説明

紙幣取扱装置

【課題】
紙幣取扱装置の取り忘れ紙幣処理に対する処理時間の短縮化とセキュリティを保つことができる紙幣取扱装置を提供することにある。
【解決手段】
シャッタ開閉を検知するセンサあるいはシャッタ部の振動を検知するセンサを用いて、シャッタ開を実行していないのにシャッタが開いたことをセンサが検知した場合や、センサがシャッタ部振動を検知した場合は、紙幣を入出金口から一時保管庫に退避する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、利用者がカードや通帳等を使用して、紙幣を入出金する紙幣取扱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紙幣取扱装置を使用し出金取引を行い、その出金紙幣を取り忘れた場合、後続の取引を続行するため、取り忘れ紙幣を入出金口から分離して、通常の入金取引と同様に紙幣の金種を判別して、入金庫に収納する技術が一般的である。または、例えば特許文献1に記載されているように、取り忘れた紙幣をそのまま入出金口に残して装置異常として取引を中止する技術がある。
【0003】
【特許文献1】特開2000−172903号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記背景技術においては、後続の取引を続行するために、取り忘れ紙幣を入金庫に収納する場合、既に入金庫が満杯であると取り忘れ紙幣を収納することができないため、取り忘れ紙幣を入出金口に残して装置異常として取引を中止せざるを得ない。装置異常を復旧するためには、係員や保守員等が取り忘れ紙幣を取り除くため、入出金口に取り忘れ紙幣を残しておくことは、装置異常の復旧時間が短くてすむ。
【0005】
しかし、入出金口に取り忘れ紙幣を残しておくと、入出金口のシャッタをこじ開けられたり破壊されたりすることにより、取り忘れ紙幣を盗む犯罪が発生することも考えられる。そのためには、取り忘れ紙幣を入出金口以外の別の収納部へ移動すればよいが、常に別の収納部に取り忘れ紙幣を移動させるということは、装置異常の復旧時間が長くなる。
【0006】
本発明の目的は、取り忘れ紙幣処理に対する処理時間の短縮化を図るとともに、装置内の紙幣に対するセキュリティを向上させる紙幣取扱装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明は、シャッタが閉状態で入出金口に紙幣が存在する場合に、開閉検知センサが前記シャッタの異常を検知すると、制御部は、前記入出金口に存在する紙幣を前記一時保管庫に移動する制御を行う公正を採用した。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、通常は取り忘れ紙幣や残留紙幣を入出金口に保留しておき、シャッタ部に異常があるときは入出金口の紙幣を退避させるため、通常は係員処理を短くすることができ、異常時は入出金口の紙幣は盗まれないように保護することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下本発明の一実施形態を、図面を用いて詳細に説明する。
【0010】
図1は、現金自動取引装置101の外観を示す斜視図である。現金自動取引装置101の上部は、この現金自動取引装置101の上部正面板101bに設けられたカードスロット102aと連通し利用者のカードを処理し取引明細票を印字して放出するカード・明細票処理機構102と、通帳スロット103aと連通し利用者の通帳を処理する通帳処理機構103とを備えている。また、現金自動取引装置101の下部には、入出金口20から投入あるいは取り出される紙幣の処理する紙幣入出金機構1を備えており、中間部には、取引の内容を表示および入力するタッチパネルディスプレイなどの顧客操作部105が設けられている。本体制御部106は、現金自動取引装置101全体を制御するCPUなどの制御装置である。なお、取引表示器107は、入金や出金といった取引種別を利用者に示す。
【0011】
