のように収納庫ごとに収納する金種が定められている。
【0021】
なお、収納庫8a、8b、8c、8dは全て同一の形状を成すものである。
【0022】
収納庫8a、8b、8c、8dは、収納した紙幣を搬送路3に繰出すための繰出手段を備えている。
【0023】
10はリジェクト紙幣収納庫(リジェクト貨幣収納庫)であり、収納庫8a、8b、8c、8dから出金される紙幣の内、紙幣鑑別部5でリジェクト紙幣(例えば、重送紙幣等)と鑑別された紙幣を収納する。
【0024】
11は取り忘れ紙幣収納庫であり、出金取引処理で顧客に払出すために紙幣受入部2に集積した紙幣の内、顧客が取り忘れて紙幣受入部2に残った紙幣を集積する。
【0025】
そのため、顧客に払出すために紙幣受入部2に集積した紙幣を顧客が取り忘れた場合は、その紙幣を紙幣受入部2から搬送路3に繰出し、搬送路3によって取り忘れ紙幣収納庫11に搬送するようになる。
【0026】
12は損券収納庫(出金不可紙幣収納庫)であり、入金取引処理で顧客により投入されて紙幣鑑別部5で金種を鑑別できたが、出金取引には使用できない程度の損傷やしわ等の欠損がある紙幣(損券という。)を収納する他、入金取引処理で顧客が投入した紙幣の内、出金取引に使用しない例えば、5千円札や2千円札のような入金専用紙幣を収納する。
【0027】
図2は実施例1の自動取引装置を示すブロック図である。
【0028】
13は制御部であり、記憶部14に格納された制御プログラムに従って自動取引装置1の各部を制御し、各種処理を遂行する。
【0029】
また制御部13は、搬送路3に配されている検知センサ4により、収納庫8a〜8d、リジェクト紙幣収納庫10、取り忘れ紙幣収納庫11、損券収納庫12へと搬送された紙幣の枚数を計数する機能を有している。
【0030】
14は記憶部であり、制御プログラムを格納する他、制御部13による処理結果や各収納庫8a〜8dに収納されている紙幣枚数等を記憶する。
【0031】
また、記憶部14は収納庫8a〜8d、リジェクト紙幣収納庫10、取り忘れ紙幣収納庫11、損券収納庫12に収納されている紙幣枚数を記憶するカウンタを有し、制御部13は取り忘れ紙幣収納庫11、損券収納庫12へと搬送される紙幣の枚数を計数し、その計数した値を当該カウンタの値に加えて記憶している。
【0032】
さらに、記憶部14は収納庫8a〜8d、リジェクト紙幣収納庫10、取り忘れ紙幣収納庫11、損券収納庫12に収納できる紙幣の最大枚数を記憶すると共に、その最大枚数と上記のカウンタとに基づく現在の状態から収納可能な紙幣枚数の空き容量を記憶しているものとする。
【0033】
15は表示操作部であり、LCD等の表示画面と、その表面に透明な入力キーを配したタッチパネルや筐体に差し込まれて自動取引装置1の動作モードを切替える監査キー等の操作部とによってなる。
【0034】
表示操作部15は、業務時間中は顧客との取引処理を行うための動作モードであって、その間は入金取引や出金取引等の各種取引キーを配した取引選択画面を表示し、監査キーが回されて金融機関の係員専用の処理を実行するための動作モードに切替えられたときは、自動取引装置1に紙幣の装填や回収等の処理を実行するため、あるいは収納庫8a〜8dに収納する紙幣の金種を変更等の紙幣の収納先を変更するための操作画面を表示し、その操作画面で押下されたキーに定義された情報を受け付ける。
【0035】
上述した構成の作用について説明する。
【0036】
本実施例では、予め係員が表示操作部15によって係員専用の処理を実行するための動作モードに切替えて、表示操作部15により収納庫8dを全ての金種の紙幣を収納する全金種紙幣収納庫とする入力操作を行ったものとし、その入力操作を制御部13が認識すると、収納庫8dを全ての金種の紙幣を収納する全金種紙幣収納庫とする入力内容を記憶部14に記憶することによって、以降の処理で収納庫8dは全金種紙幣収納庫として運用する。
【0037】
図3は紙幣の収納を段階的に示す説明図であり、(a)は紙幣受入部2に紙幣が投入された様子、(b)は紙幣を一時保留部7に集積した様子、(c)は一時保留部7から収納庫8dに紙幣を搬送した様子を示している。
