説明

紙幣処理装置

【課題】集積された紙幣間に連続的な隙間を形成し、少なくとも紙幣の自重により生ずる紙幣間摩擦抵抗を大幅に減少させ、安定的に紙幣を一枚ずつ分離して取り込むことを可能にするとともに、集積された紙幣間に連続的な隙間を形成する際の騒音の低減を図ることができる紙幣処理装置の提供。
【解決手段】紙幣保持部56の一部を構成するとともに、蹴出ローラ33,34の繰出ローラ21〜25とは反対側に配置され、紙幣保持部56の紙幣保持面15aより紙幣押圧部55側に突出することで、最も紙幣保持部56側の紙幣と当接可能に設けられる補助ローラ40〜42が、大径部67が周方向に断続的に複数形成された形状をなし、複数が同軸配置されるとともに、隣り合うもの同士が回転方向の位相をずらして離間配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集積された紙幣を一枚ずつ分離して取り込む紙幣処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多量の紙幣等の紙葉類を一枚ずつ分離して装置本体内に取り込む処理を行う装置として、集積された紙葉類間に連続的な隙間を形成し、紙葉類の自重より生ずる紙葉類間の摩擦抵抗を大幅に減少させ、安定的に紙葉類を一枚ずつ分離し搬送する紙葉類分離搬送装置がある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平6−69857号公報(図1、図2、図8)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の紙葉類分離搬送装置は、紙葉類を堆積収納する収納手段と、収納手段に堆積収納された紙葉類をその最下位のものから繰り出す繰出手段と、収納手段に堆積収納された紙葉類の繰出方向上流側を支持する支持手段と、繰出手段により繰出方向下流側にあって、繰出手段によって繰り出される紙葉類を順次一枚ずつ分離搬送する分離搬送手段と、分離搬送手段の駆動力を支持手段に伝達する駆動力伝達手段と、を備えた紙葉類の分離搬送装置において、支持手段は駆動力伝達手段を介して紙葉類の繰出方向に回転駆動させるとともに、各手段は、紙葉類自体の繰出方向の長さをLP、分離手段の分離作用部よりわずかに繰出方向上流側の位置と支持手段の繰出方向下流側の端部との間の距離をLF、収納手段の繰出方向下流側の側面と支持手段の繰出方向下流側の端部との間の距離をLHとしたとき、LP<LFかつLH<LPとなるように配設されるように構成される。
【0005】
このように構成された装置では、集積された紙葉類間に連続的な隙間を形成し、紙葉類の自重より生ずる紙葉類間摩擦抵抗を大幅に減少させ、安定的に紙葉類を一枚ずつ分離し搬送することができる。
【0006】
さらに、紙葉類の支持繰出手段としての支持繰出ローラの外周側に複数個の突起を設けた例によれば、回転軸を駆動することにより、紙葉類の反搬出側には振動が付与され、紙葉類間摩擦抵抗を軽減することができる。
【0007】
しかしながら、紙葉類の支持繰出手段としての支持繰出ローラは、紙葉類の繰出方向と直交する方向に延在し一つのローラとして配設されており、その形状によっては、紙葉類の反搬出側に振動を付与する際に、同時に騒音を生じさせる可能性があった。
【0008】
本発明は、上記問題に鑑みなされたもので、集積された紙幣間に連続的な隙間を形成し、少なくとも紙幣の自重により生ずる紙幣間摩擦抵抗を大幅に減少させ、安定的に紙幣を一枚ずつ分離して取り込むことを可能にするとともに、集積された紙幣間に連続的な隙間を形成する際の騒音の低減を図ることができる紙幣処理装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、開閉両方向に移動可能に支持される紙幣押圧部と、該紙幣押圧部の閉方向移動により押圧される紙幣を保持する紙幣保持部と、最も該紙幣保持部側の紙幣に当接可能な繰出ローラと、該繰出ローラと繰り出す紙幣を挟んで対向配置される分離ローラと、前記紙幣保持部の