図2は、現金自動取引装置101の制御システムの全体構成を示す機能ブロック図である。制御システムはコンピュータを用いて構成されており、現金自動取引装置101に納められたカード・明細票処理機構102、通帳処理機構103、紙幣入出金機構1および顧客操作部105が、バス106aを介して本体制御部106と接続されており、本体制御部106の制御の下に必要な動作を行う。本体制御部106は、インタフェース部106b、係員操作部106c、外部記憶装置106dともバス106aで接続されており、必要なデータのやりとりを行う。現金自動取引装置101に装着される収納庫の種類や装着位置、各収納庫に収納される金種などの情報は、係員操作部106cを介して係員により本体制御部106に入力される。また、電源部101eは、自動取引装置101の各機構、構成部分に電力を供給する。
【0012】
図3は、図2における紙幣入出金機1の詳細なシステム構成図を示す。紙幣入出金機1は、利用者が紙幣の投入・取り出しを行う入出金口20と、紙幣の判別を行う紙幣判別部30と、紙幣を収納する着脱可能な複数種類の収納庫と、紙幣を搬送する紙幣搬送路50と、紙幣入出金機1を制御する制御部35(CPUなど)から構成されている。収納庫の種類としては、入金した紙幣を取引成立までの間一旦収納する一時保管庫40と、リサイクルに使用しない紙幣を収納する入金庫60と、リジェクト紙幣を区別して管理することができる第一の分別収納庫61と、多種類の入金紙幣を分別して収納可能な第二の分別収納庫70と、入出金兼用のリサイクル庫80と、リサイクル庫80に補充する紙幣やリサイクル庫から回収した紙幣を収納する装填・回収庫81とがある。
【0013】
制御部35は、現金自動取引装置101の本体制御部106とバス106aを介して接続される。制御部35は、本体制御部106からの指令および紙幣入出金機1の状態検出に応じて紙幣入出金機1の制御を行い、また、紙幣入出金機1の状態を、必要に応じて本体制御部106に送る。また、制御部35は、紙幣入出金機1の中では、各ユニット(入出金口20、紙幣判別部30、一時保管庫40、紙幣搬送路50、入金庫60、第一の分別収納庫61、第二の分別収納庫70、リサイクル庫80、装填・回収庫81)の駆動モータや電磁ソレノイドやセンサ(図示せず)と接続され、取引に応じて、センサで状態を監視しながら各アクチュエータの駆動を制御する。
【0014】
図4は、図1の現金自動取引装置における紙幣入出金機1の部分を拡大して示す側面図である。
【0015】
紙幣入出金機1は、図4に示すように、上部紙幣機構1aと下部紙幣機構1bから構成される。上部紙幣機構1aは、入出金口20、紙幣判別部30、一時保管庫40と、紙幣搬送路50から構成される。紙幣搬送路50は、紙幣判別部30を通り、入出金口20、各収納庫に対し、紙幣を搬送する。入金庫60、分別収納庫70、リサイクル庫80の各収納庫は、それぞれ共通の筐体外形、共通の位置に設けられた出入り口、及び共通の駆動部を持ち、紙幣入出金機1に対して、相互に交換して取り付け可能に構成されている。
【0016】
下部紙幣機構1bは、入金庫60、分別収納庫70、リサイクル庫80、および各収納庫の前面に配する、開閉可能な搬送路90から構成される。さらに、下部紙幣機構1bは、約50mm程度の厚い鉄板で構成される金庫筐体104の中に実装されている。上部搬送機構1aの搬送路501gと下部紙幣機構1bの搬送路901aとは、連結搬送路501hで接続されている。
【0017】
連結搬送路501hは、下部紙幣機構1bを囲う金庫筐体104の上面鉄板部分で、かつ上部搬送機構1aの搬送路501gと、下部紙幣機構1bの搬送路901aが連結する位置に設けられたスリット内に配置される。上面鉄板部分にあけられたスリットは、紙幣が通過するための長さと該スリットに搬送されてきた紙幣を挟持して繰り出すよう取り付けられた搬送ローラの幅の大きさを有する。下部紙幣機構1bを金庫筐体104で囲わない構成である場合に、下部紙幣機構1b上に直接上部搬送機構1aが載置されるときは、必ずしもスリットを設ける必要はない。搬送路50の駆動源(モータ)は、上部搬送機構の搬送路と下部紙幣機構の搬送路で別々に設けてもよいが、単一の駆動源を用い、その駆動力を、搬送路501g〜501h〜901aの間に設けられたギヤで伝達するようにしてもよい。
【0018】