【0038】
ここでは、収納庫8dに紙幣を収納する場合の動作を示すものであり、既に収納庫8a、8cと損券収納庫12内には紙幣が満杯まで収納されているものとする。
【0039】
自動取引装置1の制御部13は、取引選択画面を表示操作部15に表示して待機しており、顧客が取引選択画面から入金取引キーを押下すると、図示しないカードリーダに顧客の取引カードを挿入させ、取引カードが挿入されたことを認識してから、紙幣受入部2に紙幣を投入するように促す画面を表示操作部15に表示する。
【0040】
顧客は表示された画面に従って図3(a)示すように紙幣を紙幣受入部2に投入する。
【0041】
制御部13は、紙幣受入部2に投入された紙幣を1枚ずつ分離して繰出し、搬送路3によって紙幣鑑別部5に搬送する。
【0042】
制御部13は、紙幣鑑別部5によって紙幣を鑑別し、その鑑別結果から紙幣が正券であることを確認すると、図3(b)に示すように紙幣を一時保留部7に搬送して集積する。
【0043】
制御部13は、紙幣鑑別部5によって正券と鑑別した紙幣の枚数を計数し、その計数した枚数を入金取引前保留枚数として記憶部14に記憶し、記憶した入金取引前保留枚数を読み出し、入金取引前保留枚数と入金取引を行うか否かを問う文言、入金取引の実行有無を入力する“はい”キー、“いいえ”キー等を配した取引確認画面を表示操作部15に表示する。
【0044】
顧客が“はい”キーを押下すると、制御部13は一時保留部7から紙幣を一枚ずつ分離して搬送路3に繰出し、紙幣鑑別部5に搬送する。
【0045】
制御部13は、紙幣鑑別部5によって紙幣が出金取引等で顧客に払出す紙幣として使用できない程の破れや汚れがあるか否かを鑑別し、その鑑別結果から金種は鑑別できるが出金取引には使えない程の汚れ等がある損券は損券収納庫12へと搬送し、一方破れや汚れ等が無い正券は収納庫8a〜8dのいずれかに搬送する。
【0046】
このとき、紙幣の搬送先が図3の収納庫8bのように紙幣が収納されていない箇所へはそのまま紙幣を搬送して収納し、紙幣の搬送先が図3の収納庫8a、8cのように既に満杯となっている場合は収納庫8dに搬送して収納するものとする。
【0047】
具体的には、制御部13は、一時保留部7から分離して紙幣鑑別部5で鑑別した紙幣の金種をもとに、その紙幣の金種に対応する収納庫8a〜8cのカウンタから、紙幣を収納可能な状態であるか否かを判断し、紙幣の搬送先が収納庫8bであって、記憶している収納庫8bのカウンタから満杯で無く、紙幣を収納可能であると判断すると収納庫8bに搬送して収納する。
【0048】
一方、紙幣の搬送先が例えば既に満杯となっている収納庫8aの場合には、記憶部14に記憶している収納庫8aのカウンタから紙幣の収納が不可であると判断し、次に収納庫8dのカウンタから収納庫8dに紙幣を収納可能であることを確認して、収納庫8dに紙幣を搬送して収納する。
【0049】
このようにして、収納庫8aのように既に満杯の収納庫に収納される紙幣を、本実施例で全ての金種を収納するものとして設定された収納庫8dに搬送するようにしている。
【0050】
また、一時保留部7から分離して紙幣鑑別部5で鑑別した紙幣が、出金取引には使用できない程度の損傷やしわ等がある損券のために損券収納庫12に収納する紙幣であるが、損券収納庫12が既に満杯となっている場合には収納庫8dに搬送して収納するようにする。
【0051】
以上説明したように、本実施例は、複数の収納庫の内1つを、全ての金種の紙幣を収納する全金種紙幣収納庫とし、予め定めた金種の紙幣を収納する他の収納庫が満杯のために、収納できない紙幣があるときは、当該紙幣を全金種紙幣収納庫とした収納庫に収納するので、特定の金種の紙幣の収納庫だけが満杯となって係員が満杯となっている収納庫から紙幣の回収作業を行うことによって、自動取引装置が一時的に停止することを減らすことができ、業務効率を向上させることができる。
【0052】