一部を構成するとともに、前記紙幣保持部の紙幣保持面より前記紙幣押圧部側に突出することで、最も前記紙幣保持部側の紙幣と当接可能に設けられる蹴出ローラと、前記紙幣保持部の一部を構成するとともに、前記蹴出ローラの前記繰出ローラとは反対側に配置され、前記紙幣保持部の紙幣保持面より前記紙幣押圧部側に突出することで、最も前記紙幣保持部側の紙幣と当接可能に設けられる補助ローラとを有し、前記紙幣保持部側の紙幣から紙幣を一枚ずつ分離し繰り出す紙幣分離繰出部と、を備えた紙幣処理装置であって、前記補助ローラは、大径部が周方向に断続的に複数形成された形状をなし、複数が同軸配置されるとともに、隣り合うもの同士が回転方向の位相をずらして離間配置されていることを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記補助ローラは、略正三角形状であり、隣り合うもの同士が互いの回転方向の位相を60度ずらしていることを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記補助ローラは、略正方形状であり、隣り合うもの同士が互いの回転方向の位相を45度ずらしていることを特徴とする。
【0012】
請求項4に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記補助ローラは、略正五角形状であり、隣り合うもの同士が互いの回転方向の位相を36度ずらしていることを特徴とする。
【0013】
請求項5に係る発明は、請求項1乃至4のいずれか一項に係る発明において、前記繰出ローラおよび前記分離ローラの間の分離作用点と、前記蹴出ローラの紙幣に接触する蹴り出し作用点と、前記補助ローラの前記大径部とが、同一直線上に位置可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、蹴出ローラの繰出ローラとは反対側に、大径部が周方向に断続的に複数形成された形状をなす複数の補助ローラが同軸配置されているため、紙幣を効果的に捌くことができる。よって、集積された紙幣間に連続的な隙間を形成し、少なくとも紙幣の自重により生ずる紙幣間摩擦抵抗を大幅に減少させ、安定的に紙幣を一枚ずつ分離して取り込むことが可能となる。また、複数の補助ローラは、隣り合うもの同士が回転方向の位相をずらして離間配置されているため、隣り合う補助ローラ同士が、ずれたタイミングで紙幣に接触することになり、紙幣を捌く効果が増大するとともに、紙幣への接触音を低減できる。よって、集積された紙幣間に連続的な隙間を良好に形成することができ、しかも、その際の騒音の低減を図ることができる。
【0015】
請求項2に係る発明によれば、補助ローラが、略正三角形状であり、隣り合うもの同士が互いの回転方向の位相を60度ずらしているため、隣り合う補助ローラ同士の接触のタイミングを等間隔で離すことができ、紙幣への接触音を確実に低減できる。よって、集積された紙幣間に連続的な隙間を形成する際の騒音の低減を確実に図ることができる。
【0016】
請求項3に係る発明によれば、補助ローラが、略正方形状であり、隣り合うもの同士が互いの回転方向の位相を45度ずらしているため、隣り合う補助ローラ同士の接触のタイミングを等間隔で離すことができ、紙幣への接触音を確実に低減できる。よって、集積された紙幣間に連続的な隙間を形成する際の騒音の低減を確実に図ることができる。
【0017】
請求項4に係る発明によれば、補助ローラが、略五角形状であり、隣り合うもの同士が互いの回転方向の位相を36度ずらしているため、隣り合う補助ローラ同士の接触のタイミングを等間隔で離すことができ、紙幣への接触音を確実に低減できる。よって、集積された紙幣間に連続的な隙間を形成する際の騒音の低減を確実に図ることができる。
【0018】