また、紙幣搬送路50は、紙幣判別部30を双方向に通過し、矢印501a〜501hおよび901a〜901eに示す搬送路を経由して、入出金口20、一時保管庫40、入金庫60、リサイクル庫80、分別収納庫70を接続する。
【0019】
紙幣搬送路50のうち、下部紙幣機構1bにあって、入金庫60、リサイクル庫80、分別収納庫70の前部にある5ヶ所の紙幣搬送路901a〜901eは、一体となって開閉できるようにされた開閉搬送路90を構成しており、係員は、開閉搬送路90を開いて入金庫60、リサイクル庫80、分別収納庫70の操作を行うことができる。なお、紙幣搬送路901a〜901eの詳細構成については、後述する図5〜図9で詳細に説明する。
【0020】
図5は、入金庫60の詳細構成を示す。本実施形態における現金自動取引装置101は、入金庫60を1個実装されている例を示すが、複数後実装されていても良い。入金庫60は、入金庫外の駆動源からギヤを介して駆動される回転するスタックローラ601と、スタックローラ601に対向するバックアップローラ602、603と、バックアップローラ603と同一軸上にあって、図示せぬ駆動源により、バックアップローラとは独立して回転し、弾性部材が図示のように放射状に配置したブラシローラ604、および、下スタックガイド605、上スタックガイド606によりスタック機構を構成している。また、紙幣収納空間は、上仕切板611と下仕切板613および押板615で形成される、スタック済み紙幣収納空間617と、上仕切板611と下仕切板613および上スタックガイド606、下スタックガイド605で形成されるスタック中紙幣収納空間616からなる。またスタックローラ601に面する位置に、出入り口632を有している。
【0021】
入金庫60に収納される紙幣は、紙幣搬送路(矢印901a)から、切り替えゲート903が903bの状態に切り替わり、矢印902aの方向に搬送され、出入り口632を経て、回転するスタックローラ601とバックアップローラ602、603間に送り込まれる。スタックローラ601とバックアップローラ603の間に送り込まれた紙幣は、停止したブラシローラ604の弾性部材604aに接触し、弾性部材604aの弾性変形力により、下スタックガイド605との間で、摩擦抵抗力を受けながら通過し、スタックローラ601とバックアップローラ603による挟持搬送力がなくなる位置で、一旦停止し、その直後に、ブラシローラ604を回転させることにより、前記スタック中紙幣収納空間616に連続して搬送される紙幣どうしは干渉することなく集積する。
【0022】
次に、図示せぬ駆動源により、駆動ベルト618を駆動し、駆動ベルト618に連結した押し出しプレート608、押し出し補助ガイド609、押し出し支点シャフト610、上スタックガイド606が、矢印621、622の方向に、図示点線608a、609a、610a、606aの位置まで移動するとともに、前記駆動ベルト618に連結した上仕切板611、上仕切板支点シャフト612が、矢印625の方向に、図示点線(611a、612a)〜(611b、612b)〜(611c、612b)の順で移動することにより、前記スタック中紙幣収納空間616に集積された紙幣は、スタック済み紙幣収納空間617の紙幣と一体になり、押板615を、矢印624の方向に、下スタックガイド613を矢印623の方向に押し込まれる。
【0023】
次に、駆動ベルト618を逆の方向に駆動し、押し出しプレート608、押し出し補助ガイド609、押し出し支点シャフト610、上スタックガイド606、上仕切板611、上仕切板支点シャフト612を、初期の位置まで戻し、前記スタック中紙幣収納空間616を空の状態にし、次の集積動作を可能にする。
【0024】
