説明

紙幣処理装置

【課題】紙幣を金種ごとに施封して放出口から放出する紙幣処理装置において、複雑な機構を要することなく、紙幣を金種ごとに仕分けて放出できるようにする。
【解決手段】紙幣を金種ごとに集積する集積手段7と、当該集積手段7に集積した紙幣を施封し放出口13から放出する施封手段12と、を備えた紙幣処理装置1において、前記施封手段12にて施封された紙幣束20を、紙幣の金種ごとに設定した放出速度Vに基づいて放出するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金融機関等に設置され紙幣等を取り扱う紙幣処理装置において、紙幣束を金種判別し易いように放出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の紙幣処理装置は、投入部に集積された紙幣を分離して認識部に搬送し、認識部によって紙幣が真券であることを確認すると、その紙幣をさらに一時集積部に搬送して集積して、その一時集積部に紙幣が所定の枚数分集積されると、当該紙幣を搬送手段によって一時集積部から施封部に搬送して、施封部にて紙幣束とし、放出口に放出している(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−66249号公報(段落「0019」−段落「0021」、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の紙幣処理装置では、紙幣束の金種に関わらず放出口から同じように放出しているため、施封して放出する紙幣束の金種が複数あり多量に放出する場合では、放出された複数の紙幣束を金種ごとに整理するのに時間が掛かってしまうという問題があった。
【0005】
また、この整理のための時間を短くするために、金種ごとに整理する複雑な機構を設けると、装置コストが上がってしまうという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前述の課題を解決するため次の構成を採用する。すなわち、紙幣を種類ごとに集積する複数の集積手段と、当該集積手段に集積した紙幣を施封し放出口から放出する施封手段と、を備えた紙幣処理装置であって、前記施封手段にて施封された紙幣束を、紙幣の種類ごとに設定した放出速度に基づいて放出するようにした。
【発明の効果】
【0007】
本発明の紙幣処理機によれば、紙幣を種類ごとに集積する複数の集積手段と、当該集積手段に集積した紙幣を施封し放出口から放出する施封手段と、を備えた紙幣処理装置であって、前記施封手段にて施封された紙幣束を、紙幣の種類ごとに設定した放出速度に基づいて放出するようにしたので、装置コストを高くすることなく、放出された複数の紙幣束を金種ごとに整理する時間を短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1の紙幣処理装置の構成図である。
【図2】実施例1の紙幣処理装置の動作説明図である。
【図3】実施例2の紙幣処理装置の構成および動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係わる実施の形態例を、図面を用いて説明する。図面に共通する要素には同一の符号を付す。
【実施例1】
【0010】
(構成)
図1は実施例1の紙幣処理装置1の概略構成図であり側面図を示す。同図において、1は紙幣処理装置であり、2は紙幣受入部であり、紙幣を集積して収納するための収納空間を有しており、紙幣処理装置1の筐体に設けられた図示しない紙幣投入口に投入された紙幣を受け入れて収納する。
【0011】
紙幣受入部2は、その収納空間にビルプレスを設け、また、収納空間内に一部が突出するように配された繰出ローラを設けていることで、ビルプレスと繰出ローラとで分離機構を構成し、収納した紙幣をビルプレスによって繰出ローラに押圧して繰出ローラを回転させ、紙幣を搬送路に繰り出す機能を有する。
【0012】
3は搬送路であり、紙幣受入部2から繰出された紙幣を紙幣処理装置1の各部へと搬送し、その途中にブレード10を複数設けており、このブレード10を図示しない駆動部により回動させ紙幣の搬送方向を切り替えるようになっている。
【0013】
また、搬送路3の各所には光学式等の検知センサが複数設けられており、この検知センサによって搬送されている紙幣を検知する他、重送や搬送ジャム等の搬送エラーを検知する。
【0014】
4は紙幣鑑別部であり、搬送される紙幣の真偽や正損、金種等を鑑別すると共に鑑別した紙幣の枚数を計数する機能を有する。