また、損券収納庫が満杯となっている場合にも、全金種紙幣収納庫とした収納庫に出金取引には使用できない損券を収納することからも、損券収納庫の満杯によって一時的に動作を停止することを無くすことができ、業務効率を向上させることができる。
【実施例2】
【0053】
本実施例の自動取引装置の構成は上記実施例1と同様であるが、本実施例では、収納庫8a〜8dの内の2つの収納庫を入金専用紙幣を収納する入金紙幣収納庫(入金貨幣収納庫)とした点が実施例1と相違する。
【0054】
本実施例では予め係員が表示操作部15によって係員専用の処理を実行するための動作モードに切替えて、例えば各収納庫8a〜8dに収納する紙幣を決定するための入力操作で収納庫8cに収納する紙幣を2千円札、収納庫8dに収納する紙幣を5千円札とする入力を行っているものとする。
【0055】
そして制御部13はその入力された内容を記憶部14に記憶することで、以降の処理において、収納庫8c、8dを入金専用紙幣を収納する入金紙幣収納庫と運用する。
【0056】
入金取引処理を行う場合、制御部13は紙幣受入部2に投入された紙幣を1枚ずつ分離して繰出し、搬送路3によって紙幣鑑別部5に搬送する。
【0057】
制御部13は、紙幣鑑別部5によって紙幣を鑑別し、その鑑別結果から紙幣が正券であることを確認すると、紙幣を一時保留部7に搬送して集積する。
【0058】
制御部13は、上記実施例1の取引確認画面を表示操作部15に表示し、顧客により“はい”キーが押下されたときに、一時保留部7から紙幣を一枚ずつ分離して搬送路3に繰出し、紙幣鑑別部5に搬送する。
【0059】
制御部13は、紙幣鑑別部5によって紙幣が出金取引等で顧客に払出す紙幣として使用できない程の破れや汚れがあるか否かを鑑別し、その鑑別結果から金種は鑑別できるが出金取引には使えない程の汚れ等がある損券は損券収納庫12へと搬送し、一方破れや汚れ等が無い正券は収納庫8a〜8dのいずれかに搬送する。
【0060】
このとき、紙幣が入金専用紙幣である2千円札のときは収納庫8cに搬送し、入金専用紙幣である5千円のときは収納庫8dに搬送してそれぞれの紙幣を収納する。
【0061】
以上説明したように、本実施例では、入金取引が多い店舗で出金取引に用いない2千円札や5千円札のような入金専用紙幣を損券収納庫に収納したときに、損券収納庫が直ぐに満杯となってしまうような場合に2つの収納庫を入金専用紙幣を収納するようにし、一方には2千円札を収納し、他方に5千円札を収納するようにすることで、損券収納庫が満杯になることで、係員が紙幣の回収作業を行うために、自動取引装置が一時的に停止することを減らすことができ、業務効率を向上させることができる。
【0062】
また、損券収納庫に収納した場合には複数の金種の紙幣を混在させて収納しているために、締め上げ処理時に紙幣を金種ごとに分ける作業が必要となったが、本実施例では入金専用紙幣を金種ごとに収納庫に収納するので、その分損券収納庫に収納する入金専用紙幣が減り、締上げ処理時に損券収納庫内の紙幣を金種ごとに分ける作業の手間を軽減させることができ、業務効率を向上させることができるという効果が得られる。
【実施例3】
【0063】
本実施例の自動取引装置の構成は上記実施例1と同様であるが、本実施例では収納庫8a〜8dから出金された紙幣の内、リジェクト紙幣と鑑別された紙幣をリジェクト紙幣収納庫10の他に損券収納庫12に収納可能として設定している点が相違する。
【0064】
本実施例では予め係員が表示操作部15によって係員専用の処理を実行するための動作モードに切替えて、損券収納部12に収納する紙幣を決定する入力操作により、損券収納部12に出金取引処理で発生したリジェクト紙幣を収納するための入力を行っているものとする。
【0065】
そして、制御部13はその入力された内容を記憶部14に記憶することで、以降の処理において、出金取引処理で発生したリジェクト紙幣を損券収納部12にも収納するように運用する。
【0066】
本実施例の構成の作用について説明する。
【0067】