請求項5に係る発明によれば、繰出ローラおよび分離ローラの間の分離作用点と、蹴出ローラの紙幣に接触する蹴り出し作用点と、補助ローラの大径部とが、同一直線上に位置可能であるため、蹴出ローラと補助ローラとで、紙幣を良好に、繰出ローラおよび分離ローラの間の分離作用点に向け蹴り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る紙幣処理装置の要部を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る紙幣処理装置の要部を示す側断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る紙幣処理装置の補助ローラおよび回転軸を示すもので、(a)は軸方向一側からの側面図、(b)は軸方向逆側からの側面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る紙幣処理装置の補助ローラの変形例を示すもので、(a)は軸方向一側からの側面図、(b)は軸方向逆側からの側面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る紙幣処理装置の補助ローラの別の変形例を示すもので、(a)は軸方向一側からの側面図、(b)は軸方向逆側からの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の一実施形態に係る紙幣処理装置を図面を参照して以下に説明する。なお、以下の説明において、操作者側を「前」、操作者とは反対側を「後」とし、操作者から見て左右を「左右」とする。
【0021】
図1は紙幣処理装置の要部である紙幣受取部11の周辺を示すもので、紙幣受取部11は、装置本体12(図においてはその一部のみ図示している)の前面に設けられて、装填される紙幣を受け取る。なお、紙幣は長手方向を左右方向にして上下方向に集積された状態で紙幣受取部11に装填される。
【0022】
紙幣受取部11は、その下部を構成する紙幣保持板部15と、その後部を構成する紙幣案内板部16と、その左右両側を構成する側壁部17および側壁部18とを有している。
【0023】
紙幣保持板部15は、その上面である紙幣保持面15aが水平に対し若干後下がりに傾斜して配置されている。紙幣保持板部15の紙幣案内板部16側の後部には、その下方に、前後方向および上下方向の位置を合わせて設けられた複数具体的には五個の繰出ローラ21,22,23,24,25を上方に一部突出させる繰出ローラ用開口部26,27,28,29,30が複数具体的には五カ所左右方向に並設されている。
【0024】
また、紙幣保持板部15の繰出ローラ用開口部26〜30より前側には、その下方に前後方向および上下方向の位置を合わせて設けられた複数具体的には二個の蹴出ローラ33,34を上方に一部突出させる蹴出ローラ用開口部35,36が複数具体的には二カ所左右方向に並設されている。
【0025】
また、紙幣保持板部15の蹴出ローラ用開口部35,36より前側には、その下方に前後方向および上下方向の位置を合わせて設けられた複数具体的には三個の補助ローラ40,41,42を上方に一部突出させる補助ローラ用開口部43,44,45が複数具体的には三カ所左右方向に並設されている。
【0026】
ここで、左端の繰出ローラ用開口部26およびその右隣りの繰出ローラ用開口部27の間に左側の蹴出ローラ用開口部35が、右端の繰出ローラ用開口部30およびその左隣りの繰出ローラ用開口部29の間に右側の蹴出ローラ用開口部36が、それぞれ形成されている。また、左側の蹴出ローラ用開口部35よりも左側に左端の補助ローラ用開口部43が、右側の蹴出ローラ用開口部36よりも右側に右端の補助ローラ用開口部45が、両側の蹴出ローラ用開口部35,36の間に中央の補助ローラ用開口部44が、それぞれ形成されている。
【0027】
言い換えれば、左端の繰出ローラ21およびその右隣りの繰出ローラ22の間に左側の蹴出ローラ33が、右端の繰出ローラ25およびその左隣りの繰出ローラ24の間に右側の蹴出ローラ34が、それぞれ配置されている。また、左側の蹴出ローラ33よりも左側に左端の補助ローラ40が、右側の蹴出ローラ34よりも右側に右端の補助ローラ42が、両側の蹴出ローラ33,34の間に中央の補助ローラ41が、それぞれ配置されている。よって、隣り合う補助ローラ40,41の間に蹴出ローラ33が配置され、隣り合う補助ローラ41,42の間に蹴出ローラ34が配置されている。