図6は、リサイクル庫80の詳細な構成を示す図である。リサイクル庫80は、本実施形態では3個実装されている(図4)。図6に構成を示すように、リサイクル庫80は、収納と分離繰り出しのできる収納庫であり、スタック・フィードローラ801と、ピックアップローラ811と、回転するバックアップローラ802と、スタック方向に回転し、繰り出し方向には回転しないゲートローラ803と、ゲートローラ803と同一軸上にあって弾性部材が放射状に配置したブラシローラ804、および、分離時とスタック時で可動する分離・スタックガイド805とを備え、これらによりスタック・分離機構を構成している。底板808と、押板806と、底板808より上面で紙幣下面を支持するように懸架された底面平ベルト807と、分離・スタックガイド805で囲まれた収納空間に、紙幣は収納される。さらに、収納部の上部の分離・スタックガイド805の近傍に鋸歯状の外周形状を持つ回転する上部掻き出しローラ812と、収納部の下部のゲートローラ803の近傍に鋸歯状の外周形状を持つ回転する下部掻き出しローラ809を有し、スタック済み紙幣の上下端部を鋸歯状の外周部が支持し、押板806側に掻き出しながら、紙幣の立位状態を維持する。また、スタック・フィードローラ801に面する位置に、出入り口822を有している。
【0025】
分離動作時には、分離・スタックガイド805は、破線805aで示す位置に移動し、押板806と底面ベルト807は、一体となって、収納空間内を可動し、図示せぬばねにより、繰り出し紙幣がピックアップローラ811に所定の押圧力がかかるように収納紙幣を移動させる。ピックアップローラ811に押し付けられた紙幣は、回転するスタック・フィードローラ801で送り出され、繰り出し方向には回転しないゲートローラ803で2枚送りを防止しながら出入り口822を経て矢印902bの方向に一枚ずつ搬送され、紙幣搬送路の切り替えゲート903は図示903bの方向に切り替わり、矢印901bの方向に搬送される。
【0026】
スタック動作時には、分離・スタックガイド805は、実線で示す位置に移動し、押板806と底面ベルト807は、一体となって、図示せぬ金庫外の駆動源により、収納空間内を可動し、収納紙幣の増加に伴い、矢印902bの方向に搬送された進入紙幣と収納紙幣が干渉しないよう、収納紙幣を分離・スタックガイド805から遠ざける方向に移動制御される。この時、上部掻き出しローラ812は左周りに、下部掻き出しローラ809は右回りに回転し、スタック済み紙幣の上下端部を鋸歯状の外周部が支持し、押板806側に掻き出しながら、紙幣の立位状態を維持する。
【0027】
図7は、分別収納庫70の構成例を示す。分別収納庫70は、投げ込み式の単純スタック機構で構成される3箇所の独立した収納部710a、710b、710cを有する収納庫である。収納庫の一番奥に位置する収納部710a(第二の収納部)は、底面719aや中蓋719dを有する箱型であり、右上角部の開口部761から紙幣を放り込む構成となっている。収納部710aは、全体として上側が若干前方向きに傾斜している。一方、第一の収納部である収納部710bおよび収納部710c(図7では、収納部710bは収納庫中央部に位置し、収納部710cは出入り口に最も近い位置にある)は、共に、垂線よりθだけ後方に傾斜した底面719b、719cを有する略コ字型の断面形状をしており、下側方から紙幣を投げ入れる構成となっている。
【0028】
また、収納庫の一番奥に位置する収納部710aは、収納部の下に搬走路を設ける必要が無いため、収納部としてのスペースを大きくすることができる。そのため、収納部710aは扱い量の多い紙幣の収納用とし、収納部710bや710cは扱い量の少ない紙幣の収納用として用いるのが良い。そして、収納部710aには、例えば5EUROや500EUROなどの比較的量が多くかつ還流には適さない非還流金種の紙幣やリジェクト紙幣を収納する。他方、取り忘れ回収紙幣や出金リジェクト紙幣は量が少ないので、収納部710bや710cに収納する。このように収納部701a〜710cを使い分けることで、各種の紙幣を全体として効率よく分別できる。
【0029】
本実施形態では、収納部710bを取り忘れ紙幣収納庫として使用し、収納部710cを、ジャム等の異常が発生した場合に、紙幣入出金機1を自動復旧させたときに搬送路に残っていた紙幣を回収する収納庫として使用する。
【0030】
スタック・フィードローラ723に面して設けられた出入り口722は、3箇所の独立した収納部701a〜710cに対して共通する出入り口である。出入り口722から搬入された紙幣は第一の切り替えゲートが711bの方向に切り替えられた時に収納部710cへ搬送され、711aの方向に切り替えられた時に第二の切り替えゲート方向に搬送される。そして、第二の切り替えゲートが712bの方向に切り替えられた時に、紙幣は収納部710bへ搬送され、さらに、ゲートが712aの方向に切り替えられた時に紙幣は収納部710aへ搬送される。