図4は実施例3の出金取引処理でリジェクト紙幣を収納する場合の紙幣の流れを示す説明図であり、(a)は収納庫8aから紙幣を繰出す前の様子、(b)は収納庫8aから繰出した紙幣を紙幣受入部と一時保留部7とに搬送した様子、(c)は一時保留部7に集積したリジェクト紙幣の搬送経路、(d)はリジェクト紙幣を搬送した様子を示している。
【0068】
制御部13は表示操作部15に取引選択画面を表示して待機しており、顧客が出金取引キーを押下したとき、出金金額の入力を促す文言とその入力欄、入力のためのテンキー等を配した出金金額入力画面を表示する。
【0069】
顧客が出金金額入力画面に従って出金金額を入力すると、制御部13は入力された出金金額に応じた紙幣の繰出しを開始する。
【0070】
本実施例では収納庫8aから紙幣を繰出すものとし、繰出した紙幣を紙幣鑑別部5に搬送し、紙幣鑑別部5による紙幣の鑑別結果から、正券である場合は紙幣受入部2へと搬送してリジェクト紙幣は一時保留部7に搬送して集積する。これによって図4(a)に示す紙幣が未だ収納庫8aに集積されている状態から、図4(b)に示すように収納庫8a〜繰出された紙幣の内、正券は紙幣受入部2に集積し、リジェクト紙幣は一時保留部7に集積してそれぞれに分けた状態となる。
【0071】
ここで、紙幣受入部2に出金金額分の紙幣を搬送すると、図示しない紙幣受入部2のシャッタ等を開くことで顧客に紙幣を払出すと共に、図示しないプリンタによって出金取引の結果を印字した明細票を排出して出金取引を終了する。
【0072】
次に、制御部13は、一時保留部7に集積したリジェクト紙幣をリジェクト紙幣収納庫10または損券収納庫12に収納するために、記憶部14に記憶しているリジェクト紙幣収納庫10のカウンタからリジェクト紙幣収納庫10内が満杯であるか否かを判断し、リジェクト紙幣収納庫10に空きがあってリジェクト紙幣を搬送できる場合は一時保留部7内の紙幣をリジェクト紙幣収納庫10に搬送して収納する。
【0073】
一方、リジェクト紙幣収納庫10が満杯の場合、図4(c)の矢印で示すようにリジェクト紙幣を損券収納庫12へと搬送する。そして図4(d)に示すように一時保留部7内のリジェクト紙幣を全て損券収納庫12に収納する。
【0074】
以上説明したように、本実施例は、出金取引処理で収納庫から繰出した紙幣を紙幣鑑別部で鑑別し、リジェクト紙幣であった紙幣をリジェクト紙幣収納庫の他、損券収納庫にも収納するようにしたので、通常リジェクト紙幣を収納するリジェクト紙幣収納庫の容量が小さい場合に、すぐにリジェクト紙幣収納庫が満杯になって係員が満杯になったリジェクト紙幣収納庫内のリジェクト紙幣の回収作業を行うために自動取引装置が一時的に停止することが低減し、業務効率を向上させることができるという効果を得ることができる。
【0075】
なお、上記実施例3においては損券収納庫を出金取引処理におけるリジェクト紙幣の搬送先とした場合を例に説明したが、損券収納庫に限らず例えば複数ある収納庫の内、1つを搬送先としてもよく、取り忘れ紙幣収納庫であってもよい。
【実施例4】
【0076】
本実施例の構成は、上記実施例1と同様であるが、取り忘れ紙幣収納庫11の他に損券収納庫12を取り忘れ紙幣の収納先として追加した点が相違する。
【0077】
ここでは、予め係員が表示操作部15によって係員専用の処理を実行するための動作モードに切替えて、取り忘れ紙幣の収納先を設定するための入力操作によって取り忘れ紙幣収納庫11の他に、損券収納庫12にも取り忘れ紙幣を収納させるための入力を行っているものとする。
【0078】
そして制御部13がその入力された内容を記憶部14に記憶することで、以降の処理において、損券収納庫12に取り忘れ紙幣を収納するように運用する。
【0079】
本実施例の構成の作用について、特に出金取引処理で収納庫8a〜8dから繰出した紙幣を紙幣受入部2に集積し、その紙幣を顧客が取り忘れた場合のその後の動作について説明する。
【0080】
図5は実施例4における顧客が取り忘れた紙幣を収納するまでの動作を示す説明図であり、(a)は紙幣が紙幣受入部にある様子、(b)は紙幣が一時保留部にある様子、(c)は一時保留部からの紙幣の搬送経路、(d)は紙幣を一時保留部から損券収納庫に収納した様子を示している。