【0028】
他方、紙幣受取部11の紙幣保持板部15直下の前後方向には、前記紙幣案内板部16を境にその後部に五個の繰出ローラ21〜25が、また、前記紙幣案内板部16の前部に二個の蹴出ローラ33,34が、そしてさらにその前部に三個の補助ローラ40〜42が設けられている。言い換えれば、紙幣受取部11の紙幣保持板部15の直下には、装置前部から見て、三個の補助ローラ40〜42、二個の蹴出ローラ33,34、五個の繰出ローラ21〜25が設けられている。
【0029】
そして、五個の繰出ローラ21〜25と三個の補助ローラ40〜42との間隔は、取り扱う紙幣の中の短手方向の長さが最も短い紙幣の長さよりもわずかに短く設定され、また、五個の繰出ローラ21〜25と二個の蹴出ローラ33,34との間隔は、取り扱う紙幣の中の短手方向の長さが最も短い紙幣の長さの半分程度の長さに設定されている。そしてまた、前記紙幣案内板部16の前面である紙幣案内面16aと二個の蹴出ローラ33,34との間隔は、取り扱う紙幣の中の短手方向の長さが最も短い紙幣の長さのおよそ1/3程度の長さに設定されている。
【0030】
より正確には、五個の繰出ローラ21〜25および後述する四個の分離ローラ57,58,59,60との間の分離作用点Aと三個の補助ローラ40〜42の紙幣に接触する蹴り出し作用点Cとの間隔が、取り扱う紙幣の中の短手方向の長さが最も短い紙幣の長さよりもわずかに短く設定され、また、五個の繰出ローラ21〜25および後述する四個の分離ローラ57〜60との間の分離作用点Aと二個の蹴出ローラ33,34の紙幣に接触する蹴り出し作用点Bとの間隔が、取り扱う紙幣の中の短手方向の長さが最も短い紙幣の長さの半分程度の長さに設定されている。そしてまた、前記紙幣案内板部16の前面である紙幣案内面16aと二個の蹴出ローラ33,34の紙幣に接触する蹴り出し作用点Bとの間隔が、取り扱う紙幣の中の短手方向の長さが最も短い紙幣の長さのおよそ1/3程度の長さに設定されている。
【0031】
紙幣案内板部16は、その前面である紙幣案内面16aが、紙幣保持板部15の繰出ローラ用開口部26〜30の位置の上方に、鉛直に対して上側が若干後側に位置するように傾斜して配置されている。紙幣案内板部16には上下方向に延在するスリット50,51が左右方向に離間して複数具体的には二カ所形成されており、紙幣案内板部16の前側には、図示略の摺動部をこれらスリット50,51内で摺動させながらこれらスリット50,51に沿って移動する紙幣押圧部55が設けられている。
【0032】
紙幣押圧部55は、その下面である紙幣押圧面55aが紙幣保持面15aと平行に配置されており、この状態のまま、紙幣保持板部15の紙幣保持面15aに近接する閉方向と、紙幣保持面15aから離間する開方向の両方に移動可能となるように図示略の摺動部に支持されている。紙幣押圧部55は自重により閉方向に移動することになる。
【0033】
ここで、長手方向を左右方向にして上下方向に集積された状態で紙幣が、紙幣案内板部16の紙幣案内面16aに当接する状態で、紙幣保持板部15の紙幣保持面15aと、紙幣押圧部55の紙幣押圧面55aとの間に装填されることになる。そして、紙幣押圧部55は、自重により閉方向に移動することで、紙幣保持板部15、蹴出ローラ33,34および補助ローラ40〜42の上に載置された紙幣を、これらとの間で保持する。
【0034】
これにより、紙幣保持板部15、蹴出ローラ33,34および補助ローラ40〜42は、受取部11に装填され紙幣押圧部55の閉方向移動により押圧される紙幣を保持する紙幣保持部56を構成している。このように受取部11に紙幣が装填された状態で繰出ローラ21〜25は、最も紙幣保持部56側の紙幣に当接可能となる。蹴出ローラ33,34は、紙幣保持部56の一部を構成するとともに、紙幣保持面15aより紙幣押圧部55側に突出することで、紙幣保持部56に装填された最も紙幣保持部56側の紙幣に当接可能となっている。