【0031】
収納部710cへ搬送された紙幣は、入口部のスタックローラ724やバックアップローラ725により、収納部710c内へ投入される。第二の切り替えゲートが712bの方向に切り替えられ収納部710bへ搬送された紙幣は、 入口部のスタックローラ727やバックアップローラ728により、収納部710b内へ投入される。ゲートが712aの方向に切り替えられ、ベルト730を介して搬送された紙幣は、入口部のスタックローラ731、732やバックアップローラ733により、収納部710a内へ投入される。
【0032】
収納部710b、710cの底面719b、719cは、搬入側から見てやや仰向けに傾いている。すなわち、垂線に対してθ=10度〜30度、後方に傾けて設けられている。収納部701b及び710cを搬入側から見て斜め後ろに傾けて配置することで、紙幣の前倒れを防止できる。従来の還流庫のような水平収納方式の場合、収納庫の上下にベルトを設けて、上下のローラを駆動させて紙幣を押し込んでいるが、収納部を斜めにすることで前倒れを防止できる。よって、収納部710bや710cは、上部のベルトを無くし、構造を単純化できる。そのため、1つの収納庫70に複数の収納部701a〜710cを設けることが可能になる。
【0033】
図8は、シャッタ20aの機構について説明する図である。図8はシャッタ部20を正面上部から見た図である。
【0034】
シャッタ20aは、図示されないモータを駆動源としてスライドすることにより、開閉動作を実施する。シャッタ20aが完全に閉じているとこを検知するためのセンサ21とシャッタ20aが完全に開いていることを検知するためのセンサ22が取り付けられている。また、シャッタ20aを手で簡単にスライドさせて開けられないようにするために、シャッタ20aをロックするためのロック機構23が取りつけられている。ロック機構23は、通常はロック状態にあるが、シャッタを開けるときは、図示されないソレノイドによりロック解除位置(図8の右側)に引かれることでロック解除され、シャッタ20aを開けることが可能となる。
【0035】
ここで、それぞれの収納庫60、70、80を組み合わせた本発明の紙幣入出金機1の構成例および動作について説明する(図4参照)。
(1)入金計数動作:
利用者が紙幣を入金し、一時保管庫40に収納するまでの入金計数動作時、入出金口20に投入された紙幣は、一枚ずつに分離され、矢印501a、501bを通って、紙幣判別部30に搬送され、ここで、紙幣の金種、真偽が判定される。判別ができた紙幣は、切り替えゲート503を切り替え、矢印501cから501dの方向へ搬送され、一時保管庫40に一旦収納される。紙幣判別部30で、判別できなかった紙幣や、紙幣が傾いていたり紙幣同士の間隔の異常となったりして入金リジェクト紙幣は、一時保管庫40には取り込まれず、切り替えゲート503を切り替え、矢印501fの方向に搬送され、入出金口20に収納され、利用者に返却される。
(2)入金収納動作:
一時保管庫40に収納した紙幣を、入金庫60、リサイクル庫80、分別収納庫70のいずれかに収納する入金収納時は、一時保管庫40の回転ドラム401を収納時とは逆に回転する。巻き取られていた紙幣は、収納時とは逆の順に逆の方向に矢印501dの方向に送出され、501c、501bの方向に搬送され、紙幣判別部30を通過し、切り替えゲート502を図示502b方向に切り替え、501g、501h、901aを経由し、入金庫60、リサイクル庫80のいずれかの切り替えゲート903を図示903b方向に切り替え指定の収納庫に収納する。この時、紙幣判別部30で再度金種、真偽等を判定し、収納庫を指定してもよいが、入金計数時に一時保管庫40に収納する際の全紙幣の判別結果を記憶し、その記憶内容に基づき、収納庫を指定してもよい。
(3)出金取引動作:
出金取引時は、リサイクル庫80の各金種毎の金庫から所定の枚数づつ繰り出し、矢印901e、901d、901c、901b、901a、501h、501gと経由して、紙幣判別部30で、金種を判別し、切り替えゲート503で分岐させて、入出金口20に収納し、利用者に支払われる。紙幣判別部30で判別できない出金リジェクトが発生した場合には、その紙幣は、切り替えゲート503を切り替え、一時保管庫40に、入金計数時と同様に一旦収納する。不足分の紙幣はリサイクル庫80から追加し繰り出される。
(4)出金リジェクト収納動作:
出金取引時にリジェクトが発生し、紙幣が一時保管庫40に収納された場合には、出金リジェクト収納動作を行う。出金リジェクト紙幣は、一時保管庫40から、分別収納庫70に収納する。
(5)取り忘れ紙幣の処理動作:
出金後に、利用者が入出金口20の紙幣を取り忘れた場合には、そのまま、入出金口20に残して装置異常として、取引を中止することもできるが、後続の取引を続行するため、取り忘れ紙幣を入出金口に一時保留した後、入出金口20から分離して、入金取引と同様に紙幣の金種を判別して、リジェクト紙幣と区別して分別収納庫710bに収納できる。このように、取り忘れ紙幣を入出金口に一時保留した後この紙幣を分別収納庫に収納することで、他の取引を続行可能となる。
【0036】
次に、本実施形態の紙幣入出金機構を用いた現金自動取引装置で紙幣の取り忘れが発生したときの処理について具体的に説明する。
【0037】
図9は、紙幣の取り忘れが発生した場合の処理のフローチャートである。紙幣の取り忘れが発生した場合は、制御部35は、分別収納庫710bが満杯か否かを判断する(S1)。分別収納庫710bが満杯ではない場合は(S1:NO)、取り忘れ紙幣は分別収納庫710bに収納して(S9)、運用モードに戻る。分別収納庫710bが満杯であった場合は(S1:YES)、分別収納庫710bに収納することができない。そのため、取り忘れ紙幣を入出金口20に保留する(S2)。そして、係員が現金自動取引装置101を係員処理のモードに切り替えられたか否かを検知する(S3)。係員処理のモードに切り替えられたことを検知すると、紙幣返却が可能となり、現金自動取引装置101の本体制御部106は、紙幣入出金機1にシャッタを開ける指令を送る(S3:YES)。すると、紙幣入出金機1はシャッタ20aを開ける(S8)。係員は、取り忘れ紙幣を取り除き、さらに分別収納庫710bの紙幣も取り除いて運用を再開することができる。
【0038】
このように分別収納庫710bに取り忘れ紙幣を回収できない場合であって、シャッタ開指示がない場合は(S3:NO)、入出金口20に取り忘れ紙幣を残しておけば、係員が来たときにシャッタ20aを開けるだけで返却することができるので、係員処理の時間は短くて済む。しかし、係員が現金自動取引装置101に来るまでの間に、取り忘れ紙幣が入出金口20に残っていることを知っている者が、シャッタをこじ開けて盗もうとすることが考えられる。それを回避するために、紙幣入出金機1の制御部35は、シャッタの閉を検知するセンサ21を監視する(S4)。シャッタを開ける制御を行っていないのにシャッタが開いたとセンサ21で検知した場合は(S4:YES)、入出金口20にある紙幣を退避するために、一時保管庫40に移動する(S5)。シャッタが開いたと検知しない場合は、入出金口20に紙幣を保留しておく処理(S2)に戻る。
【0039】
ステップ5の状態で、係員が来て現金自動取引装置101が係員処理のモードに切り替えられたか否かを検知する(S6)。係員処理のモードに切り替えられたことを検知すると、紙幣返却が可能となり、現金自動取引装置101の本体制御部106は紙幣入出金機1にシャッタを開ける指令を送る(S6:YES)。すると、紙幣入出金機1は、退避した紙幣を一時保管庫40から入出金口20に送信し(S7)、シャッタ20aを開ける(S8)。これにより、係員は取り忘れ紙幣を取り除き、さらに分別収納庫710bの紙幣も取り除いて運用を再開することができる。
【0040】
図10は、シャッタ部20に振動を検知するセンサ25を取り付けた場合の、紙幣の取り忘れが発生した後の処理のフローチャートである。分別収納庫710bが満杯でない場合(S11:NOからS91)及び係員によるシャッタ開指示有りの場合(S31:YESからS81)の処理の流れは図9の対応する処理と同様なので省略する。