【0081】
制御部13は、図5(a)に示すように紙幣受入部2のビルプレス2aを繰出ローラ2b側に移動させることで、紙幣受入部2内の紙幣を繰出ローラ2bに押し付け、繰出ローラ2bを回転させることで、紙幣を1枚ずつ搬送路3に繰出してその紙幣を図5(b)に示すように一時保留部7へと搬送する。
【0082】
制御部13は、記憶部14が記憶しているカウンタ等から、取り忘れ紙幣収納庫11と損券収納庫12に現在の状態から収納可能な紙幣枚数の容量を比較し、その比較結果から容量が大きいほうに向って一時保留部7内の紙幣を順次搬送する。
【0083】
ここで、図5(c)に示すように、取り忘れ紙幣収納庫11よりも損券収納庫12の方がより多くの紙幣を収納可能な状態であるときは、制御部13は損券収納庫12に紙幣を搬送するものと判断し、図5(d)に示すように一時保留部7内の紙幣を損券収納庫12に搬送して収納し、顧客の取り忘れ紙幣の収納を終了する。
【0084】
以上説明したように、本実施例では取り忘れ紙幣収納庫に追加して、損券収納庫にも顧客が取り忘れた紙幣を収納することによって、取り忘れ紙幣収納庫が満杯となることで係員が取り忘れ紙幣収納庫内から紙幣の回収作業を行うために、自動取引装置が一時的に停止することが軽減し、業務効率を向上させることができるという効果を得ることができる。
【実施例5】
【0085】
本実施例の自動取引装置1の構成は上記実施例1と同様であるが、収納庫8dと損券収納庫12に収納する紙幣の種類を変更した点が相違する。
【0086】
ここでは、予め係員が表示操作部15の監査キーを回して金融機関の係員専用の処理を実行するための動作モードに切替えた状態で損券収納庫12に収納する紙幣を決定するための入力操作を行い、また収納庫8dに収納する紙幣を決定するための入力操作を行っているものとする。
【0087】
制御部13は入力された内容を記憶部14に記憶することによって、以降の処理において、記憶部14に記憶した内容に従って収納庫8dと損券収納庫12を運用する。
【0088】
本実施例においては、損券収納庫12をリジェクト紙幣収納庫10と同様の用途で用いる、つまり収納庫8a、8b、8c、8dから出金される紙幣の内、紙幣鑑別部5でリジェクト紙幣(例えば、重送紙幣等)と鑑別された紙幣を収納するために運用する。
【0089】
さらに収納庫8dを上記実施例1と同様の全金種紙幣収納庫とするが、これに加えて、入金取引処理で顧客が投入した紙幣と、出金取引処理中に障害が発生して障害復旧後のイニシャル動作で紙幣受入部2に集積した紙幣を収納する際の収納先として運用する。
【0090】
本実施例の構成における入金取引処理で、制御部13は顧客が紙幣受入部2に投入した紙幣を紙幣鑑別部5によって鑑別して正券を一時保留部7に集積した紙幣を収納するときに、一時保留部7内の紙幣を紙幣鑑別部5に搬送して紙幣の鑑別を行い、鑑別結果から紙幣の金種が出金取引処理で使用できる金種(千円、1万円等)の紙幣である場合、その紙幣の収納先となる収納庫8a〜8cが満杯か否かを判断し、満杯では無いときは紙幣を該当する収納庫8a〜8cに収納し、満杯であるときは紙幣を収納庫8dに収納する。
【0091】
また、出金取引処理において、制御部13は収納庫8a〜8cから繰出した紙幣の内、紙幣鑑別部5でリジェクト紙幣と鑑別した紙幣を一時保留部7に集積し、顧客への紙幣の払出し後に一時保留部7内の紙幣を収納する場合には取り忘れ紙幣収納庫11か損券収納庫12の何れかに収納するようにする。
【0092】
ここで制御部13は、取り忘れ紙幣収納庫11と損券収納庫12のどちらに収納するかを決定するときに、記憶部14のカウンタによる取り忘れ紙幣収納庫11内の紙幣枚数と損券収納庫12内の紙幣枚数とを比較して決めるようにしてもよく、また取り忘れ紙幣収納庫11に収納可能な紙幣枚数の空き容量と、損券収納庫12に収納可能な紙幣枚数の空き容量とを比較する等して決めるようにしてもよい。
【0093】