【0035】
補助ローラ40〜42は、紙幣保持部56の一部を構成するとともに、蹴出ローラ33,34の繰出ローラ21〜25とは反対側に配置され、紙幣保持面15aより紙幣押圧部55側に突出することで、紙幣保持部56に装填された最も紙幣保持部56側の紙幣の繰出ローラ21〜25とは反対側に当接可能となっている。蹴出ローラ33,34は、紙幣の補助ローラ40〜42よりも繰出ローラ21〜25側に当接可能となっている。
【0036】
また、紙幣案内板部16の後方には、複数具体的には四個の分離ローラ57〜60が左右方向に並設されている。これら分離ローラ57〜60は、紙幣案内部16の前面である紙幣案内面16aの下端部に連続して後方にほぼ90度湾曲するように形成された湾曲ガイド部の分離ローラ用開口部91,92,93,94より、下方に一部突出するように、なおかつ、分離ローラ57は左端の繰出ローラ21およびその右隣りの繰出ローラ22の間に位置するように、分離ローラ58は左端から二番目の繰出ローラ22およびその右隣り、すなわち中央の繰出ローラ23の間に位置するように、分離ローラ59は中央の繰出ローラ23およびその右隣り、すなわち右端から二番目の繰出ローラ24の間に位置するように、分離ローラ60は右端から二番目の繰出ローラ24およびその右隣り、すなわち右端の繰出ローラ25の間に位置するように配置されており、分離ローラ57〜60と繰出ローラ21〜25とは、前後方向から見ていわゆる櫛歯状に配置されて、紙幣を左右方向に凹凸状に、すなわち、屈曲状に挟んで紙幣を一枚ずつ繰り出すことになる。
【0037】
複数の繰出ローラ21〜25は、同径であり、外周面が全周にわたり円筒面状で、それぞれの中心位置において左右方向に延在する図2に示す回転軸62に固定されている。図1に示す複数の分離ローラ57〜60は、同径であり、外周面が全周にわたり円筒面状で、それぞれの中心位置において左右方向に延在する図2に示す回転軸63に固定されている。図1に示す複数の蹴出ローラ33,34は、同径であり、外周面が全周にわたり円筒面状で、それぞれの中心位置において左右方向に延在する図2に示す回転軸64に固定されている。
【0038】
補助ローラ40〜42は、正三角形の頂点位置に配置された円筒面状の三カ所の大径部67と、隣り合う大径部67同士を繋ぐ三カ所の平坦部68とを有している。ここで、三カ所の大径部67は、補助ローラ40〜42の中心から同じ一定径の円筒面となっている。また、三カ所の大径部67は、円周方向の長さが同じにされており、その結果、隣り合う平坦部68同士のなす角が60度となっている。つまり、補助ローラ40〜42は、同径であり、最大径部分を構成する大径部67が周方向に断続的に複数具体的には三カ所等間隔で形成された略正三角形状をなしていて、それぞれの中心位置において左右方向に延在する回転軸69に固定されている。よって、複数の補助ローラ40〜42は、同軸配置されている。
【0039】
そして、本実施形態において、図3に示すように、略正三角形状をなす複数の補助ローラ40〜42は、隣り合うもの同士が回転方向の位相をずらして軸方向に離間配置されている。具体的には、隣り合う補助ローラ40,41同士が互いの回転方向の位相を60度ずらしており、隣り合う補助ローラ41,42同士が互いの回転方向の位相を60度ずらしている。よって、両端の補助ローラ40,42同士が互いの回転方向の位相を一致させている。
【0040】
図2に示すように、取り扱う紙幣の中の短手方向の長さが最も短い紙幣であっても、繰出ローラ21〜25および分離ローラ57〜60の間の分離作用点Aと、蹴出ローラ33,34の紙幣に接触する蹴り出し作用点Bと、補助ローラ40〜43の大径部67の紙幣に接触する蹴り出し作用点Cとが、同一直線上に位置可能となるように、回転軸62,64,69の高さ関係および前後の位置関係が設定されている。なお、補助ローラ40〜42の大径部67は、分離作用点Aおよび蹴り出し作用点Bを結んだ線の延長線上よりも紙幣保持面15aとは反対側に位置することがないように設定されている。