【0015】
5は紙幣返却部であり、紙幣鑑別部4で偽券や金種不明と鑑別されたリジェクト紙幣や搬送エラー発生時に搬送路3に繰出されている紙幣等の返却対象の紙幣を集積する。
【0016】
6はオープンポケットであり、紙幣処理装置1の上面に設けられており、結束対象外の金種の紙幣を集積する。なお、図1の実施例1の紙幣処理装置においては、オープンポケット6を2個設けた例を示したが、1つとする場合もあり3つ以上とする場合もある。
【0017】
7a1、7a2、7b〜7dは集積手段としての集積部であり、筐体内に設けられて縦一列に並べられており、それぞれ予め定められた金種の紙幣を一定枚数集積するようになっている。例えば、集積部7a1、7a2に千円札、集積部7b、7c、7dに順に二千円札、5千円札、1万円札を集積するようにする。なお、この集積部についても、本実施例ではその数を5つとしているが、1金種1個の集積部とした4個程度とする場合もあるし、取り扱う量が多い金種の集積部を複数設けるようにした6個以上とする場合もある。
【0018】
8はハンド部であり、筐体内に設けられて垂直方向および水平方向に移動するものとなっており、集積部7a1、7a2、7b〜7dと施封手段としての施封部12との間で紙幣の抜き取りや受け渡し等の移送を行う機能を有する。
【0019】
ハンド部8は、上下動する2枚の可動板を有してその2枚の可動板で紙幣を挟持すると共に、集積部7a1、7a2、7b〜7dから施封部12へと移動することで紙幣の抜き取りを行い、施封部12内で紙幣を挟持した状態から可動板の間隔を広げることで紙幣を後述する上部ベルト12a、下部ベルト12bに受け渡すようになっている。
【0020】
12は施封部であり、ハンド部8から紙幣を引き取って紙テープ等による施封用の帯で紙幣を束ねて紙幣束20を作る機能を有する。
【0021】
また、施封部12内には、ハンド部8から紙幣を受け取る位置から放出口13に向かって延びる上下一対で、かつ平行に配置された上部ベルト12aおよび下部ベルト12bを設けており、この上下のベルト間で紙幣束20を挟持することで、紙幣束20を放出口13から装置外へと放出する。
【0022】
また、16は制御部であり、記憶部17に格納された制御プログラムに従って各部の動作を制御するものである。17は記憶部であり、制御プログラムを格納する他、制御部16による処理結果等を記憶する。
【0023】
18は表示操作部であり、紙幣処理装置1の筐体上部に設けられており、紙幣の施封等の各種処理の選択キー等を配した処理選択画面や、操作案内の画面等を表示する表示画面を備える他、表示画面上にタッチパネルを配し、処理選択画面で入力された内容を受付ける機能を有する。
【0024】
(動作)
以上の構成にて、実施例1の紙幣処理装置は以下のように動作する。なお、本実施例においては、千円札、二千円札、5千円札、1万円札の4種類の金種が混在した複数枚の紙幣が投入され、それらを金種ごとにまとめて施封して放出する例として以下説明する。
【0025】
紙幣処理装置1の制御部16は、表示操作部18に処理選択画面を表示して待機しており、係員によって紙幣の施封を指定する施封処理のキーが押下されると、施封する紙幣の施封枚数等の施封条件を設定するための入力欄やテンキー等を配した条件設定画面を表示する。
【0026】
制御部16は、係員によって入力された施封条件を記憶部17に記憶し、紙幣を紙幣受入部3に投入するように促す画面と共に紙幣の搬送の開始キーを配した紙幣投入指示画面を表示操作部18に表示する。
【0027】
係員は、紙幣投入指示画面に従って紙幣受入部3に紙幣を投入し開始キーを押下する。
制御部16は、開始キーの押下を認識すると、係員により投入された紙幣を分離機構によって1枚ずつ分離して繰出し、繰出した紙幣を搬送路3により紙幣鑑別部4に搬送する。
【0028】
制御部16は、紙幣鑑別部4により紙幣の金種や真偽搬送した紙幣の鑑別を行い、その鑑別から金種が確定した紙幣を搬送路3によって集積部7a1、7a2、7b〜7dの何れかに搬送することによって金種毎に分けて集積する。
【0029】
なお、制御部16は、リジェクト紙幣と鑑別した紙幣を搬送路3によって紙幣返却部5に搬送しリジェクト紙幣を顧客に返却するようにしている。
【0030】
制御部16は、各集積部7a1、7a2、7b〜7dに搬送した紙幣を図示しないセンサによってカウントし、例えば、集積部7a1に紙幣を施封枚数として、例えば100枚分搬送したことを認識したとき、ハンド部8を垂直移動させることにより集積部7a1の側方に位置させてから集積部7a1内に水平移動させ、集積部7a1内の集積紙幣を挟持して集積部7a1の外に水平移動させることにより集積紙幣を抜き取り、挟持している集積紙幣を施封部12に受け渡す。