ここで、図6は実施例5の出金取引処理で搬送ジャムによる障害復旧後の紙幣の収納動作を示す説明図であり、(a)は搬送ジャム発生後に紙幣を紙幣受入部に搬送した様子、(b)は紙幣を一時保留部に搬送した様子、(c)は紙幣を収納庫8dに搬送した様子を示している。
【0094】
出金取引処理で搬送ジャムが発生して搬送ジャムの原因となった紙幣が係員の手によって取り除かれた後の障害復旧の動作を行う制御部13は、出金取引処理のために収納庫8a〜8cから繰出した紙幣を全て紙幣受入部2に搬送し、図6(a)に示すように紙幣受入部2に集積する。
【0095】
そして、制御部13は、紙幣受入部2内の紙幣を繰出して紙幣鑑別部5に搬送し、紙幣鑑別部5で紙幣を鑑別し、鑑別後に図6(b)に示すように一時保留部7に搬送して集積する。
【0096】
制御部13は、全ての紙幣を一時保留部7に集積すると、本実施例では出金取引処理における障害復旧後の紙幣の収納先を収納庫8dとしていることから、一時保留部7内の紙幣を紙幣鑑別部5によって再度鑑別してその鑑別結果が正券であってもリジェクト紙幣であっても全て収納庫8dに搬送して収納する。
【0097】
以上説明したように、本実施例では損券収納庫には顧客の取り忘れ紙幣や出金取引処理におけるリジェクト紙幣のみを収納するようにしたことによって、損券収納庫内が満杯となる頻度が減る。
【0098】
これによって、通常の各収納庫とリジェクト紙幣収納庫、取り忘れ紙幣収納庫、損券収納庫の各収納庫が係員の手動では内部を開かない構造で、満杯のときには新たに空の収納庫と交換されるような場合、特に損券収納庫が他の収納庫とは内部構造が異なり、交換が面倒な場合に、上述したように損券収納庫が満杯となる頻度が減ることから、損券収納庫を交換する頻度が減ることになるので、係員にとっての利便性が向上するという効果が得られる。
【0099】
なお上述した各実施例においては、紙幣を取扱う場合を例に説明したが、自動取引装置の貨幣としての硬貨を取扱う部位に適用してもよい。
【符号の説明】
【0100】
1 自動取引装置
2 紙幣受入部
2a ビルプレス
2b 繰出ローラ
3 搬送路
4 検知センサ
5 紙幣鑑別部
6 紙幣返却部
7 一時保留部
8 紙幣収納部
8a、8b、8c、8d 収納庫
10 リジェクト紙幣収納庫
11 取り忘れ紙幣収納庫
12 損券収納庫
13 制御部
14 記憶部
15 表示操作部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
入金取引で顧客が投入した貨幣を受け入れると共に出金取引で顧客に払出す貨幣を集積する貨幣受入部と、該貨幣受入部に投入され出金取引で使用しない金種の貨幣を収納する出金不可紙幣収納庫と、出金取引に使用する金種の貨幣を金種ごとに収納する複数の収納庫と、係員が入力操作を行う操作部とを有する自動取引装置であって、
前記操作部によって、前記複数の収納庫の内の特定の収納庫に対し、収納する貨幣の金種を変更する入力がなされたとき、その入力内容を記憶する記憶手段を有し、
該記憶手段に記憶した内容に従って、貨幣を指定された収納先に収納することを特徴とする自動取引装置。
【請求項2】
請求項1に記載の自動取引装置において、
前記記憶手段に記憶した内容が、前記収納庫の1つを入金取引時に投入された全金種の貨幣を混在させて収納する全金種貨幣収納庫とする旨の内容である場合、入金取引で前記貨幣受入部に投入された貨幣を収納するとき、その貨幣の金種が出金取引に使用できる金種であってその収納先である前記収納庫が既に満杯となっている場合に、該貨幣を前記全金種貨幣収納庫に収納することを特徴とする自動取引装置。
【請求項3】
請求項1に記載の自動取引装置において、
前記記憶手段に記憶した内容が、前記複数の収納庫の内の特定の収納庫を、出金取引で使用しない金種の貨幣を収納させる入金貨幣収納庫とし、その入金貨幣収納庫を前記出金取引で使用しない金種に応じた数だけ定める旨の内容である場合に、入金取引時に、前記貨幣受入部に投入された貨幣の金種が出金取引で使用しない金種のとき、その貨幣を前記入金貨幣収納庫に収納することを特徴とする自動取引装置。