【0041】
分別収納庫710bが満杯で取り忘れ紙幣を回収できない場合は(S11:YES)、入出金口20に取り忘れ紙幣を残しておくが(S21)、紙幣入出金機構1の制御部35は、シャッタ部の振動検知センサ25を監視し、シャッタを開ける制御を行っていないのにシャッタ部20の振動をセンサ25で検知した場合(S41:YES)、入出金口20にある紙幣を退避させるために、一時保管庫40に移動する(ステップS51)。シャッタ部20の振動をセンサ25で検知しない場合は、入出金口20に紙幣を保留しておく処理(S21)に戻る。
【0042】
そして、係員が来て現金自動取引装置101を係員処理のモードに切り替えると、紙幣返却が可能となり、現金自動取引装置101の本体制御部106は、紙幣入出金機1にシャッタを開ける指令を送る(ステップS61)。すると、紙幣入出金機1は、退避した紙幣を一時保管庫40から入出金口20に返却して(S71)、シャッタ20aを開ける(ステップS81)。係員は取り忘れ紙幣を取り除き、さらに分別収納庫710bの紙幣も取り除いて運用を再開することができる。
【0043】
さらに、このような動作は取り忘れ紙幣に限らず、入出金口20に紙幣を残す場合全てに適用可能である。
【0044】
図11は、ジャムが発生した後の処理を示すフローチャートである。
【0045】
例えば、紙幣入出金機1で紙幣搬送中にジャム等の異常が発生した場合、通常は運用を中止して係員処理となる。このとき、例えば出金動作の途中でジャムが発生したならば、入出金口20には出金途中の紙幣が残留したまま係員が来るのを待つことになる。この場合も、紙幣入出金機1の制御部106は、まず搬送路に残留した紙幣を入出金口20に移動させる(S102)。運用を続けるためには、通常、分別収納庫710cが満杯でない場合は(S12:NO)、残留紙幣は分別収納庫710cに収納して(ステップS92)、運用モードに戻るが、分別収納庫710cが満杯であったとき(S12:YES)は、残留紙幣を分別収納庫710cに回収することができない。そのため、取り忘れ紙幣を入出金口20に保留する(S22)。係員が、現金自動取引装置101を係員処理のモードに切り替えると、紙幣返却が可能となり、現金自動取引装置101の本体制御部106は、紙幣入出金機構1にシャッタを開ける指令を送る(S3:YES)。すると、紙幣入出金機1はシャッタ20aを開けるので(S82)、係員は残留紙幣を取り除き、さらに分別収納庫710cの紙幣も取り除いて運用を再開することができる。
【0046】
通常、このように分別収納庫710cに残留紙幣を回収できない場合は、入出金口20に残留紙幣を残しておけば、係員が来たときにシャッタ20aを開けるだけで紙幣を取り除くことができるので、係員処理の時間は短くて済む。しかし、係員が現金自動取引装置101に来るまでの間に、シャッタをこじ開けて残留紙幣を盗もうとすることが考えられる。それを回避するために、紙幣入出金機構1の制御部35は、シャッタの閉を検知するセンサ21を監視し、シャッタを開ける制御を行っていないのにシャッタが開いたとセンサ21で検知した場合(S42)、入出金口20にある紙幣を退避するために、一時保管庫40に移動する(S52)。
【0047】
そして、係員が来て現金自動取引装置101を係員処理のモードに切り替えると、紙幣返却が可能となり、現金自動取引装置101の本体制御部106は紙幣入出金機1にシャッタを開ける指令を送る(S62)。すると、紙幣入出金機1は、退避した紙幣を一時保管庫40から入出金口20に返却してから(S72)、シャッタ20aを開ける(S82)。これにより、係員は紙幣を取り除き、さらに分別収納庫710cの紙幣も取り除いて運用を再開することができる。
【0048】
また、入出金口20の紙幣を回収する場所は、一時保管庫40に限らず、例えば紙幣搬送路50でもよい。
【0049】
以上により、取り忘れ紙幣や残留紙幣を入出金口に保留する場合に、シャッタ部に異変があるときのみ入出金口の紙幣を退避させるため、通常は係員処理を短くしておき、なおかつ入出金口の紙幣は盗まれないように保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一実施形態である紙幣取扱装置を適用した現金自動取引装置の一実施例の外観を示す斜視図である。