【0041】
繰出ローラ21〜25を支持する回転軸62、蹴出ローラ33,34を支持する回転軸64および補助ローラ40〜42を支持する回転軸69は、一つのモータで駆動されて互いに同方向(図2の反時計回り方向)に同期回転することになり、その結果、繰出ローラ21〜25、蹴出ローラ33,34および補助ローラ40〜42も互いに同方向(図2の反時計回り方向)に同期回転することになる。他方、分離ローラ57〜60を支持する回転軸63は一方向クラッチで、回転軸62,64,69と同方向(図2の反時計回り方向)の回転のみが許容されている。
【0042】
上記した受取部11において、長手方向を左右方向にして上下方向に集積された状態で紙幣が、紙幣案内板部16の紙幣案内面16aに当接する状態で、紙幣保持板部15の紙幣保持面15aと、紙幣押圧部55の紙幣押圧面55aとの間に装填されることになる。この状態で、回転軸62,64,69が同期回転することにより、繰出ローラ21〜25、蹴出ローラ33,34および補助ローラ40〜42が同期回転すると、蹴出ローラ33,34および補助ローラ40〜42が、最も紙幣保持部56側の紙幣に当接してこの紙幣を繰出ローラ21〜25側に蹴り出すことになり、その結果、繰出ローラ21〜25が最も紙幣保持部56側の紙幣に当接してこの紙幣を分離ローラ57〜60とで挟持しながら装置本体12内に繰り出すことになる。
【0043】
このとき、停止状態にある分離ローラ57〜60が繰出ローラ21〜25に当接する最も紙幣保持部56側の紙幣以外の紙幣を分離する。また、このとき、補助ローラ40〜42においては、軸方向両側の補助ローラ40,42の大径部67の紙幣への当接状態での蹴り出しと、軸方向中央の補助ローラ41の大径部67の紙幣への当接状態での蹴り出しとが交互に行われることになる。しかも、軸方向両側の補助ローラ40,42の大径部67の紙幣への当接が解除された後、間隔をおいて、軸方向中央の補助ローラ41の大径部67が紙幣に当接する。つまり、補助ローラ40〜42は、軸方向に隣り合うもの同士が断続的に最も紙幣保持部56側の紙幣に当接する。
【0044】
上記した繰出ローラ21〜25と分離ローラ57〜60と蹴出ローラ33,34と補助ローラ40〜42とが、紙幣保持部56側の紙幣から紙幣を一枚ずつ分離し繰り出す紙幣分離繰出部70を構成している。
【0045】
繰出ローラ21〜25および分離ローラ57〜60の間の分離作用点Aの後方には、繰出ローラ21〜25および分離ローラ57〜60の間から繰り出された紙幣を厚さ方向の両側で案内するガイド板71,72と、ガイド板71,72内で紙幣を繰出ローラ21〜25とで挟持しつつ搬送する搬送ローラ73と、ガイド板71,72内で紙幣を挟持しつつ搬送する搬送ローラ74,75と、ガイド板71,72内で紙幣を挟持しつつ搬送する搬送ローラ76,77等が設けられており、これらは、紙幣分離繰出部70により繰り出された紙幣を、搬送しつつ、例えばその種類毎に分類計数して収納等の処理を行う内部処理機構78を構成している。
【0046】
以上に述べた本実施形態によれば、蹴出ローラ33,34の繰出ローラ21〜25とは反対側に、大径部67が周方向に断続的に複数形成された形状をなす複数の補助ローラ40〜42が同軸配置されているため、紙幣を効果的に捌くことができる。よって、集積された紙幣間に連続的な隙間を形成し、少なくとも紙幣の自重により生ずる紙幣間摩擦抵抗を大幅に減少させ、安定的に紙幣を一枚ずつ分離して取り込むことが可能となる。
【0047】