【請求項4】
入金取引で顧客が投入した貨幣を受け入れると共に出金取引で顧客に払出す貨幣を集積する貨幣受入部と、該貨幣受入部に投入された貨幣や顧客に払出す貨幣を鑑別する鑑別部と、出金取引に使用する金種の貨幣を金種ごとに収納する複数の収納庫と、出金取引に使用しない金種の貨幣を収納する出金不可貨幣収納庫と、出金取引のときに前記鑑別部で出金できないと鑑別したリジェクト貨幣を収納するリジェクト貨幣収納庫とを有する自動取引装置であって、
前記操作部によって、リジェクト貨幣の収納先を追加する入力がなされたときに、その搬送先となる箇所を記憶する記憶手段を有し、
前記記憶手段に記憶した箇所が、前記出金不可貨幣収納庫である場合、前記記憶手段に前記リジェクト貨幣収納庫に収納されている貨幣枚数に基づく満杯か否かの情報を記憶しておき、
出金取引で発生したリジェクト貨幣を収納するとき、前記記憶手段に記憶している前記リジェクト貨幣収納庫が満杯か否かの情報が満杯である場合、前記リジェクト貨幣を前記出金不可貨幣収納庫に収納することを特徴とする自動取引装置。
【請求項5】
入金取引で顧客が投入した貨幣を受け入れると共に出金取引で顧客に払出す貨幣を集積する貨幣受入部と、該貨幣受入部に投入された貨幣や顧客に払出す貨幣を鑑別する鑑別部と、出金取引に使用する金種の貨幣を金種ごとに収納する複数の収納庫と、顧客が前記貨幣受入部から取り忘れた貨幣を収納する取り忘れ貨幣収納庫と、顧客により投入され出金取引に使用しない金種の貨幣を収納する出金不可貨幣収納庫と、係員が入力操作を行う操作部とを有する自動取引装置であって、
前記操作部によって、取り忘れ貨幣の収納先を追加する入力がなされたときに、その追加先となる箇所を記憶する記憶手段を有し、
前記記憶手段に記憶した箇所が、前記出金不可貨幣収納庫である場合、前記記憶手段に前記出金不可貨幣収納庫に収納されている貨幣枚数に基づく収納可能な貨幣の空き容量と前記取り忘れ貨幣収納庫に収納されている貨幣枚数に基づく収納可能な貨幣の空き容量とを記憶しておき、
出金取引で発生した取り忘れ貨幣を収納するとき、前記記憶手段に記憶している前記取り忘れ貨幣収納庫の空き容量と前記出金不可貨幣収納庫の空き容量とを比較し、空き容量が大きい方に前記取り忘れ貨幣を収納することを特徴とする自動取引装置。
【請求項6】
入金取引で顧客が投入した貨幣を受け入れると共に出金取引で顧客に払出す貨幣を集積する貨幣受入部と、該貨幣受入部に投入された貨幣や顧客に払出す貨幣を鑑別する鑑別部と、出金取引に使用する金種の貨幣を金種ごとに収納する複数の収納庫と、顧客により投入され出金取引に使用しない金種の貨幣を収納する出金不可紙幣収納庫と、係員が入力操作を行う操作部とを有する自動取引装置であって、
前記操作部によって、前記複数の収納庫の内の特定の収納庫と、前記出金不可貨幣収納庫とに収納する貨幣を定める入力がなされたときに、その入力内容を記憶する記憶手段を有し、
前記記憶手段に記憶した内容が、前記特定の収納庫に収納する貨幣を入金取引で投入された貨幣の内、出金取引に使用しない金種の貨幣とする内容で、かつ前記出金不可貨幣収納庫に収納する貨幣を出金取引の際に前記鑑別部で出金できない貨幣と鑑別されたリジェクト貨幣だけとする旨の内容のとき、
入金取引時に顧客により投入された貨幣の内、出金取引に使用しない金種の貨幣を前記特定の収納庫に収納し、
出金取引時に前記鑑別部でリジェクト貨幣と鑑別した貨幣を前記出金不可貨幣収納庫に収納することを特徴とする自動取引装置。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−267151(P2010−267151A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−119188(P2009−119188)
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【出願人】(591089556)株式会社 沖情報システムズ (276)
【Fターム(参考)】