【図2】図1における現金自動取引装置101の制御関係を示すブロック図である。
【図3】図2における紙幣入出金機1の制御関係を示すブロック図である。
【図4】紙幣入出金機1の一実施例を示す側面図である。
【図5】入金庫60の側面図の一例を示す。
【図6】リサイクル庫80の側面図の一例を示す。
【図7】分別収納庫70の側面図の一例を示す。
【図8】シャッタ部20の正面図の一例を示す。
【図9】入出金口の紙幣の取り忘れがあった場合の処理を示すフローチャートである。
【図10】取り忘れ紙幣の処理を示すフローチャートである。
【図11】残留紙幣の処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0051】
1:紙幣入出金機、1a:上部紙幣機構、1b:下部紙幣機構、20:入出金口、20a:紙幣スロット、30:紙幣判別部、35:制御部、40:一時保管庫、50:紙幣搬送路、60:入金庫、70:分別収納庫、80:リサイクル庫、90:開閉搬送路、101:現金自動取引装置、101b:正面板、104:金庫筐体、106:本体制御部、401:回転ドラム、402:巻き取り軸、403:誘導テープ、501a〜501h、901a〜901e:紙幣搬送路、502〜504:切り替えゲート、711a、711b、712a、712b:切り替えゲート、710a〜c:収納部、722:出入り口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入出金される紙幣を取り扱う紙幣取扱装置において、
入金される紙幣が投入されまたは出金される紙幣が取り出される入出金口と、
前記入出金口の開口部を開閉するシャッタと、
該シャッタの開閉を検知する開閉検知センサと、
前記紙幣を一時的に保管する一時保管庫と、
前記各部を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記シャッタが閉状態で前記入出金口に紙幣が存在する場合に、前記開閉検知センサが前記シャッタの異常を検知すると、前記制御部は、前記入出金口に存在する紙幣を前記一時保管庫に移動する制御を行うことを特徴とする紙幣取扱装置。
【請求項2】
前記シャッタの異常は、前記入出金口に紙幣が存在する場合において、前記シャッタを開く指示を受けたか否かを判断し、該指示を受けていない場合に、前記センサが前記シャッタが開いていることを検知した場合であることを特徴とする請求項1記載の紙幣取扱装置。
【請求項3】
前記紙幣取扱装置はさらに、
前記シャッタの振動を検知する振動検知センサを備え、
前記制御部は、前記入出金口に紙幣が存在する場合に、前記振動検知センサが振動を検知した場合は、前記制御部は、前記入出金部に存在する紙幣を前記一時保管庫に移動する制御を行うことを特徴とする請求項1記載の紙幣取扱装置。
【請求項4】
入出金される紙幣を取り扱う紙幣取扱装置において、
入金される紙幣が投入されまたは出金される紙幣が取り出される入出金口と、
前記入出金口の開口部を開閉するシャッタと、
該シャッタの開閉を検知する開閉検知センサと、
前記紙幣を一時的に保管する一時保管庫と、
前記紙幣を搬送する搬送部と、
前記各部を制御する制御部とを備え、
前記搬送部でジャムが発生した場合に、前記制御部は、前記搬送部に滞留する紙幣を前記入出金口に移動する制御を行い、
前記制御部は、前記シャッタが閉状態で前記入出金口に紙幣が存在する場合に、前記開閉検知センサが前記シャッタの異常を検知すると、前記制御部は、前記入出金口に存在する紙幣を前記一時保管庫に移動する制御を行うことを特徴とする紙幣取扱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−114909(P2007−114909A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−303832(P2005−303832)
【出願日】平成17年10月19日(2005.10.19)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】