【0031】
ここで、集積紙幣は、その紙幣短手方向と上部ベルト12aおよび下部ベルト12bによる搬送方向とが一致する向きで施封部12に受け渡されて上部ベルト12aおよび下部ベルト12bによって搬送される。これは施封部12により集積紙幣に巻き付ける施封用の帯は紙幣の短手方向に巻き付けるためであり、後述の施封された紙幣束20は上部ベルト12aおよび下部ベルト12bによって紙幣長手方向の両端部が挟持されて搬送される。
【0032】
次に、制御部16は、集積紙幣を施封部12により紙幣束20に施封すると共に、その紙幣束20の金種に応じて放出速度を変えるために金種に応じた紙幣束放出速度を決定する。この紙幣束放出速度の決定は、例えば、集積部に応じた紙幣放出速度を記憶部17等に格納しておき、抜き取った集積部7a1、7a2、7b〜7dに応じた紙幣束放出速度を抽出するようにすればよい。
【0033】
すなわち、集積部7a1または7a2の集積紙幣を抜き取った場合は、金種は千円であるので、紙幣束20を上部ベルト12aおよび下部ベルト12bより放出口13に搬送し、最も遅い放出速度Vaで装置外に放出する。放出速度Vaで放出された紙幣束20は最も放出速度が遅いのでエリアA(8a)の位置に落下する。
【0034】
同様に、集積部7b、7c、7dの集積紙幣を抜き取った場合は、それぞれ金種は二千円、5千円、1万円であるので、それぞれ速度Vb、速度Vc、速度Vdで装置外に放出され、放出された紙幣束20はエリアB(8b)、エリアC(8c)、エリアD(8d)の位置に落下する。
【0035】
なお、図1に示したように、紙幣処理装置1の放出口13の近傍に放出される紙幣束20を受ける箱を各エリアに用意しておけば、金種ごとに紙幣束20が自動的に仕分けされるので、係員が金種ごとに仕分けをする必要がなくなる。
【0036】
(実施例1の効果)
以上の様に、実施例の紙幣処理装置によれば、金種ごとに設定された放出速度により紙幣束を放出するようにしたので、装置コストを高くすることなく、放出された紙幣束を金種ごとに整理する時間を短くすることができる。
【実施例2】
【0037】
(構成)
実施例2の紙幣処理装置の構成は、図3に示したように実施例1の構成にガイド9を設けた構成としている。その他の構成は、実施例1の構成と同様であるので、簡略化のためにその詳細な説明を省略する。
【0038】
ガイド9は、支点9xを支点として回動可能なガイドであり、金種に応じて9a〜9dに回動し、放出された紙幣が落下する位置を変えられるようになっている。
【0039】
(動作)
以上の構成にて、実施例2の紙幣処理装置は以下のように動作する。この動作を図3の構成および動作説明図および構成が同一の部分については図1の構成図を用いて以下説明する。なお、本実施例においても、千円札、二千円札、5千円札、1万円札の4種類の金種が混在した複数枚の紙幣が投入され、それらを金種ごとにまとめて施封し放出する例として以下説明する。
【0040】
紙幣処理装置1の制御部16は、表示操作部18に処理選択画面を表示して待機しており、係員によって紙幣の施封を指定する施封処理のキーが押下されると、施封する紙幣の施封枚数等の施封条件を設定するための入力欄やテンキー等を配した条件設定画面を表示する。
【0041】
制御部16は、係員によって入力された施封条件を記憶部17に記憶し、紙幣を紙幣受入部3に投入するように促す画面と共に紙幣の搬送の開始キーを配した紙幣投入指示画面を表示操作部18に表示する。すると、係員は、紙幣投入指示画面に従って紙幣受入部3に紙幣を投入し開始キーを押下する。
【0042】
制御部16は、開始キーの押下を認識すると、係員により投入された紙幣を分離機構によって1枚ずつ分離して繰出し、繰出した紙幣を搬送路3により紙幣鑑別部4に搬送する。
【0043】
制御部16は、紙幣鑑別部4により紙幣の金種や真偽搬送した紙幣の鑑別を行い、その鑑別から金種が確定した紙幣を搬送路3によって集積部7a1、7a2、7b〜7dの何れかに搬送することによって金種毎に分けて集積する。
【0044】
制御部16は、各集積部7a1、7a2、7b〜7dに搬送した紙幣を図示しないセンサによってカウントし、例えば、集積部7a1に紙幣を施封枚数として、例えば100枚分搬送したことを認識したとき、ハンド部8を垂直移動させることにより集積部7a1の側方に位置させてから集積部7a1内に水平移動させ、集積部7a1内の集積紙幣を挟持して集積部7a1の外に水平移動させることにより集積紙幣を抜き取り、挟持している集積紙幣を施封部12に受け渡す。