しかも、紙幣の繰り出し方向の長さが比較的異なる紙幣を繰り出す場合、少なくとも、取り扱う紙幣の中の短手方向の長さが最も短い紙幣であっても、前後方向に位置の異なる蹴出ローラ33,34および補助ローラ40〜42で支持され、補助ローラ40〜42のいずれかによって短い時間間隔で交互に蹴り出されるので、良好に、繰出ローラ21〜25および分離ローラ57〜60の間の分離作用点Aに向けて蹴り出すことができる。つまり、補助ローラ40〜42がない状態で、紙幣の繰り出し方向の長さが比較的異なる紙幣を繰り出す場合には、長いものが、蹴出ローラ33,34の紙幣当接点を支点に、繰り出し方向上流側が持ち上げられた状態になり、蹴り出し時、紙幣の繰り出し方向先端部が、若干持ち上がるように蹴り出され、分離作用点Aに向かって適切に送り出すことができない可能性があるが、このような状況を防止できることになる。
【0048】
また、複数の補助ローラ40〜42は、隣り合うもの同士が回転方向の位相をずらして離間配置されているため、隣り合うもの同士が、ずれたタイミングで紙幣に接触することになり、紙幣を捌く効果が増大する(回転軸69の一回転当たりの大径部67の当接回数が2倍となる)とともに、紙幣への接触音を低減できる。よって、集積された紙幣間に連続的な隙間を良好に形成することができ、しかも、その際の騒音の低減を図ることができる。
【0049】
また、補助ローラ40〜42が、略正三角形状であり、隣り合うもの同士が互いの回転方向の位相を60度ずらしているため、隣り合うもの同士の接触のタイミングを等間隔で離すことができ、紙幣への接触音を確実に低減できる。よって、集積された紙幣間に連続的な隙間を形成する際の騒音の低減を確実に図ることができる。
【0050】
また、繰出ローラ21〜25および分離ローラ57〜60の間の分離作用点Aと、蹴出ローラ33,34の紙幣に接触する蹴り出し作用点Bと、補助ローラ40〜42の大径部67とが、同一直線上に位置可能であるため、蹴出ローラ33,34と補助ローラ40〜42とで、紙幣を良好に、繰出ローラ21〜25および分離ローラ57〜60の間の分離作用点Aに向け略直線上に蹴り出すことができる。したがって、紙幣を、より安定的に装置本体12内に取り込むことができる。
【0051】
なお、補助ローラ40〜42は、最大径部分を構成する大径部67が周方向に断続的に複数形成されていれば良く、例えば、図4に示すように、四カ所等間隔で形成された略正方形状をなしていても良い。つまり、補助ローラ40〜42は、同径であり、正方形の頂点位置に配置された一定径の円筒面状の四カ所の大径部67と、隣り合う大径部67同士を繋ぐ四カ所の平坦部68とを有していても良い。この場合も、四カ所の大径部67は、円周方向の長さが同じにされ、その結果、隣り合う平坦部68同士のなす角が90度となっている。
【0052】
そして、略正方形状をなす複数の補助ローラ40〜42は、隣り合う補助ローラ40,41同士が互いの回転方向の位相を45度ずらしており、隣り合う補助ローラ41,42同士が互いの回転方向の位相を45度ずらしていて、両端の補助ローラ40,42同士が互いの回転方向の位相を一致させている。この場合も、上記と同様に、繰出ローラ21〜25および分離ローラ57〜60の間の分離作用点Aと、蹴出ローラ33,34の紙幣に接触する蹴り出し作用点Bと、補助ローラ40〜43の大径部67とが、同一直線上に位置可能となるように、回転軸62,64,69の高さ関係および前後の位置関係が設定されている。
【0053】
このように、補助ローラ40〜42が、略正方形状であり、隣り合うもの同士が互いの回転方向の位相を45度ずらしていれば、上記と同様、隣り合うもの同士の接触のタイミングを等間隔で離すことができ、紙幣への接触音を確実に低減できる。よって、集積された紙幣間に連続的な隙間を形成する際の騒音の低減を確実に図ることができる。
【0054】
あるいは、補助ローラ40〜42は、例えば、図5に示すように、大径部67が五カ所等間隔で形成された略正五角形状をなしていても良い。つまり、補助ローラ40〜42は、同径であり、正五角形の頂点位置に配置された一定径の円筒面状の五カ所の大径部67と、隣り合う大径部67同士を繋ぐ五カ所の平坦部68とを有していても良い。この場合も、五カ所の大径部67は、円周方向の長さが同じにされ、その結果、隣り合う平坦部68同士のなす角が108度となっている。
【0055】