【0045】
ここで、集積紙幣は、その紙幣短手方向と上部ベルト12aおよび下部ベルト12bによる搬送方向とが一致する向きで施封部12に受け渡されて上部ベルト12aおよび下部ベルト12bによって搬送される。
【0046】
制御部16は、集積紙幣を施封部12により紙幣束20に施封すると共に、その紙幣束20の金種に応じた紙幣束放出角度を決定する。この紙幣束放出角度の決定は、例えば、集積部に応じた紙幣放出角度を記憶部17等に格納しておき、抜き取った集積部7a1、7a2、7b〜7dに応じた紙幣束放出角度を抽出するようにすればよい。
【0047】
すなわち、制御部16は、集積部7a1または7a2の集積紙幣を抜き取った場合は、金種は千円であるので、紙幣束20を上部ベルト12aおよび下部ベルト12bより放出口13に搬送し、ガイド9を9aの位置として紙幣を装置外に放出する。この場合、放出速度Vで放出された紙幣束20はガイド9aに沿って放出されるので、エリアA(8a)近傍に落下する。
【0048】
同様に、集積部7b、7c、7dの集積紙幣を抜き取った場合は、それぞれ金種は二千円、5千円、1万円であるので、それぞれガイド9b、9c、9dの位置として紙幣を装置外に放出すると、放出された紙幣束20はエリアB(8b)、エリアC(8c)、エリアD(8d)近傍に落下する。
【0049】
なお、図3に示したように、実施例1と同様、紙幣処理装置1の放出口13の近傍に放出される紙幣束20を受ける箱を各エリアに用意しておけば、金種ごとに紙幣束20が自動的に仕分けされるので、係員が金種ごとに仕分けをする必要がなくなる。
【0050】
以上の実施例の説明では、放出速度を変えず、ガイド9の角度を変えるように説明したが、実施例2のようにガイド9の角度とともに実施例1のように放出速度も金種に応じて変えるようにすれば、さらに落下位置に差異をつけることができ、確実に仕分けすることができる。
【0051】
(実施例2の効果)
以上の様に、実施例2の紙幣処理装置によれば、紙幣放出口近傍にガイドを設け、当該ガイドの角度を金種ごとに変えるようにしたので、簡単な機構で金種ごとに仕分けをすることができ、放出された紙幣束を金種ごとに整理する時間を短くすることができる。
【0052】
《その他変形例》
以上の実施例では、金種を千円札、二千円札、5千円札、1万円札の4種類を例として説明したが、紙幣の金種が少ない場合でも、逆に金種が多い場合でも本発明を適用することができる。また、金種とは別に或いは金種とともに正券、損券に応じて放出速度を変化させるようにすれば、それぞれの落下位置を変えることができ、同様に仕分けの時間を短くすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上述べたように、本発明は、金融機関等に設置され、紙幣等を金種判別に仕分けする紙幣処理装置に広く用いることができる。
【符号の説明】
【0054】
1 紙幣処理装置
4 紙幣鑑別部
7a1、7a2、7b〜7d 集積部
8 ハンド部
9、9a〜9d ガイド
12 施封部
12a 上部ベルト
12b 下部ベルト
13 放出部
16 制御部
17 記憶部
20 紙幣束

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙幣を種類ごとに集積する複数の集積手段と、当該集積手段に集積した紙幣を施封し放出口から放出する施封手段と、を備えた紙幣処理装置であって、
前記施封手段にて施封された紙幣束を、紙幣の種類ごとに設定した放出速度に基づいて放出するようにしたことを特徴とする紙幣処理装置。
【請求項2】
紙幣を種類ごとに集積する複数の集積手段と、当該集積手段に集積した紙幣を施封して放出口から放出する施封手段と、当該放出口近傍に支点を有し上下に回動可能なガイドと、を備えた紙幣処理装置であって、
前記施封手段にて施封された紙幣束を、紙幣の種類ごとに設定したガイドの放出角度に基づいて放出するようにしたことを特徴とする紙幣処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−123573(P2011−123573A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−278901(P2009−278901)
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】