そして、略正五角形状をなす複数の補助ローラ40〜42は、隣り合う補助ローラ40,41同士が互いの回転方向の位相を36度ずらしており、隣り合う補助ローラ41,42同士が互いの回転方向の位相を36度ずらしていて、両端の補助ローラ40,42同士が互いの回転方向の位相を一致させている。この場合も、上記と同様に、繰出ローラ21〜25および分離ローラ57〜60の間の分離作用点Aと、蹴出ローラ33,34の紙幣に接触する蹴り出し作用点Bと、補助ローラ40〜43の大径部67とが、同一直線上に位置可能となるように、回転軸62,64,69の高さ関係および前後の位置関係が設定されている。
【0056】
このように、補助ローラ40〜42が、略正五角形状であり、隣り合うもの同士が互いの回転方向の位相を36度ずらしていれば、上記と同様、隣り合うもの同士の接触のタイミングを等間隔で離すことができ、紙幣への接触音を確実に低減できる。よって、集積された紙幣間に連続的な隙間を形成する際の騒音の低減を確実に図ることができる。
【0057】
なお、実験の結果、補助ローラ40〜42を正六角形状とすると、紙幣を捌く効果および騒音低減の効果が得られないことになったため、補助ローラ40〜42は、上記のように正三角形状、正方形状、正五角形状のいずれかにするのが好ましい。
【符号の説明】
【0058】
15a 紙幣保持面
21〜25 繰出ローラ
33,34 蹴出ローラ
40〜42 補助ローラ
55 紙幣押圧部
56 紙幣保持部
57〜60 分離ローラ
67 大径部
70 紙幣分離繰出部
A 分離作用点
B 蹴り出し作用点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉両方向に移動可能に支持される紙幣押圧部と、
該紙幣押圧部の閉方向移動により押圧される紙幣を保持する紙幣保持部と、
最も該紙幣保持部側の紙幣に当接可能な繰出ローラと、該繰出ローラと繰り出す紙幣を挟んで対向配置される分離ローラと、前記紙幣保持部の一部を構成するとともに、前記紙幣保持部の紙幣保持面より前記紙幣押圧部側に突出することで、最も前記紙幣保持部側の紙幣と当接可能に設けられる蹴出ローラと、前記紙幣保持部の一部を構成するとともに、前記蹴出ローラの前記繰出ローラとは反対側に配置され、前記紙幣保持部の紙幣保持面より前記紙幣押圧部側に突出することで、最も前記紙幣保持部側の紙幣と当接可能に設けられる補助ローラとを有し、前記紙幣保持部側の紙幣から紙幣を一枚ずつ分離し繰り出す紙幣分離繰出部と、
を備えた紙幣処理装置であって、
前記補助ローラは、
大径部が周方向に断続的に複数形成された形状をなし、複数が同軸配置されるとともに、隣り合うもの同士が回転方向の位相をずらして離間配置されていることを特徴とする紙幣処理装置。
【請求項2】
前記補助ローラは、
略正三角形状であり、隣り合うもの同士が互いの回転方向の位相を60度ずらしていることを特徴とする請求項1記載の紙幣処理装置。
【請求項3】
前記補助ローラは、
略正方形状であり、隣り合うもの同士が互いの回転方向の位相を45度ずらしていることを特徴とする請求項1記載の紙幣処理装置。
【請求項4】
前記補助ローラは、
略正五角形状であり、隣り合うもの同士が互いの回転方向の位相を36度ずらしていることを特徴とする請求項1記載の紙幣処理装置。
【請求項5】
前記繰出ローラおよび前記分離ローラの間の分離作用点と、前記蹴出ローラの紙幣に接触する蹴り出し作用点と、前記補助ローラの前記大径部とが、同一直線上に位置可能であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の紙幣処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−219245(P2011−219245A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−92331(P2010−92331)
【出願日】平成22年4月13日(2010.4.13)
【出願人】(500265501)ローレル精機株式会社 (191)
【Fターム(参考)】